説明

セグメントの運搬装置と運搬方法

【課題】断面形状に制約されずに、十分に幅の長いセグメントを運搬することができる台車を提供する。
【解決手段】円弧状のセグメントを搭載する台車である。台車の荷台には、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持する支持台を設置して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの運搬装置と運搬方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの組み立てに使用するセグメントaは、図7に示すような曲面を備えた円弧状の部材である。
シールドトンネルの工事においては、このセグメントaを、トンネルの坑口において台車bに搭載し、セグメントaを組み立てる切羽付近まで運搬してゆかなければならない。
その場合に従来はセグメントaを図8に示すような配置で台車bに搭載して運搬している。
すなわち、セグメントaの曲面の中心軸を、セグメント台車bの進行方向と直交する方向に位置させて運搬する方法である。
【特許文献1】特開2001−329799号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記したような従来のセグメント運搬方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> シールドトンネルの内空断面は小さく、セグメント台車bが走行する軌道に沿った複線部分には油圧装置を積んだ台車、電源を搭載した台車、コンプレッサ台車、ケーブル台車、変電台車などが後続台車cとして位置している。
<2> そのために前記したような配置で運搬する場合に、セグメントaの幅が広いと、図8に示すように、運搬軌道に平行して位置する後続台車cにセグメントaの端部が衝突してしまう可能性がある。そのような理由から、セグメント台車bで運搬できるセグメントaの幅には限界があり、幅の広いセグメントaを使用することはできなかった。
<3> また、前記のような配置で運搬した場合には、シールド掘進機における組み立てに際して、図9に示すように、セグメントaの方向を90度回転してセグメントaの曲面の中心軸がトンネル中心軸と平行に位置するように設置しなければならない。そのためにトンネル内を走行することができても、この回転時にセグメントaの対角線長さがトンネルの内径よりも大きくなると回転が不可能となり、セグメントaを設置できない、という問題もある。
<4> 以上のように、従来のような荷姿でセグメントaを台車bに搭載して行う運搬方法では、セグメントaの運搬時の問題、回転時の問題が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のセグメントの運搬装置は、円弧状のセグメントを搭載する台車であって、台車の荷台には、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持する支持台を設置して構成したことを特徴とするものである。
【0005】
さらにまた本発明のセグメントの運搬方法は、上記のセグメントの運搬装置を使用し、台車に設置した支持台によって、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持した状態でセグメントを組み立て位置の付近まで運搬することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセグメントの運搬装置と運搬方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> シールドトンネルのカーブの問題を除外すれば、断面形状に制約されずに、十分に幅の長いセグメントを運搬することができる。したがって特に空間断面に余裕の少ない中小断面のシールドトンネルにおいて、セグメントの幅の拡大化を図ることができる。
<2> 運搬時の姿勢のままで組み立てを行うことができるから、シールド掘進機での組み立て時にセグメントを回転させる必要がない。そのために作業効率、および安全性が大幅に向上する。
<3> セグメントの幅を長くすると、一度の組み立てで長い区間のトンネルが完成する。したがってボルトによる組み立て時間の短縮、一度の施工延長の拡大によって工期の短縮を図ることができる。
<4> セグメントの幅を長くすることによって、シールドトンネルの全長における継手箇所が減少する。その結果、継手ボルトの費用を含めたセグメント価格を低減することができる。
<5> セグメントの長さが長くなれば、セグメント間の継手の数が減少するから、その部分からの漏水の可能性も低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照にしながら本発明のセグメント台車2の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0008】
<1>全体の構成。
本発明は、円弧状のセグメント1を搭載する台車2である。
台車2は、車輪21と荷台22によって構成する。
そして荷台22には、支持台3とストッパ4を設ける。
支持台3とストッパ4は、図1の実施例のように一体として構成する場合もあり、図2の実施例のように両者を分離して設ける場合もある。
【0009】
<2>支持台3。
支持台3は、セグメント1を支持するための部材である。
その支持台3によって、セグメント1の円弧の中心軸が台車2の進行方向と平行になる状態でセグメント1を支持することを特徴とする。
そして支持台3として、図1の実施例のような、台車2の進行方向を横断する方向の曲面を備えた板状部材で構成することができる。
また支持台3として図6に示すような、台車2の進行方向に平行な棒状部材で構成することもできる。
【0010】
<3>支持台3。
支持台3として図1などの実施例のような曲面板状の支持台3を採用する場合について説明する。
この支持台3は、曲面を備えた板状体である。
この支持台3の曲面の配置方向は、台車2の進行方向を横断する方向の曲面として位置させる。
したがって曲面の中心軸L1は、台車2の進行方向と平行となる。
この支持台3の高さは、荷台22の床面よりも高く位置させる。
こうして支持台3の高さが荷台22の床面よりも高いことによって、支持台3の上に搭載したセグメント1を立ち上げた状態で運搬することができる。
【0011】
<4>棒状部材。
支持台3として図6の実施例のように、板状ではなく棒状の部材を採用する場合について説明する。
この棒状の支持台3は、支柱31の上に搭載して、台車2の進行方向に平行に設置する。
棒状の部材よりなる支持台3は、台車2の進行方向に平行に1本、あるいは複数本を平行に設置する。
この棒状の部材よりなる支持台3は、荷台22の床面よりも高く位置させる。
複数本の棒状の部材を平行に設置する場合には、台車2の外側寄りの棒状の部材を最も高く設定し、順次それよりも低い高さに形成する。
【0012】
<5>ストッパ4。
荷台22には、さらにストッパ4を設ける。
前記したように、ストッパ4は図1の実施例のように支持台3と一体構造とすることもでき、あるいは図2以降の実施例のように支持台3とストッパ4を別構造とすることもでき、以下の説明は両者を含んだ意味である。
ストッパ4が支持台3の一部である場合には、支持台3の最も低い位置に、別部材である場合には支持台3よりも低い位置に設けた係合用の部材である。
ストッパ4の形状は特定しないが、板状、ブロック状、柱状、枕木状の突設部材により構成することができる。
このストッパ4の設置位置は、支持台3と一体で形成する場合にはその曲面の内側であり、その結果、支持台3に傾斜した状態で搭載したセグメント1の下端の滑り出しを阻止することができる。
【0013】
<6>チェーンブロック5。
セグメント1の吊り上げ位置には、天井にはチェーンブロック5を、壁面には受け具6を取り付け、さらに床面には床面移動装置7を設置する。
このチェーンブロック5は、市販のものであり、電動で吊り具を巻き上げたり、巻き下ろしたりすることが可能である。
【0014】
<7>受け具6。
セグメント1の吊り上げ位置の壁面に設置する受け具6は、例えばL型の鋼材を下向きに位置させて構成する。
このL型鋼材を、回転自在に2本のリンク61、62の一端にピン軸支する。
そして、各リンク61、62の他端は、セグメント1の継手ボルトを利用して、セグメント1の異なった位置に固定する。
すると、受け具6のピン位置は一定位置に固定され、かつ受け具6はピンを中心に回転自在となる。
【0015】
<8>床面移動装置7。
セグメント1の吊り上げ位置の床面には、例えばローラコンベアのような床面移動装置7を敷設する。
このローラコンベアは、特別なものではなく市販のコンベアである。
床面移動装置7としてのローラコンベアは多数本の棒状のローラを、シールドトンネルの横断方向に並べた装置である。
このローラコンベアの上にセグメント1を搭載すれは、トンネルの軸方向へ円滑に移動させることができる。
なお、ローラコンベアに限らず、他の市販の移動装置7を床面に敷設して使用することができる。
【0016】
<9>セグメント1の運搬。(図2)
前記したように、支持台3は荷台22の床面よりも高い位置にあり、かつ低い位置にはストッパ4が設置してある。
さらに支持台3の曲面は、その円弧の中心軸が、台車2の進行方向と平行に設置してある。
その結果、支持台3にセグメント1を搭載した場合に図1に示すように、セグメント1の円弧の中心軸L1が台車2の進行方向と平行になる状態でセグメント1を支持して運搬することができる。
そのために、図2に示すように、後続台車8が途中に駐車していても、余裕をもってその脇を通過することができる。
【0017】
<10>吊り上げ位置へ到着。(図3)
セグメント1を吊り上げる位置には、シールドトンネルの天井にチェーンブロック5を設けてある。
この位置へ台車2が到着したら、チェーンブロック5から吊り下げた吊り材によってセグメント1を吊り上げて支持台3から浮き上がらせる。
吊り材とセグメント1の固定は、セグメント1に設けたナット穴に、ボルトを挿入して行う。
その際に、セグメント1の下端部を押さえる受け具6を、セグメント1の下端の端面に当接させる。
この受け具6は、前記したようにL型の鋼材などを下向きに位置させ、かつ回転自在に構成してある。
そのために、セグメント1の下端部の隅部を上から受けてその隅部の回転は許容し、かつ水平、垂直移動を拘束することになる。
したがってセグメント1を吊り上げても、その下端部がシールドトンネルの壁面方向や天井方向に移動して衝突するような心配がなく、その上端部だけを上昇させることができる。
【0018】
<11>台車2の後退。(図4)
セグメント1を支持台3から浮き上げた状態で、セグメント台車2を後退させる。
その結果、セグメント1だけが宙吊りの状態となる。
【0019】
<12>床面移動装置7への搭載。(図5)
宙吊り状態のセグメント1を、チェーンブロック5を操作して徐々に下降させる。
その場合にも、セグメント1の下端部は受け具6によって支持されている。
そのためにセグメント1の下端部がシールドトンネルの壁面方向や天井方向に移動することがなく、上方にあった他端部側だけを下降させることができる。
セグメント1を下降させてローラコンベアなどの床面移動装置7に搭載し、さらにシールド工事で一般に使用されている移動式チェーンブロック(図示せず)によりシールド掘進機のエレクター側へ移動させる。
移動させたセグメント1をエレクターで組み立てる工程などは、従来の作業と同じである。
【0020】
<13>他の実施例。
上記の実施例ではチェーンブロック5を使用してセグメント1の吊り上げ、吊り下ろしを行う構成を説明した。
しかしチェーンブロック5に限らず、滑車とワイヤーを組み合わせたような公知の昇降機構を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の運搬装置によってセグメントを運搬している状態の説明図。
【図2】台車2によってセグメントを運搬している状態の断面図。
【図3】セグメントを吊り上げる位置に到着した状態の説明図。
【図4】セグメントを吊り上げ、台車を後退させて状態の説明図。
【図5】セグメントをローラコンベアへ搭載する状態の説明図。
【図6】他の実施例の説明図。
【図7】シールドトンネルと使用するセグメントの説明図。
【図8】従来のセグメントの運搬方法の説明図。
【図9】従来の運送方法において、セグメントを吊り上げて回転させる状態の説明図。
【符号の説明】
【0022】
1:セグメント
2:セグメント台車
3:支持台
4:ストッパ
5:チェーンブロック
6:受け具
7:床面移動装置
8:後続台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状のセグメントを搭載する台車であって、
台車の荷台には、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持する支持台を設置して構成した、
セグメントの運搬装置。
【請求項2】
請求項1記載のセグメントの運搬装置において、
台車に設けた支持台を、支持台とストッパによって構成し、
この支持台は、台車の進行方向を横断する方向の曲面を備えた板状部材で構成し、
かつ支持台は荷台の床面よりも高く位置させ、
一方、ストッパは、支持台よりも低い位置に設けた突設状の部材により構成した、
セグメントの運搬装置。
【請求項3】
請求項1記載のセグメントの運搬装置において、
台車に設けた支持台を、支持台とストッパによって構成し、
この支持台は、台車の進行方向に平行な棒状部材で構成し、
かつ支持台は荷台の床面よりも高く位置させ、
一方、ストッパは、支持台よりも低い位置に設けた突設状の部材により構成した、
セグメントの運搬装置。
【請求項4】
請求項1記載のセグメントの運搬装置を使用し、
台車に設置した支持台によって、
セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持した状態でセグメントを組み立て位置の付近まで運搬する、
運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−7319(P2010−7319A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166295(P2008−166295)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】