説明

セグメント用袋

【課題】充填材の充填時に、縫い目2に大きな引張力が生じることがないセグメント用袋体1を提供する。
【解決手段】袋体1はシールド掘進機側に位置する掘進機側シート11と、坑口側に位置する坑口側シート12とより構成する。この袋体1をセグメント3に取り付けたときに、掘進機側シート11と坑口側シート12の縁部を縫い合わせた縫い目2が、セグメント3に接する面と、地山4に接する面に位置するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント用袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド工法において、セグメントの外周面に袋を取り付けたセグメント用袋が知られている。
セグメントの外周面に袋を取り付けるのは、特にシールド掘進機が曲線を通過した後に形成されるテールボイドを充填するためである。
曲線の通過後には大きなテールボイドが形成されるので、単に裏込め注入を行っただけでは、注入材が自由に流れてしまい、あるいはシールド掘進機の内部に流入してしまい、目的とするボイドを充填することができない。
そこで図5に示すように、セグメントaの外周面に柔軟な材料で作った袋体bを取り付けておき、曲線を通過した後に、セグメントaの内側から充填材を袋体b内に充填して袋を膨張させ、セグメントaの外周と地山との間に密着させる。
このようなセグメントa外周に環状に形成した袋体bの膨張リングを二箇所に形成しておき、両リングの間に裏込め材を充填してテールボイドを充填するものである。
【特許文献1】特開平8−260894号公報。
【特許文献2】特開2002−364295号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記したような従来のセグメント用袋にあっては、次のような問題点がある。
<1> セグメントの外周面にとりつけた注入用の袋体bは同形の2枚のシートを縫い合わせて製造している。
<2> そのために、袋体bが膨張した場合には、図6に示すように、ほぼ直方体を形成することになるが、表裏のシートの縫い目cは直方体の底面dに現れる。
<3> ところで袋体bに作用する圧力は、注入材の注入圧に、注入材の重量を加算したものとなるから、直方体の底部dに作用する引張力が最大の値となる。
<4> それなのに上記したように袋体bの縫い目cは直方体の底部dに現れているから、この縫い目cが弱点となりやすく、生地は十分に耐えるのに、底部dの縫い目cが引張力に耐え切れずに縫い目cから裂けてしまうという可能性がある。
<5> さらに、裏表がほぼ同一の形状のシートの周囲を縫い合わせるものであるにもかかわらず、膨張時には地山に接する表面と、セグメントaに接する裏面とは伸びが異なる。そのために2枚のシートの縫い合わせに際しては縫製工が、膨張時における内側シートの縮み代を考慮して、セグメントa側のシートを少しづつ寄せ集めて表裏を縫い合わせるという特殊な熟練、経験を要するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために本発明のセグメント用袋は、シールド工法に使用するセグメントの外周面に取り付ける袋体であって、この袋体は、少なくとも2枚のシート、すなわち、袋体をセグメントに取り付けたときに、シールド掘進機側に位置する掘進側シートと、坑口側に位置する坑口側シートとより構成し、この袋体をセグメントに取り付けたときに、掘進側シートと坑口側シートの縁部を縫い合わせた縫い目が、セグメントに接する面と、地山に接する面に位置するように構成したセグメント用袋を特徴とする。
また本発明のセグメント用袋体は、シールド工法に使用するセグメントの外周面に取り付ける袋体であって、この袋体は、少なくとも2枚のシート、すなわち、袋体をセグメントに取り付けたときに、シールド掘進機側に位置する掘進側シートと、坑口側に位置する坑口側シートとより構成し、かつ両シートともに、内側の曲線がセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描き、外側の曲線が内側の円弧と平行な円弧を描く、円弧短冊型に形成し、両シートの縁を縫い合わせて構成したセグメント用袋体を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセグメント用袋は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 袋体内に充填材を充填して膨張させた場合に、外側の縫い目は地山に接し、内側の縫い目はセグメントに接することになる。したがって袋体の内部に充填材を高い圧力で注入しても縫い目は外から地山、またはセグメントによって保持されている。
<2> このように、袋体は外側から支持されているので、高い圧力で注入しても、従来の袋体の弱点であった縫い目からの破損を生じがたい。
<3> 袋体を、掘進機側シートと、坑口側に位置する坑口側シートとより構成し、かつ両シートともに内側の曲線がセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描き、外側の曲線が内側の円弧と平行な円弧を描く円弧短冊型に形成するので、縫製に際して従来のように膨張時の縮み代を考慮して縫い合わせるという熟練を必要とせず、普通の縫製工によって製造できるから安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>前提条件。
本発明の対象は、上記したように図5に示すようなシールドトンネルを構成するセグメントの外周面に取り付ける袋体1である。
そしてこの袋体1は、少なくとも2枚のシートを縫い合わせて構成する。
シートの材料は、公知の袋付きセグメントで使用されている多くの材料を使用することができる。
【0008】
<2>掘進機側シート11。
この2枚のシートのうちの1枚は、掘進機側シート11である。
この掘進機側シート11とは、完成した袋体1をセグメントに取り付けたときに、シールド掘進機側に位置するシートを意味する。
この掘進機側シート11は、内側の曲線がセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描く。
また、外側の曲線が内側の円弧と平行な円弧を描く。
両端の端縁は、内側円弧の端部と外側端部とを直線、曲線で結んで形成する。
すなわち掘進機側シート11を展開した形状は、円弧短冊型である。
【0009】
<3>坑口側シート12。
この2枚のシートのうちの他の1枚は、坑口側シート12である。
この坑口側シート12とは、完成した袋体1をセグメントに取り付けたときに、坑口側に位置するシートである。
この坑口側シート12は、内側の曲線がセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描く。
また、外側の曲線が内側の円弧と平行な円弧を描く。
両端の端縁は、内側円弧の端部と外側端部とを直線、曲線で結んで形成する。
すなわちこの坑口側シート12を展開した形状もまた、円弧短冊型である。
掘進機側シート11か、坑口側シート12のいずれかに、袋体1の内部に充填する充填材の注入孔を開口する。
【0010】
<4> 両シートの縫製。
本発明の袋体1は、掘進機側シート11と坑口側シート12の両シートの縁を、縁に沿って縫い合わせて構成する。
両シートともに、その内側の曲線はセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描き、外側の曲線は内側の円弧と平行な円弧を描いている。
したがって縫製に際しては勘や経験で膨張の際の縮み代を考慮するような複雑な製法を必要とせず、均等な縫い目2によって縫製することができる。
【0011】
<5>セグメントへの取り付け。
以上の工程で製法の終わった袋体1は、図2の上段に示すように周囲に縫い目2を有する円弧短冊状である。
この袋体1の掘進機側シート11と坑口側シート12とを十分に引き離して畳むと、図2の中段に示すように、反り返った円弧板のような形状を呈する。
その場合に、掘進機側シート11と坑口側シート12の縁を縫い合わせた縫い目2は、円弧板の表面と裏面の中央を長手方向に縦断する形状として現れる。
この円弧板状の袋体1をセグメント3の外周面に取り付ける。
セグメント3への取付に際して、袋体1の保護のためにセグメント3の周囲に保護壁31を形成したり、充填口32をセグメント3の充填口と一致させる構造などは多くの公知例と同様である。
【0012】
<6>膨張。
この袋体1を取り付けたセグメント3をシールドトンネルの必要とする位置に配置し、シールド掘進機が通過した後に袋体1の内部に充填材を充填して膨張させる。
すると、袋体1の掘進機側シート11と坑口側シート12の縁部を縫い合わせた縫い目2は必ずセグメント3に接する面と、地山4に接する面に位置する。
したがって内部に充填材が圧入された場合に、縫い目2の外側には必ずセグメント3か地山4が位置しており、袋体1はセグメント3や地山4を押し付ける状態で膨張する。
したがって袋体1の縫い目2には一方的に内部からの圧力だけが作用するこということがなく、外部から押さえられた状態で膨張するから、十分に大きな内圧に対向することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のセグメント用袋体が膨張した状態の縫い目の位置の説明図。
【図2】縫製した袋体を広げてセグメントに取り付ける状態の説明図。
【図3】袋体が膨張してセグメントと地山との間に位置する状態の説明図。
【図4】掘進側シート、坑口側シートの縫製する前の展開図。
【図5】袋付きセグメントを使用する状態の説明図。
【図6】従来のセグメント用袋体が膨張した実施例の説明図。
【符号の説明】
【0014】
1:袋体
11:掘進側シート
12:坑口側シート
2:縫い目
3:セグメント
4:地山



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法に使用するセグメントの外周面に取り付ける袋体であって、
この袋体は、少なくとも2枚のシート、すなわち、
袋体をセグメントに取り付けたときに、シールド掘進機側に位置する掘進側シートと、
坑口側に位置する坑口側シートとより構成し、
この袋体をセグメントに取り付けたときに、
掘進側シートと坑口側シートの縁部を縫い合わせた縫い目が、
セグメントに接する面と、
地山に接する面に位置するように構成した、
セグメント用袋。

【請求項2】
シールド工法に使用するセグメントの外周面に取り付ける袋体であって、
この袋体は、少なくとも2枚のシート、すなわち、
袋体をセグメントに取り付けたときに、シールド掘進機側に位置する掘進側シートと、
坑口側に位置する坑口側シートとより構成し、
かつ両シートはともに、内側の曲線がセグメントの外半径にほぼ等しい円弧を描き、
外側の曲線が内側の円弧と平行な円弧を描く、円弧短冊型に形成し、
両シートの縁を縫い合わせて構成した、
セグメント用袋体。
【請求項3】
掘進側シートか、坑口側シートのいずれかセグメントに接するシートに、
充填材の注入孔を開口して構成した、
請求項1または2記載のセグメント用袋。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−332613(P2007−332613A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164080(P2006−164080)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(592063869)株式会社モチヅキ (4)
【Fターム(参考)】