説明

セッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラム

【課題】ネットワークリソースの利用状況に応じて利用可能なセッション数を動的に変更することができるセッション管理システムを提供する。
【解決手段】通信端末間の通信セッションを仲介するセッション中継装置110が、発端末100からセッション接続要求を受け取った際に、当該ネットワークのネットワークリソースを管理し、受付を制御する帯域管理・受付装置120に、該セッション接続要求の受付が可能か否かを問い合わせることにより、当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況を取得し、取得した当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況に基づいて、発端末100からのセッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークが接続可能なものに編集し直したセッション接続要求として、接続要求の相手先として指定されている着端末101に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムに関し、特に、通信帯域を保証したネットワークにおいてネットワーク輻輳時におけるセッション数を確実に確保することが可能なセッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末間の通信に用いられる帯域を保証したセッション管理システムの実例としては、国際標準化が進められているQoS通信インフラのアーキテクチャである非特許文献1に示すようなNGN(Next Generation Network)のアーキテクチャがある。
【0003】
このNGNのアーキテクチャにおいては、IETF(Internet Engineering Task Force)提案のSIP(Session Initiation Protocol)を用いてマルチメディアサービスのセッション管理を実現するとともに、帯域保証などのQoS管理機能に関しては、非特許文献2に示すRACS(Resource and Admission Control Subsystem)との連携によって実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Telecommunications and Internet converged Services and Protocols for Advanced Networking (TISPAN); NGN Functional Architecture", ETSI ES 282 001 Ver.3.4.1 p.p.9-31
【非特許文献2】"Telecommunications and Internet converged Services and Protocols for Advanced Networking (TISPAN); Resource and Admission Control Sub-System (RACS): Functional Architecture", ETSI ES 282 003 Ver.2.0.0 p.p.15-79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、回線交換方式の音声通信やデータ通信においては、セッションごとに回線を確保するため、所定の通信品質を確保することができる。しかし、回線ごとに残余の通信リソースが発生する一方で、接続可能なセッション数は回線数により制約を受けることとなり、リソースの余剰を有効に活用することができない。
【0006】
一方、パケット交換方式をベースとした音声通信やデータ通信においては、セッション数の上限制約が無いものの、パケットの転送遅延などにより品質を確保・保証した状態としての通信を行うことができず、セッション数、通信トラヒックの上昇に応じて、各セッションにおける通信品質の劣化が発生する。
【0007】
これらの課題を解決する方式として、前述したNGN等のような帯域管理・受付制御を行うセッション管理システムにおいては、パケット交換方式をベースに、セッションごとに要求された所定の通信品質を保証している。
【0008】
しかしながら、該当するそれぞれのセッションにおいて利用される帯域は、通信端末間のネゴシエーションのみにしたがって設定されるため、ネットワークの輻輳状況を反映することがないので、ネットワークの輻輳時あるいは輻輳が予測される状況下においても、各セッション要求において、通常時と同様の帯域要求が積み上がることになり、セッション数を十分には確保することはできない状態に陥ってしまうことになる。
【0009】
また、前述したNGN等のような帯域管理・受付制御を行うセッション管理システムにおいては、パケット交換方式をベースにしているものの、実効的には、計画に準じて静的にセッション数の上限が決まってしまうことになっていて、ネットワークリソースの利用状況に応じて動的にセッション数を確保することができない。
【0010】
(本発明の目的)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、各セッションの通信品質と保証帯域とのトレードオフにより、ネットワークリソースの利用状況に応じてセッション数の上限を動的に変更することが可能なセッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するため、本発明によるセッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0012】
(1)本発明によるセッション管理システムは、発端末と着端末との間のネットワークを介した通信セッションを管理し、通信帯域を保証するセッション管理システムにおいて、前記ネットワークに、前記発端末と前記着端末との間の通信セッションを仲介するセッション中継装置と、当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況を管理し、通信セッションの受付を制御する帯域管理・受付装置とを備え、前記セッション中継装置が、前記発端末が前記着端末に対するセッション接続要求を受け取った際に、該セッション接続要求の受付が可能か否かを前記帯域管理・受付装置に問い合わせることにより、前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況を取得し、取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況に基づいて、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークが接続可能なコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報に編集し直したセッション接続要求として、接続要求の相手先として指定されている前記着端末に送信することを特徴とする。
【0013】
(2)本発明によるセッション数確保方法は、発端末と着端末との間のネットワークを介した通信セッションを管理し、通信帯域を保証するセッション管理システムにおいてセッション数を確保するセッション数確保方法であって、前記ネットワークに、前記発端末と前記着端末との間の通信セッションを仲介するセッション中継装置と、当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況を管理し、通信セッションの受付を制御する帯域管理・受付装置とを備え、前記セッション中継装置が、前記発端末が前記着端末に対するセッション接続要求を受け取った際に、該セッション接続要求の受付が可能か否かを前記帯域管理・受付装置に問い合わせることにより、前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況を取得し、取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況に基づいて、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークが接続可能なコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報に編集し直したセッション接続要求として、接続要求の相手先として指定されている前記着端末に送信することを特徴とする。
【0014】
(3)本発明によるセッション数確保プログラムは、少なくとも前記(2)に記載のセッション数確保方法のうち、前記セッション中継装置における処理をコンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0016】
ネットワークリソースの利用状況に応じて、通信品質と保証帯域とのトレードオフにより接続可能なセッション数を増加することができることにある。特に、重要な点は、通信品質と保証帯域とのトレードオフにより、ネットワークの輻輳状況において接続可能なセッション数を増やす制御を、通信端末間のセッションの仲介を行うセッション中継装置により通信端末間のセッションネゴシエーションに介在するだけで実現することができるので、ネットワークリソースの利用状況を反映した通信端末間のネゴシエーションを実現することができるのみならず、ネットワークの輻輳状況において接続可能なセッション数を増やす制御を、発端末、着端末の通信端末としては、輻輳が発生していない通常時のセッションネゴシエーションと全く変わらないネゴシエーション手続きによって実現することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるセッション管理システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示すセッション管理システムの動作の一例を説明するためのシーケンス図である。
【図3】図1に示すセッション管理システムにおいてネットワークの輻輳状況を事前に設定登録する登録例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるセッション管理システム、セッション数確保方法およびセッション数確保プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるセッション管理システムおよびセッション数確保方法について説明するが、かかるセッション数確保方法をコンピュータにより実行可能なセッション数確保プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、セッション数確保プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0019】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、ネットワークリソースを管理し、通信端末間の通信に用いる帯域を保証するセッション管理システムにおいて、通信端末間のセッションを仲介するセッション中継装置が、ネットワークの帯域利用状況に応じて、仲介セッションの受付・確保対象の帯域を抑えるように制御することにより、ネットワークの輻輳が発生した場合であっても、帯域保証が可能なセッション数を増加させて確保することを可能としていることを、主要な特徴としている。
【0020】
さらに具体的に説明すると次の通りである。本発明によるセッション管理システムは、ネットワークを介して通信セッションを形成する2つの通信端末、ネットワークのセッションを仲介するセッション中継装置、帯域管理・受付制御を行う帯域管理・受付装置、パケットの優先制御・転送を行うスイッチすなわちパケット転送装置を少なくとも含んで構成されている。
【0021】
ネットワークの輻輳を予測した保守者からの指示、ないしは、帯域管理・受付装置からのネットワーク輻輳に関する自律通知を受けて、セッション中継装置は、ネットワークが輻輳している状態にあることを意識する。
【0022】
ネットワークが輻輳状態に陥っていない通常の場合は、通信端末からのセッション接続要求を受け付けたセッション中継装置は、ネットワークとして要求されている通信帯域を確保することが可能か否かを、ネットワークリソースの利用状況を管理し、通信セッションの受付制御を行っている帯域管理・受付装置に問い合わせて、通信帯域の予約を行うとともに、当該通信端末からのセッション接続要求を対向通信端末に転送する。
【0023】
一方、保守者からのまたは帯域管理・受付装置からのネットワーク輻輳の通知を受信した以降においては、セッション中継装置は、通信端末からのセッション接続要求を受けた場合、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況に応じて、通信端末からの要求よりも低い通信帯域の予約を行うとともに、要求よりも低い当該通信帯域を用いたセッション接続要求を対向通信端末に対して行う。したがって、対向通信端末との通信セッションを確立する際には、セッション接続要求の要求元の発信側通信端末に対しても、要求よりも低い通信帯域を用いた通信セッションとして確立しようとしている旨の応答を返送することになる。
【0024】
かくのごとく、ネットワーク輻輳状況が発生している場合、あるいは、ネットワーク輻輳状況の発生が予測される場合には、セッション中継装置が、通信端末間のセッションネゴシエーションに対して割り込みを行うことによって、輻輳が発生していない通常時の場合よりも低い通信帯域での通信セッションの確立を促す。而して、通信セッションが確立した場合、各通信端末は、セッションネゴシエーションで成立した、より低い通信帯域でのやり取りを行うことになるため、最終的に、通信端末において意識している通信品質が担保されることになる。また、ネットワーク輻輳時にネットワークにおいて必要とされる各通信端末の通信帯域は、通常時の場合よりも少なく抑えることができるため、同一のネットワークリソースに対して、通常時の場合よりも多くのセッション数を確保することが可能となる。
【0025】
(実施形態の構成例)
次に、本発明によるセッション管理システムのシステム構成について、その一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明によるセッション管理システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【0026】
図1に示すセッション管理システムは、発端末100、着端末101、セッション中継装置110、帯域管理・受付装置120、パケット転送装置130,131を少なくとも含んで構成される。
【0027】
発端末100は、パケット通信用のセッション要求を送信する通信端末であり、着端末101は、発端末100からのセッション要求を受け取る通信端末であり、発端末100と着端末101との間で、ネットワークとしての帯域保証がなされた通信セッションを用いて、パケット通信を行う。
【0028】
また、セッション中継装置110は、発端末100と着端末101との間の通信において通信端末間のセッションを仲介する機能を備えたサーバであり、帯域管理・受付装置120は、ネットワークの輻輳状態を監視するとともに、ネットワークの帯域を管理し、通信セッションの受付制御を行うためのサーバであり、パケット転送装置130,131は、発端末100と着端末101との間の通信において、帯域管理・受付装置120からの制御に基づいて通信帯域を確保した状態でパケットの優先制御・転送を行うためのスイッチである。
【0029】
例えば、図1に示すセッション管理システムは次のような動作を行う。発端末100と着端末101との2つの端末は、パケット通信を開始するに当たって、セッション中継装置110によって仲介され、セッション確立のための手続きを実施する。この際、発端末100と着端末101との2つの端末は、パケット通信で用いるコーデック又は通信帯域の少なくとも一方について、ネゴシエーションを行い、セッション中継装置110は、パケット通信に用いようとしているコーデックや要求帯域について、帯域管理・受付装置120に対して問い合わせを行うことによって、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信に用いようとしているコーデック又は通信帯域の少なくとも一方を受け付けて、通信セッションを確立することが可能か否かの判断を行う。
【0030】
帯域管理・受付装置120が、発端末100と着端末101とのパケット通信に用いようとしているコーデックや通信帯域の受付を許容して、通信セッションの確立が可能であると判断した場合は、帯域管理・受付装置120は、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信に用いようとしているコーデックや通信帯域に関する情報を帯域管理に計上するとともに、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケットの転送動作を行うパケット転送装置130,131に対して、当該通信セッションに関する通信帯域を割り当てるための制御を行う。
【0031】
つまり、帯域管理・受付装置120は、ネットワークリソースの利用状況を管理しており、セッション中継装置110とのやり取りにおいて、すなわち、発端末100と着端末101との2つの通信端末間のパケット通信に用いようとしているコーデックや通信帯域に関するセッション中継装置110からの問い合わせを受け取った場合において、ネットワークリソースの利用状況を反映して、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信のセッション確立の可否に関する応答を、セッション中継装置110に対して行う。
【0032】
(実施形態の動作例の説明)
次に、図1に示したセッション管理システムの動作について、その一例を、図2を参照しながらさらに詳細に説明する。図2は、図1に示すセッション管理システムの動作の一例を説明するためのシーケンス図であり、発端末100と着端末101との2つの通信端末間の通信セッション確立のためのネゴシエーション動作を行う際に、発端末100、セッション中継装置110、帯域管理・受付装置120、着端末101との間で送受信される制御信号の流れの一例を示している。
【0033】
まず、発端末100は、着端末101に対するセッション接続要求をセッション中継装置110に対して送信する(シーケンスS101)。このセッション接続要求には、通信相手である着端末101を指定する宛先情報だけでなく、発端末100が通信に利用することが可能なコーデックや通信帯域などからなるセッション情報を少なくとも含んでいる。
【0034】
発端末100からのセッション接続要求を受け付けたセッション中継装置110においては、該セッション接続要求に含まれているコーデックや通信帯域などからなるセッション情報を基にして、帯域管理・受付装置120に対する受付判定要求/帯域予約要求を作成して、帯域管理・受付装置120に対して送信する(シーケンスS102)。
【0035】
セッション中継装置110からの受付判定要求/帯域予約要求を受け取った帯域管理・受付装置120においては、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況に応じて、当該受付判定要求/帯域予約要求に含まれているコーデックや通信帯域などからなるセッション情報をそのまま受け付けて、通信セッションの確立を許可するか否かを判定して、許可する場合は、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケットの転送を行なうパケット転送装置130,131におけるネットワークリソースとして当該帯域を予約登録するとともに、その旨を示す受付判定応答/帯域予約応答を、問い合わせ元のセッション中継装置110に対して返送する(シーケンスS103)。
【0036】
一方、当該受付判定要求/帯域予約要求に含まれているコーデックや通信帯域などからなるセッション情報を用いたセッション確立は不可能であると判定した場合は、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケットの転送を行なうパケット転送装置130,131におけるネットワークリソースとして、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況に基づいて、当該受付判定要求/帯域予約要求に含まれているセッション情報のうち、許可することができない帯域を除外して、許可することが可能なより低い帯域(つまり通信品質が低下する帯域)について予約登録を行い、その旨を示す受付判定応答/帯域予約応答を、問い合わせ元のセッション中継装置110に対して返送する(シーケンスS103)。
【0037】
帯域管理・受付装置120からの受付判定応答/帯域予約応答を受け取ったセッション中継装置110においては、該受付判定応答/帯域予約応答に基づいて、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況を反映した適切なコーデック又は帯域の少なくとも一方のみを、発端末100から受け付けていたセッション接続要求のセッション情報の中から抽出した形に、該セッション接続要求を編集し直して、着端末101に対して送信する(シーケンスS104)。つまり、セッション中継装置110は、発端末100から受け付けていたセッション接続要求に含まれていたセッション情報のうち、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況に応じて、より低レートのコーデック、より低帯域のもののみを選択して、選択した低レートのコーデック、低帯域に絞ったセッション情報を含むセッション接続要求に編集し直す。
【0038】
セッション中継装置110から転送されてきたセッション接続要求を受信した着端末101においては、ネットワークが輻輳状態か否かによらず、通常のセッション接続要求の受信処理と同様に、発端末100とのパケット通信を行うための通信セッションに関するネゴシエーション動作を行う。すなわち、着端末101においては、受信したセッション接続要求に含まれているセッション情報に基づいて、発端末100とのパケット通信を行うことが可能か否かつまりセッション接続要求の受付の可否を判定し、セッション接続要求の受付が可能な場合には、発端末100との通信に用いるために選択したコーデック又は帯域の少なくとも一方からなるセッション情報を含むセッション接続応答を作成し、一方、セッション接続要求の受付が不可能な場合には、該セッション接続要求を拒否する旨を示すセッション接続応答を作成して、セッション中継装置110に対して送信する(シーケンスS105)。
【0039】
セッション中継装置110は、着端末101からセッション接続応答を受け取ると、着端末101がセッション接続要求を受け付けたか否かを判別して、受け付けていた場合には、該セッション接続応答に含まれているセッション情報に基づいて、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信に用いようとしているコーデックや通信帯域を決定するとともに、決定した通信帯域をネットワークとして確保・保証することを要求する帯域確保要求を、帯域管理・受付装置120に対して送信する(シーケンスS106)。
【0040】
セッション中継装置110からの帯域確保要求を受け取った帯域管理・受付装置120においては、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケットの転送を行うパケット転送装置130,131において、該帯域確保要求によって要求されている帯域等を確保するとともに、先に帯域予約していた帯域等を開放する。しかる後、帯域管理・受付装置120は、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信に用いるネットワークリソースを確保した旨を示す帯域確保応答を、要求元のセッション中継装置110に対して返送する(シーケンスS107)。
【0041】
帯域管理・受付装置120からの帯域確保応答を受け取ったセッション中継装置110においては、該帯域確保応答に基づいて、発端末100からのセッション接続要求に対する応答として、発端末100と着端末101との2つの端末間のパケット通信に用いるネットワークリソースを確保した旨を示すセッション接続応答を作成して、発端末100に対して送信する(シーケンスS108)。
【0042】
セッション中継装置110からセッション接続応答を受け取った発端末100においては、ネゴシエーション結果として、該セッション接続応答に含まれているコーデック、帯域等のセッション情報を用いて着端末101との間でパケット通信を行うための通信セッションの確立が完了したことを認識し、確立した通信セッションによりパケット通信を行う。
【0043】
かくのごとく、セッション中継装置110が、発端末100、着端末101の2つの端末間のセッションネゴシエーションに割り込んで、ネットワーク輻輳が発生していた場合には、輻輳がない通常の場合よりも低い通信帯域での通信セッションの確立を自動的に促すことになる。したがって、通信セッションが確立した場合には、発端末100、着端末101の各端末は、セッションネゴシエーションにおいて成立した、帯域が保証されたより低い通信帯域を用いたパケット通信を行うことになるため、最終的に、発端末100、着端末101の各端末で意識している通信品質が担保されることになる。また、ネットワーク輻輳時においては、ネットワークにおいて発端末100、着端末101の通信に必要とされる帯域は、輻輳が発生していない通常時の場合よりも少なく抑えることができるため、同一のネットワークリソースに対して、通常時の場合よりも多くのセッション数を確保することが可能となる。
【0044】
さらに説明すれば、図2において説明したような手続きを用いることにより、発端末100、着端末101の2つの通信端末間のセッションネゴシエーションに、ネットワークの帯域利用状況、輻輳状況を反映させることができ、ネットワークの輻輳時においても、コーデックや帯域などの通信品質と保証帯域とのトレードオフにより、より多くのセッション数の確保が可能になる。また、図2に示すような本手続きにおいては、セッション中継装置110が発端末100、着端末101の通信端末間のネゴシエーションに介在しているだけであり、本質的には、発端末100、着端末101の端末間のネゴシエーション結果による通信セッションの確立と同様の動作となり、かつ、ネットワークリソースの利用状況に応じて、帯域管理・受付装置120が許容するコーデック又は帯域の少なくとも一方を利用した通信セッションとして確立することになるため、最終的に、発端末100、着端末101の端末間で合意された通信品質が保証されることになる。
【0045】
なお、以上の説明においては、シーケンスS102,S103において説明したように、ネットワークの輻輳状況を、帯域管理・受付装置120において、ネットワークリソースの管理状態に基づいて自律的に判定している場合について示したが、本発明は、かかる場合のみに限るものではなく、例えば、図3に示すように、ネットワークの輻輳状況を予測したことを示す情報を用いて事前に設定するようにしても良い。図3は、図1に示すセッション管理システムにおいてネットワークの輻輳状況を事前に設定登録する登録例を説明するための説明図である。
【0046】
図3(A)においては、ネットワーク管理者が、ネットワークの輻輳状況を事前に予測して、輻輳管理要求として、帯域管理・受付装置120に対して送信することにより(シーケンスS201)、帯域管理・受付装置120は、該輻輳管理要求に指定されている情報にしたがって、ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録する場合を示している。
【0047】
また、図3(B)においては、ネットワーク管理者が、ネットワークの輻輳状況を事前に予測して、輻輳管理要求として、帯域管理・受付装置120ではなく、セッション中継装置110に対して送信することにより(シーケンスS202)、セッション中継装置110が、該輻輳管理要求に指定されている情報にしたがって、ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録する場合を示している。したがって、セッション中継装置110は、図2のシーケンスS102において、帯域管理・受付装置120に対して送信する受付判定要求/帯域予約要求を作成する際に、発端末100からのセッション接続要求に含まれているコーデックや通信帯域などからなるセッション情報を、ネットワークの輻輳状況に応じて利用可能なコーデックや通信帯域などからなるセッション情報に適宜編集し直して、受付判定要求/帯域予約要求として作成するようにすることも可能である。
【0048】
また、図3(C)においては、帯域管理・受付装置120がネットワークリソースの管理状態に基づいてネットワークの輻輳状況を予測した際に、帯域管理・受付装置120から、輻輳管理要求として、セッション中継装置110に対して送信することにより(シーケンスS203)、セッション中継装置110においても、該輻輳管理要求に指定されている情報にしたがって、ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録する場合を示している。かかる場合においても、図3(B)の場合と同様、セッション中継装置110は、図2のシーケンスS102において、帯域管理・受付装置120に対して送信する受付判定要求/帯域予約要求を作成する際に、発端末100からのセッション接続要求に含まれているコーデックや通信帯域などからなるセッション情報を、ネットワークの輻輳状況に応じて利用可能なコーデックや通信帯域などからなるセッション情報に適宜編集し直して、受付判定要求/帯域予約要求として作成することができる。
【0049】
なお、図1のシステム構成例においては、発端末100と着端末101の間に介在するセッション中継装置110、帯域管理・受付装置120は、それぞれ1つずつとしているが、複数のセッション中継装置、帯域管理・受付装置が介在している構成であっても良い。かかる場合には、例えば、セッション中継装置が、他のセッション中継装置から転送されてきたセッション接続要求を受け付けた場合、発端末100からのセッション接続要求を受け付けた場合と同等に扱って、図2において前述した手続きと同様の手続きを行うようにしたり、また、発端末100からのセッション接続要求を受け付けるセッション中継装置としては、発端末100に最も近接するセッション中継装置を選択する動作を追加したり、複数の帯域管理・受付装置の中から、発端末100と着端末101との間でパケットを転送するパケット転送装置130,131を管理する帯域管理・受付装置を選択する動作を追加したりすることだけで、前述した実施形態の場合と全く同様に、動作させることができる。
【0050】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
【0051】
ネットワークリソースの利用状況に応じて、通信品質と保証帯域とのトレードオフにより接続可能なセッション数を増加することができることにある。特に、重要な点は、通信品質と保証帯域とのトレードオフにより、ネットワークの輻輳状況において接続可能なセッション数を増やす制御を、通信端末間のセッションの仲介を行うセッション中継装置110により通信端末間のセッションネゴシエーションに介在するだけで実現することができるので、ネットワークリソースの利用状況を反映した通信端末間のネゴシエーションを実現することができるのみならず、ネットワークの輻輳状況において接続可能なセッション数を増やす制御を、発端末100、着端末101の通信端末としては、輻輳が発生していない通常時のセッションネゴシエーションと全く変わらないネゴシエーション手続きによって実現することができることである。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0053】
100 発端末
101 着端末
110 セッション中継装置
120 帯域管理・受付装置
130 パケット転送装置
131 パケット転送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発端末と着端末との間のネットワークを介した通信セッションを管理し、通信帯域を保証するセッション管理システムにおいて、前記ネットワークに、前記発端末と前記着端末との間の通信セッションを仲介するセッション中継装置と、当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況を管理し、通信セッションの受付を制御する帯域管理・受付装置とを備え、前記セッション中継装置が、前記発端末が前記着端末に対するセッション接続要求を受け取った際に、該セッション接続要求の受付が可能か否かを前記帯域管理・受付装置に問い合わせることにより、前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況を取得し、取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況に基づいて、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークが接続可能なコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報に編集し直したセッション接続要求として、接続要求の相手先として指定されている前記着端末に送信することを特徴とするセッション管理システム。
【請求項2】
前記セッション中継装置は、前記帯域管理・受付装置から取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況として、前記ネットワークが輻輳状態にあることを認識した場合、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークにて接続可能なより低レートのコーデック、低レートの帯域に編集し直すことを特徴とする請求項1に記載のセッション管理システム。
【請求項3】
前記帯域管理・受付装置または前記セッション中継装置は、ネットワーク管理者から前記ネットワークの輻輳状態を予測した情報を輻輳管理要求として受け取った場合、該輻輳管理要求によって指定された当該ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録することを特徴とする請求項1または2に記載のセッション管理システム。
【請求項4】
前記セッション中継装置は、前記帯域管理・受付装置から前記ネットワークの輻輳状態を予測した情報を輻輳管理要求として受け取った場合、該輻輳管理要求によって指定された当該ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のセッション管理システム。
【請求項5】
発端末と着端末との間のネットワークを介した通信セッションを管理し、通信帯域を保証するセッション管理システムにおいてセッション数を確保するセッション数確保方法であって、前記ネットワークに、前記発端末と前記着端末との間の通信セッションを仲介するセッション中継装置と、当該ネットワークのネットワークリソースの利用状況を管理し、通信セッションの受付を制御する帯域管理・受付装置とを備え、前記セッション中継装置が、前記発端末が前記着端末に対するセッション接続要求を受け取った際に、該セッション接続要求の受付が可能か否かを前記帯域管理・受付装置に問い合わせることにより、前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況を取得し、取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況に基づいて、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークが接続可能なコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報に編集し直したセッション接続要求として、接続要求の相手先として指定されている前記着端末に送信することを特徴とするセッション数確保方法。
【請求項6】
前記セッション中継装置は、前記帯域管理・受付装置から取得した前記ネットワークのネットワークリソースの利用状況として、前記ネットワークが輻輳状態にあることを認識した場合、前記発端末から受け取った前記セッション接続要求のセッション情報に含まれているコーデック又は帯域の少なくとも一方に関する情報を、当該ネットワークにて接続可能なより低レートのコーデック、低レートの帯域に編集し直すことを特徴とする請求項5に記載のセッション数確保方法。
【請求項7】
前記帯域管理・受付装置または前記セッション中継装置は、ネットワーク管理者から前記ネットワークの輻輳状態を予測した情報を輻輳管理要求として受け取った場合、該輻輳管理要求によって指定された当該ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録することを特徴とする請求項5または6に記載のセッション数確保方法。
【請求項8】
前記セッション中継装置は、前記帯域管理・受付装置から前記ネットワークの輻輳状態を予測した情報を輻輳管理要求として受け取った場合、該輻輳管理要求によって指定された当該ネットワークの輻輳状況をあらかじめ設定登録することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のセッション数確保方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかに記載のセッション数確保方法のうち、前記セッション中継装置における処理をコンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とするセッション数確保プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209839(P2012−209839A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75137(P2011−75137)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】