説明

セパレーター製造装置

【課題】基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置を提供する。
【解決手段】基材層の一方面には第1ナノ繊維層が形成され、他方面には第2ナノ繊維層が形成されたセパレーターを製造するセパレーター製造装置であって、基材層となる長尺シートWを搬送する搬送機構11,12,13,14,17,18と、長尺シートWが搬送されていく途中で長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構15aとを備える搬送装置10と、上向きノズルを用いて下方から一方面に第1ナノ繊維を堆積させて第1ナノ繊維層を形成する第1電界紡糸装置20と、上向きノズルを用いて下方から他方面に第2ナノ繊維を堆積させて第2ナノ繊維層を形成する第2電界紡糸装置22とを備えるセパレーター製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、セパレーター製造装置に関する。
【0002】
ナノ繊維層を有するセパレーターは、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して繊維が細く空隙が微細かつ均一であるため、絶縁性及びデンドライト耐性が高い。このため、高い絶縁性及び高いデンドライト耐性を維持したままセパレーターの厚さを薄くしてイオン伝導性を高くすることが可能となる。また、ナノ繊維層を有するセパレーターは、一般的な繊維層を有するセパレーターと比較して空隙率が大きいため、高い電解液保持性を有し、このことからもイオン伝導性を高くすることが可能となる。このため、ナノ繊維層を有するセパレーターは、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するセパレーターとなる。このようなセパレーターは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に好適に用いることができる。
【0003】
従来、長尺シートを搬送する搬送機構を備える搬送装置と、上向きノズルを用いて下方から長尺シートの一方面にナノ繊維を堆積させてナノ繊維層を形成する電界紡糸装置とを備えるナノ繊維製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなナノ繊維製造装置をセパレーター製造装置として用いて、ナノ繊維層を有するセパレーターを製造することが考えられる。
【0004】
図10は、従来のナノ繊維製造装置900を説明するために示す図である。図10(a)はナノ繊維製造装置900の正面図であり、図10(b)は上向きノズル920周辺の斜視図である。従来のナノ繊維製造装置900は、図10(a)及び図10(b)に示すように、ポリマー溶液(ポリマー材料等を溶媒に溶解させたもの)を吐出口から上向きに吐出する複数の上向きノズル920を有するノズルユニット910と、ノズルユニット910よりも上方に配置されたコレクター950と、複数の上向きノズル920とコレクター950との間に高電圧を印加する電源装置960とを備える。
【0005】
従来のナノ繊維製造装置900によれば、複数の上向きノズル920の吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸するため、下向きノズルを用いたセパレーター製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象(下向きノズルから紡糸されなかったポリマー溶液の塊がそのまま長尺シート又は基材層に付着する現象)を発生させることなく、ナノ繊維層を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0006】
なお、本発明における「セパレーター」は、非導電性のセパレーターのことをいう。また、本発明において、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4414458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、電池やコンデンサーの業界においては、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーター(例えば、高い機械的強度を有する基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーター)が求められる場合がある。このようなセパレーターは、高い絶縁性、高いデンドライト耐性及び高いイオン伝導性を有するのに加えて、高い機械的強度を有するようになる。
【0009】
しかしながら、従来のナノ繊維製造装置は、ノズルとして上向きノズルを用いているため、ナノ繊維層を形成可能な方向が限られており、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造するためには、1台のナノ繊維製造装置900により基材層となる長尺シートの一方面にナノ繊維層を形成した後に、もう1台のナノ繊維製造装置900に長尺シートを設置し直してから当該長尺シートの他方面にナノ繊維層を形成する必要がある。このため、従来のナノ繊維製造装置において、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを高い生産性で大量生産することができないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明のセパレーター製造装置は、基材層の一方面には第1ナノ繊維層が形成され、他方面には第2ナノ繊維層が形成されたセパレーターを製造するセパレーター製造装置であって、前記基材層となる長尺シートを搬送する搬送機構と、前記長尺シートが搬送されていく途中で前記長尺シートの一方面の向きと他方面の向きとが反対になるように前記長尺シートを反転させる長尺シート反転機構とを備える搬送装置と、前記長尺シート反転機構よりも前段に配置され、上向きノズルを用いて下方から前記一方面に第1ナノ繊維を堆積させて前記第1ナノ繊維層を形成する第1電界紡糸装置と、前記長尺シート反転機構よりも後段に配置され、上向きノズルを用いて下方から前記他方面に第2ナノ繊維を堆積させて前記第2ナノ繊維層を形成する第2電界紡糸装置とを備えることを特徴とする。
【0012】
このため、本発明のセパレーター製造装置によれば、上記した長尺シート反転機構を備えるため、電界紡糸装置(第1電界紡糸装置)により長尺シートの一方面にナノ繊維層を形成した後、別の電界紡糸装置(第2電界紡糸装置)に長尺シートを設置し直すことなく長尺シートの他方面にナノ繊維層を形成することが可能となり、基材層の両面(一方の面及び他方の面)にナノ繊維層が形成されたセパレーターを高い生産性で大量生産することが可能となる。
【0013】
また、本発明のセパレーター製造装置によれば、上記した長尺シート反転機構を備えるため、第1電界紡糸装置及び第2電界紡糸装置のいずれの場合も、従来のナノ繊維製造装置の場合と同様に、複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸することが可能となるため、下向きノズルを用いたセパレーター製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象を発生させることがない。
【0014】
従って、本発明のセパレーター製造装置は、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置となる。
【0015】
なお、第1ナノ繊維紡糸装置及び第2ナノ繊維紡糸装置は、同様の構成を有するものでもよいし、異なる構成を有するものでもよい。また、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層も、同様の構成(材質、繊維の平均径、厚さ、密度等)を有するものでもよいし、異なる構成を有するものでもよい。製造するセパレーターに応じて適宜選択することができる。
【0016】
[2]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置の上方に配置され、前記長尺シート反転機構は、前記第2電界紡糸装置の高さ位置に合わせて、前記第1電界紡糸装置からの前記長尺シートを反転させることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることにより、セパレーター製造装置の設置面積をそれほど大きくすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0018】
[3]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置の下方に配置され、前記長尺シート反転機構は、前記第2電界紡糸装置の高さ位置に合わせて、前記第1電界紡糸装置からの前記長尺シートを反転させることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることによっても、セパレーター製造装置の設置面積をそれほど大きくすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0020】
[4]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置と同じ高さ位置に配置され、前記長尺シート反転機構は、高さ位置を変更することなく前記長尺シートを反転させることが好ましい。
【0021】
このような構成とすることにより、セパレーター製造装置の高さをそれほど高くすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0022】
なお、上記[4]の場合には、長尺シート反転機構として、長尺シートの搬送方向を変更することなく長尺シートをねじるもの(後述する変形例1及び図8参照。)や、長尺シートの搬送方向を90度屈曲するように長尺シートをねじるもの(後述する変形例2及び図9参照。)などを用いることができる。
【0023】
また、「同じ高さ位置」とは、厳密に同じ高さ位置のみを指すものではなく、実質的に同じ高さ位置としてとして扱えることも含む。また、「高さ位置を変更しない」も、厳密に高さ位置を変更しないことのみを指すものではなく、実質的に高さ位置を変更しないとして扱えることも含む。
【0024】
[5]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの通気度を計測する第1通気度計測装置と、前記第2電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層及び前記第2ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの通気度を計測する第2通気度計測装置と、前記第1通気度計測装置により計測された通気度に基づいて「前記長尺シートが前記第1電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第1搬送速度」を制御し、前記第2通気度計測装置により計測された通気度に基づいて「前記長尺シートが前記第2電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第2搬送速度」を制御する搬送速度制御装置とを備えることが好ましい。
【0025】
このような構成とすることにより、第1通気度計測装置及び第2通気度計測装置により計測された通気度に基づいて第1搬送速度及び第2搬送速度を制御することが可能となるため、長時間の電界紡糸過程において紡糸条件が変動して通気度が変動したとしても、搬送速度を適切に制御して通気度の変動量を所定の範囲に収めることが可能となり、その結果、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層がそれぞれ均一な通気度を有するセパレーターを大量生産することが可能となる。
【0026】
搬送速度制御装置による第1搬送速度及び第2搬送速度の制御は、例えば、第1搬送速度計測装置及び第2搬送速度計測装置により計測された通気度と、所定の目標通気度とのずれ量に基づいて行うことができる。また、上記の場合には、搬送速度制御装置による第1搬送速度及び第2搬送速度の制御を、ずれ量の時間変化率を考慮して行うこともできる。
【0027】
なお、セパレーター製造装置を長時間連続して運転するという観点から、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差は可能な限り小さいことが好ましい。
【0028】
[6]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの厚さを計測する第1厚さ計測装置と、前記第2電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層及び前記第2ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの厚さを計測する第2厚さ計測装置と、前記第1厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて「前記長尺シートが前記第1電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第1搬送速度」を制御し、前記第2厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて「前記長尺シートが前記第2電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第2搬送速度」を制御する搬送速度制御装置とを備えることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、第1厚さ計測装置及び第2厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて第1搬送速度及び第2搬送速度を制御することが可能となるため、長時間の電界紡糸過程において紡糸条件が変動して厚さが変動したとしても、搬送速度を適切に制御して厚さの変動量を所定の範囲に収めることが可能となり、その結果、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層がそれぞれ均一な厚さを有するセパレーターを大量生産することが可能となる。
【0030】
搬送速度制御装置による第1搬送速度及び第2搬送速度の制御は、例えば、第1搬送速度計測装置及び第2搬送速度計測装置により計測された厚さと、所定の目標厚さとのずれ量に基づいて行うことができる。また、上記の場合には、搬送速度制御装置による第1搬送速度及び第2搬送速度の制御を、ずれ量の時間変化率を考慮して行うこともできる。
【0031】
[7]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1電界紡糸装置と前記第2電界紡糸装置との間に配置され、前記第1搬送速度と前記第2搬送速度との速度差を吸収する速度差吸収装置をさらに備え、前記搬送装置は、前記第1搬送速度で前記長尺シートを搬送する第1駆動装置と、前記第2搬送速度で前記長尺シートを搬送する第2駆動装置とをさらに備えることが好ましい。
【0032】
このような構成とすることにより、第1搬送速度と第2搬送速度とが異なる場合であっても、長尺シートの切れや弛みを防ぐことが可能となり、その結果、セパレーター製造装置を長時間連続して運転し続けることが可能となる。
【0033】
[8]本発明のセパレーター製造装置においては、前記速度差吸収装置は、互いの間隔を変更可能な複数の速度差吸収ローラーを備えることが好ましい。
【0034】
このような構成とすることにより、速度差吸収ローラーの間隔を変更することにより、第1搬送速度と第2搬送速度との差を吸収することが可能となる。
【0035】
[9]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1電界紡糸装置の紡糸条件と、前記第2電界紡糸装置の紡糸条件とをそれぞれ独立に変更可能な紡糸条件変更装置をさらに備えることが好ましい。
【0036】
このような構成とすることにより、紡糸条件を独立に変更することによって、第1搬送速度と第2搬送速度との差が大きくならないようにすることが可能となる。その結果、セパレーター製造装置を一層長時間連続して運転し続けることが可能となる。
【0037】
「紡糸条件」とは、例えば、電圧、上向きノズルと長尺シートとの距離、ポリマー溶液の組成、紡糸区域の温度及び湿度等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1に係るセパレーター製造装置1の正面図である。
【図2】実施形態1における第1電界紡糸装置20を説明するための図である。
【図3】実施形態1における速度差吸収装置40を説明するための図である。
【図4】実施形態1におけるセパレーターの製造方法を説明するための図である。
【図5】実施形態2に係るセパレーター製造装置2の正面図である。
【図6】実施形態3に係るセパレーター製造装置3の正面図である。
【図7】変形例1に係るセパレーター製造装置4の正面図である。
【図8】変形例2における長尺シート反転機構15cを説明するための図である。
【図9】変形例3における長尺シート反転機構15dを説明するための図である。
【図10】従来のセパレーター製造装置900の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明のセパレーター製造装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0040】
1.実施形態1に係るセパレーター製造装置1の構成
まず、実施形態1に係るセパレーター製造装置1の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係るセパレーター製造装置1の正面図である。なお、図1においては、一部の部材は断面図として示している。これは、後述する図2、図5〜図7においても同様である。
図2は、実施形態1における第1電界紡糸装置20を説明するための図である。図2(a)は第1電界紡糸装置20の正面図であり、図2(b)はノズルブロック110をコレクター150側から見た図である。なお、図2(b)においては、長尺シートWの下に配置されている構成要素(上向きノズル120等)も図示している。また、補助ベルト172については図示を省略している。
図3は、実施形態1における速度差吸収装置40を説明するための図である。図3(a)は第1搬送速度と第2搬送速度とが同じ速さであるときの図であり、図3(b)は第1搬送速度が第2搬送速度より速いときの図であり、図3(c)は第1搬送速度が第2搬送速度より遅いときの図である。
【0041】
実施形態1に係るセパレーター製造装置1は、図1〜図3に示すように、搬送装置10と、第1電界紡糸装置20と、第1通気度測定装置30と、速度差吸収装置40と、第2電界紡糸装置22と、第2通気度計測装置32と、搬送速度制御装置50(図示せず。)と、紡糸条件変更装置60と(図示せず。)と、主制御装置70(図示せず。)とを備える。セパレーター製造装置1は、基材層の一方面には第1ナノ繊維層NL1が形成され、他方面には第2ナノ繊維層NL2が形成されたセパレーター(後述する図4(d)参照。)を製造するためのセパレーター製造装置である。
【0042】
実施形態1に係るセパレーター製造装置1においては、第1電界紡糸装置として、1台の電界紡糸装置20を備える。また、第2電界紡糸装置として、1台の電界紡糸装置22を備える。
【0043】
搬送装置10は、図1に示すように、第1電界紡糸装置20から第2電界紡糸装置22へ向けて基材層となる長尺シートWを搬送するように構成されている。搬送装置10は、第1電界紡糸装置20が第1ナノ繊維層NL1を形成するとき(後述する図4(b)参照。)には長尺シートを第1の方向(図1におけるA1の方向)に搬送し、第1電界紡糸装置20の高さ位置から第2電界紡糸装置22の高さ位置まで長尺シートWを第1の方向と略垂直な第2の方向(A2の方向)に搬送し、第2電界紡糸装置22が第2ナノ繊維層NL2を形成するとき(後述する図4(d)参照。)には長尺シートWを第1の方向と反対となる第3の方向(A3の方向)に搬送する。
【0044】
搬送装置10は、長尺シートWを繰り出す繰り出しローラー11と、長尺シートWを巻き取る巻き取りローラー12と、長尺シートWの張りを調整するテンションローラー13と、長尺シートWを第1搬送速度で搬送する第1駆動ローラー14と、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWの搬送方向を上方に向ける第1反転ローラー16aと、第1反転ローラー16aからの長尺シートWの搬送方向を第2電界紡糸装置22の方に向ける第2反転ローラー16bと、長尺シートWを第2搬送速度で搬送する第2駆動ローラー17と、搬送を補助する補助ローラー18とを備える。
【0045】
このうち、繰り出しローラー11、巻き取りローラー12、テンションローラー13、第1駆動ローラー14、第2駆動ローラー17及び補助ローラー18は、長尺シートWを搬送する搬送機構(符号を図示せず。)を構成する。第1駆動ローラー14は、第1搬送速度で長尺シートWを搬送する第1駆動装置である。また、第2駆動ローラー17は、第2搬送速度で長尺シートWを搬送する第2駆動装置である。
【0046】
第1反転ローラー16a及び第2反転ローラー16bは、長尺シートWが搬送されていく途中で長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとが反対になるように長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構15aを構成する。長尺シート反転機構15aは、第2電界紡糸装置22の高さ位置に合わせて、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWを反転させる。
繰り出しローラー11、巻き取りローラー12、第1駆動ローラー14及び第2駆動ローラー17は、図示しない駆動モーターによりそれぞれ回転駆動される構造となっている。なお、上記した以外のローラーも、駆動モーター等により回転駆動される構造としてもよい。
【0047】
なお、第1搬送速度と第2搬送速度とは、理想的には同じ速さであるが、後述するように、測定された通気度に基づいて搬送速度制御装置50により独立に制御されるため、第1搬送速度が第2搬送速度よりも若干速くなることや、第1搬送速度が第2搬送速度よりも若干遅くなることがあり得る。
【0048】
第1電界紡糸装置20は、図1及び図2に示すように、長尺シート反転機構15aよりも前段に配置され、上向きノズル120(後述)を用いて下方から長尺シートWの一方面に第1ナノ繊維を堆積させて第1ナノ繊維層NL1を形成する。第2電界紡糸装置22は、長尺シート反転機構15aよりも後段に配置され、上向きノズルを用いて下方から長尺シートWの他方面に第2ナノ繊維を堆積させて第2ナノ繊維層NL2を形成する。
第2電界紡糸装置22は、前段に位置する第1電界紡糸装置20の上方に配置されている。
【0049】
以下、第1電界紡糸装置20の構成について詳しく説明する。
第1電界紡糸装置20は、図2に示すように、筐体100と、ノズルユニット110と、ポリマー溶液供給部130(図示せず。)と、コレクター150と、電源装置160と、補助ベルト装置170とを備える。第1電界紡糸装置20は、後述する複数の上向きノズル120の吐出口から第1ポリマー溶液をオーバーフローさせながら吐出して、第1ナノ繊維を電界紡糸する。
【0050】
筐体100は、導電体からなる。
ノズルユニット110は、複数の上向きノズル120を有する。
本発明のセパレーター製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、ノズルユニット110は、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさで、ブロック状の形状を有する。
【0051】
上向きノズル120は、図示しないポリマー溶液供給部130から供給される「第1ナノ繊維の原料である第1ポリマー溶液」を吐出口から吐出するノズルである。上向きノズル120は、第1ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する。上向きノズル120を構成する材料としては、導電体を用いることができ、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0052】
上向きノズル120は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。上向きノズル120の数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)とすることができる。
【0053】
コレクター150は、ノズルユニット110よりも上方に配置されている。コレクター150は導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材152を介して筐体100に取り付けられている。
電源装置160は、上向きノズル120と、コレクター150との間に高電圧を印加する。電源装置160の正極はコレクター150に接続され、電源装置160の負極は筐体100を介してノズルユニット110に接続されている。
【0054】
補助ベルト装置170は、長尺シートWの搬送速度に同期して回転する補助ベルト172と、補助ベルト172の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー174とを有する。5つの補助ベルト用ローラー174のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター150と長尺シートWとの間に補助ベルト172が配設されているため、長尺シートWは、正の高電圧が印加されているコレクター150に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0055】
第2電界紡糸装置22は、「第2ナノ繊維の原料である第2ポリマー溶液」を扱い、「第2ナノ繊維を電解紡糸する」こと以外は第1電界紡糸装置20と基本的に同様の構成を有するため、第1電界紡糸装置20の構成の説明をもって第2電界紡糸装置22の説明に代える。ただし、これは、第1電界紡糸装置と第2電界紡糸装置とが同様の構成を有する必要があることを示すものではない。本発明の範囲内において、第1電界紡糸装置と第2電界紡糸装置とが異なる構成を有してもよい。
【0056】
第1通気度計測装置30は、図1に示すように、第1電界紡糸装置20の後段に配置され、第1ナノ繊維層NL1が形成された長尺シートWの通気度を計測する。
第2通気度計測装置32は、第2電界紡糸装置22の後段に配置され、第1ナノ繊維層NL1及び第2ナノ繊維層NL2が形成された長尺シートWの通気度を計測する。
第1通気度計測装置30及び第2通気度計測装置32としては、一般的な通気度計測装置を用いることができる。第1通気度計測装置30及び第2通気度計測装置32は、それぞれ、計測結果を搬送速度制御装置50に送信する。
【0057】
速度差吸収装置40は、第1電界紡糸装置20と第2電界紡糸装置22との間に配置され、第1搬送速度と前記第2搬送速度との速度差を吸収する。速度差吸収装置30は、図3に示すように、互いの間隔を変更可能な複数の速度差吸収ローラー42を備える。
【0058】
ここで、図3を用いて速度差吸収装置40の動作を説明する。
まず、第1搬送速度と第2搬送速度とが同じ速さであるときには、図3(a)に示すように、速度差吸収ローラー42の間隔は一定のままである。
一方、第1搬送速度より第2搬送速度が速いときには、図3(b)に示すように、下方に位置する速度差吸収ローラー42上方に動き、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差を吸収する。
また、第1搬送速度より第2搬送速度が遅いときには、図3(c)に示すように、下方に位置する速度差吸収ローラー42が下方に動き、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差を吸収する。
【0059】
搬送速度制御装置50は、第1通気度計測装置30により計測された通気度に基づいて「長尺シートWが第1電界紡糸装置20を通過するときにおける当該長尺シートWの搬送速度である第1搬送速度」を制御し、第2通気度計測装置32により計測された通気度に基づいて「長尺シートWが第2電界紡糸装置22を通過するときにおける当該長尺シートWの搬送速度である第2搬送速度」を制御する。例えば、長時間の電界紡糸過程において通気度が大きくなる方向に紡糸条件が変動した場合には、搬送速度を遅くして単位面積当たりのナノ繊維の堆積量を増大させることにより通気度を小さくする。一方、長時間の電界紡糸過程において通気度が小さくなる方向に紡糸条件が変動した場合には、搬送速度を速くして単位面積当たりのナノ繊維の堆積量を低減させることにより通気度を大きくする。これを第1搬送速度と第2搬送速度とで独立に行う。
【0060】
紡糸条件変更装置60は、第1電界紡糸装置20の紡糸条件と、第2電界紡糸装置22の紡糸条件とをそれぞれ独立に変更可能である。紡糸条件変更装置60は、第1通気度計測装置30により計測された「第1ナノ繊維層NL1が形成された長尺シートWの通気度」に基づいて、第1電界紡糸装置20の紡糸条件(電圧、上向きノズルと長尺シートとの距離、ポリマー溶液の組成、紡糸区域の温度及び湿度等)を、第1搬送速度の変動が小さくなるように変更する。また、紡糸条件変更装置60は、第2通気度計測装置32により計測された「第1ナノ繊維層NL1及び第2ナノ繊維層NL2が形成された長尺シートWの通気度」に基づいて、第2電界紡糸装置22の紡糸条件を、第2搬送速度の変動が小さくなるように変更する。
【0061】
主制御装置70は、「搬送装置10、第1電界紡糸装置20、第1通気度計測装置30、速度差吸収装置40、第2電界紡糸装置22、第2通気度測定装置32、搬送速度制御装置50及び紡糸条件変更装置60」を制御する。
【0062】
2.実施形態1に係るセパレーター製造装置1を用いたセパレーターの製造方法
以下、実施形態1に係るセパレーター製造装置1を用いてセパレーターを製造する方法について説明する。
【0063】
図4は、実施形態1におけるセパレーターの製造方法を説明するための図である。図4(a)〜図4(d)は各工程図である。
【0064】
a)紡糸準備・長尺シートWの搬送
第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液を準備し、これらを第1電界紡糸装置20及び第2電界紡糸装置22のノズルブロック110へ供給する。続けて、長尺シートWを搬送装置10にセットし、長尺シートW(図4(a)参照。)を繰り出しローラー11から巻き取りローラー12に向けて搬送する。
【0065】
b)電界紡糸(1)
次に、第1搬送速度で長尺シートWを搬送しながら、第1電界紡糸装置20によって長尺シートWの一方面に第1ナノ繊維層NL1を形成する(図4(b)参照。)。
第1ナノ繊維層NL1が形成された長尺シートWの通気度は第1通気度計測装置30により計測され、搬送速度制御装置50は、それに基づいて第1搬送速度を制御する。また、紡糸条件変更装置60は、第1搬送速度の変動が小さくなるように第1電界紡糸装置20の紡糸条件を変更する。
【0066】
c)長尺シートWの反転
次に、長尺シート反転機構15a(第1反転ローラー16a及び第2反転ローラー16b)により、他方面が下側になるように長尺シートWの一方面の向きと他方面の向きとを反転させる(図4(c)参照。)。
【0067】
d)電界紡糸(2)
最後に、第1ナノ繊維層NL1を積層した長尺シートWを第2搬送速度で搬送しながら、第2電界紡糸装置22によって長尺シートWの他方面に第2ナノ繊維層NL2を形成する(図4(d)参照。)。
第1ナノ繊維層NL1及び第2ナノ繊維層NL2が形成された長尺シートWの通気度は第2通気度計測装置32により計測され、搬送速度制御装置50は、それに基づいて第2搬送速度を制御する。また、紡糸条件変更装置60は、第2搬送速度の変動が小さくなるように第2電界紡糸装置22の紡糸条件を変更する。
以上の方法により、セパレーターを製造することができる。
【0068】
以下に、実施形態1における紡糸条件を例示的に示す。
【0069】
第1ナノ繊維及び第2ナノ繊維の原料となるポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、シルク、セルロース、キトサンなどを用いることができる。
【0070】
第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液に用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、クロロホルム、アセトン、水、蟻酸、酢酸、シクロヘキサン、THFなどを用いることができる。複数種類の溶媒を混合して用いてもよい。ポリマー溶液には、導電性向上剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0071】
長尺シートWとしては、セパレーターとして用いることが可能な不織布、織物、編物、紙などを用いることができる。長尺シートWの厚さは、例えば3μm〜50μmのものを用いることができる。長尺シートWの長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。
【0072】
第1搬送速度及び第2搬送速度は、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。コレクター150とノズルブロック110との間に印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができ、50kV付近に設定することが好ましい。
【0073】
紡糸区域の温度は、例えば10℃〜40℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば20%〜60%に設定することができる。
【0074】
3.実施形態1に係るセパレーター製造装置1の効果
実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、上記した長尺シート反転機構15aを備えるため、電界紡糸装置(第1電界紡糸装置20)により長尺シートの一方面にナノ繊維層を形成した後、別の電界紡糸装置(第2電界紡糸装置22)に長尺シートを設置し直すことなく長尺シートの他方面にナノ繊維層を形成することが可能とり、基材層の両面(一方の面及び他方の面)にナノ繊維層が形成されたセパレーターを高い生産性で大量生産することが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、上記した長尺シート反転機構15aを備えるため、第1電界紡糸装置20及び第2電界紡糸装置22のいずれの場合も、従来のナノ繊維製造装置900の場合と同様に、複数の上向きノズルの吐出口からポリマー溶液を吐出してナノ繊維を電界紡糸することが可能となるため、下向きノズルを用いたセパレーター製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象を発生させることがない。
【0076】
従って、実施形態1に係るセパレーター製造装置1は、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置となる。
【0077】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、第2電界紡糸装置22は、第1電界紡糸装置20の上方に配置され、長尺シート反転機構15aは、第2電界紡糸装置22の高さ位置に合わせて、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWを反転させるため、セパレーター製造装置の設置面積をそれほど大きくすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0078】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、第1通気度計測装置30と、第2通気度計測装置32と、搬送速度制御装置50とを備えるため、第1通気度計測装置及び第2通気度計測装置により計測された通気度に基づいて第1搬送速度及び第2搬送速度を制御することが可能となるため、長時間の電界紡糸過程において紡糸条件が変動して通気度が変動したとしても、搬送速度を適切に制御して通気度の変動量を所定の範囲に収めることが可能となり、その結果、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層がそれぞれ均一な通気度を有するセパレーターを大量生産することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、第1電界紡糸装置20と第2電界紡糸装置22との間に配置され、第1搬送速度と第2搬送速度との速度差を吸収する速度差吸収装置40を備えるため、第1搬送速度と第2搬送速度とが異なる場合であっても、長尺シートの切れや弛みを防ぐことが可能となり、その結果、セパレーター製造装置を長時間連続して運転し続けることが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、速度差吸収装置40は、間隔を変更可能な速度差吸収ローラー42を備えるため、速度差吸収装置の間隔を変更することにより、第1搬送速度と第2搬送速度との差を吸収することが可能となる。
【0081】
また、実施形態1に係るセパレーター製造装置1によれば、第1電界紡糸装置20の紡糸条件と、第2電界紡糸装置22の紡糸条件とをそれぞれ独立に変更可能な紡糸条件変更装置60を備えるため、紡糸条件を独立に変更することにより、第1搬送速度と第2搬送速度との差が大きくならないようにすることが可能となる。その結果、セパレーター製造装置を一層長時間連続して運転し続けることが可能となる。
【0082】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係るセパレーター製造装置2の正面図である。
【0083】
実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、基本的には実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様の構成を有するが、電界紡糸装置の配置位置が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合とは異なる。また、これに伴って、搬送装置の構成並びに第1通気度計測装置及び第2通気度計測装置の配置も実施形態1に係るセパレーター製造装置1とは異なる。
【0084】
セパレーター製造装置2においては、図5に示すように、第2電界紡糸装置22は、後段に位置する第1電界紡糸装置20の下方に配置されている。また、搬送装置19の長尺シート反転機構15bは、第1反転ローラー16c及び第2反転ローラー16dを備え、第2電界紡糸装置22の高さ位置に合わせて、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWを反転させる。
【0085】
上記のように、実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、電界紡糸装置の配置位置が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合とは異なるが、長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構15bを備える搬送装置19と、上向きノズル120を用いて下方から一方面に第1ナノ繊維を堆積させて第1ナノ繊維層NL1を形成する第1電界紡糸装置20と、上向きノズルを用いて下方から他方面に第2ナノ繊維を堆積させて第2ナノ繊維層NL2を形成する第2電界紡糸装置22とを備えるため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と同様に、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置となる。
【0086】
また、実施形態2に係るセパレーター製造装置2によれば、第2電界紡糸装置22が第1電界紡糸装置20の下方に配置され、長尺シート反転機構15bは、第2電界紡糸装置22の高さ位置に合わせて、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWを反転させるため、このような構成とすることによっても、セパレーター製造装置の設置面積をそれほど大きくすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0087】
なお、実施形態2に係るセパレーター製造装置2は、電界紡糸装置の配置位置以外の点においては、実施形態1に係るセパレーター製造装置1と基本的に同様の構成を有するため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0088】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係るセパレーター製造装置3の正面図である。
【0089】
実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、基本的には実施形態1に係るセパレーター製造装置1と同様の構成を有するが、電界紡糸装置の数が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、図6に示すように、2台の第1電界紡糸装置20,21と、2台の第2電界紡糸装置22,23とを備える。なお、第1電界紡糸装置20と第1電界紡糸装置21とは同様の構成を有し、第2電界紡糸装置22と第2電界紡糸装置23とは同様の構成を有する。
【0090】
このように、実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、電界紡糸装置の数が実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合とは異なるが、長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構15bを備える搬送装置10と、上向きノズル120を用いて下方から一方面に第1ナノ繊維を堆積させて第1ナノ繊維層NL1を形成する第1電界紡糸装置20,21と、上向きノズルを用いて下方から他方面に第2ナノ繊維を堆積させて第2ナノ繊維層NL2を形成する第2電界紡糸装置22,23とを備えるため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1の場合と同様に、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターをドロップレット現象を発生させることなく高い生産性で大量生産することが可能なセパレーター製造装置となる。
【0091】
なお、実施形態3に係るセパレーター製造装置3は、電界紡糸装置の数以外の点においては、実施形態1に係るセパレーター製造装置1と基本的に同様の構成を有するため、実施形態1に係るセパレーター製造装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0092】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0093】
(1)上記各実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0094】
(2)上記各実施形態に係るセパレーター製造装置においては、通気度計測装置(第1通気度計測装置及び第2通気度計測装置)を備えるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、厚さ計測装置(第1厚さ計測装置及び第2厚さ計測装置)を備えるものであってもよい。この場合、搬送速度制御装置は、第1厚さ計測装置及び第2厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて第1搬送速度及び第2搬送速度を制御する。このような構成とすることにより、第1厚さ計測装置及び第2厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて第1搬送速度及び第2搬送速度を制御することが可能となるため、長時間の電界紡糸過程において紡糸条件が変動して厚さが変動したとしても、それに応じて搬送速度を適切に制御して厚さの変動量を所定の範囲に収めることが可能となり、その結果、第1ナノ繊維層及び第2ナノ繊維層がそれぞれ均一な厚さを有するセパレーターを大量生産することが可能となる。
【0095】
(3)上記実施形態3においては、電界紡糸装置20,21及び電界紡糸装置22,23の構成が同様であるセパレーター製造装置3を例にとって本発明のセパレーター製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。電界紡糸装置の構成がそれぞれ異なるセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0096】
(4)上記実施形態3においては、第1電界紡糸装置の台数と第2電界紡糸装置の台数とが同数(2台)のセパレーター製造装置3を例にとって本発明のセパレーター製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図7は、変形例1に係るセパレーター製造装置4の正面図である。例えば、図7に示すセパレーター製造装置4のように、第1電界紡糸装置の台数と第2電界紡糸装置の台数とが同数でないセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。なお、本発明のセパレーター製造装置は、図7に記載したものに限られず、第1電界紡糸装置を1台又は3台以上備えていてもよいし、第2電界紡糸装置を2台以上備えていてもよい。
【0097】
(5)上記各実施形態においては、第2電界紡糸装置22の高さ位置に合わせて、第1電界紡糸装置20からの長尺シートWを反転させる長尺シート反転機構を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、高さ位置を変更することなく長尺シートを反転させる長尺シート反転機構を用いてもよい。この場合、第2電界紡糸装置は第1電界紡糸装置と同じ高さ位置に配置されていることが好ましい。このような構成とすることにより、セパレーター製造装置の高さをそれほど高くすることなく、基材層の両面にナノ繊維層が形成された構造を有するセパレーターを製造することが可能となる。
【0098】
図8は、変形例2における長尺シート反転機構15cを説明するための図である。図9は、変形例3における長尺シート反転機構15dを説明するための図である。図8及び図9は、長尺シート反転機構の部分を上面から見た模式図である。
長尺シート反転機構15cは、図8に示すように、3本のねじりローラー16e,16f,16gを備え、長尺シートの搬送方向を変更することなく長尺シートをねじるように反転させるものである。また、長尺シート反転機構15dは、図9に示すように、1本のねじりローラー16hを備え、長尺シートの搬送方向を90度屈曲するように長尺シートをねじるように反転させるものである。以上のような長尺シート反転機構を用いてもよい。
【0099】
(6)本発明のセパレーター製造装置においては、ノズルユニットとして、ブロック状の形状を有するノズルブロックを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ノズルユニットとして、複数の上向きノズルがそれぞれ配設された複数の管からなるノズルユニットを用いてもよい。
【0100】
(7)上記各実施形態においては、電源装置160の正極がコレクター150に接続され、電源装置160の負極がノズルユニット110に接続された電界紡糸装置を用いて本発明のセパレーター製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電源装置の正極がノズルユニットに接続され、電源装置の負極がコレクターに接続された電界紡糸装置を備えるセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0101】
(8)上記各実施形態においては、1つの電界紡糸装置に1つのノズルユニットが配設されたセパレーター製造装置1を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの電界紡糸装置に2つ以上のノズルユニットが配設されたセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0102】
この場合、全てのノズルユニットでノズル配列ピッチを同一にすることもできるし、各ノズルユニットでノズル配列ピッチを異ならせることもできる。また、すべてのノズルユニットでノズルユニットの高さ位置を同一にすることもできるし、各ノズルユニットでノズルユニットの高さ位置を異ならせることもできる。
【符号の説明】
【0103】
1,2,3,4…セパレーター製造装置、10,19…搬送装置、11…繰り出しローラー、12…巻き取りローラー、13…テンションローラー、14…第1駆動ローラー、15a,15b,15c,15d…長尺シート反転機構、16a,16c…第1反転ローラー、16b,16d…第2反転ローラー、16e,16f,16g,16h…ねじりローラー、17…第2駆動ローラー、18…補助ローラー、20,21…第1電界紡糸装置、22,23…第2電界紡糸装置、30,32…通気度計測装置、40…速度差調整装置、42…速度差吸収ローラー、100…筐体、110…ノズルユニット、120…上向きノズル、150…コレクター、152…絶縁体、160…電源装置、170…補助ベルト装置、172…補助ベルト、174…補助ベルト用ローラー、NL1…第1ナノ繊維層、NL2…第2ナノ繊維層、W…長尺シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の一方面には第1ナノ繊維層が形成され、他方面には第2ナノ繊維層が形成されたセパレーターを製造するセパレーター製造装置であって、
前記基材層となる長尺シートを搬送する搬送機構と、前記長尺シートが搬送されていく途中で前記長尺シートの一方面の向きと他方面の向きとが反対になるように前記長尺シートを反転させる長尺シート反転機構とを備える搬送装置と、
前記長尺シート反転機構よりも前段に配置され、上向きノズルを用いて下方から前記一方面に第1ナノ繊維を堆積させて前記第1ナノ繊維層を形成する第1電界紡糸装置と、
前記長尺シート反転機構よりも後段に配置され、上向きノズルを用いて下方から前記他方面に第2ナノ繊維を堆積させて前記第2ナノ繊維層を形成する第2電界紡糸装置とを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセパレーター製造装置において、
前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置の上方に配置され、
前記長尺シート反転機構は、前記第2電界紡糸装置の高さ位置に合わせて、前記第1電界紡糸装置からの前記長尺シートを反転させることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセパレーター製造装置において、
前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置の下方に配置され、
前記長尺シート反転機構は、前記第2電界紡糸装置の高さ位置に合わせて、前記第1電界紡糸装置からの前記長尺シートを反転させることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載のセパレーター製造装置において、
前記第2電界紡糸装置は、前記第1電界紡糸装置と同じ高さ位置に配置され、
前記長尺シート反転機構は、高さ位置を変更することなく前記長尺シートを反転させることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセパレーター製造装置において、
前記第1電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの通気度を計測する第1通気度計測装置と、
前記第2電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層及び前記第2ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの通気度を計測する第2通気度計測装置と、
前記第1通気度計測装置により計測された通気度に基づいて「前記長尺シートが前記第1電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第1搬送速度」を制御し、前記第2通気度計測装置により計測された通気度に基づいて「前記長尺シートが前記第2電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第2搬送速度」を制御する搬送速度制御装置とを備えることを特徴とするセパレーター制御装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のセパレーター製造装置において、
前記第1電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの厚さを計測する第1厚さ計測装置と、
前記第2電界紡糸装置の後段に配置され、前記第1ナノ繊維層及び前記第2ナノ繊維層が形成された前記長尺シートの厚さを計測する第2厚さ計測装置と、
前記第1厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて「前記長尺シートが前記第1電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第1搬送速度」を制御し、前記第2厚さ計測装置により計測された厚さに基づいて「前記長尺シートが前記第2電界紡糸装置を通過するときにおける当該長尺シートの搬送速度である第2搬送速度」を制御する搬送速度制御装置とを備えることを特徴とするセパレーター制御装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のセパレーター製造装置において、
前記第1電界紡糸装置と前記第2電界紡糸装置との間に配置され、前記第1搬送速度と前記第2搬送速度との速度差を吸収する速度差吸収装置をさらに備え、
前記搬送装置は、前記第1搬送速度で前記長尺シートを搬送する第1駆動装置と、前記第2搬送速度で前記長尺シートを搬送する第2駆動装置とをさらに備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセパレーター製造装置において、
前記速度差吸収装置は、互いの間隔を変更可能な複数の速度差吸収ローラーを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項9】
請求項5〜8に記載のセパレーター製造装置において、
前記第1電界紡糸装置の紡糸条件と、前記第2電界紡糸装置の紡糸条件とをそれぞれ独立に変更可能な紡糸条件変更装置をさらに備えることを特徴とするセパレーター製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−164584(P2012−164584A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25512(P2011−25512)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】