説明

セパレータ及び該セパレータを備える燃料電池

【課題】 プレス加工によってガス流路溝を形成したセパレータであって、連絡流路を内部に形成し得る構成を提供する。
【解決手段】 セパレータ4を、燃料ガス流路溝22aを備えた陽極側ガスプレート20と、酸化剤ガス流路溝22bを備えた陰極側ガスプレート21と、該二枚のガスプレート20,21に挟持される中間プレート30とで構成する。そして、中間プレート30に、ガス流路溝22a,22bのプレス加工により形成される隆起部26を収容する枠孔31を形成すると共に、該枠孔31の周囲の通気孔11a〜11dと、各ガスプレート20,21のガス流路溝22a,22bの両端に形成されるガス通過口24a,24b,25a,25bとを連通させる連絡流路32を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータに関するものであり、特に、常温付近で作動する燃料電池に用いられるセパレータの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、基本的に、電解質膜を陽極と陰極の一組の電極で挟んで構成される膜電極接合体において燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば酸素)とを反応させて水を生成し、その際に生じる化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、クリーンで発電効率の高いシステムとして注目されている。
【0003】
燃料電池はその作動温度により用途が異なり、室温付近で作動するものは自動車や携帯電話等への利用が期待されている。室温付近で作動する燃料電池のほとんどは高分子イオン交換膜を電解質膜に用いたものであり、これらは固体高分子型燃料電池と呼ばれる。この固体高分子型燃料電池以外にも、リン酸塩ハイドロガラスゲル等の無機材料を電解質膜に用いた燃料電池が常温付近で作動するものとして知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一般的な固体高分子型燃料電池では、電解質膜として、パーフルオロスルホン酸系イオン交換膜が用いられる。そして、この電解質膜の両面に陽極と陰極を構成する一組のガス拡散電極を接合してなる膜電極接合体を板状のセパレータを介装して複数積層することによって、固体高分子型燃料電池の主体となるスタックが製造される(特許文献2参照)。
【0005】
セパレータは、その一面側を、一方の膜電極接合体の陽極側電極と対向させ、他面側を、他方の膜電極接合体の陰極側電極と対向させるものであり、陽極側電極と対向する面には陽極側電極に供給する燃料ガスを流す燃料ガス流路溝が形成され、陰極側電極と対向する面には陰極側電極に供給する酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路溝が形成される。また、セパレータの周辺部には、燃料ガスや酸化剤ガスをその厚み方向に通過可能とする複数の通気孔が形成されると共に、各通気孔と、対応するガス流路溝とを連通する連絡流路が設けられており、ガス供給用の通気孔を流れる燃料ガスや酸化剤ガスが連絡流路を介して各ガス流路溝へ供給され、反応済みのガスが別の連絡流路を介してガス排出用の通気孔から排出されるようになっている(特許文献2参照)。
【0006】
セパレータの材料としてはカーボンが主流であるが、ガス不透過性のカーボンは高価であるため、セパレータ材料として低廉な耐腐食性金属板材を用いたセパレータが提案されている。また、ガス流路溝の製造方法としては、切削加工やエッチングが主流であるが、かかる加工方法は複雑で加工費用が高いため、耐腐食性金属板によりセパレータを構成する場合には、加工が容易で量産に適したプレス加工によってガス流路溝を形成して、加工費用を抑えることも提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
ところで、固体高分子型燃料電池では、膜電極接合体を、2枚のセパレータによって挟持する形となるが、この際に、セパレータの周辺部を、膜電極接合体や膜電極接合体周囲のガスケットと密接させることにより、燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩・混合を防止している。ここで、セパレータが、その表面に上記連絡流路を溝状に露出させる構成であると、膜電極接合体を挟持した際に、連絡流路の露出部分において膜電極接合体やガスケットの押さえが効かず、当該部分において燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩や混合が生じやすいという問題がある。
【0008】
この問題に対して、金属性のセパレータでは、ガス流路溝が形成される二枚のガスプレートと、該二枚のガスプレートに挟持される中間プレートとで構成し、中間プレートに連絡流路を形成することにより、セパレータの内部に連絡流路を形成する構成が提案されている(特許文献4参照)。かかる構成によれば、セパレータの表面に連絡流路が露出しないため、セパレータの周辺部によって膜電極接合体やガスケットを斑なく押さえつけ、燃料ガスと酸化剤ガスの漏洩・混合を確実に防ぐことができる。
【特許文献1】特開2005−32481号公報
【特許文献2】特開2000−12048号公報
【特許文献3】特開2005−32578号公報
【特許文献4】特開平5−109415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献4に記載されるセパレータは、ガス流路溝を切削加工やエッチング加工によってガスプレートに形成するものであるためセパレータの加工費が高くつくという欠点がある。このため、かかるセパレータのガス流路溝をプレス加工によって形成することが求められていたが、プレス加工によってガス流路溝を形成した場合には、ガスプレートの反対面に隆起部が必然的に形成されるため、三枚のプレートを整一に接合し難いという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、プレス加工によってガス流路溝を形成し、且つ連絡流路を内部に好適に形成し得るセパレータ、及び該セパレータを備えた燃料電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質膜の両面に一組の電極を接合してなる膜電極接合体の間に介装される板状の燃料電池用セパレータにおいて、陽極側電極と対向する一面側に燃料ガス流路溝を備えた陽極側の金属製ガスプレートと、陰極側電極と対向する一面側に酸化剤ガス流路溝を備えた陰極側の金属製ガスプレートと、該二枚のガスプレートに挟持される中間プレートとからなり、また、各ガスプレートと中間プレートを貫通して、燃料ガスと酸化剤ガスをその厚み方向に夫々通過可能とする複数の通気孔を備えるものであって、各ガスプレートは、プレス加工によって、一面側で前記ガス流路溝が、中間プレートと対向する他面側で隆起部が夫々形成され、さらに、ガス流路溝の両端部に厚み方向に貫通するガス通過口が形成されたものであり、中間プレートは、両側のガスプレートに挟持された状態で各ガスプレートの隆起部を収容する枠孔と、該枠孔周囲に貫通する前記複数の通気孔と、各ガスプレートのガス通過口を所要の通気孔と連通させる連絡流路とを備えるものであることを特徴とするセパレータである。
【0012】
かかる構成にあっては、セパレータを、ガス流路溝が形成された両側のガスプレートと、該ガスプレートに挟持される中間プレートで構成し、中間プレートに連絡流路を形成することにより、セパレータの表面に連絡流路を形成することなく、各通気孔と対向するガス流路溝とのガス交換を可能とする。ここで、本発明では、両側のガスプレートのガス流路溝をプレス加工によって成形すると共に、中間プレートに枠孔を形成し、両ガスプレートに形成される隆起部を該枠孔に収容することによって、ガスプレートと中間プレートとを密に接合可能としたものである。すなわち、本発明によれば、セパレータを三枚のプレートで構成し、セパレータの内部に連絡流路を形成する構成にあっても、そのガス流路溝をプレス加工によって形成し、三枚のプレートを適切に接合可能となる。
【0013】
両側のガスプレートについては、ステンレス等の耐腐食性金属板により構成することが望まれるが、中間プレートについては、フッ素樹脂等の絶縁性樹脂板により構成することもできる。本発明の構成によれば、両側のガスプレートは、枠孔部分において、隆起部を対向させるため、両ガスプレートの隆起部を直接接触させたり、導電性充填剤等を隆起部相互の間に充填させることにより、中間プレートを介さずに両ガスプレートを電気的に接続できるからである。
【0014】
ガスプレートと中間プレートの接合方法は、特に限定されず、既知の接合方法により行うことができる。すなわち、接着剤を用いて接合させてもよいし、熱圧着によって接合させてもよい。また、ガスプレートと中間プレートの間には、ガス漏れ防止用のシール剤やガスケットを適宜介在させることが望ましい。本発明のセパレータは、かかるシール剤やガスケットを介在させたものを含む。
【0015】
ところで、セパレータを、2枚の金属製ガスプレートと、該ガスプレートに挟持される中間プレートとで別々に構成する場合には、2枚の金属製ガスプレートを低抵抗で電気的に接続しなければならない。このため、ガスプレート間に介在する中間プレートや接着剤、シール剤等に導電性材料を用いて、内部抵抗を抑えることが必要となる。これに対して、陽極側のガスプレートと陰極側のガスプレートは、単一の金属板によって形成され、各ガスプレートの外縁と連接する連結部を介して相互に連続すると共に、該連結部部分を折り返されることにより相互に対向し、両ガスプレートの間に中間プレートを挟持するものである構成が提案される。かかる構成にあっては、両側のガスプレートが連続する単一の金属板で形成されるため、両ガスプレートが直接的に接続されることとなる。従って、かかるセパレータでは、ガスプレート間に生じる接触抵抗が生ぜず、内部抵抗を最低限に抑えられる。また、かかる構成によれば、中間プレートや接着剤、シール剤等の導電性が、セパレータの内部抵抗に影響を与えないため、これらの構成材料として絶縁性樹脂等も好適に利用することができ、材料選択の自由度が向上することとなる。かかるセパレータの製造方法としては、2枚のガスプレートが連結部を介して連続されてなる金属板をプレス加工によって製造する工程と、その後に、連結部を折曲げ加工することによって該金属板を折り返して、両ガスプレートを相互に対向させると共に両ガスプレート間に中間プレートを挟み込む工程とからなるものが提案される。なお、連結部の折り返しは、通常の折曲げ加工によって簡単に行うことができる。また、折曲げ加工を容易にするため、連結部の折り返し部位に沿って溝やスリットを形成することも提案される。
【0016】
また、本発明の燃料電池は、前記セパレータを備える燃料電池である。かかる燃料電池によれば、燃料ガスや酸化剤ガスの漏洩や混合を防止できると共に、セパレータの材料費、加工費を抑えることができるため、出力ロスの少ない燃料電池を低コストで実現することができる。なお、かかる燃料電池は、具備するセパレータ全てが上記構成であるものに限定されず、セパレータの一部が上記構成であるものを含む。例えば、燃料電池スタックの端部を構成するセパレータは、膜電極接合体間に位置するセパレータとは異なる構成となるし、冷却水を面方向に通過させる流路を備える冷却用セパレータにあっても、本発明に係るセパレータとは別構成となる。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べたように、本発明は、ガス流路溝を備えた二枚の金属製ガスプレートと、該ガスプレートに挟持され、各ガスプレートのガス通過口を所要の通気孔と連通させる連絡流路を備える中間プレートとからなり、各ガスプレートは、プレス加工によって、一面側で前記ガス流路溝が、中間プレートと対向する他面側で隆起部が夫々形成されたものであり、中間プレートは、両側のガスプレートに挟持された状態で各ガスプレートの隆起部を収容する枠孔を備えるセパレータであるから、セパレータを三枚のプレートで構成し、セパレータの内部に連絡流路を形成しつつ、そのガス流路溝をプレス加工によって形成し、三枚のプレートを適切に接合可能となる。すなわち、かかるセパレータは、連絡流路がセパレータの内部に形成されて、セパレータの表面に露出しないため、セパレータの周辺部によって膜電極接合体やガスケットを斑なく押さえつけ、燃料ガスと酸化剤ガスの漏洩・混合を確実に防止できると共に、プレス加工により容易に製造可能であるため、製造コストが安く、量産性に富むといる利点を有する。
【0018】
上記構成にあって、セパレータを構成する陽極側のガスプレートと陰極側のガスプレートが、単一の金属板によって形成され、各ガスプレートの外縁と連接する連結部を介して相互に連続すると共に、該連結部部分を折り返されることにより相互に対向し、両ガスプレートの間に中間プレートを挟持するものである場合には、各ガスプレートが連結部を介して電気的に直接接続されるため、セパレータの内部抵抗を最小限に抑えることができる。また、中間プレートや接着剤、シール剤等の構成材料は、セパレータの両面間の導電性に影響しないため、接着性やシール性、耐久性等に優れた非導電性材料を用いることができる。
【0019】
また、上記セパレータを備える燃料電池は、セパレータの製造コストが低廉であり、且つ、セパレータと膜電極接合体の接合面からのガス漏れも生じにくいため、低廉で高機能なものとなる。さらに、燃料電池が、陽極側のガスプレートと陰極側のガスプレートが一枚の金属板によって形成されるセパレータを備えるものであれば、セパレータ内部の電気抵抗が最小限に抑えられるため出力効率の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
本実施例のセパレータ4は、図1〜5に示すように、正方形の薄板状をなし、その一面を膜電極接合体3の陽極側電極41と対向する陽極対向面15とし、他面を別の膜電極接合体3の陰極側電極42と対向する陰極対向面16とする。
【0021】
セパレータ4の陽極対向面15は、図2、4,5に示すように、その中央の矩形領域を、陽極側電極41と当接する電極当接領域17とする。この電極当接領域17の全域には二筋の燃料ガス流路溝22a,22aが形成される。この燃料ガス流路溝22aは、陽極側電極41に供給する燃料ガス及び反応済みの燃料ガスを流すためのものであり、電極当接領域17の一隅を始端とし、電極当接領域17の全域を蛇行して、電極当接領域17の対向する他隅を終端とする。そして、燃料ガス流路溝22aの始端には、供給用の燃料ガスが流入するための燃料ガス通過口24aが、終端には反応済みの燃料ガスが流出する燃料ガス通過口24bが夫々形成される。また、燃料ガス流路溝22a,22aの間に形成される縁部は、陽極側電極41と当接する集電部23を構成する。
【0022】
本実施例のセパレータ4では、図3〜5に示すように、陰極対向面16と陽極対向面15は同形状をなす。すなわち、陰極対向面16は、その中央の矩形領域を陰極側電極42と当接する電極当接領域17とし、該電極当接領域17に酸化剤ガスを陰極側電極に供給するための酸化剤ガス流路溝22bが形成される。この酸化剤ガス流路溝22bは、燃料ガス流路溝22aと同形をなし、その両端には酸化剤ガスが流入・流出する酸化剤ガス通過口25a,25bが形成される。なお、陽極対向面15と陰極対向面16の電極当接領域17,17は厚み方向に重なる位置に形成されるが、燃料ガス通過口24a,24bと酸化剤ガス通過口25a,25bは、厚み方向で重ならないように形成される。
【0023】
図1〜3に示すように、セパレータ4の周辺部には、燃料ガスと酸化剤ガスを厚み方向に通過可能とする四つの通気孔11a〜11dが貫通状に形成される。各通気孔は、燃料ガスを燃料ガス流路溝22aに供給するための燃料ガス供給用通気孔11a、反応済みの燃料ガスを燃料ガス流路溝22aから排出するための燃料ガス排出用通気孔11b、酸化剤ガスを酸化剤ガス流路溝22bへ供給するための酸化剤ガス供給用通気孔11c、そして酸化剤ガスを酸化剤ガス流路溝22bから排出するための酸化剤ガス排出用通気孔11dを形成するものである。ここで、燃料ガスを供給・排出するための通気孔11a,11bは燃料ガス流路溝22aの燃料ガス通過口24a,24bの近傍に夫々形成され、酸化剤ガスを通過させる通気孔11c,11dは酸化剤ガス流路溝22bの酸化剤ガス通過口25a,25bの近傍に夫々形成される。
【0024】
そして、セパレータ4の内部には、図2〜9に示すように、各通気孔11a〜11dと近傍のガス通過口24a,24b,25a,25bとを連通させる連絡流路32が夫々形成される。すなわち、本実施例のセパレータ4では、燃料ガスは、燃料ガス供給用通気孔11aから供給され、そこから連絡流路32を通って、燃料ガス通過口24aから燃料ガス流路溝22aに流入し、陽極側電極41に供給され得るようになっている。そして、電池反応によって陽極側電極41に生じた反応済みの燃料ガスは、燃料ガス通過口24bから流出して、連絡流路32を通って、燃料ガス排出用通気孔11bに排出されることとなる。また、同様にして、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給用通気孔11cから供給され、そこから連絡流路32を通って酸化剤ガス通過口25aから酸化剤ガス流路溝22bに流入し、陰極側電極42に供給され、反応済みの酸化剤ガスは、酸化剤ガス通過口25bから流出して、連絡流路32を通って酸化剤ガス排出用通気孔11dへ排出される得るようになっている。このように、本実施例のセパレータ4では、通気孔11a〜11dとガス流路溝22a,22bとを連通させる連絡流路32が内部に形成され、該連絡流路32は陽極対向面15にも陰極対向面16にも露出しない。また、セパレータ4の周辺部には、セパレータ4を膜電極接合体3と整一に積層するための円形の位置決め孔12,12が貫通状に形成される。
【0025】
本実施例のセパレータ4は、図10に示すように、陽極対向面15を形成する陽極側のガスプレート(陽極側ガスプレート)20と、陰極対向面16を形成する陰極側のガスプレート(陰極側ガスプレート)21と、該二枚のガスプレート20,21に挟持される中間プレート30とにより構成される。各プレート20,21,30は、同面積の正方形の金属板からなり、夫々の外縁を一致させるように積層される。また、各プレート20,21,30の周辺部には、上述の通気孔11a〜11dや位置決め孔12,12を形成する貫通孔が夫々形成される。
【0026】
陽極側ガスプレート20はステンレス板材を成形することによって製造される。図10,11に示すように、陽極側ガスプレート20の中央部には、陽極対向面15を形成する側に、燃料ガス流路溝22aを構成する溝状部がプレス加工によって形成される。また、陽極対向面15の反対面には、当該プレス加工によって突条状の隆起部26が形成される。通気孔11a〜11dやガス通過口24a,24b、位置決め孔12,12を形成する貫通孔は、打抜き加工により形成される。
【0027】
本実施例に係る陰極側ガスプレート21は、陽極側ガスプレート20と同形状のものを用いるものであり、材質、製造方法についても陽極側ガスプレートと同じである。このため、陰極側ガスプレート21についての詳細な説明は省略する。
【0028】
中間プレート30は、図10に示すように、ガスプレート20,21と同じ材質のステンレス板で構成される。この中間プレート30の中央部には、矩形の枠孔31が形成されている。両ガスプレート20,21と中間プレート30は、その隆起部26と枠孔31を対向するように当接し、該枠孔31に隆起部26を収容する。この枠孔31は、各ガスプレート20,21の電極当接領域17と重なるようになっており、そのガスプレート20,21と外縁を同じくするものであり、ガスプレート20,21との当接状態において、両ガスプレート20,21の隆起部26を枠孔31に収容することにより、中間プレート30の周辺部と、ガスプレート20,21の周辺部とを面接合可能とする。また、中間プレート30の周辺部の各所には、通気孔11a〜11dやガス通過口24a,24b、位置決め孔12,12を形成する貫通孔が形成される。そして、中間プレート30には、図10に示すように、周辺部に形成される各通気孔11a〜11dと枠孔31とを連通する連絡流路32が形成される。上述したように、かかる連絡流路32によって、各通気孔11a〜11dと、対応するガス通過口24a,24b,25a,25bとが連通されることとなり、通気孔11a〜11dとガス流路溝22a,22b間の適切なガス交換を可能とする。
【0029】
上記ガスプレート20,21及び中間プレート30は、接着剤(図示省略)を介して相互に接合することにより一体化し、セパレータ4を構成する。ここで、各プレート20,21,30間には、シール剤を充填することにより、通気孔11a〜11dや連絡流路32,ガス流路溝22a,22bからのガス漏れを確実に防止することが望ましい。また、接合の際には、導電性の接着剤やシール剤を使用し、プレート間の接触抵抗を軽減することが望ましい。なお、接着剤による接合以外にも、熱圧着法を用いて各プレート20,21,30を接合することも可能である。また、中間プレート30は金属板に限らず絶縁性樹脂等で構成することができる。かかる場合には、対向するガスプレート20,21の隆起部26,26間に導電性のシール剤等を充填し、ガスプレート20,21相互を、中間プレート30を介さずに接続すればよい。
【0030】
次に、上述のセパレータ4を用いた燃料電池1について説明する。
【0031】
本実施例の燃料電池1は固体高分子型燃料電池であり、膜電極接合体3とセパレータ4とを積層してなるスタック8を主体とする。スタック8は、図12に示すように、上下のエンドプレート9a,9bにより挟持され、ボルト60,60とナット61,61により締結される。また、各エンドプレート9a,9bとスタック8の間には、スタック8の側方に突出する導電性の集電板10,10が介装される。この集電板10とエンドプレート9a,9bとは、図示しないガスケットにより絶縁されており、集電板10の突出部に端子を接続することにより、スタック8で発電される電力を取り出し得るようになっている。
【0032】
また、図12中上方のエンドプレート9aには、燃料ガス導入口13aと燃料ガス排出口13bが、図12中下方のエンドプレート9bには、酸化剤ガス導入口13cと酸化剤ガス排出口13dが形成される。これらの導入口13a,13cと排出口13b,13dは、スタック8を貫通状に形成される通気孔11a〜11dとそれぞれ連通しており、各導入口13a,13cと排出口13b,13dに、図示しないガス供給排出装置から燃料ガスや酸化剤ガスが供給され、反応済みのガスが回収される。すなわち、燃料ガス(ここでは水素)は、燃料ガス導入口13aを介して燃料ガス供給用通気孔11aに供給されて、燃料ガス排出用通気孔11bの反応済み燃料ガスは燃料ガス排出口13bから回収される。同様に酸化剤ガス(ここでは酸素)は、酸化剤ガス導入口13cを介して酸化剤ガス供給用通気孔11cに供給され、酸化剤ガス排出用通気孔11dの反応済み酸化剤ガスは酸化剤ガス排出口13dから回収される。
【0033】
スタック8は、図13に示すように、ガスケット5により囲繞される膜電極接合体3と、上記セパレータ4とを交互に積層することにより構成される。膜電極接合体3は、電解質膜40の両面に陽極と陰極を構成する一組のガス拡散電極41,42をホットプレス等の手段により接合してなるものである。この膜電極接合体3は、セパレータ4の電極当接領域17と略同じ大きさをなし、陽極側電極41(図13中下側)をセパレータ4の陽極対向面15と、陰極側電極42(図13中上側)をセパレータ4の陰極対向面16と対向するように積層される。この膜電極接合体3は既存の固体高分子型燃料電池のものを好適に用い得る。例えば、電解質膜としては、パーフルオロスルホン酸系イオン交換膜を好適に用いることができる。また、ガス拡散電極としては、カーボンペーパーからなるガス拡散層と、白金を担持したカーボン粒子からなる触媒層とからなるものを用い得る。
【0034】
ガスケット5は、膜電極接合体3と略同じ厚みをなし、膜電極接合体3を内部に密嵌させ得る枠状薄片であり、絶縁性樹脂材により構成される。このガスケット5は、セパレータ4と同じ外縁形状をなしており、枠内に膜電極接合体3を密嵌させた状態で、その外縁をセパレータ4と一致させるようにして積層される。また、ガスケット5には、通気孔11a〜11d及び位置決め孔12を形成する貫通孔が複数形成されており、積層状態において各貫通孔をセパレータ4の貫通孔と積層方向に一致させる。なお、このガスケット5についても、既存の固体高分子型燃料電池の構成を好適に用い得るため詳細な説明は省略する。
【0035】
図14は、スタック8の燃料ガス及び酸化剤ガスの流れを示したものである。
燃料ガスは、エンドプレート9aの燃料ガス導入口13a(図12参照)から導入されて燃料ガス供給用通気孔11aを下方に流れる。そして、燃料ガス供給用通気孔11aと連通する連絡流路32を通って燃料ガス流路溝22aへと流入し、膜電極接合体3の陽極側電極(図14中下側)へと供給される。
【0036】
また、燃料ガスと同様にして、酸化剤ガスは、エンドプレート9bの酸化剤ガス導入口13c(図12参照)から導入されて酸化剤ガス供給用通気孔11cを上方に流れる。そして、酸化剤ガス供給用通気孔11cと連通する連絡流路32を介して、各セパレータ4の酸化剤ガス流路溝22bへ流入し、膜電極接合体3の陰極側電極(図中下側)へ供給されることとなる。
【0037】
このようにして、各膜電極接合体3の両面に燃料ガスと酸化剤ガスとが夫々供給されることにより膜電極接合体3で電池反応が生じ、その両面に電位差が生じることとなる。反応済みの燃料ガスは、燃料ガス流路溝22aから連絡流路32を介して燃料ガス排出用通気孔11bへと流出し、エンドプレート9aの燃料ガス排出口13b(図12参照)から回収されることとなる。同様にして、反応済みの酸化剤ガスや電池反応によって生じた生成水等は、酸化剤ガス排出用通気孔11dへと流出し、エンドプレート9bの酸化剤ガス排出口13dから回収されることとなる。
【0038】
このように本実施例では、セパレータ4の連絡流路32がセパレータ4の内部に形成され、連絡流路32がセパレータ4の陽極対向面15、陰極対向面16のいずれにも露出しないため、セパレータ4の周辺部をガスケット5と斑なく密接させることができ、セパレータ4とガスケット5との接合部からガスが漏洩するのを確実に防止できる。また、セパレータ4は、プレス加工という汎用の成形技術によってガス流路溝22a,22bが製造されるため、切削加工やエッチング加工等の複雑な加工を行うことを要せず、簡易な設備投資によって低コストで製造することができるといった利点もある。
【0039】
また、かかるセパレータ4を用いた燃料電池1は、セパレータの製造コストが低廉であり、また、セパレータ4と膜電極接合体3の接合部分から燃料ガスや酸化剤ガスが漏れる懸念が少ないため、製造コストが安く、且つ発電効率が高いという利点がある。
【0040】
次に、上記実施例のセパレータ4において、陽極側ガスプレートと陰極側ガスプレートを一枚の金属板により形成した変形例について説明する。なお、以下で説明するセパレータ50は、その大部分の構造が上記実施例のセパレータ4と同じであるため共通する構造については図中で同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
変形例のセパレータ50は、図15,16に示すように、上記実施例のセパレータ4と同様に、陽極対向面15を形成する陽極側ガスプレート52と、陰極対向面16を形成する陰極側ガスプレート53と、該二枚のガスプレート52,53に挟持される中間プレート30とにより構成される。ここで、中間プレート30は上記実施例と同じものであり、両ガスプレート52,53についても、その形状は実施例と同じである。
【0042】
ここで、本変形例にあっては、図16,17に示すように、陽極側ガスプレート52と陰極側ガスプレート53は一枚のガスプレート連結板51により構成される。両ガスプレート52,53は、夫々の左縁と連接する断面円弧状の連結部54を介して相互に連続し、対向している。
【0043】
ガスプレート連結板51は、各ガスプレート52,53が連結部54を介して一体形成されてなるものである。このガスプレート連結板51は、図18に示すように、矩形のステンレス平板のプレス加工により、まず、陽極側ガスプレート52と陰極側ガスプレート53とが連結部54を介して面一状となった平板として製造される。そして、図19に示すように、かかる平板状のガスプレート連結板51を、その連結部54部分を折り返すことによって各ガスプレート52,53を相互に対向させると共に、これと同時に、ガスプレート52,53間に中間プレート30を介装し、両ガスプレート52,53に挟持させることによって、セパレータ50が製造される。なお、連結部54の折り返しはプレス加工等によって簡単に行うことができる。本変形例では、図17に示すように、連結部54を円弧状に折り曲げているが、円弧状に限らず、連結部54の折り返し形状は任意である。また、連結部54を折曲げ易いように、事前に連結部54を肉薄にしたりスリットを形成したりしてもよい。
【0044】
このように、変形例のセパレータ50では、陽極側ガスプレート52と陰極側ガスプレート53とが、中間プレート30や接着剤を介することなく、連結部54を介して電気的に直接接続されることとなる。このため、両ガスプレート53,54間に接触抵抗が存在せず、燃料電池に組み込んだ際に内部抵抗を少なくできるといった利点がある。また、両側のガスプレート52,53が直接電気的に接続されるため、中間プレート30や接着剤に導電性材料を用いる必要がなく、これらの材料としてシール性に優れる非導電性材料を用いることもできる。
【0045】
尚、本発明のセパレータや燃料電池は、上述した実施例の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、実施例のセパレータは両面が対称形状をなしており、両側のガスプレートは同形状であるが、セパレータの両面の形状は適宜異ならせることが可能である。また、燃料電池には、スタック内に冷却水を通過させる流路を備えるものがあり、本発明の燃料電池についても、セパレータの各所に冷却水を通過させる流路を形成してもよい。
【0046】
また、本発明にかかる燃料電池は、スタックを構成するセパレータ全てに本発明に係るセパレータを用いる必要はなく、スタックの一部に従来構成のセパレータを含むものであってもよい。さらには、実施例の燃料電池1は、本発明を固体高分子型燃料電池に適用したものであるが、本発明は、電解質膜にリン酸塩ハイドロゲルを用いた燃料電池にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】セパレータ4の斜視図である。
【図2】セパレータ4の陽極対向面15を示す平面図である。
【図3】セパレータ4の陰極対向面16を示す平面図である。
【図4】図2中のA‐A断面図である。
【図5】図4中のD部分の拡大図である。
【図6】図2中のB‐B断面図である。
【図7】図6中のE部分の拡大図である。
【図8】図2中のC‐C断面図である。
【図9】図8中のF部分の拡大図である。
【図10】セパレータ4の分解斜視図である。
【図11】陽極側ガスプレート20の縦断側面図である。
【図12】燃料電池1の一側面図である。
【図13】スタック8の分解斜視図である。
【図14】スタック8内を燃料ガス及び酸化剤ガスが流れる態様を示す説明図である。
【図15】変形例のセパレータ50の斜視図である。
【図16】変形例のセパレータ50の縦断側面図である。
【図17】図16中のG部分の拡大図である。
【図18】組付前のガスプレート連結板51を示す平面図である。
【図19】ガスプレート連結板51と中間プレート30の組付方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 燃料電池
3 膜電極接合体
4,50 セパレータ
5 ガスケット
11a〜11d 通気孔
20,52 陽極側ガスプレート
21,53 陰極側ガスプレート
22a 燃料ガス流路溝
22b 酸化剤ガス流路溝
24a,24b 燃料ガス通過口
25a,25b 酸化剤ガス通過口
26 隆起部
30 中間プレート
31 枠孔
32 連絡流路
40 電解質膜
41 陽極側電極
42 陰極側電極
51 ガスプレート連結板
54 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に一組の電極を接合してなる膜電極接合体の間に介装される板状の燃料電池用セパレータにおいて、
陽極側電極と対向する一面側に燃料ガス流路溝を備えた陽極側の金属製ガスプレートと、陰極側電極と対向する一面側に酸化剤ガス流路溝を備えた陰極側の金属製ガスプレートと、該二枚のガスプレートに挟持される中間プレートとからなり、また、各ガスプレートと中間プレートを貫通して、燃料ガスと酸化剤ガスをその厚み方向に夫々通過可能とする複数の通気孔を備えるものであって、
各ガスプレートは、プレス加工によって、一面側で前記ガス流路溝が、中間プレートと対向する他面側で隆起部が夫々形成され、さらに、ガス流路溝の両端部に厚み方向に貫通するガス通過口が形成されたものであり、
中間プレートは、両側のガスプレートに挟持された状態で各ガスプレートの隆起部を収容する枠孔と、該枠孔周囲に貫通する前記複数の通気孔と、各ガスプレートのガス通過口を所要の通気孔と連通させる連絡流路とを備えるものであることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
陽極側のガスプレートと陰極側のガスプレートは、単一の金属板によって形成され、各ガスプレートの外縁と連接する連結部を介して相互に連続すると共に、該連結部部分を折り返されることにより相互に対向し、両ガスプレートの間に中間プレートを挟持するものであることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセパレータを備える燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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