説明

セメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムおよびそれを用いた吹付け施工方法

【課題】粘性の高いポリマーを含有したドライセメントモルタルを安定した品質で連続的に練り混ぜ吹付け施工が行える連続練混ぜ吹付け施工システムと吹付け施工方法を提供する。
【解決手段】内部に横向きのスクリュー軸が収容され、そのスクリュー軸が回転することで投入された再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを排出口に導くようにした貯蔵ホッパーと、連続的に送り出されるドライセメントモルタルに連続的に水/ドライセメントモルタル比10〜15質量%となるように加圧された水を供給することでウェットセメントモルタルを製造できる連続練り混ぜシステムで連続的に練り混ぜられたウェットセメントモルタルを、ポンプ圧送し、圧送されたウェットセメントモルタルと圧縮空気を合流混合させて吹き付けて施工する、セメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムと吹付け施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建築分野において、ウェットセメントモルタルを吹き付けて施工する際のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムおよびそれを用いた吹付け施工方法に関する。特に補修や補強分野に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
セメントモルタルの練混ぜは、得られるウェットセメントモルタルの一定の品質を確保する上で重要な操作であり、練混ぜ時間、練り混ぜる水の量や、セメントと骨材の割合、混和している各種セメント混和剤の種類や割合などの影響により、品質が変動する。そのため、通常、事前練りなどの試験を行って適切な練混ぜ装置や練混ぜ時間などを選定あるいは把握した上でウェットセメントモルタルの製造が行われている。
セメントモルタルの練混ぜ機は、羽根が回転するパン型ミキサー、回転軸が2本ある二軸ミキサーなどのバッチ式のミキサー、水とドライセメントモルタルを連続的に供給し攪拌部を通過させることで連続的に練り混ぜる連続練りミキサーなどがある。バッチ式のミキサーは、練り混ぜる材料を予め所定量計量してからミキサーに材料を投入し練り混ぜる方法であり計量作業が必要であり、連続練りミキサーは、バッチ式のような計量作業を必要としないことが特徴であり省力化された練混ぜ方法である。
また、バッチ式は、計量して材料を練り混ぜるため、品質変動が少ないウェットセメントモルタルが製造できるのに対し、連続練り混ぜ方式は、練り混ぜる時間が極端に短いため得られるウェットセメントモルタルの品質変動が大きいという課題がある。さらに、粘性の高い場合や硬いウェットセメントモルタルの練混ぜは困難という課題もあった。
特許文献1は、低フローのモルタルを連続的に製造できる連続モルタルミキサーに関するもので、トンネル支保用のロックボルト定着材を製造するミキサーについて記載してある。
【特許文献1】特開平08−090548
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
補修および補強分野では、コンクリート構造物の劣化部を除去し新たに耐久性に優れた補修材料で復旧する断面修復工事が行われている。このような断面修復工事では、特に大きな修復断面を有する場合は施工スピードが速い吹付け工法によって行われるケースが多く、通常、バッチ式ミキサーにドライセメントモルタルを解袋投入し、水、ポリマー、その他各種添加剤を計量して投入し、練り混ぜてウェットセメントモルタルを製造し、ポンプ圧送することで先端のノズル部位で圧縮空気と合流混合させて吹き付けるのが一般的である。しかしながら、このような方法では、水、ポリマー、各種添加剤のバッチ毎の計量が必要であり作業が煩雑となりやすく、ドライセメントモルタル解袋時に粉塵が多量に発生することで作業環境の悪化や周辺環境へ悪影響を及ぼすなどの課題があった。
そこで、本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、粘性の高いポリマーを含有したドライセメントモルタルを安定した品質で連続的に練り混ぜ吹付け施工が行える連続練混ぜ吹付け施工システムおよびそれを用いた吹付け施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、(1)内部に横向きのスクリュー軸が収容され、そのスクリュー軸が回転することで投入された再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを排出口に導くようにした貯蔵ホッパーと、連続的に送り出されるドライセメントモルタルに連続的に水/ドライセメントモルタル比10〜15質量%となるように加圧された水を供給することでウェットセメントモルタルを製造できる横向きのスクリュー軸が収容された円筒状の攪拌部を有する連続練り混ぜシステムで連続的に練り混ぜられたウェットセメントモルタルを、ポンプ圧送し、圧送されたウェットセメントモルタルと圧縮空気を合流混合させて吹き付けて施工する、セメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(2)再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを貯蔵する貯蔵タンクを別途設け、その貯蔵タンクと貯蔵ホッパーを金属製管やフレキシブルホースで接続し、貯蔵タンクに投入したドライセメントモルタルを圧縮空気で空気輸送するシステムを組み合わせることを特徴とする(1)のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(3)貯蔵タンクからドライセメントモルタルを空気輸送するときに、貯蔵ホッパー位置での粉塵発生量が6mg/m以下となるように密閉構造とする(2)のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(4)連続練混ぜシステムを用いて製造されたウェットセメントモルタルのフローがバッチ式ミキサーで4分間練混ぜたウェットセメントモルタルのフローに対して6%以内の変動である(1)〜(3)のうちのセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(5)連続練り混ぜシステムで練り混ぜたモルタルの30分後のフロー変化量がバッチ式で練り混ぜたモルタルの30分後のフロー変化量に対し5mm以内の変動である(1)〜(3)のうちのセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(6)ウェットセメントモルタルを圧送するポンプがスネークポンプまたはスクイズポンプである(1)〜(5)のうちのセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム、(7)(1)〜(6)のうちのセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムを用いる吹付け施工方法、である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムを用いることにより、粘性の高いポリマーを含有したドライセメントモルタルを安定した品質で連続的に練り混ぜることが可能となる。さらに、材料の計量が省略でき、システムを閉鎖系とすることで粉塵発生量を抑えられるなどの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明は、水を計量せずにポリマーを含有したウェットセメントモルタルを安定的な品質で連続的に製造し、その製造されたウェットセメントモルタルを吹き付けるシステムである。また、別途貯蔵ホッパーを設けることで、そこからドライセメントモルタルを空気輸送し連続練混ぜシステムに装備した貯蔵ホッパーを閉鎖系とすることで粉塵発生も少ない環境にやさしいシステムである。
【0008】
本発明の横向きのスクリュー軸が収容された円筒状の攪拌部とは、連続的に送り出される再乳化型粉末ポリマーを含有したドライセメントモルタルに連続的に水を供給することで連続的にウェットセメントモルタルを製造できるものである。貯蔵ホッパーから送りだされるドライセメントモルタルに水を添加してウェットセメントモルタルを製造する部分である。円筒状の攪拌部は、内部に攪拌羽根が装備されており、貯蔵ホッパーのスクリュー軸の回転運動が伝達されるように接続されている。攪拌羽根の回転数は100〜400rpmが好ましく200〜300rpmがより好ましい。100rpm未満では練り混ぜ効率が悪く、400rpmを超えるとモルタルが加熱されフローダウンが早くなる傾向にある。
【0009】
本発明の貯蔵ホッパーとは、内部に横向きのスクリュー軸が収容され、そのスクリュー軸が回転することで投入された再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを排出口に導き、連続的に練り混ぜるために攪拌部に材料を送り込むためのものである。ホッパーの形状および容量は、特に限定するものではないが、あらゆる補修および補強箇所への対応が可能とするため、容量としては30〜200リットル程度のものが好ましい。形状としては、貯蔵ホッパー底部にスクリュー軸を装備するため、ドライセメントモルタルが振動や衝撃を与えなくても自然にスクリューによって送り出されるように傾斜を付けた形状のものが好ましい。この貯蔵ホッパーを閉鎖系にする場合は、材料投入口全体に空気輸送されてくるドライセメントモルタルが貯蔵できるように配管口と圧縮空気のみが排出できるようにフィルターを装備したカバーを取り付ける。このカバーの固定は、簡単に取り外しができ粉塵が漏洩しないように、カバーと貯蔵ホッパー接触部にゴムパッキンを介して固定すればよい。このときに、粉塵発生量が6mg/m以下となるような密閉構造になることが好ましい。
【0010】
水の供給位置は、ドライセメントモルタルの出口から0.5〜1.5mが好ましく、0.8〜1.2mがより好ましい。0.5m未満であると攪拌効率が悪く、1.5mを超えても攪拌効率の向上が認められない。供給する水量は、予めドライセメントモルタルのみの送り量を測定しておくことで設定できる。水は流量計を装備した管を供給口に接続することで供給量を計測でき、微調整はニードルバルブなどの開閉具合などでできる。供給される水はある一定の水圧が掛かった状態で供給され、水圧は0.2MPa以上であればよい。加圧されていない水では安定的な供給は困難である。
【0011】
本発明の連続練り混ぜシステムで連続的に練り混ぜられたウェットセメントモルタルは、モルタルポンプにより圧送される。ウェットセメントモルタルは一端ホッパーに受けてスクイズポンプやスネークポンプで圧送する。圧送距離は特に限定するものではないが、内径40mmのフレキシブルホースであれば50m以下が好ましい。圧送したウェットセメントモルタルは、ノズルから吹き飛ばされる手前で圧縮空気を挿入する。
【0012】
本発明の再乳化型粉末ポリマーを含有するセメントモルタルとは、一般的に市販されている再乳化型粉末ポリマーが使用可能である。本発明の再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルに対する水の量は、水/ドライセメントモルタル比で10〜15質量%が好ましい。10質量%より小さいと、練り混ぜが困難となる場合があり、15%を超えると、ウェットセメントモルタルが軟らかくなりすぎる可能性がある。モルタルの砂/セメント比は、通常、1.6以上であり、1.6未満であると吹き付けて硬化したモルタルにクラックが入りやすくなる。また、4.0を超えると練り混ぜによる安定した流動性の確保が困難な場合がある。
【0013】
本発明の連続練混ぜシステムを用いて製造されたウェットセメントモルタルは、バッチ式で練り混ぜた場合のフローに対して変動が6%以内となることが特徴である。変動の確認方法は、所定の配合のドライセメントモルタルをパン型ミキサー(バッチ式)で4分間練混ぜてウェットセメントモルタルとし、直後のフローを測定し、さらに本発明のシステムを用いて同配合の練り混ぜたウェットセメントモルタルの練り混ぜ直後のフローを測定することにより、フローの変動を確認する。
本発明の連続練混ぜシステムを用いて製造されたウェットセメントモルタルはバッチ式で練り混ぜた場合の30分後のフロー変化量に対し5mm以内の変動であることが特徴である。変動の確認方法は、所定の練り混ぜ配合でパン型ミキサー(バッチ式)を用いて4分間ウェットセメントモルタルを練混ぜて、練混ぜ直後および30分経過後のフローを測定し、同配合において、本発明のシステムを用いて練り混ぜたときの直後および30分経過後のフローを測定し、そのときの両者のフロー変化量が5mm以内に収まることが本発明の条件である。
【0014】
本発明における吹付け施工は、例えば、図1に示すように、貯蔵ホッパー(5)に再乳化型粉末ポリマーを含有したドライセメントモルタルを投入し、スクリューフィーダー(6)を作動させ円筒状攪拌部(7)にドライセメントモルタルを連続的に供給し、水を連続的に供給する((3)フローメーター、(4)水供給配管)ことで連続的に練り混ぜる。水を供給する前にドライセメントモルタルのみの所定時間あたりの排出量を測定しておけば、必要な水の供給量を求めることが可能である。排出されてくる練り混ぜられたウェットセメントモルタル((1)ウエットモルタルの排出口、(2)攪拌羽根)は、適切なホッパーに受けて、スクイズポンプでホッパー内のウェットセメントモルタルを耐圧フレキシブルホースで圧送し、先端に接続した吹付けノズル部に圧縮空気を導入し圧送されてくるウェットセメントモルタルと合流混合し吹き飛ばすことで施工する。
耐圧フレキシブルホースの長さで十分施工できる範囲であれば定置して吹き付ければよい。移動しながら施工する場合は、台車や荷台のあるトラックにシステムを載せて吹き付ければよい。また、貯蔵ホッパーへ解体投入をせずに、より粉塵発生の少ないクリーンな作業環境で吹付けを実施したい場合は、ドライセメントモルタルの貯蔵タンクを吹付け作業場所と離れた箇所に設置し、貯蔵ホッパーに、ドライモルタルの貯蔵タンクから空気輸送して貯蔵ホッパーに供給できるようにした配管口と圧縮空気のみが排出できるようにフィルターを装備したカバーを取り付けることで解体投入時に発生する粉塵を少なくすることが可能となる。貯蔵タンクへのドライセメントモルタルの供給は、袋、タンクローリー、フレコンバックなどで実施できる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例にて詳細に説明する。
【0016】
「実施例1」
表1に示す配合の再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを用いて、図1に示す本発明の連続練混ぜシステム、市販の連続練り式ミキサー、バッチ式ミキサーでウェットセメントモルタルを製造し、その物性を測定した。なお、材料は解袋投入した。結果を表1に示す。
【0017】
(使用材料)
再乳化型粉末ポリマー:エロテックス社製、アクリル酸エステル系再乳化粉末ポリマー、商品名AP200
ドライセメントモルタル:砂/セメント質量比2.0、砂は乾燥石灰砂、セメントは普通ポルトランドセメント
流動化剤:日本シーカ社製、メチロールメラミン系流動化剤、商品名シーカメント
ドライモルタルの製造:セメント100質量部に対し、砂200質量部、再乳化型粉末ポリマー5質量部、流動化剤0.1質量部をナウターミキサーで混合した。
【0018】
(使用システム)
本発明の連続練混ぜシステム:図1に示す攪拌羽根(7)の回転数280rpm、水供給口(4)と排出口(1)の距離1m、供給水量はドライセメントモルタルの1分あたりの排出量を予め計測し、それに対して表1に示す割合となるように流量計を見ながらバルブ調整した。
市販の連続練り式ミキサー:攪拌羽根の回転数150rpm、水供給口と排出口の距離2.0m、供給水量はドライセメントモルタルの1分あたりの排出量を予め計測し、それに対して表1に示す割合となるように流量計を見ながらバルブ調整した。
市販のバッチ式ミキサー:回転数45rpmで回転する羽根を有する通常のパン型ミキサーを用いて練り混ぜた。ドライセメントモルタルの練り混ぜ量は50Kg、水は表1に示す割合で加え、4分間練り混ぜた。
【0019】
(試験方法)
フロー:JIS R 5201に準拠した。
変動率:各練り混ぜ方式によりウェットセメントモルタルを製造したときのフローを測定し、バッチ式ミキサーで製造したウェットセメントモルタルの直後のフロー値に対するフローの値の割合。
変動率(%)=[(バッチ式のフロー値−連続練混ぜシステムのフロー値)/バッチ式の値]×100
変動率の値が+の場合はバッチ式と比べ本発明システムあるいは連続練混ぜシステムのフローは小さく、変動率の値が−の場合はバッチ式と比べ本発明システムあるいは連続練混ぜシステムのフローは大きく、変動率の値がゼロの場合はバッチ式と同じフローである。
【0020】
【表1】

【0021】
表1より、本発明の連続練混ぜシステムで製造したウェットセメントモルタルは、フローの変動率が小さく安定した品質であることが分かる。
【0022】
「実施例2」
フロー変化量を測定しバッチ式の場合との変動を求めた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0023】
(試験方法)
フロー変化量=(練り混ぜ直後のフロー)−(30分経過後のフロー)
変動=(バッチ式ミキサーでのフロー変化量)−(連続練りでのフロー変化量)
変動が+の場合はバッチ式と比べフローダウンが小さく、変動が−の場合はバッチ式と比べフローダウンが大きく、変動がゼロの場合はバッチ式とフローダウンが同じである。
連続練りのフロー変化量は、バッチ式のフロー変化量に近づくほどバッチ式と練り混ぜ効率は同じになるので変動差が小さくなるほど好ましい。バッチ式に比べフローダウンが大きい場合は−の値、小さい場合は+の値となる。
【0024】
【表2】

【0025】
表2より、本発明の連続練混ぜシステムで製造したウェットセメントモルタルは、バッチ式で練り混ぜた場合のフロー変化量と同等の練混ぜが行われており、安定した品質であることが分かる。
【0026】
「実施例3」
別途ドライセメントモルタルの貯蔵タンクを設け、連続練混ぜシステムに装備する貯蔵ホッパーまで空気輸送しながら、ウェットセメントモルタルを製造しているときの連続練混ぜシステムに装備する貯蔵ホッパー部の粉塵発生量について環境条件を変えて測定したこと以外は実施例1と同様に行った。練り混ぜ時の配合は実施例1の実験No.1-13とした。なお、材料の供給は、空気輸送システムを装備せずに、貯蔵ホッパーに解袋投入した場合の粉塵発生量も測定した。その結果を表3に示す。
【0027】
(環境条件)
環境条件1:内空断面6mの模擬トンネル内(長さ20m、片側のみ開放)
環境条件2:内空断面3.2mのボックスカルバート内(長さ5.4m、両端開放)
環境条件3:屋外環境
環境条件4:防音シートで全面覆われた空間(5m×12m×高さ1.8m)
【0028】
(試験方法)
粉塵発生量:JSCE−F 564−2005に準拠し、デジタル粉塵濃度計にて測定した。測定時間は10分間。
【0029】
【表3】

【0030】
表3より、本発明の連続練混ぜシステムでウェットセメントモルタルを製造すると粉塵発生量が少ないことが分かる。
【0031】
「実施例4」
実施例1の実験No.1-13の配合で実施例1と同様に連続練混ぜシステムによりウェットセメントモルタルを製造し、スクイズポンプを用いてモルタルを圧送し吹付けを実施した。なお、材料の供給は実施例3と同様に空気輸送と解袋投入で行った。その結果を表4に示す。
【0032】
(使用機器)
スクイズポンプ:岡三機工社製OKG−35E型、消費電力3.7KW、電源200V
圧送ホース:内径1.5インチの耐圧ホース、ホース長20m
吹付けノズル:友定建機社製TPG−40型
コンプレッサー:消費電力5.5KWの電動コンプレッサー
圧縮空気ホース:内径12mm、ホース長20m
【0033】
(試験方法)
圧縮強度:縦30cm×横30cm×厚さ15cmの箱型枠に吹き付けて、3日後にφ55mmのコアドリルで抜き取り、φ55×110mmの円柱に成形した。養生方法は、温度20℃、相対湿度80%で材齢28日まで行った。測定数は5本とした。測定はJIS A 1108に準拠した。
中性化抵抗性:供試体の作製は圧縮強度と同じ箱型枠に採取し、3日後に縦10cm×横10cm×高さ10cmの角柱に成形し、28日間、20℃、相対湿度80%で養生したものについて促進中性化試験を行った。促進条件はJIS A 1171に準拠した。中性化深さはフェノールフタレイン法により測定した。
塩化物イオン浸透抵抗性:中性化抵抗性と同様に供試体を作製・養生し、擬似海水中に28日間浸漬することで塩化物イオン浸透抵抗性試験を行った。試験方法はJIS A 1171に準拠した。
【0034】
【表4】

【0035】
表4より、本発明の連続練混ぜシステムでウェットセメントモルタルを製造すると粉塵発生量が少なく、硬化モルタルの品質(圧縮強度、中性化深さ、塩化物イオン浸透深さ)が優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムを用いることにより、粘性の高いポリマーを含有したドライセメントモルタルを安定した品質で連続的に練り混ぜることが可能となる。さらに、材料の計量が省略でき、システムを閉鎖系とすることで粉塵発生量を抑えられるなどの利点がある。そのため、コンクリート構造物の補修や補強などの土木・建築分野で幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の連続練混ぜシステムの例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
(1):ウェットモルタル排出口
(2):攪拌羽根
(3):フローメーター
(4):水供給配管
(5):貯蔵ホッパー
(6):スクリューフィーダー
(7):円筒状攪拌部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に横向きのスクリュー軸が収容され、そのスクリュー軸が回転することで投入された再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを排出口に導くようにした貯蔵ホッパーと、連続的に送り出されるドライセメントモルタルに連続的に水/ドライセメントモルタル比10〜15質量%となるように加圧された水を供給することでウェットセメントモルタルを製造できる横向きのスクリュー軸が収容された円筒状の攪拌部を有する連続練り混ぜシステムで連続的に練り混ぜられたウェットセメントモルタルを、ポンプ圧送し、圧送されたウェットセメントモルタルと圧縮空気を合流混合させて吹き付けて施工する、セメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項2】
再乳化型粉末ポリマーを含有するドライセメントモルタルを貯蔵する貯蔵タンクを別途設け、その貯蔵タンクと貯蔵ホッパーを金属製管やフレキシブルホースで接続し、貯蔵タンクに投入したドライセメントモルタルを圧縮空気で空気輸送するシステムを組み合わせることを特徴とする請求項1記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項3】
貯蔵タンクからドライセメントモルタルを空気輸送するときに、貯蔵ホッパー位置での粉塵発生量が6mg/m以下となるように密閉構造とすることを特徴とする請求項2記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項4】
連続練混ぜシステムを用いて製造されたウェットセメントモルタルのフローがバッチ式ミキサーで4分間練混ぜたウェットセメントモルタルのフローに対して6%以内の変動であることを特徴とする請求項1〜3のうちの1項記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項5】
連続練り混ぜシステムで練り混ぜたモルタルの30分後のフロー変化量がバッチ式で練り混ぜたモルタルの30分後のフロー変化量に対し5mm以内の変動であることを特徴とする請求項1〜3のうちの1項記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項6】
ウェットセメントモルタルを圧送するポンプがスネークポンプまたはスクイズポンプであることを特徴とする請求項1〜5のうち1項記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システム。
【請求項7】
請求項1〜6のうちの1項記載のセメントモルタルの連続練混ぜ吹付け施工システムを用いる吹付け施工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−245596(P2007−245596A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73644(P2006−73644)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】