セメントレストリクタ
【課題】骨の内部に固定した障害物を形成するためのセメントレストリクタ(セメント制限具)を提供する。
【解決手段】セメントレストリクタ24は、選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備える。前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブ、又は膨脹可能体をさらに備えたキットとしても良い。
【解決手段】セメントレストリクタ24は、選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備える。前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブ、又は膨脹可能体をさらに備えたキットとしても良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節形成術に用いられる装置に係り、特に、骨の中でセメントの流入に対して制限または閉塞状態を生じさせる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節を置換するような関節形成術を行う場合は、大腿骨の骨頭部と骨首部を取り除き、次いで大腿骨の骨髄管の穴ぐりした箇所に人工の股関節ステムを埋め込まねばならない。股関節形成術の中には、骨髄管内で股関節ステムを固定するため、骨セメントを用いなければならないものがある。このセメントを使う場合は、セメントが制御できない深さまで、また制御できない量が骨髄管に浸潤するのは一般に好ましくない。そこで、股関節形成術においては、セメントの流れを制限あるいは阻むため、骨髄管の中に障害物を設ける工程を設ける。
【0003】
ところで、障害物は、一部だけを個化または硬化させたボール状のセメントを骨髄管に挿入し、骨髄管の壁との摩擦によって密着させただけにすぎないことも少なくない。このような間に合わせの障害物は、このセメントボールが骨髄管内に十分深く挿入されない場合は、股関節ステムの遠位端によって容易に外れてしまう。さらに、このセメントボールは、股関節ステムを定位置に結合させるため加圧したセメントを骨髄管に注いだときに、容易に動く。もしセメントボールが壊れたり、峡部(isthmus)として知られる大腿骨の狭隘な中央部に入り込んだりすると、加圧したセメントは、適切に骨に浸潤せず、セメントにエアポケットや孔が生ずることになる。このような不十分なセメントの充填・個化により、骨と股関節ステムのインターロック式の係合が弱くなり、またひび割れを生じやすくなる。また、機械的なインターロックの弱さや、セメントの欠陥があれば、股関節ステムが緩くなる。そして、このような好ましくない事態が発生すると、関節を、修復(再建)という手順で置換しなければならなくなることも生ずる。
【0004】
「長い」股関節ステムが必要な修復手術・手順は、加圧セメントの使用を必要とする充填の場合に特に問題が多い。とりわけ、修復ステムの遠位端は、最終的には、元々あった「通常の」ステムよりも深く、骨髄管の中にまで延びる。これは、修復ステムの埋め込み準備のため元々のステムを取り外す間に、付随的な骨が切断されるからであり、または品質の劣る骨の場合は、インプラントを安定させるため質の優れる骨に到達させるべく、骨髄管の中でより遠方に固定する様、より大きなステムを使うことになるからである。元々のステムの遠位端は、峡部の手前または上方(従ってセメントボールの上方)の地点までしか延びないのに対し、修復ステムの遠位端は、峡部を越えて延びる。
【0005】
骨髄管内を閉鎖するものとしては、セメントボール以外の構造体も知られている。例えば、図1は、テーパ付き本体12を具備する装置10を示すが、この本体12は、第1端部14,第2端部16及び本体12から径方向に延びるフィン18を有する。各フィン18は弾性を有し、図1に破線で示すように、第1端部14或いは第2端部16に向けて撓むことができる。一枚またはそれ以上のフィン18に圧力を加えたり、包囲空間に閉じ込めて弾性変形させることにより、これらのフィンを撓んだ状態に維持することはできるが、一旦圧力が解放されたり或いは装置が包囲空間から取り外されると、フィン18は、塑性変形していない限り、常に元の状態に戻る。このため、図1においては、フィン18と装置10は、単一な安定な状態を一つしか有しない(single stable state)と言える。
【0006】
この単一段階安定型装置10は、図2に示すように、峡部22の上方で、穴ぐりした骨髄管20内を閉鎖する目的のためには、よく適している。フィン18は、テーパ付きの骨髄管20内において、場所によって変形量が異なることが分るであろう。本体12とフィン18は、装置10が峡部を越えて容易に押し出されることのないよう、フィンが本体に対して完全に押しつけられても、装置10が峡部12より広いままでいるような厚さにする。したがって、加圧セメントを適用する典型的な場合には、セメントを加圧しても、装置が外れることはない。
【0007】
このような峡部の上方に適用する場合とは対照的に、図3に示すように、装置10は、峡部を越えて適用する場合に、全く不向きである。特に、装置10のフィン18のいくつかが峡部を越えて移動すると、骨との機械的なインターロックの強度は段々弱くなり、わずかな圧力を加えても、栓となる装置は外れてしまう。装置10を慎重に峡部を通過させ、次いで図4に示すように、狭隘な通路に向けて引張り上げて戻そうとしても、撓んだフィン18は、装置を峡部より下方に外れるよう付勢するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような公知の技術・装置の欠点を克服して、修復関節形成術に特に適したセメントレストリクタ(セメント制限装置)を提供することを目的とする。適当な寸法であれば、長い骨の内部の任意に選択される位置、特に峡部を越えた位置においても、固定的な障害となり得るようなセメントレストリクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセメントレストリクタは、選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備える。
【0010】
本発明のセメントレストリクタは、前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブ、又は膨脹可能体をさらに備えたキットとしても良い。
【0011】
他の態様においては、セメントレストリクタは、温度および/または応力に応答して形状または大きさを返る形状記憶合金からつくられる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、股関節形成術の際に、長い骨の内部の任意選択的位置、特に峡部を越えた位置においても、セメントの流入に対して固定的な障害となり得るセメントレストリクタが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明、およびその利点・構成は、添付の図面を参照した以下の詳細な説明により、よりよく理解されるであろう。
【0014】
図5と図6はそれぞれ、本発明の一態様に係るセメントレストリクタ24の側面図および斜視図である。このセメントレストリクタ24は、第1の安定状態において、本体26から一枚またはそれ以上のフィン28が径方向に延びる。本明細書で用いる「安定状態」とは、構造体(例えばフィン)が別の要素(例えば本体)に対して、所定の形状、配置、あるいは配向を維持し、その構造体が所定の範囲内で変形しても、追加的な、又は外的な力、又はエネルギーが存在しなければ、その構造体は所定の形状・配置に復帰する状態を意味する。以下に詳しく説明するように、フィン28は、第1の方向に圧力を加えることによって変形させることができ、またその加圧を中断することにより、元の変形前の配向に戻る。一方、このフィン28に対し第2の方向に圧力を加えると、フィンは、圧力を取り去った後も変形前の配向には戻らないような変形を起こす。
【0015】
さらに図5及び図6において、長手の本体26は、第1端部30,第2端部32,およびこれら両端部の間に中間部34を有する。各フィン28は、同じ大きさとすることもできるが、図に例示したフィン28は、それぞれ径が異なっている。例えば、本体の第1端部の近傍にあるフィン28は最も径が小さく、他方の第2端部の近傍にあるフィン28は最も径が大きい。第1端部から第2端部にかけて続くフィン28は、それぞれ手前のフィンよりも大きい。したがって、本体26の径が均一であるため、セメントレストリクタ24は、テーパの付いた輪郭をしている。フィンの特定の大きさおよびセメントレストリクタ24の全体的な輪郭は、障害を形成する予定の位置における骨髄管壁の形状に合わせて決定される。径は異なるが厚さはほぼ同じフィン28を備えたセメントレストリクタの態様の場合は、広いフィンに狭いフィンよりも可撓性をもたせて、フィンが穴ぐり済みの峡部のような所定寸法の穴を通して密着するのに十分な程度変形できるようにする。ただし、各フィン28の間の空隙は、フィンが過剰に変形するのを防ぐ。
【0016】
本体の第2端部に向けて本体26に加えられる軸方向の圧力、もしくは本体の第1端部に向けてフィンに加えられる軸方向の圧力、またはこれら圧力の組み合わせは、図10に示すようにフィン28を変形させるが、他方セメントレストリクタ24は第1の安定状態にとどまることに留意すべきである。これとは対照的に、本体の第1端部に向けて本体26に加えられる軸方向の圧力、もしくは本体の第2端部に向けてフィンに加えられる軸方向の圧力、またはこれら圧力の組み合わせは、図7に示すように、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態に移行させるべくフィン28を変形させる。セメントレストリクタが第1の安定状態にあるときは、フィン28が本体の第1端部に向けて傾斜していること、またはフィンがセメントレストリクタを骨髄管内に挿入するのを容易にするために、本体の第2端部からみて凸となっているのが注目される。図7に示す第2の安定状態にあるときは、フィン28が本体の第2端部に向けて傾斜していること、または図11に示すように、フィンがセメントレストリクタが骨に対して動くのを阻止するために、本体の第2端部からみて凹となっているのが注目される。言い換えれば、セメントレストリクタは、第2の安定状態から第1の安定状態に移行することはできない。しかし、第2の安定状態においても、フィンは撓むことができ、さらに第2の安定状態を示す所定の配置もしくは形状に復帰したり、または復帰するよう付勢することができる。
【0017】
図5乃至図7に示すセメントレストリクタの態様においては、フィン28は8枚設けられている。フィンの数は態様により異なり、一枚だけにすることもできるが、セメントレストリクタが続くセメント加圧工程の最中に変位しないよう、フィンと骨の間の機械的インターロックの表面を最大にするためには、フィンの数は多い方が望ましい。
【0018】
ここに例示した態様においては、フィン28は、ポリエチレンのような弾性材料から形成され、上述の二段階安定型となるよう、本体26に接続されるかまたはこれと一体につくり出される。しかし、フィン28は、感温性、感圧性、あるいは超弾性の形状記憶合金(SMA)からつくることもできる。この場合は、フィン28は、第1の温度もしくは第1の応力条件のときは第1の安定状態にあり、また第2の温度もしくは第2の応力条件のときは第2の安定状態にある。例示した態様においては、セメントレストリクタは、骨に容易に挿入できるよう第1の安定状態におく場合には、体温以下に冷却(または体温以上に加熱)しておく。そして、フィンが、正常な体温の範囲まで暖まって(または冷却されて)くると、フィンは、第2の安定状態に移行(転移)し、骨に係合する。さらに、フィンは、ここでは不連続な要素として示したが、一枚の螺旋状とすることもできる。
【0019】
さらに、図5及び図6において、本体26は、セメントレストリクタを配置し、また第1の安定状態から第2の安定状態に移行させるのに、手術道具とともに操作できるような係合面での構成を有する。図示のように、本体26は、セメントレストリクタ24を骨髄管を通して押し入れるのに手術道具38(図10に示す)が挿入でき、また軸方向の圧力が本体に適用される場合に必要な凹部またはソケット36を有する。ソケット36は、手術道具38を一時的にセメントレストリクタとの係合関係に保持するのを補助するため、弾性のある表面またはスリーブを有する。もう一つの態様においては、ソケット36と手術道具38にはねじが切られる。手術道具とそのセメントレストリクタとの係合における特定の構成は、本発明にとっては特に重要なことではない。
【0020】
第2の安定状態にあるとき、フィン28は、セメントレストリクタ24を骨の中で定位置に保持することができるが、フィンの縁と隣接する表面部のような周縁領域が粗くなったフィンの態様もある。さらに図8のような他の態様においては、とげ又は引っ掛かり部42が、一枚またはそれ以上のフィンの周縁から延びている。セメントレストリクタは、引っ掛かり部42を骨に引っ掛からせるべく、ねじることができる。図9は、骨表面とのインターロックを増大させるように構成したセメントレストリクタの他の態様を示す。このセメントレストリクタにおいては、一枚またはそれ以上のフィンに、切り込み44が径方向に設けられる。セメントレストリクタをねじると、フィンは切込の箇所で互いに離れ、フィンの縁が骨に食い込む。
【0021】
図10は、挿入具38とともに骨髄管に押し込まれた本発明の一例に係るセメントレストリクタ24を示す。セメントレストリクタは第1の安定状態にあり、峡部においてフィン28が変形していることに留意されたい。
【0022】
上述の態様の加えて、以下には、適当な軸に沿って第1の径から第2の径へ拡張させることができ、および/または第1の安定配置から第2の安定配置へ移行される構造体を提供するため、金属ワイヤのような伝統的な材料の他に、形状記憶材料の利点を生かした他の態様に係るセメントレストリクタを説明する。この構造体は、この拡張する能力をもつおかげで、径が小さい状態において、開口或いは通路(例えば骨髄管の峡部)を通過することができる。そして、一旦開口または通路(峡部など)を通過すると、構造体は、その開口または通路の径より大きい径に拡張される。このような構造体は、適用対象に応じて、プラグ(栓)、セメントレストリクタ(セメント制限具)或いはアンカー(固定具)のような多くの用途がある。
【0023】
例えば、図12は、第1の径を有するほぼ円錐形状の構造体42を提供するために、巻上げないし折り畳んだ(必要に応じて縁飾りをする)、ニチノール(Nitinol) のような形状記憶材料40のシートを示す。折り畳んだ構造体にかかる応力が解除ないし減少すると、セメントレストリクタ42は拡張する。形状記憶材料は、図12に示すような状態で特別な方法で折り畳むことができるが、図14は、形状記憶材料44のシートが、最初は径が小さいセメントレストリクタ46を提供するためにしわ寄せしておき、後に径の大きいセメントレストリクタとするため拡張させるようにしたもう一つの態様を示す。形状記憶材料44は、しわ寄せされる前に、切り取りまたは縁飾りにしておいて、図15に示すように、拡張し切ったときに特定の形状をとるようにしてもよい。例えば、形状記憶材料44は、セメントレストリクタ44の周縁に沿って、引っ掛かり部を与えるように切り取ることができる。
【0024】
図24は、セメントレストリクタ42を応力のかかった状態に拘束するためのスリーブ、若しくはシース50を示す。シースがセメントレストリクタ42からはずされると、図25に示すように、セメントレストリクタは拡張する。典型的な例においては、シースで包囲されたセメントレストリクタ42は、骨の骨髄管に挿入される。この場合、セメントレストリクタは、障害を形成しようとする位置に、道具(図示せず)を使って定位置に保持され、そしてシースが取り外される。こうすると、セメントレストリクタは拡張して、骨の中に閉鎖部をつくる。図ではシース又はスリーブ50は円筒形であるが、セメントレストリクタ42の一部だけを包囲する帯状にすることもできる。
【0025】
図12乃至図15,図24,及び図25は、まず応力下に置かれ、ついで応力が解除されて拡張される態様を示す。また図16乃至図19は、温度変化に応答して形状を変化させる態様を示す。例えば、図16は、形状記憶材料から構成される円筒形の構造体52を示す。そして、図17に示すように加熱されると、構造体52の各部分が種々の程度で拡張し、テーパの付いた構造体となる。図18は、冷却すると拡張された安定状態に移行する円筒形構造体54を示す。図19は、骨56の内部で、一部が砕いた氷で覆われている構造体54を示す。
【0026】
さらに他の態様においては、セメントレストリクタは、非拘束状態で安定になり、応力をかけると第2の状態の移行する。例えば、図20は、セメントレストリクタで仕切られる空間内のバルーンカテーテル62の一部を明らかにするため、一部を切り欠いた円筒形セメントレストリクタ60を示す。バルーンカテーテル62のバルーン部64が膨張すると、図21に示すようにセメントレストリクタの少なくとも一部を外側に押しやる。そしてバルーンが収縮すると、セメントレストリクタ60は、拡張した状態にとどまる。温度応答性形状記憶材料の場合は、バルーンは、加熱又は冷却した流体で満たす。
【0027】
図26乃至図29は、図20及び図21に示したセメントレストリクタの内部構造要素66を示す。内部構造要素66は、その周囲に生体適合性材料を形成するための骨組として働く。内部構造要素66は形状記憶材料で形成することもできるが、変形が可能な簡単な金属ワイヤでつくることもできる。図27に示すように、バルーンカテーテル62は、セメントレストリクタで仕切られた空間内にある。そして、カテーテル62のバルーン部64が膨張すると、セメントレストリクタ66の少なくとも一部は、図28に示すように外側に押しやられる。そして、バルーンが収縮すると、セメントレストリクタ60は、図29に示すように、拡張した状態にとどまる。
【0028】
さらに他の態様においては、構造体66は、最初から生体適合性の材料で覆われておらず、単独で骨の内部に置かれ、図28に示すようにして拡張される。バルーンが膨張すると、構造体66の上にセメントが注がれ、硬化させられる。次いでバルーンが収縮すると、ワイヤ補強材とともにセメントを含むセメントレストリクタは、骨の中で定位置にとどまる。この態様及びその他の態様において、セメントレストリクタで仕切られて残った開口の上に、簡単な栓または覆い(図示せず)を載せることもできる。セメントがバルーンに付着するのを防止するため、コイルとバルーンの間にシールド(図示せず)を介在させてもよい。或いは、バルーンに非付着性のコーティングを施す態様もある。
【0029】
応力応答性あるいは単に変形可能なセメントレストリクタに応力をかける別の方法を図22に示す。この図は、道具70に係合したセメントレストリクタ68を示す。道具70は、セメントレストリクタを図23に示すように拡張させるため、セメントレストリクタに押しつけられるかまたはねじ込まれる。
【0030】
図30は、ポリエチレンのような生体適合性材料74の中に埋め込まれたワイヤ72を一本、又はそれ以上含むセメントレストリクタの更に別の態様を示す。形状記憶材料、または通常の銅、スチール等を含むワイヤ72は、図30に示すように、セメントレストリクタの軸方向に向けることができる。温度または応力の変化(除去ないし印加)があると、セメントレストリクタの少なくとも一部が拡張する。
【0031】
図32乃至図35は、道具78を伴ったセメントレストリクタのさらに別の態様を示す。図32に示すように、セメントレストリクタ76は、一本またはそれ以上のワイヤ80をスライド可能に通す溝を有する。道具78は、ワイヤ80を溝の内部でスライドさせて、図33に示すようにセメントレストリクタの自由端から延び出させるために、セメントレストリクタ76に向けて移動できるスライド可能部分82を具備する。溝から外れたワイヤの部分は、骨に係合するためのフックまたは引っ掛かり部84の形状とすることができる。この引っ掛かり部84はまた、ワイヤの端部が溝の中に逆戻りするのを防ぐ役割もする。温度が変化すると、セメントレストリクタ76は、図34に示すように、拡張した状態になる。次に、道具78は、図35に示すように、(ねじるなどして)セメントレストリクタ76から取り外される。
【0032】
次に、図36は、二段階安定型構造体86の第1の状態を示す。図37は、この二段階安定型構造体86の第2の状態を示す。安定な第1および第2の状態を与えるため、生体相和性材料の内部に変形可能ワイヤ88が埋め込まれる。もしワイヤ88が形状記憶材料である場合は、上述の熱や応力の印加の他に、電流を用いて状態を移行させることもできる。ある態様においては、ワイヤ88を活性化するには、250mAの電流で充分である。二段階安定型構造体86は、セメントレストリクタとして1個だけ用いることもできるが、図38に示すように、2個またはそれ以上の構造体86をリンク90で連結させて、セメントレストリクタとすることもできる。
【0033】
図39は、一本またはそれ以上のリンク94によって、二個またはそれ以上の互いに連結された可撓性の生体適合性要素92を備えたセメントレストリクタを示す。形状記憶材料からつくられた一本またはそれ以上のワイヤ96が、各要素92に係合する。図39に示すように、ワイヤ96は、ワイヤに係合した要素92の外側部分を内側に引っ張る第1の状態にあるセメントレストリクタの長手軸に向けて内側に湾曲している。図40に示すように、ワイヤ96が第2の状態で真直ぐな場合は、ワイヤ96はもはや内側には湾曲しない。ワイヤが真直ぐになると、要素96はワイヤとともに外側に引き出され、セメントレストリクタは、第2の状態において径が大きくなる。
【0034】
上述の単一の構造体の中に応力と温度の両方に感応する形状記憶要素を含む態様に加えて、図41乃至図43は、単一の構造体の中に、応答温度または転移温度が異なる複数の温度応答性要素を含むセメントレストリクタを示す。特に図41は、リンク要素104によって第2部分102に連結された第1部分100を備えたセメントレストリクタを示す。この制限具においては、第1部分の大きさは一定であり、他方第2部分およびリンク要素の大きさが変化する。図では、単一の第2部分とリンク要素を示しているが、この第2部分とほぼ同じ追加要素を、リンク要素を介して構造体に付け加えることもできる。
【0035】
典型的な態様として、第1部分100は、コバルトクロムのような標準的な生体適合性金属を含み、第2部分102は、Nitinol ワイヤ106を埋め込んだUHMWPE組成物を含む。リンク要素104は、Nitinol ワイヤである。この態様においては、上述の態様と同じように、「ワイヤ」は、矩形、円形から不規則なものまで種々の断面形状を有すると理解すべきである。第2部分102の内部にあるワイヤ106の転移温度は98.5°Fであるが、リンク要素104はこれより高い約110°Fの転移温度をもつ。このように転移温度に差があるために、セメントレストリクタは、図41に示す径の小さな状態から、図43に示す径の大きな状態に変形することができる。そして、最大転移温度は120°Fであるために、患者の組織に損傷を与えることは避けられる。図示のように、ワイヤは、第2部分の端を越えて延びることができ、骨への係合強度が改善する。
【0036】
使用の際には、セメントレストリクタは、次のようにして変形する。第1部分100は、第1部分における適当な凹部108内に係合できる道具(図示せず)の助けを借りて、峡部の越えた位置に配置される。患者の体温により第2部分102にあるNitinol ワイヤが直線上に変化し、図42に示すように、第2部分の径を大きくする。第2部分のUHMWPE組成物は、埋め込んだNitinol ワイヤとともに真直ぐになって形状を変化させるのに十分な弾性を有するが、一方でセメントの加圧に耐えるのに十分な剛性も有する。加熱空気(99°Fより高く、120°Fより低い)を吹き付ける長いノズルを備えたヒートガン(図示せず)を骨髄管内において第1部分の近くに配置する。この熱は、リンク要素を活性化し、リンク要素の長さを縮め、直線状に変化している水平な第2部分を、第1部分に近づけるとともに、峡部のより狭い断面にまで進入させる。ヒートガン以外の方法として、ワイヤを約1/4Aの電流により加熱する方法がある。これはワイヤの抵抗がワイヤの径に比例することを利用するものである(すなわち径が0.006 インチのワイヤの場合は1Ω/インチの抵抗となる電流を流せば良い)。ワイヤを活性化するには、高周波または超音波も用いることができる。
【0037】
これまで図示し、説明してきた本発明の各態様は、例示のためのものであるが、本発明の趣旨・範囲を逸脱しない中で、形状または細部について、種々の変更、省略および追加が可能であろう。
【0038】
本発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
A)選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備えるセメントレストリクタ。
1)前記変形可能な構造体は、形状記憶材料を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
2)前記変形可能な構造体は、前記第1の形状においては折り畳まれ、前記第2の形状においては少なくとも一部が折り畳まれていない形状記憶材料のシートを有する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
3)前記第1の形状においては、前記形状記憶材料のシートはほぼ円錐形であり、軸方向に長さをもち、この軸から径方向に延びる径を有するが、前記第2の形状においては、前記長さが小さくなるとともに前記径は大きくなる実施態様1)記載のセメントレストリクタ。
【0039】
4)前記変形可能な構造体は、引っ掛かり部の付いた周縁を有する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
5)前記変形可能な構造体は、前記第1の形状においてはしわ寄せされ、前記第2の形状においては少なくとも一部がしわ寄せされていない実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
6)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体を加熱すると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
7)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体を冷却すると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
【0040】
8)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体に応力をかけると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
9)前記変形可能な構造体は、生体適合性材料に埋め込まれた形状記憶材料を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
10)前記形状記憶材料は、長手の要素に形づくられる実施態様9)記載のセメントレストリクタ。
11)前記長手要素の少なくとも一部は、前記生体適合性材料の一部から延びる実施態様10)記載のセメントレストリクタ。
【0041】
12)前記長手要素はワイヤで、かつ螺旋形である実施態様10)記載のセメントレストリクタ。
13)前記変形可能な構造体は、螺旋形の形状記憶材料からつくられた要素の少なくとも一部を包む円筒形の生体相和性の本体を具備する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
14)前記変形可能な構造体は、二段階安定型である実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
15)前記変形可能な構造体は、互いにリンク結合された複数の二段階安定型構造体を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
【0042】
16)前記各二段階安定型構造体は、形状記憶材料を含む要素を包む、生体適合性材料からつくられるほぼ平面的な本体を具備する実施態様15)記載のセメントレストリクタ。
17)前記変形可能な構造体は、二段階安定型要素とともに互いにリンク結合された複数の可撓性生体相和性要素を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
18)前記変形可能な構造体は、リンク要素によって第2部分にリンク結合される第1部分を有し、前記第2部分は、第1の径を有する形状から第2の径を有する形状へ変形することができ、そして前記第2部分の形状を変化させる第1の温度で活性化される形状記憶材料からつくられる要素を含み、さらに前記リンク要素は、このリンク要素の形状を変化させる第2の温度で活性化される形状記憶材料からつくられる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
B)選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体と、
前記第1の形状において前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブを備えるセメントレストリクタキット。
C)第1端部と第2端部を有し、空隙を仕切る二段階安定型本体と、
前記本体によって仕切られる空隙内に収納可能な膨脹可能体を備えるセメントレストリクタキットであって、
前記膨脹可能体を前記空隙内で膨脹させると、前記二段階安定型本体が第1の安定状態から第2の安定状態へ移行するセメントレストリクタキット。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来のセメントレストリクタの側面図である。
【図2】図1のセメントレストリクタを挿入した、穴ぐりした骨の断面図である。
【図3】図1のセメントレストリクタを骨の峡を越えて押し込んだ、穴ぐりした骨の断面図である。
【図4】図1のセメントレストリクタを骨の峡部を完全に越えて押し込み、ついで峡部に向けて引き上げている途中の、穴ぐりした骨の断面図である。
【図5】本発明の一態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの側面図である。
【図6】図5のセメントレストリクタの斜視図である。
【図7】図5と図6に示したセメントレストリクタの、第2の安定状態にあるときの側面図である。
【図8】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの側面図である。
【図9】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの斜視図である。
【図10】第1の安定状態にあるセメントレストリクタを穴ぐりした骨の一部に挿入したときの模式図である。
【図11】図10のセメントレストリクタが第2の安定状態になって峡部を越えた位置で取付けられた配置を示す図である。
【図12】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図13】図12のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図14】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図15】図14のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図16】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図17】図16のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図18】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図19】図18のセメントレストリクタが骨の中にあって第2の安定状態に移行するときの様子を示す図である。
【図20】バルーンカテーテルを明らかにするため一部を切り欠いたセメントレストリクタの図である。
【図21】図20のバルーンが、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるため膨張した様子を示す図である。
【図22】セメントレストリクタと第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるための道具を示す図である。
【図23】図22の道具が、セメントレストリクタと第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるために用いられている様子を示す図である。
【図24】セメントレストリクタを径の小さい状態に維持するために用いるシースを示す図である。
【図25】図24のセメントレストリクタの径が大きくなっている状態を示すである。
【図26】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの内部構造を示す図である。
【図27】図26のセメントレストリクタとともに用いられるバルーンカテーテルを示す図である。
【図28】図27のバルーンが、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるため膨張した様子を示す図である。
【図29】図27のバルーンによって拡張した安定状態になったセメントレストリクタを示す図である。
【図30】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図31】図30のセメントレストリクタが拡張された第2の状態にあるときの様子を示す図である。
【図32】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタとこれを拡張させる道具を示す図である。
【図33】図32のセメントレストリクタの一端から延びている形状記憶構造体を示す図である。
【図34】図32のセメントレストリクタを拡張させている形状記憶構造体を示す図である。
【図35】図32のセメントレストリクタが拡張し、図32の道具から外れた様子を示す図である。
【図36】本発明のさらに別の態様に係る二段階安定型構造体が第1の状態にある様子を示す図である。
【図37】図36の二段階安定型構造体が第2の状態にある様子を示す図である。
【図38】径が小さい状態で連結された数個の二段階安定型構造体を示す図である。
【図39】径が小さい状態で連結された、他の態様に係る数個の二段階安定型構造体を示す図である。
【図40】図39の二段階安定型構造体の径が大きくなった状態を示す図である。
【図41】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが径が小さい状態にあるときの様子を示す図である。
【図42】図41のセメントレストリクタが径が大きい状態の第1の段階にあるときの要素を示す図である。
【図43】図41のセメントレストリクタが径が大きい状態の第2の段階にあるときの要素を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節形成術に用いられる装置に係り、特に、骨の中でセメントの流入に対して制限または閉塞状態を生じさせる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節を置換するような関節形成術を行う場合は、大腿骨の骨頭部と骨首部を取り除き、次いで大腿骨の骨髄管の穴ぐりした箇所に人工の股関節ステムを埋め込まねばならない。股関節形成術の中には、骨髄管内で股関節ステムを固定するため、骨セメントを用いなければならないものがある。このセメントを使う場合は、セメントが制御できない深さまで、また制御できない量が骨髄管に浸潤するのは一般に好ましくない。そこで、股関節形成術においては、セメントの流れを制限あるいは阻むため、骨髄管の中に障害物を設ける工程を設ける。
【0003】
ところで、障害物は、一部だけを個化または硬化させたボール状のセメントを骨髄管に挿入し、骨髄管の壁との摩擦によって密着させただけにすぎないことも少なくない。このような間に合わせの障害物は、このセメントボールが骨髄管内に十分深く挿入されない場合は、股関節ステムの遠位端によって容易に外れてしまう。さらに、このセメントボールは、股関節ステムを定位置に結合させるため加圧したセメントを骨髄管に注いだときに、容易に動く。もしセメントボールが壊れたり、峡部(isthmus)として知られる大腿骨の狭隘な中央部に入り込んだりすると、加圧したセメントは、適切に骨に浸潤せず、セメントにエアポケットや孔が生ずることになる。このような不十分なセメントの充填・個化により、骨と股関節ステムのインターロック式の係合が弱くなり、またひび割れを生じやすくなる。また、機械的なインターロックの弱さや、セメントの欠陥があれば、股関節ステムが緩くなる。そして、このような好ましくない事態が発生すると、関節を、修復(再建)という手順で置換しなければならなくなることも生ずる。
【0004】
「長い」股関節ステムが必要な修復手術・手順は、加圧セメントの使用を必要とする充填の場合に特に問題が多い。とりわけ、修復ステムの遠位端は、最終的には、元々あった「通常の」ステムよりも深く、骨髄管の中にまで延びる。これは、修復ステムの埋め込み準備のため元々のステムを取り外す間に、付随的な骨が切断されるからであり、または品質の劣る骨の場合は、インプラントを安定させるため質の優れる骨に到達させるべく、骨髄管の中でより遠方に固定する様、より大きなステムを使うことになるからである。元々のステムの遠位端は、峡部の手前または上方(従ってセメントボールの上方)の地点までしか延びないのに対し、修復ステムの遠位端は、峡部を越えて延びる。
【0005】
骨髄管内を閉鎖するものとしては、セメントボール以外の構造体も知られている。例えば、図1は、テーパ付き本体12を具備する装置10を示すが、この本体12は、第1端部14,第2端部16及び本体12から径方向に延びるフィン18を有する。各フィン18は弾性を有し、図1に破線で示すように、第1端部14或いは第2端部16に向けて撓むことができる。一枚またはそれ以上のフィン18に圧力を加えたり、包囲空間に閉じ込めて弾性変形させることにより、これらのフィンを撓んだ状態に維持することはできるが、一旦圧力が解放されたり或いは装置が包囲空間から取り外されると、フィン18は、塑性変形していない限り、常に元の状態に戻る。このため、図1においては、フィン18と装置10は、単一な安定な状態を一つしか有しない(single stable state)と言える。
【0006】
この単一段階安定型装置10は、図2に示すように、峡部22の上方で、穴ぐりした骨髄管20内を閉鎖する目的のためには、よく適している。フィン18は、テーパ付きの骨髄管20内において、場所によって変形量が異なることが分るであろう。本体12とフィン18は、装置10が峡部を越えて容易に押し出されることのないよう、フィンが本体に対して完全に押しつけられても、装置10が峡部12より広いままでいるような厚さにする。したがって、加圧セメントを適用する典型的な場合には、セメントを加圧しても、装置が外れることはない。
【0007】
このような峡部の上方に適用する場合とは対照的に、図3に示すように、装置10は、峡部を越えて適用する場合に、全く不向きである。特に、装置10のフィン18のいくつかが峡部を越えて移動すると、骨との機械的なインターロックの強度は段々弱くなり、わずかな圧力を加えても、栓となる装置は外れてしまう。装置10を慎重に峡部を通過させ、次いで図4に示すように、狭隘な通路に向けて引張り上げて戻そうとしても、撓んだフィン18は、装置を峡部より下方に外れるよう付勢するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような公知の技術・装置の欠点を克服して、修復関節形成術に特に適したセメントレストリクタ(セメント制限装置)を提供することを目的とする。適当な寸法であれば、長い骨の内部の任意に選択される位置、特に峡部を越えた位置においても、固定的な障害となり得るようなセメントレストリクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセメントレストリクタは、選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備える。
【0010】
本発明のセメントレストリクタは、前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブ、又は膨脹可能体をさらに備えたキットとしても良い。
【0011】
他の態様においては、セメントレストリクタは、温度および/または応力に応答して形状または大きさを返る形状記憶合金からつくられる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、股関節形成術の際に、長い骨の内部の任意選択的位置、特に峡部を越えた位置においても、セメントの流入に対して固定的な障害となり得るセメントレストリクタが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明、およびその利点・構成は、添付の図面を参照した以下の詳細な説明により、よりよく理解されるであろう。
【0014】
図5と図6はそれぞれ、本発明の一態様に係るセメントレストリクタ24の側面図および斜視図である。このセメントレストリクタ24は、第1の安定状態において、本体26から一枚またはそれ以上のフィン28が径方向に延びる。本明細書で用いる「安定状態」とは、構造体(例えばフィン)が別の要素(例えば本体)に対して、所定の形状、配置、あるいは配向を維持し、その構造体が所定の範囲内で変形しても、追加的な、又は外的な力、又はエネルギーが存在しなければ、その構造体は所定の形状・配置に復帰する状態を意味する。以下に詳しく説明するように、フィン28は、第1の方向に圧力を加えることによって変形させることができ、またその加圧を中断することにより、元の変形前の配向に戻る。一方、このフィン28に対し第2の方向に圧力を加えると、フィンは、圧力を取り去った後も変形前の配向には戻らないような変形を起こす。
【0015】
さらに図5及び図6において、長手の本体26は、第1端部30,第2端部32,およびこれら両端部の間に中間部34を有する。各フィン28は、同じ大きさとすることもできるが、図に例示したフィン28は、それぞれ径が異なっている。例えば、本体の第1端部の近傍にあるフィン28は最も径が小さく、他方の第2端部の近傍にあるフィン28は最も径が大きい。第1端部から第2端部にかけて続くフィン28は、それぞれ手前のフィンよりも大きい。したがって、本体26の径が均一であるため、セメントレストリクタ24は、テーパの付いた輪郭をしている。フィンの特定の大きさおよびセメントレストリクタ24の全体的な輪郭は、障害を形成する予定の位置における骨髄管壁の形状に合わせて決定される。径は異なるが厚さはほぼ同じフィン28を備えたセメントレストリクタの態様の場合は、広いフィンに狭いフィンよりも可撓性をもたせて、フィンが穴ぐり済みの峡部のような所定寸法の穴を通して密着するのに十分な程度変形できるようにする。ただし、各フィン28の間の空隙は、フィンが過剰に変形するのを防ぐ。
【0016】
本体の第2端部に向けて本体26に加えられる軸方向の圧力、もしくは本体の第1端部に向けてフィンに加えられる軸方向の圧力、またはこれら圧力の組み合わせは、図10に示すようにフィン28を変形させるが、他方セメントレストリクタ24は第1の安定状態にとどまることに留意すべきである。これとは対照的に、本体の第1端部に向けて本体26に加えられる軸方向の圧力、もしくは本体の第2端部に向けてフィンに加えられる軸方向の圧力、またはこれら圧力の組み合わせは、図7に示すように、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態に移行させるべくフィン28を変形させる。セメントレストリクタが第1の安定状態にあるときは、フィン28が本体の第1端部に向けて傾斜していること、またはフィンがセメントレストリクタを骨髄管内に挿入するのを容易にするために、本体の第2端部からみて凸となっているのが注目される。図7に示す第2の安定状態にあるときは、フィン28が本体の第2端部に向けて傾斜していること、または図11に示すように、フィンがセメントレストリクタが骨に対して動くのを阻止するために、本体の第2端部からみて凹となっているのが注目される。言い換えれば、セメントレストリクタは、第2の安定状態から第1の安定状態に移行することはできない。しかし、第2の安定状態においても、フィンは撓むことができ、さらに第2の安定状態を示す所定の配置もしくは形状に復帰したり、または復帰するよう付勢することができる。
【0017】
図5乃至図7に示すセメントレストリクタの態様においては、フィン28は8枚設けられている。フィンの数は態様により異なり、一枚だけにすることもできるが、セメントレストリクタが続くセメント加圧工程の最中に変位しないよう、フィンと骨の間の機械的インターロックの表面を最大にするためには、フィンの数は多い方が望ましい。
【0018】
ここに例示した態様においては、フィン28は、ポリエチレンのような弾性材料から形成され、上述の二段階安定型となるよう、本体26に接続されるかまたはこれと一体につくり出される。しかし、フィン28は、感温性、感圧性、あるいは超弾性の形状記憶合金(SMA)からつくることもできる。この場合は、フィン28は、第1の温度もしくは第1の応力条件のときは第1の安定状態にあり、また第2の温度もしくは第2の応力条件のときは第2の安定状態にある。例示した態様においては、セメントレストリクタは、骨に容易に挿入できるよう第1の安定状態におく場合には、体温以下に冷却(または体温以上に加熱)しておく。そして、フィンが、正常な体温の範囲まで暖まって(または冷却されて)くると、フィンは、第2の安定状態に移行(転移)し、骨に係合する。さらに、フィンは、ここでは不連続な要素として示したが、一枚の螺旋状とすることもできる。
【0019】
さらに、図5及び図6において、本体26は、セメントレストリクタを配置し、また第1の安定状態から第2の安定状態に移行させるのに、手術道具とともに操作できるような係合面での構成を有する。図示のように、本体26は、セメントレストリクタ24を骨髄管を通して押し入れるのに手術道具38(図10に示す)が挿入でき、また軸方向の圧力が本体に適用される場合に必要な凹部またはソケット36を有する。ソケット36は、手術道具38を一時的にセメントレストリクタとの係合関係に保持するのを補助するため、弾性のある表面またはスリーブを有する。もう一つの態様においては、ソケット36と手術道具38にはねじが切られる。手術道具とそのセメントレストリクタとの係合における特定の構成は、本発明にとっては特に重要なことではない。
【0020】
第2の安定状態にあるとき、フィン28は、セメントレストリクタ24を骨の中で定位置に保持することができるが、フィンの縁と隣接する表面部のような周縁領域が粗くなったフィンの態様もある。さらに図8のような他の態様においては、とげ又は引っ掛かり部42が、一枚またはそれ以上のフィンの周縁から延びている。セメントレストリクタは、引っ掛かり部42を骨に引っ掛からせるべく、ねじることができる。図9は、骨表面とのインターロックを増大させるように構成したセメントレストリクタの他の態様を示す。このセメントレストリクタにおいては、一枚またはそれ以上のフィンに、切り込み44が径方向に設けられる。セメントレストリクタをねじると、フィンは切込の箇所で互いに離れ、フィンの縁が骨に食い込む。
【0021】
図10は、挿入具38とともに骨髄管に押し込まれた本発明の一例に係るセメントレストリクタ24を示す。セメントレストリクタは第1の安定状態にあり、峡部においてフィン28が変形していることに留意されたい。
【0022】
上述の態様の加えて、以下には、適当な軸に沿って第1の径から第2の径へ拡張させることができ、および/または第1の安定配置から第2の安定配置へ移行される構造体を提供するため、金属ワイヤのような伝統的な材料の他に、形状記憶材料の利点を生かした他の態様に係るセメントレストリクタを説明する。この構造体は、この拡張する能力をもつおかげで、径が小さい状態において、開口或いは通路(例えば骨髄管の峡部)を通過することができる。そして、一旦開口または通路(峡部など)を通過すると、構造体は、その開口または通路の径より大きい径に拡張される。このような構造体は、適用対象に応じて、プラグ(栓)、セメントレストリクタ(セメント制限具)或いはアンカー(固定具)のような多くの用途がある。
【0023】
例えば、図12は、第1の径を有するほぼ円錐形状の構造体42を提供するために、巻上げないし折り畳んだ(必要に応じて縁飾りをする)、ニチノール(Nitinol) のような形状記憶材料40のシートを示す。折り畳んだ構造体にかかる応力が解除ないし減少すると、セメントレストリクタ42は拡張する。形状記憶材料は、図12に示すような状態で特別な方法で折り畳むことができるが、図14は、形状記憶材料44のシートが、最初は径が小さいセメントレストリクタ46を提供するためにしわ寄せしておき、後に径の大きいセメントレストリクタとするため拡張させるようにしたもう一つの態様を示す。形状記憶材料44は、しわ寄せされる前に、切り取りまたは縁飾りにしておいて、図15に示すように、拡張し切ったときに特定の形状をとるようにしてもよい。例えば、形状記憶材料44は、セメントレストリクタ44の周縁に沿って、引っ掛かり部を与えるように切り取ることができる。
【0024】
図24は、セメントレストリクタ42を応力のかかった状態に拘束するためのスリーブ、若しくはシース50を示す。シースがセメントレストリクタ42からはずされると、図25に示すように、セメントレストリクタは拡張する。典型的な例においては、シースで包囲されたセメントレストリクタ42は、骨の骨髄管に挿入される。この場合、セメントレストリクタは、障害を形成しようとする位置に、道具(図示せず)を使って定位置に保持され、そしてシースが取り外される。こうすると、セメントレストリクタは拡張して、骨の中に閉鎖部をつくる。図ではシース又はスリーブ50は円筒形であるが、セメントレストリクタ42の一部だけを包囲する帯状にすることもできる。
【0025】
図12乃至図15,図24,及び図25は、まず応力下に置かれ、ついで応力が解除されて拡張される態様を示す。また図16乃至図19は、温度変化に応答して形状を変化させる態様を示す。例えば、図16は、形状記憶材料から構成される円筒形の構造体52を示す。そして、図17に示すように加熱されると、構造体52の各部分が種々の程度で拡張し、テーパの付いた構造体となる。図18は、冷却すると拡張された安定状態に移行する円筒形構造体54を示す。図19は、骨56の内部で、一部が砕いた氷で覆われている構造体54を示す。
【0026】
さらに他の態様においては、セメントレストリクタは、非拘束状態で安定になり、応力をかけると第2の状態の移行する。例えば、図20は、セメントレストリクタで仕切られる空間内のバルーンカテーテル62の一部を明らかにするため、一部を切り欠いた円筒形セメントレストリクタ60を示す。バルーンカテーテル62のバルーン部64が膨張すると、図21に示すようにセメントレストリクタの少なくとも一部を外側に押しやる。そしてバルーンが収縮すると、セメントレストリクタ60は、拡張した状態にとどまる。温度応答性形状記憶材料の場合は、バルーンは、加熱又は冷却した流体で満たす。
【0027】
図26乃至図29は、図20及び図21に示したセメントレストリクタの内部構造要素66を示す。内部構造要素66は、その周囲に生体適合性材料を形成するための骨組として働く。内部構造要素66は形状記憶材料で形成することもできるが、変形が可能な簡単な金属ワイヤでつくることもできる。図27に示すように、バルーンカテーテル62は、セメントレストリクタで仕切られた空間内にある。そして、カテーテル62のバルーン部64が膨張すると、セメントレストリクタ66の少なくとも一部は、図28に示すように外側に押しやられる。そして、バルーンが収縮すると、セメントレストリクタ60は、図29に示すように、拡張した状態にとどまる。
【0028】
さらに他の態様においては、構造体66は、最初から生体適合性の材料で覆われておらず、単独で骨の内部に置かれ、図28に示すようにして拡張される。バルーンが膨張すると、構造体66の上にセメントが注がれ、硬化させられる。次いでバルーンが収縮すると、ワイヤ補強材とともにセメントを含むセメントレストリクタは、骨の中で定位置にとどまる。この態様及びその他の態様において、セメントレストリクタで仕切られて残った開口の上に、簡単な栓または覆い(図示せず)を載せることもできる。セメントがバルーンに付着するのを防止するため、コイルとバルーンの間にシールド(図示せず)を介在させてもよい。或いは、バルーンに非付着性のコーティングを施す態様もある。
【0029】
応力応答性あるいは単に変形可能なセメントレストリクタに応力をかける別の方法を図22に示す。この図は、道具70に係合したセメントレストリクタ68を示す。道具70は、セメントレストリクタを図23に示すように拡張させるため、セメントレストリクタに押しつけられるかまたはねじ込まれる。
【0030】
図30は、ポリエチレンのような生体適合性材料74の中に埋め込まれたワイヤ72を一本、又はそれ以上含むセメントレストリクタの更に別の態様を示す。形状記憶材料、または通常の銅、スチール等を含むワイヤ72は、図30に示すように、セメントレストリクタの軸方向に向けることができる。温度または応力の変化(除去ないし印加)があると、セメントレストリクタの少なくとも一部が拡張する。
【0031】
図32乃至図35は、道具78を伴ったセメントレストリクタのさらに別の態様を示す。図32に示すように、セメントレストリクタ76は、一本またはそれ以上のワイヤ80をスライド可能に通す溝を有する。道具78は、ワイヤ80を溝の内部でスライドさせて、図33に示すようにセメントレストリクタの自由端から延び出させるために、セメントレストリクタ76に向けて移動できるスライド可能部分82を具備する。溝から外れたワイヤの部分は、骨に係合するためのフックまたは引っ掛かり部84の形状とすることができる。この引っ掛かり部84はまた、ワイヤの端部が溝の中に逆戻りするのを防ぐ役割もする。温度が変化すると、セメントレストリクタ76は、図34に示すように、拡張した状態になる。次に、道具78は、図35に示すように、(ねじるなどして)セメントレストリクタ76から取り外される。
【0032】
次に、図36は、二段階安定型構造体86の第1の状態を示す。図37は、この二段階安定型構造体86の第2の状態を示す。安定な第1および第2の状態を与えるため、生体相和性材料の内部に変形可能ワイヤ88が埋め込まれる。もしワイヤ88が形状記憶材料である場合は、上述の熱や応力の印加の他に、電流を用いて状態を移行させることもできる。ある態様においては、ワイヤ88を活性化するには、250mAの電流で充分である。二段階安定型構造体86は、セメントレストリクタとして1個だけ用いることもできるが、図38に示すように、2個またはそれ以上の構造体86をリンク90で連結させて、セメントレストリクタとすることもできる。
【0033】
図39は、一本またはそれ以上のリンク94によって、二個またはそれ以上の互いに連結された可撓性の生体適合性要素92を備えたセメントレストリクタを示す。形状記憶材料からつくられた一本またはそれ以上のワイヤ96が、各要素92に係合する。図39に示すように、ワイヤ96は、ワイヤに係合した要素92の外側部分を内側に引っ張る第1の状態にあるセメントレストリクタの長手軸に向けて内側に湾曲している。図40に示すように、ワイヤ96が第2の状態で真直ぐな場合は、ワイヤ96はもはや内側には湾曲しない。ワイヤが真直ぐになると、要素96はワイヤとともに外側に引き出され、セメントレストリクタは、第2の状態において径が大きくなる。
【0034】
上述の単一の構造体の中に応力と温度の両方に感応する形状記憶要素を含む態様に加えて、図41乃至図43は、単一の構造体の中に、応答温度または転移温度が異なる複数の温度応答性要素を含むセメントレストリクタを示す。特に図41は、リンク要素104によって第2部分102に連結された第1部分100を備えたセメントレストリクタを示す。この制限具においては、第1部分の大きさは一定であり、他方第2部分およびリンク要素の大きさが変化する。図では、単一の第2部分とリンク要素を示しているが、この第2部分とほぼ同じ追加要素を、リンク要素を介して構造体に付け加えることもできる。
【0035】
典型的な態様として、第1部分100は、コバルトクロムのような標準的な生体適合性金属を含み、第2部分102は、Nitinol ワイヤ106を埋め込んだUHMWPE組成物を含む。リンク要素104は、Nitinol ワイヤである。この態様においては、上述の態様と同じように、「ワイヤ」は、矩形、円形から不規則なものまで種々の断面形状を有すると理解すべきである。第2部分102の内部にあるワイヤ106の転移温度は98.5°Fであるが、リンク要素104はこれより高い約110°Fの転移温度をもつ。このように転移温度に差があるために、セメントレストリクタは、図41に示す径の小さな状態から、図43に示す径の大きな状態に変形することができる。そして、最大転移温度は120°Fであるために、患者の組織に損傷を与えることは避けられる。図示のように、ワイヤは、第2部分の端を越えて延びることができ、骨への係合強度が改善する。
【0036】
使用の際には、セメントレストリクタは、次のようにして変形する。第1部分100は、第1部分における適当な凹部108内に係合できる道具(図示せず)の助けを借りて、峡部の越えた位置に配置される。患者の体温により第2部分102にあるNitinol ワイヤが直線上に変化し、図42に示すように、第2部分の径を大きくする。第2部分のUHMWPE組成物は、埋め込んだNitinol ワイヤとともに真直ぐになって形状を変化させるのに十分な弾性を有するが、一方でセメントの加圧に耐えるのに十分な剛性も有する。加熱空気(99°Fより高く、120°Fより低い)を吹き付ける長いノズルを備えたヒートガン(図示せず)を骨髄管内において第1部分の近くに配置する。この熱は、リンク要素を活性化し、リンク要素の長さを縮め、直線状に変化している水平な第2部分を、第1部分に近づけるとともに、峡部のより狭い断面にまで進入させる。ヒートガン以外の方法として、ワイヤを約1/4Aの電流により加熱する方法がある。これはワイヤの抵抗がワイヤの径に比例することを利用するものである(すなわち径が0.006 インチのワイヤの場合は1Ω/インチの抵抗となる電流を流せば良い)。ワイヤを活性化するには、高周波または超音波も用いることができる。
【0037】
これまで図示し、説明してきた本発明の各態様は、例示のためのものであるが、本発明の趣旨・範囲を逸脱しない中で、形状または細部について、種々の変更、省略および追加が可能であろう。
【0038】
本発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
A)選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体を備えるセメントレストリクタ。
1)前記変形可能な構造体は、形状記憶材料を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
2)前記変形可能な構造体は、前記第1の形状においては折り畳まれ、前記第2の形状においては少なくとも一部が折り畳まれていない形状記憶材料のシートを有する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
3)前記第1の形状においては、前記形状記憶材料のシートはほぼ円錐形であり、軸方向に長さをもち、この軸から径方向に延びる径を有するが、前記第2の形状においては、前記長さが小さくなるとともに前記径は大きくなる実施態様1)記載のセメントレストリクタ。
【0039】
4)前記変形可能な構造体は、引っ掛かり部の付いた周縁を有する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
5)前記変形可能な構造体は、前記第1の形状においてはしわ寄せされ、前記第2の形状においては少なくとも一部がしわ寄せされていない実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
6)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体を加熱すると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
7)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体を冷却すると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
【0040】
8)前記変形可能な構造体は、軸に沿って第1端部と、この第1端部の反対側に第2端部を有し、この構造体に応力をかけると、前記第2端部は前記第1端部より径が大きくなる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
9)前記変形可能な構造体は、生体適合性材料に埋め込まれた形状記憶材料を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
10)前記形状記憶材料は、長手の要素に形づくられる実施態様9)記載のセメントレストリクタ。
11)前記長手要素の少なくとも一部は、前記生体適合性材料の一部から延びる実施態様10)記載のセメントレストリクタ。
【0041】
12)前記長手要素はワイヤで、かつ螺旋形である実施態様10)記載のセメントレストリクタ。
13)前記変形可能な構造体は、螺旋形の形状記憶材料からつくられた要素の少なくとも一部を包む円筒形の生体相和性の本体を具備する実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
14)前記変形可能な構造体は、二段階安定型である実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
15)前記変形可能な構造体は、互いにリンク結合された複数の二段階安定型構造体を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
【0042】
16)前記各二段階安定型構造体は、形状記憶材料を含む要素を包む、生体適合性材料からつくられるほぼ平面的な本体を具備する実施態様15)記載のセメントレストリクタ。
17)前記変形可能な構造体は、二段階安定型要素とともに互いにリンク結合された複数の可撓性生体相和性要素を含む実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
18)前記変形可能な構造体は、リンク要素によって第2部分にリンク結合される第1部分を有し、前記第2部分は、第1の径を有する形状から第2の径を有する形状へ変形することができ、そして前記第2部分の形状を変化させる第1の温度で活性化される形状記憶材料からつくられる要素を含み、さらに前記リンク要素は、このリンク要素の形状を変化させる第2の温度で活性化される形状記憶材料からつくられる実施態様A)記載のセメントレストリクタ。
B)選択した軸に対して第1の径を持った第1の形状と、前記選択した軸に対して前記第1の径より大きい第2の径を持った第2の形状を有する変形可能な構造体と、
前記第1の形状において前記変形可能な構造体の少なくとも一部を包囲することのできるスリーブを備えるセメントレストリクタキット。
C)第1端部と第2端部を有し、空隙を仕切る二段階安定型本体と、
前記本体によって仕切られる空隙内に収納可能な膨脹可能体を備えるセメントレストリクタキットであって、
前記膨脹可能体を前記空隙内で膨脹させると、前記二段階安定型本体が第1の安定状態から第2の安定状態へ移行するセメントレストリクタキット。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来のセメントレストリクタの側面図である。
【図2】図1のセメントレストリクタを挿入した、穴ぐりした骨の断面図である。
【図3】図1のセメントレストリクタを骨の峡を越えて押し込んだ、穴ぐりした骨の断面図である。
【図4】図1のセメントレストリクタを骨の峡部を完全に越えて押し込み、ついで峡部に向けて引き上げている途中の、穴ぐりした骨の断面図である。
【図5】本発明の一態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの側面図である。
【図6】図5のセメントレストリクタの斜視図である。
【図7】図5と図6に示したセメントレストリクタの、第2の安定状態にあるときの側面図である。
【図8】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの側面図である。
【図9】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタの、第1の安定状態にあるときの斜視図である。
【図10】第1の安定状態にあるセメントレストリクタを穴ぐりした骨の一部に挿入したときの模式図である。
【図11】図10のセメントレストリクタが第2の安定状態になって峡部を越えた位置で取付けられた配置を示す図である。
【図12】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図13】図12のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図14】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図15】図14のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図16】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図17】図16のセメントレストリクタが第2の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図18】本発明の別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図19】図18のセメントレストリクタが骨の中にあって第2の安定状態に移行するときの様子を示す図である。
【図20】バルーンカテーテルを明らかにするため一部を切り欠いたセメントレストリクタの図である。
【図21】図20のバルーンが、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるため膨張した様子を示す図である。
【図22】セメントレストリクタと第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるための道具を示す図である。
【図23】図22の道具が、セメントレストリクタと第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるために用いられている様子を示す図である。
【図24】セメントレストリクタを径の小さい状態に維持するために用いるシースを示す図である。
【図25】図24のセメントレストリクタの径が大きくなっている状態を示すである。
【図26】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの内部構造を示す図である。
【図27】図26のセメントレストリクタとともに用いられるバルーンカテーテルを示す図である。
【図28】図27のバルーンが、セメントレストリクタを第1の安定状態から第2の安定状態へ移行させるため膨張した様子を示す図である。
【図29】図27のバルーンによって拡張した安定状態になったセメントレストリクタを示す図である。
【図30】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが第1の安定状態にあるときの様子を示す図である。
【図31】図30のセメントレストリクタが拡張された第2の状態にあるときの様子を示す図である。
【図32】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタとこれを拡張させる道具を示す図である。
【図33】図32のセメントレストリクタの一端から延びている形状記憶構造体を示す図である。
【図34】図32のセメントレストリクタを拡張させている形状記憶構造体を示す図である。
【図35】図32のセメントレストリクタが拡張し、図32の道具から外れた様子を示す図である。
【図36】本発明のさらに別の態様に係る二段階安定型構造体が第1の状態にある様子を示す図である。
【図37】図36の二段階安定型構造体が第2の状態にある様子を示す図である。
【図38】径が小さい状態で連結された数個の二段階安定型構造体を示す図である。
【図39】径が小さい状態で連結された、他の態様に係る数個の二段階安定型構造体を示す図である。
【図40】図39の二段階安定型構造体の径が大きくなった状態を示す図である。
【図41】本発明のさらに別の態様に係るセメントレストリクタが径が小さい状態にあるときの様子を示す図である。
【図42】図41のセメントレストリクタが径が大きい状態の第1の段階にあるときの要素を示す図である。
【図43】図41のセメントレストリクタが径が大きい状態の第2の段階にあるときの要素を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントレストリクタであって、
複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の構造体を備え、
前記構造体は、流体不浸透性のバリアを形成するように、第1の形状から第2の拡張された形状に移行可能である、セメントレストリクタ。
【請求項2】
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、生体適合性材料の本体を含み、
前記本体は、該本体に配置された記憶材料で作られた要素を有する、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項3】
前記複数の生体適合性の構造体は、細長いリンク要素と連結されている請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項4】
前記生体適合性の要素は、ポリエチレンで作られている請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項5】
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、第1の径を持つ第1の形状と、第2の径を持つ第2の形状とを有し、
前記第2の径は、前記第1の径より大きい、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項6】
前記変形可能な構造体は、全体として、第1の径を持ち、
前記変形可能な構造体に応力をかけると、前記構造体は、第2の径を持ち、
前記第2の径は、前記第1の径より大きい、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項7】
前記変形可能な構造体は、二段階安定型である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項8】
前記記憶材料の要素は、前記第1の形状において概ね曲線状であり前記第2の形状において概ね線状であるワイヤである請求項2記載のセメントレストリクタ。
【請求項9】
前記ワイヤは、第1の温度において前記第1の形状であり、第2の温度において前記第2の形状である、請求項8記載のセメントレストリクタ。
【請求項10】
前記リンク要素は、ワイヤである請求項3記載のセメントレストリクタ。
【請求項11】
前記ワイヤは、ニチノールで作られている請求項10記載のセメントレストリクタ。
【請求項12】
前記構造体は、所定の温度変化により、前記第1の形状から前記第2の形状に移行可能である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項13】
前記構造体は、前記構造体に加えられた所定の応力を除去すると、前記第1の形状から前記第2の形状に移行可能である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項14】
前記応力は、前記構造体の少なくとも一部を取り囲むシースによって与えられる請求項13記載のセメントレストリクタ。
【請求項15】
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、生体適合性材料の本体を含み、
前記本体は、該本体に配置されたワイア記憶材料で作られた要素を有し、
前記ワイア材料は、第1の形状において概ね曲線状であり、第2の形状において概ね線状である、請求項2記載のセメントレストリクタ。
【請求項16】
前記ワイヤは、第1の温度において前記第1の形状であり、第2の温度において前記第2の形状である、請求項15記載のセメントレストリクタ。
【請求項17】
セメントレストリクタであって、
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記複数の生体適合性の構造体は、細長いワイヤで連結されている、セメントレストリクタ。
【請求項18】
前記ワイヤは、ニチノールで作られている請求項17記載のセメントレストリクタ。
【請求項19】
セメントレストリクタであって、
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記変形可能な構造体は、リンク要素によって第2の部分に連結された第1の部分を含み、
前記第2の部分は、第1の径から第2の径に変形可能であり、形状記憶材料の要素を含み、
前記形状記憶材料は、第1の温度で活性化されて前記第2の部分の形状を変える、セメントレストリクタ。
【請求項20】
前記リンク要素は、第2の温度で活性化されて前記リンク要素の長さを変える形状記憶材料を含む請求項19記載のセメントレストリクタ。
【請求項21】
前記リンク要素は、ワイヤである請求項20記載のセメントレストリクタ。
【請求項22】
前記形状記憶材料は、ニチノールである請求項21記載のセメントレストリクタ。
【請求項1】
セメントレストリクタであって、
複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の構造体を備え、
前記構造体は、流体不浸透性のバリアを形成するように、第1の形状から第2の拡張された形状に移行可能である、セメントレストリクタ。
【請求項2】
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、生体適合性材料の本体を含み、
前記本体は、該本体に配置された記憶材料で作られた要素を有する、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項3】
前記複数の生体適合性の構造体は、細長いリンク要素と連結されている請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項4】
前記生体適合性の要素は、ポリエチレンで作られている請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項5】
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、第1の径を持つ第1の形状と、第2の径を持つ第2の形状とを有し、
前記第2の径は、前記第1の径より大きい、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項6】
前記変形可能な構造体は、全体として、第1の径を持ち、
前記変形可能な構造体に応力をかけると、前記構造体は、第2の径を持ち、
前記第2の径は、前記第1の径より大きい、請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項7】
前記変形可能な構造体は、二段階安定型である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項8】
前記記憶材料の要素は、前記第1の形状において概ね曲線状であり前記第2の形状において概ね線状であるワイヤである請求項2記載のセメントレストリクタ。
【請求項9】
前記ワイヤは、第1の温度において前記第1の形状であり、第2の温度において前記第2の形状である、請求項8記載のセメントレストリクタ。
【請求項10】
前記リンク要素は、ワイヤである請求項3記載のセメントレストリクタ。
【請求項11】
前記ワイヤは、ニチノールで作られている請求項10記載のセメントレストリクタ。
【請求項12】
前記構造体は、所定の温度変化により、前記第1の形状から前記第2の形状に移行可能である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項13】
前記構造体は、前記構造体に加えられた所定の応力を除去すると、前記第1の形状から前記第2の形状に移行可能である請求項1記載のセメントレストリクタ。
【請求項14】
前記応力は、前記構造体の少なくとも一部を取り囲むシースによって与えられる請求項13記載のセメントレストリクタ。
【請求項15】
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記複数の生体適合性の要素の少なくとも一つは、生体適合性材料の本体を含み、
前記本体は、該本体に配置されたワイア記憶材料で作られた要素を有し、
前記ワイア材料は、第1の形状において概ね曲線状であり、第2の形状において概ね線状である、請求項2記載のセメントレストリクタ。
【請求項16】
前記ワイヤは、第1の温度において前記第1の形状であり、第2の温度において前記第2の形状である、請求項15記載のセメントレストリクタ。
【請求項17】
セメントレストリクタであって、
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記複数の生体適合性の構造体は、細長いワイヤで連結されている、セメントレストリクタ。
【請求項18】
前記ワイヤは、ニチノールで作られている請求項17記載のセメントレストリクタ。
【請求項19】
セメントレストリクタであって、
流体不浸透性のバリアを形成する複数の連結された生体適合性の要素を含む流体不浸透性の変形可能な構造体を備え、
前記変形可能な構造体は、リンク要素によって第2の部分に連結された第1の部分を含み、
前記第2の部分は、第1の径から第2の径に変形可能であり、形状記憶材料の要素を含み、
前記形状記憶材料は、第1の温度で活性化されて前記第2の部分の形状を変える、セメントレストリクタ。
【請求項20】
前記リンク要素は、第2の温度で活性化されて前記リンク要素の長さを変える形状記憶材料を含む請求項19記載のセメントレストリクタ。
【請求項21】
前記リンク要素は、ワイヤである請求項20記載のセメントレストリクタ。
【請求項22】
前記形状記憶材料は、ニチノールである請求項21記載のセメントレストリクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2008−43776(P2008−43776A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238218(P2007−238218)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【分割の表示】特願平10−98422の分割
【原出願日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【出願人】(594052607)デピュイ・オーソピーディックス・インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【分割の表示】特願平10−98422の分割
【原出願日】平成10年3月26日(1998.3.26)
【出願人】(594052607)デピュイ・オーソピーディックス・インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]