説明

セメント混和剤およびその製造方法

【課題】1回の重合操作で単量体組成の異なる複数の共重合体ブレンドが容易に製造できかつ減水性能および/または保持性に優れるセメント混和剤用の共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、および不飽和有機酸系単量体(B)を含む単量体成分を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法であって、予め反応容器に添加された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)に、不飽和有機酸系単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、添加して、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和有機酸系単量体(B)を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤用共重合体の製造方法、当該共重合体を含むセメント混和剤及び当該セメント混和剤を含有するセメント組成物に関するものである。より詳しくは、本発明は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に好適に用いることができるセメント混和剤用共重合体の製造方法、当該共重合体を含むセメント混和剤、およびそのようなセメント混和剤を含有し、土木・建築構造物等を構築するために広く用いられるセメント組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に対して減水剤等として広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有するものであり、従来からナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物であるナフタレン系、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物であるメラミン系、ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系および/またはジカルボン酸系単量体との水溶性ビニル共重合体であるポリカルボン酸系などが知られている。このような減水剤の中でも、特にポリカルボン酸系重合体は、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するため、このポリカルボン酸系重合体を含むセメント混和剤は、高性能AE減水剤として多くの実績がある。
【0003】
このようなセメント混和剤においては、セメント組成物に対する減水性能に加えて、セメント組成物を取り扱う現場での作業性を考慮して、その粘性を良好にすることができるセメント混和剤が求められている。一般的に、減水剤として用いられるセメント混和剤は、セメント組成物の粘性を低下させることにより優れた減水性能を発揮することになるが、このような減水能に加えて、セメント組成物を取り扱う現場において作業がしやすくなるように、ある程度粘性を維持することが土木・建築構造物等の製造現場において求められている。セメント混和剤がこのような性能を発揮すると、土木・建築構造物等の構築における作業効率等が改善されることとなる。
【0004】
上記を目的として、様々なセメント混和剤が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系単量体(A)、不飽和有機酸系単量体(B)及びその他の不飽和単量体(C)の3種以上の単量体を含む単量体成分を重合してなる3元系またはそれ以上の系の共重合体を必須とするセメント混和剤において、共重合体におけるポリオキシアルキレン基を有するエチレン系単量体(A)とその他の不飽和単量体(C)とのモル比を重合中に変化させてなるセメント混和剤が開示されている。また、特許文献2には、優れた分散性及び流れ性を発揮できる2元系または3元系のセメント混和剤が開示されている。当該特許文献2に開示されたセメント混和剤は、一般式(a):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R,Rは、水素原子又はメチル基であり、mは、0〜2の数であり、Rは、水素原子又は−COO(AO)Xであり、pは、0又は1の数であり、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、nは、2〜300の数であり、Xは、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。)で表される単量体の少なくとも1種(A)と、一般式(b):
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、R〜Rは、水素原子、メチル基又は(CHm1COOMであり、(CHm1COOMはCOOM又は他の(CHm1COOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM,Mは存在しない;M,Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基であり、m1は、0〜2の数を表す。)で表される単量体の少なくとも1種(B)とを共重合させて得られた共重合体混合物を含有するコンクリート混和剤であって、前記単量体(A)と(B)のモル比(A)/(B)を反応途中において少なくとも1回変化させるものである。
【0009】
さらには、このようなセメント混和剤の性能を向上することを目的として、使用する原料を厳密に管理する必要がある、例えば、特許文献3には、過酸化物価が0.7meq/kg以下であるポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを得て、これを(メタ)アクリル酸と共重合することによりセメント混和剤用のポリカルボン酸を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−182583号公報
【特許文献2】特開2001−180998号公報
【特許文献3】特開平11−71151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献に開示されるセメント混和剤のうち、特許文献1に開示されるセメント混和剤は、セメント組成物等のスランプ保持性を優れたものとして流動性が保持されるようにするとともに、セメント組成物等を取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることを目的として開発されたものであるが、減水性能、スランプ保持性及び粘性すべてを十分満足するには至っていない。
【0011】
また、特許文献2では、段落0021に、「共重合体混合物は、(A)/(B)モル比を少なくとも1回変化させて重合する工程を有する製造方法により得られるが、具体的には、単量体(A)の水溶液の滴下開始と同時に、単量体(B)の滴下を開始し」と記載され、実際に実施例では、単量体(A)及び(B)を同時に滴下することによって、セメント混和剤を製造している。この際、上記式(a)においてpが1であるエステル系の単量体を単量体(A)として使用する場合には、単量体(A)及び(B)の重合性はほぼ同程度である、あるいは極端な差がないため、単量体(A)及び(B)を同時に滴下しても、これらの単量体の共重合反応が効率よく進行する。しかしながら、上記式(a)においてpが0であるエーテル系の単量体を単量体(A)として使用する場合には、単量体(A)の自己重合性が低かったり(単量体(A)が連続して共重合体に組み込まれにくかったり)、単量体(A)の単独重合性が低いのに対して単量体(B)の重合性が高いなど、両者の反応性が相違するため、添加された単量体(B)だけが優先的に重合に供されてしまったり、場合によっては単量体(B)だけが重合に供されてしまい、単量体(A)の反応率が低くなる場合がある。つまり、単量体(A)の共重合性が低いために、共重合反応が効率よく進行しない場合がある。例えば、イソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物を単量体(A)として、アクリル酸を単量体(B)として、それぞれ用いて共重合反応を行なう場合には、単量体(B)の反応率に対して単量体(A)の反応率が低くなり、全体としての反応率も低くなってしまう。
【0012】
したがって、本発明は、上記諸事情を鑑みてなされたものであり、1回の重合操作で生成する単量体の組成をより均一にした共重合体、あるいは単量体組成の異なる複数の共重合体ブレンドが容易に製造でき、単量体組成比や共重合体のブレンド比を容易に制御することができ、かつ減水性能および/または保持性に優れるセメント混和剤用の共重合体およびその製造方法、当該共重合体を含むセメント混和剤およびそのようなセメント混和剤を含有するセメント組成物を提供することを目的とするものである。
【0013】
本発明の他の目的は、優れた減水性能を示す共重合体及び当該共重合体を含むセメント混和剤を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる他の目的は、共重合体の製造に使用される原料を特定することにより、セメント分散性能を最大限に引き出されたセメント混和剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべくエーテル系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体の重合による共重合体の製造方法について鋭意検討を行なった結果、反応性の低いエーテル系単量体を予め反応容器に添加した後、これに、反応性の高い不飽和カルボン酸系単量体を、段階的に添加速度を変えて添加して重合反応を行なうことによって、1回の重合操作で、生成する単量体の組成をより均一にした共重合体、あるいは単量体組成の異なる複数の共重合体ブレンドを容易に製造でき、かつこのような重合体の混合物は、各添加段階前後で添加速度を後段階の方を早くするあるいは遅くすることによって、スランプ保持性または減水性能に優れたものになることを見出した。また、本発明者らは、共重合体の混合物全体としての平均単量体組成において、単量体(B)の添加速度を後段階で遅くすると、混合物中の単量体組成比がより均一な共重合体が製造でき、この共重合体は単一な単量体組成により減水性能に特に優れたものとなり、逆に、単量体(B)の添加速度を後段階で早くすると、混合物中の単量体組成比が適度に異なった共重合体ブレンドが製造でき、この共重合体ブレンドは異なる単量体組成によりスランプ保持性に特に優れたものとなることをも見出した。特に、本発明者らは、前者の共重合体は、従来優れた減水性能を示すポリカルボン酸系共重合体に比べて、優れた減水性能を発揮できることをも知得した。
【0016】
上記知見に加えて、本発明者らは、さらにセメント混和剤に使用される共重合体の製造について鋭意検討を行なった結果、共重合体の製造に使用される単量体成分のうち、(メタ)アクリル酸系単量体に注目し、当該単量体中に含まれる(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率を特定量以下に抑えることによって、得られるセメント混和剤のセメント分散性能が有意に向上することをも見出した。
【0017】
上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、上記目的は、下記式(1):
【0019】
【化3】

【0020】
ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし;Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表わし、この際、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよく;mは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数であり;Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表わす、またはRC=CR−で表わされる基がビニル基の場合には、Xは結合手である、で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、および下記式(2):
【0021】
【化4】

【0022】
ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOMを表わし、この際、−(CHCOOMは、−COOMまたは他の−(CHCOOMと無水物を形成してもよく、この場合は、MまたはMは存在せず、また、zは、0〜2の数であり;M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表わす、で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)を含む単量体成分を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法であって、予め反応容器に添加された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)に、不飽和有機酸系単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、添加して、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和有機酸系単量体(B)を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法によって達成される。
【0023】
上記他の目的は、上記式(1)で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、および上記式(2)で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)の共重合体を含有するセメント混和剤であって、モルタル試験方法(X)で、250±5mmのフロー値を得るために必要なセメント混和剤の固形分換算での添加量が、ポリカルボン酸系共重合体(Y)の固形分換算での添加量の93質量%未満であることを特徴とするセメント混和剤によって達成される。
【0024】
上記さらなる他の目的は、上記式(1)で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)および単量体(B)として(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合することによって得られる共重合体を含むセメント混和剤であって、単量体(B)として使用される(メタ)アクリル酸系単量体中の(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率が、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、5質量%以下である、セメント混和剤によって達成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複雑な工程を伴わずに1回の重合操作で生成する単量体の組成をより均一にした共重合体、あるいは単量体組成の異なる複数の共重合体のブレンドが製造できるため、別々に共重合体を製造した後混合して、共重合体のブレンドを製造する必要がなく、製造工程をかなり簡略化することができる。また、このような共重合体ブレンドをセメント混和剤に使用することによって、減水性能および/またはスランプ保持性に優れたセメント混和剤が製造できる。さらに、本発明によると、(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率が5質量%以下である(メタ)アクリル酸系単量体を単量体成分として用いることによって、得られた共重合体を含むセメント混和剤は優れたセメント分散性能を発揮する。特に、本発明による共重合体は、従来のポリカルボン酸系共重合体に比べて、優れた減水性能を発揮できるため、高性能AE減水剤に好適に使用できる。
【0026】
本発明によるセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等の減水性能を向上して、その硬化物の強度や耐久性を優れたものとし、セメント組成物等のスランプ保持性を高めて流動性が保持されるようにでき、セメントを取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができる。したがって、本発明によるセメント混和剤を使用することにより、基本性能に優れた土木・建築構造物等の構築において作業効率等を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、下記式(1):
【0028】
【化5】

【0029】
で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)(以下、単に「単量体(A)」とも称する)、および下記式(2):
【0030】
【化6】

【0031】
で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)(以下、単に「単量体(B)」とも称する)を含む単量体成分を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法であって、予め反応容器に添加された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)に、不飽和有機酸系単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、添加して、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和有機酸系単量体(B)を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法を提供するものである。これは、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)と不飽和有機酸系単量体(B)との反応性の違いを利用したものであり、反応性の低い不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)を、単量体(B)との重合前に予め一括して反応容器に添加した後、より反応性の高い不飽和有機酸系単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、単量体(A)中に添加して、これらの単量体(A)、(B)の重合を行なうものである。このような重合方法によると、共重合体は、一度の重合操作で、その添加速度の変化によって、単量体の組成をより均一にした(単量体組成のばらつきの少ない)共重合体あるいは2種類以上の共重合体のブレンドが製造でき、その共重合体の構造(単量体の組成)や共重合体のブレンド比を適宜調整することによって、このブレンドを含むセメント混和剤が、所望の作用効果(例えば、減水性能および/またはスランプ保持性)を充分に発揮することができるのである。また、単量体(B)の添加速度の変更は、連続的にまたは段階的のいずれで行なわれてもよいが、段階的に行なうと、特殊な装置を必要とせずに添加速度の調整が容易であり、かつ、製造される重合体の構造(単量体の組成)を容易に調整できるため、所望の作用効果(例えば、減水性能および/またはスランプ保持性)を有するセメント混和剤の製造が容易である。
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明による共重合体の製造方法は、単量体(A)及び単量体(B)の少なくとも2種の単量体成分を共重合することにより共重合体を製造するものであるが、この際、単量体(A)及び(B)は、それぞれ、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、以下に詳述するが、上記単量体(A)及び(B)に加えて、第3の不飽和単量体(C)を使用してもよく、この場合において、第3の不飽和単量体(C)は、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0034】
本発明による共重合体は、単量体(A)及び単量体(B)の少なくとも2種の単量体成分からなるが、この際、単量体(A)は、そのポリオキシアルキレン基の親水性と立体反発とによりセメント組成物での分散性を発揮させる機能を有し、また、単量体(B)は、共重合体をセメント粒子に吸着させたり共重合体の親水性を高めたりする機能を有する。本発明では、予め一括添加された単量体(A)中に、単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、添加して、これらの単量体の共重合を行なうことによって、上記単量体(A)及び(B)の組成比が異なる共重合体が生成し、単量体(A)によるセメント組成物での分散性、ならびに単量体(B)による共重合体のセメント粒子への吸着能や共重合体の親水性を所望の効果を達成できるように適宜調節した共重合体のブレンドが製造できる。これにより、以下で詳述するが、減水性能および/またはスランプ保持性に優れたセメント混和剤が製造できるのである。
【0035】
本発明の製造方法は、予め添加された単量体(A)への単量体(B)の添加速度を少なくとも1回変化させることを特徴とするものである。なお、本明細書において、「予め反応容器に添加された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)」とは、単量体(A)を、初期に、予めその全量を反応容器に添加することを意味する。また、「初期」とは、単量体(B)との共重合反応が始まる直前までを指し、好ましくは、単量体(B)を添加する前、より好ましくは、単量体(B)及び重合開始剤を添加する前までを意味する。添加速度を変化させる回数は、特に限定されるものではなく、製造するセメント混和剤の所望の特性(減水性能またはスランプ保持性の重点の度合い)や作業性などによって、適宜選択できるが、1〜10回、より好ましくは1〜5回、さらにより好ましくは1〜3回、最も好ましくは1〜2回である。この際、添加速度を11回以上変化させると、回数の増加に見合った特性の向上が望めず、むしろ重合操作の作業性が複雑化してしまう可能性がある。なお、本発明において、単量体(B)の添加速度を段階的に変化させる際に、単量体(B)を一定速度で添加する各段階における単量体(B)は、添加は、連続的に若しくは段階的のいずれかで、または連続的及び段階的を組み合わせて、添加してもよいが、単量体(B)を単量体(A)に連続的に添加することが好ましい。単量体(B)のみが重合に供される可能性を回避するためである。なお、連続的な添加方法としては、例えば、連続的に滴下する方法などが挙げられ、段階的な方法としては、例えば、一定の割合に分割して添加する方法などが挙げられる。
【0036】
また、本発明において、単量体(B)の添加速度は、連続的に若しくは段階的のいずれかで、または連続的及び段階的を組み合わせて、変化させてもよいが、特殊な設備を必要とせず、添加速度の調整が容易であり、かつ、製造される重合体の構造を容易に調整できるため、段階的に添加速度を変化することが好ましい。なお、段階的に添加速度を変化させるとは、ある特定段階での単量体(B)の添加量、即ち、添加速度がほぼ一定であることを意味し、この際、ある特定段階での単量体(B)の添加量/添加速度の変動は、所望の添加量/添加速度の±15%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%の範囲内に調節される。また、単量体(B)の添加速度の変化形態は、増加または減少のいずれでもよく、また一つの重合工程で、添加速度を増加及び減少を組み合わせて(例えば、添加速度を増加と減少とを交互に変化させる)もよい。このように、添加速度を段階的にまたは連続的に速くするまたは遅くすることによって、製造される共重合体がセメント混和剤に使用される際の諸性能(例えば、減水性能やスランプ保持性の向上)が達成できる。なお、減水性能やスランプ保持性等、どのような性能が優先的に向上するかは、単量体(A)及び(B)の種類や量、さらには使用される場合には第3の不飽和単量体(C)の種類や量に従って、異なるものであるが、以下のように考えられる。なお、本発明は、以下の推論によって限定されるものではない。減水性能の向上には、共重合体の混合物全体としての平均単量体組成比において、生成してくる混合物中の単量体組成比をより均一にする(ばらつきを少なくする)ことが重要であり、混合物中の単量体組成比は、単量体(B)の添加速度を少なくとも1回変化させるにあたり、速くするかあるいは遅くすることによって達成されるが、変化前の添加速度が変化後の添加速度よりも早い場合に達成されることが多いと考えられる。これは、重合途中や後半の、重合性の低い単量体(A)が少なくなってきたところに重合性の高い単量体(B)が一定速度で添加されると、新たに生成する共重合体組成中の単量体(B)の割合が増えていくが、単量体(B)を初めに早い速度で単量体(A)に添加し、後段階でゆっくり添加することによって、重合後半に新たに生成する共重合体組成中の単量体(B)の割合が増えていくことが抑えられ、これにより単量体組成が均一な共重合体が製造できるためと考えられる。例えば、一つの重合工程で、単量体(B)の添加速度を2段階で変化させた場合には、前半の添加速度を後半の添加速度に比して速くすると、減水性能に優れたセメント混和剤用の共重合体が得られる。逆に、スランプ保持性の向上には、共重合体の混合物全体としての平均単量体組成比において、生成してくる混合物中の単量体組成比を適度に変化させる(共重合体ブレンドにする)ことが重要であり、混合物中の単量体組成比は、単量体(B)の添加速度を少なくとも1回変化させるにあたり、速くするかあるいは遅くすることによって達成されるが、変化後の添加速度が変化前の添加速度よりも早い場合に達成されることが多いと考えられる。これは、単量体(B)を後段階で速い速度で添加することによって、重合前半は単量体(A)が多い状態で共重合反応が進み、重合後半は単量体(B)が多い状態で共重合反応が進み、さらに少なくなってきた単量体(A)の重合性が低いことから、新たに生成する共重合体組成中の単量体(B)の割合が増えていくため、単量体組成が異なる共重合体ブレンドが製造できるためと考えられる。例えば、一つの重合工程で、単量体(B)の添加速度を2段階で変化させた場合には、後半の添加速度を前半の添加速度に比して速くすると、スランプ保持性に優れたセメント混和剤用の共重合体が得られる。このような場合の段階間で単量体(B)の添加速度を変化させる度合いは、特に限定されるものではなく、製造するセメント混和剤の所望の特性(特に、減水性能の向上や減水性能またはスランプ保持性とのバランス)ならびに単量体(A)及び(B)の共重合性を考慮して適宜選択できるが、段階間の単量体(B)の添加速度の変化による共重合体の構造(単量体組成)の変化を考慮すると、一定の割合以上であることが好ましい。すなわち、単量体(A)への単量体(B)の添加速度を連続的に変化させる場合には、時間当たりの単量体(B)の添加量、即ち、添加速度(質量部/分)の最大値(VMAX)と最小値(VMIN)の比(VMAX/VMIN)は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.25〜30倍、さらにより好ましくは1.5〜15倍、最も好ましくは1.8〜5倍である。また、単量体(A)への単量体(B)の添加速度を段階的に変化させる場合には、前半の単量体(B)の添加速度をVB1とし、また、後半の添加速度をVB2とすると、単量体(B)の添加速度の変化前後の比(VB1/VB2)は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.25〜30倍、さらにより好ましくは1.5〜15倍、最も好ましくは1.8〜5倍である。この際、VB1/VB2の比が1.2未満であると、段階間の単量体(B)の添加速度の変化が小さすぎて、共重合体の構造(単量体組成)を有意に変化させることができず、このため、このような方法で得られた共重合をセメント混和剤に使用しても、所望の減水性能の向上が達成できず、所望の効果を達成するためにセメント混和剤の添加が多量に必要となる場合がある。また、一つの重合工程で単量体(B)の添加速度を2段階で変化させた場合に、後半の添加速度を前半の添加速度に比して速くすると、スランプ保持性に優れた共重合体が得られる。このような場合の段階間で単量体(B)の添加速度を変化させる度合いもまた、特に限定されるものではなく、製造するセメント混和剤の所望の特性(特に、スランプ保持性の向上スランプ保持性または減水性能とのバランス)ならびに単量体(A)及び(B)の共重合性を考慮して適宜選択できる。好ましくは、単量体(B)の添加速度の変化前後の比(VB2/VB1)は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.25〜30倍、さらにより好ましくは1.5〜15倍、最も好ましくは1.8〜5倍である。この際、VB2/VB1の比が1.2未満であると、上記と同様、段階間の単量体(B)の添加速度の変化が小さすぎて、共重合体の構造(単量体組成)を有意に変化させることができず、このため、このような方法で得られた共重合をセメント混和剤に使用しても、所望のスランプ保持性の向上が達成できず、時間と共に作業性が悪くなる場合がある。なお、本発明において、一つの重合工程で単量体(B)の添加速度を3段階以上で変化させる実施態様においても、段階間で単量体(B)の添加速度を変化させる度合いは、上記範囲内であることが好ましい。
【0037】
本発明において、単量体(B)の添加条件は、所望の特性(減水性能及びスランプ保持性)が得られる条件であれば特に制限されない。例えば、単量体(B)の添加速度は、予め添加された単量体(A)の量や所望の特性によって適宜選択できる。例えば、単量体(B)を2段階で添加した場合において、速度の遅い段階での単量体(B)の添加速度は、単量体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部/時間、より好ましくは0.5〜5質量部/時間である。また、このような場合において、速い段階での単量体(B)の添加速度は、単量体(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜50質量部/時間、より好ましくは1〜15質量部/時間である。また、単量体(B)の添加時間は、単量体(A)及び(B)の添加量やセメント混和剤としての所望の特性によって適宜選択できるが、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜6時間である。また、単量体(B)の添加温度は、以下に詳述されるような重合温度と同様でよいが、好ましくは0〜150℃、より好ましくは30〜100℃、最も好ましくは40〜80℃である。
【0038】
以下、本発明のセメント混和剤の原料である、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和有機酸系単量体(B)、さらには必要であれば混合されてもよい第3の不飽和単量体(C)について詳しく説明する。
【0039】
本発明による不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)は、上記式(1)で表わされる化合物である。すなわち、本発明における不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)は、重合性エチレン基とポリアルキレングリコール鎖とを有するものであり、エチレン基を有するアルコールポリアルキレングリコール付加物が好適である。上記単量体(A)としては、エチレン基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよく、炭素数が5以下、好ましくは炭素数が5のアルケニル基を有するとともに、炭素数が2〜18のオキシアルキレン基を1〜300個有する化合物であることが好ましい。具体的には、ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物が好適であり、より好ましくは3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを付加させたイソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、特に好ましくは3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜300個付加させたイソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物である。
【0040】
上記式(1)において、R、R及びRは、水素原子またはメチル基を表わす。この際、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。この際、Rの炭素数が20を超えると、本発明のセメント混和剤の疎水性が強くなりすぎるために、良好な分散性を得ることができなくなるからである。炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の、炭素数1〜20の脂肪族または脂環式アルキル基;フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等の、炭素数6〜20のアリール基;o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル等の、アルキル基で置換されたアリール基;ビフェニリル等の、(アルキル)フェニル基で置換されたアリール基;ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチル等の、アリール基で置換されたアルキル基などが挙げられる。これらのうち、Rは、好ましくは、炭素数10以下、更に好ましくは、炭素数3以下、特に好ましくは、炭素数2以下の飽和アルキル基または不飽和アルキル基が好ましい。すなわち、Rは、水素原子、メチル、エチル、ビニルが特に好ましく、水素原子及びメチルが最も好ましい。また、優れた材料分離防止性能の発現や、セメント組成物中に連行される空気量を適度なものとするためには、炭素数5〜10の炭化水素基である。この際、炭化水素基は、飽和アルキル基、不飽和アルキル基であることが好ましい。また、これらのアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。
【0041】
上記式(1)において、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表わす、またはRC=CR−で表わされる基がビニル基(CH=CH−基)である(即ち、R、R及びRが水素原子である)場合には、Xは結合手である、即ち、Xに結合している炭素原子、酸素原子同士が直接結合している。炭素数1〜5の2価のアルキレン基の例としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、トリメチレン(−CHCHCH−)、テトラメチレン(−CHCHCHCH−)、プロピレン[−CH(CH)CH−]などが挙げられる。これらのうち、Xは、メチレン、エチレンが好ましく、特にエチレンであることが好ましい。
【0042】
また、上記式(1)において、Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表わす。この際、アルキレン基は、直鎖状であってもあるいは分岐鎖であってもよい。なお、式(1)中、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。このような炭素数2〜18のアルキレン基としては、エチレン(−CHCH−)、トリメチレン(−CHCHCH−)、テトラメチレン(−CHCHCHCH−)、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等の、直鎖のアルキレン基;エチリデン[−CH(CH)−]、プロピレン[−CH(CH)CH−]、プロピリデン[−CH(CHCH)−]、イソプロピリデン[−C(CH−]等の、分岐鎖のアルキレン基などが挙げられる。すなわち、このような−(RO)−で表されるオキシアルキレン基は、炭素数2〜18のアルキレンオキシド付加物であるが、このようなアルキレンオキシド付加物の構造は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等のアルキレンオキシドの1種または2種以上により形成される構造がある。これらのうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド付加物であることが好ましく、エチレンオキシドが主体であるものが特に好ましい。−(RO)−で表されるオキシアルキレン基がエチレンオキシド主体である際の、全オキシアルキレン基中に占めるエチレンオキシドの割り合いは、特に制限されないが、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは75〜100モル%である。
【0043】
上記式(1)において、mは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である。なお、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよく、また、−(RO)−で表されるオキシアルキレン基の付加は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0044】
上記ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であるmは、1〜300の数である。mが300を超えると、単量体の重合性が低下することになる。mの好ましい範囲としては、2以上であり、また、−(RO)−の中に占めるオキシエチレン基の平均付加モル数としては、2以上であることが好ましい。mが2未満であったり、オキシエチレン基の平均付加モル数が2未満であったりすると、セメント粒子等を分散させるために充分な親水性、立体障害が得られずに、優れた流動性を得ることができない場合がある。優れた流動性を得るには、mの範囲としては、3以上が好ましく、また、280以下が好ましい。より好ましくは、5以上、更に好ましくは、10以上、特に好ましくは、20以上である。また、より好ましくは、250以下、特に好ましくは、150以下である。また、オキシエチレン基の平均付加モル数としては、好ましくは、3以上が好ましく、また、280以下が好ましい。より好ましくは、10以上であり、更に好ましくは、20以上である。また、より好ましくは、250以下であり、更に好ましくは、200以下であり、特に好ましくは150以下である。なお、平均付加モル数とは、単量体1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。粘性の低いコンクリートを得るためには、mの範囲としては3以上が好ましく、また、100以下が好ましい。より好ましくは4以上であり、また、50以下である。特に好ましくは4以上であり、また、30以下である。最も好ましくは5以上であり、また、25以下である。なお、上記ポリオキシアルキレン基を有する式(1)の単量体(A)として、オキシアルキレン基の平均付加モル数mの異なる2種類以上の単量体を組み合わせて用いることができる。好適な組合せとして、例えば、mの差が10以下の組合せ(好ましくは5以下)、mの差が10以上(好ましくはmの差が20以上)の2種類の単量体(A)の組合せ、あるいは各々の平均付加モル数mの差が10以上(好ましくはmの差が20以上)の3種類以上の単量体(A)の組合せ等が挙げられる。更に、組み合わせるmの範囲としては、平均付加モル数mが40〜300の範囲の単量体(A)と、1〜40の範囲の単量体(A)との組合せ(但しmの差は10以上、好ましくは20以上);平均付加モル数mが20〜300の範囲の単量体(A)と、1〜20の範囲の単量体(A)との組合せ(但しmの差は10以上、好ましくは20以上)等が可能である。
【0045】
したがって、本発明で使用できる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)の例としては、上述したものであればよいが、例えば、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル3−ブテニル)エーテル、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテルが好適に使用できる。
【0046】
本発明において、上記単量体(A)は、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。単量体(A)を2種以上の混合物の形態で使用する場合の各単量体の組成比は、製造されるセメント混和剤の所望の特性に応じて適宜選択でき、特に制限されるものではない。例えば、式(1)中のmの値が異なる単量体の組合せが好適に使用できる。この際、各単量体の組成比は、特に制限されるものではないが、例えば、2種の混合物の形態で使用する場合には、各単量体の組成比(質量比)は、99/1〜1/99、より好ましくは80/20〜20/80であることが好ましい。
【0047】
本発明で使用される不飽和有機酸系単量体(B)は、重合性不飽和基とカルボン酸を形成しうる基とを有する単量体であればよく、下記式(2)で表される化合物である。
【0048】
【化7】

【0049】
上記式(2)において、R、R及びRは、水素原子、メチル基、または−(CHCOOMを表わす。この際、−(CHCOOMは、−COOMまたは他の−(CHCOOMと無水物を形成してもよく、この場合は、MまたはMは存在しない。また、R、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、上記式:−(CHCOOMにおいて、zは、0〜2の数である。また、M及びMは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基(有機アンモニウム基)を表わす。この際、M及びMは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。M及びMにおける金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。更に、アンモニウム基であってもよい。
【0050】
本発明で使用される単量体(B)のうち、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が好適に使用され、不飽和モノカルボン酸系単量体がより好ましく使用される。
【0051】
上記好ましい単量体(B)のうち、式(2)中、R、R及びRが水素原子またはメチル基である不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩(有機アンモニウム塩)が好適である。これらの中でも、セメント分散性能の向上の面から、(メタ)アクリル酸系単量体、即ち、アクリル酸、メタクリル酸;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が、単量体(B)として好適に使用される。
【0052】
また、上記好ましい単量体(B)のうち、式(2)中、R、R及びRのうち、1つが−(CHCOOMを表わしかつ他は水素原子またはメチル基である不飽和ジカルボン酸系単量体は、分子内に不飽和基を1つとカルボン酸を形成しうる基を2つとを有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、またはこれらの無水物が好適である。
【0053】
上記単量体(B)としては、これらの他にも、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミン酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミドが使用される。
【0054】
本発明において、上記単量体(B)は、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。単量体(B)を2種以上の混合物の形態で使用する場合の各単量体の組成比は、製造されるセメント混和剤の所望の特性に応じて適宜選択でき、特に制限されるものではない。例えば、アクリル酸系単量体とメタクリル酸系単量体、アクリル酸系単量体と(無水)マレイン酸系単量体、メタクリル酸系単量体と(無水)マレイン酸系単量体の組合せが好適に使用できる。この際、各単量体の組成比は、特に制限されるものではないが、例えば、2種の混合物の形態で使用する場合には、各単量体の組成比(質量比)は、99/1〜1/99、より好ましくは95/5〜5/95、さらにより好ましくは80/20〜20/80であることが好ましい。このように、不飽和有機酸系単量体(B)は、(メタ)アクリル酸系単量体を含むことが好ましく、特にアクリル酸系単量体を含むことが好ましい。この際、アクリル酸系単量体の割合は、全単量体の質量の50質量%以上とすることが好ましい。
【0055】
本発明に係る共重合体は、上記単量体(A)及び単量体(B)を必須の単量体成分として含む単量体成分を共重合することによって製造することができるが、さらに第3の不飽和単量体(C)(以下、単に「単量体(C)」とも称する)を含んでもよい。この際使用できる単量体(C)としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類;ならびにこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の、不飽和アミド類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の、不飽和アミノ化合物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の、ビニルエステル類;スチレン等の、芳香族ビニル類などが挙げられる。上記単量体(C)は、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。特に、スランプ保持性を向上させるためには、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系単量体を単量体成分として使用することが好ましい。
【0056】
上記単量体(A)及び(B)、ならびに必要であれば単量体(C)の共重合方法は、特に制限されず、公知の共重合方法が使用できる。以下、本発明による単量体(A)及び(B)の共重合方法の好ましい実施態様を説明する。
【0057】
上述したように、本発明において、単量体(A)及び(B)を共重合する際の各単量体の反応容器への添加方法は、まず、共重合反応前に予め、単量体(A)を一括して反応容器に添加した後、単量体(B)を添加するが、この際、単量体(B)は、その添加速度を少なくとも1回変化させて、反応容器に添加する。このように、反応性(重合性)の低い単量体(A)を先に一括して添加した後、反応性(重合性)の高い単量体(B)を添加することによって、単量体(A)及び(B)の共重合反応を効率よく行なうことができ、また、単量体(B)の添加速度をその重合工程中少なくとも1回変化させることによって、単量体の組成をより均一にした共重合体、あるいは単量体組成の異なる2種以上の共重合体ブレンドを一つの重合工程で製造することができ、さらに、その添加速度の変化の度合いを適宜調節することによって、減水性能に優れたおよび/またはスランプ保持性に優れたなど、特性の異なる共重合体を得ることができるため、単量体(B)の添加速度を適宜変化させることによって、所望の特性を有するセメント混和剤用共重合体が一つの重合工程で製造できる。
【0058】
また、単量体(C)を使用する際の単量体(C)の添加時期は、単量体(A)及び(B)と効率よく共重合して、所望の共重合体ブレンドが製造できる時期であれば特に制限されず、単量体(A)と予め一緒に反応容器に添加されても;単量体(B)と一緒に連続して若しくは段階的に(この際、単量体(C)が添加されない時期があってもよい)添加されても;または単量体(B)の添加が完了した後に添加されてもよい。これらのうち、単量体(C)は、滴下して添加されるのが好ましい。
【0059】
本発明による共重合体の製造方法は、前記単量体(A)と単量体(B)、ならびに必要であれば単量体(C)を共重合するものである。この際、共重合方法は、特に制限されず、溶液重合や塊状重合等の公知の方法が使用できる。なお、共重合は、回分式でも連続式でも行なうことができ、その際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。なお、上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合液の形態で使用されてもよい。これらのうち、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。脱溶媒工程を省略できるため、水を使用することが特に好ましい。また、溶媒の使用量は、単量体(A)及び(B)、ならびに必要であれば単量体(C)の共重合が十分進行できる量であれば制限されないが、共重合の際に使用される全単量体成分の使用量が、他の原料を含む全原料の質量に対して、30質量%以上になるように、溶媒量が調節されることが好ましい。より好ましくは、共重合の際に使用される全単量体成分の使用量が、他の原料を含む全原料の質量に対して、30〜95質量%、さらにより好ましくは40〜93質量%、最も好ましくは50〜90質量%となるように、溶媒量が調節される。この際、全単量体成分の使用量が30質量%未満であると、重合率が低下したり、生産性が低下したりする場合がある。
【0060】
本発明による共重合体の製造方法において、共重合の際に連鎖移動剤を用いる、および/または共重合した後にpHを5以上に調整することが好ましい。より好ましくは、共重合の際に連鎖移動剤を使用し、かつ共重合した後にpHを5以上に調整する。共重合の際に連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。特に、全単量体の使用量が、重合時に使用する原料の全量に対して、30質量%以上となる高濃度で重合反応を行なう場合、連鎖移動剤を用いることが有効である。
【0061】
本発明において使用できる連鎖移動剤としては、共重合体の分子量の調整ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物2−アミノプロパン−1−オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩などが挙げられる。また、連鎖移動性の高い単量体を連鎖移動剤として使用してもよい。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0062】
本発明において、連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割添加等の添加方法が好ましく使用される。また、連鎖移動剤は、単独で反応容器に添加されても、あるいは単量体成分を構成するオキシアルキレン基を有する単量体、溶媒などとあらかじめ混合されてもよい。
【0063】
本発明では、共重合により得られた共重合体は、取り扱い性の観点から、pHを5以上に調整しておくことが好ましいが、重合をpH5以上で行なった場合、重合率の低下が起こると同時に、共重合性が悪くなり、セメント混和剤用共重合体として分散性能が低下するため、pH5未満で共重合反応を行ない、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましいが、部分中和によりpHの範囲を4〜5に調整することも可能である。pHの調整は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の、一価金属および二価金属の水酸化物および炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンなどのアルカリ性物質を用いて行なうことができる。連鎖移動剤を用いる場合には、得られた共重合体をそのままセメント混和剤の主成分として用いることもできる。
【0064】
本発明では、単量体(A)及び(B)、ならびに必要であれば単量体(C)を、重合開始剤の存在下で、溶液重合や塊状重合などの公知の方法によって、共重合に供されるが、この際使用される重合開始剤は、特に制限されず、公知の重合開始剤が使用できる。共重合反応の開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、水溶液重合を行なう場合に好適に使用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物として、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等が、アゾ系開始剤として、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等が、それぞれ、使用できる。また、低級アルコール、芳香族あるいは脂肪族炭化水素、エステル化合物、ケトン化合物等を溶媒とする溶液重合や塊状重合を行なう場合に好適に使用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が;また、アゾ系開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル等が、使用できる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。なお、塊状重合は、50〜200℃の温度範囲内で行われる。上記重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0065】
また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用してもよい。上記促進剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0066】
また、共重合の際には、前述の過酸化物と還元剤とを併用するレドックス系重合開始剤で重合を開始させることが好ましい。前記還元剤としては、一般的な還元剤であれば特に制限されるものではないが、例えば、モール塩に代表されるような鉄(II)、スズ(II)、チタン(III)、クロム(II)、V(II)、Cu(II)等の低原子価状態にある金属の塩類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドラジン等のアミン化合物およびその塩;亜二チオン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物等のほか、−SH、−SOH、−NHNH、−COCH(OH)−などの基を含む有機化合物およびその塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ二亜硫酸塩等のアルカリ金属亜硫酸塩や、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム等の低級酸化物およびその塩;D−フルクトース、D−グルコース等の転化糖;チオウレア、二酸化チオウレア等のチオウレア化合物;L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
前記過酸化物と還元剤との組合せの具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキシドとアミンとの組合せ、クメンハイドロパーオキシドと鉄(II)、Cu(II)等の金属化合物との組合せが挙げられる。中でも特に、水溶性の過酸過物と還元剤との組合せが好ましく、例えば、過酸化水素とL−アスコルビン酸との組合せ、過酸化水素とエリソルビン酸との組合せ、過酸化水素とモール塩との組合せ、過硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムとの組合せが特に好ましい。とりわけ好ましい組合せは、過酸化水素とL−アスコルビン酸との組合せである。
【0068】
前記過酸化物の使用量は、単量体成分の合計量に対して、0.01〜30モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは0.5〜10モル%とするのがよい。0.01モル%未満であると、未反応の単量体が多くなり、一方、30モル%を越えると、オリゴマー部分が多いポリカルボン酸が得られることとなるため、好ましくない。前記還元剤の使用量は、前記過酸化物に対して、0.1〜500モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは1〜200モル%、最も好ましくは10〜100モル%とするのがよい。0.1モル%未満であると、活性ラジカルが充分に発生せず、未反応単量体が多くなり、一方、500モル%を越えると、過酸化水素と反応せず残存する還元剤が多くなるため、好ましくない。
【0069】
共重合の際には、前記過酸化物と前記還元剤のうちの少なくとも一方が、常に反応系中に存在するようにすることが好ましい。具体的には、過酸化物と還元剤を同時に一括添加しなければよく、例えば、両者を滴下等により連続的に添加するか、分割添加するなど、長時間かけて添加すればよい。過酸化物と還元剤を同時に一括添加した場合には、過酸化物と還元剤が急激に反応するため、添加直後には多量の反応熱のため反応制御が困難になり、しかも、その後急激にラジカル濃度が減少するため、未反応モノマーが多量に残存することになる。さらに、反応の初期と後半とでは、モノマーに対するラジカル濃度が極端に異なるため、分子量分布が極端に大きくなり、セメント混和剤としての性能が低下することになる。なお、一方を添加してから、他方の添加を開始するまでの時間は、5時間以内とするのが好ましく、特に好ましくは3時間以内とするのがよい。
【0070】
本発明による共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、使用される溶媒、重合開始剤及び連鎖移動剤の種類などにより適宜定められるが、共重合の際には、単量体の高い反応性を得るために、ラジカル重合開始剤の半減期が0.5〜500時間、好ましくは1〜300時間、さらに好ましくは3〜150時間となる温度で重合反応を行なうことが好ましく、このため、共重合温度は、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上であり、特に好ましくは、60℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、100℃以下であり、特に好ましくは、85℃以下である。例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合、重合反応温度は40〜90℃の範囲が適当であるが、42〜85℃の範囲が好ましく、45〜80℃の範囲がさらに好ましい。また、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)とを組み合わせて開始剤とした場合、重合反応温度は30〜90℃の範囲が適当であるが、35〜85℃の範囲が好ましく、40〜80℃の範囲がさらに好ましい。重合時間は、0.5〜10時間の範囲が適当であるが、好ましくは0.5〜8時間、さらに好ましくは1〜6時間の範囲が良い。重合時間が、この範囲より、長すぎたり短すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0071】
本発明において、共重合体の重合の際に用いる単量体(A)及び(B)の混合比率は、所望の特性の共重合体が得られる比率であれば特に限定されないが、単量体(A):単量体(B)の質量比(質量%)が、1〜99:99〜1、より好ましくは50〜99:50〜1、さらにより好ましくは65〜98:35〜2、特に好ましくは75〜97:25〜3、最も好ましくは80〜95:20〜5である。この際、単量体(A)及び単量体(B)の合計は100質量%である。
【0072】
また、本発明の方法において、単量体(C)をさらに使用する場合の、単量体(C)の混合比率は、全体量体中(すなわち、単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)の合計質量に対して)、0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは1〜10質量%となるような量である。この際、単量体(A)、単量体(B)及び単量体(C)の合計は100質量%である。
【0073】
また、本発明によるセメント混和剤用の共重合体は、ブレンドとして製造され、また、所望の特性を発揮できるものであればその重量平均分子量などは特に制限されないが、好ましくは、共重合体の重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で、5,000〜300,000の範囲、より好ましくは5,000〜100,000、さらにより好ましくは7,000〜80,000、最も好ましくは9,000〜50,000の範囲である。これら各単量体の質量比率と重量平均分子量の範囲とを選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント混和剤用共重合体が製造できる。なお、本明細書中、重合体の重量平均分子量は、下記GPC測定条件により測定される値である。
【0074】
<GPCによる分子量の測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
【0075】
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp) 272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
【0076】
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21。
【0077】
また、本発明の第二は、上記式(1)で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、および上記式(2)で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)の共重合体を含有するセメント混和剤であって、モルタル試験方法(X)で、250±5mmのフロー値を得るために必要なセメント混和剤の固形分換算での添加量が、ポリカルボン酸系共重合体(Y)の固形分換算での添加量の93質量%未満であることを特徴とするセメント混和剤を提供するものである。このような共重合体は、本発明の方法によって製造されることが好ましい。本発明の方法によると、上述したように、単量体の組成をより均一にした共重合体、あるいは単量体組成の異なる複数の共重合体ブレンドが製造でき、特に単量体の組成が均一な共重合体は、従来のポリカルボン酸系共重合体に比べて、優れた減水性能を発揮できる。
【0078】
本発明において、モルタル試験方法(X)で、250±5mmのフロー値を得るために必要なセメント混和剤の固形分換算での添加量の、ポリカルボン酸系共重合体(Y)の固形分換算での添加量に対する割合(%)は、93質量%未満であることが必須であり、好ましくは92質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらにより好ましくは85質量%以下、最も好ましくは80質量%以下である。この際、上記割合は、従来の製造方法によって得られ、セメント混和剤として一般的に使用されるポリカルボン酸系共重合体に対する減水性能の向上度を示しており、低い値であるほど、減水性能に優れていることを意味する。このため、上記割合の下限は、特に設定されていないが、一般的に、50質量%、好ましくは65質量%である。なお、減水性能に大きく寄与する有効成分量をアップする、および/または生産性の点で、共重合体の単量体(A)の反応率は、87%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。また、単量体(B)の反応率は、95%以上が好ましく、より好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0079】
本明細書において、「モルタル試験方法(X)」は、以下のようにして行なわれる。
【0080】
<モルタル試験方法(X)>
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーン及び突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行なった。
【0081】
試験に使用した材料及びモルタルの配合は、太平洋セメント社普通ポルトランドセメント900g、JIS−R5201−1997に準拠したセメント強さ試験用標準砂1350g、各種重合体水溶液と消泡剤を含むイオン交換水270gである。なお、消泡剤は、気泡がモルタル組成物の分散性に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的にはアルキルアルキレンオキサイド系消泡剤を、セメント混和剤用共重合体に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
【0082】
モルタルは、室温(20±2℃)にて機械練り用練混ぜ機により4.5分で調製した。具体的には、練り鉢に規定量のセメント、砂を入れ、練混ぜ機を低速で始動させる。パドルを始動させて15秒後に規定量の混和剤及び消泡剤を含んだ水を15秒間で入れる。その後、さらに低速で15秒間練混ぜた後、高速にして、引き続き105秒間練混ぜを続ける。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜる。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。なお、セメント混和剤用共重合体の添加量は、初期のフロー値が250±5mmになるように調整した。
【0083】
また、本明細書において、「ポリカルボン酸系共重合体(Y)」は、従来、優れた減水性能を発揮するポリカルボン酸系共重合体の一つであり、上記モルタル試験方法(X)によるフロー値の基準物質として使用されている。ポリカルボン酸系共重合体(Y)は、以下のようにして製造される物質をいう。
【0084】
<ポリカルボン酸系共重合体(Y)の製造方法>
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水24.63部、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN−50と称す)47.72部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.75部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B)8.07部を3時間かけて滴下した。単量体(B)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.20部、L−アスコルビン酸0.10部、イオン交換水15.54部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約38,000のポリカルボン酸系共重合体(Y)水溶液を得た。なお、基準物質としては、重量平均分子量が37,000〜40,000のポリカルボン酸系共重合体を使用する。
【0085】
さらに、本発明の第三は、上記式(1)で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)および単量体(B)として(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合することによって得られる共重合体を含むセメント混和剤であって、単量体(B)として使用される(メタ)アクリル酸系単量体中の(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率が、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、5質量%以下である、セメント混和剤を提供するものである。
【0086】
上記態様において、単量体(B)として使用される(メタ)アクリル酸系単量体は、特に制限されないが、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸、ならびにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び有機アミン塩などの塩形成物が使用できる。一方、「(メタ)アクリル酸ダイマー」とは、2分子の(メタ)アクリル酸が付加反応して生成する二量体などを意味し、例えば、β−アクリロキシプロパン酸、β−メタクリロキシイソブタン酸、β−メタクリロキシプロパン酸及びβ−アクリロキシイソブタン酸、ならびにこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び有機アミン塩などの塩形成物がある。これらのうち、セメント分散性能の向上を考慮すると、アクリル酸および/またはアクリル酸の塩形成物を単量体成分として使用することが好ましい。ゆえに、上記態様によると、アクリル酸および/または当該アクリル酸の塩形成物中に、これらのダイマーである、β−アクリロキシプロパン酸および/または当該β−アクリロキシプロパン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び有機アミン塩などの塩形成物の含有率が、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、5質量%以下であることが好ましい。この際、(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率が5質量%を超えると、得られる共重合体のセメント分散性能が低下する。この理由は明らかではないが、(メタ)アクリル酸ダイマーの存在により、得られる共重合体の形態が所望の形態とは異なるものとなるためと推測される。このため、(メタ)アクリル酸中に含まれる(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率は、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、5質量%以下(即ち、0〜5質量%)である必要があるが、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%である。この際、(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率はなるべく少ないことが好ましいため、上記範囲では、この下限を0質量%としたが、商業的に容易に入手可能な(メタ)アクリル酸の場合では、(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率は、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらにより好ましくは0.01〜1質量%である。
【0087】
また、単量体成分としてアクリル酸を用いる場合には、該アクリル酸中に含まれる不純物は少ないほど好ましい。具体的には、フルフラールの含有率が1,000ppm以下、ベンズアルデヒドの含有率が500ppm以下などであることが好ましく;フルフラールの含有率が100ppm以下、ベンズアルデヒドの含有率が100ppm以下などであることがより好ましく;フルフラールの含有率が50ppm以下、ベンズアルデヒドの含有率が50ppm以下などであることがさらにより好ましく;フルフラールの含有率が10ppm以下、ベンズアルデヒドの含有率が10ppm以下などであることが特に好ましい。なお、アクリル酸中にマレイン酸が含まれてもよいが、このような場合にアクリル酸中に不純物として存在するマレイン酸の含有率は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。一方、必要に応じて、単量体成分としてマレイン酸を積極的に配合してもよい。また、(メタ)アクリル酸ダイマーは(メタ)アクリル酸系単量体の保存中に生成することがあり、このような生成を防ぐために、(メタ)アクリル酸系単量体を、重合反応に使用するまでは、40℃以下、より好ましくは30℃以下に保存することが好ましい。
【0088】
本明細書において、(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率は、JIS K0124:2002に準拠した方法に従って、液体クロマトグラフィーにより測定した値である。
【0089】
本発明の第三において、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)は、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、(メタ)アクリル酸系単量体としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のそれぞれ1種が単独で使用されてもあるいは双方が混合物の形態で使用されてもよい。また、単量体(B)としてさらに、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体が使用されてもよい。さらに、上記単量体(A)及び(B)に加えて、前述の第3の不飽和単量体(C)が、1種が単独で使用されてもあるいは2種以上が混合物の形態で使用されてもよい。上記単量体(A)及び(B)、ならびに必要であれば第3の不飽和単量体(C)の共重合方法は、特に制限されず、前述したような公知の共重合方法が同様にして使用できる。
【0090】
ここで、本発明によるセメント混和剤の好適な実施形態を下記表1に示す。なお、下記表1において、「IPNモノマー」は、イソプレノール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)の水酸基にエチレンオキシドを付加した単量体を表わし、IPNの略号の後に記載される数字は、エチレンオキシドの平均付加モル数を表わす。また、「アクリル酸添加量(wt%)」は、全単量体成分に対するアクリル酸の添加量を質量百分率で表わしたものであり、「1段階目」は、アクリル酸の添加速度を変化させる前のアクリル酸の添加量(wt%)を表わし、「2段階目」は、アクリル酸の添加速度を変化させた後のアクリル酸の添加量(wt%)を表わし、「変化率(%)」とは、アクリル酸の添加速度を変化させる前後のアクリル酸添加量のうち大きい値を小さい値で除した比率を小数点第一位で四捨五入した値を表わす。例えば、下記表1の第1行における変化率は、6.03/2.84=2.12…=2.1と、第3行目の変化率は、1.70/1.40=1.21…=1.2と算出される。さらに、「仕込み組成比(wt%)」は、アクリル酸を完全に中和してアクリル酸ナトリウム(SA)とした場合のIPNモノマーとの組成比(wt%)である。また、アクリル酸ダイマー(β−アクリロキシプロパン酸)を含むアクリル酸を単量体成分として用いることができるが、該アクリル酸中のアクリル酸ダイマーの含有率は、上記したように、アクリル酸に対して、0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、さらにより好ましくは0〜1質量%である。この際、アクリル酸ダイマーの含有率はなるべく少ないことが好ましいため、上記範囲では、この下限を0質量%としたが、商業的に容易に入手可能なアクリル酸の場合では、アクリル酸ダイマーの含有率は、アクリル酸に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらにより好ましくは0.01〜1質量%である。
【0091】
【表1】

【0092】
本発明に係るセメント混和剤は、上記した共重合体/共重合体ブレンドを必須成分として含有するものである。本発明に係るセメント混和剤は、本発明による共重合体ブレンドのみから構成されてあるいは他の添加剤を含むものであってもよい。後者の場合に使用できる他の添加剤としては、下記(1)〜(20)に記載されるものなどが挙げられる。このようなセメント混和剤は、セメントなどと混合されて、セメント組成物として使用できる。また、本発明に係るセメント混和剤または共重合体は、セメント以外の水硬性材料を使用した水硬性組成物にも有効であり、具体的には、本発明による共重合体と石膏とを必須とする水硬性組成物等が挙げられる。また、本発明に係るセメント組成物は、さらに水を含んでいてもよく、水を含むことによって水硬性が発現して硬化する。本発明のセメント組成物は、必要に応じて、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)等を含有していてもよい。このようなセメント組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。また、本発明に係るセメント組成物は、超高強度コンクリートにも使用できる。
【0093】
なお、超高強度コンクリートとは、セメント組成物の分野で一般的にそのように称されているもの、すなわち従来のコンクリートに比べて水/セメント比を小さくしてもその硬化物が従来と同等又はより高い強度となるようなコンクリートを意味し、例えば、水/セメント比が25質量%以下、更に20質量%以下、特に18質量%以下、特に14質量%以下、特に12質量%程度であっても通常の使用に支障をきたすことのない作業性を有するコンクリートであり、その硬化物が60N/mm以上、更に80N/mm以上、より更に100N/mm以上、特に120N/mm以上、特に160N/mm以上、特に200N/mm以上の圧縮強度を示すものである。
【0094】
このようなセメント組成物について以下に説明する。
【0095】
使用できるセメントは、特に限定されず、公知のセメントが使用できるが、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。
【0096】
また、前記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。また、セメント組成物において、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は、特に制限されないが、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比=10〜70質量%、好ましくは単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比=20〜65%が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0097】
また、セメント組成物において、セメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント混和剤は、セメント質量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜8質量%、より好ましくは0.1〜5質量%となる量で添加する。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では性能的に不十分であり、逆に10%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。なお、上記質量%は、固形分換算の値である。
【0098】
本発明のセメント混和剤は、通常用いられるセメント分散剤と併用することができる。上記セメント分散剤としては、以下のものが好適である。
【0099】
リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載の如くアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載の如く(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/又はその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/若しくはその加水分解物、並びに/又は、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載の如くA成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤;特開昭62−216950号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル若しくはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体。
【0100】
特開平1−226757号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平6−191918号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、並びに、(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、若しくは、その加水分解物、又は、その塩;特公昭58−38380号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、若しくは、その塩、又は、そのエステル。
【0101】
特公昭59−18338号公報に記載の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載の如くスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、又は、その塩;特開平6−271347号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開昭62−68806号公報に記載の如く3−メチル−3ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、又は、その塩等のポリカルボン酸(塩)。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
上記セメント分散剤を併用する場合には、使用するセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的に決められないが、上記セメント混和剤と上記セメント分散剤との配合質量の割合は、5〜95:95〜5であることが好ましい。より好ましくは、10〜90:90〜10である。
【0103】
または、本発明のセメント混和剤は、他のセメント混和剤(材)と組み合わせて用いることもできる。上記他のセメント混和剤としては、以下に示すような他の公知のセメント混和剤(材)等が挙げられる。
【0104】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0105】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0106】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0107】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0108】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0109】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0110】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0111】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0112】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0113】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0114】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0115】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0116】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0117】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0118】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0119】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0120】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0121】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0122】
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
【0123】
(20)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0124】
その他の公知のセメント混和剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等を挙げることができる。これら公知のセメント混和剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
本発明のセメント混和剤は、上述した公知のセメント分散剤やセメント混和剤(材)の他に、セメント組成物の分散性、抑泡制等を向上させるものと併用させてもよい。
【0126】
上記セメント混和剤や上記セメント分散剤をセメント組成物に加える方法としては、これらのセメント混和剤やセメント分散剤を混合してセメント混和剤とし、セメント組成物への混入を容易として行なうことが好ましい。
【0127】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(ア)〜(カ)が挙げられる。
【0128】
(ア)本発明に係るセメント混和剤、及びオキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組合せ。オキシアルキレン系消泡剤としては、特に制限されず公知のオキシアルキレン系消泡剤が同様にして使用できるが、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類等が使用でき、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。なお、オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、セメント混和剤に対して0.01〜20質量%が好ましい。
【0129】
(イ)本発明に係るセメント混和剤、オキシアルキレン系消泡剤、及びAE剤の3成分を必須とする組合せ。この際、オキシアルキレン系消泡剤は、上記(ア)と同様のものが使用でき、また、AE剤は、特に制限されず公知のAE剤が同様にして使用できるが、例えば、上記(15)に例示されたAE剤が使用できる。これらのうち、樹脂石鹸、脂肪酸石鹸、ラウリルサルフェート等の高級アルコール硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩などが使用できる。なお、セメント混和剤と消泡剤の配合質量比としては、セメント混和剤に対して0.01〜20質量%が好ましい。一方、AE剤の配合質量比としては、セメントに対して0.001〜2質量%が好ましい。
【0130】
(ウ)本発明に係るセメント混和剤、及び材料分離低減剤の2成分を必須とする組合せ。材料分離低減剤としては、特に制限されず公知の材料分離低減剤が同様にして使用できるが、例えば、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、セメント混和剤と、材料分離低減剤との配合質量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組合せのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0131】
(エ)本発明に係るセメント混和剤、及び遅延剤の2成分を必須とする組合せ。遅延剤としては、特に制限されず公知の遅延剤が同様にして使用できるが、例えば、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能であるが、オキシカルボン酸類が特に好適である。なお、セメント混和剤と遅延剤との配合質量比としては、10/90〜99.9/0.1の範囲が好ましく、20/80〜99/1の範囲がより好ましい。
【0132】
(オ)本発明に係るセメント混和剤、及び促進剤の2成分を必須とする組合せ。促進剤としては、特に制限されず公知の促進剤が同様にして使用できるが、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。なお、セメント混和剤と促進剤との配合質量比としては、0.1/99.9〜90/10の範囲が好ましく、1/99〜70/30の範囲がより好ましい。
【0133】
(カ)本発明に係るセメント混和剤、及び分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組合せ。なお、スルホン酸系分散剤としては、特に制限されず公知のスルホン酸系分散剤が同様にして使用できるが、例えば、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。また、セメント混和剤とスルホン酸系分散剤との配合質量比としては、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましい。
【0134】
上述したように、本発明に係るセメント混和剤は、各種のセメント組成物等に好適に適用することができる上に、セメント組成物等のスランプ保持性を優れたものとして流動性が保持されるようにし、それを取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができるものである。したがって、本発明に係るセメント混和剤を用いることにより、セメント組成物の減水性能が向上してその硬化物の強度や耐久性が優れたものなり、しかもセメント組成物を取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性となることから、土木・建築構造物等を構築における作業効率等が改善されることとなる。ゆえに、本発明に係るセメント混和剤を含有するセメント組成物もまた、本発明に包含される。
【実施例】
【0135】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0136】
実施例1
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水25.48部、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN−50と称す)49.37部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B1)4.08部を1.5時間かけて滴下し、単量体(B1)の滴下終了に引き続きアクリル酸80%水溶液(B2)1.92部を1.5時間かけて滴下した。単量体(B1)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.16部、L−アスコルビン酸0.08部、イオン交換水15.91部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約42,000の重合体(P−1)水溶液を得た。また、IPN−50とアクリル酸の残存量を液体クロマトグラフィー(LC)により測定し、反応率を求めたところ、IPN−50の反応率は91.3%、アクリル酸の反応率は98.9%であった。
【0137】
実施例2
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水25.48部、IPN−50モノマー49.37部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B1)1.92部を1.5時間かけて滴下し、単量体(B1)の滴下終了に引き続きアクリル酸80%水溶液(B2)4.08部を1.5時間かけて滴下した。単量体(B1)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.14部、L−アスコルビン酸0.08部、イオン交換水15.94部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約41,000の重合体(P−2)水溶液を得た。LCにより反応率を求めたところ、IPN−50の反応率は89.8%、アクリル酸の反応率は98.5%であった。
【0138】
実施例3
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水25.48部、IPN−50モノマー49.37部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B1)1.25部を1.5時間かけて滴下し、単量体(B1)の滴下終了に引き続きアクリル酸80%水溶液(B2)4.75部を1.5時間かけて滴下した。単量体(B1)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.14部、L−アスコルビン酸0.08部、イオン交換水15.94部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約44,000の重合体(P−3)水溶液を得た。LCにより反応率を求めたところ、IPN−50の反応率は87.9%、アクリル酸の反応率は98.0%であった。
【0139】
比較例1
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水25.48部、IPN−50モノマー49.37部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B)6.00部を3時間かけて滴下した。単量体(B)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.14部、L−アスコルビン酸0.08部、イオン交換水15.94部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約43,000の重合体(H−1)水溶液を得た。LCにより反応率を求めたところ、IPN−50の反応率は90.0%、アクリル酸の反応率は98.6%であった。
【0140】
比較例2
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水15.00部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.00部を添加し、アクリル酸80%水溶液6.00部と、IPN−50の70%水溶液70.53部とを、3時間かけて同時に滴下した。これらの単量体を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.14部、L−アスコルビン酸0.08部、イオン交換水5.26部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が約39,000の重合体(H−2)水溶液を得た。LCにより反応率を求めたところ、IPN−50の反応率は86.4%であり、また、アクリル酸の反応率は98.6%であった。
【0141】
なお、単量体(A)(IPN−50)及び単量体(B)(アクリル酸)を同時滴下して重合する際には、予め反応容器に添加された重合体(A)に単量体(B)を滴下して重合する方法に比べて、反応装置上の問題(初期仕込み量が少なくなることから、重合前半において攪拌翼にかからず十分攪拌できないなど)から、重合濃度を高くできない場合がある。
【0142】
上記実施例1〜3、及び比較例1、2の結果を、下記表2に要約する。なお、下記表2において、「変化率」とは、単量体(B)の添加速度の変化前後の比を表わし、小数点第2位を四捨五入した値である。また、「分子量」は、製造された重合体の重量平均分子量である。
【0143】
【表2】

【0144】
表2に示される結果から、上記実施例1〜3の結果と比較することにより、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体であるIPN−50を単量体(A)として使用して、IPN−50(単量体(A))をアクリル酸(単量体(B))と共に同時に滴下し始めて重合を行なうと、IPN−50の反応率が低くなり、重合反応が効率よく進行しないことが分かる。
【0145】
実施例4:モルタル試験
基準物質であるポリカルボン酸系共重合体(Y)の水溶液と、実施例1〜3と同様にして製造された重合体(P−1〜P−3)の水溶液と、比較例1と同様にして製造された重合体(H−1)の水溶液とを用いて、モルタル試験方法(X)に基づいて、モルタルフロー値を測定、比較した。その結果を下記表3及び図1に示す。
【0146】
表3中の各セメント混和剤用共重合体の添加量は、セメントに対する固形分[不揮発分]の質量%を示す。固形分[不揮発分]は、適量のセメント混和剤用共重合体水溶液を窒素雰囲気下、130℃で1時間加熱乾燥することにより揮発成分を除去して測定し、セメントと配合する際に所定量の固形分[不揮発分]が含まれるようにセメント混和剤水溶液を計量して使用した。また、表3中の「添加量比(対Y)」は、モルタル試験方法(X)で、250±5mmのフロー値を得るために必要なセメント混和剤の固形分換算での添加量の、ポリカルボン酸系共重合体(Y)の固形分換算での添加量に対する割合(%)を意味し、「Y」は、ポリカルボン酸系共重合体(Y)を意味する。
【0147】
【表3】

【0148】
上記表3の結果から、単量体(B)の単量体(A)に対する添加速度を、後段の方を遅くする方法によって得られた共重合体P−1は、単量体(B)を単量体(A)に対して一定の速度で添加して得られる共重合体H−1や優れた減水性能を発揮するポリカルボン酸系共重合体(Y)に比べて必要な添加量が少なく、より優れた減水性能を示すことが分かる。また、上記表3の結果から、単量体(B)の単量体(A)に対する添加速度を、後段の方を速くする方法によって得られた共重合体P−2及びP−3は、スランプ保持性に優れることもまた示される。
【0149】
実施例5:コンクリート試験
実施例1、2と同様にして製造された本発明による重合体(P−1、P−2)の水溶液と、比較例1と同様にして製造された重合体(H−1)の水溶液とをセメント混和剤として用いてコンクリート試験を行ない、性能を評価した。すなわち、本発明による重合体(P−1、P−2)の水溶液と、比較例1の重合体(H−1)の水溶液とを、それぞれ、(50L)強制式パン型ミキサーを用いて混練時間2分間で、以下の配合のコンクリート組成物を調製し、フロー値及び空気量を測定した。なお、フロー値及び空気量の測定は、日本工業規格(JIS−A−1101、1128)に準拠して行った。なお、セメント混和剤用の共重合体の添加量は、初期のフロー値が600〜650mmになるように調整した。フロー値の結果を表4及び図2に、また、空気量の結果を表4に、それぞれ、示す。
【0150】
なお、表4中の各セメント混和剤用共重合体の添加量は、セメントに対する固形分[不揮発分]の質量%を示す。固形分[不揮発分]は、適量のセメント混和剤用共重合体水溶液を窒素雰囲気下、130℃で1時間加熱乾燥することにより揮発成分を除去して測定し、セメントと配合する際に所定量の固形分[不揮発分]が含まれるようにセメント混和剤水溶液を計量して使用した。
【0151】
(コンクリート配合)
水道水:175kg/m
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社、宇部三菱セメント社、住友大阪セメント社の3銘柄等量混合社製)583kg/m
細骨材:670kg/m
粗骨材:920kg/m
水/セメント比(質量比)=0.30
消泡剤(質量比):アルキルアルキレンオキサイド系消泡剤10ppm(対セメント)
【0152】
【表4】

【0153】
表3、4から、IPN−50を予め反応容器に添加し、単量体(B)であるアクリル酸の滴下速度を重合中に変化させて重合して得られる本発明による共重合体P1〜P3は、アクリル酸を均一に滴下して重合してなる比較例1の共重合体H−1と比較して、減水性能あるいはスランプ保持性が良くなる。具体的には、今回の組成においては、単量体(B)としてのアクリル酸の滴下速度を段階的に遅く変化させて得られた重合体P−1では、他の共重合体を用いた場合に比べて、より少ない添加量で同等のフロー値が得られる。これから、このような共重合体を用いたセメント混和剤は減水性能に優れることが考察される。一方、単量体(B)としてのアクリル酸の滴下速度を段階的に速く変化させて得られた重合体P−2、P−3では、30分以降のフロー値の減少度合いが小さいことから、このような共重合体を用いたセメント混和剤はスランプ保持性に優れることが考察される。
【0154】
実施例6
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水80.0部、IPN−50モノマー42.5部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.5部を添加し、β−アクリロキシプロパン酸を0.10質量%含むアクリル酸7.5部とイオン交換水50.0部との混合液を3時間かけて滴下した。この混合液を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.15部、L−アスコルビン酸0.12部、イオン交換水50.0部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH6.5に部分中和し、重量平均分子量が約35,000の重合体(IP−1)を含む固形分20質量%の水溶液を得た。
【0155】
実施例7〜8、および比較例3
アクリル酸に含まれるβ−アクリロキシプロパン酸(アクリル酸ダイマー)含有率が下記表5に示すような割合である原料を用いた以外は、実施例6と同様にして、重合体(IP−2)及び(IP−3)を含む固形分20質量%の水溶液、ならびに比較対照としての重合体(CIP−2)を含む固形分20質量%の水溶液を得た。
【0156】
実施例9:モルタル試験
実施例6〜8で得られた重合体(IP−1〜IP−3)の水溶液と、比較例3で得られた重合体(CIP−1)の水溶液とを用いて、モルタル試験方法(X)に基づいて、モルタルフロー値を測定、比較した。その結果を下記表5に示す。
【0157】
【表5】

【0158】
上記表5から、アクリル酸ダイマーの含有率が本発明の上限である5.0質量%を超えるアクリル酸を原料に使用する(比較例3)と、モルタルフロー値が有意に減少し、セメント分散性能が低下してしまうことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明に係るセメント混和剤用共重合体は、少ない添加量で高いフロー値を示し、特に高減水率領域においても優れた分散性能を示すセメント混和剤を提供することができる。そして、本発明のセメント混和剤を配合したセメント組成物は、優れた流動性を示すことから、施工上の障害が改善される。
【0160】
また、本発明に係るセメント混和剤用共重合体は、スランプ保持性に優れるため、セメント組成物等を取り扱う現場において作業しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】実施例4のモルタル試験において本発明による共重合体P−1〜P−3及び比較用共重合体H−1を用いて測定されたモルタルフロー値を示すグラフである。
【図2】実施例5のコンクリート試験において本発明による共重合体P−1、P−2及び比較用共重合体H−1を用いて測定されたフロー値を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし;Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表わし、この際、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよく;mは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数であり;Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表わす、またはRC=CR−で表わされる基がビニル基の場合には、Xは結合手である、
で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、
および下記式(2):
【化2】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOMを表わし、この際、−(CHCOOMは、−COOMまたは他の−(CHCOOMと無水物を形成してもよく、この場合は、MまたはMは存在せず、また、zは、0〜2の数であり;M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表わす、
で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)を含む単量体成分を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法であって、予め反応容器に添加された不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)に、不飽和有機酸系単量体(B)を、添加速度を少なくとも1回変化させて、添加して、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)及び不飽和有機酸系単量体(B)を重合する段階を有するセメント混和剤用共重合体の製造方法。
【請求項2】
不飽和有機酸系単量体(B)の添加を段階的に変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不飽和有機酸系単量体(B)の添加速度の変化前後の比が1.2倍以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不飽和有機酸系単量体(B)は、(メタ)アクリル酸系単量体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
下記式(1):
【化3】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし;Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表わし、この際、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよく;mは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数であり;Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表わす、またはRC=CR−で表わされる基がビニル基の場合には、Xは結合手である、
で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)、
および下記式(2):
【化4】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOMを表わし、この際、−(CHCOOMは、−COOMまたは他の−(CHCOOMと無水物を形成してもよく、この場合は、MまたはMは存在せず、また、zは、0〜2の数であり;M及びMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表わす、
で示される少なくとも1種の不飽和有機酸系単量体(B)の共重合体を含有するセメント混和剤であって、モルタル試験方法(X)で、250±5mmのフロー値を得るために必要なセメント混和剤の固形分換算での添加量が、ポリカルボン酸系共重合体(Y)の固形分換算での添加量の93質量%未満であることを特徴とするセメント混和剤。
【請求項6】
該共重合体は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって製造される、請求項5に記載のセメント混和剤。
【請求項7】
下記式(1):
【化5】

ただし、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし;Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表わし、この際、mが2以上である場合には、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるものであってもよく;mは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数であり;Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表わす、またはRC=CR−で表わされる基がビニル基の場合には、Xは結合手である、
で示される少なくとも1種の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(A)および単量体(B)として(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合することによって得られる共重合体を含むセメント混和剤であって、
単量体(B)として使用される(メタ)アクリル酸系単量体中の(メタ)アクリル酸ダイマーの含有率が、(メタ)アクリル酸系単量体に対して、5質量%以下である、セメント混和剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−248889(P2006−248889A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373375(P2005−373375)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】