説明

セメント混和剤

【課題】高い減水性能と優れた早期強度を有するセメント組成物を提供することが可能なセメント混和剤を提供する。
【解決手段】本発明のセメント混和剤は、ポリカルボン酸系共重合体(A)とアルカノールアミン系化合物(B)を含み、該ポリカルボン酸系共重合体(A)は、特定の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と特定の不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤に関する。詳細には、ポリアルキレングリコールエーテル鎖を備える共重合体を含むセメント混和剤であって、早期強度に優れたセメント組成物を提供することが可能なセメント混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に広く用いられている。
セメント混和剤を用いると、セメント組成物の流動性を高めることが可能となり、セメント組成物を減水させることができる。この減水により、硬化物の強度や耐久性等を向上させることができる。
【0003】
近年、セメント混和剤として、ポリカルボン酸系共重合体を主成分とするセメント混和剤が提案されている。ポリカルボン酸系共重合体を主成分とするセメント混和剤(ポリカルボン酸系セメント混和剤)は、高い減水性能を発揮できる。
【0004】
特に、少ない添加量で高い分散性を示し、高減水率領域においても優れた分散性能を示すセメント混和剤として、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構造単位とを有するポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤が提案されている(特許文献1〜3)。
【0005】
しかし、上記セメント混和剤を用いたセメント組成物は、1日(24時間)レベルの早期強度が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−220417号公報
【特許文献2】特開2003−73158号公報
【特許文献3】特開2002−226245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い減水性能と優れた早期強度を有するセメント組成物を提供することが可能なセメント混和剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセメント混和剤は、
ポリカルボン酸系共重合体(A)とアルカノールアミン系化合物(B)を含み、
該ポリカルボン酸系共重合体(A)は、式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する。
【化1】

(式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、Rは炭素数2〜18のアルキレン基であり、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦m≦500であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表し、nは0または1である。)
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表し、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、RおよびRは同時に−COOMではない。また、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【0009】
好ましい実施形態においては、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位が式(3)で表される構造単位であり、上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位が式(4)で表される構造単位である。
【化3】

(式(3)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、Rは炭素数2〜18のアルキレン基であり、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦m≦500であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表し、nは0または1である。)
【化4】

(式(4)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表し、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、RおよびRは同時に−COOMではない。また、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【0010】
好ましい実施形態においては、上記アルカノールアミン系化合物(B)が、トリアルカノールアミン系化合物およびテトラアルカノールアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記アルカノールアミン系化合物(B)の含有割合が、前記ポリカルボン酸系共重合体(A)と該アルカノールアミン系化合物(B)の合計量に対して50質量%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い減水性能と優れた早期強度を有するセメント組成物を提供することが可能なセメント混和剤を提供することができる。
【0013】
このような効果は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有するポリカルボン酸系共重合体と、アルカノールアミン系化合物とを併用することで、発現することができる。特に、本発明においては、好ましくは、「エーテル系」のポリカルボン酸と「特定の」アルカノールアミン系化合物とを併用することによって、より好ましくは、「エーテル系」のポリカルボン酸と「特定量の」特定のアルカノールアミン系化合物とを併用することによって、上記効果が一層発現可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔ポリカルボン酸系共重合体(A)〕
本発明において用いるポリカルボン酸系共重合体(A)は、式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する。本発明において、ポリカルボン酸系共重合体(A)は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0015】
本発明において、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、式(1)で表される。
【化5】

式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
式(1)中、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良い。Rは炭素数2〜18のアルキレン基である。mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。1≦m≦500であり、好ましくは10≦m≦300、より好ましくは15≦m≦150、さらに好ましくは20≦m≦100である。
式(1)中、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表す。nは0または1である。なお、2価のアリーレン基とは、2個の結合手を有する置換または非置換の芳香族環を意味する。
【0016】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、特開平10−236859号公報、特表2004−519406号公報に記載の方法が挙げられる。
【0017】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、ヒドロキシブチルビニルエーテル、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のアルケニルアルコールにアルキレンオキシド1〜500モルを付加して得られる付加体、あるいは、アルケニル基とハロゲンを有する化合物と末端アルキルポリアルキレングリコールとのエーテル化反応によって得ることもでき、例えば、アリルクロライドとメトキシポリエチレングリコールのエーテル化反応物が挙げられる。
【0018】
本発明において、不飽和カルボン酸系単量体は、式(2)で表される。
【化6】

式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表す。
式(2)中、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
式(2)中、RおよびRは同時に−COOMではない。
式(2)中、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。
【0019】
上記不飽和カルボン酸系単量体は、任意の適切な方法で製造し得る。
【0020】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの塩であり、より好ましくは、アクリル酸、およびこの塩である。共重合性に優れるからである。
【0021】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に使用する全単量体中、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計の含有割合は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0022】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際には、任意の適切な他の単量体を用いても良い。例えば、スチレン、アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、特許第3683176号の段落0015に記載の単量体が挙げられる。これらは、用いる全単量体中、好ましくは0〜30質量%用いることができる。
【0023】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)を製造する際に使用する全単量体中において、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体の合計量を100質量%としたとき、該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の割合が、好ましくは60〜96質量%、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは80〜94質量%、特に好ましくは84〜94質量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0024】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、好ましくは、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する。上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、さらに、上記他の単量体由来の構造単位を有していても良い。
【0025】
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位は、式(3)で表される。
【化7】

式(3)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
式(3)中、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良い。Rは炭素数2〜18のアルキレン基である。mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。1≦m≦500であり、好ましくは10≦m≦300、より好ましくは15≦m≦150、さらに好ましくは20≦m≦100である。
式(3)中、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表す。nは0または1である。
【0026】
上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位は、式(4)で表される。
【化8】

式(4)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表す。
式(4)中、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
式(4)中、RおよびRは同時に−COOMではない。
式(4)中、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。
【0027】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)を構成する全構造単位中、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の合計の含有割合は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0028】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)を構成する全構造単位中において、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の合計量を100質量%としたとき、該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位の割合が、好ましくは60〜96質量%、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは80〜94質量%、特に好ましくは84〜94質量%である。上記含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0029】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜50000、さらに好ましくは7000〜40000である。上記共重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0030】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、重合反応によって製造した後に、好ましくはpHを5〜9、より好ましくはpHを6〜8に調整する。pHを調整する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、マグネシウムやカルシウム等の2価金属を含む化合物、アンモニア、アミンなどの塩基性化合物を用いて中和することができる。pHを調整するために用いる塩基性化合物としては、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、より好ましくは、水酸化ナトリウムである。上記塩基性化合物は、固形や100%純品を用いても良いし、任意の適切な濃度の水溶液を用いても良い。
【0031】
上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、未中和であっても良いし、中和されていても良い。例えば、カルボン酸部位が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩であっても良い。
【0032】
〔アルカノールアミン系化合物(B)〕
本発明において用いるアルカノールアミン系化合物(B)としては、任意の適切なアルカノールアミン系化合物を採用し得る。好ましくは、トリアルカノールアミン系化合物およびテトラアルカノールアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
トリアルカノールアミン系化合物としては、好ましくは、式(5)で表される化合物である。
【化9】

式(5)中、R、R、R10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価のアルキレン基または炭素数6〜30の2価のアリーレン基を表す。
【0034】
トリアルカノールアミン系化合物としては、具体的には、トリエタノールアミン、ヒドロキシエチルジ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、ジ−(ヒドロキシエチル)−ヒドロキシプロピルアミン、トリ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、ヒドロキシエチルジ−(ヒドロキシ−n−ブチル)−アミン、トリ−(2−ヒドロキシブチル)−アミン、ヒドロキシブチルジ−(ヒドロキシプロピル)−アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N
−ビス−(2−ヒドロキシブチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)−アミンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、式(6)で表されるトリエタノールアミン、式(7)で表されるトリイソプロパノールアミンである。
【化10】

【化11】

【0035】
テトラアルカノールアミン系化合物としては、好ましくは、式(8)で表される化合物である。
【化12】

式(8)中、Z、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の2価のアルキレン基または炭素数6〜30の2価のアリーレン基を表す。
【0036】
テトラアルカノールアミン系化合物としては、具体的には、好ましくは、式(9)や式(10)で表されるトリイソプロパノールアミンである。
【化13】

【化14】

【0037】
〔セメント混和剤〕
本発明のセメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)とアルカノールアミン系化合物(B)を含む。本発明のセメント混和剤中の上記ポリカルボン酸系共重合体(A)は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。本発明のセメント混和剤中の上記アルカノールアミン系化合物(B)は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。
【0038】
本発明のセメント混和剤中、上記アルカノールアミン系化合物(B)の含有割合は、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と該アルカノールアミン系化合物(B)との合計量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。下限値は、好ましくは4質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。上記アルカノールアミン系化合物(B)の含有割合が上記範囲内にあると、本発明の効果を十分に発揮し得る。
【0039】
本発明のセメント混和剤中、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)と上記アルカノールアミン系化合物(B)との合計量の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な割合を採用し得る。好ましくは、50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
【0040】
本発明のセメント混和剤は、任意の適切なセメント分散剤を1種または2種以上含有することが可能である。上記セメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント混和剤と上記セメント分散剤との配合質量比(本発明のセメント混和剤/上記セメント分散剤)は、使用する上記セメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって一義的には決められないが、固形分換算での質量割合(質量%)として、好ましくは1〜99/99〜1、より好ましくは5〜95/95〜5、さらに好ましくは10〜90/90〜10である。
【0041】
本発明のセメント混和剤と併用し得る上記セメント分散剤としては、例えば、下記のようなセメント分散剤が挙げられる。
【0042】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系;等の、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤。
【0043】
特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体を重合して得られる共重合体;特開平7−53645号公報、特開平8−208769号公報、特開平8−208770号公報に記載の、ポリエーテル化合物に不飽和カルボン酸系単量体をグラフト重合した親水性グラフト重合体等の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤。
【0044】
本発明のセメント混和剤は、下記の(1)〜(12)に例示するような任意の適切なセメント添加剤(セメント添加材)を含有し得る。
【0045】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合体のナトリウム塩等の、不飽和カルボン酸系重合体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の、非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化またはヒドロキシアルキル化誘導体の一部または全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基またはそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基で置換された、多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3−グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良く、例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の、微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマーおよびその四級化合物;など。
【0046】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合体など。
【0047】
(3)硬化遅延剤:オキシカルボン酸またはその塩;糖、糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸またはその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸またはその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、および、これらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の、ホスホン酸およびその誘導体など。
【0048】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の、可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の、塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸およびギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケートなど。
【0049】
(5)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等の、ポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン−2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の、ポリオキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られるアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の、(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等の、ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル類;ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステル等の、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等の、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;など。
【0050】
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:燈油、流動パラフィン等の、鉱油系消泡剤;動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等の、油脂系消泡剤;オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等の、脂肪酸系消泡剤;グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等の、脂肪酸エステル系消泡剤;オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等の、アルコール系消泡剤;アクリレートポリアミン等の、アミド系消泡剤;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等の、リン酸エステル系消泡剤;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等の金属石鹸系消泡剤;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等の、シリコーン系消泡剤;など。
【0051】
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和または不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートなど。
【0052】
(8)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール;アビエチルアルコール等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール;ドデシルメルカプタン等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン;ノニルフェノール等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール;ドデシルアミン等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン;ラウリン酸やステアリン酸等の、分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸にエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の、各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;など。
【0053】
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックスなど。
【0054】
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛など。
【0055】
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテルなど。
【0056】
(12)膨張剤:エトリンガイト系、石炭系など。
【0057】
その他の任意の適切なセメント添加剤(セメント添加材)としては、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などを挙げることができる。
【0058】
上記に挙げたようなセメント添加剤(セメント添加材)は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0059】
本発明のセメント混和剤の、特に好適な実施形態としては、下記の(1)〜(7)が挙げられる。
【0060】
(1)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>オキシアルキレン系消泡剤の、2成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0061】
(2)<1>本発明のセメント混和剤、<2>オキシアルキレン系消泡剤、および、<3>AE剤の、3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<2>オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。また、<3>AE剤の配合質量比は、<1>本発明のセメント混和剤に対して、0.001〜2質量%の範囲が好ましい。
【0062】
(3)<1>本発明のセメント混和剤、<2>炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体、およびこれらの単量体と共重合可能な単量体を重合して得られる共重合体(例えば、特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載)、および、<3>オキシアルキレン系消泡剤の、3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルアミン類である。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>共重合体の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>共重合体の質量比で、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10である。また、<3>オキシアルキレン系消泡剤の配合質量比は、<1>本発明のセメント混和剤と<2>共重合体の合計量に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0063】
(4)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の、2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系分散剤が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>スルホン酸系分散剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>スルホン酸系分散剤の質量比で、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10である。
【0064】
(5)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>材料分離低減剤の、2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、例えば、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>材料分離低減剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>材料分離低減剤の質量比で、好ましくは10/90〜99.99/0.01、より好ましくは50/50〜99.9/0.1である。この組み合わせのセメント混和剤は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング剤として好適である。
【0065】
(6)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>遅延剤の、2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、例えば、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類が挙げられ、好ましくはオキシカルボン酸類である。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>遅延剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>遅延剤の質量比で、好ましくは50/50〜99.9/0.1、より好ましくは70/30〜99/1である。
【0066】
(7)<1>本発明のセメント混和剤、および、<2>促進剤の、2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸およびギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が挙げられる。なお、<1>本発明のセメント混和剤と<2>促進剤の配合比は、<1>本発明のセメント混和剤/<2>促進剤の質量比で、好ましくは10/90〜99.9/0.1、より好ましくは20/80〜99/1である。
【0067】
本発明のセメント混和剤は、任意の適切な方法で製造し得る。例えば、上記ポリカルボン酸系共重合体(A)の水溶液に、上記アルカノールアミン系化合物(B)と、必要に応じて任意の適切なその他の成分を添加する方法が挙げられる。
【0068】
〔セメント組成物〕
本発明のセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に添加して用いることができる。
【0069】
上記セメント組成物は、任意の適切なセメント組成物を採用し得る。例えば、セメント、水、骨材、消泡剤を含むものが挙げられる。
【0070】
上記セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。
【0071】
上記骨材としては、任意の適切な骨材を採用し得る。例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も使用可能である。
【0072】
上記消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。例えば、特許第3683176号の段落0041〜0042に記載の消泡剤が挙げられる。
【0073】
上記セメント組成物における、コンクリート1m当たりの配合量および単位水量は、例えば、高耐久性、高強度のコンクリートを製造するためには、好ましくは、単位水量が100〜185kg/m、水/セメント比が10〜70質量%であり、より好ましくは、単位水量が120〜175kg/m、水/セメント比が20〜65質量%である。
【0074】
セメント組成物に本発明のセメント混和剤を添加する際の添加量としては、セメントの全量を100質量%とした場合、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。上記添加量が0.01質量%未満であると、セメント組成物としての性能に劣るおそれがある。上記添加量が10質量%を超えると、経済性に劣るおそれがある。
【0075】
上記セメント組成物は、上記各成分を、任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、ミキサー中で混練する方法が挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0077】
<重量平均分子量>
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 Millenium Ver.3.21
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH=6に調整した溶離液
溶離液流速:0.8ml/min
カラム温度:40℃
カラム:東ソー株式会社製、TSK Guard Column SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)=272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検量線次数:三次式
【0078】
<コンクリート試験条件A>
(1)使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
粗骨材:青梅産硬質砂岩砕石
細骨材:千葉県君津産山砂
(2)単位量(kg/m
W/C=36.0
s/a=47.2
空気=25.5
水=165.0
セメント=458.3
石=929.7
砂=821.7
(3)使用ミキサー
太平洋機工 TM55(55リットル強制練バン型ミキサー)
練り量=30リットル
(4)混練方法・測定方法
温度20℃、湿度60%に調整された屋内にて、セメント、粗骨材と細骨材をミキサーに投入し、10秒間空練りを行った。次いで、セメント混和剤入りの水を投入し、120秒間混練を行った後、コンクリートを排出した。得られたコンクリートのフロー値、空気量を測定した。フロー値、空気量は、JIS−A−1101,1128に準拠して測定した。また、圧縮強度試験用試料を作製し、24時間後の圧縮強度を測定した。
供試体作製:100mm×200mm 紙製供試体型枠 各3本
供試体養生:温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生(24時間後)
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
【0079】
<コンクリート試験条件B>
(1)使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、宇部三菱セメント社製のセメントを等量配合)
粗骨材:青梅産硬質砂岩砕石
細骨材:千葉県君津産山砂および大井川水系産陸砂
(2)単位量(kg/m
W/C=30.0
s/a=47.0
空気=30.0
水=172.0
セメント=573.3
石=866.0
砂=750.5
(3)使用ミキサー
太平洋機工 TM55(55リットル強制練バン型ミキサー)
練り量=30リットル
(4)混練方法・測定方法
温度10℃、湿度60%に調整された屋内にて、細骨材とセメントとセメント混和剤入りの水をミキサーに投入し、モルタルが均一になるまで混練した後、粗骨材を投入し、90秒間混練を行った。その後、コンクリートを排出した。得られたコンクリートのフロー値、空気量を測定した。フロー値、空気量は、JIS−A−1101,1128に準拠して測定した。また、圧縮強度試験用試料を作製し、24時間後の圧縮強度を測定した。
供試体作製:100mm×200mm 紙製供試体型枠 各3本
供試体養生:温度10℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生(24時間後)
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
【0080】
<アルカノールアミン系化合物(B)>
式(6)で表されるTEA、式(7)で表されるTIPA、式(9)で表されるHEEDA、式(10)で表されるHPEDAを用いた。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0081】
〔製造例1〕:共重合体(イ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水403.0g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体の80質量%水溶液1263.8g、アクリル酸1.8gを仕込み、窒素を導入しながら、58℃まで昇温した。続いて、30%過酸化水素水3.3gとイオン交換水41.7gの混合溶液を加えた後、アクリル酸70.1gとイオン交換水17.5gの混合溶液を3時間で、ならびに、L−アスコルビン酸1.3gと3−メルカプトプロピオン酸2.7gとイオン交換水194.9gの混合溶液を3.5時間で滴下した。滴下後さらに、58℃で1時間撹拌を続けて重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=6.5、重量平均分子量が35000の共重合体(イ)の水溶液を得た。
【0082】
〔製造例2〕:共重合体(ロ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水100.2g、メタリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル194.1g、アクリル酸0.35gを仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで昇温した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液8.6gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸11.8gとイオン交換水22.4gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.93gにL−アスコルビン酸0.22gおよび3−メルカプトプロピオン酸0.35gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=6、重量平均分子量が37000の共重合体(ロ)の水溶液を得た。
【0083】
〔製造例3〕:共重合体(ハ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水546.0g、3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均50モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル800.0g、マレイン酸83.0gを仕込み、65℃まで昇温した後、30%過酸化水素水溶液2.4gを添加した。そこへ、イオン交換水39.1gにL−アスコルビン酸0.9gを溶解させた水溶液を1時間かけて滴下した。その後、引き続いて65℃で1時間熟成して重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=8、重量平均分子量が30000の共重合体(ハ)の水溶液を得た。
【0084】
〔製造例4〕:共重合体(ニ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水363.8g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体の80質量%水溶液2129.1g、アクリル酸3.1gを仕込み、窒素を導入しながら、58℃まで昇温した。続いて、30%過酸化水素水5.5gとイオン交換水61.2gの混合溶液を加えた後、アクリル酸118.1gとイオン交換水29.5gの混合溶液を3時間で、ならびに、L−アスコルビン酸2.1gと3−メルカプトプロピオン酸4.4gとイオン交換水283.1gの混合溶液を3.5時間で滴下した。滴下後さらに、58℃で1時間撹拌を続けて重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=6.5、重量平均分子量が35000の共重合体(ニ)の水溶液を得た。
【0085】
〔製造例5〕:共重合体(ホ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水72.3g、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド50モル付加体127.7gを仕込み、窒素を導入しながら、58℃まで昇温した。続いて、30%過酸化水素水0.7gを加えた後、アクリル酸8.9gとヒドロキシエチルアクリレート15.5gの混合物を3時間で、ならびに、L−アスコルビン酸0.3gと3−メルカプトプロピオン酸1.0gとイオン交換水26.6gの混合溶液を3.5時間で滴下した。滴下後さらに、58℃で1時間撹拌を続けて重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=5.5、重量平均分子量が25000の共重合体(ホ)の水溶液を得た。
【0086】
〔製造例6〕:比較共重合体(イ)の製造
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、蒸留水400gを仕込み、撹拌下で、窒素を導入しながら、80℃まで昇温した。続いて、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート50%水溶液(Aldrich社製)1223.8g、アクリル酸48.1g、蒸留水48.1g、3−メルカプトプロピオン酸5.1gの混合溶液を4時間で、ならびに、L−アスコルビン酸0.2gを溶かした水溶液197.9g、30%過酸化水素水2.0gを溶かした水溶液199.7gを5時間で滴下した。滴下後さらに、80℃で1時間撹拌を続けて重合反応を完結させた。重量平均分子量が30000の比較共重合体(イ)の水溶液を得た。
【0087】
〔実施例1〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(1)を得た。
セメント混和剤(1)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0088】
〔実施例2〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(2)を得た。
セメント混和剤(2)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0089】
〔実施例3〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物TEAを用い、セメント混和剤(3)を得た。
セメント混和剤(3)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0090】
〔実施例4〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物HPEDAを用い、セメント混和剤(4)を得た。
セメント混和剤(4)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0091】
〔実施例5〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物HEEDAを用い、セメント混和剤(5)を得た。
セメント混和剤(5)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0092】
〔実施例6〕
表1に示す配合条件で、製造例2で得られた共重合体(ロ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(6)を得た。
セメント混和剤(6)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0093】
〔実施例7〕
表1に示す配合条件で、製造例3で得られた共重合体(ハ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(7)を得た。
セメント混和剤(7)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0094】
〔比較例1〕
表1に示す配合条件で、製造例1で得られた共重合体(イ)を用い、アルカノールアミン系化合物を用いないで、セメント混和剤(C1)を得た。
セメント混和剤(C1)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0095】
〔比較例2〕
表1に示す配合条件で、製造例4で得られた比較共重合体(イ)を用い、アルカノールアミン系化合物を用いないで、セメント混和剤(C2)を得た。
セメント混和剤(C2)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0096】
〔比較例3〕
表1に示す配合条件で、製造例4で得られた比較共重合体(イ)とアルカノールアミン系化合物HPEDAを用い、セメント混和剤(C3)を得た。
セメント混和剤(C3)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0097】
〔比較例4〕
表1に示す配合条件で、製造例2で得られた共重合体(ロ)を用い、アルカノールアミン系化合物を用いないで、セメント混和剤(C4)を得た。
セメント混和剤(C4)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0098】
〔比較例5〕
表1に示す配合条件で、製造例3で得られた共重合体(ハ)を用い、アルカノールアミン系化合物を用いないで、セメント混和剤(C5)を得た。
セメント混和剤(C5)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0099】
〔実施例8〕
表1に示す配合条件で、製造例2で得られた共重合体(ニ)と製造例3で得られた共重合体(ホ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(8)を得た。
セメント混和剤(8)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0100】
〔実施例9〕
表1に示す配合条件で、製造例2で得られた共重合体(ニ)と製造例3で得られた共重合体(ホ)とアルカノールアミン系化合物TIPAを用い、セメント混和剤(9)を得た。
セメント混和剤(9)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0101】
〔比較例6〕
表1に示す配合条件で、製造例2で得られた共重合体(ニ)と製造例3で得られた共重合体(ホ)を用い、アルカノールアミン系化合物を用いないで、セメント混和剤(C6)を得た。
セメント混和剤(C6)を用いて、フロー値、空気量、圧縮強度(24時間後)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明のセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系共重合体(A)とアルカノールアミン系化合物(B)を含み、
該ポリカルボン酸系共重合体(A)は、式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位と式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位とを有し、
該式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体が、アリルアルコールにアルキレンオキシド1〜500モルを付加して得られる付加体またはメタリルアルコールにアルキレンオキシド1〜500モルを付加して得られる付加体であり、
該アルカノールアミン系化合物(B)が、トリアルカノールアミン系化合物およびテトラアルカノールアミン系化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
該アルカノールアミン系化合物(B)の含有割合が、該ポリカルボン酸系共重合体(A)と該アルカノールアミン系化合物(B)の合計量に対して50質量%以下である、
セメント混和剤。
【化1】

(式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、Rは炭素数2〜18のアルキレン基であり、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦m≦500であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表し、nは0または1である。)
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表し、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、RおよびRは同時に−COOMではない。また、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)
【請求項2】
前記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構造単位が式(3)で表される構造単位であり、前記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位が式(4)で表される構造単位である、請求項1に記載のセメント混和剤。
【化3】

(式(3)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、ROで表されるオキシアルキレン基は、それぞれ同一でも異なっていても良く、Rは炭素数2〜18のアルキレン基であり、mはROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦m≦500であり、Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基または炭素数6〜9の2価のアリーレン基を表し、nは0または1である。)
【化4】

(式(4)中、Rは、水素原子、メチル基、または−CHCOOMを表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−COOMを表し、M、M、およびMは、それぞれ独立して、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表し、RおよびRは同時に−COOMではない。また、Rが−COOMの場合、Rと−COOMが酸無水物基を形成していても良い。)







【公開番号】特開2011−236127(P2011−236127A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149709(P2011−149709)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【分割の表示】特願2007−83285(P2007−83285)の分割
【原出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】