説明

セメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法および回収設備

【課題】セメント製造設備における熱源を有効活用することにより、セメント設備において発生するCO2ガスを高い濃度で分離して回収することが可能となるCO2ガスの回収方法および回収設備を提供する。
【解決手段】セメント製造設備のプレヒータ3から抜き出したか焼前のセメント原料を、外熱式か焼炉12において間接的にか焼温度以上の温度に加熱して上記か焼前のセメント原料をか焼した後に、か焼された上記セメント原料と上記か焼時に発生したCO2ガスとを分離して、上記セメント原料をプレヒータ3またはセメントキルン1に戻すとともに、上記CO2ガスを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造設備において、主としてセメント原料のか焼時に発生するCO2ガスを高濃度で回収するためのセメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法および回収設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的かつ全産業にわたって、地球温暖化の主因たる二酸化炭素(CO2)ガスを削減する試みが推進されている。
ちなみに、セメント産業は、電力や鉄鋼等と共にCO2ガスの排出量が多い産業の一つであり、日本におけるCO2ガスの全排出量の約4%にのぼる。このため、当該セメント産業におけるCO2ガスの排出削減は、日本全体におけるCO2ガスの排出削減に大きな貢献を果たすことになる。
【0003】
図6は、上記セメント産業における一般的なセメントの製造設備を示すもので、図中符号1がセメント原料を焼成するためのロータリーキルン(セメントキルン)である。
そして、このロータリーキルン1の図中左方の窯尻部分2には、セメント原料を予熱するための2組のプレヒータ3が並列的に設けられるとともに、図中右方の窯前に、内部を加熱するための主バーナ5が設けられている。なお、図中符号6は、焼成後のセメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラである。
【0004】
ここで、各々のプレヒータ3は、上下方向に直列的に配置された複数段のサイクロンによって構成されており、供給ライン4から最上段のサイクロンに供給されたセメント原料は、順次下方のサイクロンへと落下するにしたがって、下方から上昇するロータリーキルン1からの高温の排ガスによって予熱され、さらに下から2段目のサイクロンから抜き出されてか焼炉7に送られ、当該か焼炉7においてバーナ7aにより加熱されてか焼された後に、最下段のサイクロンから移送管3aを介してロータリーキルン1の窯尻部分2に導入されるようになっている。
【0005】
他方、窯尻部分2には、ロータリーキルン1から排出された燃焼排ガスを最下段のサイクロンへと供給する排ガス管3bが設けられており、上記サイクロンに送られた排ガスは、順次上方のサイクロンへと送られて、上記セメント原料を予熱するとともに、最終的に最上段のサイクロンの上部から、排気ファン9によって排気ライン8を介して排気されて行くようになっている。
【0006】
このような構成からなるセメント製造設備においては、先ずセメント原料の主原料として含まれる石灰石(CaCO3)をプレヒータ3で予熱し、次いでか焼炉7およびプレヒータ3の最下段のサイクロンにおいてか焼した後に、ロータリーキルン1内において約1450℃の高温雰囲気下で焼成することにセメントクリンカを製造している。
【0007】
そして、このか焼において、CaCO3→CaO+CO2↑で示される化学反応が生じて、CO2ガスが発生する(原料起源によるCO2ガスの発生)。この原料起源によるCO2ガスの濃度は、原理的には100%である。また、上記ロータリーキルン1を上記高温雰囲気下に保持するために、主バーナ5において化石燃料が燃焼される結果、当該化石燃料の燃焼によってもCO2ガスが発生する(燃料起源によるCO2ガスの発生)。ここで、主バーナ5からの排ガス中には、燃焼用空気中のN2ガスが多く含まれているために、当該排ガス中に含まれる燃料起源によるCO2ガスの濃度は、約15%と低い。
【0008】
この結果、上記セメントキルンから排出される排ガス中には、上述した濃度の高い原料起源によるCO2ガスと、濃度の低い燃料起源によるCO2が混在するために、当該CO2の排出量が多いにもかかわらず、そのCO2濃度は30〜35%程度であり、回収が難しいという問題点があった。
【0009】
これに対して、現在開発されつつあるCO2ガスの回収方法としては、液体回収方式、膜分離方式、固体吸着方式等があるものの、未だ回収コストが極めて高いという課題があった。
【0010】
また、上記セメント製造設備から排出されたCO2による地球温暖化を防止する方法として、当該排出源から低濃度で排出されたCO2を分離・回収して略100%にまで濃度を高め、液化した後に地中に貯留する方法等も提案されているものの、分離・回収のためのコストが高く、同様に実現には至っていない。
【0011】
一方、下記特許文献1には、耐火物製の伝熱管に充填された石灰石を移動させながら、燃焼炉から導かれた1000℃〜1300℃の高温ガスにより間接的に石灰石(CaCO3)を生石灰(CaO)と炭酸ガス(CO2ガス)に焼成分解する焼成帯と、生成した炭酸ガスを循環使用して高温生石灰を冷却する冷却帯と、焼成帯で生成した高温炭酸ガスと生石灰の冷却により高温となった循環炭酸ガスとにより石灰石を予熱する予熱帯を備えた間接加熱式石灰石焼成炉が提案されている。
【0012】
そして、上記加熱式石灰石焼成炉によれば、石灰石を高温燃焼ガスに直接接触させることなく間接的に焼成することにより、燃料の如何にかかわらず純度の高い生石灰を得ると共に、石灰石が充填された伝熱管内における上記CO2ガスの濃度が100%近くになるために、上記石灰石の焼成時に発生する炭酸ガスを高濃度で回収出来るとされている。
【特許文献1】特開2004−231424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図7に示すように、石灰石のか焼反応が起こる温度は、雰囲気中のCO2ガス濃度が高くなるにしたがって急激に上昇し、100%(大気圧(1atm)の下での分圧1atmに相当)に近くになると、860℃を超える温度となる。
【0014】
このため、上記間接加熱式石灰石焼成炉による従来技術によって石灰石をか焼した後に、粘土等のSiO2、Al23、Fe23等の他のセメント原料を加えてセメントクリンカを製造しようとすると、上記伝熱管を既述の通り1000℃〜1300℃の高温ガスにより間接的に加熱する必要があり、この結果コストが嵩むという問題点がある。また、上記伝熱管を間接的に加熱するために、化石燃料を燃焼させて上記高温ガスを得ようとすると、逆に当該燃焼によって多量のCO2ガスが発生してしまうという問題点もある。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、セメント製造設備における熱源を有効活用することにより、当該セメント設備において発生するCO2ガスを高い濃度で分離して回収することが可能となるセメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法および回収設備を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、セメント原料を、プレヒータで予熱した後に、内部が高温雰囲気に保持されたセメントキルンに供給して焼成するセメント製造設備において発生するCO2ガスを回収するための方法であって、上記プレヒータから抜き出したか焼前の上記セメント原料を、外熱式か焼炉において間接的にか焼温度以上の温度に加熱して上記か焼前のセメント原料をか焼した後に、か焼された上記セメント原料と上記か焼時に発生したCO2ガスとを分離して、上記セメント原料を上記プレヒータまたは上記セメントキルンに戻すとともに、上記CO2ガスを回収することを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記プレヒータから抜き出したか焼前の上記セメント原料と、上記プレヒータから独立して設けられた複数段のサイクロンを有する第2のプレヒータにおいてか焼前の温度まで予熱された他のセメント原料とを、上記外熱式か焼炉において間接的にか焼温度以上の温度に加熱してか焼前の上記セメント原料をか焼した後に、か焼された上記セメント原料と上記か焼時に発生したCO2ガスとを上記サイクロンによって分離して、上記CO2ガスを上記第2のプレヒータの熱源として利用した後に回収することを特徴とするものである。
【0018】
次いで、請求項3に記載の発明は、セメント原料を予熱するプレヒータと、このプレヒータによって予熱された上記セメント原料を焼成するセメントキルンとを備えたセメント製造設備において発生するCO2ガスを回収するための設備であって、上記プレヒータからか焼前の上記セメント原料を抜き出す第1の抜出ラインと、この第1の抜出ラインが内部に導入されて上記セメント原料を間接的にか焼温度以上の温度に加熱してか焼する外熱式か焼炉と、この外熱式か焼炉の出口側に設けられて上記第1の抜出ラインから送られてくるか焼された上記セメント原料とCO2ガスとを分離する固気分離手段と、この固気分離手段によって分離された上記セメント原料を上記プレヒータまたは上記セメントキルンに戻す戻りラインと、上記固気分離手段によって分離されたCO2ガスを回収するCO2ガスの回収ラインとを備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記プレヒータから独立して設けられて他のセメント原料を予熱する複数段のサイクロンを備えた第2のプレヒータと、この第2のプレヒータで予熱された上記他のセメント原料を抜き出す第2の抜出ラインと、上記外熱式か焼炉の排出側と上記第2のプレヒータの下段の上記サイクロンとの間に接続されるとともに、上段の上記サイクロンの排気ラインから枝配管されて上記外熱式か焼炉の入口側に接続された循環ラインとを有し、かつ上記固気分離手段は、上記第2のプレヒータの上記下段のサイクロンであるとともに、上記第1の抜出ラインおよび第2の抜出ラインは、上記循環ラインの上記外熱式か焼炉の上流側に接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、2に記載の回収方法および請求項3、4に記載の回収設備においては、第1のプレヒータから抜き出したか焼前のセメント原料を、外熱式か焼炉に送って、間接的にか焼温度以上の温度に加熱することにより、か焼前の上記セメント原料がか焼される。
また、請求項2、4に記載の発明においては、プレヒータによってか焼前の温度まで予熱されたセメント原料と第2のプレヒータにおいてか焼前の温度まで予熱された他のセメント原料とを循環ラインから外熱か焼炉に送って、同様に間接的にか焼温度以上の温度に加熱することにより、か焼前の上記セメント原料がか焼される。
【0021】
この結果、請求項1、3における第1の抜出ライン、または請求項2、4における循環ラインは、か焼されたセメント原料および当該セメント原料のか焼によって発生したCO2ガスで満たされ、当該CO2ガス濃度が略100%になる。そして、固気分離手段によってか焼されたセメント原料とCO2ガスとを分離することにより、略100%の濃度のCO2ガスを回収することができる。
【0022】
また、特に請求項2に記載の発明においては、上記混合か焼炉内のCO2ガスを、第1のプレヒータから独立した第2のプレヒータに送ってセメント原料の予熱に利用した後に、そのまま回収ラインから回収することができる。
【0023】
この際に、請求項1、3に記載の発明における第1の抜出ライン、または請求項2、4に記載の発明における循環ライン内は、100%近い高濃度のCO2ガス雰囲気下になるために、セメント原料のか焼温度は高くなるが、セメント原料中には、石灰石(CaCO3)とともに粘土、珪石および酸化鉄原料、すなわちSiO2、Al23およびFe23が含まれている。
【0024】
そして、上記セメント原料は、800〜900℃程度の温度雰囲気下において、
2CaCO3+SiO2→2CaO・SiO2+2CO2↑ (1)
2CaCO3+Fe23→2CaO・Fe23+2CO2↑ (2)
CaCO3+Al23→CaO・Al23+CO2↑ (3)
で示される反応が生じ、最終的にセメントクリンカを構成する珪酸カルシウム化合物であるエーライト(3CaO・SiO2)およびビーライト(2CaO・SiO2)並びに間隙相であるアルミネート相(3CaO・Al23)およびフェライト相(4CaO・Al23・Fe23)が生成されることになる。
【0025】
この際に、図2に示す上記(1)式の反応温度のグラフ、図3に示す上記(2)式の反応温度のグラフおよび図4に示す上記(3)式の反応温度のグラフに見られるように、縦軸に示したCO2ガスの分圧が高くなった場合においても、より低い温度で上記反応を生じさせることができる。
【0026】
さらに、上記セメント原料においては、上記(1)〜(3)式で示す反応が生じることに加えて、珪石、粘土等の石灰石以外の原料から持ち込まれるSiO2、Al23、Fe23やその他の微量成分が鉱化剤となり、炭酸カルシウムの熱分解が促進されるために、図5に見られるように、炭酸カルシウム単独の場合と比較して、熱分解の開始温度および終了温度共に低下する。なお、図5は、上記セメント原料(feed)のサンプルおよび石灰石(CaCO3)単独のサンプルを、それぞれ一般的なセメント製造設備における加熱速度に近い10K/secの速度で加熱した際の重量の変化から、上記熱分解の推移を確認したものである。
【0027】
以上のことから、本発明によれば、過熱炉における運転温度(過熱温度)を低下させても、所望のCO2ガスの回収量を確保することができ、よって設備の熱負荷やコーチングトラブル等を低減させることが可能になる。
【0028】
また、外熱か焼炉において間接加熱されるか焼前のセメント原料は、通常のセメント製造プロセスと同様にしてセメント製造設備における第1のプレヒータにより予熱され、また請求項2に記載の発明における他のセメント原料は、か焼時に発生するCO2ガスを加熱媒体とする第2のプレヒータにより予熱されているために、当該セメント原料をか焼するための付加的なエネルギーを必要としないことになる。
【0029】
さらに、外熱か焼炉における間接加熱のための熱量は、本来セメント製造設備の仮焼炉においてか焼するために要する熱量に等しいため、既存のセメント製造設備に対して新たな熱エネルギーを加えることなく、か焼時に発生する原料起源のCO2を、選択的に略100%の高濃度で回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明に係るセメント製造設備おけるCO2ガスの回収設備の一実施形態を示すもので、セメント製造設備の構成については、図6に示したものと同一であるために、同一符号を付してその説明を簡略化する。
図1において、符号10は、セメント製造設備のプレヒータ(第1のプレヒータ)3とは独立して設けられた第2のプレヒータである。
【0031】
この第2のプレヒータ10は、上記プレヒータ3と同様に、上下方向に直列的に配置された複数段(図では4段)のサイクロン10a〜10dによって構成されており、最上段のサイクロン10aに供給ライン11からセメント原料が供給されるようになっている。
また、この第2のプレヒータ10に隣接して、外熱か焼炉12が設けられている。
【0032】
この外熱か焼炉12は、石炭等の化石燃料を燃焼させるバーナ13が設けられるとともに、クリンカクーラ6からの抽気が給気管14から燃焼用空気として導入されることにより、内部を略1100℃に加熱するもので、この外熱か焼炉12内には、熱交換チューブ12aが配設されている。そして、この外熱か焼炉12と第2のプレヒータ10との間には、循環ライン15が配管されている。
【0033】
この循環ライン15は、熱交換チューブ12aの排出側と第2のプレヒータ10の最下段のサイクロン(固気分離手段)10dの流体導入口との間に配管されるとともに、第2のプレヒータ10の最上段のサイクロン10aの排気ライン(回収ライン)16から枝配管されて、外熱か焼炉12の熱交換チューブ12aの入口側に接続されている。ここで、上記循環ライン15は、熱交換チューブ12aの排出側と第2のプレヒータ10における他のサイクロン10c、10bまたは10aの流体導入口との間に配管することも可能である。なお、図中符号17は、排気ライン16に設けられたCO2ガスの排気ファンである。
【0034】
そして、上記セメント製造設備のプレヒータ3においては、最下段のサイクロンからか焼前のセメント原料を抜き出す第1の抜出ライン18が設けられ、この第1の抜出ライン18の先端部が循環ライン15の外熱か焼炉12への入口側に接続されている。また、第2のプレヒータ10においては、下から2段目のサイクロン10cからか焼前の他のセメント原料を抜き出す第2の抜出ライン19が設けられ、その先端部も同様に循環ライン15の外熱か焼炉12への入口側に接続されている。
【0035】
また、循環ライン15における第1および第2の抜出ライン18、19の接続部の上流側には、CO2循環ファン20が設けられている。
他方、第2のプレヒータ10の最下段のサイクロン10dの底部には、当該サイクロン10dにおいて固気分離されて排出されたか焼後のセメント原料をロータリーキルン1の窯尻部分2へと送る移送管(戻りライン)21が設けられている。
【0036】
さらに、外熱か焼炉12の上部には、バーナ13における燃焼によって発生した排ガスを排気するための排ガス管22が設けられるとともに、この排ガス管22がロータリーキルン1からの排ガス管3bに接続されて、排気された高温の排ガスがプレヒータ3の熱源の一部として利用されるようになっている。
【0037】
なお、上記外熱か焼炉12内は、1100℃程度の高温に保持する必要があるのに対して、ロータリーキルン1からの排ガスは、1100〜1200℃の温度であるために、当該ロータリーキルン1からの排ガスの全量または一定量を、排ガス管3bへ流さずに、直接外熱か焼炉12内に導入して、再び排ガス管22からプレヒータ3へと送るようにすれば、上記排ガスを有効利用することができる。
【0038】
次に、上記構成からなるCO2ガスの回収設備を用いた本発明に係るCO2ガスの回収方法の一実施形態について説明する。
先ずセメント原料を、供給管4、11から各々プレヒータ3の最上段のサイクロンおよび第2のプレヒータ10の最上段のサイクロン10aに供給する。
【0039】
すると、プレヒータ3においては、順次下方のサイクロンへと送られる過程で、従来と同様にロータリーキルン1から排ガス管3bを介して供給される排ガスによって予熱される。そして、最下段のサイクロンにおいてか焼温度に達する前(例えば、約750℃)まで予熱された上記セメント原料が、第1の抜出ライン18から循環ライン15へと供給されてゆく。
【0040】
他方、第2のプレヒータ10に供給されたセメント原料は、後述する循環ライン15から排出された高濃度かつ高温のCO2ガスによって予熱され、下から2段目のサイクロン10cにおいて、か焼温度に達する前(例えば、約750℃)まで予熱され、第2の抜出ライン19から同様に循環ライン15へと供給されてゆく。
【0041】
そして、これら第1および第2の抜出ライン18、19から循環ライン15へと供給されたか焼前のセメント原料は、外熱か焼炉12内の熱交換チューブ12aへと送られ、この外熱か焼炉12内においてバーナ13の燃焼により約900℃に加熱される。この結果、か焼前の上記セメント原料がか焼されるとともに、これに伴ってCO2ガスが発生することにより、熱交換チューブ12a内はか焼されたセメント原料と高濃度のCO2ガスによって満たされる。
【0042】
次いで、外熱か焼炉12内の熱交換チューブ12aから循環ライン15を通じて排出されたか焼後のセメント原料および高濃度のCO2ガスは、第2のプレヒータ10の最下段のサイクロン10dに送られて固気分離される。そして、このサイクロン10dにおいて分離されたか焼後のセメント原料は、移送管21からロータリーキルン1の窯尻部分2へと供給され、最終的にロータリーキルン1内において焼成される。
【0043】
これに対して、サイクロン10dにおいて分離された高濃度のCO2ガスは、第2のプレヒータ10における排気ライン16を上昇し、第2のプレヒータ10における熱媒体として利用された後に、その一部がCO2循環ファン20の吸引によって、再び循環ライン15から外熱か焼炉12内の熱交換チューブ12aへと循環される。これにより、循環ライン15中のか焼されたセメント原料を容易に搬送することができるとともに、当該セメント原料を分散させて、一層か焼され易くすることもできる。そして、略100%の濃度のCO2ガスは、CO2ガスの排気ファン17によって排気ライン16から回収される。
【0044】
このように、上記セメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法および回収設備によれば、新たな付加エネルギーを必要とすることなく、上記セメント設備における熱源を有効活用して、当該セメント設備において発生するCO2ガスのうちの半分以上を占める原料起源によるCO2ガスを、100%に近い高い濃度で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るCO2ガスの回収設備の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】雰囲気中CO2濃度と(1)式で示した反応温度との関係を示すグラフである。
【図3】雰囲気中CO2濃度と(2)式で示した反応温度との関係を示すグラフである。
【図4】雰囲気中CO2濃度と(3)式で示した反応温度との関係を示すグラフである。
【図5】CO2雰囲気下におけるセメント原料と石灰石単独との焼成開始温度および終了温度の相違を示すグラフである。
【図6】一般的なセメント製造設備を示す概略構成図である。
【図7】雰囲気中のCO2濃度と石灰石のか焼温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 ロータリーキルン(セメントキルン)
3 プレヒータ(第1のプレヒータ)
10 第2のプレヒータ
10d 最下段のサイクロン(固気分離手段)
12 外熱か焼炉
12a 熱交換チューブ
15 循環ライン
16 CO2の排気ライン(回収ライン)
18 第1の抜出ライン
19 第2の抜出ライン
21 移送管(戻りライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を、プレヒータで予熱した後に、内部が高温雰囲気に保持されたセメントキルンに供給して焼成するセメント製造設備において発生するCO2ガスを回収するための方法であって、
上記プレヒータから抜き出したか焼前の上記セメント原料を、外熱式か焼炉において間接的にか焼温度以上の温度に加熱して上記か焼前のセメント原料をか焼した後に、か焼された上記セメント原料と上記か焼時に発生したCO2ガスとを分離して、上記セメント原料を上記プレヒータまたは上記セメントキルンに戻すとともに、上記CO2ガスを回収することを特徴とするセメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法。
【請求項2】
上記プレヒータから抜き出したか焼前の上記セメント原料と、上記プレヒータから独立して設けられた複数段のサイクロンを有する第2のプレヒータにおいてか焼前の温度まで予熱された他のセメント原料とを、上記外熱式か焼炉において間接的にか焼温度以上の温度に加熱してか焼前の上記セメント原料をか焼した後に、か焼された上記セメント原料と上記か焼時に発生したCO2ガスとを上記サイクロンによって分離して、上記CO2ガスを上記第2のプレヒータの熱源として利用した後に回収することを特徴とする請求項1に記載のセメント製造設備におけるCO2ガスの回収方法。
【請求項3】
セメント原料を予熱するプレヒータと、このプレヒータによって予熱された上記セメント原料を焼成するセメントキルンとを備えたセメント製造設備において発生するCO2ガスを回収するための設備であって、
上記プレヒータからか焼前の上記セメント原料を抜き出す第1の抜出ラインと、この第1の抜出ラインが内部に導入されて上記セメント原料を間接的にか焼温度以上の温度に加熱してか焼する外熱式か焼炉と、この外熱式か焼炉の出口側に設けられて上記第1の抜出ラインから送られてくるか焼された上記セメント原料とCO2ガスとを分離する固気分離手段と、この固気分離手段によって分離された上記セメント原料を上記プレヒータまたは上記セメントキルンに戻す戻りラインと、上記固気分離手段によって分離されたCO2ガスを回収するCO2ガスの回収ラインとを備えてなることを特徴とするセメント製造設備におけるCO2ガスの回収設備。
【請求項4】
上記プレヒータから独立して設けられて他のセメント原料を予熱する複数段のサイクロンを備えた第2のプレヒータと、この第2のプレヒータで予熱された上記他のセメント原料を抜き出す第2の抜出ラインと、上記外熱式か焼炉の排出側と上記第2のプレヒータの下段の上記サイクロンとの間に接続されるとともに、上段の上記サイクロンの排気ラインから枝配管されて上記外熱式か焼炉の入口側に接続された循環ラインとを有し、
かつ上記固気分離手段は、上記第2のプレヒータの上記下段のサイクロンであるとともに、上記第1の抜出ラインおよび第2の抜出ラインは、上記循環ラインの上記外熱式か焼炉の上流側に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のセメント製造設備におけるCO2ガスの回収設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−269785(P2009−269785A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121388(P2008−121388)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】