説明

セメント質基材の塗装方法

【課題】セメント質下地に適した水性メタリック塗料の塗装方法を提供する。
【解決手段】セメント質下地に対し、水性着色塗料、水性メタリック塗料を順次塗装する塗装方法において、前記水性着色塗料として、合成樹脂エマルション及び着色顔料を必須成分とし、該合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し該着色顔料を1〜500重量部含み、前記水性メタリック塗料との色差△Eが20以下であり、粘度が0.1〜6Pa・s、チクソトロピーインデックスが6.0以下である水性着色塗料を使用し、前記水性着色塗料の単位面積当たりの固形分が30g/m以上となるように塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント質下地に対する水性メタリック塗料の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にメタリック塗料は、顔料としてアルミニウム粉等の金属粉顔料を含んでおり、この金属粉顔料の作用によって独特の美観性を表出することができ、また熱線反射等の性能を発揮することもできる。ただし、金属粉顔料は、下地に対する隠ぺい性において不十分な点がある。そのため、メタリック塗料で仕上げ塗装を行う場合には、隠ぺい性を高めるために、金属粉顔料とともに着色顔料を配合する方法や、メタリック塗料とほぼ同色(共色)の下塗材を塗装しておく方法等が採用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このうち、金属粉顔料とともに着色顔料を配合する方法では、着色顔料の配合比率を大きくすれば隠ぺい性は高まるが、一方で形成塗膜の彩度や光輝性が低下するおそれがある。これに対し、メタリック塗料と共色の下塗材層を設ける方法によれば、メタリック塗料の彩度や光輝性を保持しつつ、隠ぺい性を高めることができる。
【0004】
ところで、近年、塗料分野においては、環境問題、省資源、労働安全衛生等の見地より、水を媒体とする水性塗料が注目されている。上述のようなメタリック塗料やその下塗材についても、従来は芳香族炭化水素等の有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料が主流であったが、水性塗料への切替の要望が高まりつつある。
【0005】
メタリック塗料とその下塗材を水性化する場合、バインダーとしては通常、合成樹脂エマルションが使用される。しかし、合成樹脂エマルションをバインダーとする水性塗料では、溶剤系塗料に比べチクソトロピーが高くなる傾向がある。そのため、形成塗膜においてゆず肌状の微細な凹凸が生じやすい。このような凹凸は仕上り外観に影響するのは勿論であるが、塗装対象となる下地がモルタル、コンクリート等のセメント質下地である場合、下塗材において凹凸が生じると、その凹部より経時的にアルカリ成分が滲み出て、金属粉顔料の溶出や変色等を引き起こすおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平9-299872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、セメント質下地に適した水性メタリック塗料の塗装方法を得ること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、セメント質下地に対し、特定の水性着色塗料を塗装した後、水性メタリック塗料を塗装する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.セメント質下地に対し、水性着色塗料、水性メタリック塗料を順次塗装する塗装方法において、
前記水性着色塗料として、
合成樹脂エマルション及び着色顔料を必須成分とし、該合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し該着色顔料を1〜500重量部含み、
前記水性メタリック塗料との色差△Eが20以下であり、
粘度が0.1〜6Pa・s、チクソトロピーインデックスが6.0以下である水性着色塗料を使用し、
前記水性着色塗料の単位面積当たりの固形分が30g/m以上となるように塗装することを特徴とするセメント質基材の塗装方法。
2.前記水性着色塗料の塗装をローラブラシを用いて行うことを特徴とする1.記載のセメント質基材の塗装方法。
3.前記水性着色塗料の塗装に先立ち、セメント質下地に対し、
平均粒子径0.1μm以下の水性樹脂を結合剤とし、該水性樹脂を固形分で5〜50重量%含む水性下塗塗料を、単位面積当たりの固形分が10g/m以上となるように塗装することを特徴とする1.または2.に記載のセメント質基材の塗装方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、セメント質下地に対し、特定の水性着色塗料及び水性メタリック塗料を順次塗装することにより、セメント質下地からのアルカリ成分の滲出に起因するメタリック塗膜の色むら発生等を抑制することができる。
水性着色塗料の塗装に先立ち下塗塗料を塗装すれば、水性着色塗料との相乗効果により、セメント質下地からのアルカリ成分の滲出をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
本発明は、セメント質下地を塗装対象とするものである。かかるセメント質下地は、セメントを必須成分として得られる材料である。セメント以外の成分として、例えば、珪砂、珪石、フライアッシュ等の骨材、パルプ、ガラスウール等の繊維類等が含まれていてもよい。
具体的に、セメント質下地としては、例えば、コンクリート、モルタル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板、スレート板、ALC板、サイディング板等が挙げられる。このうち、コンクリート、モルタル等の基材は、通常、施工現場で水等と混練したものを硬化させることによって得られる。ALC板、サイディング板等のセメント質建材は、抄造法、押し出し成形法、注型法等の各種方法によって板状に成形されたものである。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えばパテ処理、フィラー処理等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものでもよい。
【0013】
本発明では、水性着色塗料の塗装に先立ち、セメント質下地に対し水性下塗塗料を塗装することができる。この場合、水性下塗塗料としては、平均粒子径0.1μm以下(好ましくは0.02〜0.1μm)の水性樹脂を結合剤として含む塗料を使用することが望ましい。かかる水性樹脂の使用により、下地への浸透性が高まり、下地からのアルカリの滲出を十分に抑制することができる。水性樹脂の形態は、水分散型(樹脂エマルション)であってもよいし、水溶性であってもよい。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0014】
水性下塗塗料において、平均粒子径が異なる2種以上の水性樹脂を使用すれば、アルカリシール効果をより高めることができる。この場合においては、少なくとも1種の水性樹脂の平均粒子径が0.1μm以下であればよい。その他の水性樹脂は、平均粒子径が0.1μmを超えてもよいが、通常は0.4μm以下とする。なお、本発明における平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値であり、測定温度は25℃である。
【0015】
水性下塗塗料における水性樹脂の混合比率は、水性下塗塗料中に固形分で5〜50重量%(好ましくは10〜30重量%)とする。水性樹脂の混合比率がかかる範囲内であれば、水性下塗塗料のチクソトロピーを低い値に設定することができ、形成塗膜における微細な凹凸の発生を抑制することができる。さらに、浸透性とシール性(造膜性)に優れた塗膜を形成することもできる。なお、水性下塗塗料における水性樹脂以外の成分は、主に水及び/または親水性有機溶剤であるが、必要に応じ着色顔料、体質顔料、増粘剤、消泡剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、架橋剤等が含まれていてもよい。
【0016】
このような水性下塗塗料は、単位面積当たりの固形分が10g/m以上(好ましくは15〜150g/m)となるように塗装する。水性下塗塗料の塗付量がかかる範囲内であれば、後述の水性着色塗料との相乗作用により、優れたアルカリシール効果を得ることができる。
水性下塗塗料の塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラ塗装等の種々の方法を採用することができる。塗付時には水等で希釈することによって、粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜50重量%程度である。塗装後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【0017】
本発明では、上述のセメント質基材に対し(必要に応じ水性下塗塗料を塗装した後に)、水性着色塗料を塗装する。
本発明における水性着色塗料は、その形成塗膜において、後述のメタリック塗料とほぼ同色(共色)の色相を呈するものである。本発明では、かかる水性着色塗料をメタリック塗料の下塗りとして採用することにより、メタリック塗料の彩度や光輝性を保持しつつ、塗膜全体の隠ぺい性を高めることができる。具体的に、水性着色塗料の色相は、水性メタリック塗料との色差が20以下(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)となるように設定する。
なお、本発明における色差(△E)は、色差計を用いて測定される値であり、それぞれの塗膜のL値、a値、b値より下記式にて算出することができる。
<式>△E={(L1−L2+(a1−a2+(b1−b20.5
(式中、L1、a1、b1はそれぞれ水性着色塗料の塗膜のL、a、b。L、a、bはそれぞれ水性メタリック塗料の塗膜のL、a、b
【0018】
本発明における水性着色塗料では、その粘度を0.1〜6Pa・sに、チクソトロピーインデックスを6.0以下に調整する。本発明では、水性着色塗料の粘性特性をかかる条件に設定することで、塗膜形成時における微細な凹凸の発生が抑制され、下地からのアルカリの滲出を抑えることができる。
水性着色塗料の粘度は、通常0.1〜6Pa・sであるが、好ましくは0.2〜4Pa・s、より好ましくは0.3〜3Pa・sである。また、チクソトロピーインデックスは、通常6.0以下であるが、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。チクソトロピーインデックスの下限は、通常1.0以上である。
なお、本発明における粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値である。チクソトロピーインデックス(TI)は、BH型粘度計を用い、下記式により求められる値である。いずれも測定温度は23℃である。
<式>TI=η1/η2
(式中、η1は2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)。η2は20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0019】
以上の如き特性を有する水性着色塗料は、合成樹脂エマルション及び着色顔料を必須成分として得ることができる。
水性着色塗料における合成樹脂エマルションとしては、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分として含むモノマー群を共重合して得られる合成樹脂エマルションが好ましく使用できる。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。
モノマー群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成比率は、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。上限は特に限定されないが、通常99.8重量%以下、好ましくは99.5重量%以下、より好ましくは99.2重量%以下である。
【0021】
水性着色塗料における合成樹脂エマルションとしては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加え、カルボキシル基含有重合性モノマー及び/または水酸基含有重合性モノマーを含むモノマー群を共重合して得られるものが好適である。このような重合性モノマーを併用することにより、水性着色塗料の粘性を本発明規定内に調整しつつ、塗料の安定性、顔料分散性等を高めることができる。
【0022】
カルボキシル基含有重合性モノマーは、分子内にカルボキシル基と重合性不飽和結合を併有する化合物である。カルボキシル基含有重合性モノマーの具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。このうち、特にアクリル酸、メタクリル酸から選ばれる1種以上が好適である。モノマー群におけるカルボキシル基含有重合性モノマーの構成比率は、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.3〜2重量%とすることが望ましい。
【0023】
水酸基含有重合性モノマーは、分子内に水酸基と重合性不飽和結合を併有する化合物である。水酸基含有重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。モノマー群における水酸基含有重合性モノマーの構成比率は、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%とすることが望ましい。
【0024】
水性着色塗料における合成樹脂エマルションは、本発明の効果を著しく阻害しない限り、上記モノマー以外の重合性モノマーが共重合されたものであってもよい。かかる重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;アクロレイン、ビニルエチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有モノマー等のアミド基含有モノマー、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、クロロプレン等が挙げられる。モノマー群におけるこのような重合性モノマーの構成比率は、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0025】
水性着色塗料における合成樹脂エマルションは、上記重合性モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法として公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤等を使用することもできる。
合成樹脂エマルションのガラス転移温度は通常−60〜80℃(好ましくは−40〜60℃)程度である。また、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、通常0.05〜0.4μm程度である。
【0026】
着色顔料としては、通常塗料に使用可能なものであれば特に制限されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。これら着色顔料の1種または2種以上を適宜使用することにより、水性着色塗料の色相を調整することができる。
着色顔料の混合比率は、上記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常1〜500重量部、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。着色顔料の混合比率がかかる範囲内であれば、水性着色塗料の色相を水性メタリック塗料の共色に調整しつつ、塗膜の隠ぺい性を十分に確保することができる。
【0027】
本発明の水性着色塗料では、上記塗料の安定性、塗装作業性等を確保するため、少量の増粘剤を混合することが望ましい。かかる増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルカリ可溶性エマルション、会合性増粘剤等が挙げられる。このうち本発明では、塗料の粘性調整の点で会合性増粘剤が好適である。会合性増粘剤としては、エチレンオキシドウレタンブロックコポリマーが特に好適である。かかる増粘剤の混合比率は、上記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、固形分換算で通常0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0028】
水性着色塗料では、上記成分に加え親水性有機溶剤を混合することもできる。特に親水性有機溶剤としては、水への溶解度が10g/100g以上(好ましくは20g/100g以上、より好ましくは∞)の親水性有機溶剤が好適である。かかる親水性有機溶剤の使用は、水性着色塗料の粘性調整の点で有利である。とりわけ、増粘剤として会合性増粘剤を使用する場合は、親水性有機溶剤を併用することにより、塗料の粘度及びチクソトロピーインデックスを本発明規定内に容易に設定することが可能となる。
【0029】
具体的に、親水性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
親水性有機溶剤の混合比率は、上記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常0.2〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0030】
本発明における水性着色塗料には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。かかる成分としては、例えば、体質顔料、レベリング剤、湿潤剤、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
なお、水性着色塗料のpHは、6.0〜8.0であることが望ましい。pHがかかる範囲内であれば、水性着色塗料の粘性調整の点で有利である。
【0031】
以上の如き水性着色塗料の塗装においては、単位面積当たりの固形分が30g/m以上(好ましくは50〜300g/m、より好ましくは60〜200g/m)となるように塗装を行う。水性着色塗料の塗付量がかかる範囲内であれば、優れたアルカリシール効果と隠ぺい効果を得ることができる。
【0032】
水性着色塗料の塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラ塗装等の種々の方法を採用することができる。このうち、ローラ塗装を行う場合、一般の塗料では形成塗膜において微細な凹凸が発生しやすいが、本発明の水性着色塗料では、このような凹凸発生を抑制することができる。すなわち、本発明は、水性着色塗料の塗装をローラブラシを用いて行った場合に、特に有利な効果を得ることができるものである。ローラブラシとしては、天然繊維、合成繊維等の繊維からなるローラブラシが好適である。
【0033】
水性着色塗料の塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を本発明規定内に適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。塗装後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【0034】
本発明では、以上のように水性着色塗料を塗装した後、水性メタリック塗料を塗装する。かかる水性メタリック塗料としては、その形成塗膜においてメタリック感が表出可能なものであれば特に制限されず、公知または市販もののも使用できる。本発明では特に、合成樹脂エマルション及び金属粉顔料を必須成分とし、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し金属粉顔料を1〜100重量部含む水性メタリック塗料が好適である。
【0035】
水性メタリック塗料における合成樹脂エマルションとしては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0036】
かかる合成樹脂エマルションは、架橋反応性を有するものであってもよい。合成樹脂エマルションが架橋反応型合成樹脂エマルションである場合は、塗膜の耐水性、耐候性、密着性等を高めることができる。架橋反応型合成樹脂エマルションは、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。
【0037】
合成樹脂エマルションのガラス転移温度は通常−60〜80℃(好ましくは−40〜60℃)程度である。また、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、通常0.05〜0.4μm程度である。
【0038】
水性メタリック塗料における金属粉顔料は、形成塗膜にメタリック感を付与する成分である。金属粉顔料としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、真鍮等、及びそれらの合金等が使用できる。この中でも特に金属粉顔料としてアルミニウム顔料を含む場合に、本発明では有利な効果を得ることができる。
アルミニウム顔料としては、種々の表面処理を施したものも使用できる。例えば、アトマイズドアルミニウム粉及び/またはアルミニウム箔を、脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール等の粉砕助剤を用いて粉砕した後、さらにクロム酸、リン酸、リン酸塩、リン酸エステル、バナジン酸塩、酸化バナジウム、モリブデン酸塩、シリカ等によって処理を施したもの等が使用できる。このような処理を施したアルミニウム顔料を使用すれば、水との接触による水素ガスの発生を抑制することもできる。
【0039】
金属粉顔料の形状は、通常リン片状であり、その平均粒径は通常1〜50μm(好ましくは5〜30μm)程度である。
【0040】
金属粉顔料の混合比率は、上記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部である。金属粉顔料が1重量部より少ない場合は、形成塗膜において十分なメタリック感を得ることができず、100重量部より多い場合は、塗料の流動性が低下し、塗装作業に支障をきたすおそれがある。また、形成塗膜に微細な凹凸が生じ、仕上外観に悪影響を及ぼしやすくなる。
【0041】
水性メタリック塗料では、上記金属粉顔料以外の着色顔料を使用することもできる。かかる着色顔料を水性メタリック塗料に混合することで、塗料の色相を調整することができ、様々な色彩を有するメタリック塗膜が得られる。ただし、着色顔料の混合量が多すぎると、形成塗膜の彩度や光輝性が低下するおそれがあるため、注意を要する。
着色顔料としては、通常塗料に使用可能なものであれば特に制限されず、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料等が使用できる。これら着色顔料は、所望の色彩に応じて1種または2種以上を適宜使用することができる。
着色顔料の混合比率は、上記合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し通常200重量部以下、好ましくは0.1〜100重量部である。
【0042】
本発明における水性メタリック塗料には、上述の成分の他に通常塗料に使用可能な成分を混合することもできる。かかる成分としては、例えば、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、吸着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0043】
水性メタリック塗料の塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラ塗装等の種々の方法を採用することができる。塗装を行う際には、単位面積当たりの固形分が50g/m以上(好ましくは80〜300g/m、より好ましくは100〜200g/m)となるように塗装する。
塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。塗装後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【0044】
水性メタリック塗料を塗装した後には、水性クリヤー塗料を塗装することができる。かかる水性クリヤー塗料の塗装により、耐久性、耐汚染性、美観性(光沢感)等を高めることができる。水性クリヤー塗料としては、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等をバインダーとするものが使用できる。また、下層のメタリック塗膜の美観性が著しく損なわれない範囲内であれば、着色タイプのものも使用できる。
【0045】
水性クリヤー塗料の塗装方法は、公知の方法に従えばよく、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラ塗装等の種々の方法を採用することができる。塗装を行う際には、単位面積当たりの固形分が10g/m以上(好ましくは20〜200g/m)となるように塗装する。
塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調整することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。水性クリヤー塗料を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ加熱することもできる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0047】
(水性下塗塗料の製造)
・水性下塗塗料A
容器内に合成樹脂エマルションA(スチレン−ブチルアクリレート−アクリルアミド−(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)−グリシジルメタクリレート共重合体、pH7.0、固形分50重量%、ガラス転移温度2℃、平均粒子径0.08μm)を200重量部仕込み、これに2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを5重量部、水を180重量部、シリコーン系消泡剤を1重量部混合し、常法で均一に攪拌することによって水性下塗塗料Aを製造した。この水性下塗塗料Aにおける樹脂量(固形分)は26重量%である。
【0048】
・水性下塗塗料B
容器内に合成樹脂エマルションAを100重量部仕込み、これに合成樹脂エマルションB(スチレン−メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−アクリルアミド−メタクリル酸共重合体、pH7.2、固形分50重量%、ガラス転移温度5℃、平均粒子径0.2μm)を100重量部、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを5重量部、水を180重量部、シリコーン系消泡剤を1重量部混合し、常法で均一に攪拌することによって水性下塗塗料Bを製造した。この水性下塗塗料Bにおける樹脂量(固形分)は26重量%である。
【0049】
(水性着色塗料の製造)
表1に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して水性着色塗料A〜Eを製造した。なお、水性着色塗料の製造においては以下の原料を使用した。
・合成樹脂エマルションC(メチルメタクリレート−スチレン−(2−エチルヘキシルアクリレート)−(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)−メタクリル酸共重合体、pH7.0、固形分50重量%、ガラス転移温度16℃)
・合成樹脂エマルションD(メチルメタクリレート−スチレン−(2−エチルヘキシルアクリレート)−メタクリル酸共重合体、pH7.1、固形分50重量%、ガラス転移温度16℃)
・着色顔料A:酸化チタン70重量%分散液
・着色顔料B:カーボンブラック24重量%分散液
・有機溶剤A:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水への溶解度∞)
・有機溶剤B:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(水への溶解度3g/100g)
・増粘剤A:会合性増粘剤(エチレンオキシドウレタンブロックコポリマー、固形分20重量%)
・増粘剤B:アルカリ可溶性エマルション(固形分20重量%)
・pH調整剤:25重量%アンモニア
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0050】
【表1】

【0051】
(水性メタリック塗料の製造)
容器内に合成樹脂エマルションCを200重量部仕込み、これにアルミニウム顔料(平均粒子径15μm)を20重量部、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを12重量部、会合性増粘剤を2重量部、シリコーン系消泡剤0.8重量部等を常法にて順次混合・攪拌することによって水性メタリック塗料Aを製造した。
【0052】
(水性クリヤー塗料の製造)
容器内に合成樹脂エマルションCを200重量部仕込み、これにトリプロピレングリコールモノメチルエーテルを12重量部、シリコーン系消泡剤0.8重量部等を常法にて順次混合・攪拌することによって水性クリヤー塗料Aを製造した。
【0053】
(試験方法)
・試験例1
スレート板に対し、水性下塗塗料Aを単位面積当たりの固形分が40g/mとなるようにスプレー塗りし、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で3時間乾燥後、水性着色塗料Aを単位面積当たりの固形分が70g/mとなるようにローラ塗りし、標準状態で24時間乾燥させた。次いで、水性メタリック塗料Aを単位面積当たりの固形分が150g/mとなるようにローラ塗りし、標準状態で24時間乾燥後、水性クリヤー塗料Aを単位面積当たりの固形分が70g/mとなるようにスプレー塗りし、標準状態で14日間乾燥させた。
以上の方法で得られた試験体について、促進耐候性試験機としてスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用い、光照射6時間・結露2時間(計8時間)を1サイクルとして計30サイクルまで試験を行った。このときの試験体表面の状態(艶引け、変色等)を確認し、全く異常がないものを◎、ほとんど異常がないものを○、一部に異常がみられるものを△、全体に異常がみられるものを×とした。
【0054】
・試験例2〜6
表2に示す組合せにおいて、上記実施例1と同様の方法で試験を行った。
【0055】
【表2】























【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質下地に対し、水性着色塗料、水性メタリック塗料を順次塗装する塗装方法において、
前記水性着色塗料として、
合成樹脂エマルション及び着色顔料を必須成分とし、該合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対し該着色顔料を1〜500重量部含み、
前記水性メタリック塗料との色差△Eが20以下であり、
粘度が0.1〜6Pa・s、チクソトロピーインデックスが6.0以下である水性着色塗料を使用し、
前記水性着色塗料の単位面積当たりの固形分が30g/m以上となるように塗装することを特徴とするセメント質基材の塗装方法。
【請求項2】
前記水性着色塗料の塗装をローラブラシを用いて行うことを特徴とする請求項1記載のセメント質基材の塗装方法。
【請求項3】
前記水性着色塗料の塗装に先立ち、セメント質下地に対し、
平均粒子径0.1μm以下の水性樹脂を結合剤とし、該水性樹脂を固形分で5〜50重量%含む水性下塗塗料を、単位面積当たりの固形分が10g/m以上となるように塗装することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセメント質基材の塗装方法。

【公開番号】特開2006−68671(P2006−68671A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257034(P2004−257034)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】