説明

セラミックス−金属接合体の製造方法、及びセラミックス−金属接合体

【課題】セラミックス部材と金属部材とを、ろう付けによって高い導電性を確保した状態で接合するセラミックス−金属接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材131の接合面131aに、還元性を有する還元剤134を塗工して上記接合面131aにおける酸化膜を還元除去し、その後、セラミックス部材131と金属部材132とをろう材133を介して接合する工程を備えたセラミックス−金属接合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス−金属接合体の製造方法、及びセラミックス−金属接合体に関する。更に詳しくは、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と金属部材とを、ろう付けによって、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することが可能なセラミックス−金属接合体の製造方法、及びこのような製造方法によって製造されたセラミックス−金属接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミクス材料と金属材料とを接合する方法としては、従来、多くの場面でろう付けによる接合方法が用いられている。通常、セラミクス材料と金属材料とをろう材によって接合する場合には、セラミクス材料に対するろう材の濡れ性が低いため、例えば、以下のような2種類の接合方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
第一の方法としては、セラミクスの表面にメタライズ(金属コート)を行い、このようにメタライズを行ったセラミクス材料と金属材料とを間接的にろう付けする方法であり、第二の方法としては、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属やTi、Zr、Be等の活性金属を含む、特殊な金属ろう材を用い、セラミクスとろう材との活性を高めることによって、セラミクス材料と金属材料とを直接的にろう付けする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−119760号公報
【特許文献2】特開2002−37679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のろう付けによる接合方法では、例えば、セラミクス材料として導電性セラミクス、例えば、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス(以下、「Si−SiCセラミクス」或いは「Si−SiC」ということがある)を用いた場合には、セラミックス部材と金属部材との接合界面において、各部材相互間の電気抵抗が増大してしまうという問題があった。
【0006】
即ち、上述したSi−SiCセラミクスは、骨材としての炭化珪素粒子と結合材としての珪素とを含有するセラミクス原料を用いて所定形状の成形体を得た後、得られた成形体を焼成してセラッミクス部材を製造するものであるが、セラミックス部材の機械的強度や耐食性等の耐久性を向上させるために、上記のように焼成してセラミックス部材を製造した後、例えば、1200℃程度の温度で酸化処理を施して、セラミクス部材の表面に、シリコン酸化物からなる保護膜を形成することがある。上記シリコン酸化物は、絶縁性物質であるために、導電性を有するセラミックス部材と金属部材とを接合した接合体においては、その接合界面における電気抵抗が増大するものと推察される。
【0007】
また、上述した酸化処理を特別に行わない場合であっても、セラミックス原料を焼成する工程等において、焼成雰囲気によりセラミクス表面の酸化が進行することがあり、このような酸化したセラミクスは、上述した酸化処理と同様に、金属部材を接合して接合体を形成した場合に、その接合界面における電気抵抗が増大してしまう。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とを、ろう付けによって、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することが可能なセラミックス−金属接合体の製造方法、及びこのような製造方法によって製造されたセラミックス−金属接合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のセラミックス−金属接合体の製造方法、及びセラミックス−金属接合体を提供する。
【0010】
[1] 導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面を有するセラミックス部材と、金属材料からなり、第2の接合面を有する金属部材とを、ろう材を介して接合して、前記セラミックス部材と前記金属部材とが前記ろう材を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体を製造する工程を備え、前記セラミックス部材の前記第1の接合面に、還元性を有する還元剤を塗工した後に、前記セラミックス部材の前記第1の接合面と前記金属部材の前記第2の接合面とを、前記ろう材を介して接合するセラミックス−金属接合体の製造方法(以下、「第一の製造方法」ということがある)。
【0011】
[2] 導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面を有するセラミックス部材と、金属材料からなり、第2の接合面を有する金属部材とを、ろう材を介して接合して、前記セラミックス部材と前記金属部材とが前記ろう材を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体を製造する工程を備え、前記ろう材として、還元性を有する還元剤が混合されたろう材を使用し、前記ろう材により、前記セラミックス部材の前記第1の接合面を還元するセラミックス−金属接合体の製造方法(以下、「第二の製造方法」ということがある)。
【0012】
[3] 前記還元剤が、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有するものである前記[1]又は[2]に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0013】
[4] 前記ろう材として、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、及びマンガンからなる群より選択される少なくても一種の元素を含む拡散防止剤が更に混合されたものを使用する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0014】
[5] 前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する前記[1]〜[4]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0015】
[6] 前記セラミックス部材を構成するセラミックス材料が、骨材としての炭化珪素粒子及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0016】
[7] 前記セラミックス部材として、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体を用い、前記金属材料として、前記電極端子突起部に電気的に接続する金属材料からなる金属端子部又は金属配線を用いる前記[1]〜[6]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0017】
[8] 導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とを備え、前記セラミックス部材と前記金属部材とは、少なくとも前記セラミックス部材の前記金属部材との接合面が、還元性を有する還元剤によって還元処理された状態で、ろう材を介して接合されているセラミックス−金属接合体。
【0018】
[9] 前記ろう材中に、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、フッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する前記[8]に記載のセラミックス−金属接合体。
【0019】
[10] 前記セラミックス部材が、骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する前記セラミックス材料によって形成されたセラミックス部材である前記[8]又は[9]に記載のセラミックス−金属接合体。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とを、ろう付けによって、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することができる。より具体的には、セラミックス部材の表面の酸化物を、還元剤によって還元処理して、ろう材による接合を行うことができ、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と金属材料からなる金属部材とが、高い導電性を確保した状態で接合されたセラミックス−金属接合体を簡便に製造することができる。
【0021】
また、本発明のセラミックス−金属接合体は、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と金属材料からなる金属部材とが、高い導電性を確保した状態で接合されたものであり、例えば、導電性を有するセラミックス部材が、ヒータ等の抵抗体或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子等であり、金属部材が、上述した抵抗体に電圧を印加するための金属製の電極端子や電極配線である場合に、セラミックス部材と金属部材との相互間の接合界面における電気抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図1B】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図1C】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図1D】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図2】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の他の実施形態によって製造されたセラミックス−金属接合体を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図3】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図5】図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す側面図である。
【図6】図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。
【図7】図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図8】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図9】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図10A】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10B】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10C】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10D】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図11A】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図11B】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図11C】本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0024】
(1)セラミックス−金属接合体の製造方法(第一の製造方法):
まず、セラミックス−金属接合体の製造方法(以下、「第一の製造方法」ということがある)として、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態について説明する。
【0025】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、図1A〜図1Dに示すように、導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面131aを有するセラミックス部材131と、金属材料からなり、第2の接合面132aを有する金属部材132とを、ろう材を介して接合して、セラミックス部材131と金属部材132とがろう材133を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体100を製造する工程を備えたセラミックス−金属接合体の製造方法である。例えば、第1の接合面131aと第2の接合面132aとがろう材133を挟んで向かい合うように配置した状態で積層してセラミックス−金属積層体140を得、得られたセラミックス−金属積層体140を加熱することによって、セラミックス部材131と金属部材132とがろう材133を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体100を製造することができる。
【0026】
なお、ろう材による接合方法としては、セラミックス部材と金属部材とを接合する表面同士を当接させて、セラミックス部材と金属部材との少なくとも一方の表面に接する形でろう材を配置し、接合を行う。この際、ろう材の配置方法としては、セラミックス部材と金属部材との間に、ろう材を予め挟んでしまう方法(例えば、図1C参照)と、セラミックス部材と金属部材とを重ね合わせて積層し、このセラミックス部材と金属部材との隙間に、ろう材を接するように配置し、ろう材を溶かすことによって、溶けたろう(ろう材)を、毛細管現象を利用して、セラミックス部材と金属部材と隙間に流し込む方法と、の2通りの方法を好適例として挙げることができる。
【0027】
なお、上記した毛細管現象を利用して、溶けたろうを流し込む「隙間」は、二つの部材(セラミックス部材と金属部材)を重ね合わせた際に、両部材の接合面の表面粗さや加工精度等に起因して存在する(例えば、不可避的に存在する)接合界面の隙間や、例えば、温度上昇により、接合を行う各部材の熱膨張率の差によって生じる隙間等を挙げることができる。なお、意図的にろうを流し込む隙間を形成することも可能である。
【0028】
そして、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、図1B及び図1Cに示すように、セラミックス部材131の第1の接合面131aに、還元性を有する還元剤134を塗工した後に、セラミックス部材131の第1の接合面131aと金属部材132の第2の接合面132aとを、ろう材133を介して接合するものである。
【0029】
ここで、図1A〜図1Dは、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態における、セラミックス−金属接合体の製造工程を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。なお、図1Aは、セラミックス部材131と金属部材132とを積層する前の状態を示し、図1Bは、セラミックス部材132の第1の接合面132aに、還元性を有する還元剤134を塗工した状態を示し、図1Cは、第1の接合面131aと第2の接合面132aとがろう材133を挟んで向かい合うように配置した状態を示し、図1Dは、セラミックス部材131と金属部材132とがろう材133を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体100を製造する工程を示している。なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、還元性を有する還元剤によって、セラミックス部材の第1の接合面を還元処理する工程を備えていれば、ろう材の配置方法については、図1A〜図1Dに示す方法に限定されることはない。即ち、上述したように毛細管現象を利用して、セラミックス部材と金属部材と隙間に、溶けたろうを流し込む方法であってもよい。
【0030】
このように構成することによって、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とを、ろう付けによって、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することができる。これにより、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と金属材料からなる金属部材とが、高い導電性を確保した状態で接合されたセラミックス−金属接合体を簡便に製造することができる。
【0031】
即ち、従来のろう付けによる接合方法では、例えば、セラミクス材料として導電性セラミクス、例えば、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス(以下、「Si−SiCセラミクス」或いは「Si−SiC」ということがある)を用いた場合には、セラミックス部材と金属部材との接合界面において、各部材相互間の電気抵抗が増大してしまうという問題がった。
【0032】
例えば、上述したSi−SiCセラミクスは、機械的強度や耐食性等の耐久性を向上させるために、セラミクス部材の表面に、シリコン酸化物からなる保護膜(酸化膜)を形成することがある。このような酸化膜は、絶縁性物質であるために、導電性を有するセラミックス部材と金属部材とを接合した接合体においては、その接合界面における電気抵抗が増大してしまう。また、セラミックス部材を作製する際の焼成工程や焼成後の冷却工程において、その表面が酸化されて酸化膜が形成されてしまうこともある。
【0033】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、図1A及び図1Bに示すように、セラミックス部材131と金属部材132とのろう材接合を行う前に、還元性を有する還元剤134を、セラミックス部材131の第1の接合面131aに塗工し、このセラミックス部材131の第1の接合面131aを還元処理することによって、セラミックス材料が酸化した(或いは、意図的に酸化させた)、導電性の低い或いは絶縁性の酸化膜131xを除去するため、両部材相互間の電気抵抗を小さくすることができる。
【0034】
なお、還元剤は、例えば、還元剤を含有するフラックス(以下、このような還元剤を含有するフラックスを「特定フラックス」ということがある)を用いることができる。
【0035】
還元剤によって酸化膜を除去する際には、ろう材によって接合を行う面のみ、即ち、実際に第2の接合面(即ち、金属材料の接合面)と接合する面のみに、還元剤を作用させて酸化膜を除去することが好ましい。例えば、第1の接合面以外の表面の酸化膜を除去すると、セラミックス部材の機械的強度や耐食性等の耐久性が低下することがある。即ち、酸化膜は、セラミックス部材の耐久性を向上させる保護膜となり得るため、ろう材接合を行う面以外の酸化膜については、特に還元除去しなくともよい。勿論、セラミックス部材の他の表面に対して別途電気的な接続を行う場合等には、電気的接続を行う部分の表面の酸化膜を、還元剤によって除去してもよい。
【0036】
セラミックス部材の第1の接合面を還元するための還元剤は、導電性セラミクスに含有される導電性成分、より具体的には、導電性セラミクスに含有される金属成分が酸化された酸化物、を還元することが可能なものであれば特に制限はない。例えば、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有するものであることが好ましい。
【0037】
また、このような還元剤は、370〜1100℃の融点をもつホウ素化合物、フッ化物、塩化物等を作り、ペースト或いは粒子の状態として用いることが好ましい。より具体的な還元剤としては、例えば、HBO、KHF、KBF等を挙げることができる。このような化合物は、予めペースト(液)状の場合もあるし、固体の場合には、粉末にして、溶剤やバインダと混ぜて、スラリー(ペースト)状にして用いることができる。例えば、ペースト或いは粒子の状態の還元剤は、上述したフラックス中に含有させて使用することができる。なお、還元剤が含有されてもよいフラックスは、主として、物質を融解し易くするために添加される融剤として用いられるものである。
【0038】
セラミックス部材の第1の接合面に形成された酸化膜を還元して除去する際には、例えば、還元剤が含有されたペースト状の特定フラックスを、セラミックス部材の第1の接合面を覆うように塗工することが好ましい。
【0039】
なお、これまでに説明した還元剤をセラミックス部材の第1の接合面に塗工することによって、その第1の接合面の酸化膜を還元して除去することができるが、ろう材による接合時の加熱と還元雰囲気(真空等)により、還元剤の還元が促進される。還元剤が活性になる温度が判明している場合には、ろう材による接合時の温度スケジュールにおいて、還元剤が活性になる温度範囲で30〜120分程度保持するのが好ましい。なお、特に限定されることはないが、ろう材の融点よりも、還元剤の活性温度が50〜350℃低いものを選択して使用することが好ましい。
【0040】
なお、還元剤中の還元成分は、第1の接合面の酸化膜を還元除去した後、溶解したろう材外に排出されるか又は溶解したろう材に均一に混ざり合い、セラミックス部材の第1の接合面と、金属部材の第2の接合面とが、ろう材を介して、電気的に良好に接続された状態で接合される。
【0041】
還元剤の塗工量については特に制限はないが、還元剤の塗工量が、3〜500g/mであることが好ましく、15〜150g/mであることが更に好ましい。このように構成することによって、第1の接合面の酸化膜を良好に除去することができるとともに、還元剤による接合強度の低下、接合面における機械的強度や耐食性の低下を有効に抑制することができる。例えば、還元剤の塗工量が3g/m未満であると、還元成分が十分に得られずに、酸化膜を十分に除去することができないことがあり、一方、還元剤の塗工量が500g/m超であると、還元剤が多すぎて、ろう材による接合を阻害したり、還元剤による層が、得られるセラミックス−金属接合体に残留したりしてしまい、機械的強度や耐食性を低下させてしまうことがある。
【0042】
また、還元剤を、セラミックス部材の第1の接合面に塗工する方法としては、例えば、液状の還元剤の場合には、スプレー法やディップ法等を用いることができる。このような方法を用いることによって、例えば、多孔質のセラミックス部材であっても、第1の接合面に対して還元剤を良好に塗工することができ、第1の接合面に形成された酸化膜を効率よく除去することができる。
【0043】
「酸化膜を除去する」とは、セラミックス部材の第1の接合面に形成された酸化膜を全て完全に除去することだけでなく、第1の接合面に形成された酸化膜の少なくとも一部を除去することを含む。例えば、酸化膜を除去する場合には、酸化膜の少なくとも一部が除去されることによって、第1の接合面の少なくとも一部に、導電性を有するセラミックスが露出するため、導電性を有するろう材を介して、セラミックス部材と金属部材とを電気的な接続を確保した状態で良好に接合することが可能となる。なお、特に限定されることはないが、第1の接合面の面積における、50%以上(即ち、50〜100%)の範囲において、セラミックス部材の酸化膜が除去され、導電性を有するセラミックスが露出していることが好ましい。このように酸化膜を除去することによって、セラミックス部材と金属部材との相互間の接合界面における電気抵抗を小さくすることができる。
【0044】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法に用いられるセラミックス部材は、導電性を有するセラミックス材料からなるものであれば特に制限はないが、骨材としての炭化珪素粒子及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する導電性セラミックスを好適に用いることができる。このようなSi−SiCセラミクスは、結合材としての珪素(金属珪素)が導電性を有しているため、セラミックス部材全体が導電性を有するものである。
【0045】
Si−SiCセラミクスは、珪素(金属珪素)が酸化されて酸化膜を形成するため、その表面にシリコン酸化物からなる絶縁性の酸化膜が形成されることがある。また、本実施形態においては、このようなSi−SiCセラミクスを用いたセラミックス部材として、機械的強度や耐食性等の耐久性を向上させるために、骨材と結合材とを含有するセラミックス原料から作製した成形体を焼成した後に、1200〜1350℃の温度で、1〜24時間程度の酸化処理を意図して施したものを用いることもできる。このように構成することによって、セラミックス部材の表面に保護膜となる酸化膜が良好に形成され、セラミックス部材の耐久性を向上させることができるとともに、セラミックス部材の第1の接合面に対しては、還元剤によって、上記酸化膜(保護膜)を還元除去することができるため、導電性を有するセラミックス部材と金属部材とをろう材接合によって、電気的接続を確保した状態で良好に接合することができる。
【0046】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法に使用するセラミックス部材は、例えば、以下のように製造することができる。まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が30〜80質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、30〜100μmが好ましく、30〜60μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0047】
また、上述した成形原料に造孔材を加えて、多孔質のセラミックス部材を形成してもよい。このように造孔材を加えて多孔質のセラミックス部材を形成した場合には、還元剤を用いた際の還元効果をより高く発現させることができる。
【0048】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0049】
水の含有量は、成形原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0050】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0051】
多孔質のセラミックス部材を形成する際に使用される造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形原料を押出形成した際に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0052】
また、成形原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0053】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0054】
次に、坏土を所定の形状に成形して、未焼成のセラミックス部材を作製する。成形方法については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体に使用するセラミックス部材を作製することが可能な方法であればよい。例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、シート成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。また、成形後、更に所定の形状となるように加工を行ってもよい。
【0055】
このようにして得られた未焼成のセラミックス部材を、乾燥させた後、焼成を行ってセラミックス部材を作製する。なお、乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0056】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は、例えば、大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。
【0057】
また、焼成後、耐久性向上のために、例えば、1200〜1350℃で、1〜10時間、セラミックス部材を酸化処理することが好ましい。このような酸化処理を施すことにより、セラミックス部材の表面に、金属珪素が酸化された酸化膜(保護膜)を形成することができる。但し、このような酸化膜は、絶縁性の酸化珪素からなるものであるため、セラミックス部材と金属部材とを、単にろう材を用いて接合した場合には、セラミックス部材を構成する導電性のセラミックス材料と、金属部材を構成する金属材料との間に、上記絶縁性の酸化膜が配置されてしまい、セラミックス部材と金属部材との電気抵抗が増大してしまう。このように、酸化膜を形成することによって耐久性を向上させることと、セラミックス−金属接合体の電気抵抗の増大を抑制することとは、二律背反の関係にあり、単にろう材によって両部材を接合する製造方法では、両者を両立させることは極めて困難である。
【0058】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、接合面に形成された酸化膜を、還元剤を用いて酸化除去するため、上述した酸化処理によって耐久性を向上させつつ、高い導電性を確保した状態でろう材接合を行うことができる。
【0059】
セラミックス部材と接合を行う金属部材を構成する金属材料としては、特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、Fe基耐熱合金(ステンレス含む)、Ni基耐熱合金、Co基耐熱合金、Ni基低膨張合金等の金属材料を好適に用いることができる。また、このような金属材料のうち、耐熱性、及び耐食性に優れ、且つ、電気抵抗の低い金属材料として、SUS430、SUS310S、インコネル600、インコネル718、インコロイ909、S816、コバール等を好適例として挙げることができる。このような金属材料を用いることによって、本実施形態のセラミックス−金属接合体を、例えば、自動車の排気系に設置される排ガス処理装置等の装置部品に適用することができる。
【0060】
また、金属部材を構成する金属材料としては、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有するものであることが好ましい。このような金属体を含有する金属材料を用いることによって、ろう付け時の冷却過程で生じるセラミクスと金属間の熱応力を緩和し、ろう付け部の破損を防止することができる。
【0061】
なお、このような金属体は、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミ)からなる群から選択される少なくとも1種を含む金属体であり、例えば、耐熱性に優れ、電気抵抗の低い金属材料として公知のフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、Ni基耐熱合金等を用いることができる。より具体的には、SUS430、SUS630、インコネル600、インコロイ909等を挙げることができる。
【0062】
セラミックス部材と金属部材との形状については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途に応じて適宜選択することができる。なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材と金属部材とが共に導電性を有するものであるため、例えば、セラミックス部材を、ヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子とし、金属部材を、このセラミックス部材に電圧を印加するための電極端子や電極配線とすることができる。
【0063】
金属部材の作製については、従来公知の金属加工によって、所望の形状の金属部材を作製することができる。
【0064】
また、セラミックス部材と金属部材とを接合するために使用されるろう材としては特に制限はなく、従来公知のろう材を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fu)、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミ(Al)、チタン(Ti)等を含有するろう材を挙げることができる。特に、接合部分の強度が高く、耐熱性、耐食性、耐衝撃性等に優れた接合を実現することができることから、例えば、BNi−2(日本工業規格)、BNi−5(日本工業規格)、福田金属箔粉工業社製のFP−613(商品名)等を好適例として挙げることができる。
【0065】
また、上記したろう材は、例えば、クロム(Cr)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、及びリチウム(Li)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含んだものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合信頼性を向上させることができる。
【0066】
このような添加剤の含有割合については特に制限はないが、例えば、ろう材中に、0.1〜50質量%の割合で含有(添加)されていることが好ましく、5〜40質量%の割合であることが更に好ましい。
【0067】
また、ろう材は、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、及びマンガンからなる群より選択される少なくても一種の元素を含む拡散防止剤が更に混合されたものであってもよい。
【0068】
例えば、Si−SiCセラミクスと金属とが良好にろう付けされる状態にあると、セラミクスの成分が、セラミクスからろう材や金属材料に流れ込んでいき、ろう材や金属材料を劣化させてしまうことがある。セラミクスからの拡散成分による、ろう材や金属材料の劣化としては、例えば、耐酸化性の低下、耐熱性(融点)の低下、強度の低下等を挙げることができる。このため、上述したように、ろう材中に、特定の元素を含有する拡散防止剤を更に混合(含有)させ、セラミクスからの拡散成分の流出を防止することが好ましい。
【0069】
このように構成することによって、セラミクスからの拡散成分は、ろう材中に含有された拡散防止剤の成分と化合物を作り、ろう材や金属材料への拡散成分をブロック(遮断)することができる。
【0070】
また特定の元素を含有する拡散防止剤の特性としては、線膨張係数αが10×10−6以下であることが好ましく、5×10−6以下であることが更に好ましい。このように構成することによって、ろう材の線膨張係数を下げることができ、セラミクス−金属間の熱応力を緩和することができる。
【0071】
拡散防止剤の含有割合については特に制限はないが、例えば、ろう材中に、0.1〜50質量%の割合で含有されていることが好ましく、1〜20質量%の割合であることが更に好ましい。
【0072】
特に限定されることはないが、上記したろう材は、粒子状のろう材に少量のバインダを混ぜたペースト状、ワイヤー状、又は箔状であることが好ましく、ペースト状であることがより好ましい。粒子の大きさについて特に制限はないが、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。ワイヤーの線径については、特に制限はないが、0.05〜3mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることが更に好ましい。箔状の場合、厚さについては特に制限はないが、例えば、0.1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、良好なろう材接合を行うことが可能となる。
【0073】
また、特に限定されることはないが、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、図2に示すように、ろう材333の少なくとも一部(ろう材333a)を、少なくとも金属部材332の内部に浸透させながら、セラミックス材料331と金属材料332とを接合してセラミックス−金属接合体300を製造するものであってもよい。ここで、図2は、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の他の実施形態によって製造されたセラミックス−金属接合体を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【0074】
即ち、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、セラミックス部材と金属部材とを接合するろう材として、金属部材の内部に浸透し得る材料からなるろう材を用いることが好ましい。このようなろう材を用いることによって、セラミックス部材と金属部材との接合面に、ろう材が層(ろう材層)のままの状態で存在することがなく、ろう材層によるセラミックス−金属接合体の機械的強度や耐熱・耐食性の低下を有効に防止することができる。
【0075】
セラミックス部材と金属部材とを接合する方法については特に制限はなく、上述したように、例えば、セラミックス部材の第1の接合面(より具体的には、還元剤を塗工した表面)と金属部材の第2の接合面との間に、ろう材を挟んだ状態で積層し、その積層体を加熱することによって、セラミックス部材と金属部材とをろう材を介した状態で接合する方法や、セラミックス部材と金属部材と隙間に溶けたろう(ろう材)を流し込む方法等を用いることができる。
【0076】
この接合時における雰囲気、温度条件、接合体に加える圧力等については、使用するろう材の種類や、金属部材の材質、セラミックス部材と金属部材との形状及び接合面の大きさ等によって適宜設定することができる。特に、良好な真空度で、金属部材の融点以下の温度で、且つ、セラミクス部材の破壊強度以下の圧力によって接合することが好ましい。具体的な条件としては、例えば、1Pa以下の真空度であることが好ましく、0.1Pa以下であることがさらに好ましく、0.01Pa以下であることが特に好ましい。温度については、580〜1140℃の温度が好ましく、780〜1090℃であることが更に好ましく、890〜1050℃であることが特に好ましい。圧力については、2MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることが更に好ましく、無負荷であることが特に好ましい。
【0077】
なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、セラミックス部材が、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21と、一対の電極部21,21のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部22,22と、を備えたハニカム構造体20であり、金属部材が、上記電極端子突起部22,22に電気的に接続する金属材料からなる金属端子部又は金属配線(図3及び図4においては、金属端子部23,23であり、電極端子突起部22,22に接続された状態を示す)である電極付きハニカム構造体100A(セラミックス−金属接合体)を製造する方法に適用することもできる。
【0078】
この電極付きハニカム構造体100Aは、上述したハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する導電性のセラミックス材料からなるものであり、セラミックス部材としての電極端子突起部22,22と、金属部材としての金属端子部23,23とが、ろう材を介して接合されている。ここで、図3は、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図4は、図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。また、図5は、図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す側面図であり、図6は、図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。また、図7は、図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0079】
このような電極付きハニカム構造体100Aは、ハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるため、ハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21間に電流を流すことにより、ハニカム構造部4が発熱し、ヒータとして好適に用いることができる。なお、ハニカム構造体20は、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されている。
【0080】
そして、電極付きハニカム構造体100Aは、ろう材接合される電極端子突起部22の表面(即ち、第1の接合面)に上記した還元剤が塗工されることによって、この電極端子突起部22の表面の酸化膜が還元除去されている。このため、高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で、金属端子部23,23と電極端子突起部22とが良好に接合されている。
【0081】
また、ハニカム構造部4、電極部21、及び電極端子突起部22は、共に骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなることから、各構成部材同士の熱膨張係数が近く、接合強度が高いため、ハニカム構造部4の側面への電極部21の配設を極めて簡便に行うことができる。例えば、セラミックス材料からなるハニカム構造部4に対して、金属製の電極部を直接配設することは、十分な接合強度を得ることができない。例えば、隔壁の厚みが薄く強度が低いハニカム構造部と金属とを接合した場合には、熱膨張係数の違いにより発生する熱応力により、ハニカム構造部が破損してしまうことがある。即ち、このような電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造体の一部を構成する電極端子突起部までを、導電性を有するセラミックス材料によって形成し、このセラミクス材料からなる電極端子突起部に対して、金属材料からなる金属端子部又は金属配線を、これまでに説明した本実施形態のセラミックス−金属接合体における接合方法を適用してろう材接合によって接合している。
【0082】
電極付きハニカム構造体100Aは、金属端子部23,23間に電圧を印加することにより、電極端子突起部22、及び電極部21を通じてハニカム構造部4に電流が流れ、ハニカム構造部4が抵抗体となり発熱する。
【0083】
従来、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合には、触媒を所定の温度まで昇温する必要があり、例えば、エンジン始動時には、触媒温度が低く、排ガスが十分に浄化されないという問題があったが、このような電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造部に電圧を印加して発熱させることができるため、エンジンの運転状態に関わらず、必要に応じて適宜ハニカム構造体を所定の温度まで昇温することができる。
【0084】
上記した電極端子突起部は、ハニカム構造体に電圧を印加するための電気配線等との電気的接続を確保するためのハニカム構造体側の端子であり、この電極端子突起部と、電源からの電気配線等が接続された金属端子部とが電気的に接続されている。従来のハニカム構造体において、例えば、セラミックス材料と金属材料とを接合する場合には、物理蒸着や化学蒸着等の極めて煩雑な接合が必要とされていたが、この電極付きハニカム構造体は、セラミックス材料からなる電極端子突起部と、金属材料からなる金属端子部とが、ろう材を介して電気的に接続された状態で接合されているため、簡便な方法によって、優れた耐熱性、及び高い耐衝撃性を有する接合が実現されている。
【0085】
一対の電極部(換言すれば、電極端子突起部に接合されたそれぞれの金属端子部)間に印加する電圧は、ハニカム構造体を昇温する温度や、ハニカム構造部の材質等によって適宜選択することができるが、例えば、50〜300Vが好ましく、100〜200Vが更に好ましい。例えば、自動車の電気系統に電圧200Vの電源を使用している場合には、当該200Vの電圧を印加することが好ましい。
【0086】
このような電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部が、凸形状又は凹形状に形成されてなるとともに、金属端子部が、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成されてなることが好ましい。図3〜図7においては、電極端子突起部22が、凸形状に形成され、金属端子部が凹形状に形成された場合の例を示している。なお、図8に示すように、極端子突起部22が、凹形状に形成され、金属端子部が凸形状に形成されていてもよい。ここで、図8は、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0087】
なお、例えば、図7に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなる場合には、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の厚さが0.05〜5mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることが更に好ましく、0.2〜1mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、金属端子部の見かけの強度が小さくなり、凸形状の電極端子突起部への応力(具体的には、熱膨張の違いにより発生する熱応力)が軽減され、ヒートサイクルによる、電極端子突起部及び金属端子部の破損、また、ろう材による接合部分の剥離等を有効に防止することができる。なお、上記した凹形状を形成する壁部分の厚さは、電極端子突起部及び金属端子部の大きさによって異なるため、上記した範囲に限定されることはない。
【0088】
また、ハニカム構造体は、例えば、図9に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなり、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の端面形状が、凹形状の内周側が突出するような先細り形状であることが好ましい。このように構成することによって、金属端子部23の凹形状を形成する壁部分の端面における、圧縮及び引張応力を小さくすることができる。ここで、図9は、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0089】
なお、これまでに説明した電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部と金属端子部とをろう材を介して接合した場合の例を示しているが、例えば、電極端子突起部に対して、金属製の配線をろう材によって直接接合した電極付きハニカム構造体であってもよい。即ち、電極端子突起部の表面の酸化膜を、これまでに説明した還元剤によって酸化除去することによって、如何なる形状の金属材料であっても、高い導電性を確保した状態で良好にろう材接合することが可能であり、金属部材側の形状については特に制限されることはない。
【0090】
また、電極部と電極端子突起部とは、炭化珪素粒子と珪素との比率が同一の導電性セラミックス材料からなるものであってもよいし、異なる比率の導電性セラミックス材料からなるものであってもよい。なお、電極部の成分と電極端子突起部の成分とが同じ(又は近い)成分である場合には、電極部と電極端子突起部の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になるため好ましい。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部と電極端子突起部との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部が電極部から剥れたり、電極端子突起部と電極部との接合部分が破損したりすることを良好に防止することができる。
【0091】
なお、図3〜図7に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aと、円柱状の突起部22b(凸形状の部分)とによって構成されていることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0092】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから外れ易くなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0093】
電極端子突起部22において、基板22aの、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)は、電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さの、20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。20%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0094】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜20mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bと金属端子部23とをより強固に接合させることができる。3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。20mmより太いと、金属端子部23と接続させ難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、金属端子部23を良好に接合させるとことができる。3mmより短いと、金属端子部23と接合させ難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0095】
図4に示すように、電極端子突起部22は、電極部21の「セル2の延びる方向」における中央部に配置されていることが好ましい。これにより、ハニカム構造部4全体を均等に加熱し易くなる。
【0096】
電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗は、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.01〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が0.01Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0097】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、5μmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の平均細孔径が、50μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0098】
また、電極付きハニカム構造体100Aの、「一対の電極部21,21のそれぞれに配設された電極端子突起部間」で測定された400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、3〜10Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0099】
また、金属端子部を構成する金属材料の種類については特に制限はないが、例えば、低熱膨張金属を使用し、ヒートサイクル(加熱冷却)時の熱応力を低減可能なものであることが好ましい。具体的な金属材料としては、例えば、コバール、SUS430、インコロイ909等を好適例として挙げることができる。
【0100】
ハニカム構造体20を構成するハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0101】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁厚さは、50〜150μmであることが好ましく、70〜100μmであることが更に好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがあり、隔壁厚さが150μmより厚いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0102】
ハニカム構造部4は、セル密度が40〜200セル/cmであることが好ましく、70〜100セル/cmであることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cmより低いと、触媒担持面積が少なくなることがあり、セル密度が200セル/cmより高いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0103】
また、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜30μmであることが好ましく、5〜20μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗を1〜20Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が小さくなることがある。また、炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0104】
また、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗は、1〜20Ωcmであることが好ましく、3〜10Ωcmであることが更に好ましい。400℃における体積電気抵抗が1Ωcmより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における体積電気抵抗が20Ωcmより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがあるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における体積電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0105】
また、ハニカム構造体20の400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、3〜10Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0106】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗より低いものであることが好ましい。また、電極部21の400℃における体積電気抵抗は、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗を、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0107】
隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、45〜55%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうため好ましくない。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下するため好ましくない。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0108】
隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径が15μmより大きいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0109】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁1及び外周壁3が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を主成分とすることが好ましく、炭化珪素及び珪素のみから形成されていてもよい。隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素及び珪素のみから形成される場合においても、10質量%以下の微量の不純物が含有されてもよい。隔壁1及び外周壁3が、「炭化珪素及び珪素」以外の物質(微量の不純物)を含有する場合、隔壁1及び外周壁3に含有される他の物質としては、酸化珪素、ストロンチウム等を挙げることができる。ここで、「隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0110】
図3〜図6に示すように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びると共に両端部間(両端面11,12間)に亘る「帯状」に形成されていることが好ましい。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されていることが好ましい。このように、電極部21を帯状に形成し、帯状の電極部21の長手方向が、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びるようにして、更に、電極部21がハニカム構造部4の両端部間(両端面11,12間)に亘るようにしたため、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されるようにすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。
【0111】
電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さ(外周の長さ)の、1/30〜1/4であることが好ましく、1/30〜1/10であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。電極部21の、ハニカム構造部4の周方向Rにおける長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さの、1/30より短いと、均一に発熱できないことがある。1/4より長いと、ハニカム構造部4の中心部付近が加熱され難くなることがある。
【0112】
電極部21の厚さは、0.2〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.2mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。2.0mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0113】
電極部21は、図10Aに示すように、外周壁3の表面に配設されていることが好ましい。また、電極部21は、図10Bに示すように、外周壁3の内部に埋め込まれるようにして配設されていてもよい。更に、電極部21は、図10C、図10Dに示すように、一部(外周壁に接触している側)が外周壁3の内部に埋め込まれた状態で、残りの一部(表面側の一部)が外周壁3から外に(表面側に)出た状態となっていることも好ましい態様である。図10Cにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さより薄い態様が示されている。図10Dにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さと同じ厚さとなっている態様が示されている。
【0114】
ここで、図10A〜図10Dは、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の更に他の実施形態によって製造された電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。なお、図10A〜図10Dにおいては、外周壁3の一部及び片方の電極部21のみが表され、隔壁等は表されていない。
【0115】
電極部21は、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ(又は近い)成分となるため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ(又は近く)になる。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。このため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを良好に防止することができる。また、電極端子突起部22についても、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、電極部21と同様の導電性のセラミックス材料を用いて製造することができる。
【0116】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.1〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の400℃における体積電気抵抗が0.1Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。
【0117】
電極部21は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、45%より高いと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0118】
電極部21は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。電極部21の平均細孔径が、20μmより大きいと、強度が弱く破損することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0119】
電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の400℃における体積電気抵抗を、0.1〜2.0Ωcmにすることができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の400℃における体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱く破損することがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0120】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。そして、40質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0121】
このような電極付きハニカム構造体100Aにおいては、電極部21の気孔率が30〜45%であり、電極部の平均細孔径が5〜20μmであり、電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される「珪素の質量」の比率が、20〜40質量%であり、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであり、電極部21の体積電気抵抗が、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましい。これにより、特に、通電時に均一にハニカム構造体を発熱することができる。
【0122】
このような電極付きハニカム構造体においては、セルの延びる方向に直交する断面にて、電極部の、ハニカム構造部の周方向における中央部において、ハニカム構造部の外周に接する接線を引いたときに、当該接線が、いずれかの隔壁と平行であることが好ましい。これにより、キャニング時に破損し難くなる。
【0123】
また、ハニカム構造体20の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体20の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0124】
ハニカム構造体20は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形又は六角形であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体20に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0125】
また、ハニカム構造体20の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mmであることが好ましく、4000〜10000mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0126】
ハニカム構造体20のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましい。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0127】
(2)セラミックス−金属接合体の製造方法(第二の製造方法):
次に、セラミックス−金属接合体の第二の製造方法(以下、「第二の製造方法」)の一の実施形態について説明する。
【0128】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、図11A〜図11Cに示すように、導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面231aを有するセラミックス部材231と、金属材料からなり、第2の接合面232aを有する金属部材232とを、ろう材233を介して接合して、セラミックス部材231と金属部材232とがろう材233を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体200を製造する工程を備えたセラミックス−金属接合体の製造方法である。なお、ろう材による接合方法については、これまでに説明した第一の製造方法と同様の方法を好適に用いることができる。例えば、図11A〜図11Cにおいては、第1の接合面231aと第2の接合面232aとがろう材233を挟んで向かい合うように配置した状態で積層してセラミックス−金属積層体240を得、得られた前記セラミックス−金属積層体240を加熱することによって、セラミックス部材231と金属部材232とがろう材233を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体200を製造する工程を示している。
【0129】
そして、この第二の製造方法における実施形態においては、ろう材233として、還元性を有する還元剤が混合された、例えば、ペースト状のろう材233を使用し、このろう材233により、セラミックス部材231の第1の接合面231aを還元するものである。
【0130】
即ち、これまでに説明した第一の製造方法においては、セラミックス部材の第1の接合面に、還元性を有する還元剤を塗工することによって、第1の接合面の酸化膜を還元除去するものであるが、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、図11A〜図11Cに示すように、ろう材233として、還元性を有する還元剤が混合されたろう材233を使用することによって、セラミックス部材231の第1の接合面231aに形成された酸化膜231xを、ろう材233による接合時において、還元除去することができる。
【0131】
このように構成することによって、これまでに説明した本発明の第一の製造方法と同様の効果を得ることができる。即ち、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とを、ろう付けによって、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することができる。
【0132】
更に、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、ろう材中に還元剤が含有されているため、例えば、金属部材の第二の接合面が酸化されて酸化膜が形成されている場合であっても、この金属部材側に形成された酸化膜も除去することができ、極めて良好な電気的接続が可能となる。本来、金属部材の表面が酸化されていることは少ないが、例えば、自然酸化によって、酸化被膜が形成されていることがあり、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法によれば、このような酸化被膜も還元することができる。
【0133】
また、本実施形態は、第一の製造方法と比較して、還元剤を塗工する工程が省略されており、製造工程が極めて簡便である。即ち、ろう材接合による従来の製造方法と同様の手順によって、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とを、各部材相互間の高い導電性を確保した状態、即ち、低い電気抵抗で良好に接合することができる。
【0134】
なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法に用いられるセラミックス部材、及び金属部材としては、これまでに説明した第一の製造方法の実施形態にて説明したセラミックス部材及び金属部材と同様に構成されたものを用いることができる。
【0135】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法にて用いられるろう材は、そのろう材成分中に、セラミックス部材の第1の接合面に形成された酸化膜を還元して除去することが可能な還元剤が混合(含有)されたものである。
【0136】
還元剤としては、例えば、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有するものであることが好ましい。このような還元剤は、第一の製造方法にて使用される還元剤と同様のものを用いることができる。
【0137】
また、このような還元剤が混合されるろう材としては特に制限はなく、従来公知のペースト状のろう材を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fu)、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミ(Al)、チタン(Ti)等を主成分とするペースト状のろう材を挙げることができる。特に、接合部分の強度が高く、耐熱性、耐食性、耐衝撃性等に優れた接合を実現することができることから、例えば、日本工業規格の「BNi−2」等のNiろうを挙げることができる。
【0138】
なお、ろう材中に混合(含有)される還元剤の量については特に制限はないが、例えば、ろう材100質量部に対して、還元剤が0.1〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることが更に好ましい。なお、還元剤の含有割合が1質量部未満であると、ろう材接合時に、セラミックス部材の第1の接合面に作用する還元剤の量が少な過ぎて、第1の接合面に形成された酸化膜を十分に除去することができないことがあり、一方、還元剤の含有割合が30質量部超であると、ろう付け不良を引き起こすことがある。
【0139】
なお、このような還元剤が含有されたろう材を使用して、セラミックス部材と金属部材とをろう材接合する方法は、第一の製造方法におけるセラミックス部材と金属部材との接合方法と同様の方法によって行うことができる。
【0140】
また、上記したろう材は、例えば、クロム(Cr)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、及びリチウム(Li)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含んだものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合信頼性を向上させることができる。なお、添加剤の含有割合の好ましい範囲は、第一の製造方法と同様である。
【0141】
また、ろう材は、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、及びマンガンからなる群より選択される少なくても一種の元素を含む拡散防止剤が更に混合されたものであってもよい。
【0142】
特に限定されることはないが、上記したろう材は、粒子状のろう材に少量のバインダを混ぜたペースト状であることが好ましい。粒子の大きさについて得に制限はないが、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、良好なろう材接合を行うことが可能となる。
【0143】
また、特に限定されることはないが、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においても、図2に示すように、ろう材333の少なくとも一部(ろう材333a)を、少なくとも金属部材332の内部に浸透させながら、セラミックス材料331と金属材料332とを接合してセラミックス−金属接合体300を製造するものであってもよい。
【0144】
また、この第二の製造方法においても、第一の製造方法と同様に、セラミックス部材が、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21と、一対の電極部21,21のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部22,22と、を備えたハニカム構造体20であり、金属部材が、上記電極端子突起部22,22に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線(図3及び図4においては、金属端子部23,23である場合を示す)である電極付きハニカム構造体100A(セラミックス−金属接合体)を製造する方法に適用することもできる。
【0145】
(3)セラミックス−金属接合体:
次に、本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態について説明する。本実施形態のセラミックス−金属接合体は、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とを備え、セラミックス部材と金属部材とは、少なくともセラミックス部材の金属部材との接合面(以下、「第1の接合面」ともいう)が、還元性を有する還元剤によって還元処理された状態で、ろう材を介して接合されているセラミックス−金属接合体である。
【0146】
このような本実施形態のセラミックス−金属接合体は、これまでに説明した第一の製造方法及び第二の製造方法により製造することができる。即ち、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、例えば、図1A〜図1Dに示すような、セラミックス部材131の第1の接合面131aに、還元性を有する還元剤134を塗工した後に、セラミックス部材131と金属部材132とがろう材133を介して接合されたセラミックス−金属接合体100(第一の製造方法によって製造されたセラミックス−金属接合体)を挙げることができる。
【0147】
また、図11A〜図11Cに示すような、第1の接合面231aを有するセラミックス部材231と、第2の接合面232aを有する金属部材232とが、還元性を有する還元剤が混合されたろう材233を介して接合されたセラミックス−金属接合体200(第二の製造方法によって製造されたセラミックス−金属接合体)であってもよい。
【0148】
更に、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材が、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21と、一対の電極部21,21のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部22,22と、を備えたハニカム構造体20であり、金属部材が、上記電極端子突起部22,22に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線(図3及び図4においては、金属端子部23,23である場合を示す)である電極付きハニカム構造体100Aであってもよい。
【0149】
このように、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材の第1の接合面が、還元性を有する還元剤によって還元処理された状態で、ろう材を介してセラミックス部材と金属部材とが接合されてなるセラミックス−金属接合体であるため、導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と金属材料からなる金属部材とが、高い導電性を確保した状態で接合されたものであり、例えば、導電性を有するセラミックス部材が、ヒータ等の抵抗体或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子等であり、金属部材が、上述した抵抗体に電圧を印加するための金属製の電極端子や電極配線である場合に、セラミックス部材と金属部材との相互間の接合界面における電気抵抗を小さくすることができる。
【0150】
なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体を構成するセラミックス部材、金属部材、及びろう材の各構成要素については、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法(第一の製造方法及び第二の製造方法)にて説明したセラミックス部材、金属部材、及びろう材と同様に構成されたものであることが好ましい。
【0151】
次に、本実施形態のセラミックス−金属接合体の一例としての、図3〜図7に示す電極付きハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0152】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜30質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜30μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、成形原料全体の質量に対して30〜78質量%であることが好ましい。
【0153】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0154】
水の含有量は、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0155】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0156】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0157】
また、成形原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0158】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0159】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0160】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0161】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0162】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0163】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0164】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、電極部形成原料全体の質量に対して40〜80質量%であることが好ましい。
【0165】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜15質量%であることが好ましい。
【0166】
水の含有量は、電極部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0167】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0168】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0169】
また、電極部形成原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0170】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0171】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0172】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0173】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、ハニカム構造体の実施形態にて説明した種々の形状に形成することができる。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。なお、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0174】
電極端子突起部形成用部材は、電極端子突起部形成原料(電極端子突起部形成用部材を形成するための原料)を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0175】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が30〜80質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、30〜100μmが好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、0.1〜50μmであることが好ましい。0.1μmより小さいと、取扱いが困難になりコスト高になることがある。50μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、電極端子突起部形成原料全体の質量に対して50〜85質量%であることが好ましい。
【0176】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0177】
水の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0178】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0179】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0180】
炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して混練する方法については特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0181】
また、得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0182】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0183】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体(ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分)に貼り付ける方法は、特に限定されないが、上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に貼り付く面(ハニカム成形体に接触する面)」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0184】
そして、電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、ハニカム構造部と、このハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部とを作製する。
【0185】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0186】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸化処理を行うことが好ましい。
【0187】
なお、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【0188】
次に、金属材料からなる金属端子部を作製する。なお、金属端子部の作製は、ハニカム構造部の作製の前に行ってもよい。
【0189】
なお、金属端子部の形状は、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成することが好ましい。金属端子部を形成するための金属材料としては、コバールを好適に用いることができる。
【0190】
次に、得られた金属端子部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部の表面に配置された電極端子突起部とを、ろう材を介して接合する。この際、電極端子突起部の、金属部材と接合を行う表面(即ち、第一の接合面)に、還元性を有する還元剤を塗工して、電極端子突起部の第一の接合面の酸化膜を還元除去するか、或いは、還元性を有する還元剤を混合したろう材を用いてろう材接合することによって、接合時に電極端子突起部の第一の接合面の酸化膜を還元除去することが好ましい。
【0191】
例えば、還元性を有する還元剤を塗工する場合には、還元成分としてHBOを主成分とする還元剤を含有するフラックスを、電極端子突起部の第一の接合面に、フラックス中の還元剤の塗工量が、22g/mとなるように塗工する。塗工方法については特に制限はないが、例えば、ディッピングによって行うことができる。その後、従来公知の方法によって、金属端子部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部の表面に配置された電極端子突起部とを、ろう材を介して接合する。
【0192】
一方、還元性を有する還元剤を含有するろう材を用いてろう材接合する場合には、BNi−2(日本工業規格)を主成分とするろう材に、還元成分としてHBOを主成分とする還元剤を、20:1の割合(質量比)で含有させて、還元剤を含有するろう材を調製する。その後、金属端子部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部の表面に配置された電極端子突起部との間に、上記ろう材を配置し、10−1乗Pa以下の真空炉内で、1000℃以上に加熱して電極端子突起部と金属端子部とを、ろう材を介して電気的に接続された状態で接合する。このようにして、図3〜図7に示すような電極付きハニカム構造体を製造することができる。
【0193】
ろう材の種類については、これまでにセラミックス−金属接合体の製造方法の実施形態にて説明したろう材を適宜選択して用いることができ、また、還元剤(還元成分)についても、これまでに説明した還元剤に使用される元素を適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0194】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0195】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを70:30の質量割合で混合し、これに、焼結助剤として炭酸ストロンチウム、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練して坏土を作製した。
【0196】
得られた坏土を押出成形機を用いて成形し、丸棒形状の未焼成のセラミックス部材を得た。得られた未焼成のセラミックス部材を乾燥した後、焼成し、端面の直径が8.3mmであり、長さ20mmのセラミックス部材を作製した。その後、このセラミックス部材の耐久性を向上させるために、1200℃で、24時間、酸化処理を行い、セラミックス部材の表面にシリコン酸化物からなる保護膜(酸化膜)を形成した。
【0197】
一方、金属部材として、内径が8.4mmで、内寸8mm(キャップ形状の凹部の深さ)のキャップ形状の金属端子を、切削加工により2個作製した。なお、凹部の肉厚は0.5mmである。
【0198】
このようにして得られたセラミックス部材と金属部材とを、ろう材を介して接合するに際し、セラミックス部材の表面(第1の接合面)に、HBOを還元成分とする還元剤を塗工して、第1の接合面の保護膜(酸化膜)を還元除去した。
【0199】
その後、上記還元剤が塗工された状態で、タングステン(W)を含有する拡散防止剤5%を含有するペースト状Ni系ろう材を用いて、セラミックス部材と金属部材とをろう材接合することによってセラミックス−金属接合体を作製した。
【0200】
ろう材による接合の条件は、10−2乗Pa以下の真空雰囲気、温度を1000℃以上とした。
【0201】
このようにして得られたセラミックス−金属接合体について、以下の方法で、セラミックス部材と金属部材間の電気抵抗の測定と、冷熱耐久試験の評価を行った。結果を表1に示す。
【0202】
【表1】

【0203】
(電気抵抗)
得られたセラミックス−金属接合体について、4探針法を用いて電気抵抗(Ω)を測定した。
【0204】
(冷熱耐久試験)
得られたセラミックス−金属接合体について、800℃及び650℃の大気炉内で昇温と降温とを繰り返した後に、100サイクルごとに外観、ろう付け部の評価を行った。ろう付け部の金属又はセラミクス部材に破損が確認されたサイクル数を、このサンプルの耐久性として評価した。
【0205】
(実施例2)
表1に示すように、拡散防止剤の含有されていないろう材を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、電気抵抗の測定及び冷熱耐久試験の評価を行った。結果を表1に示す。
【0206】
(比較例1)
還元剤を塗工する工程を行わないこと以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、電気抵抗の測定及び冷熱耐久試験の評価を行った。結果を表1に示す。
【0207】
(比較例2)
還元剤を塗工する工程を行わないこと以外は、実施例2と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、電気抵抗の測定及び冷熱耐久試験の評価を行った。結果を表1に示す。
【0208】
(結果)
表1に示すように、実施例1及び2にて得られたセラミックス−金属接合体は、電気抵抗が低く、また、実施例1は耐久性についても優れるものであった。一方、比較例1及び2にて得られたセラミックス−金属接合体は、実施例と比較して電気抵抗が極めて高いものであった。即ち、比較例1及び2にて得られたセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材の接合面に、保護膜としての酸化膜が存在しており、この酸化膜によってセラミックス部材と金属部材との電気抵抗が増大したものと推測される。また、ろう材中に還元剤を混合してセラミックス−金属接合体を製造した場合にも、実施例1及び2と同様に電気抵抗の低い接合体が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とが、ろう付けによって高い導電性を確保した状態で接合された異種材料の接合体を製造する方法として好適に利用することができる。
【0210】
また、本発明のセラミックス−金属接合体は、導電性を有するセラミックス材料と金属材料とが電気的に接続されて接合された接合体として利用することができ、例えば、セラミックス部材を、ヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子とし、金属部材を、このセラミックス部材に電圧を印加するための電極端子や電極配線として接合体として利用することができる。
【符号の説明】
【0211】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:側面、11:一方の端面、12:他方の端面、20:ハニカム構造体、21:電極部、22:電極端子突起部、22a:基板、22b:突起部、23:金属端子部、24:ろう材、25:隙間、26:結晶化ガラス、27:金属被膜、31,131,231,331:セラミックス部材、131a,231a:第1の接合面、131x:酸化膜、32,132,232,332:金属部材、132a,232a:第2の接合面、33,133,233,333:ろう材、333a:ろう材(金属部材の内部に浸透したろう材)、134:還元剤、100,200,300:セラミックス−金属接合体、100A:セラミックス−金属接合体(電極付きハニカム構造体)、140,240:セラミックス−金属積層体、O:中心部、R:周方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面を有するセラミックス部材と、金属材料からなり、第2の接合面を有する金属部材とを、ろう材を介して接合して、前記セラミックス部材と前記金属部材とが前記ろう材を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体を製造する工程を備え、
前記セラミックス部材の前記第1の接合面に、還元性を有する還元剤を塗工した後に、前記セラミックス部材の前記第1の接合面と前記金属部材の前記第2の接合面とを、前記ろう材を介して接合するセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項2】
導電性を有するセラミックス材料からなり、第1の接合面を有するセラミックス部材と、金属材料からなり、第2の接合面を有する金属部材とを、ろう材を介して接合して、前記セラミックス部材と前記金属部材とが前記ろう材を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体を製造する工程を備え、
前記ろう材として、還元性を有する還元剤が混合されたろう材を使用し、前記ろう材により、前記セラミックス部材の前記第1の接合面を還元するセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項3】
前記還元剤が、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有するものである請求項1又は2に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項4】
前記ろう材として、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、及びマンガンからなる群より選択される少なくても一種の元素を含む拡散防止剤が更に混合されたものを使用する請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項5】
前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項6】
前記セラミックス部材を構成するセラミックス材料が、骨材としての炭化珪素粒子及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項7】
前記セラミックス部材として、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体を用い、
前記金属材料として、前記電極端子突起部に電気的に接続する金属材料からなる金属端子部又は金属配線を用いる請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項8】
導電性を有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とを備え、
前記セラミックス部材と前記金属部材とは、少なくとも前記セラミックス部材の前記金属部材との接合面が、還元性を有する還元剤によって還元処理された状態で、ろう材を介して接合されているセラミックス−金属接合体。
【請求項9】
前記ろう材中に、クロム、珪素、ホウ素、カリウム、ナトリウム、マンガン、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウム、ベリリウム、及びフッ素からなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有する請求項8に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項10】
前記セラミックス部材が、骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する前記セラミックス材料によって形成されたセラミックス部材である請求項8又は9に記載のセラミックス−金属接合体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【公開番号】特開2012−76937(P2012−76937A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221021(P2010−221021)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】