説明

セラミックス回路基板の製造方法

【課題】製造過程の早い段階で簡便かつ高精度に回路パターンの不良の有無を検出することにより製造歩留まりの向上を図ったセラミックス回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックスグリーンシートに貫通孔を形成する工程と、セラミックスグリーンシートの貫通孔に導体ペーストを充填する工程と、セラミックスグリーンシートに導体ペーストによる回路パターンを印刷する工程と、各工程を経たセラミックスグリーンシートを単層または積層体として焼成する工程とを有し、各工程をロット単位で行うセラミックス回路基板の製造方法において、回路パターンを印刷する工程を、ロット毎に予め所定の枚数に対してそれぞれ回路パターンとこれを直列に接続する補助パターンを印刷して導通検査を実施し、該導通検査の結果に基づいて前記ロット単位で行うことを特徴とする、セラミックス回路基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックス回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や圧電振動子等の電子部品を搭載するためのセラミックス回路基板は、一般的には、複数のセラミックスグリーンシートに、所望の貫通孔を形成し導体ペーストを充填し、さらにスクリーン印刷により回路パターンを形成させた後、積層して焼成するという製造方法をとっている。また、このようなセラミックス回路基板の製造は、通常はロット単位で行われている。
【0003】
上記セラミックス回路基板の製造過程において、スクリーン印刷版の問題や異物に起因して発生する回路パターンの欠落や短絡等の不良は、得られるセラミックス回路基板において重大な電気特性上の不良を招く。そのため、製造過程において、回路パターンの不良の有無の検査がなされているが、この検査を焼成後に行うと、製造のロット単位で不良が発覚するなど、トラブルの度合いが甚大となる場合も多かった。
【0004】
そこで、セラミックスグリーンシートに回路パターンを印刷し積層する前に、未焼結の状態で回路パターンの不良の有無を検査する方法が行われている。具体的には、印刷された回路パターンをCCDカメラ等の画像として不良の有無を非接触で検査する方法が提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、これらの方法では検出精度を上げるために時間とコストがかかることから、より簡便かつ高精度に回路パターンの不良の有無を検出できるシステムを取り入れた、効率のよいセラミックス回路基板の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−65345号公報
【特許文献2】特開平8−313580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、製造過程の早い段階で簡便かつ高精度に回路パターンの不良の有無を検出することにより製造歩留まりの向上を図ったセラミックス回路基板の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックス回路基板の製造方法は、セラミックスグリーンシートに所定の貫通孔を形成する工程と、前記セラミックスグリーンシートの所定の貫通孔に導体ペーストを充填する工程と、前記セラミックスグリーンシートに導体ペーストによる回路パターンを印刷する工程と、前記各工程を経たセラミックスグリーンシートを単層として、または複数枚を積層した積層体として焼成する工程とを有し、前記各工程をロット単位で行うセラミックス回路基板の製造方法において、前記回路パターンを印刷する工程を、ロット毎に予め所定の枚数のセラミックスグリーンシートに対してそれぞれ前記回路パターンと該回路パターンを直列に接続する補助パターンとを印刷して導通検査を実施し、該導通検査の結果に基づいて前記ロット単位で行うことを特徴とする。
【0008】
本発明のセラミックス回路基板の製造方法においては、前記導通検査の精度を上げるために、導通検査の前に乾燥を行うことが好ましい。
本発明のセラミックス回路基板の製造方法は、前記回路パターンの印刷がスクリーン版を用いたスクリーン印刷により行われ、前記回路パターンの最小線幅がこのスクリーン版の印刷可能な最小線幅の1〜2倍である場合に特に顕著な効果が発揮される。また、前記補助パターンの印刷についてもスクリーン版を用いたスクリーン印刷により行われ、その場合に前記補助パターンの最小線幅は、このスクリーン版の印刷可能な最小線幅の少なくとも2倍であることが好ましく、3倍以上がより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、製造過程の早い段階で回路パターンの不良の有無を簡便かつ高精度に検出でき、それによりセラミックス回路基板を歩留まりよく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法が適用されるセラミックス回路基板の一例を示す図である。
【図2】図1に示すセラミックス回路基板を、本発明の製造方法の実施形態の一例により製造する際のフローチャートを示す図である。
【図3】回路パターンが印刷されたセラミックスグリーンシートを示す図である。
【図4】回路パターンに加え補助パターンが印刷されたセラミックスグリーンシートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお本発明は、下記説明に限定して解釈されない。
図1は、本発明の製造方法が適用されるセラミックス回路基板の一例を示す図である。図1(a)、(b)は、それぞれセラミックス回路基板1を上から見た平面図およびそのX−X線断面図である。図1(c)は、製造時のセラミックスグリーンシートの積層構成に従って、セラミックス回路基板1を3層に展開させた図である。以下、該3層を必要に応じて上から順にL1層、L2層、L3層の記号により示す。また、セラミックス回路基板を単に回路基板、セラミックスグリーンシートを単にグリーンシートという。
【0012】
回路基板1は、略平板状の基体2と、基体2の上面に接合された枠体3とを有し、基体2の上面の一部を底面とし枠体3の内壁面を側面として形成されるキャビティ4の底面中央に4個の発光素子を縦横2列に搭載するための搭載部22を有する発光素子搭載用の回路基板1である。枠体3はL1層からなり、基体2はL2層およびL3層の2層からなる。ただしこれらはグリーンシート積層体の焼結体であることから各層は十分に結合されている。
ここで本明細書において、「略平板状の基体」とは、上側、下側の主面がともに目視レベルで平板形状と認識できるレベルの平坦面を有する基体をいう。また、以下同様に、略を付けた表記は、特に断わらない限り目視レベルでそう認識できるレベルのことをいう。また、以下基体2の上面を搭載面21、下面を非搭載面23というが、搭載面21はL2層の上面であり、非搭載面23はL3層の下面である。
【0013】
L2層およびL3層は搭載する発光素子を発光させるためにそれぞれ以下の電気回路を有する。なお、以下の説明において、各導体についてアノード用導体およびカソード用導体の区別をする際には、図面に用いたのと同様の、各導体の数字の符号の後ろにアノードについてはaをカソードについてはcを付した符号を用いる。また、アノードおよびカソードの区別をせずに、これらをまとめた電極として、または導体として説明する場合にはaまたはcを付けずに数字の符号のみを用いる。
【0014】
L2層の上面すなわち基体2の搭載面21となる面には、搭載される4個の発光素子の右側の2個および左側の2個がそれぞれ直列に接続されるように、左右2個ずつの発光素子を挟むかたちで、アノードとカソードを構成する素子接続端子5a、5cが左右に略対称となるように各一対ずつ形成されている。また、これら4箇所の素子接続端子5から下層のL3層に導通するようにアノードとカソードを構成する貫通導体6a、6cが左右に略対称となるように各一対ずつ形成されている。
【0015】
L3層は、上面にL2層が有する2個のアノードを構成する貫通導体6aに接続する内部印刷回路7aと、2個のカソードを構成する貫通導体6cに接続する内部印刷回路7cとを有する。L3層は、下面すなわち基体2の非搭載面23となる面には、外部回路と電気的に接続されるアノードとカソードを構成する一対の外部接続端子9a、9cを有し、これらと上面の一対の内部印刷回路7a、7cがアノード側、カソード側同士でそれぞれ導通するように一対の貫通導体8a、8cを有する。なお、以下、素子接続端子5、内部印刷回路7、外部接続端子9等の平面に印刷された導体を印刷回路、貫通孔に充填された導体を貫通導体と総称して用いる。
【0016】
図2は、図1に示す回路基板1を、本発明の製造方法の実施形態の一例により製造する際のフローチャートを示す図である。
フローチャートは、まず、グリーンシートを準備するグリーンシート作製工程から始められている。グリーンシートは、L1層、L2層およびL3層となるものが、通常、ともに同じ大きさで作製される。したがって、グリーンシートの作製は、L1層、L2層、L3層の区別なく実行可能である。次のグリーンシートに所定の貫通孔を形成する貫通孔形成工程、グリーンシートの所定の貫通孔に導体ペーストを充填する導体ペースト充填工程およびグリーンシートに導体ペーストによる回路パターンを印刷する回路印刷工程については、L1層、L2層、L3層はそれぞれ別の過程を経る。その後、最終的にはこれらは一体に積層され、焼成されて回路基板が得られる。
【0017】
なお、図1および図2に示す実施形態では、複数のグリーンシートを積層した積層体を例にしているが、単層で構成される回路基板においても回路パターンを印刷する回路印刷工程を有するものであれば、本発明の製造方法は適用されうる。
【0018】
ここで、本発明の製造方法においては、これらの工程は、ロット単位で行われる。各工程におけるロットを構成するグリーンシート等の数量は特に制限されない。また、工程毎に同数であっても異なってもよい。通常、セラミックス回路基板の製造が行われる際に、用いられる数十から数百の単位でロット単位は構成されうる。
【0019】
また、通常、セラミックス回路基板は、大きさが1個単位での製造が困難な程小型なことから、その取り扱いを容易にし、製造効率を高めるために、多数個の小型の回路基板を一枚の広い面積の母基板から同時に得るようにした、いわゆる多数個取りの連結基板として製造され、これを分割することで1個単位とする製造方法がとられている。例えば、縦横のサイズが数mm程度の矩形の回路基板を、約200mm角の母基板において外周近傍に余剰部を残した約150mm角の領域を用いて製造する場合には、1枚の母基板に数百から数千個の回路基板の区画を有する多数個取り連結基板が製造される。
【0020】
図2に示すフローチャートにおいては、説明を簡略化するために16個の回路基板の区画を有する多数個取り連結基板を例として本発明の実施形態を説明する。ただし、上記のように連結基板当たりの個数が非常に多い小型の回路基板を多数個取りする連結基板の製造においても、本発明の製造方法は実施形態の例と同様に適用可能である。
なお、本フローチャートで示す製造の各工程は、それぞれ所定のロット単位で行われる。ただし、検査用グリーンシートの抜取後、検査用グリーンシートに対して行われる回路印刷から導通検査までのフローについては、その抜取り枚数に対してのみ行われる。
また、以下の工程は、特に断りのない限り連結基板のなかの1個の回路基板の単位すなわち1区画単位について説明するが、これは16区画について全て同様とされる。さらに、以下の説明においては、その製造に用いる部材について、完成品の部材と同一の符号を付して説明する。
【0021】
まず、グリーンシート作製工程について説明する。本発明の製造方法が適用されるセラミックス回路基板のセラミックスとしては、セラミックス回路基板の製造に通常用いられるセラミックスが特に制限なく挙げられる。具体的には、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)や窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体等のアルミニウムを主要成分として含むセラミックス焼結体、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物の焼結体(Low Temperature Co−fired Ceramics。以下、LTCCと示す。)等が挙げられる。
【0022】
これらのセラミックスのグリーンシートは、用いるセラミックスに応じて調製されるセラミックス原料組成物に、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂等のバインダー樹脂を添加し、さらに必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等の方法により所定の形状のシート状に成形することで作製される。
【0023】
なお、LTCCの場合、セラミックス原料組成物は、ガラス粉末と、アルミナ粉末やジルコニア粉末等のセラミックス粉末を、例えばガラス粉末が30〜50質量%、セラミックス粉末が50〜70質量%となるように配合、混合することにより得られるガラスセラミックス組成物である。
また、アルミニウムを主要成分として含むセラミックス焼結体の原料としては、例えば、アルミニウム含有化合物や該化合物を含有する鉱物若しくは該化合物を原料とした合成物等、通常これらの原料として用いられるものが挙げられ、これらから選ばれる原料成分が単独でまたは2種以上の混合物がセラミックス原料組成物として用意される。
【0024】
上記で得られたグリーンシートをL1層、L2層、L3層のロットに分けてロット毎に以下の工程を順次行う。なお、各層毎に以下の各工程に進む前に、必要に応じて層の厚さを調整するためにグリーンシートを複数枚積層する工程を設けてもよい。
L1層となるグリーンシートには、貫通孔形成工程において、これを枠体3とするための略円形の貫通孔が区画の中央に形成される。得られたグリーンシートがL1層としてグリーンシート積層工程に供される。
【0025】
L2層となるグリーンシートには、貫通孔形成工程において、左右に略対称となるように各一対ずつ設けられる貫通導体6a、6cを形成するための貫通孔が各区画の4隅付近の4箇所に形成される。次いで、導体ペースト充填工程により、該4箇所の貫通孔に導体ペーストが充填され貫通導体ペースト層6を形成する。次に、回路印刷工程において、グリーンシート上面の4箇所に導体ペーストを、上記4箇所の貫通導体ペースト層6をそれぞれ覆う所定の形状に印刷して、左右に略対称となる各一対ずつの素子接続端子ペースト層5a、5cを形成する。得られた導体ペースト付きのグリーンシートがL2層としてグリーンシート積層工程に供される。
【0026】
L3層となるグリーンシートには、貫通孔形成工程において、所定の位置に一対の貫通導体8a、8cを形成するための貫通孔が2箇所に形成される。ここで、本実施形態においては、上記貫通導体8a、8cの所定の位置はそれぞれ各区画の左上と右下の角付近である。次いで、導体ペースト充填工程により該2箇所の貫通孔に導体ペーストが充填され貫通導体ペースト層8を得る。
L3層は上面と下面の両面に印刷回路を有することから、回路印刷工程は上面印刷工程と下面印刷工程の2回に分けて行われる。
【0027】
上面印刷工程により、L3層となるグリーンシート上面に導体ペーストを印刷して、L3層が有するアノードを構成する貫通導体ペースト層8aを覆いかつL2層が有する2個のアノードを構成する貫通導体ペースト層6aに接続する所定の形状に内部印刷回路ペースト層7aと、L3層が有するカソードを構成する貫通導体ペースト層8cを覆いかつ2個のカソードを構成する貫通導体ペースト層6cに接続する所定の形状に内部印刷回路ペースト層7cとを形成する。なお、この上面印刷工程は、具体的には、後述する本発明の製造方法に係る回路印刷工程により行われる。
【0028】
また、下面印刷工程により、L3層となるグリーンシート下面に導体ペーストを印刷して、アノードを構成する貫通導体ペースト層8aを覆う所定の形状に外部接続端子ペースト層9aと、カノードを構成する貫通導体ペースト層8cを覆う所定の形状に外部接続端子ペースト層9cとを形成する。得られた導体ペースト付きのグリーンシートがL3層としてグリーンシート積層工程に供される。
【0029】
上記導体ペースト充填工程および回路印刷工程において用いる導体ペーストとしては、金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤等を添加してペースト状としたものを用いる。ここで、用いる金属粉末は、セラミックスグリーンシートのセラミックスの種類により適宜選択される。例えば、セラミックスがアルミニウムを主要成分として含むセラミックスのような高温焼成されるセラミックスの場合、金属粉末としては、タングステンやモリブデン等の高融点金属を主成分とする金属粉末が用いられる。また、LTCCの場合、銅、銀、金等を主成分とする金属粉末が挙げられ、好ましくは、銀、銀と白金、または銀とパラジウムからなる金属粉末が挙げられる。
【0030】
上記導体ペースト充填工程において貫通孔に導体ペーストを充填する方法および回路印刷工程において導体ペーストにより回路パターンを印刷する方法としては、通常スクリーン印刷が用いられる。本発明の製造方法は、導体ペースト充填工程および回路印刷工程等の電気回路構築のための導体ペースト層形成工程のうちでも、特に回路印刷工程に特徴を有するものである。
【0031】
ここで本実施形態においては、図2のフローチャートに示す通り、回路印刷工程は、L2層における上面印刷工程、L3層における上面印刷工程および下面印刷工程の3回が行われる。この3回の回路印刷工程のうちでも、L3層における上面印刷工程を除く2回の回路印刷工程については、印刷される回路パターンの形状が不良発生のリスクが低いため、本実施形態においては、本発明の製造方法に係る以下の方法で行われる回路印刷工程を、L3層における上面印刷工程に際してのみ適用することにしている。
【0032】
本発明の製造方法が特に効果的に用いられる回路基板は、印刷される回路パターンにおいて、その線幅が断線等の不良発生のリスクが高い微細な線幅を有する回路基板である。回路パターンの形状については、複雑な形状や線幅が狭い場合に不良発生のリスクは高く、本発明の製造方法の特徴である上記回路印刷工程を適用する際に、特に顕著な効果が得られる例として、回路パターンの最小線幅が、スクリーン印刷に用いるスクリーン版の印刷可能な最小線幅の1〜2倍であるような場合が挙げられる。本実施形態においては、L3層における上面印刷工程により印刷される回路パターンは、例えば、用いるスクリーン版の印刷可能な最小線幅の1〜2倍の線幅のパターンを含む回路パターンであり、この印刷工程に本発明の製造方法に係る回路印刷工程を適用することにより、不良発生のリスクの大幅な軽減が期待できる。
【0033】
ここで、回路パターンをスクリーン印刷する際の印刷可能な最小線幅は、印刷に用いるペーストや印刷条件にも依存するが、使用するスクリーン版の仕様にも依存し、スクリーン版のメッシュ数、メッシュ線径、開口等から概ねの値を見積もることができる。一般にメッシュ数を大きく、メッシュ線径を小さくすることで印刷可能な最小線幅を細くできる。スクリーン版で印刷可能な最小線幅の目安値は、メッシュ数500、メッシュ線径16μm、開口35μmでは43μmであり、メッシュ数325、メッシュ線径28μm、開口50μmでは84μmであり、メッシュ165、スクリーン線径50μm、開口104μmでは139μmである。メッシュ840、スクリーン線径11μm、開口19μmでは印刷可能の最小線幅は34μmである。以上の例から、回路基板の製造における回路印刷工程で使用されるスクリーン版で印刷可能な最小線幅は30μmから140μmということができる。
【0034】
このように、回路印刷工程においては、製造する回路基板のサイズや印刷する回路パターンによるが、例えば、印刷可能な最小線幅は30μmから140μmが利用できる。生産性や品質などの点で、一般的には印刷可能な最小線幅が70〜100μm程度のスクリーン版が用いられる。例えば、印刷可能な最小線幅が70μmのスクリーン版を用いて回路パターンを印刷する際には、上記の通り70〜140μmの線幅のパターンを含む回路パターンを印刷する場合に不良発生のリスクが高く、よってこの印刷に本発明の製造方法に係る回路印刷工程を適用することにより、不良発生のリスクの大幅な軽減が期待できる。
【0035】
本発明の製造方法に係る回路印刷工程とは、ロット毎に予め所定の枚数のグリーンシートに対して実際に用いられる回路パターンを印刷し、さらに該回路パターンを直列に接続する補助パターンを印刷した後、導通検査を実施し、この導通検査で得られた結果に基づいてロット単位で回路印刷工程を行うものである。
【0036】
具体的には、図2のフローチャートに示す通り、L3層における上面印刷工程においては、導体ペースト充填工程が完了したロットから1枚を検査用グリーンシートとして抜き取る。なお、検査用グリーンシートの枚数は、必要に応じて適宜選択可能である。
【0037】
この検査用グリーンシートに、アノードを構成する内部印刷回路ペースト層7aおよびカソードを構成する内部印刷回路ペースト層7cをスクリーン印刷するためのスクリーン版を用いて、導体ペーストによる回路パターンの印刷を行う。図3は、内部印刷回路ペースト層7a、7cが印刷された連結基板グリーンシート10の上から見た平面図を示す。連結基板グリーンシート10は、母基板11の中央に縦横4列に計16個の回路基板の区画12が配置され、その周辺は余剰部13となっている。なお、図3および図4において回路基板の区画12間の境および区画12と余剰部13との境を区画境界線14として点線で示す。
【0038】
図3に示す通り回路パターンは、回路基板となる各区画12毎にアノードとなる内部印刷回路ペースト層7aとカソードとなる内部印刷回路ペースト層7cが接触することなく独立して形成された構成となっている。この回路パターンは、上記の通り、例えば、これを印刷するために用いるスクリーン版の印刷可能な最小線幅の1〜2倍の線幅のパターンを含むものである。
次に、図3に示す連結基板グリーンシート10上に、該回路パターンが連結基板上の全回路において直列に接続されるような形状の補助パターン15を、別に準備したスクリーン版を用いてスクリーン印刷する。図4は、内部印刷回路ペースト層7に加えて補助パターン15が印刷された連結基板グリーンシート10を示す図である。
【0039】
図4に示す本実施形態のように、補助パターン15は、母基板11の余剰部13に印刷されていてもよい。また、導通検査を行う際にテスターの針を接触させるための略円形のパッド領域16を直列回路の両末端に有することが好ましい。さらに、図4に示す例では、中間の位置に略円形のパッド領域16が設置されるように、一定区画毎に、略円形のパッド領域16を設けることが好ましい。補助パターン15の形状については、上記直列回路が形成され、以下の導通検査によって内部印刷回路ペースト層7の印刷不良の有無が精度よく判定できる形状である限りは特に制限されず、経済性や印刷容易性等を勘案して適宜設定される。ただし、その最小線幅については、以下の範囲であることが好ましい。
【0040】
補助パターン15の印刷は、上記の通り別に準備されたスクリーン版を用いたスクリーン印刷により行われる。補助パターン15の最小線幅は、このスクリーン版の印刷可能な最小線幅の少なくとも2倍であることが好ましく、3倍以上がより好ましい。
回路印刷工程においては、上記の通り、例えば、印刷可能な最小線幅が30μmから140μmのスクリーン版が利用でき、一般的には印刷可能な最小線幅が70〜100μm程度のスクリーン版が用いられる。ここで、補助パターン15のスクリーン印刷に印刷可能な最小線幅が70μmのスクリーン版を用いる場合には、補助パターンの最小線幅は、140μm以上とすることが好しく、210μm以上とすることがより好ましい。
【0041】
パッド領域16を含む補助パターン15のスクリーン印刷において、用いる導体ペーストは、次に行われる導通検査を精度よく行うことができるものであれば上記回路パターンを形成する導体ペーストと同じであっても異なってもよい。経済性の観点から金属粉末としてアルミニウム等を用いて、上記回路パターンを形成する導体ペーストと同様にビヒクルや溶剤等でスクリーン印刷可能に調製された導体ペーストが好ましい。また、上記金属粉末として銅等を用いてもよい。
【0042】
次いで、図4に示す、補助パターン15が印刷された連結基板グリーンシート10を用いて導通検査を行うが、好ましくは導通検査の前に、検査の精度を向上させるために、内部印刷回路ペースト層7a、7cおよびパッド領域16を含む補助パターン15を乾燥する。乾燥の条件としては、導体ペーストに含まれるビヒクルや溶剤等の金属粉末以外の成分が除去される条件が好ましく、例えば、60〜90℃で10〜30分間程度の乾燥条件が挙げられる。
【0043】
補助パターン形成後、好ましくは乾燥工程を経て行われる導通検査は、まず、導通検査用のテスターの針を検査用グリーンシート上の内部印刷回路ペースト層7a、7cと補助パターン15で形成される直列回路の末端にそれぞれ位置する2箇所のパッド領域16に接触させることで行われる。テスターで導通が確認されれば、図2に示すフローチャートで「OK」の方向に進み、このロットの全数に対して、上記検査用グリーンシートに内部印刷回路ペースト層7をスクリーン印刷するのに用いたスクリーン版を用いてL3層における上面印刷工程が実行される。
【0044】
また、上記検査用グリーンシート上の直列回路の両端での導通検査で導通が確認されなかった場合は、図2に示すフローチャートで「NG」の方向に進み、不良原因の究明が行われる。その際、まず印刷、この場合、内部印刷回路ペースト層7の印刷の、不良箇所の特定を行うために、図4に示す検査用グリーンシート上の直列回路の一方の末端に設けられたパッド領域16と直列回路の中間の位置に設けられたパッド領域16にテスターの針を接触させ導通検査を行う。次いで、検査用グリーンシート上の直列回路の中間の位置に設けられたパッド領域16と直列回路の他方の末端に設けられたパッド領域16にテスターの針を接触させ導通検査を行う。直列回路全体での導通が不良の場合、上記2回の導通検査の少なくとも一方は導通不良であり、印刷の不良箇所は導通不良の結果が得られた領域に存在することが判明する。
【0045】
このようにして印刷の不良箇所が存在するグリーンシートの領域が分かれば、その領域に限定して、例えば、目視での顕微鏡観察を行うことで、印刷の不良箇所の特定ができる。なお、通常の連結基板においては、1枚の連結基板上に上記の通り数百から数千個の回路基板の区画が配置されている。そのため、印刷の不良箇所の特定をグリーンシートの全領域において顕微鏡観察等で行うと多大な労力と時間が費やされ、効率の点で問題である。図4に示す実施形態においては区画数が16個と少ないために直列回路の途中には、中間点の1箇所にのみパッド領域16を設けている。区画数の多い連結基板においては、例えば、一定数の区画を有する領域毎に導通検査が可能なように、その領域に対応して直列回路の途中の複数箇所にパッド領域16を設けることで、印刷の不良箇所の特定に係る効率は大幅に向上される。
【0046】
印刷の不良箇所が特定されれば、不良原因は比較的容易に究明される。スクリーン版の不具合としては、スクリーン版自体が欠陥を有する場合と、スクリーン版に目詰まりがある場合に大別される。上記方法により検査用グリーンシート上の印刷不良箇所が特定されたら、その箇所に相当するスクリーン版の位置を顕微鏡等で観察する。このスクリーン版の観察によりスクリーン版自体の欠陥が確認された場合は、スクリーン版を取り替えることで不良原因が除去される。また、スクリーン版の観察によりスクリーン版に目詰まりが確認された場合は、スクリーン版の洗浄等を行うことで不良原因が除去される。また、スクリーン版以外に不良原因があった場合にも、それぞれの不良原因を除去する対応をとった後に、次の工程に進めばよい。
【0047】
上記のようにして不良原因を除去した後、再度、L3層における導体ペースト充填工程の完了したロットから1枚を検査用グリーンシートとして抜き取り、上記と同様の操作による検査を行う。導通検査における検査用グリーンシート上の全直列回路の導通が確認されれば、図2に示すフローチャートで「OK」の方向に進み、導通が確認されなければ「NG」に進み、それぞれの場合において上記同様の操作が行われる。「NG」に進んだ場合には、不良原因究明と不良原因の除去が行われ、再度、導通検査を行うという操作を、導通検査の結果がOKになるまで繰り返し行う。
【0048】
このようにして、回路基板が焼成される前であって、さらに回路パターンの印刷をロット単位で実施する前段階で印刷不良の発生を招くことが想定される不具合を簡便かつ高精度に検出し除去することで、回路基板の製造歩留まりを大幅に向上させることが可能である。
ここで、上記方法により回路印刷工程を行う際に、ロットの単位を構成する数量が多い場合には、回路印刷工程の途中に上記同様の検査用グリーンシートの抜取から導通検査までの一連の操作を導入し、スクリーン印刷版等に不具合が発生していないかをチェックしてもよい。また、図2に示すフローチャートにおいて、印刷される回路パターンの形状が不良発生のリスクが低いものとされ、特に上記に示す回路印刷工程を適用していないL2層における上面印刷工程およびL3層における下面印刷工程についても、必要に応じて、上記同様の本発明に係る方法での回路印刷工程を適用してもよい。
【0049】
図2のフローチャートに示す通り、グリーンシート作製工程に次いで各層に対してそれぞれ行われる貫通孔形成工程、導体ペースト充填工程、回路印刷工程を経て、得られたL3層、L2層、L1層を、次の積層工程により下からその順に積層する。L3層、L2層、L1層の積層方法は特に制限されず、熱圧着等による積層方法が適用できる。
【0050】
積層工程後に行われる焼成工程は、用いるセラミックスにより好適な焼成温度がそれぞれ異なるため、それぞれのセラミックスに対応した焼成条件を採用する。例えば、酸化アルミニウム質焼結体については、1400〜1700℃、窒化アルミニウム質焼結体については1700〜1950℃、LTCCについては、800〜930℃が好適な焼成温度である。焼成時間は、回路基板のサイズ等により適宜調整される。また、焼成に先立って、グリーンシート作製の際に用いたバインダー樹脂等の成分を除去する500〜600℃、1〜10時間程度の脱脂処理を行ってもよい。
【0051】
さらに、図2のフローチャートに示す通り、通常、積層工程と焼成工程の間に、連結基板を回路基板の区画毎に分割するための分割溝を形成する工程が設けられる。これにより、焼成して得られた連結基板を回路基板の区画毎に容易に分割できる。
【0052】
以上、本発明のセラミックス回路基板の製造方法の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明の製造方法はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
【実施例】
【0053】
図3に示すのと同様の回路パターンのスクリーン印刷において、スクリーン印刷用のスクリーン版について、(1)不具合のないスクリーン版、(2)欠損のあるスクリーン版、(3)目詰まりのあるスクリーン版を準備して、本発明の方法により不具合の検出を行う試験を実施した。なお、用いたスクリーン版は印刷可能な最小線幅が100μmのスクリーン版であった。
セラミックスグリーンシートとしてはLTCCグリーンシートを準備した。回路パターン印刷用の導体ペーストとして、銀ペーストを準備した。
【0054】
上記(1)〜(3)のスクリーン版を用いて、LTCCグリーンシートに銀ペーストを用いて最小線幅が0.150mmの回路パターンのスクリーン印刷を行った。次いで得られた回路パターン付きグリーンシートのそれぞれに、図4に示すのと同様にして、全回路パターンを直列接続する最小線幅が0.300mmの補助パターン15を、その直列接続回路の両末端、および中間点に略円形のパッド領域16を有する形に、別のスクリーン版を用いてスクリーン印刷した。補助パターンの印刷に用いたスクリーン版は、印刷可能な最小線幅が100μmのスクリーン版であった。また、補助パターン形成用の導体ペーストとしては、銀ペーストを用いた。
【0055】
上記で得られた3枚の導体パターン付きLTCCグリーンシートについて、70℃、20分間の乾燥処理を施した後、直列接続回路の両末端のパッド領域16にテスターの針を接触させて導通検査を行った。上記(1)のスクリーン版を用いて得られた導体パターン付きLTCCグリーンシートについては、導通したが、(2)、(3)のスクリーン版を用いて得られた導体パターン付きLTCCグリーンシートについては導通しなかった。
【0056】
(2)、(3)のスクリーン版を用いて得られた導体パターン付きLTCCグリーンシートについて、さらに、中間点のパッド領域16を用いた導通検査を行い、印刷不良箇所のある領域を特定した。また、この領域がスクリーン版の欠損箇所または目詰まり箇所のある領域と一致することを確認した。
【0057】
さらに(3)のスクリーン版においては、目詰まり箇所を洗浄して、上記と同様に導体パターン付きLTCCグリーンシートを作製し、上記同様に導通試験を行ったところ、導通した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法によれば、製造過程における早い段階で回路パターンの不良の有無を簡便かつ高精度に検出でき、それにより半導体素子や圧電振動子等の電子部品を搭載するためのセラミックス回路基板を歩留まりよく製造できる。
【符号の説明】
【0059】
1…回路基板、2…基体、3…枠体、4…キャビティ、5…素子接続端子、6、8…貫通導体、7…内部印刷回路、9…外部接続端子、
21…搭載面、22…発光素子搭載部、23…非搭載面、
10…連結基板、11…母基板、12…回路基板の区画、13…余剰部、14…区画境界線、15…補助パターン、16…パッド領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスグリーンシートに所定の貫通孔を形成する工程と、前記セラミックスグリーンシートの所定の貫通孔に導体ペーストを充填する工程と、前記セラミックスグリーンシートに導体ペーストによる回路パターンを印刷する工程と、前記各工程を経たセラミックスグリーンシートを単層として、または複数枚を積層した積層体として焼成する工程とを有し、前記各工程をロット単位で行うセラミックス回路基板の製造方法において、
前記回路パターンを印刷する工程を、ロット毎に予め所定の枚数のセラミックスグリーンシートに対してそれぞれ前記回路パターンと該回路パターンを直列に接続する補助パターンとを印刷して導通検査を実施し、該導通検査の結果に基づいて前記ロット単位で行うことを特徴とする、セラミックス回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記導通検査の前に乾燥を行う請求項1記載のセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記回路パターンの印刷がスクリーン版を用いたスクリーン印刷により行われ、前記回路パターンの最小線幅が該スクリーン版の印刷可能な最小線幅の1〜2倍である請求項1または2記載のセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記補助パターンの印刷がスクリーン版を用いたスクリーン印刷により行われ、前記補助パターンの最小線幅が該スクリーン版の印刷可能な最小線幅の少なくとも2倍である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−256699(P2012−256699A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128538(P2011−128538)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】