説明

セラミック加熱素子

電気リード線を受け入れるための凹部を有する新規のセラミック加熱素子が提供される。かかるセラミック加熱素子は、1本又は複数の電気リード線と接する素子部分にわたる断面寸法の低減、並びに、電気リード線のより確実な係合をもたらすことができる。加熱素子は、ガス調理器具用の燃料点火装置並びに輸送機関用グロープラグを含め、様々な用途に極めて有用となり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照により全体として本明細書に援用される2007年12月29日出願の米国仮特許出願第61/009,381号明細書の利益を主張する。
【0002】
1.発明の分野
一態様において、電気リード線を受け入れるための凹部を有するセラミック加熱素子が提供される。かかるセラミック加熱素子は、加熱素子を電気リード線とより確実に係合することができる。さらなる態様において、素子の長さに沿って断面が実質的に等しいか、又は増加する導電性領域を有するセラミック加熱素子が提供される。本加熱素子は、例えば、空間上厳しい制約があるガス調理器具用の燃料点火装置並びに輸送機関のグロープラグを含め、様々な用途に有用である。
【背景技術】
【0003】
2.背景
セラミック材料は、例えば、ガス燃焼炉、ストーブ及び衣類乾燥機における加熱素子(点火器を含む)として、著しい成功を収めている。セラミック加熱素子の作製には、セラミック部品を通じた電気回路の組立てが含まれる。セラミック部品の一部は抵抗が高く、ワイヤリード線によって電流が流れると温度が上昇する。例えば、米国特許出願公開第2006/0131295号明細書及び米国特許第6,028,292号明細書;同第5,801,361号明細書;同第5,405,237号明細書;及び同第5,191,508号明細書を参照のこと。
【0004】
典型的な点火器はほぼ矩形形状の素子であり、加熱素子の先端に抵抗が高い「高温領域」を有し、加熱素子の反対側の端部から高温領域にかけて1つ又は複数の導電性の「低温領域」が設けられている。現在利用可能な点火器の一つ、Milford,N.H.のNorton Igniter Productsから入手可能なMini−Heating elementは、12ボルト〜120ボルトの適用で設計され、窒化アルミニウム(「AlN」)、二珪化モリブデン(「MoSi」)、及び炭化ケイ素(「SiC」)を含む組成物を有する。
【0005】
これらの加熱素子は抵抗加熱されるため、その端部の各々が、導電性のリード線、典型的には銅ワイヤリード線に電気的に接続されなければならない。セラミック加熱素子は、ワイヤと直接溶接若しくはろう付けするか、又は介在する金属リードフレームとろう付けし、次にそのフレームをワイヤと溶接若しくはろう付けすることにより、電気接点と接続されている。米国特許第7,241,975号明細書及び同第6,933,471号明細書を参照のこと。
【0006】
円筒形又は他の非矩形断面形状を有する加熱素子については、電気接点をそのように取り付けることで、絶縁部(電気リード線が加熱素子と接するところ)の直径が増加する結果となり得る。かかる寸法の増加は、家庭用電気器具又は自動車環境などのように、加熱素子の加熱素子ブロックの外側寸法について厳しい仕様が存在し得る数多くの用途において問題となり得る。加えて、電気リード線が加熱素子と分離することによって装置故障が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、新規の加熱素子システムがあれば望ましい。特に、円筒形又は他の非矩形断面形状を有し、且つ電気接点と接する部分にわたって比較的小さい断面寸法を有する新規の加熱素子があれば望ましい。さらに、電気リード線の加熱素子との確実な係合を有する新規の加熱素子があれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、電気リード線を受け入れるための凹部を有するセラミック加熱素子が提供される。かかるセラミック加熱素子は、1本又は複数の電気リード線と接する素子部分にわたる断面寸法の低減、並びに、1本又は複数のリード線の加熱装置とのより確実な係合をもたらすことができる。結果的に、加熱素子は、例えば、ガス調理器具用の燃料点火装置並びに輸送機関用グロープラグを含め、様々な用途に極めて有用となり得る。
【0009】
好ましい態様において、加熱素子は、電気リード線を受け入れることのできる少なくとも1つの凹部(例えば穴)を含んでもよく、ここで凹部は、加熱素子の底面に位置決めされるが、凹部はまた、好適には、素子の側部など、加熱素子の他の部分に位置してもよい。
【0010】
ある態様において、凹部は縮径し、例えば内部に向かって縮径してもよく(断面積が減少する)、これによって電気リード線の加熱素子との係合をさらに確実にすることができる。
【0011】
好ましくは、加熱素子の導電性領域(すなわち、比較的抵抗の低い部分)が、凹部の壁面の少なくとも一部分を形成する。結果として、凹部内に嵌装された電気リード線からの電力は、かかる導電性領域を介して加熱素子中を流れることができる。
【0012】
さらなる態様において、加熱素子の近位端から素子の長さに沿って断面積が実質的に等しいか、又は増加する導電性領域を有するセラミック加熱素子が提供される。特に、電気リード線を受け入れるための凹部の壁面の少なくとも一部分を形成する導電性領域の断面寸法は、凹部と接触する部分において、その同じ導電性領域のうち当該導電性領域の長さに沿ったさらに先の断面寸法と実質的に等しいか、又はそれより大きい断面寸法を有し得る。
【0013】
かかる導電性領域構成により、加熱素子の焼結時における望ましくないそりを回避できることが分かっている。
【0014】
本発明の好ましい加熱素子は、外側の、又は実質的にU字型若しくはL字型の電気経路を有し、すなわちこの場合、電気経路は、(i)外側の導電性領域から、(ii)高温又は点火領域まで延在し、その後、(iii)第2の外側の導電性領域を通る。かかる外側の、又はU字型若しくはL字型電気経路は、外側の導電性領域によって囲い込まれた内側の第1の導電性領域を含む同軸経路とは異なるものであり、区別される。
【0015】
本発明の特に好ましい加熱素子は、円筒形又は他の非矩形断面形状を有し得る。好ましい態様において、本発明の好ましい加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分(例えば、電気リード線が加熱素子に固定されるところから、抵抗性の高温領域まで延在する長さ)に沿って丸い断面形状を有する。より詳細には、好ましい加熱素子は、加熱素子長さの少なくとも一部分、例えば、加熱素子長さの少なくとも約10パーセント、40パーセント、60パーセント、80パーセント又は90パーセント、又は加熱素子の全長にわたって、実質的に楕円形、円形又は他の丸い断面形状を有し得る。ロッド形状の加熱素子を提供する実質的に円形の断面形状が、特に好ましい。本発明はまた、加熱素子長さの少なくとも一部分にわたって、丸くない、又は非円形の断面形状を有する加熱素子も提供する。
【0016】
好ましい加熱素子は、電気抵抗率の異なる複数の部分を含み、すなわち、好ましいセラミック加熱素子は、全て電気の通る順序で、第1の導電性領域と、抵抗性の高温領域と、第2の導電性領域とを含み得る。本発明の加熱素子は、様々な電気的構成を有し得る。考察されるとおり、好ましいシステムにおいて、加熱素子は実質的にU字型の電気経路を有してもよく、例えばこの場合、対向する導電性領域は、間置される高温又は点火領域によって隔離される。
【0017】
本発明のセラミック加熱素子は、6、8、10、12、24、120、220、230及び240ボルトの公称電圧を含め、幅広い公称電圧で用いることができる。
【0018】
先述のとおり、本発明の加熱素子は、様々な装置及び加熱システムにおける点火に有用である。より詳細には、本明細書に記載されるとおりの焼結セラミック加熱素子を含む加熱システムが提供される。特定の加熱システムとしては、ガス調理ユニットなどの家庭用電気器具、商業用及び住居用建物の加熱ユニットが挙げられる。本明細書に記載されるとおりの焼結セラミック加熱素子を含む輸送機関(例えば、自動車、船艇)のグロープラグもまた提供される。
【0019】
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】好ましい加熱素子システムを概略的に示す。
【図2】好ましい加熱素子システムを概略的に示す。
【図3】好ましい加熱素子システムを概略的に示す。
【図4】好ましい加熱素子システムを概略的に示す。
【図5】さらに好ましい加熱素子を切欠図で示す。
【図6A】さらに好ましい加熱素子の平面図を示す。
【図6B】さらに好ましい加熱素子の平面図を示す。図6Aの線B−Bに沿った断面図である。
【図6C】さらに好ましい加熱素子の平面図を示す。図6Aの線C−Cに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記に考察されるとおり、一態様において、電気リード線部品を接合するための新規の構成を備えるセラミック加熱素子システムが提供される。さらなる態様において、焼結時のそりの低減を含め、著しい利益を提供することのできる1つ又は複数の導電性領域を備えるセラミック加熱素子システムが提供される。本発明の好ましいセラミック加熱素子は、実質的に外側の、又はU字型若しくはL字型の電気経路を有する。
【0022】
ここで図面を参照すると、図1〜図4は、好ましい加熱素子10を概略的な切欠図として示し、ここでは、導電性領域12A及び12Bが間置される高温(点火)領域14と接合され、それによって電気経路が形成されている。見て分かるとおり、外側の導電性領域12A及び12Bは、間置される高温(点火)領域と共に、加熱素子10の外側部又は外周部を通過する実質的にU字型又はL字型の電気経路を形成する。
【0023】
導電性領域12Aは部分的に凹部16を画定し、素子10の使用中、この凹部16が電気リード線18と係合する。好ましいシステムにおいて、加熱素子10は金属製の取付け具20によって囲い込まれ、例えば金属ろう付け22によりそこに通されて固着され得る。導電性領域12A、12B及び点火領域14によって囲い込まれる内側部分24は、空隙であってもよく、又は絶縁性(ヒートシンク)組成物を有してもよい。
【0024】
また、金属製の取付け具20と接触する加熱素子部の上に外側の絶縁層25を備えることが好ましいこともある。かかる外側絶縁層は、浸漬被覆又は他の絶縁性のセラミック組成物の付着によって好適に形成され得る。
【0025】
図5は、導電性領域12Aが、電気リード線を受け入れる凹部16の壁16Aの一部分を形成する特に好ましい加熱素子を、部分切欠図として示す。この好ましい構成では、導電性領域12A及び12Bは間置される高温(点火)領域14と接合され、それによって電気経路を形成する。加熱素子はまた、中心の絶縁体部分24も備え、外側絶縁体25Aが第1の導電性領域12Aの少なくとも一部分を囲い込むとともに、絶縁体25Bが導電性領域12Bの少なくとも一部分を囲い込む。
【0026】
図5に図示されるとおり、好ましい構成では、凹部16は導電性領域12Aと接触し、それにより凹部の壁16Aが導電性領域12Aによって形成される。他のそれほど好ましくない実施形態では、凹部16を画定する壁の全面が導電性領域12Aの一部である。
【0027】
図示される好ましい構成では、凹部16を画定する壁の一部分のみが導電性領域12Aの一部であることによって、導電性領域12Aは、素子の長さに沿った断面積が実質的に等しいか、又は増加し得る。従って、図5に示されるとおり、素子近位端における導電性領域12Aの断面寸法(寸法aによって示されるとおり)は、当該領域の長さ(図5に図示されるとおりの長さy)の実質的な部分、例えば、図5に示されるとおりの当該領域の長さyの少なくとも約50、60、70、80、90、95又はさらには100パーセントにわたり、当該導電性領域の断面寸法と実質的に同じか、又はそれより小さい。従って、図5に示されるとおり、寸法aは、図示される寸法a’又はa”とほぼ同じか、又はそれより小さい。本明細書における参照として、その長さに沿って「実質的に同じ」又は「ほぼ同じ」(又は他の類似の語句)断面を有する第1の導電性領域と言うとき、断面寸法が(例えば、図5に示されるとおりのa’及びa”に対して)、5、10又は20パーセントより大きく異ならないことを意味する。ある態様において、導電性領域の断面寸法と言うとき、当該の導電性領域と、それと接合する点火領域との境界は含まない。
【0028】
上記に考察されるとおり、この第1の導電性領域の断面寸法の構成により、加熱素子の焼結時の望ましくないそりの低減を含め、顕著な利益が提供されている。
【0029】
図5はまた、凹部16の好ましい構成も示し、ここで、凹部16は内部に向かって縮径し、すなわち凹部16は、その長さに沿って減少する断面を有する。かかるテーパ構成は、凹部内に嵌装された電気リード線のより確実な係合を提供し得る。
【0030】
使用時、電気リード線は凹部16内に嵌装され、導電性領域12Aから高温(点火)領域14まで延在する図示の電気経路を通じて(図5の矢印によって示されるとおりの経路を参照のこと)電力を提供する。内側のセラミック絶縁体24は、加熱素子に対してさらなる機械的強度をもたらす。
【0031】
図6A〜図6Cは、凹部16の一部分のみが導電性領域12Aと接触する好ましい構成の別の加熱素子10を示す。すなわち、凹部16を画定する表面の一部分のみが、導電性領域12Aの構成部分である。図6に図示されるシステムでは、凹部16を画定する壁の残りの部分は、絶縁体部分24の構成部分である。好ましい例示的システムにおいて、凹部16の壁の表面積の約20、30、40、50、60、70、80又は90パーセント以下が、導電性領域12Aの構成部分であってもよく、凹部の壁16Aの残りの表面積は、中心又は内側の絶縁体部分24の構成部分である。
【0032】
図5の素子と同じく、使用時、電気リード線は凹部16内に嵌装され、導電性領域12Aから高温(点火)領域14を通り、次に導電性領域12Bを通ることによって実質的にU字型又はL字型の外側の電気経路を提供する図示の電気経路を通じて電力を提供する。
【0033】
図5及び図6Aに示されるとおり、好ましいシステムにおいて、凹部16と接触する第1の導電性領域12Aの長さは、抵抗(点火)領域14の遠位側にある第2の導電性領域12Bの長さより長い。例えば、特定の好ましい構成において、第2の導電性領域12Bの長さ(図5ではy’として示される)は、第1の導電性領域12Aの長さ(図5における長さy)の90、80、70、60、50、40、30、20又はさらには10パーセント以下である。特定の好ましい構成において、第2の導電性領域12Bは、図5、図6A及び図6Bに示されるとおり、凹部16を含まないか、又は凹部16と接触しない。
【0034】
上記に考察され、且つ図5及び図6に例示されるとおり、好ましくは、加熱素子長さの少なくとも実質的な部分は、図6Aに示される長さなどの、加熱素子長さの少なくとも一部分に沿って丸い断面形状を有する。図5及び図6は、加熱素子10が、加熱素子のほぼ全長にわたって実質的に円形の断面形状を有し、ロッド形状の加熱素子を提供する特に好ましい構成を図示する。しかしながら、上記に考察されるとおり、好ましいシステムとしてはまた、加熱素子の一部分のみ、例えば、加熱素子長さの約10、20、30、40、50、60、70、80又は90パーセント以下しか丸い断面形状を有しないものも含まれ、例えば、かかる設計の場合、加熱素子長さの残りの部分は外縁端を伴う外形を有し得る。
【0035】
また、多くの用途に丸い断面形状が好ましいものの、本発明の好ましい加熱素子はまた、加熱素子長さの少なくとも一部分にわたって、丸くない、又は非円形の断面形状を有してもよく、例えば、ここで加熱素子長さ(図6Aの加熱素子長さaによって例示されるとおり)の約10、20、30、40、50、60、70、80又は90パーセント以下か、又は少なくともそれだけが、丸くない、又は非円形の断面形状を有し、又はここで、加熱素子の全長(図6Aにおいて加熱素子長さが長さaによって例示されるとおり)が、丸くない、又は非円形の断面形状を有する。
【0036】
本発明の加熱素子の寸法は幅広く異なり得るとともに、加熱素子の意図する用途に基づき選択され得る。例えば、好ましい加熱素子の長さ(図6Aの長さa)は、好適には、約0.5〜約5cm、より好ましくは約1〜約3cmであってもよく、及び加熱素子の断面の最大幅(図6Aの幅b)は、好適には約0.2〜約3cmであってもよい。
【0037】
同様に、導電性領域部分及び高温領域部分の長さもまた、好適に異なり得る。好ましくは、図6Aに図示される加熱素子の第1の導電性領域の長さ(図6Aの長さc及び図5のy)は、0.2cm〜2、3、4、又は5cm以上であり得る。第1の導電性領域のさらに典型的な長さは、約0.5〜約5cmである。高温領域の高さ(図6Aの長さd)は、約0.1〜約2、3、4又は5cmであってもよく、高温領域の電気経路の全長(図6Aに破線として示される)は約0.5〜5cm以上であり、高温領域の経路の全長は約0.5〜1、2又は3cm以下であることが一般に好ましい。
【0038】
好ましいシステムにおいて、本発明の加熱素子の高温領域又は抵抗領域は、公称電圧で約1450℃未満の最高温度まで;及び公称電圧の約110パーセントである上限線間電圧で、約1550℃未満の最高温度まで;及び公称電圧の約85パーセントである下限線間電圧で、約1350℃未満の最高温度まで加熱され得る。
【0039】
様々な組成物を用いて本発明の加熱素子が形成され得る。一般に好ましい高温領域の組成物は、1)導電性材料と;2)半導体材料と;3)絶縁材料との少なくとも3つの成分を含む。導電性(低温)部分と絶縁(ヒートシンク)部分とは、同じ成分から構成されてもよく、但し、それらの成分は異なる比率で存在する。典型的な導電性材料としては、例えば、二珪化モリブデン、二珪化タングステン、窒化チタンなどの窒化物、及び炭化チタンなどの炭化物が挙げられる。典型的な半導体としては、炭化ケイ素(ドープ型及び非ドープ型)及び炭化ホウ素などの炭化物が挙げられる。典型的な絶縁材料としては、アルミナなどの金属酸化物又はAlN及び/又はSiなどの窒化物が挙げられる。
【0040】
本明細書において参照されるとき、電気絶縁材料という用語は、少なくとも約1010オームcmの室温抵抗率を有する材料を指す。本発明の加熱素子の電気絶縁材料成分は、1つ又は複数の金属窒化物及び/又は金属酸化物のみから、又は主としてそれから構成されてもよく、或いは、絶縁性の成分は、1つ若しくは複数の金属酸化物又は1つ若しくは複数の金属窒化物に加えて材料を含んでもよい。例えば、絶縁材料成分は、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素、又は窒化ホウ素などの窒化物;希土類酸化物(例えばイットリア);又は希土類オキシ窒化物をさらに含有してもよい。絶縁部品の好ましい追加材料は、窒化アルミニウム(AlN)である。
【0041】
本明細書において参照されるとき、半導体セラミック(又は「半導体」)は、約10〜10オームcmの室温抵抗率を有するセラミックである。半導体成分が高温領域の組成物の約45v/oより多く存在する場合(導電性セラミックが約6〜10v/oの範囲のときに)、得られる組成物の導電性は、高電圧用途には高過ぎる(絶縁体が不足しているため)。逆に、半導体材料が約10v/o未満しか存在しない場合(導電性セラミックが約6〜10v/oの範囲のときに)、得られる組成物の抵抗は低過ぎる(絶縁体が多過ぎるため)。ここでも、導体のレベルが高いほど、より抵抗の高い絶縁体と半導体との混合割合が、所望の電圧を実現するために必要となる。典型的には、半導体は、炭化ケイ素(ドープ型及び非ドープ型)、及び炭化ホウ素からなる群からの炭化物である。炭化ケイ素が一般的には好ましい。
【0042】
本明細書において参照されるとき、導電性材料は、約10−2オームcm未満の室温抵抗率を有する材料である。導電性成分が、高温領域の組成物の、高温領域の組成物の得られるセラミックの35v/oより多い量で存在する場合、得られるセラミックの導電性は、高過ぎることになり得る。典型的には、二珪化モリブデン、二珪化タングステン、及び窒化チタンなどの窒化物、及び炭化チタンなどの炭化物からなる群から選択される導体である。二珪化モリブデンが一般には好ましい。
【0043】
一般に、好ましい高温(抵抗)領域の組成物は、(a)少なくとも約1010オームcmの抵抗率を有する電気絶縁材料を約50〜約80v/oと;(b)約10〜約10オームcmの抵抗率を有する半導体材料を約5〜約45v/oと;(c)約10−2オームcm未満の抵抗率を有する金属導体を約5〜約35v/oとを含む。好ましくは、高温領域は、50〜70v/oの電気絶縁性セラミックと、10〜45v/oの半導体セラミックと、6〜16v/oの導電性材料とを含む。本発明の加熱素子での使用に特に好ましい高温領域の組成物は、10v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りの割合のAlN又はAlとを含む。
【0044】
考察されるとおり、本発明の加熱素子は、高温(抵抗)領域と電気的に接続する比較的抵抗率の低い低温領域部分を含み、この部分によって、ワイヤリード線を加熱素子に取り付けることが可能となる。好ましい低温領域部分としては、例えば、AlN及び/又はAl又は他の絶縁材料と;SiC又は他の半導体材料と;MoSi又は他の導電性材料とから構成されるものが挙げられる。しかしながら、低温領域部分は、高温領域と比べて著しく高い割合の導電性材料及び半導体材料(例えば、SiC及びMoSi)を有する。好ましい低温領域の組成物は、約15〜65v/oの酸化アルミニウム、窒化アルミニウム又は他の絶縁体材料と;約20〜70v/oのMoSi及びSiC又は他の導電性材料及び半導体材料とを、約1:1〜約1:3の体積比で含む。多くの用途について、より好ましくは、低温領域は、約15〜50v/oのAlN及び/又はAlと、15〜30v/oのSiCと、30〜70v/oのMoSiとを含む。製造上の簡便性から、好ましくは低温領域の組成物は、高温領域の組成物と同じ材料で、半導体材料及び導電性材料の相対量をより多くして形成される。
【0045】
本発明の加熱素子での使用に特に好ましい低温領域の組成物は、20〜35v/oのMoSiと、45〜60v/oのSiCと、残りの割合のAlN及び/又はAlのいずれかとを含む。
【0046】
セラミック組成物(例えば、絶縁体、導電性材料、半導体材料、抵抗材料)のいずれについても、セラミック組成物は、1つ又は複数の異なるセラミック材料(例えば、SiC、Alなどの金属酸化物、AlNなどの窒化物、MoSi及び他のMo含有材料、SiAlON、Ba含有材料など)を含み得る。或いは、互いに異なるセラミック組成物(すなわち、単一の加熱素子において、絶縁体領域、導体領域及び抵抗(点火)領域として機能する、互いに異なる組成物)が、同じセラミック材料配合物(例えば、互いに異なるセラミック材料の二元、三元又はそれ以上の次元の配合物)を含んでもよく、但し、ここでこれらの配合物要素の相対量は異なり、例えば、1つ又は複数の配合物要素が、互いに異なるセラミック組成物のそれぞれの間で、少なくとも5、10、20、25又は30体積百分率だけ異なる。
【0047】
ヒートシンク又は絶縁体は、好適には、導電性領域若しくは高温領域と、又はその双方と接合する。好ましくは、焼結された絶縁体部分は、室温で少なくとも約1014オームcmの抵抗率、及び動作温度で少なくとも10オームcmの抵抗率を有し、且つ少なくとも150MPaの強度を有する。好ましくは、絶縁体部分は、動作(点火)温度において、高温領域部分の抵抗率より少なくとも2桁高い抵抗率を有する。好適な絶縁体組成物は、少なくとも約90v/oの1つ又は複数の窒化アルミニウム、アルミナ及び窒化ホウ素を含む。本発明の加熱素子の特に好ましい絶縁体組成物は、60v/oのAlNと;10v/oのAlと;残りの割合のSiCとからなる。本発明の加熱素子での使用に好ましい別のヒートシンク(絶縁体)組成物は、80v/oのAlN及び20v/oのSiCを含む。
【0048】
特定のシステムについて、電気回路の経路において、当該経路のうち最も導電性の高い箇所と高抵抗(高温)部分との間に中程度の抵抗の電力ブースター又は増強領域を備えることが望ましいこともある。中程度の抵抗のかかるブースター領域については、Willkensに対する米国特許出願公開第2002/0150851号明細書に説明されている。概して、ブースター領域は正の抵抗温度係数(PTCR)と、中程度の抵抗とを有し、これによって、i)高温領域への効率的な電流の流れと、ii)点火器の使用中におけるブースター部分のいくらかの抵抗加熱とが可能となり、しかしながら、好ましくはブースター領域は、加熱素子の使用中、高温領域ほど高温には加熱されない。
【0049】
加熱素子に用いられる場合、好ましいブースター領域の組成物は、導電性領域部分及び高温領域部分の組成物と同じ材料を含んでもよく、例えば、好ましいブースター領域の組成物は、例えばAlN及び/又はAl、又は他の絶縁材料と;SiC又は他の半導体材料と;MoSi又は他の導電性材料とを含み得る。ブースター領域の組成物は、典型的には、高温領域の組成物の材料割合と低温領域の組成物の材料割合との中間の相対割合の導電性材料及び半導体材料(例えば、SiC及びMoSi)を有する。好ましいブースター領域の組成物は、約60〜70v/oの窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は他の絶縁体材料と;約10〜20v/oのMoSi又は他の導電性材料と、残りの割合のSiCなどの半導体材料とを含む。本発明の点火器に使用される特に好ましいブースター領域の組成物は、14v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りのv/oのAlとを含む。本発明の点火器に使用される特に好ましいブースター領域の組成物は、17v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りの割合のAlとを含む。本発明の点火器に使用されるさらに特に好ましいブースター領域の組成物は、14v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りのv/oのAlNとを含む。本発明の点火器に使用されるなおさらに特に好ましいブースター領域の組成物は、17v/oのMoSiと、20v/oのSiCと、残りの割合のAlNとを含む。
【0050】
セラミック部品の加工(すなわち、素材及び焼結条件)及び緻密化させたセラミックからの加熱素子の調製は、従来の方法により、及び上記に考察されるとおりに行うことができる。Wilkensに対する米国特許第5,786,565号明細書及びAxelsonらに対する米国特許第5,191,508号明細書を参照のこと。
【0051】
好ましい製造方法としては、射出成形技法の使用が挙げられる。従って、例えば、ベースとなる素子が、第1の抵抗率を有するセラミック材料(例えば、絶縁体部分又はヒートシンク部分として機能し得るセラミック材料)を、ロッド形状などの所望の基本形状を画定する金型要素の中に注入して導入することによって形成され得る。ベースとなる素子をかかる第1の金型から取り出し、第2の異なる金型要素に位置決めし、異なる抵抗率を有するセラミック材料−例えば導電性セラミック材料−を第2の金型に注入して、点火器要素の1つ又は複数の導電性領域を提供することができる。同様にして、ベースとなる素子をかかる第2の金型から取り出し、第3のさらに異なる金型要素に位置決めし得るとともに、異なる抵抗率を有するセラミック材料−例えば抵抗性の高温領域のセラミック材料−を第3の金型に注入して、点火器要素の1つ又は複数の抵抗性の高温又は点火部分を提供することができる。
【0052】
或いは、このように複数の異なる金型要素を使用するのではなく、同じ金型要素内に異なる抵抗率のセラミック材料を順次送り込むか、又は注入してもよい。例えば、所定量の第1のセラミック材料(例えば絶縁体又はヒートシンク部分として機能し得るセラミック材料)を、所望の基本形状を画定する金型要素に導入してもよく、その後、形成されたベースに異なる抵抗率の第2のセラミック材料を加えてもよい。
【0053】
セラミック材料は、1つ又は複数のセラミック粉末などの1つ又は複数のセラミック材料を含む流体配合物として金型要素内に送り込んで(注入して)もよい。
【0054】
例えば、1つ又は複数のセラミック粉末を、水溶液か、又はアルコールなどの1つ又は複数の混和性有機溶媒を含有する水溶液と混合することによってもたらされるペーストなどの、セラミック粉末のスラリー又はペースト状の組成物を調製してもよい。押出しに好ましいセラミックスラリー組成物は、水の流体組成物中にあるMoSi、Al、及び/又はAlNなどの1つ又は複数のセラミック粉末を、場合により、セルロースエーテル溶媒、アルコールのような1つ又は複数の水混和性有機溶媒などの1つ又は複数の有機溶媒と共に混合することによって調製され得る。セラミックスラリーはまた、他の材料、例えば1つ又は複数の有機系可塑剤化合物を、場合により1つ又は複数の高分子結合剤と共に含んでもよい。
【0055】
多様な形状形成又は誘導要素を用いて点火器要素を形成することができ、構造の要素は、形成される点火器の所望の形状に対応する。例えば、ロッド形状の素子を形成するには、セラミック粉末のペーストを円筒形のダイ要素に注入し得る。スティルト状又は矩形の形状の点火器要素を形成するには、矩形のダイが用いられ得る。
【0056】
1つ又は複数のセラミック材料を金型要素内に送り込んだ後、画定されたセラミック部品は、好適には、例えば、50℃又は60℃超で、任意の溶媒(水性及び/又は有機)担体を除去するのに十分な時間にわたり乾燥させ得る。
【0057】
その後、加熱素子は、1500℃、1600℃、1700℃又は1800℃超などの熱処理により、さらに(例えば、95、96、97、98又は99パーセントより高く)緻密化され得る。必要であれば、単一の、又は複数の熱処理を行うことで、最終密度が達成され得る。
【0058】
本発明の加熱素子は、炉及び調理器具などの気相燃料点火装置用途、ベースボードヒーター、ボイラー、及びストーブトップを含め、多くの用途に用いられ得る。特に、本発明の加熱素子は、ストーブトップのガスバーナー並びにガス炉用の点火源として用いられ得る。
【0059】
上記に考察されるとおり、本発明の加熱素子は、瞬間湯沸かし器用などの加熱用燃料(ガス)の点火など、迅速な点火が有益であるか、又は要求される場合に特に有用である。加熱素子はまた、様々な輸送機関(自動車、船艇)におけるグロープラグとしても用いられ得る。
【実施例】
【0060】
以下の非限定的な例は、本発明の例示である。ここで言及される文献は全て、全体として参照により本明細書に援用される。
【0061】
実施例1:加熱素子の製造
抵抗性組成物(20vol%のMoSi、5vol%のSiC、74vol%のAl及び1vol%のGd)の粉末、導電性組成物(28vol%のMoSi、7vol%のSiC、64vol%のAl及び1vol%のGd)及び絶縁性組成物(10vol%のMoSi、89vol%のAl及び1vol%のGd)を、10〜16wt%の有機結合剤(約6〜8wt%の植物性ショートニング、2〜4wt%のポリスチレン及び2〜4wt%のポリエチレン)と混合し、約62〜64vol%固体の装入物である3つのペーストを形成する。3つのペーストを、コインジェクション成形機のバレルに装入する。第1のショットにおいて、砂時計形状の断面を有するキャビティに、支持ベースを形成する絶縁性のペーストを充填した。その部品を第1のキャビティから取り出し、第2のキャビティに入れる。第2のショットでは、第1のショットとキャビティ壁とによって画成された体積の底側半分を導電性のペーストで充填する。その部品を第2のキャビティから取り出し、第3のキャビティに入れる。第3のショットでは、第1のショットと第2のショットとキャビティ壁とによって画成された体積を、抵抗性のペーストで充填し、それにより、絶縁体によって分離され、且つ導電性の脚部と接続され、且つ図5に示される構成を有するヘアピン形状の抵抗器が形成された。次にこの部品を、Ar又はN中、500℃で24時間、熱的に解離させることによって残りの結合剤を除去し、1atmの圧力下にアルゴン中1750℃で、理論値95〜97%まで緻密化する。
【0062】
本発明は、その特定の実施形態を参照して詳細に記載されている。しかしながら、当業者が、本開示を考察することで、本発明の趣旨及び範囲内において修正及び改良を行い得ることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側電気経路と、電気リード線を受け入れるための凹部とを含むセラミック加熱素子。
【請求項2】
導電性領域が、前記加熱素子の実質的な長さにわたって、前記加熱素子の基部における前記導電性領域の断面とほぼ等しいか、又はそれより大きい断面を有する、請求項1に記載のセラミック加熱素子。
【請求項3】
前記加熱素子長さの少なくとも一部分にわたって、丸い断面形状を有する、請求項1又は2に記載の加熱素子。
【請求項4】
電気抵抗率が異なる複数の部分を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項5】
電気の通る順序で、第1の導電性領域と、抵抗性の高温領域と、第2の導電性領域とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項6】
前記加熱素子長さの少なくとも実質的な部分にわたって、実質的に一定の幅を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項7】
前記凹部の壁が、導電性領域の部分と絶縁体領域の部分とを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項8】
前記凹部壁の表面積の10、20、30、40、50、60、70、80又は90パーセント以下が前記導電性領域によって形成され、前記凹部壁の表面積の残りが、前記絶縁体領域によって形成される、請求項7に記載の加熱素子。
【請求項9】
前記凹部が内部に向かって縮径している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項10】
前記加熱素子が、第1の導電性領域と、第2の導電性領域とを含み、それらの間にはより抵抗の高い点火領域が間置され、及び前記第1の導電性領域の長さが前記第2の導電性領域より長い、請求項1〜9のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項11】
前記第2の導電性領域の長さが、前記第1の導電性領域の長さの90、80、70、60、50、40、30、20又は10パーセント以下である、請求項10に記載の加熱素子。
【請求項12】
前記加熱素子の電気経路が、前記第1の導電性領域から前記点火領域へ、次に前記第2の導電性領域へと、順番に延在する、請求項10又は11に記載の加熱素子。
【請求項13】
前記第1の導電性領域が前記凹部と接触し、しかし前記第2の導電性領域は接触しない、請求項1〜12のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の加熱素子を通じて電流を印加するステップを含む、ガス燃料の点火方法。
【請求項15】
前記電流の公称電圧が、6、8、10、12、24、120、220、230又は240ボルトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の加熱素子を含む、加熱装置。
【請求項17】
点火器要素を含む調理ユニットである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
グロープラグである、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
輸送機関用グロープラグである、請求項16に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2011−508950(P2011−508950A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540675(P2010−540675)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/014094
【国際公開番号】WO2009/085311
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】