説明

セラミック回路基板および電子装置

【課題】セラミック基板と金属板との熱膨張係数の違いに起因するセラミック基板の破損の可能性を低減させること。
【解決手段】複数の金属部材14a,14bのそれぞれの上端は、第1または第2の上面金属板12a,12bに接合されているとともに、複数の金属部材14a,14bのそれぞれの下端は、下面金属板13に接合されている。複数の金属部材14a,14bのそれぞれは、貫通孔11aの内面から離間されて配置されている。第1および第2の上面金属板12a,12bは、複数の金属部材14a,14bおよび下面金属板13を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパワーモジュール等の電子装置に用いられるセラミック回路基板およびそれを用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子が搭載され大
きな電流が流されるパワーモジュールまたはスイッチングモジュール等の電子装置に、セラミック基板の上下両面に銅またはアルミニウム等の金属板が接合されたセラミック回路基板が用いられている(例えば、下記特許文献1を参照。)。このようなセラミック回路基板は、電気自動車の制御装置または熱電変換による発電装置等の用途において需要が高まりつつある。
【0003】
例示的なセラミック回路基板は、セラミック基板の上面に設けられた複数の上面金属板と、セラミック基板の下面に設けられた下面金属板とを有している。複数の上面金属板および下面金属板は、セラミック基板との対向面の全体においてセラミック基板に接合されており、セラミック基板の内部において上下方向に設けられたビア導体によって電気的に接合されている。複数の上面金属板は、ビア導体および下面金属板を介して電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-086747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のセラミック回路基板は、複数の上面金属板および下面金属板がセラミック基板との対向面の全体においてセラミック基板に接合されているとともに、複数の上面金属板がセラミック基板の内部に設けられたビア導体によって下面金属板に電気的に接続されていることによって、セラミック基板と金属板との熱膨張係数の違いに起因するセラミック基板の破損が生じる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、セラミック回路基板は、上下方向に形成された複数の貫通孔を有するセラミック基板と、セラミック基板の上面に設けられた第1の上面金属板と、前記セラミック基板の前記上面に設けられた第2の上面金属板と、前記セラミック基板の下面に設けられた下面金属板と、複数の貫通孔内に設けられた複数の金属部材と含んでいる。第1の上面金属板は、複数の貫通孔のうち第1の貫通孔に対応して配置されており、第2の上面金属板は、複数の貫通孔のうち第2の貫通孔に対応して配置されている。下面金属板は、第1の貫通孔および第2の貫通孔に対応して配置されている。複数の金属部材のそれぞれの上端は、第1または第2の上面金属板に接合されているとともに、複数の金属部材のそれぞれの下端は、下面金属板に接合されている。複数の金属部材のそれぞれは、貫通孔の内面から離間されて配置されている。第1および第2の上面金属板は、複数の金属部材および下面金属板を介して電気的に接続されている。
【0007】
本発明の他の態様によれば、電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載されており第1の上面金属板に電気的に接続された電子部品とを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によるセラミック回路基板において、複数の金属部材のそれぞれの上端が第1または第2の上面金属板に接合されているとともに複数の金属部材のそれぞれの下端が下面金属板に接合されており、複数の金属部材のそれぞれが貫通孔の内面から離間されて配置されており、第1および第2の上面金属板が複数の金属部材および下面金属板を介して電気的に接続されていることによって、例えば第1および第2の上面金属板または下面金属板の全体をセラミック基板に接合する必要性が無くなり、セラミック基板と金属板との熱膨張係数の違いに起因するセラミック基板の破損が生じる可能性が低減される。
【0009】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板を含んでいることによって、セラミック基板の破損が生じる可能性が低減されており、信頼性に関して向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態における電子装置を示す平面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図2】図1(b)に示された電子装置において符号Bによって示された部分の拡大図である。
【図3】図2に示された電子装置の要部における他の構造例を示す縦断面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1(a)〜(c)を参照して説明する。本実施形態における電子装置は、セラミック回路基板1と、セラミック回路基板に搭載された電子部品2とを含んでいる。電子装置は、例えばパワーモジュール等である。
【0013】
セラミック回路基板1は、複数の貫通孔11aを有するセラミック基板11と、セラミック基板11の上面に設けられた複数の上面金属板12と、セラミック基板11の下面に設けられた複数の下面金属板13と、複数の貫通孔11a内に設けられた複数の金属部材14とを含んでいる。セラミック回路基板11は、セラミック基板11の下面に設けられた放熱板15をさらに含んでいる。
【0014】
セラミック基板11は、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス,ムライト質セラミックス,炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,または窒化ケイ素質セラミックス等のセラミック材料から成る。これら例示的なセラミック材料の中では、熱伝導性(放熱性)の点において炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,または窒化ケイ素質セラミックスが好ましく、強度の点において窒化ケイ素質セラミックスまたは炭化ケイ素質セラミックスが好ましい。なお、セラミック基板11が窒化ケイ素質セラミックスのように比較的強度の高いセラミック材料から成る場合、より厚みの厚い上面金属板12、下面金属板13および放熱板15を使用してもセラミック基板11にクラックが入る可能性が低減され、小型であってもより大電流を流すことができるセラミック回路基板1を実現することができる。セラミック基板11の厚みは、より薄い方が熱伝導性
の点ではよいが、セラミック回路基板1の大きさ、用いられる材料の熱伝導率または強度に応じて選択すればよく、例えば0.1mm〜1mm程度である。
【0015】
セラミック基板11は、例えば窒化ケイ素質セラミックスから成る場合であれば、窒化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化イットリウム等の原料粉末に適当な有機バインダー,可塑剤,溶剤を添加混合して泥漿物に従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次にこのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して所定形状となすとともに、必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、これを窒化雰囲気等の非酸化性雰囲気にて1600〜2000℃の温度で焼成することによって製作される。
【0016】
セラミック基板11は、上下方向に形成された複数の貫通孔11aを有しており、貫通孔11aは、例えば上述のセラミック基板11の製造工程において、セラミックグリーンシートに金型加工またはレーザー加工によって孔を形成しておくことで形成することができる。あるいは、貫通孔11aは、セラミック基板11を作製した後にレーザー加工またはサンドブラスト加工によって形成される。
【0017】
貫通孔11aは、上面金属板12と下面金属板13とを電気的に接続する金属部材14を収容するためのものであり、平面視において金属部材14の横断面より一回り大きい寸法を有している。具体的には、金属部材14の側面と貫通孔11aの内面との間の距離が金属部材14の横断面の長さ(金属部材14が円柱の場合であれば直径)の1%程度であれば、比較的熱膨張係数の小さい窒化ケイ素質セラミックス(熱膨張係数:約3×10−6/℃)から成るセラミック基板11と、例えば比較的熱膨張係数の大きいアルミニウム(熱膨張係数:約23×10−6/℃)から成る金属部材14を用いた場合であっても、セラミック回路基板1に搭載された電子部品の発熱、あるいは大電流による金属部材14自身の発熱に起因してセラミック基板11と金属部材14との熱膨張差によって貫通孔11aの内面に応力が加わることがない。貫通孔11aは、平面視において金属部材14に対応した形状を有しており、例えば平面視において金属部材14が円形状であれば貫通孔11aも円形状を有している。
【0018】
複数の上面金属板12は、ろう材16によってセラミック基板11の上面に接合されており、第1〜第3の上面金属板12a〜12cを有している。第1の上面金属板12aは、ボンディングワイヤ3を介して電子部品2に電気的に接続されるものであり、第2の上面金属板12bは、例えばセラミック回路基板1の外部との電気的接続を行うための端子として用いられるものであり、第3の上面金属板12cは、電子部品2の搭載用の部材である。第2の上面金属板12bは、セラミック回路基板1の外部との電気的接続を行うための端子として用いられるように、平面視においてセラミック基体11からはみ出すように設けられていてもよい。
第1の上面金属板12aは、電子部品2の近傍に配置されており、ボンディングワイヤ3によって電子部品2に電気的に接続されている。第2の上面金属板12bは、電子部品2の搭載位置を基準に第1の上面金属板12aよりも遠くに配置されており、下面金属板13および複数の金属部材14を介して第1の金属回路板12aに電気的に接続されている。第3の上面金属板12cは、電子部品2の搭載領域に配置されている。
【0019】
複数の下面金属板13のそれぞれは、ろう材16によってセラミック基板11の下面に接合されており、複数の金属部材14を介して第1および第2の上面金属板12aおよび12bに電気的に接続されている。
【0020】
複数の金属部材14は、それぞれセラミック基板11の貫通孔11a内に設けられており、ろう材16を介して上面金属板12および下面金属板13に電気的に接続されている。複数の金属
部材14は、第1の金属部材14aおよび第2の金属部材14bを含んでおり、第1の金属部材14aは、ろう材16を介して第1の上面金属板12aおよび下面金属板13に電気的に接続されており、第2の金属部材14bは、ろう材16を介して第2の上面金属板12bおよび下面金属板13に電気的に接続されている。第1の金属部材14aの上端は、ろう材16によって第1の上面金属板12aの下面に接合されており、第1の上面金属板12a以外の部材には接合されていない。第1の金属部材14aの下端は、ろう材16によって下面金属板13の上面に接合されており、下面金属板13以外の部材には接合されていない。第2の金属部材14bの上端は、ろう材16によって第2の上面金属板12bの下面に接合されており、第2の上面金属板12b以外の部材には接合されていない。第2の金属部材14bの下端は、ろう材16によって下面金属板13の上面に接合されており、下面金属板13以外の部材とは接合されていない。第1の上面金属板12aおよび第2の上面金属板12bが、第1の金属部材14a、および下面金属板13および第2の金属部材14bによって電気的に接続されている。
【0021】
放熱板15は、ろう材16によってセラミック基板11の下面に接合されており、複数の下面金属板13に対応するように複数の貫通孔を有している。放熱板15の複数の貫通孔のそれぞれは、下面金属板13に対応する形状を有しており、下面金属板13よりも一回り大きい寸法を有している。複数の下面金属板13は、放熱板15の複数の貫通孔内に配置されている。
【0022】
上述の上面金属板12、下面金属板13、金属部材14および放熱板15は、銅またはアルミニウム等の金属から成り、例えば銅のインゴット(塊)に圧延加工法または打ち抜き加工法等の機械的加工またはエッチング等の化学的加工のような従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば厚さが0.05〜1mmの平板状で、所定パターンに形成される。このとき、上面金属板12および下面金属板13は、予め所定パターン形状に形成したものを用いてもよいし、セラミック基板11と同程度の大きさおよび形状の金属板をセラミック基板11に接合した後にエッチングで所定パターン形状に加工してもよい。
【0023】
上面金属板12、下面金属板13、金属部材14および放熱板15が銅から成る場合は、無酸素銅で形成するのが好ましい。無酸素銅で形成すると、上面金属板12または下面金属板13と金属部材14との接合、またはセラミック基板11と上面金属板12または下面金属板13との接合を行なう際に、銅の表面が銅中に存在する酸素により酸化されることなく、ろう材16との濡れ性が良好となるので、接合が強固となる。
【0024】
セラミック基板11と上面金属板12または下面金属板13あるいは放熱板15との接合、金属部材14と上面金属板12または下面金属板13との接合は、ろう材16によって行なわれる。ろう材16は、活性金属を含むものであっても、活性金属を含まない通常のものであっても構わない。ろう材16は、上記のすべての接合に活性金属を含むろう材16を用いてもかまわないが、金属部材14と上面金属板12または下面金属板13との接合は、活性金属を含まないろう材16を使用すると、ろう材16がセラミック基板11とは接合しないので、例えば流れ出たろう材16が貫通孔11aの内面に広がり金属部材14を貫通孔11a内に固着させてしまい、下面金属板13の端部が固着して、熱応力等によってセラミック基板11にクラックを発生させることがないので好ましい。
【0025】
上記各部材をろう材16で接続するには、各部材の接合面の少なくとも一方にスクリーン印刷等でろう材ペーストを例えば30〜50μmの厚さで所定パターンに印刷塗布するとともに、所定の構造となるように挟んで載置した後、金属板に5〜10kPaの荷重をかけながら真空中または水素ガス雰囲気または水素・窒素ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で780
℃〜900℃、10〜120分間加熱し、ろう材ペーストの有機溶剤および溶媒・分散剤を気体に変えて発散させるとともにろう材16を溶融させることによって行なわれる。
【0026】
上面金属板12、下面金属板13、金属部材14および放熱板15が銅から成る場合、活性金属
を含まない通常のろう材ペーストは、銀および銅粉末,銀−銅合金粉末,またはこれらの混合粉末から成る銀ろう材(例えば、銀:72質量%−銅:28質量%)粉末に対して適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。活性金属入りのろう材ペーストは、この通常のろう材ペーストに、チタン,ハフニウム,ジルコニウムまたはその水素化物等の活性金属を銀ろう材に対して2〜5質量%添加混合し、混練することによって製作される。
【0027】
上面金属板12、下面金属板13、金属部材14および放熱板15がアルミニウムから成る場合、銀ろう材に換えてアルミニウムろう材(例えば、アルミニウム:88質量%−シリコン:12質量%)を用いればよい。この場合も同様にしてろう材ペーストおよび活性金属入りろう材ペーストを作製して、同様にして接合すればよい。アルミニウムろう材16を使用した場合には、銅より低温の約600℃で接合することができる。
【0028】
活性金属を含まない通常のろう材ペーストで上面金属板12または下面金属板13、あるいは放熱板15をセラミック基板11に接合するには、セラミック基板11上にメタライズ層を形成しておき、メタライズ層と上面金属板12または下面金属板13、あるいは放熱板15との間にろう材ペーストを配置すればよい。セラミック基板11上のメタライズ層は、セラミック基板11を作製する際に、セラミックグリーンシート上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布しておき、焼成することによって形成しておくか、セラミック基板11を作製した後に、セラミック基板11上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布して焼き付けることによって形成すればよい。メタライズペーストは、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)またはこれらの混合粉末から成る金属粉末と、適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。
【0029】
また、上面金属板12は、セラミック基板11に接合した後に、その表面にニッケルから成る良導電性でかつ耐蝕性およびろう材との濡れ性が良好な金属をめっき法により被着させておくと、上面金属板12に半導体素子等の電子部品5を半田を介して強固に接着させることができるとともに、上面金属板12と外部電気回路との電気的接続を良好なものとすることができる。この場合は、内部に燐を8〜15質量%含有させてニッケル−燐のアモルファス合金としておくと、ニッケルから成るめっき層の表面酸化を良好に防止してろう材との濡れ性等を長く維持することができるので好ましい。ニッケルに対する燐の含有量が8質量%未満となると、あるいは15質量%を超えると、ニッケル−燐のアモルファス合金を形成するのが困難となってめっき層に半田を強固に接着させることが困難となりやすい。このニッケルから成るめっき層は、その厚みが1.5μm以上の場合には、上面金属板12の表
面を完全に被覆しやすくなり、上面金属板12の酸化腐蝕を低減させることができる。また、10μmを超えると、特にセラミック基板の厚さが300μm未満の薄いものになった場合
には、めっき層の内部に内在する内在応力が大きくなってセラミック基板に反りまたは割れ等が発生しやすくなってしまう。また、放熱板15にも同様のニッケル金属層を形成しておくと、外部回路基板または冷却体への接合が良好になるのでよい。ニッケル金属層は、その厚みが1.5μm以上の場合には、放熱板15の表面を完全に被覆しやすくなり、放熱板15の酸化腐蝕を低減させることができる。
【0030】
セラミック基板11を用いて上面金属板12、下面金属板13および放熱板15をあらかじめ所定パターンに形成して接合する場合は、以下のようにすればよい。まず、所定の位置に貫通孔11aを有するセラミック基板11を準備する。また、金属板をプレス加工またはエッチング加工等を用い、上面金属板12、下面金属板13、金属部材14および放熱板15の所定パターン形状に加工する。次にセラミック基板11と金属板11が相対する接合部の少なくとも一方に、接合後にろう材16となる活性金属入りのろう材ペーストを所定形状にスクリーン印刷等で塗布する。金属部材14の上下面には、ろう材16を予め形成しておく。このろう材16
は、金属部材14の表裏にスクリーン印刷で同様にろう材ペーストを形成しても良いし、表裏にろう材16をクラッドした所定の厚みの金属板を金属部材14の寸法に打ち抜くことで形成してもよい。各部材を所定の位置に配置し、位置がずれないように治具等を用いて荷重をかけながら真空中でろう材16が溶融する温度まで昇温し各部材を接合することで、セラミック回路基板1となる。
【0031】
貫通孔11a内に金属部材14を配置したセラミック基板11の上面および下面に、セラミック基板11と同程度の大きさおよび形状の金属板を接合した後に、金属板をエッチングで上面金属板12、下面金属板13および放熱板15の所定パターン形状に加工する場合は、例えば以下のようにする。セラミック基板11の上下に接合された金属板の各表面にエッチングレジストインクをスクリーン印刷法等の技術を採用して所定パターン形状に印刷塗布してレジスト膜を形成した後、例えば金属板が銅板である場合であれば、塩化第2鉄,塩化第2銅溶液等のエッチング液に浸漬したり、エッチング液を吹き付けたりして上面金属板12、下面金属板13および放熱板15の所定パターン以外の部分を除去し、レジスト膜を除去すればよい。
【0032】
なお、上記方法で作成した場合には、下面金属板13と放熱板15が同じ厚みとなるため、外部放熱板に本実施例の回路基板を接合する場合には、下面金属板13がショートしないように、絶縁膜を介して外部放熱板に接合すれば良い。または、一旦エッチングによって下面金属板13と放熱板15を形成後、下面金属板13部分を追加でエッチングして薄くしたり、下面金属板13だけをエッチングで作成した後に下面回路板4より厚い放熱板15を低温のろう材16で接合してセラミック回路基板としたり、放熱板15の下面にさらに下面金属板13と絶縁されるように例えば下面金属板13に対応する部分をザグリ加工した金属板をろう材16で接合したりしてセラミック回路基板とすると、下面金属板13より、放熱板15が突出した構造となるので、外部放熱板への実装性が改善されるので好ましい。
【0033】
電子部品2は、第3の上面金属板12c上に設けられており、半田またはAu−Si合金等の接合材によって第3の上面金属板12cに接合されている。電子部品2は、ボンディングワイヤ3によって複数の第1の上面金属板12aに電気的に接続されている。電子部品2としては、トランジスタ,CPU(Central Processing Unit)用のLSI(Large Scale
Integrated circuit),IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transistor)等の半導体素子が
挙げられる。
【0034】
本実施形態におけるセラミック回路基板1において、複数の金属部材14のそれぞれの上端が第1の上面金属板12aまたは第2の上面金属板12bに接合されているとともに複数の金属部材14のそれぞれの下端が下面金属板13に接合されており、複数の金属部材14のそれぞれが貫通孔11aの内面から離間されて配置されており、第1の上面金属板12aおよび第2の上面金属板12bが複数の金属部材14および下面金属板13を介して電気的に接続されていることによって、例えば第1および第2の上面金属板12a、12bまたは下面金属板13の全体をセラミック基板11に接合する必要性が無くなり、セラミック基板11とこれら金属板12a、12bおよび13との熱膨張係数の違いに起因するセラミック基板11の破損が生じる可能性が低減されている。
【0035】
本実施形態における電子装置は、上記構成のセラミック回路基板1を含んでいることによって、例えば高い温度サイクル下において用いられる場合にも、セラミック基板11の破損が生じる可能性が低減されており、信頼性に関して向上されている。
【0036】
本実施形態のセラミック回路基板1において、セラミック基板11に加わる熱応力は、放熱板15によって圧縮応力が加えられるが、セラミック基板11は圧縮応力に対しては、引っ
張り応力の10倍程度の破壊強度を持つため、セラミック基板11が放熱板15によって加えられる応力によって破壊する可能性は小さい。そのため、上面金属板12、下面金属板13および放熱板15とセラミック基板11との熱膨張係数の差によって発生する引っ張り応力がセラミック基板11を破壊する主な原因となるが、この応力は接合しているこれら金属の硬さと、回路基板と上面金属板12(下面金属板13)のろう材16による接合長さに比例して接合している上面金属板12(下面金属板13)のろう材16によって接合している最外部とその外側にあるセラミック基板11との境界部分に加わる。そのため、上述したように、下面金属板13は、図3に示す例のようにセラミック基板11に接合しないのが好ましく、接合する場合であっても、図2に示す例のように、下面金属板13の上面の全面でセラミック基板11に接合しないようにすると、ろう材16の拡散によって下面金属板13が硬くなることが抑えられるので好ましい。
【0037】
本実施形態のセラミック回路基板において、セラミック基板11と、セラミック基板11の上面にろう材16によって接合された複数の上面金属板12と、セラミック基板11の下に設けられた下面金属板13と、セラミック基板11に形成された複数の貫通孔11a内に配置されており、複数の上面金属板12のいずれかにろう材16によって接合された第1の端部と下面金属板13にろう材16によって接合された第2の端部とを有している複数の金属部材14とを備えている。本実施形態のセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、薄型のセラミック回路基板であって、上面金属板12および下面金属板13とセラミック基板11との熱膨張係数が異なっていても、セラミック基板11が破損するような熱応力が加わらないようにすることができ、信頼性が高く、薄型化または軽量化に関して向上されている。
【0038】
本実施形態の電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品6とを含んでいることによって、薄型のセラミック回路基板であって、金属回路板とセラミック基板11との熱膨張係数が異なっていても、電子装置が破損するような熱応力が加わらないようにすることができ、信頼性が高く、薄型化または軽量化に関して向上されている。
【0039】
図3を参照して、本実施形態におけるセラミック回路基板1の変形例について説明する。図2に示された例においては、下面金属板13はろう材16によってセラミック基板11に部分的に接合されているが、変形例において、下面金属板13はセラミック基板11には直接接合されていない。下面金属板13がセラミック基体11に直接接合されていない場合は、上面金属板12および金属部材14を介して接合されたセラミック基板11と下面金属板13との間に発生する熱応力は、セラミック基板11に直接接合されていない下面金属板13が変形して緩和されやすくなる。これによって、金属部材14を介して上面金属板12に加わる応力も小さいものとなる。また、構造的な理由以外にも、下面金属板13の接合の際のろう材16からの金属拡散によって硬度が高くなる部分が少ないという理由でも、金属部材14を介して上面金属板12に加わる応力が低減される。
【0040】
このように応力を緩和することができると、例えば窒化アルミニウム質セラミックスのように熱伝導率は高いが機械的強度が比較的小さいという材料から成るセラミック基板11を用いることができるようになるので、熱放散性と温度サイクル信頼性との両方の特性を両立させたセラミック回路基板1とすることができる。この場合は、特に熱放散性の高いセラミック回路基板1とすることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態における電子装置について図4(a)〜(c)を参照して説明する。第2の実施形態における電子装置において、第1の実施形態における電子装置と異なる構成は、上面放熱板17をさらに含んでいることと、放熱板15(以下、下面放熱板15と
いう)が複数の領域に分割されていることと、第3の上面金属板12cが第3の金属部材14cを介して下面放熱板15に熱的に接続されていることである。その他の構成は、第1の実施形態における電子装置と同様である。
【0042】
上面放熱板17は、セラミック基体11の上面のうち上面金属板12が設けられている領域以外を覆うようにセラミック基体11の上面に設けられている。上面放熱板17は、複数の領域に分割されており、それぞれの領域がろう材16によってセラミック基体11の上面に接合されている。
【0043】
下面放熱板15は、上面放熱板17と同様に複数の領域に分割されており、それぞれの領域がろう材16によってセラミック基体11の下面に接合されている。
【0044】
セラミック回路基板1の上面金属板12の面積と下面放熱板15の面積とに大きな差がある場合、セラミック基板11に反りが発生しやすくなるが、上面金属板12と絶縁されるように上面放熱板17が設けられていることによってセラミック基体11の反りは低減されている。上面放熱板17は、上面金属板12、下面金属板13および下面放熱板15と同じ金属が使用されていると、セラミック基板11の上下面に加わる応力の差を低減させることができる。なお、上面放熱板17は、下面放熱板15が下面金属板13を取り囲んでいるのと同様に、上面金属板12を取り囲むようにセラミック基板11の上面の全体に共通して設けられていても良いが、図4(a)に示されているように複数の領域に分割されて、上面放熱板17とセラミック基板11との接合長さを短くされていることによって、熱応力が低減
される。また、各金属板の角部にはR面やC面を形成することで、熱応力が局部的に集中しないようにするのが好ましい。
【0045】
また、本実施形態の電子装置においては、下面放熱板15が複数の領域に分割されて、放熱板15とセラミック基板11との接合長さが短くされていることによって、熱応力が低減されている。具体的には、セラミック基板11と上面金属板12、放熱板15および上面放熱板17との接合長さが10mmを超えないようにするとよい。
【0046】
また、本実施形態の電子装置において、電子部品2が搭載されている第3の上面金属板12cが第3の金属部材14cによって下面放熱板15に熱的に接続されていると、電子部品2によって発生された熱の伝導または放散に関して向上されている。
【符号の説明】
【0047】
1・・・・・セラミック回路基板
11・・・・・セラミック基板
11a・・・・貫通孔
12・・・・・上面金属板
13・・・・・下面金属板
14・・・・・金属部材
15・・・・・放熱板
2・・・・・電子部品
3・・・・・ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に形成された複数の貫通孔を有するセラミック基板と、
該セラミック基板の上面に設けられており、前記複数の貫通孔のうち第1の貫通孔に対応して配置された第1の上面金属板と、
前記セラミック基板の前記上面に設けられており、前記複数の貫通孔のうち第2の貫通孔に対応して配置された第2の上面金属板と、
前記セラミック基板の下面に設けられており、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔に対応して配置された下面金属板と、
前記複数の貫通孔内に設けられた複数の金属部材とを備えており、
該複数の金属部材のそれぞれの上端が前記第1または第2の上面金属板に接合されているとともに前記複数の金属部材のそれぞれの下端が前記下面金属板に接合されており、
前記複数の金属部材のそれぞれが貫通孔の内面から離間されて配置されており、
前記第1および第2の上面金属板が前記複数の金属部材および前記下面金属板を介して電気的に接続されていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載されたセラミック回路基板と、
該セラミック回路基板に搭載されており、前記第1の上面金属板に電気的に接続された電子部品とを備えていることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58618(P2013−58618A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196208(P2011−196208)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】