説明

セラミック基板の製造方法およびセラミック基板

【課題】めっき付着性が良好で、剥離強度に優れた表面電極を備えたセラミック基板を製造することを可能にする。
【解決手段】焼成後に基板本体の表層を構成する、ガラス成分を含有するかまたは焼成工程でガラス成分を生成する材料を含有するセラミックグリーンシート10の表面に導電性ペーストを塗布して第1電極パターン1を形成した後、第1電極パターンの表面の周縁部に、導電性ペーストを印刷して額縁状の第2電極パターン2を形成して第1電極パターンと第2電極パターンを備えた表面電極パターン3を形成するとともに、(a)第2電極パターンの幅を第1電極パターンの幅の0.5〜20%、(b)第1電極パターンと第2電極パターンの合計厚みを5〜40μm、(c)第1電極パターンと第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.6〜2.0とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の製造方法およびセラミック基板に関し、詳しくは、基板本体の表面に、ICなどの実装素子を搭載するための電極パッドやワイヤーボンディング用導体配線部などの表面電極を備えたセラミック基板の製造方法およびセラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板には、通常、その表面に、IC等の実装素子を搭載するための電極パッドやワイヤーボンディング用導体配線部などの表面電極が設けられている。
【0003】
このような表面電極を備えたセラミック基板の製造方法としては、導電性ペーストを印刷することにより内部電極パターンや表面電極パターンを形成したセラミックグリーンシート、さらには、電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートなどを用意し、これらを所定の順序で積層した後、圧着し、得られた積層体を焼成することによりセラミック基板を製造する方法が広く用いられている。
【0004】
上述のように、導電性ペーストとセラミックグリーンシートを同時に焼成する方法の場合、内部電極は、セラミックグリーンシートが焼成されることにより形成されるセラミック層間に挟まれた状態で保持されるため、特に剥離が問題になるようなことは少ないが、表面電極の場合、セラミック層間に挟まれておらず、最外層のセラミック層に密着(固着)しているだけであることから、剥離の問題を生じやすい。
【0005】
ここで、セラミック層を構成するセラミック材料がガラス成分を含有している場合や、焼成工程でガラス成分を生成する材料を含んでいる場合には、セラミック材料側からのガラス成分の供給により、セラミック層との密着強度を確保したり、表面電極自体の焼結性を高めたりすることが可能になる。
【0006】
このとき、セラミック層と表面電極との密着力を向上させるために、表面電極形成用の導電性ペーストにガラス成分を添加する方法もある。しかし、ガラス成分の添加量によっては表面電極の導電性が低下したり、めっき付着性やはんだ付け性が不十分になったりするという問題点がある。
【0007】
そこで、上記問題点を解決するために、セラミック層との密着性が高く、かつ、表面平滑性に優れた電極パターンを形成することが可能な導電性ペーストおよびそれを用いて製造されるセラミック多層基板が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
この特許文献1の導電性ペーストは、Cu粉末、セラミック粉末及び有機ビヒクルからなる導電性ペーストであって、セラミック粉末が、(a)Al23、SiO2及びBaOからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、(b)平均粒径0.1〜3.5μmであり、(c)Cu粉末に対する添加量が1〜15体積%という要件を満たすように構成されている。
【0009】
そして、この導電性ペーストを、BaO−Al23−SiO2系のガラス複合材料からなるセラミックグリーンシート上に印刷し、得られたセラミックグリーンシートを積層、焼成する。特許文献1の導電性ペーストによれば、焼成工程においてセラミック層に生成されるガラス成分を、セラミック粉末が表面電極に吸い上げることができる。そのため、セラミック層との密着性が高く、かつ、表面平滑性に優れた表面電極(電極パターン)を形成できるとされている。
【0010】
しかしながら、電極の周縁部は、印刷時のダレやにじみの影響で、中央部よりも電極厚みが薄くなる傾向にある。そのため、上述の導電性ペーストを用いた場合にも、図3(a),(b)に模式的に示すように、セラミックグリーンシート51の表面に印刷された表面電極パターン61の周縁部が薄くなり、その表面にガラス成分が浮き出して、表面電極へのめっき付着性が低下したり、導電性が低くなりすぎたりして、得られるセラミック多層基板の信頼性が低下する場合があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−173346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、めっき付着性が良好で、剥離強度に優れた、信頼性の高い表面電極を備えたセラミック基板を確実に製造することが可能なセラミック基板の製造方法、および該セラミック基板の製造方法により製造されるめっき付着性が良好で、剥離強度に優れた表面電極を備えた、信頼性の高いセラミック基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のセラミック基板の製造方法は、
基板本体の表面に配設された所定のパターンを有する表面電極を備えた低温焼成型のセラミック基板の製造方法であって、
焼成後に前記基板本体の表層を構成することになる、ガラス成分を含有しているかまたは焼成工程でガラス成分を生成する材料を含有するセラミックグリーンシートの表面に導電性ペーストを塗布して第1電極パターンを形成する工程と、
前記第1電極パターンの表面の周縁部に、額縁状に導電性ペーストを印刷して第2電極パターンを形成することにより、前記第1電極パターンと前記第2電極パターンを備えた表面電極パターンを形成する工程と
を備え、かつ、
(a)前記第2電極パターンの幅を前記第1電極パターンの幅の0.5〜20%、
(b)前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの合計厚みを5〜40μm、
(c)前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.6〜2.0
とすることを特徴としている。
【0014】
また、本発明においては、
(a')前記第2電極パターンの幅を前記第1電極パターンの幅の1.0〜5.0%、
(b')前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの合計厚みを5〜20μm、
(c')前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.85〜1.50
とすることがさらに望ましい。
【0015】
また、前記第1電極パターンの形成に用いられる導電性ペースト、および、前記第2電極パターンの形成に用いられる導電性ペーストとして、同じ導電性ペーストを用いることが望ましい。
【0016】
本発明のセラミック基板は、
基板本体の表面に配設された所定のパターンを有する表面電極を備えたセラミック基板であって、
前記表面電極は、前記表面電極の中央部を構成する中央領域と、前記表面電極の周縁部を構成する、前記中央領域よりも厚みが大きい額縁状の周縁領域とを備え、
前記周縁領域の幅が前記表面電極の幅の0.5〜20%、前記周縁領域の厚みが4〜32μmであること
を特徴としている。
【0017】
また、本発明においては、前記周縁領域の幅が前記表面電極の幅の1.0〜5.0%、前記周縁領域の厚みが4〜16μmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセラミック基板の製造方法は、セラミックグリーンシートの表面に導電性ペーストを塗布して第1電極パターンを形成した後、第1電極パターンの表面の周縁部に、導電性ペーストを印刷して額縁状の第2電極パターンを形成して第1電極パターンと第2電極パターンを備えた表面電極パターンを形成する。そして、(a)第2電極パターンの幅を第1電極パターンの幅の0.5〜20%、(b)第1電極パターンと第2電極パターンの合計厚みを5〜40μm、(c)第1電極パターンと第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.6〜2.0とするようにしているので、基板本体を構成するセラミック層側から供給されるガラスが表面電極の表面に浮き上がるのを抑制、防止することが可能になる。また、表面電極が厚くなりすぎた場合に生じるような、セラミック層側からのガラスの供給が不足して表面電極が脆弱になることによる表面電極自体での剥離の発生を抑制防止することが可能になる。そのため、めっき付着性が良好で、剥離強度に優れた表面電極を備えた、信頼性の高い表面電極を備えたセラミック基板を効率よく製造することができる。
【0019】
すなわち、第1電極パターンの周縁部に第2電極パターンを形成しない場合、周縁部に向かって徐々に薄くなり、焼成工程で、表面電極の周縁部表面にガラス成分が浮き上がって、めっき付着性が低下し、めっき膜と表面電極の間で剥離が生じやすくなるが、本発明によれば、第2電極パターンが形成されて厚みの大きい周縁部において、セラミック層(基板本体)側からのガラスが表面電極の表面に浮き上がることを確実に防止することが可能になり、めっき付着性を向上させることが可能になる。
また、表面電極の中央領域では適度にガラス成分が供給されるため、全体として十分に焼結した、表面電極自体で剥離が生じたりすることのない表面電極を形成することができる。
【0020】
本発明において、第2電極パターンの幅を、第1電極パターンの幅の0.5〜20%の範囲としている。これは、第2電極パターンの幅が0.5%未満の場合、表面電極の周縁部におけるガラスの浮き上がりを完全に防止することができず、めっき付着性が低下するからである。また、第2電極パターンの幅が20%を超えると、良好なめっき付着性を確保することはできるが、表面電極の焼結不足が生じる。すなわち、セラミック層側から表面電極へのガラスの供給は、電極厚みが薄いほど起こりやすく、電極厚みが厚いところでは起こりにくいため、第2電極パターンの幅が20%を超えると中央部に近い部分において第2電極パターンの焼結に必要なガラス供給が受けられなくなる。
【0021】
なお、本発明における表面電極パターンにおいて、第2電極パターンの幅を、第1電極パターンの幅の0.5〜20%の範囲にするとは、図1(a),(b)を参照して説明すると、表面電極の平面形状が方形の場合において、第1電極パターン1の一対の辺1a側に形成された、第2電極パターン2の一対の領域2aの幅W2aが、第1電極パターン1の他の一対の辺1bの長さL1bの0.5〜20%の範囲になるようにし、また、第1電極パターン1の他の一対の辺1b側に形成された第2電極パターン2の他の一対の領域2bの幅W2bが、第1電極パターン1の一対の辺1aの長さL1aの0.5〜20%の範囲になるようにすることを意味している。
【0022】
また、本発明のセラミック基板の製造方法においては、(a')第2電極パターンの幅を第1電極パターンの幅の1.0〜5.0%、(b')第1電極パターンと第2電極パターンの合計厚みを5〜20μm、(c')第1電極パターンと第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.85〜1.50とすることにより、表面電極のめっき付着性および剥離強度をさらに向上させることが可能になる。
【0023】
また、第1電極パターンの形成に用いられる導電性ペースト、および、第2電極パターンの形成に用いられる導電性ペーストとして、同じ導電性ペーストを用いることにより、第1電極パターンと第2電極パターンの親和性に優れた表面電極パターンを形成することが可能になり、焼成後に確実に一体化した緻密で信頼性の高い表面電極を得ることができる。
また、用意すべき導電性ペーストの種類が少なくなり、生産性の見地からも有利になる。
【0024】
本発明のセラミック基板は、表面電極が、その中央部を構成する中央領域と、表面電極の周縁部を構成する、中央領域よりも厚みが大きい額縁状の周縁領域とを備えており、周縁領域の幅が表面電極の幅の0.5〜20%、周縁領域の厚みが4〜32μmの範囲となるように構成されていることから、表面電極の周縁領域へのガラスの浮き上がりを効率よく抑制、防止することが可能で、めっき付着性および剥離強度に優れた信頼性の高い表面電極を備えたセラミック基板を提供することができる。
【0025】
なお、このセラミック基板は本発明のセラミック基板の製造方法により効率よく製造することができる。
【0026】
本発明のセラミック基板を製造するにあたっては、焼成工程で表面電極パターンが焼結収縮を生じるが、全体的にほぼ均一に20%程度収縮するため、本発明の製造方法を適用することにより、周縁領域の幅を、表面電極の幅の0.5〜20%、周縁領域の厚みを4〜32μmの範囲にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例にかかるセラミック基板の製造方法の一工程で形成した、第1電極パターンと第2電極パターンとを備えた表面電極パターンの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図2】本発明の実施例にかかるセラミック基板の製造方法の一工程において形成した、第1電極パターンの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図3】従来の方法により形成される表面電極パターンの形状を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
[1]セラミックグリーンシートの作製
出発原料粉末として、SiO2、BaCO3、Al23、CeO2、ZrO2、TiO2、Mg(OH)2およびNb25を用意した。そして、この原料粉末を、湿式混合粉砕、乾燥を経て得られた混合物を800〜1000℃で1〜3時間仮焼して仮焼粉末を得た。
【0030】
それから、仮焼粉末にMnCO3、および適当量の有機バインダ、分散剤、可塑剤を加えて混合粉砕し、セラミックスラリーを作製した。
【0031】
そして、このセラミックスラリーをドクターブレード法によってシート状に成形、乾燥し、得られたシートを所定の大きさにカットして、セラミック基板の製造に用いられるセラミックグリーンシートを得た。
なお、上記セラミックグリーンシートは焼成工程でガラス成分が生成する材料を含むものであって、低温焼結型のセラミック基板の製造に用いるのに適したセラミックグリーンシートである。
【0032】
[2]表面電極パターンの形成
上述のようにして得たセラミックグリーンシートのうちの1枚に、以下の方法により導電性ペースト(電極ペースト)を印刷して、第1電極パターンと第2電極パターンを備えた表面電極パターンを形成した。なお、他のセラミックグリーンシートには必要に応じて内部導体形成用の導体パターンを形成する。
【0033】
まず、スクリーン印刷により、表1に示す組成を有する電極ペーストを印刷して、図2(a),(b)に示すように、セラミックグリーンシート10上に2mm(2000μm)□の第1電極パターン1を形成した。
【0034】
【表1】

【0035】
次に、図1(a),(b)に示すように、第1電極パターン1の表面の周縁部に表1に示す組成を有する電極ペーストを印刷して、第1電極パターン1の周縁部を覆う額縁状の第2電極パターン2を形成することにより、第1電極パターン1と第2電極パターン2とを備えた表面電極パターン3を形成した。
【0036】
なお、この実施例では、表面電極の平面形状は正方形であることから、第1電極パターン1の一対の辺1aと他の一対の辺1bの長さ(第1電極パターンの幅)L1aとL1bは同一値となる。
【0037】
したがって、第1電極パターン1の一対の辺1a側に形成された、第2電極パターン2の一対の領域2aの幅W2aおよび、第1電極パターン1の他の一対の辺1b側に形成された第2電極パターン2の他の一対の領域2bの幅W2bの、本発明において規定されている好ましい範囲,すなわち、第1電極パターンの幅(L1aあるいはL1b)の0.5〜20%の範囲、より好ましくは,1.0〜5.0%の範囲)は、同じとなる。
【0038】
なお、
(a)第2電極パターン2の幅W(W2aまたはW2b)、
(b)第1電極パターン1の幅L(L1aまたはL1b)との比率、
(c)第1電極パターン1および第2電極パターン2の厚み、
(d)第1電極パターン1と第2電極パターン2の合計厚み、
(e)第1電極パターン1と第2電極パターン2の厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)
は表2,表3に示す値になるようにした。
【0039】
[3]電極剥離強度の測定
上述のようにして作製した、表面電極パターンを備えたセラミックグリーンシートが表層部に位置するよう複数のセラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、温度60〜80℃および圧力1000〜1500kg/cm3の条件で熱圧着を施し、未焼成の積層体を得た。
【0040】
それから、この未焼成の積層体を、N2−H2−H2O非酸化性雰囲気下で焼成することにより、積層体を構成するセラミック層間には内部導体を備え、積層体の表面には表面電極を備えた焼結積層体を得た。
【0041】
次に、得られた焼結積層体の表層電極に、NiめっきおよびAuめっきの順でめっき処理を施し、表層電極にNiめっき膜層、金めっき膜層を形成した。
【0042】
なお、Niめっきを行うにあたっては、焼結積層体をpH4〜5で50〜100℃の無電解めっき液(NiSO4、硫酸銅、酒石酸、水酸化ナトリウム、ホルムアルデヒドなどを含む水溶液)に約5〜150分浸漬し、約0.5〜10μmの厚みのNiめっき膜を析出させた後、水洗浄を行った。
【0043】
また、金めっきを行うにあたっては、Niめっきを行った後の試料を、pH7〜8のAuCNなどを主成分とする水溶液に約5〜150分浸漬し、約0.01〜5.0μmの厚みの金めっき膜を析出させた後、水洗浄を行った。
【0044】
それから、上述のようにして作製した試料(焼結積層体)について、電極剥離強度を測定した。なお、電極剥離強度は、基板表面の1辺2mmの角型電極にL字のリード線をはんだ付けし、基板表面の垂直方向への引っ張り試験を行って評価した。
電極剥離強度の測定結果を表2,表3に示す。なお、表2,表3において、試料番号に*を付したものは本発明の要件を備えていない比較例の試料である。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
表2,表3に示すように、本発明の要件すなわち、
(a)第2電極パターンの幅が第1電極パターンの幅の0.5〜20%、
(b)第1電極パターンと第2電極パターンの合計厚みを5〜40μm、
(c)第1電極パターンと第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)が0.6〜2.0
の要件を備えた試料(表2,表3において試料番号に*を付していない試料)については、25N/4mm2以上と良好な電極剥離強度を備えていることが確認された。なお、これらの試料の焼成後の表面電極は、周縁領域の幅が表面電極の幅の0.5〜20%、周縁領域の厚みが4〜32μmの要件を備えていた。
【0048】
特に、本発明の要件を備えた(表2,表3において試料番号に*を付していない試料)の中でも、
(a)第2電極パターンの幅が第1電極パターンの幅の1.0〜5.0%、
(b)第1電極パターンと第2電極パターンの合計厚みを5〜20μm、
(c)第1電極パターンと第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)が0.85〜1.50
の要件を満たす試料(表3における試料番号27〜36の試料)の場合、電極剥離強度が30N/4mm2以上で、特に電極剥離強度に優れていることが確認された。また、これらの試料の焼成後の表面電極は、周縁領域の幅が表面電極の幅の1.0〜5.0%、周縁領域の厚みが4〜16μmの要件を備えていた。
【0049】
上述の結果より、本発明の要件を満たす試料の場合、表面電極の周縁部の厚みが中央領域よりも厚くなり、ガラス成分が電極表面に浮き上がることが抑制されることにより、電極剥離強度が向上することが確認された。
【0050】
なお、本発明の要件を満たす試料の場合、表面電極へのガラス成分の浮き上がりが抑制され、めっき付着性にも優れていることが確認された。
【0051】
これに対し,本発明の要件を満たさない試料(表2,表3において試料番号に*を付した試料)の場合、表面電極の周縁部においてガラス成分の浮き上がりが著しく、めっき付着性が低下して、電極剥離強度が低くなる(めっき膜と表面電極との界面で剥離が生じやすくなる)ことが確認された。
【0052】
なお、上記実施例では、セラミックグリーンシートとして、焼成工程でガラス成分を生成するものを用いたが,予めガラス成分を配合した材料からなるセラミックグリーンシートを用いることも可能である。
【0053】
本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、基板本体を構成するセラミック材料の種類、セラミック層の積層数、表面電極パターンの寸法、表面電極の形成に用いられる導電性ペースト(電極ペースト)の組成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 第1電極パターン
2 第2電極パターン
3 表面電極パターン
1a 第1電極パターンの一対の辺
1b 第1電極パターンの他の一対の辺
2a 第2電極パターンの一対の領域
2b 第2電極パターンの他の一対の領域
10 セラミックグリーンシート
L1a 第1電極パターンの一対の辺の長さ(第1電極パターンの幅)
L1b 第1電極パターンの他の一対の辺の長さ(第1電極パターンの幅)
W2a 第2電極パターンの一対の領域の幅
W2b 第2電極パターンの他の一対の領域の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体の表面に配設された所定のパターンを有する表面電極を備えた低温焼成型のセラミック基板の製造方法であって、
焼成後に前記基板本体の表層を構成することになる、ガラス成分を含有しているかまたは焼成工程でガラス成分を生成する材料を含有するセラミックグリーンシートの表面に導電性ペーストを塗布して第1電極パターンを形成する工程と、
前記第1電極パターンの表面の周縁部に、額縁状に導電性ペーストを印刷して第2電極パターンを形成することにより、前記第1電極パターンと前記第2電極パターンを備えた表面電極パターンを形成する工程と
を備え、かつ、
(a)前記第2電極パターンの幅を前記第1電極パターンの幅の0.5〜20%、
(b)前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの合計厚みを5〜40μm、
(c)前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.6〜2.0
とすることを特徴とするセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
(a')前記第2電極パターンの幅を前記第1電極パターンの幅の1.0〜5.0%、
(b')前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの合計厚みを5〜20μ
(c')前記第1電極パターンと前記第2電極パターンの厚みの比率:(第1電極パターン/第2電極パターン)を0.85〜1.50
とすることを特徴とする請求項1記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1電極パターンの形成に用いられる導電性ペースト、および、前記第2電極パターンの形成に用いられる導電性ペーストとして、同じ導電性ペーストを用いることを特徴とする請求項1または2記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
基板本体の表面に配設された所定のパターンを有する表面電極を備えたセラミック基板であって、
前記表面電極は、前記表面電極の中央部を構成する中央領域と、前記表面電極の周縁部を構成する、前記中央領域よりも厚みが大きい額縁状の周縁領域とを備え、
前記周縁領域の幅が前記表面電極の幅の0.5〜20%、前記周縁領域の厚みが4〜32μmであること
を特徴とするセラミック基板。
【請求項5】
前記周縁領域の幅が前記表面電極の幅の1.0〜5.0%、前記周縁領域の厚みが4〜16μmであることを特徴とする請求項4記載のセラミック基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate