セラミック配線基板
【課題】一対の導体部の間を電気的に接続する厚膜抵抗体を有するセラミック配線基板において、厚膜抵抗体のトリミング部における抗折強度の低下を極力防止する。
【解決手段】セラミック層11の一面1a上に設けられた一対の導体部13と、一対の導体部13を電気的に接続する厚膜抵抗体14とを備え、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれたトリミング部20とされているセラミック配線基板S1において、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下では、当該トリミング部20とセラミック層11との間に、厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部17が設けられている。
【解決手段】セラミック層11の一面1a上に設けられた一対の導体部13と、一対の導体部13を電気的に接続する厚膜抵抗体14とを備え、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれたトリミング部20とされているセラミック配線基板S1において、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下では、当該トリミング部20とセラミック層11との間に、厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部17が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の導体部の間を電気的に接続する厚膜抵抗体を有するセラミック配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のセラミック配線基板としては、セラミックよりなる基材の一面上に設けられた一対の導体部の間を、厚膜抵抗体で電気的に接続してなり、さらに、厚膜抵抗体のうち一対の導体部の間に位置する部位が切り欠かれるようにトリミングされたトリミング部とされているものが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0003】
トリミング部は、厚膜抵抗体の抵抗値を、より高精度なものとするために形成されるものであり、レーザ法やサンドブラスト法などを用いて厚膜抵抗体部の一部を気化、焼失あるいは、機械的に削ることで抵抗値の調整を行うものである。
【特許文献1】特開2000−138436号公報
【特許文献2】特開平5−267815号公報
【特許文献3】特開2001−339013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は上記した従来技術に基づいてセラミック配線基板を試作し、検討を行った。図9は、この本発明者が試作した試作品としてのセラミック配線基板J1を示す概略断面図である。
【0005】
基材11は、アルミナなどのセラミックが複数積層されたもの、もしくは単層のものであり、基材11の一面11a上に設けられた一対の導体部13の間は、厚膜抵抗体14で接続されている。そして、厚膜抵抗体14における導体部13の間に位置する部位は、切り欠かれたトリミング部20とされている。そして、これら厚膜抵抗体14および導体部13は、ガラスよりなる保護ガラス15や樹脂よりなる保護樹脂16により被覆され、保護されている。
【0006】
ここで、安定かつ高精度な抵抗値を得るためには、トリミング時に厚膜抵抗体14の膜を完全に切断する必要がある。このため、図9に示されるように、厚膜抵抗体14の下に位置する基材11の一部もトリミングされるのが通常である。
【0007】
また、近年、この種のセラミック配線基板は、銅や鉄などの金属ベース板上に接着剤により固着され、さらに、これらをエポキシ樹脂などのモールド樹脂にて封止するモールド構造に用いられることがある。
【0008】
図10は、本発明者の試作したモールドパッケージを示す概略断面図である。このモールドパッケージは、上記図9に示されるセラミック配線基板J1を金属ベース板J2上に接着剤J3を介して固着し、これらをリードフレームJ4とともにモールド樹脂J5にて封止した構造としている。
【0009】
そして、本発明者の検討によれば、このような構造においては、トリミング部20ではその直下の基材11も一部トリミングされているため、その部分を起点としてセラミック配線基板J1の割れが発生することが分かった。
【0010】
たとえば、図10に示されるように、セラミック配線基板J1にて、厚膜抵抗体14が形成された面を金属ベース板J2側に固着する場合には、金属ベース板J2における配線基板J1を固着する面が凹状になっていると、封止成型時の樹脂圧により配線基板J1が金属ベース板J2に沿うように変形する。
【0011】
すると、この配線基板J1の変形により、トリミング部20に沿った引っ張り力が配線基板J1の表面に発生し、トリミング部20に引っ張り力が集中して、そこを起点にクラックが発生し、基板割れとなる。
【0012】
また、この基板割れは、セラミック配線基板J1の変形により発生する引っ張り力がトリミング部20と平行する方向にて生じる場合に、発生するものである。たとえば、モールド樹脂J5は一般に約170℃の温度にて樹脂を軟化させた状態で、配線基板J1が配置された金型に注入し、冷却させて固体化させる。そのため、モールド樹脂J5の硬化収縮によっても基板割れは発生する場合がある。
【0013】
金属ベース板J2の熱膨張率は、たとえば11ppm/℃で、セラミック配線基板J1の熱膨張率はたとえば、7ppm/℃で、銅からなる金属ベース板J2の熱膨張率は約17ppm/℃である。
【0014】
このことから、熱収縮については、セラミック配線基板J1よりも金属ベース板J2およびモールド樹脂J5の方が大きくなる。そして、セラミック配線基板J1を中心として上下、左右の熱収縮率が異なると、セラミック配線基板J1は何れかの方向に変形することとなる。
【0015】
実際に、本発明者はセラミック配線基板J1の抗折強度試験を行い、上記したメカニズムを確かめた。図11(a)は、当該抗折強度の評価方法を示す図、(b)は、その評価結果を示す図である。なお、図11(b)には、後述する第1実施形態の評価結果も並記してある。
【0016】
抗折強度は、図11(a)に示されるように、2つの支点Hの上に評価するセラミック配線基板J1を置き、支点H間の中央部に荷重Fを加え、当該配線基板J1を変形させることで配線基板J1が破壊する強度を求めるものである。
【0017】
図11(b)は、積層基板としてのセラミック配線基板J1の抗折強度の一例を示したもので、基材11の総厚みが0.8mm、支点H間の距離が18mm、配線基板J1の長さ(図11(a)における紙面垂直方向の基板J1の長さ)が10mmの場合における抗折強度の結果である。
【0018】
図11(b)より、トリミング部20の無い配線基板J1の抗折強度は約320N/mm以上であるのに対して、トリミング部20に平行に配線基板J1を加圧する、つまり、トリミング部20に平行な引っ張り力が加わるように試験を行うと、抗折強度が約170N/mm以下に低下することがわかる。また、トリミング部20に交差するような引っ張り力が加わっても抗折強度は実質的に変わらないこともわかった。
【0019】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、一対の導体部の間を電気的に接続する厚膜抵抗体を有するセラミック配線基板において、厚膜抵抗体のトリミング部における抗折強度の低下を極力防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明は、厚膜抵抗体(14)におけるトリミング部(20)の直下では、当該トリミング部(20)と基材(11)との間に、厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部(17)が設けられていることを特徴とする。
【0021】
それによれば、トリミング部(20)を形成するべくトリミングを行うときに、トリミング部(20)の直下に絶縁部(17)が存在し、この絶縁部(17)がその下の基材(11)のバリアとなってトリミングによる基材(11)の損傷が防止されるため、厚膜抵抗体(14)のトリミングされた部位における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0022】
ここで、1個のトリミング部(20)に対して絶縁部(17)を複数個設け、複数個の絶縁部(17)を、1個のトリミング部(20)の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されたものとし、複数個の絶縁部(17)の配列方向における個々の絶縁部(17)の幅(d1)の大きさを、個々の絶縁部(17)の間隔(d2)よりも大きいものとすることが好ましい(後述の図2参照)。
【0023】
このようにすれば、1個のトリミング部(20)に対して絶縁部(17)を複数個設けた場合にも、抗折強度の低下への影響を抑制できる。
【0024】
さらに、この場合、複数個の絶縁部(17)が、基材(11)の一面(11a)上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部(17)上に厚膜抵抗体(14)が設けられているものであってもよい。
【0025】
基材(11)の一面(11a)上に突出する絶縁部(17)の上に、厚膜抵抗体(14)を設けた場合、厚膜抵抗体(14)の厚さが、絶縁部(17)上の部位では薄くなりがちとなるが、絶縁部(17)を断続的に配列された複数個のものとすることで、その影響を小さくできる。
【0026】
また、絶縁部(17)を、厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層(17a、17b)が積層されてなるものとし、複数の層(17a、17b)において、基材(11)側に位置するものよりも厚膜抵抗体(14)側に位置するものの方がサイズが小さいものとして、絶縁部(17)の端部を階段状とすることにより、厚膜抵抗体(14)のうち絶縁部(17)の端部を被覆する部位の表面形状が、テーパ状とされているものであってもよい(後述の図6参照)。
【0027】
それによれば、絶縁部(17)を厚くした場合であっても、厚膜抵抗体(14)のうち前記絶縁部(17)の端部を被覆する部位を、テーパ面とすることで、当該部位の段差を緩やかにできる。
【0028】
また、厚膜抵抗体(14)のうち一対の導体部(13)の間にて、トリミング部(20)を複数個設け、絶縁部(17)を、個々のトリミング部(20)に対応して設けるとともに、1つのトリミング部(20)に対応する絶縁部(17)を、当該1つのトリミング部(20)以外のトリミング部(20)に対応する絶縁部(17)とは離れて設けてもよい(後述の図3参照)。
【0029】
このように、トリミング部(20)が複数個ある場合、それぞれのトリミング部(20)に対して、独立に絶縁部(17)を設けてもよい。
【0030】
また、厚膜抵抗体(14)のうち一対の導体部(13)の間にて、トリミング部(20)を複数個設けた場合、絶縁部(17)を、それぞれのトリミング部(20)の直下に位置するように、厚膜抵抗体(14)と基材(11)との間に連続して設けられた1個のものよりなるものとしてもよい(後述の図4参照)。
【0031】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0033】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るセラミック配線基板S1を示す概略断面図であり、図1(b)は同セラミック配線基板S1におけるトリミング部20の拡大断面図、図1(c)は(b)の下視平面図である。なお、図1(c)および以下の各実施形態における平面図では、後述する保護ガラス15、保護樹脂16は省略してある。
【0034】
このセラミック積層配線基板S1は、セラミックのグリーンシートを焼成してなる基材としてのセラミック層11を、複数層積層したものである。各セラミック層11は、アルミナなどを用いて一般的なドクターブレード法により作製されるものであり、本例ではアルミナシートである。
【0035】
図1に示される例では、セラミック層11は3層であるが、このセラミック層11の数は特に限定されるものではない。たとえば、セラミック層11は、3〜8層程度の範囲で任意に複数層を積層することができる。また、各セラミック層11の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0036】
また、それぞれのセラミック層11には、この種の一般的なセラミック配線基板と同じように、モリブデンなどを主成分とする導体材料が充填されたスルーホール12が形成されるとともに、タングステンなどを主成分とする導体材料によって導体部13が形成されている。
【0037】
ここで、図1(a)において、セラミック配線基板S1の上面には、ICチップやコンデンサ素子、抵抗素子などの図示しない部品が実装されるものである。一方、セラミック配線基板S1の下面11aには、上記導体部13、厚膜抵抗体14、保護ガラス15、保護樹脂16が設けられている。
【0038】
これら部材13〜16は、当該セラミック配線基板S1の下面11aを構成する基材としての最下層のセラミック層11の一面11aに設けられている。導体部13は、当該セラミック層11の一面11a上に一対のものが設けられ、これら一対の導体部13を跨ぐように厚膜抵抗体14が設けられている。
【0039】
導体部13は、上述したようにタングステンやモリブデンなどの導体ペーストを印刷などにより塗布・硬化してなるものである。ここで、厚膜抵抗体14に接続されている導体部13の表面には、接続性を確保するために、無電解メッキなどによる図示しないCuメッキが施されている。
【0040】
厚膜抵抗体14は、一般的なSnO2系やLaB6系などの抵抗体材料よりなり、塗布・焼成などにより形成されるものである。そして、一対の導体部13は、この厚膜抵抗体14により電気的に接続されている。
【0041】
また、保護ガラス15は、上記した最下層のセラミック層11の一面11aにて、導体部13および厚膜抵抗体14を被覆している。さらに、保護樹脂16は、保護ガラス15を被覆している。
【0042】
これら保護ガラス15および保護樹脂16は一般的なものであり、これらにより、導体部13および厚膜抵抗体14が封止され外部から保護されている。たとえば、保護ガラス15としては、SiO2、B2O3、Al2O3などの複数無機系酸化物が挙げられ、保護樹脂16としてはエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0043】
さらに、本実施形態では、図1に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれた部分20となっている。この厚膜抵抗体14の切り欠き部分20はトリミング部20であり、厚膜抵抗体14の抵抗値の調整のために形成されたものである。ここでは、トリミング部20には保護樹脂16が充填されている。
【0044】
そして、このトリミング部20においては、図1(b)に示されるように、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下では、トリミング部20と上記最下層のセラミック層11との間に、絶縁部17が設けられている。
【0045】
この絶縁部17は、基材である最下層のセラミック層11とは異なる材料であって、厚膜抵抗体14よりも電気抵抗の高い材料すなわち厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる。
【0046】
具体的には、厚膜抵抗体14を構成する導電性成分、たとえばSnO2やLaB6が0〜50wt%であり、残部がアルミナやシリカなどのセラミックなどよりなる電気絶縁性ペースト材料を、塗布し、硬化させてなるものである。なお、上記の残部成分としては、耐熱性の高い樹脂、たとえばエポキシ樹脂なども可能である。
【0047】
ここで、トリミング部20の幅W20の大きさを1とした場合、絶縁部17の幅W17は2以上であるものにできる。また、絶縁部17の厚さは、5μm以上であることが望ましく、好ましくは、5μm以上15μm以下である。ここでは、絶縁部17は、基材であるセラミック層11の一面11a上に突出して設けられているが、絶縁部17の厚さは、導体部13の厚さと同程度としている(図1(b)参照)。
【0048】
次に、図1に示されるセラミック配線基板S1の製造方法について述べる。なお、本製造方法は、一般的なアルミナよりなるグリーンシートを用いたアルミナ積層配線基板を基本としたものである。そのため、後述する加圧・焼成条件などは、これに準ずるものであるが、もちろん、これらの条件に限定されるものではない。
【0049】
まず、ドクターブレード法により作製された各グリーンシートとしてのセラミック層11を用意し、各セラミック層11に対して、上記スルーホール12となる穴を、金型などを用いて形成する。
【0050】
次に、各セラミック層11に対して、印刷法などにより上記穴内に導体材料を充填する。その後に、印刷法などにより、各セラミック層11の表面に、上記導体部13のパターンにて導体材料を塗布する。なお、上記穴内の導体材料は、スルーホール12として構成され、セラミック層11の表面の導体材料は、セラミック配線基板S1の内部および表面において各セラミック層11に設けられた導体部13として構成される。
【0051】
続いて、各セラミック層11を、上記図1(a)に示されるように積層し、これらを加圧して積層体を形成する。ここにおいて、加圧条件は、たとえば30kg〜70kg程度の荷重とすることができる。次に、当該積層体を焼成する。この焼成は、たとえば水素などの還元雰囲気にて約1600℃の温度で行う。
【0052】
次に、図1(a)におけるセラミック配線基板S1の上面および下面11aの導体部13の表面に無電界メッキにより上記Cuメッキを形成する。次に、最下層のセラミック層11の一面11aのうちトリミングが行われる部位に、絶縁部17を形成する。この絶縁部17は、上述した絶縁性ペースト材料を、印刷法などにより塗布した後、これを硬化させて形成する。
【0053】
その後、厚膜抵抗体14となるペースト材料を、印刷法を用いて塗布し、たとえば約900℃の雰囲気下にて焼成することにより、厚膜抵抗体14を形成する。次に、保護ガラス15を厚膜抵抗体14と同様にして形成する。
【0054】
この後で、厚膜抵抗体14の抵抗値の調整のために、厚膜抵抗体14にトリミングを行う。このトリミングは、一般的な方法と同様なものであり、たとえば炭酸ガス(CO2)レーザやYAGなどのレーザを照射して、厚膜抵抗体14の一部を気化、焼失させることにより行う。
【0055】
これにより、厚膜抵抗体14には、当該厚膜抵抗体14の端部から内部へ向かって所定長さを有するトリミング部20が形成される(図1参照)。このとき、トリミング部20の直下に位置する絶縁部17も一部トリミングされる結果、図1(b)に示されるように、絶縁部17には凹みが形成される。
【0056】
次に、上記セラミック層11の一面11a上にて、トリミング部20を含む厚膜抵抗体14および導体部13を覆うように、保護樹脂16を、印刷法を用いて塗布する。その後、これを、たとえば約150℃の雰囲気下にて硬化させることで、保護樹脂16ができあがる。
【0057】
その後は、必要に応じて、セラミック配線基板S1における厚膜抵抗体14とは反対側の面に、ICチップやコンデンサなどの実装部品を搭載する。さらに、ここまでの工程は、通常ウェハ状態で行われるものであり、最終的にはウェハに設けられた分割溝を介して分割することにより、個片化された複数の配線基板S1を形成する。
【0058】
こうして、上記図1に示される本実施形態のセラミック配線基板S1ができあがる。なお、このセラミック配線基板S1は、たとえば、上記図10に示したようなモールドパッケージに組み込まれて使用される。
【0059】
ところで、本実施形態によれば、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下にて、トリミング部20とセラミック層11との間に絶縁部17を設けているため、トリミングを行うときに、絶縁部17がその下のセラミック層11のバリアとなってレーザによるセラミック層11の損傷が防止される。そのため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0060】
本実施形態による抗折強度低下の具体的な防止効果は、上記図11(b)中に示してある。本実施形態のセラミック配線基板S1について、上記図11と同様の評価を行った結果を、図11(b)の一番右側のプロットとして示してある。本実施形態によれば、トリミングしない場合と同等の抗折強度を維持できることが確認された。
【0061】
なお、上記したように絶縁部17の厚さは、5μm以上15μm以下が好ましいが、絶縁部17の厚さ5μmは、厚膜抵抗体14を完全に切断し、かつ、基材としてのセラミック層11に損傷を与えないために必要な厚さである。もちろん場合によっては、絶縁部17の厚さは5μm未満でもよく、5μm以上に限定するものではない。
【0062】
また、厚膜抵抗体14を安定して印刷するためには、絶縁部17を15μm以下とするのが望ましい。当該厚さが15μmより厚くなると、絶縁部17の端部にて厚膜抵抗体14が薄くなったり、ピンホールが発生したりする場合があるからである。
【0063】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図である。本実施形態のセラミック配線基板は、この図2に示される部分以外は、上記第1実施形態と同様のものであるため、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0064】
上記第1実施形態では、1個のトリミング部20に対して1個の絶縁部17が設けられていたが、本実施形態では、図2に示されるように、1個のトリミング部20に対して絶縁部17が複数個設けられている。図2では、絶縁部17は4個設けられている。なお、図2(b)中の破線は、トリミング前の厚膜抵抗体14の外形線である。
【0065】
ここで、複数個の絶縁部17は、1個のトリミング部20の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されている。つまり、各絶縁部17は、トリミングの方向に沿って互いに接触することなく、離間して配置されている。
【0066】
なお、トリミングの方向とは、一般的なものと同様であり、厚膜抵抗体14のある部分を起点として厚膜抵抗体14をトリミングしていく方向である。図2(a)では、図中の一点鎖線A−Aに平行な方向、つまりトリミング部20の長手方向が、トリミングの方向に相当する。
【0067】
そして、図2(b)に示されるように、複数個の絶縁部17の配列方向(つまり上記トリミングの方向)における個々の絶縁部17の幅d1の大きさを、個々の絶縁部17の間隔d2よりも大きいものとしている。
【0068】
このような幅d1、d2の関係にすれば、1個のトリミング部20に対して絶縁部17を複数個設けた場合にも、上記した抗折強度の低下への影響を抑制できる。たとえば、個々の絶縁部17の間隔d2は0.2mm以下が望ましく、絶縁部17の幅d1の大きさを、この個々の絶縁部17の間隔d2の2倍以上とする。
【0069】
また、図2(b)に示されるように、複数個の絶縁部17は、基材である上記最下層のセラミック層11の一面11a上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部17上に厚膜抵抗体14が設けられている。
【0070】
セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17の上に、厚膜抵抗体14を設けた場合、厚膜抵抗体14の厚さが、絶縁部17上の部位では当絶縁部17の厚さの分、薄くなりがちとなる。
【0071】
そこで、この場合に、セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17を断続的に配列された複数個のものとすれば、絶縁部17が存在しない部位では厚膜抵抗体14の厚さを大きくでき、厚膜抵抗体14の全体で、厚さを確保しやすくできる。
【0072】
また、厚膜抵抗体14の抵抗値の変動は、トリミング部20の長さ(つまり、トリミングの方向でのトリミング部20の長さ)で決まるが、厚膜抵抗体14が厚いほど、トリミングしたときの単位長さ当たりの抵抗値変動が大きくなる。
【0073】
その点、セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17を、図2に示されるように、断続的に配列された複数個のものとすれば、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17上に位置する部位は薄いものとなって、トリミングによる抵抗値変動が小さいため、トリミングの微調整に適した部分となる。
【0074】
一方、それに比べて、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17の間の部分上に位置する部位は厚いものとなって、トリミングによる抵抗値変動が大きいため、トリミングの粗調整に適した部分となる。つまり、本実施形態の場合、トリミングによる抵抗値変動の微調整とラフな調整とが両方できるようになり、抵抗値変動を調整しやすくなる。
【0075】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略平面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0076】
上記第1実施形態では、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20は1個設けられていたが、本実施形態では、図3に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20を複数個設けている。図3では、2個のトリミング部20を設けている。
【0077】
そして、絶縁部17を、個々のトリミング部20に対応して設けている。つまり、ある1つのトリミング部20に対応する絶縁部17は、当該ある1つのトリミング部20以外のトリミング部20に対応する絶縁部17とは離れて設けられている。
【0078】
本実施形態においてもトリミングを行うときに、トリミング部20の直下の絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止されるため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態においては、個々のトリミング部20に対応する絶縁部17を、上記図2に示したような断続的に配列された複数個の絶縁部17として構成してもよい。この場合には、上記第2実施形態に示したものと同様の効果が、本実施形態においても期待される。
【0080】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略平面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0081】
上記第1実施形態とは異なり、本実施形態においても、図4に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20を複数個設けている。ここで、本実施形態では、上記図3とは異なり、絶縁部17を、個々のトリミング部20に対応して設けるのではなく、個々のトリミング部20のすべてに共通する1個の絶縁部17を設けている。
【0082】
このように、本実施形態の絶縁部17は、それぞれのトリミング部20の直下に位置するように、厚膜抵抗体14とセラミック層11との間に連続して設けられた1個のものよりなる。
【0083】
そして、本実施形態においてもトリミングを行うときに、絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止され、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0084】
また、図5は、上記図1(c)や図3のように、厚膜抵抗体14の直下に部分的に絶縁部17を形成したときのトリミング部20を示す概略断面図である。この場合、絶縁部17を厚くする、たとえば、絶縁部17を導体部13よりも厚くすると、図5に示されるように、厚膜抵抗体14に大きな段差Kが生じ、熱ストレス環境下において、抵抗値が変動する恐れがある。
【0085】
それに対して、上記図4に示されるように、絶縁部17を広く形成すれば、好ましくは、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間の部位全体の直下に、絶縁部17を形成すれば、厚膜抵抗体14において上記段差Kが生じにくくなる。
【0086】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図である。本実施形態は、上記した各実施形態に適用可能であって、上記各実施形態において、後述するように、絶縁部17を積層構造とした点が相違するものである。以下、この相違点を中心に述べることとする。
【0087】
上記図5に示される絶縁部17による厚膜抵抗体14の段差Kを小さくするには、本実施形態が有効である。すなわち、本実施形態では、図6に示されるように、絶縁部17は、厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層17a、17bを積層してなるものである。
【0088】
それとともに、複数の層17a、17bにおいては、セラミック層11側に位置する第1の層17aよりも厚膜抵抗体14側に位置する第2の層17bの方が、サイズが小さいものとしており、そうすることで、絶縁部17の端部を階段状としている。
【0089】
具体的には、第1の層17aと第2の層17bは、互いに相似形状である矩形板状の層であり、第2の層17bの方が平面サイズが小さく、平面的に見たとき、第2の層17bは第1の層17aの領域内に収まった配置となっている。
【0090】
これにより、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17の端部を被覆する部位の表面形状は、絶縁部17の端部の階段形状を承継し、テーパ形状状とされている。つまり、図6に示されるように、本実施形態の厚膜抵抗体14の段差Kは、上記図5における段差Kに比べて、なだらかなテーパ形状となっている。
【0091】
本実施形態によれば、上記各実施形態において、絶縁部17を厚くした場合であっても、厚膜抵抗体14の上記段差Kを緩やかなものにできる。その結果、熱ストレス環境下における抵抗値変動を抑制することが可能となる。
【0092】
なお、本実施形態の図6では、絶縁部17は、2層の層17a、17bを積層してなるものであったが、絶縁部17の端部を階段状とするものならば、絶縁部17は3層以上の積層構造であってもよい。たとえば、3層以上の積層構成の場合には、図示しないが、当該3層を、セラミック層11側から厚膜抵抗体14側へ行くほど、平面サイズの小さいものとして構成すれば、上記階段状の端部が形成される。
【0093】
また、上述したように、本実施形態は上記各実施形態に適用されるが、たとえば、上記図2や図3のように、1個の厚膜抵抗体14について複数個の絶縁部17を設ける場合には、個々の絶縁部17に対して本実施形態の積層構成を適用すればよいし、上記図4にように、広い1個の絶縁部17である場合には、この1個の絶縁部17に対して本実施形態の積層構成を適用すればよい。
【0094】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0095】
図7に示されるように、本実施形態では、セラミック層11の一面11aに絶縁部17を形成した後、その上に導体部13、厚膜抵抗体14、保護ガラス15を順次形成し、さらに、トリミングを行ってトリミング部20を形成したものである。
【0096】
この場合、積層されたセラミック層11を焼成し、その上に絶縁部17を形成した後、厚膜抵抗体14用の導体部13を別途形成し、さらに厚膜抵抗体14、保護ガラス15を形成すればよい。
【0097】
本実施形態では、1枚の平坦な絶縁部17の上に導体部13および厚膜抵抗体14を形成するため、絶縁部17による段差が厚膜抵抗体14に影響を与えることがなくなり、厚膜抵抗体14の段差を極力小さいものにできる。そのため、上記同様、熱ストレス環境下における抵抗値変動を抑制することが可能となる。
【0098】
(第7実施形態)
図8(a)および(b)は、本発明の第7実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示すものである。
【0099】
上記した各実施形態では、上記各断面図に示したように、絶縁部17は、基材である上記最下層のセラミック層11の一面11a上に突出して設けられていた。それに対して、本実施形態では、絶縁部17は、当該セラミック層11の一面11aの下すなわち当該セラミック層11の内部に埋め込まれた形で設けられている。
【0100】
この場合は、セラミック層11を焼成する前に、当該セラミック層11に対して、プレスやエッチングなどにより凹み部を形成しておき、その凹み部に絶縁部17を充填・形成すればよい。
【0101】
なお、図8(a)に示される第1の例は、たとえば上記図1〜図3に示されるような部分的な平面配置を有する絶縁部17に対して、本実施形態を適用したものであり、図8(b)に示される第2の例は、たとえば上記図4に示されるような広い平面配置を有する絶縁部17に対して、本実施形態を適用したものである。
【0102】
本実施形態によっても、トリミングを行うときに、トリミング部20の直下の絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止されるため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。また、本実施形態は、上記第2実施形態に示したような断続的な配置についても適用できる。
【0103】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、セラミック配線基板は、複数のセラミック層11が積層されてなる積層基板であったが、これに限定するものではなく、セラミック配線基板は1つのセラミック層よりなる単層基板でもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、絶縁部17は、導体部13を形成したセラミック層11を焼成した後に、セラミック層11の一面11aに配設されたが、当該セラミック層11を焼成する前に、絶縁部17をセラミック層11の一面11aに配設し、その後、セラミック層11の焼成を行い、当該焼成と同時に絶縁部17の硬化を行ってもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、導体部13、厚膜抵抗体14およびトリミング部20はセラミック配線基板の一面11aのみに設けられていたが、これら導体部、厚膜抵抗体およびトリミング部は、セラミック配線基板の1つの面だけでなく、2つ以上の面に設けられていてもよい。その場合、それぞれのトリミング部において上記各実施形態に示した絶縁部17の構成が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るセラミック配線基板を示す概略断面図であり、(b)は同セラミック配線基板におけるトリミング部の拡大断面図、(c)は(b)の下視平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A概略断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略平面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略平面図である。
【図5】厚膜抵抗体の直下に部分的に絶縁部を形成したときのトリミング部を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【図9】本発明者の試作品としてのセラミック配線基板を示す概略断面図である。
【図10】本発明者の試作したモールドパッケージを示す概略断面図である。
【図11】(a)は本発明者の行った抗折強度試験の評価方法を示す図、(b)はその評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
11…基材としてのセラミック層、11a…セラミック層の一面、13…導体部、
14…厚膜抵抗体、17…絶縁部、17a…絶縁部の第1の層、
17b…絶縁部の第2の層、20…トリミング部、d1…個々の絶縁部の幅、
d2…個々の絶縁部の間隔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の導体部の間を電気的に接続する厚膜抵抗体を有するセラミック配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のセラミック配線基板としては、セラミックよりなる基材の一面上に設けられた一対の導体部の間を、厚膜抵抗体で電気的に接続してなり、さらに、厚膜抵抗体のうち一対の導体部の間に位置する部位が切り欠かれるようにトリミングされたトリミング部とされているものが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0003】
トリミング部は、厚膜抵抗体の抵抗値を、より高精度なものとするために形成されるものであり、レーザ法やサンドブラスト法などを用いて厚膜抵抗体部の一部を気化、焼失あるいは、機械的に削ることで抵抗値の調整を行うものである。
【特許文献1】特開2000−138436号公報
【特許文献2】特開平5−267815号公報
【特許文献3】特開2001−339013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は上記した従来技術に基づいてセラミック配線基板を試作し、検討を行った。図9は、この本発明者が試作した試作品としてのセラミック配線基板J1を示す概略断面図である。
【0005】
基材11は、アルミナなどのセラミックが複数積層されたもの、もしくは単層のものであり、基材11の一面11a上に設けられた一対の導体部13の間は、厚膜抵抗体14で接続されている。そして、厚膜抵抗体14における導体部13の間に位置する部位は、切り欠かれたトリミング部20とされている。そして、これら厚膜抵抗体14および導体部13は、ガラスよりなる保護ガラス15や樹脂よりなる保護樹脂16により被覆され、保護されている。
【0006】
ここで、安定かつ高精度な抵抗値を得るためには、トリミング時に厚膜抵抗体14の膜を完全に切断する必要がある。このため、図9に示されるように、厚膜抵抗体14の下に位置する基材11の一部もトリミングされるのが通常である。
【0007】
また、近年、この種のセラミック配線基板は、銅や鉄などの金属ベース板上に接着剤により固着され、さらに、これらをエポキシ樹脂などのモールド樹脂にて封止するモールド構造に用いられることがある。
【0008】
図10は、本発明者の試作したモールドパッケージを示す概略断面図である。このモールドパッケージは、上記図9に示されるセラミック配線基板J1を金属ベース板J2上に接着剤J3を介して固着し、これらをリードフレームJ4とともにモールド樹脂J5にて封止した構造としている。
【0009】
そして、本発明者の検討によれば、このような構造においては、トリミング部20ではその直下の基材11も一部トリミングされているため、その部分を起点としてセラミック配線基板J1の割れが発生することが分かった。
【0010】
たとえば、図10に示されるように、セラミック配線基板J1にて、厚膜抵抗体14が形成された面を金属ベース板J2側に固着する場合には、金属ベース板J2における配線基板J1を固着する面が凹状になっていると、封止成型時の樹脂圧により配線基板J1が金属ベース板J2に沿うように変形する。
【0011】
すると、この配線基板J1の変形により、トリミング部20に沿った引っ張り力が配線基板J1の表面に発生し、トリミング部20に引っ張り力が集中して、そこを起点にクラックが発生し、基板割れとなる。
【0012】
また、この基板割れは、セラミック配線基板J1の変形により発生する引っ張り力がトリミング部20と平行する方向にて生じる場合に、発生するものである。たとえば、モールド樹脂J5は一般に約170℃の温度にて樹脂を軟化させた状態で、配線基板J1が配置された金型に注入し、冷却させて固体化させる。そのため、モールド樹脂J5の硬化収縮によっても基板割れは発生する場合がある。
【0013】
金属ベース板J2の熱膨張率は、たとえば11ppm/℃で、セラミック配線基板J1の熱膨張率はたとえば、7ppm/℃で、銅からなる金属ベース板J2の熱膨張率は約17ppm/℃である。
【0014】
このことから、熱収縮については、セラミック配線基板J1よりも金属ベース板J2およびモールド樹脂J5の方が大きくなる。そして、セラミック配線基板J1を中心として上下、左右の熱収縮率が異なると、セラミック配線基板J1は何れかの方向に変形することとなる。
【0015】
実際に、本発明者はセラミック配線基板J1の抗折強度試験を行い、上記したメカニズムを確かめた。図11(a)は、当該抗折強度の評価方法を示す図、(b)は、その評価結果を示す図である。なお、図11(b)には、後述する第1実施形態の評価結果も並記してある。
【0016】
抗折強度は、図11(a)に示されるように、2つの支点Hの上に評価するセラミック配線基板J1を置き、支点H間の中央部に荷重Fを加え、当該配線基板J1を変形させることで配線基板J1が破壊する強度を求めるものである。
【0017】
図11(b)は、積層基板としてのセラミック配線基板J1の抗折強度の一例を示したもので、基材11の総厚みが0.8mm、支点H間の距離が18mm、配線基板J1の長さ(図11(a)における紙面垂直方向の基板J1の長さ)が10mmの場合における抗折強度の結果である。
【0018】
図11(b)より、トリミング部20の無い配線基板J1の抗折強度は約320N/mm以上であるのに対して、トリミング部20に平行に配線基板J1を加圧する、つまり、トリミング部20に平行な引っ張り力が加わるように試験を行うと、抗折強度が約170N/mm以下に低下することがわかる。また、トリミング部20に交差するような引っ張り力が加わっても抗折強度は実質的に変わらないこともわかった。
【0019】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、一対の導体部の間を電気的に接続する厚膜抵抗体を有するセラミック配線基板において、厚膜抵抗体のトリミング部における抗折強度の低下を極力防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明は、厚膜抵抗体(14)におけるトリミング部(20)の直下では、当該トリミング部(20)と基材(11)との間に、厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部(17)が設けられていることを特徴とする。
【0021】
それによれば、トリミング部(20)を形成するべくトリミングを行うときに、トリミング部(20)の直下に絶縁部(17)が存在し、この絶縁部(17)がその下の基材(11)のバリアとなってトリミングによる基材(11)の損傷が防止されるため、厚膜抵抗体(14)のトリミングされた部位における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0022】
ここで、1個のトリミング部(20)に対して絶縁部(17)を複数個設け、複数個の絶縁部(17)を、1個のトリミング部(20)の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されたものとし、複数個の絶縁部(17)の配列方向における個々の絶縁部(17)の幅(d1)の大きさを、個々の絶縁部(17)の間隔(d2)よりも大きいものとすることが好ましい(後述の図2参照)。
【0023】
このようにすれば、1個のトリミング部(20)に対して絶縁部(17)を複数個設けた場合にも、抗折強度の低下への影響を抑制できる。
【0024】
さらに、この場合、複数個の絶縁部(17)が、基材(11)の一面(11a)上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部(17)上に厚膜抵抗体(14)が設けられているものであってもよい。
【0025】
基材(11)の一面(11a)上に突出する絶縁部(17)の上に、厚膜抵抗体(14)を設けた場合、厚膜抵抗体(14)の厚さが、絶縁部(17)上の部位では薄くなりがちとなるが、絶縁部(17)を断続的に配列された複数個のものとすることで、その影響を小さくできる。
【0026】
また、絶縁部(17)を、厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層(17a、17b)が積層されてなるものとし、複数の層(17a、17b)において、基材(11)側に位置するものよりも厚膜抵抗体(14)側に位置するものの方がサイズが小さいものとして、絶縁部(17)の端部を階段状とすることにより、厚膜抵抗体(14)のうち絶縁部(17)の端部を被覆する部位の表面形状が、テーパ状とされているものであってもよい(後述の図6参照)。
【0027】
それによれば、絶縁部(17)を厚くした場合であっても、厚膜抵抗体(14)のうち前記絶縁部(17)の端部を被覆する部位を、テーパ面とすることで、当該部位の段差を緩やかにできる。
【0028】
また、厚膜抵抗体(14)のうち一対の導体部(13)の間にて、トリミング部(20)を複数個設け、絶縁部(17)を、個々のトリミング部(20)に対応して設けるとともに、1つのトリミング部(20)に対応する絶縁部(17)を、当該1つのトリミング部(20)以外のトリミング部(20)に対応する絶縁部(17)とは離れて設けてもよい(後述の図3参照)。
【0029】
このように、トリミング部(20)が複数個ある場合、それぞれのトリミング部(20)に対して、独立に絶縁部(17)を設けてもよい。
【0030】
また、厚膜抵抗体(14)のうち一対の導体部(13)の間にて、トリミング部(20)を複数個設けた場合、絶縁部(17)を、それぞれのトリミング部(20)の直下に位置するように、厚膜抵抗体(14)と基材(11)との間に連続して設けられた1個のものよりなるものとしてもよい(後述の図4参照)。
【0031】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0033】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るセラミック配線基板S1を示す概略断面図であり、図1(b)は同セラミック配線基板S1におけるトリミング部20の拡大断面図、図1(c)は(b)の下視平面図である。なお、図1(c)および以下の各実施形態における平面図では、後述する保護ガラス15、保護樹脂16は省略してある。
【0034】
このセラミック積層配線基板S1は、セラミックのグリーンシートを焼成してなる基材としてのセラミック層11を、複数層積層したものである。各セラミック層11は、アルミナなどを用いて一般的なドクターブレード法により作製されるものであり、本例ではアルミナシートである。
【0035】
図1に示される例では、セラミック層11は3層であるが、このセラミック層11の数は特に限定されるものではない。たとえば、セラミック層11は、3〜8層程度の範囲で任意に複数層を積層することができる。また、各セラミック層11の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0036】
また、それぞれのセラミック層11には、この種の一般的なセラミック配線基板と同じように、モリブデンなどを主成分とする導体材料が充填されたスルーホール12が形成されるとともに、タングステンなどを主成分とする導体材料によって導体部13が形成されている。
【0037】
ここで、図1(a)において、セラミック配線基板S1の上面には、ICチップやコンデンサ素子、抵抗素子などの図示しない部品が実装されるものである。一方、セラミック配線基板S1の下面11aには、上記導体部13、厚膜抵抗体14、保護ガラス15、保護樹脂16が設けられている。
【0038】
これら部材13〜16は、当該セラミック配線基板S1の下面11aを構成する基材としての最下層のセラミック層11の一面11aに設けられている。導体部13は、当該セラミック層11の一面11a上に一対のものが設けられ、これら一対の導体部13を跨ぐように厚膜抵抗体14が設けられている。
【0039】
導体部13は、上述したようにタングステンやモリブデンなどの導体ペーストを印刷などにより塗布・硬化してなるものである。ここで、厚膜抵抗体14に接続されている導体部13の表面には、接続性を確保するために、無電解メッキなどによる図示しないCuメッキが施されている。
【0040】
厚膜抵抗体14は、一般的なSnO2系やLaB6系などの抵抗体材料よりなり、塗布・焼成などにより形成されるものである。そして、一対の導体部13は、この厚膜抵抗体14により電気的に接続されている。
【0041】
また、保護ガラス15は、上記した最下層のセラミック層11の一面11aにて、導体部13および厚膜抵抗体14を被覆している。さらに、保護樹脂16は、保護ガラス15を被覆している。
【0042】
これら保護ガラス15および保護樹脂16は一般的なものであり、これらにより、導体部13および厚膜抵抗体14が封止され外部から保護されている。たとえば、保護ガラス15としては、SiO2、B2O3、Al2O3などの複数無機系酸化物が挙げられ、保護樹脂16としてはエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0043】
さらに、本実施形態では、図1に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれた部分20となっている。この厚膜抵抗体14の切り欠き部分20はトリミング部20であり、厚膜抵抗体14の抵抗値の調整のために形成されたものである。ここでは、トリミング部20には保護樹脂16が充填されている。
【0044】
そして、このトリミング部20においては、図1(b)に示されるように、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下では、トリミング部20と上記最下層のセラミック層11との間に、絶縁部17が設けられている。
【0045】
この絶縁部17は、基材である最下層のセラミック層11とは異なる材料であって、厚膜抵抗体14よりも電気抵抗の高い材料すなわち厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる。
【0046】
具体的には、厚膜抵抗体14を構成する導電性成分、たとえばSnO2やLaB6が0〜50wt%であり、残部がアルミナやシリカなどのセラミックなどよりなる電気絶縁性ペースト材料を、塗布し、硬化させてなるものである。なお、上記の残部成分としては、耐熱性の高い樹脂、たとえばエポキシ樹脂なども可能である。
【0047】
ここで、トリミング部20の幅W20の大きさを1とした場合、絶縁部17の幅W17は2以上であるものにできる。また、絶縁部17の厚さは、5μm以上であることが望ましく、好ましくは、5μm以上15μm以下である。ここでは、絶縁部17は、基材であるセラミック層11の一面11a上に突出して設けられているが、絶縁部17の厚さは、導体部13の厚さと同程度としている(図1(b)参照)。
【0048】
次に、図1に示されるセラミック配線基板S1の製造方法について述べる。なお、本製造方法は、一般的なアルミナよりなるグリーンシートを用いたアルミナ積層配線基板を基本としたものである。そのため、後述する加圧・焼成条件などは、これに準ずるものであるが、もちろん、これらの条件に限定されるものではない。
【0049】
まず、ドクターブレード法により作製された各グリーンシートとしてのセラミック層11を用意し、各セラミック層11に対して、上記スルーホール12となる穴を、金型などを用いて形成する。
【0050】
次に、各セラミック層11に対して、印刷法などにより上記穴内に導体材料を充填する。その後に、印刷法などにより、各セラミック層11の表面に、上記導体部13のパターンにて導体材料を塗布する。なお、上記穴内の導体材料は、スルーホール12として構成され、セラミック層11の表面の導体材料は、セラミック配線基板S1の内部および表面において各セラミック層11に設けられた導体部13として構成される。
【0051】
続いて、各セラミック層11を、上記図1(a)に示されるように積層し、これらを加圧して積層体を形成する。ここにおいて、加圧条件は、たとえば30kg〜70kg程度の荷重とすることができる。次に、当該積層体を焼成する。この焼成は、たとえば水素などの還元雰囲気にて約1600℃の温度で行う。
【0052】
次に、図1(a)におけるセラミック配線基板S1の上面および下面11aの導体部13の表面に無電界メッキにより上記Cuメッキを形成する。次に、最下層のセラミック層11の一面11aのうちトリミングが行われる部位に、絶縁部17を形成する。この絶縁部17は、上述した絶縁性ペースト材料を、印刷法などにより塗布した後、これを硬化させて形成する。
【0053】
その後、厚膜抵抗体14となるペースト材料を、印刷法を用いて塗布し、たとえば約900℃の雰囲気下にて焼成することにより、厚膜抵抗体14を形成する。次に、保護ガラス15を厚膜抵抗体14と同様にして形成する。
【0054】
この後で、厚膜抵抗体14の抵抗値の調整のために、厚膜抵抗体14にトリミングを行う。このトリミングは、一般的な方法と同様なものであり、たとえば炭酸ガス(CO2)レーザやYAGなどのレーザを照射して、厚膜抵抗体14の一部を気化、焼失させることにより行う。
【0055】
これにより、厚膜抵抗体14には、当該厚膜抵抗体14の端部から内部へ向かって所定長さを有するトリミング部20が形成される(図1参照)。このとき、トリミング部20の直下に位置する絶縁部17も一部トリミングされる結果、図1(b)に示されるように、絶縁部17には凹みが形成される。
【0056】
次に、上記セラミック層11の一面11a上にて、トリミング部20を含む厚膜抵抗体14および導体部13を覆うように、保護樹脂16を、印刷法を用いて塗布する。その後、これを、たとえば約150℃の雰囲気下にて硬化させることで、保護樹脂16ができあがる。
【0057】
その後は、必要に応じて、セラミック配線基板S1における厚膜抵抗体14とは反対側の面に、ICチップやコンデンサなどの実装部品を搭載する。さらに、ここまでの工程は、通常ウェハ状態で行われるものであり、最終的にはウェハに設けられた分割溝を介して分割することにより、個片化された複数の配線基板S1を形成する。
【0058】
こうして、上記図1に示される本実施形態のセラミック配線基板S1ができあがる。なお、このセラミック配線基板S1は、たとえば、上記図10に示したようなモールドパッケージに組み込まれて使用される。
【0059】
ところで、本実施形態によれば、厚膜抵抗体14におけるトリミング部20の直下にて、トリミング部20とセラミック層11との間に絶縁部17を設けているため、トリミングを行うときに、絶縁部17がその下のセラミック層11のバリアとなってレーザによるセラミック層11の損傷が防止される。そのため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0060】
本実施形態による抗折強度低下の具体的な防止効果は、上記図11(b)中に示してある。本実施形態のセラミック配線基板S1について、上記図11と同様の評価を行った結果を、図11(b)の一番右側のプロットとして示してある。本実施形態によれば、トリミングしない場合と同等の抗折強度を維持できることが確認された。
【0061】
なお、上記したように絶縁部17の厚さは、5μm以上15μm以下が好ましいが、絶縁部17の厚さ5μmは、厚膜抵抗体14を完全に切断し、かつ、基材としてのセラミック層11に損傷を与えないために必要な厚さである。もちろん場合によっては、絶縁部17の厚さは5μm未満でもよく、5μm以上に限定するものではない。
【0062】
また、厚膜抵抗体14を安定して印刷するためには、絶縁部17を15μm以下とするのが望ましい。当該厚さが15μmより厚くなると、絶縁部17の端部にて厚膜抵抗体14が薄くなったり、ピンホールが発生したりする場合があるからである。
【0063】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図である。本実施形態のセラミック配線基板は、この図2に示される部分以外は、上記第1実施形態と同様のものであるため、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0064】
上記第1実施形態では、1個のトリミング部20に対して1個の絶縁部17が設けられていたが、本実施形態では、図2に示されるように、1個のトリミング部20に対して絶縁部17が複数個設けられている。図2では、絶縁部17は4個設けられている。なお、図2(b)中の破線は、トリミング前の厚膜抵抗体14の外形線である。
【0065】
ここで、複数個の絶縁部17は、1個のトリミング部20の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されている。つまり、各絶縁部17は、トリミングの方向に沿って互いに接触することなく、離間して配置されている。
【0066】
なお、トリミングの方向とは、一般的なものと同様であり、厚膜抵抗体14のある部分を起点として厚膜抵抗体14をトリミングしていく方向である。図2(a)では、図中の一点鎖線A−Aに平行な方向、つまりトリミング部20の長手方向が、トリミングの方向に相当する。
【0067】
そして、図2(b)に示されるように、複数個の絶縁部17の配列方向(つまり上記トリミングの方向)における個々の絶縁部17の幅d1の大きさを、個々の絶縁部17の間隔d2よりも大きいものとしている。
【0068】
このような幅d1、d2の関係にすれば、1個のトリミング部20に対して絶縁部17を複数個設けた場合にも、上記した抗折強度の低下への影響を抑制できる。たとえば、個々の絶縁部17の間隔d2は0.2mm以下が望ましく、絶縁部17の幅d1の大きさを、この個々の絶縁部17の間隔d2の2倍以上とする。
【0069】
また、図2(b)に示されるように、複数個の絶縁部17は、基材である上記最下層のセラミック層11の一面11a上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部17上に厚膜抵抗体14が設けられている。
【0070】
セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17の上に、厚膜抵抗体14を設けた場合、厚膜抵抗体14の厚さが、絶縁部17上の部位では当絶縁部17の厚さの分、薄くなりがちとなる。
【0071】
そこで、この場合に、セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17を断続的に配列された複数個のものとすれば、絶縁部17が存在しない部位では厚膜抵抗体14の厚さを大きくでき、厚膜抵抗体14の全体で、厚さを確保しやすくできる。
【0072】
また、厚膜抵抗体14の抵抗値の変動は、トリミング部20の長さ(つまり、トリミングの方向でのトリミング部20の長さ)で決まるが、厚膜抵抗体14が厚いほど、トリミングしたときの単位長さ当たりの抵抗値変動が大きくなる。
【0073】
その点、セラミック層11の一面11a上に突出する絶縁部17を、図2に示されるように、断続的に配列された複数個のものとすれば、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17上に位置する部位は薄いものとなって、トリミングによる抵抗値変動が小さいため、トリミングの微調整に適した部分となる。
【0074】
一方、それに比べて、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17の間の部分上に位置する部位は厚いものとなって、トリミングによる抵抗値変動が大きいため、トリミングの粗調整に適した部分となる。つまり、本実施形態の場合、トリミングによる抵抗値変動の微調整とラフな調整とが両方できるようになり、抵抗値変動を調整しやすくなる。
【0075】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略平面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0076】
上記第1実施形態では、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20は1個設けられていたが、本実施形態では、図3に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20を複数個設けている。図3では、2個のトリミング部20を設けている。
【0077】
そして、絶縁部17を、個々のトリミング部20に対応して設けている。つまり、ある1つのトリミング部20に対応する絶縁部17は、当該ある1つのトリミング部20以外のトリミング部20に対応する絶縁部17とは離れて設けられている。
【0078】
本実施形態においてもトリミングを行うときに、トリミング部20の直下の絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止されるため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0079】
なお、本実施形態においては、個々のトリミング部20に対応する絶縁部17を、上記図2に示したような断続的に配列された複数個の絶縁部17として構成してもよい。この場合には、上記第2実施形態に示したものと同様の効果が、本実施形態においても期待される。
【0080】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略平面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0081】
上記第1実施形態とは異なり、本実施形態においても、図4に示されるように、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間にて、トリミング部20を複数個設けている。ここで、本実施形態では、上記図3とは異なり、絶縁部17を、個々のトリミング部20に対応して設けるのではなく、個々のトリミング部20のすべてに共通する1個の絶縁部17を設けている。
【0082】
このように、本実施形態の絶縁部17は、それぞれのトリミング部20の直下に位置するように、厚膜抵抗体14とセラミック層11との間に連続して設けられた1個のものよりなる。
【0083】
そして、本実施形態においてもトリミングを行うときに、絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止され、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。
【0084】
また、図5は、上記図1(c)や図3のように、厚膜抵抗体14の直下に部分的に絶縁部17を形成したときのトリミング部20を示す概略断面図である。この場合、絶縁部17を厚くする、たとえば、絶縁部17を導体部13よりも厚くすると、図5に示されるように、厚膜抵抗体14に大きな段差Kが生じ、熱ストレス環境下において、抵抗値が変動する恐れがある。
【0085】
それに対して、上記図4に示されるように、絶縁部17を広く形成すれば、好ましくは、厚膜抵抗体14のうち一対の導体部13の間の部位全体の直下に、絶縁部17を形成すれば、厚膜抵抗体14において上記段差Kが生じにくくなる。
【0086】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図である。本実施形態は、上記した各実施形態に適用可能であって、上記各実施形態において、後述するように、絶縁部17を積層構造とした点が相違するものである。以下、この相違点を中心に述べることとする。
【0087】
上記図5に示される絶縁部17による厚膜抵抗体14の段差Kを小さくするには、本実施形態が有効である。すなわち、本実施形態では、図6に示されるように、絶縁部17は、厚膜抵抗体14よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層17a、17bを積層してなるものである。
【0088】
それとともに、複数の層17a、17bにおいては、セラミック層11側に位置する第1の層17aよりも厚膜抵抗体14側に位置する第2の層17bの方が、サイズが小さいものとしており、そうすることで、絶縁部17の端部を階段状としている。
【0089】
具体的には、第1の層17aと第2の層17bは、互いに相似形状である矩形板状の層であり、第2の層17bの方が平面サイズが小さく、平面的に見たとき、第2の層17bは第1の層17aの領域内に収まった配置となっている。
【0090】
これにより、厚膜抵抗体14のうち絶縁部17の端部を被覆する部位の表面形状は、絶縁部17の端部の階段形状を承継し、テーパ形状状とされている。つまり、図6に示されるように、本実施形態の厚膜抵抗体14の段差Kは、上記図5における段差Kに比べて、なだらかなテーパ形状となっている。
【0091】
本実施形態によれば、上記各実施形態において、絶縁部17を厚くした場合であっても、厚膜抵抗体14の上記段差Kを緩やかなものにできる。その結果、熱ストレス環境下における抵抗値変動を抑制することが可能となる。
【0092】
なお、本実施形態の図6では、絶縁部17は、2層の層17a、17bを積層してなるものであったが、絶縁部17の端部を階段状とするものならば、絶縁部17は3層以上の積層構造であってもよい。たとえば、3層以上の積層構成の場合には、図示しないが、当該3層を、セラミック層11側から厚膜抵抗体14側へ行くほど、平面サイズの小さいものとして構成すれば、上記階段状の端部が形成される。
【0093】
また、上述したように、本実施形態は上記各実施形態に適用されるが、たとえば、上記図2や図3のように、1個の厚膜抵抗体14について複数個の絶縁部17を設ける場合には、個々の絶縁部17に対して本実施形態の積層構成を適用すればよいし、上記図4にように、広い1個の絶縁部17である場合には、この1個の絶縁部17に対して本実施形態の積層構成を適用すればよい。
【0094】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0095】
図7に示されるように、本実施形態では、セラミック層11の一面11aに絶縁部17を形成した後、その上に導体部13、厚膜抵抗体14、保護ガラス15を順次形成し、さらに、トリミングを行ってトリミング部20を形成したものである。
【0096】
この場合、積層されたセラミック層11を焼成し、その上に絶縁部17を形成した後、厚膜抵抗体14用の導体部13を別途形成し、さらに厚膜抵抗体14、保護ガラス15を形成すればよい。
【0097】
本実施形態では、1枚の平坦な絶縁部17の上に導体部13および厚膜抵抗体14を形成するため、絶縁部17による段差が厚膜抵抗体14に影響を与えることがなくなり、厚膜抵抗体14の段差を極力小さいものにできる。そのため、上記同様、熱ストレス環境下における抵抗値変動を抑制することが可能となる。
【0098】
(第7実施形態)
図8(a)および(b)は、本発明の第7実施形態に係るセラミック配線基板の要部であるトリミング部20を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示すものである。
【0099】
上記した各実施形態では、上記各断面図に示したように、絶縁部17は、基材である上記最下層のセラミック層11の一面11a上に突出して設けられていた。それに対して、本実施形態では、絶縁部17は、当該セラミック層11の一面11aの下すなわち当該セラミック層11の内部に埋め込まれた形で設けられている。
【0100】
この場合は、セラミック層11を焼成する前に、当該セラミック層11に対して、プレスやエッチングなどにより凹み部を形成しておき、その凹み部に絶縁部17を充填・形成すればよい。
【0101】
なお、図8(a)に示される第1の例は、たとえば上記図1〜図3に示されるような部分的な平面配置を有する絶縁部17に対して、本実施形態を適用したものであり、図8(b)に示される第2の例は、たとえば上記図4に示されるような広い平面配置を有する絶縁部17に対して、本実施形態を適用したものである。
【0102】
本実施形態によっても、トリミングを行うときに、トリミング部20の直下の絶縁部17によって、トリミングによるセラミック層11の損傷が防止されるため、トリミング部20における抗折強度の低下を極力防止することができる。また、本実施形態は、上記第2実施形態に示したような断続的な配置についても適用できる。
【0103】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、セラミック配線基板は、複数のセラミック層11が積層されてなる積層基板であったが、これに限定するものではなく、セラミック配線基板は1つのセラミック層よりなる単層基板でもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、絶縁部17は、導体部13を形成したセラミック層11を焼成した後に、セラミック層11の一面11aに配設されたが、当該セラミック層11を焼成する前に、絶縁部17をセラミック層11の一面11aに配設し、その後、セラミック層11の焼成を行い、当該焼成と同時に絶縁部17の硬化を行ってもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、導体部13、厚膜抵抗体14およびトリミング部20はセラミック配線基板の一面11aのみに設けられていたが、これら導体部、厚膜抵抗体およびトリミング部は、セラミック配線基板の1つの面だけでなく、2つ以上の面に設けられていてもよい。その場合、それぞれのトリミング部において上記各実施形態に示した絶縁部17の構成が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るセラミック配線基板を示す概略断面図であり、(b)は同セラミック配線基板におけるトリミング部の拡大断面図、(c)は(b)の下視平面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A概略断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略平面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略平面図である。
【図5】厚膜抵抗体の直下に部分的に絶縁部を形成したときのトリミング部を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係るセラミック配線基板の要部を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【図9】本発明者の試作品としてのセラミック配線基板を示す概略断面図である。
【図10】本発明者の試作したモールドパッケージを示す概略断面図である。
【図11】(a)は本発明者の行った抗折強度試験の評価方法を示す図、(b)はその評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
11…基材としてのセラミック層、11a…セラミック層の一面、13…導体部、
14…厚膜抵抗体、17…絶縁部、17a…絶縁部の第1の層、
17b…絶縁部の第2の層、20…トリミング部、d1…個々の絶縁部の幅、
d2…個々の絶縁部の間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックよりなる基材(11)と、
前記基材(11)の一面(11a)上に設けられた一対の導体部(13)と、
前記基材(11)の一面(11a)上に設けられ前記一対の導体部(13)を電気的に接続する厚膜抵抗体(14)と、を備え、
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれたトリミング部(20)とされているセラミック配線基板において、
前記厚膜抵抗体(14)における前記トリミング部(20)の直下では、当該トリミング部(20)と前記基材(11)との間に、前記厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部(17)が設けられていることを特徴とするセラミック配線基板。
【請求項2】
1個の前記トリミング部(20)に対して前記絶縁部(17)は複数個設けられており、
当該複数個の絶縁部(17)は、前記1個のトリミング部(20)の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されたものであり、
前記複数個の絶縁部(17)の配列方向における個々の前記絶縁部(17)の幅(d1)の大きさが、個々の前記絶縁部(17)の間隔(d2)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板。
【請求項3】
前記複数個の絶縁部(17)は、前記基材(11)の一面(11a)上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部(17)上に前記厚膜抵抗体(14)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のセラミック配線基板。
【請求項4】
前記絶縁部(17)は前記厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層(17a、17b)が積層されてなるものであり、
前記複数の層(17a、17b)において、前記基材(11)側に位置するものよりも前記厚膜抵抗体(14)側に位置するものの方がサイズが小さいものとして、前記絶縁部(17)の端部を階段状とすることにより、
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記絶縁部(17)の端部を被覆する部位の表面形状が、テーパ状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセラミック配線基板。
【請求項5】
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間にて、前記トリミング部(20)は複数個設けられており、
前記絶縁部(17)は、個々の前記トリミング部(20)に対応して設けられ、
1つの前記トリミング部(20)に対応する前記絶縁部(17)は、当該1つのトリミング部(20)以外のトリミング部(20)に対応する前記絶縁部(17)とは離れて設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のセラミック配線基板。
【請求項6】
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間にて、前記トリミング部(20)は複数個設けられており、
前記絶縁部(17)は、それぞれの前記トリミング部(20)の直下に位置するように、前記厚膜抵抗体(14)と前記基材(11)との間に連続して設けられた1個のものよりなることを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板。
【請求項1】
セラミックよりなる基材(11)と、
前記基材(11)の一面(11a)上に設けられた一対の導体部(13)と、
前記基材(11)の一面(11a)上に設けられ前記一対の導体部(13)を電気的に接続する厚膜抵抗体(14)と、を備え、
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間に位置する部位が、トリミングされて切り欠かれたトリミング部(20)とされているセラミック配線基板において、
前記厚膜抵抗体(14)における前記トリミング部(20)の直下では、当該トリミング部(20)と前記基材(11)との間に、前記厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる絶縁部(17)が設けられていることを特徴とするセラミック配線基板。
【請求項2】
1個の前記トリミング部(20)に対して前記絶縁部(17)は複数個設けられており、
当該複数個の絶縁部(17)は、前記1個のトリミング部(20)の直下においてトリミングの方向に沿って断続的に配列されたものであり、
前記複数個の絶縁部(17)の配列方向における個々の前記絶縁部(17)の幅(d1)の大きさが、個々の前記絶縁部(17)の間隔(d2)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板。
【請求項3】
前記複数個の絶縁部(17)は、前記基材(11)の一面(11a)上に突出して設けられたものであり、これら複数個の絶縁部(17)上に前記厚膜抵抗体(14)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のセラミック配線基板。
【請求項4】
前記絶縁部(17)は前記厚膜抵抗体(14)よりも電気絶縁性の大きな材料よりなる複数の層(17a、17b)が積層されてなるものであり、
前記複数の層(17a、17b)において、前記基材(11)側に位置するものよりも前記厚膜抵抗体(14)側に位置するものの方がサイズが小さいものとして、前記絶縁部(17)の端部を階段状とすることにより、
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記絶縁部(17)の端部を被覆する部位の表面形状が、テーパ状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセラミック配線基板。
【請求項5】
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間にて、前記トリミング部(20)は複数個設けられており、
前記絶縁部(17)は、個々の前記トリミング部(20)に対応して設けられ、
1つの前記トリミング部(20)に対応する前記絶縁部(17)は、当該1つのトリミング部(20)以外のトリミング部(20)に対応する前記絶縁部(17)とは離れて設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のセラミック配線基板。
【請求項6】
前記厚膜抵抗体(14)のうち前記一対の導体部(13)の間にて、前記トリミング部(20)は複数個設けられており、
前記絶縁部(17)は、それぞれの前記トリミング部(20)の直下に位置するように、前記厚膜抵抗体(14)と前記基材(11)との間に連続して設けられた1個のものよりなることを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−16592(P2009−16592A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177052(P2007−177052)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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