説明

セルラーゼを細胞表層に保持する酵母及びその利用

【課題】酵母の細胞表層に保持したとき、他のセルラーゼと組み合わせて用いるのに好適なセルラーゼを見出し、これを利用する。
【解決手段】糖質分解酵素ファミリー5に属するセロビオヒドロラーゼCel 5F、同エンドグルカナーゼCel 5C、糖質分解酵素ファミリー8に属するエンドグルカナーゼCel 8A、糖質分解酵素ファミリー9に属するエンドグルカナーゼCel 9D、同エンドグルカナーゼCel 9R、同セロビオヒドロラーゼ Cel 9K及び同セロビオヒドロラーゼCbh Aからなる群から選択される1種又は2種以上のセルラーゼを細胞表層に保持する酵母又はその組み合わせを用いることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラーゼを細胞表層に保持する酵母及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の将来的な枯渇を考慮して、再生利用可能なバイオマス資源が注目されている。植物系バイオマスの基本成分であるセルロースは、複数種類のセルラーゼによる協同的又は段階的な反応によって分解される。効率的なセルロースの利用のためには、セルロースの分解に用いるセルラーゼの組み合わせの選択も重要であると考えられている。
【0003】
一方、酵母などの細胞表層に酵素などのタンパク質を提示させる技術が知られている。発酵能の高い酵母の表層にセルラーゼを提示して、バイオマス等に由来するセルロースを分解し、糖化する試みも行われている(非特許文献1)。この文献には、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のβ−グルコシダーゼI、エンドグルカナーゼII(GHファミリー5)及びセロビオヒドロラーゼII(GHファミリー6)から選択される酵素をいくつか組み合わせて表層提示したことが記載されている。また、エンドグルカナーゼとセロビオヒドロラーゼの双方を表層提示した酵母が、エンドグルカナーゼのみを提示した酵母よりも非晶性セルロースをよく分解したことが記載されている。
【0004】
また、クロストリジウム属菌など、細胞表層においてセルロソームと称されるセルラーゼ複合体におけるスキャホールディンタンパク質の構成要素とセルラーゼとの人工的なタンパク質複合体を構築する試みも行われている(非特許文献2,3)。これらの文献には、それぞれ大腸菌や枯草菌で遺伝子工学的に生産させた人工的なスキャホールディンタンパク質と人工的なキメラセルラーゼとを、in vitroで複合化して人工的タンパク質複合体を構築することが記載されている。また、かかる人工的タンパク質複合体で、セルロースを分解して組み合わせの効果を評価したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fujita, Y., et al., App 70(2)1207-1212(2004)
【非特許文献2】Fierobe, H. P., et al., J. Biol. Chem., 277(51), 49621-630(2002)
【非特許文献3】Fierobe, H. P., et al., J. Biol. Chem., 280(16), 16325-334(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1では、単に、周知事実であるところの、エンドグルカナーゼとセロビオヒドロラーゼとによれば、エンドグルカナーゼ単独よりもセルロースを効果的に分解できるということを、酵母の細胞表層に保持した状態に示したに過ぎない。また、非特許文献2、3は、複合体は大腸菌に生産させてin vitroで構築したタンパク質の複合体についての評価に過ぎない。したがって、その評価において好ましいセルラーゼの組み合わせが、酵母の表層に保持させたときの好ましいセルラーゼの組み合わせであるとは予測できない。酵母での発現や表層提示に際して、タンパク質の糖鎖修飾があり、その酵素活性が低下することが低くない確率で生じるからである。さらに、非特許文献2、3は、セルラーゼの一部、すなわち、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)由来のセルラーゼについての評価結果であり、他の微生物に由来するセルラーゼや他のセルラーゼに直ちに適用できるものでもない。
【0007】
そこで、本発明は、酵母の細胞表層に保持したとき、他のセルラーゼと組み合わせて用いるのに好適なセルラーゼを見出し、これを利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、酵母での発現及び表層での保持に適したセルラーゼを各種探索するとともに、他のセルラーゼと組み合わせることでセルロースの分解に相乗効果を呈する複数の酵素を見出した。本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
本発明によれば、糖質分解酵素ファミリー5に属するセロビオヒドロラーゼCel 5F、同エンドグルカナーゼCel 5C、糖質分解酵素ファミリー8に属するエンドグルカナーゼCel 8A、糖質分解酵素ファミリー9に属するエンドグルカナーゼCel 9D、同エンドグルカナーゼCel 9R、同セロビオヒドロラーゼ Cel 9K及び同セロビオヒドロラーゼCbh Aからなる群(以下、セルラーゼ群ともいう。)から選択される1種又は2種以上のセルラーゼを細胞表層に保持する酵母又はその組み合わせが提供される。
【0010】
本発明の酵母においては、前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、少なくともプロセッシブ型のセルラーゼを含む2種類以上であることが好ましい。また、前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、少なくとも、糖質分解酵素ファミリー9に属するセルラーゼを含む2種類以上であることが好ましい。さらに、前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、以下の表1の第1欄に示すセルラーゼと当該第1欄に対応する第2欄に記載のセルラーゼから選択される1種又は2種以上とを含むことが好ましく、また、以下の表2の第1欄に示すセルラーゼと当該第1欄に対応する第2欄に記載のセルラーゼから選択される1種又は2種以上とを含むことも好ましい。なお、本明細書におけるCel 9Dは後述するCAZyのGHFサーバー(http://www.cazy.org/fam/acc_GH.html)においてCel 9Aとも表記されている。また、本明細書におけるCbh Aは、CAZyにおいて、Cbh 9Aとも表記されている。
【0011】
【表1】

【0012】
【表2】

【0013】
本発明の酵母においては、前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、それぞれ以下の表3に記載の配列番号で表される塩基配列又はアミノ酸配列と以下の関係を有することが好ましい。
(a)表3に記載の各配列番号で表される塩基配列からなる遺伝子によってコードされるセルラーゼ
(b)表3に記載の各配列番号で表される塩基配列からなるDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子によってコードされ対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(c)表3に記載の各配列番号で表される塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされ対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(d)表3に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列を有するセルラーゼ
(e)表3に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(f)表3に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
【0014】
【表3】

【0015】
本発明の酵母又はその組み合わせ前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、クロストリジウム属(Clostridium)由来であることが好ましく、より好ましくは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)由来である。前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、セルロソーム生産微生物のスキャホールディンタンパク質由来のタンパク質を介して前記細胞表層に保持されていることも好ましく、より好ましくは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のスキャホールディンタンパク質由来である。さらに、前記スキャホールディンタンパク質由来のタンパク質は、タイプIスキャホールディンタンパク質由来であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の酵母又はその組み合わせは、β−グルコシダーゼを分泌生産する酵母を含むことが好ましい。
【0017】
本発明によれば、セルラーゼを用いてセルロースからセルロース分解産物を生産する方法であって、本発明の酵母又はその組み合わせを用いて、前記酵母又はその組み合わせが保持する2種以上の前記セルラーゼを用いてセルロースを分解する工程、を備える、生産方法が提供される。
【0018】
本発明によれば、セルロースから有用物質を生産する方法であって、本発明の酵母又はその組み合わせを用いて、前記酵母又はその組み合わせが保持する2種類以上の前記セルラーゼを用いてセルロースを分解して得られたセルロース分解産物を含む炭素源を利用して、前記酵母又は他の微生物により有用物質を生産する工程、を備える、生産方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例で用いる2μmベクターの構造を示す図である。
【図2】酵母の表層に保持した各種セルラーゼのCMC分解活性に基づく活性評価結果を示す図である。
【図3】実施例2で作製した酵母を単独及び2種類を組み合わせたときの、0.5%PSC分解活性に基づく活性評価結果を示す図である。
【図4】実施例2で作製した酵母を単独及び2種類を組み合わせたときの、1%アビセル分解活性に基づく活性評価結果を示す図である。
【図5】実施例5で作製した酵母(2種類のセルラーゼを同時発現)を用いたときの結晶性セルロース(商品名アビセル)の分解活性を示すグラフ図である。
【図6】実施例5で作製して最もセルロース分解活性の高い同時発現酵母を用いて結晶セルロースを含有する培地で発酵したときの培地中のエタノール濃度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、上記セルラーゼ群から選択される1種又は2種以上のセルラーゼを細胞表層に保持する酵母又はその組み合わせに関する。本発明の酵母又はその組み合わせは、酵母の細胞表層において保持されその活性を発現するのに好ましいセルラーゼを保持しており、効率よくセルロースを分解することができる。特に、これらのセルラーゼのなかでもプロセッシブ型のセルラーゼ及び/又は糖質分解酵素ファミリー9に属するセルラーゼを、他のセルラーゼと組み合わせて用いることで高いセルロース分解活性を得ることができる。
【0021】
セルロースを酵母等の表層に保持させたセルラーゼで分解する場合、そのセルラーゼの組み合わせは極めて重要である。多種類の酵素の発現は酵母の発酵能や増殖能を低下させるおそれがあり、あまりに多種類の酵素の使用はコスト的にも好ましくない。
【0022】
以下、本発明の酵母又はその組み合わせ及びその利用について詳細に説明する。なお、本明細書において、本発明の酵母の組み合わせとは、保持するセルラーゼの種類が異なる2種類以上の酵母の組み合わせ(混合物又はセット)を意味している。
【0023】
(セルラーゼ)
本発明の酵母が細胞表層に保持するセルラーゼは、糖質分解酵素ファミリー5に属するセロビオヒドロラーゼCel 5F、同エンドグルカナーゼCel 5C、糖質分解酵素ファミリー8に属するエンドグルカナーゼCel 8A、糖質分解酵素ファミリー9に属するエンドグルカナーゼCel 9D、同エンドグルカナーゼCel 9R、同セロビオヒドロラーゼ Cel 9K及び同セロビオヒドロラーゼCbh Aからなる群から選択される。
【0024】
これらのセルラーゼは、糖質関連酵素のアミノ酸配列及び触媒部位の立体構造等を解析することにより区分されたタンパク質構造的分類である糖質分解酵素ファミリー(GHF)サーバー(http://www.cazy.org/fam/acc_GH.html、Henrissat B (1991) A classification of glycosyl hydrolases based on amino-acid sequence similarities. Biochem. J. 280:309-316 )によって特徴付けられている。本発明において用いるセルラーゼは、セロビオヒドロラーゼ(国際生化学酵素委員会による分類に基づくEnzyme commission(EC)番号;EC 3.2.1.91)又はエンドグルカナーゼ(同;EC 3.2.1.4)であって、しかも、属するGHFにおいて同一酵素名(例えば、Cel 5F等の酵素名である。)が付与されているものあるいは今後同一の酵素名が付与されるものを含んでいる。
【0025】
なお、セルラーゼは、セルロース分子鎖を捉えたまま連続的に移動しながら加水分解反応を行う態様があることが知られており、このような分解態様をプロセッシブな分解と称されている。分解態様からは、セロビオヒドロラーゼ(CBH)と称されるセルラーゼは、プロセッシブ型セルラーゼであると考えられる。また、エンドグルカナーゼと称されるセルラーゼは、通常、非プロセッシブ型セルラーゼであると考えられるが、一部、プロセッシブ型(表4中のCel 9R(PEG))が知られている。
【0026】
本発明で用いるセルラーゼを、GHF、酵素名、酵素の種類とともに表4に示す。また、典型例として、実施例に開示するクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)に由来するセルラーゼの塩基配列及びアミノ酸配列も併せて示す。なお、これらの配列は、いずれもシグナルペプチドに対応するアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を包含している。シグナルペプチドは、例えば、公知のSignalP 2.0などの分泌シグナル配列予測プログラムよって予測することができる。後述するアミノ酸配列及び塩基配列の同一性等の決定にあたっては、こうしたプログラムによって予測されるシグナルペプチドを除いた成熟ペプチドを利用してもよい。
【0027】
【表4】

【0028】
これらの酵素は、いずれも、酵母の細胞表層に保持させてセルロースを分解するのに適しているが、なかでも、プロセッシブ型セルラーゼやGHF9に属するセルラーゼを好ましく用いることができる。これらのセルラーゼは、表4に示す他のプロセッシブ型又は非プロセッシブ型セルラーゼや、他のGHF9、GHF5、GHF8に属する他のセルラーゼと組み合わせることで高いセルロース分解活性を呈することができる。
【0029】
非晶質セルロースの分解には、以下の表に示すように、プロセッシブ型セルラーゼが有効であり、Cel 9R(PEG)が非プロセッシブ型セルラーゼとの相乗効果及び分解活性に優れている。Cel 9Rは、Cel 5F(CBH)などのGHF5に属するセルラーゼ、Cel 8A(EG)などのGHF8に属するセルラーゼ及びCel 9D(EG)などのGHF9に属するセルラーゼとともに良好な相乗効果及びセルロース分解活性を発揮することができる。なかでも、Cel 9D及び/又はCel 8Aと好ましく組み合わされる。
【0030】
また、非晶質セルロースの分解には、表1に示すように、GHF5に属するCel 5F(CBH)が適している。Cel 5Fは、Cel 8A(EG)などのGHF8に属するセルラーゼやCel 9D(EG)やCel 9R(PEG)などのGHF9に属するセルラーゼとともに良好な相乗効果及びセルロース分解活性を発揮することができる。なかでも、Cel 9Dと好ましく組み合わされる。
【0031】
結晶性セルロースの分解には、表2に示すように、GHF9に属するプロセッシブ型セルラーゼと他のセルラーゼと組み合わせることで、高い相乗効果と分解活性を発揮できる。すなわち、GHF9に属するCel 9R(PEG)、Cel 9K(CBH)及びCbh A(CBH)が適している。これらのGHF9に属する酵素は、Cel 5F(CBH)などのGHF5に属するセルラーゼやCel 8A(EG)などのGHF8に属するセルラーゼと組み合わせることで高い相乗効果及びセルロース分解活性を発揮することができる。また、これらの酵素は、互いに又は他のGHF9に属するエンドグルカナーゼであるCel 9D(EG)と組み合わせて用いることで高い結晶性セルロース分解活性も発揮することができる。
【0032】
GHF9に属するCel 9R、Cel 9K及びCbh Aは、いずれも単独では結晶性セルロースに対して低い分解活性しか示さないが、GHF8に属するエンドグルカナーゼであるCel 8A、GHF5に属するエンドグルカナーゼであるCel 5F及びGHFに属するエンドグルカナーゼであるCel 9Dと組み合わせること高い結晶性セルロース分解活性を発揮することができる。
【0033】
以上のことから、以下のセルラーゼの組み合わせが好適な組み合わせとして挙げられる。左欄の酵素を用いるとき、非晶質セルロースを分解するのに好ましく組み合わせることのできる酵素を中欄に示し、結晶質セルロースを分解するのに好ましく組み合わせることのできる酵素を右欄に示す。中欄と右欄とにそれぞれ示す酵素は1種類のみを組み合わせてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよいし、全てを用いてもよい。
【0034】
【表5】

【0035】
なお、これらの酵素は、酵素自体を組み合わせて用いることもできるが、後述するように、酵母等の細胞表層に提示させて用いることができる。その際においてもセルラーゼを種々に組み合わせることができる。なお、用いる細胞によっては、一部の酵素(セルラーゼ)のみを優先して生産する場合があるため、当該細胞を用いるとき、優先的に生産されるセルラーゼと同種のセルラーゼでなく異種のセルラーゼを同一酵母で発現させるようにすることが好ましい。例えば、本発明者らの知見によれば、酵母では、Cel Aなどのエンドグルカナーゼの発現が他のセルラーゼに比較して優先して発現される傾向がある。このため、同一酵母で、Cel Aと他のセルラーゼとを組み合わせて発現させると、Cel A活性が亢進されることになり、他のセルラーゼとの相乗効果が発揮されにくくなる傾向がある。したがって、こうした酵母にあっては、同一酵母に2種類以上のセルラーゼを同時発現させる場合、Cel A以外のセルラーゼ、例えば、GHF9に属するセルラーゼ同士などを組み合わせて発現させることが好ましい。Cel Aは、別の酵母の細胞表層に提示するか、あるいは外部から添加してもよい。
【0036】
セルラーゼは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)由来であることが好ましい。本発明者は、クロストリジウム・サーモセラムのほか、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)及びクロストリジウム・セルロヴォランス(Clostridium cellulovorans)から得られるセルラーゼ群について検討したところ、GHF5、GHF8、GHF9及びGHF48に属するセルラーゼがそれぞれ酵母において発現可能であったが、Clostridium thermocellumのみがGHF5、8及び9に属するセルラーゼにつき広く良好なセルラーゼ活性を確認することができた。しかし、他の微生物由来のセルラーゼについては、酵母で生産させたときごく一部のセルラーゼにつき活性を発揮したに過ぎなかった。
【0037】
セルラーゼとしては、それぞれ、表4に記載の配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。また、これらのアミノ酸配列と一定の関係を有する各種態様のタンパク質であってもよい。
【0038】
本発明で用いるセルラーゼとしては、表4に記載の配列番号で表される配列情報と一定の関係を有するとともに、それぞれ固有のセルラーゼ活性(エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼとしての活性)を有するタンパク質であってもよい。こうした一態様としては、表4に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
【0039】
「セルラーゼ活性は有する」とは、それぞれ固有のセルラーゼ活性を有してれば足りるが、好ましくは、表4に記載の各アミノ酸配列で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と同等程度あるいはそれ以上である。セルラーゼ活性が同等あるいはそれ以上であるかどうかは、例えば、関連する配列番号で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を酵母で発現したときのタンパク質の有するセルラーゼ活性の70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、もっとも好ましくは100%以上である。
【0040】
各配列番号で表されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異は、すなわち、欠失、置換若しくは付加は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、特に限定されないが、好ましくは、1個以上10個以下程度である。より好ましくは、1個以上5個以下である。
【0041】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
【0042】
他の一態様としては、本発明で用いるセルラーゼは、表4に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつセルラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。同一性は好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは、90%以上であり、一層好ましくは95%以上である。最も好ましくは、98%以上である。
【0043】
本明細書において同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性 ”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
【0044】
さらに他の一態様として、表4に記載の各配列番号で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAによってコードされ、固有のセルラーゼ活性を有するタンパクが挙げられる。
【0045】
ストリンジェントな条件とは、たとえば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち、所定の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましく95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。なお、以上のことから、さらなる他の一態様として、所定の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましく95%以上の同一性を有する塩基配列を有するDNAによってコードされ、セルラーゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
【0046】
こうした各種態様のセルラーゼは、こうしたセルラーゼをコードするセルラーゼ遺伝子を取得することによって得ることができ、また、酵母において発現保持させることができる。セルラーゼ遺伝子は、例えば、配列番号1等の配列に基づいて設計したプライマーを用いて、所定の酵母から抽出したDNA、各種cDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリー等由来の核酸を鋳型としたPCR増幅を行うことにより、核酸断片として得ることができる。また、上記ライブラリー等由来の核酸を鋳型とし、セルラーゼ遺伝子の一部であるDNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸断片として得ることができる。あるいはセルラーゼ遺伝子は、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
【0047】
また、こうした各種態様のセルラーゼに対応するセルラーゼ遺伝子は、例えば、表4に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列をコードするDNAを、慣用の突然変異誘発法、部位特異的変異法、エラープローンPCRを用いた分子進化的手法等によって改変することによって取得することができる。このような手法としては、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法が挙げられ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
【0048】
そのほか、当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning :a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 10 Skyline Drive Plainview, NY (1989))等を参照することにより、表4に記載の各配列番号等に基づいて、各種態様のセルラーゼ遺伝子を取得することができる。
【0049】
なお、表4に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と上記のように一定の関連性のあるアミノ酸配列をコードする塩基配列は、遺伝暗号の縮重に従い、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列の少なくとも1つの塩基を他の種類の塩基に置換することができる。従って、本発明で用いられるセルラーゼ伝子は、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変換された塩基配列をコードするセルラーゼ遺伝子も包含する。なお、遺伝子は、ゲノムDNAのほか、cDNA等であってもよい。
【0050】
セルラーゼは、公知のタンパク質合成方法あるいは遺伝子工学的に合成できるほか、酵母にこうしたセルラーゼ遺伝子を導入して形質転換することで、酵母で発現させることができる
【0051】
セルラーゼは各種形態で酵母の細胞表層に保持される。一つは、セルラーゼを、そのまま公知の酵母細胞表層提示システムを用いて酵母の細胞表層に保持させる形態である。2種類以上のセルラーゼは、同一酵母の細胞表層に保持されてもよく、また、それぞれ別の酵母の細胞表層に保持されてもよい。
【0052】
セルラーゼを酵母の細胞表層に提示する場合、セルラーゼは、さらに、細胞表層提示に必要な細胞表層結合ドメインを有することが好ましい。酵母表層提示システムとしては、例えば、表層タンパク質であるα−アグルチニン又はそのレセプターを利用することができる。例えば、分泌シグナルに加えて凝集性タンパク質であるα−アグルチニンC末端側の320アミノ酸残基からなるペプチドが利用される。所望のタンパク質を細胞表層に提示するためのポリペプチドや手法は、WO01/79483号公報や、特開2003−235579号公報、WO2002/042483号パンフレット、WO2003/016525号パンフレット、特開2006−136223号公報、藤田らの文献(藤田ら,2004. Appl Environ Microbiol 70:1207-1212および藤田ら, 2002. Appl Environ Microbiol 68:5136-5141.)、村井ら, 1998. Appl Environ Microbiol 64:4857-4861.に開示されている。例えば、シグナル配列は、ベクターに組み込まれる要素であってもよいが、セルラーゼ遺伝子の一部であってもよい。アグルチニンを利用したタンパク質の細胞表層提示システムは、例えば、インビトロジェン社からpYD1ベクター及びEBY100サッカロマイセス・セレビジエを含む酵母用ディスプレイキットとして入手することができる。また、細胞表層提示システムとしては、このほか、SAG1、FLO1〜FLO11などの細胞表層タンパク質を用いるシステム等を用いることができる。
【0053】
セルラーゼを酵母の細胞表層に保持させる他の一つの形態は、セルロソームのスキャホールディンタンパク質由来のタンパク質を介して保持される形態である。こうしたセルラーゼの保持形態のためは、細胞表層に当該スキャホールディンタンパク質由来のタンパク質を有する酵母を用いる。スキャホールディンタンパク質には、タイプI及びタイプIIがあり、タイプIスキャホールディンタンパク質に由来するタンパク質を、以下、第1の骨格タンパク質と称し、タイプIIスキャホールディンタンパク質に由来するタンパク質を、以下、第2の骨格タンパク質と称する。
【0054】
なお、セルロソームは、嫌気性細菌や嫌気性糸状菌によって菌体外に形成され、通常、微生物表面に結合して又は培養液中に存在している。セルロソームとしては、表6に示すセルロソームを形成する微生物を含む嫌気性微生物等、公知のセルロソーム生産微生物が生産するセルロソーム及び将来的に明らかにされるセルロソーム並びにこれらの改変体のいずれであっても本発明の第1の骨格タンパク質や後述する第2の骨格タンパク質に用いることができる。セルロース分解能力の高さ等を考慮すると、クロストリジウム・サーモセラム等の好熱嫌気性微生物やクロストリジウム・セルロリティカム等のクロストリジウム属菌の生産するセルロソーム又はその改変体を本発明において用いることができる。
【0055】
【表6】

【0056】
(第1の骨格タンパク質)
第1の骨格タンパク質は、基本的に単鎖のポリペプチド鎖から構成されるタンパク質であり、以下のドメインを備えることができる。以下、これらのドメインについて説明する。
【0057】
(外来タンパク質結合ドメイン)
外来タンパク質結合ドメインは、酵母にとっての外来タンパク質であるセルラーゼを結合保持するためのドメインである。このドメインは、セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメインに由来している。スキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンドメインは、表6に示す各種のセルロソーム生産微生物の形成するセルロソーム(セルラーゼ複合体)のタイプIのスキャホールディンタンパク質において触媒活性のあるセルラーゼを非共有結合にて結合するドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50、Demain, A. L., et al., Microbiol Mol. Biol Rev., 69(1), 124-54(2005), Doi, R. H., et al., J. Bacterol., 185(20), 5907-5914(2003)等)。こうしたタイプIコヘシンドメインとしては、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIコヘシンのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。
【0058】
第1の骨格タンパク質の外来タンパク質結合ドメインとしては、例えば、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のタイプIスキャホールディンタンパク質、クロストリジウム・ジョスィ(Clostridium josui)のタイプIスキャホールディンタンパク質等のタイプIコヘシンドメインを用いることができる。また、C.cellulolyticum(NCBIのホームページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、アクセッション番号:U40345)、C.cellulovorans(同ホームページ、アクセッション番号:M73817)、C.acetobutylicum(同ホームページ、アクセッション番号:AE001437)に開示されるタイプIコヘシンドメインも挙げられる。
【0059】
なお、本明細書において、タンパク質の所定のドメインに由来している、とは、天然に存在する当該所定のドメインのアミノ酸配列又はその改変配列からなることを意味している。改変配列は、当該所定のドメインと同一の作用を発揮する範囲でアミノ酸配列が改変された配列である。こうしたアミノ酸配列は、例えば、当該所定のドメインのアミノ酸配列と好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を有するものである。
【0060】
第1の骨格タンパク質は、こうした外来タンパク質結合ドメインを複数個タンデムに有することが好ましい。「タンデムに有する」とは、アミノ酸配列において、複数個の当ドメインが並んだ状態であればよく、並んだタンパク質結合ドメイン間における離間配列の存在の有無、離間間隔が一定であること及び異種のドメインの存在を問わない。好ましくは、ドメイン間に離間配列を有している。複数個の外来タンパク質結合ドメインは、1種類のアミノ酸配列からなる同一種類のドメインであってもよいし、2種類以上の異なるアミノ酸配列からなるドメインであってもよい。異なる種類の外来タンパク質結合ドメインを用いることで、異なる外来タンパク質を第1の骨格タンパク質上に配列させることができる。
【0061】
第1の骨格タンパク質は、酵母が凝集性を獲得する程度に外来タンパク質結合ドメインを有していることが好ましい。酵母に酵素等のタンパク質を保持させて利用するとき、こうした酵母が凝集可能であれば、凝集された酵母上において酵素等を集約させることができるほか、酵母を効率的に回収して繰り返し利用することができる。
【0062】
第1の骨格タンパク質により酵母に凝集性を付与するのにあたり、3個以上の外来タンパク質結合ドメインを有していることが好ましい。3個以上であると、酵母に凝集性を付与しやすくなる傾向があるからである。好ましくは4個以上である。4個以上であると明らかに酵母に凝集性を付与しやすくなるからである。凝集性の観点からは外来タンパク質結合ドメイン数の上限は特に限定されない。なお、発現量を容易に確保するという観点からは、7個程度以下であることが好ましい場合がある。
【0063】
外来タンパク質結合ドメインは、タイプIコヘシンドメインに基づく結合性で外来タンパク質を結合保持することができる。すなわち、タイプIコヘシンドメインは、タイプIドックリンドメインを有する外来タンパク質と結合することができる。タイプIドックリンドメインは、タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIコヘシンと非共有結合で結合する部位であり、セルロソームを構成するセルラーゼが備えるドメインである。例えば、外来タンパク質結合ドメインが、クロストリジウム・サーモセラム由来のタイプIコヘシンに由来するとき、タイプIドックリンドメインとしては、配列番号15で表されるアミノ酸配列が挙げられる。クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・サーモセルロボランス、クロストリジウム・ジョスイ、クロストリジウム・アセトブチリカム、ルミノコッカス・フレイブファシエンス(R. fravefaciens)、アシドサーモス・セルロリティカス(A. cellulolyticus)、バクテロイデス・セルロソルベンス(B.cellulosolvens)由来のタイプIコヘシンに由来するとき、それぞれ、配列番号16〜配列番号22で表されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0064】
外来タンパク質結合ドメインは、第1の骨格タンパク質において、第2の骨格タンパク質との結合を妨げない箇所に備えられていればよい。典型的には、N末端以外の部位に備えられている。
【0065】
(第2の骨格タンパク質結合ドメイン)
第2の骨格タンパク質結合ドメインは、第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質に結合するためのドメインである。このドメインは、セルロソームにおいて、タイプI骨格タンパク質を非共有結合でタイプII骨格タンパク質上に保持するためのドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50等)。酵母の表層に第1の骨格タンパク質のみを提示させる場合、第1の骨格タンパク質は、第2の骨格タンパク質結合ドメインを備えていなくてもよい。
【0066】
タイプIIドックリンドメインは、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIIドックリンドメインのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。例えば、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIIドックリンドメインとしては、配列番号23に記載されるアミノ酸配列が挙げられ、アシドサーモス・セルロリィカス及びルミノコッカス・フレイブファシエンスの同ドメインとしては、それぞれ配列番号24及び25に記載されるアミノ酸配列が挙げられる。
【0067】
第2の骨格タンパク質結合ドメインは、第2の骨格タンパク質結合ドメインを結合するドメインであることから、第1の骨格タンパク質のC末端若しくはN末端又はこれらの近傍に第2の骨格タンパク質を結合可能に備えられる。典型的には、第1の骨格タンパク質のC末端又はその近傍に備えられる。
【0068】
(配列番号26で表されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と90%以上の同一性のアミノ酸配列からなるドメイン)
このドメイン(以下、本明細書において第3のドメインという。)を備えることで、第3のドメインを備えない酵母よりも、結果として、外来タンパク質の活性を増強することができる。第3のドメインが結果として外来タンパク質の活性を増強することへの作用は
既に説明したように必ずしも明らかではない。配列番号26で表されるアミノ酸配列は、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンに隣接するXモジュールと呼ばれる配列である。Xモジュールの機能は必ずしも明らかでなく、また、クロストリジウム・サーモセラム又はクロストリジウム属でもなく、しかも真菌である酵母細胞表層に保持させる第1の骨格タンパク質に用いるときにどのように作用するかは全く知られていない。
【0069】
このような第3のドメインとしては、配列番号26で表されるアミノ酸配列のほか、当該アミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を用いることができる。より好ましくは95%以上である。すなわち、配列番号26で表されるアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び付加から選択される1種又は2種以上の変異を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。好ましくは、1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下の変異であり、さらに好ましくは、1個以上3個以下である。
【0070】
なお、本明細書の開示によれば、本発明に用いることのできる第3のドメインは、上記のように配列番号26で表されるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列に限定されるものではなく、第2の骨格タンパク質結合ドメインが由来するセルロソーム産生微生物と同一の株又は種のタイプIスキャホールディンタンパク質のXモジュールに由来する必要はなく、同一種の異なる株や他の種のセルロソーム産生微生物に由来していてもよいが、同一種又は株のXモジュールに由来していることが好ましい。
【0071】
配列番号26で表されるアミノ酸配列の起源であるクロストリジウム・サーモセラム以外に由来する第3のドメインのアミノ酸配列としては、例えば、アシドサーモス・セルロリィティカス由来のXモジュールである配列番号27で表されるアミノ酸配列(配列番号26との同一性が62%である。)、ルミノコッカス・フレイブファシエンス由来のXモジュールである配列番号28で表されるアミノ酸配列(配列番号26との同一性が21%である。)が挙げられる。
【0072】
第1の骨格タンパク質は、第3のドメインを第2の骨格タンパク質結合ドメインの近傍、好ましくは第2の骨格タンパク質結合ドメインに隣接して、第2の骨格タンパク質結合ドメインが存在する末端よりも中央よりの部位に備える。第2の骨格タンパク質結合ドメインは、C末端側にある場合には、第2の骨格タンパク質結合ドメインのN末端側に隣接して備えられることが好ましい。
【0073】
(セルロース結合ドメイン)
外来タンパク質保持用酵母が、セルロースの分解に用いる場合には、第1の骨格タンパク質は、セルロソームのタイプIスキャホールディンタンパク質のセルロース結合ドメイン(CBD)由来のセルロース結合ドメインを有していることが好ましい。セルロース結合ドメインは、タイプIのスキャホールディンタンパク質において基質であるセルロースに結合するドメインとして知られている(前述粟冠ら)。セルロース結合ドメインは、1個又は2個以上備えられていてもよい。なお、酵母が備える第1の骨格タンパク質の全てにおいてセルロース結合ドメインを要するものではない。
【0074】
各種のセルロソーム生産微生物のセルロソームにおけるCBDのアミノ酸配列及びDNA配列の多くが決定されており、これらの各種のCBDのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。例えば、クロストリジウム・サーモセラムのセルロース結合ドメインとしては、配列番号29で表されるアミノ酸配列が挙げられる。また、クロストリジウム・セルロリティカム、クロストリジウム・セルロボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ジョスイ、アシドサーモス・セルロリティカス、バクテロイデス・セルロボランスのセルロース結合ドメインとしては、それぞれ配列番号30〜35で表されるアミノ酸配列を有するドメインが挙げられる。
【0075】
セルロース結合ドメインは、第1の骨格タンパク質においては、好ましくはN末端若しくはその近傍又はその全長においてN末端よりに備えられている。
【0076】
以上説明した第1の骨格タンパク質は、各要素を人工的に組み合わせた人工タンパク質であってもよいし、セルロソーム生産微生物のタイプIスキャホールディンタンパク質に由来するものであってもよい。すなわち、タイプIスキャホールディンタンパク質の全体若しくはその一部又はこれらの改変体であってもよい。改変体とは、セルロソーム生産微生物のセルロソームから取得されるタイプIスキャホールディンタンパク質の塩基配列及び/又はアミノ酸配列の全体又はその一部において少なくとも部分的に改変したものをいう。第1の骨格タンパク質は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のタイプIスキャホールディンタンパク質、クロストリジウム・ジョスィ(Clostridum josui)のタイプIスキャホールディンタンパク質の全体若しくはその一部又はその改変体を利用することができる。
【0077】
第1の骨格タンパク質は、既に説明した公知の各種の酵母表層提示システムを用いて、酵母の細胞表層に提示させることができる。
【0078】
(第2の骨格タンパク質)
第1の骨格タンパク質は、細胞表層に結合した第2の骨格タンパク質との非共有結合によって細胞表層に提示されていてもよい。第2の骨格タンパク質は、第1の骨格タンパク質結合ドメインを有し、基本的に単鎖のポリペプチド鎖から構成されるタンパク質である。第1の骨格タンパク質結合ドメインとは、そのアミノ酸配列に基づき、非共有結合で第1の骨格タンパク質を結合できるドメインである。第2の骨格タンパク質に対して非共有結合で第1の骨格タンパク質を結合させることができるため、第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質に対して容易に結合させたり第2の骨格タンパク質から容易に分離・回収したりすることができる。
【0079】
(第1の骨格タンパク質結合ドメイン)
第1の骨格タンパク質結合ドメインとしては、セルロソームのタイプIIスキャホールディンタンパク質(アンカータンパク質とも言われる。)のタイプIIコヘシンドメイン由来のドメインを用いることができる。タイプIIコヘシンドメインは、セルロソームにおいて、タイプIスキャホールディンタンパク質を非共有結合でタイプIIスキャホールディンタンパク質上に保持するためのドメインとして知られている(粟冠ら、蛋白質核酸酵素、Vol.44、No.10(1999)、p41-p50等)。タイプIIスキャホールディンタンパク質のタイプIIコヘシンドメインには、タイプIスキャホールディンタンパク質のタイプIIドックリンドメインが結合することが知られている。
【0080】
タイプIIドックリンドメインとしては、各種セルロソーム生産微生物において多数その配列が決定されている。これらの各種のタイプIIコヘシンのアミノ酸配列及びDNA配列は、NCBIのHP(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)等を介してアクセス可能な各種のタンパク質データベースやDNA配列のデータベースにより容易に取得することができる。
【0081】
第1の骨格タンパク質結合ドメインとしては、例えば、クロストリジウム・サーモセラムのタイプIIコヘシンであるSdbA,Orf2,OlpBのタイプIIコヘシンドメインを用いることができる。また、アシドサーモス・セルロリティカスのSca D, Sca BのタイプIIコヘシンドメイン、バクテロイデス・セルロソルベンスのSca AのタイプIIコヘシンドメイン等が挙げられる。
【0082】
第2の骨格タンパク質は、第1の骨格タンパク質結合ドメインを1個のみ有していてもよいが、複数個タンデムに備えていてもよい。複数個備えることで、セルラーゼをより高密度に酵母表層上に保持しやすくなる。
【0083】
複数個の第1の骨格タンパク質結合ドメインは、1種類のアミノ酸配列からなる同一種類のドメインであってもよいし、2種類以上の異なるアミノ酸配列からなるドメインであってもよい。異なる種類の骨格タンパク質結合ドメインを用いることで、異なる第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質上に配列させることができる。
【0084】
第2の骨格タンパク質は細胞の表層側に結合される必要がある。第2の骨格タンパク質は、細胞の表層と共有結合又は非共有結合により結合される。第2の骨格タンパク質は、酵母表層と結合するための酵母表層結合ドメインを有している。
【0085】
第2の骨格タンパク質を酵母表層側に結合させるシステムとしては、既に記載した公知の各種の酵母表層提示システムを用いることができる
【0086】
このような第2の骨格タンパク質としては、上記した第1の骨格タンパク質結合ドメインと酵母細胞表層結合ドメインとを人工的に組み合わせた融合タンパク質として構築してもよいし、セルロソーム生産微生物のタイプII骨格タンパク質由来としてもよい。すなわち、当該骨格タンパク質の一部又は全部あるいはこれらの改変体であってもよい。こうしたタイプII骨格タンパク質としては、クロストリジウム・サーモセラムのタイプII骨格タンパク質、クロストリジウム・ジョスィのタイプII骨格タンパク質又はその改変体を利用することができる。
【0087】
第1の骨格タンパク質を第2の骨格タンパク質を介して細胞表層に提示させるにはいくつかの手法がある。一つは、第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質を酵母において発現させて、第2の骨格タンパク質を細胞表層に提示させ、これに分泌させた第1の骨格タンパク質を結合させてもよい。また、第2の骨格タンパク質のみを発現させ、細胞表層に提示させておき、第1の骨格タンパク質を細胞外から供給して結合させてもよい。
【0088】
このほか、第1の骨格タンパク質を酵母で分泌発現させるとともに、第2の骨格タンパク質を酵母外で準備し外部から供給するようにしてもよい。この場合、第2の骨格タンパ
ク質は、前述のアグルチニン等の細胞表層提示システムに基づく細胞表層結合ドメインを
備えるようにするのが好ましい。さらに、他の形態として、第1の骨格タンパク質及び第
2の骨格タンパク質を、いずれも酵母外で準備して、酵母に供給するようにしてもよい。
この場合、第2の骨格タンパク質は、アグルチニン等の細胞表層提示システムに基づく細
胞表層結合ドメインを備えるようにすることが好ましい。
【0089】
こうした第1の骨格タンパク質に対してセルラーゼを保持させるには、セルラーゼを酵母において細胞外に分泌生産させ、そのセルラーゼを第1の骨格タンパク質に対して供給することで保持させることができる。また、酵母外で生産したセルラーゼを、第の骨格タンパク質を表層提示する酵母と接触させて、細胞外生産セルラーゼを第1の骨格タンパク質に保持させてもよい。細胞外生産セルラーゼを表層提示された第1の骨格タンパク質に保持させるには、両者を適当な水性媒体下に接触させればよい。水性媒体は、酵母とセルラーゼとの生理活性が維持される限りに特に限定されない。例えば、これらについて適切なpH、浸透圧及び温度が確保されていればよい。pHは、タンパク質及び細胞によっても異なるが、通常は、pH6以上9以下の範囲である。また、浸透圧も微生物などの細胞に対しておおよそ等張性であることが好ましい。なお、浸透圧は緩衝液や等張化剤のほか適当な塩類を使用して調節することができる。また、温度は、タンパク質の変性等を考慮すると1℃以上10℃以下であることが好ましく、より好ましくは2℃以上5℃以下である。こうした水性媒体としては、塩類溶液等とすることができる。例えば、20mM〜50mM程度のトリス塩酸バッファーとしてもよい。また、0mM超20mM以下、より好ましくは5mM以上15mM以下のCaCl2溶液などのカルシウムイオンが存在する水性媒体としてもよい。さらに好ましくは、約10mMのカルシウムイオンが存在する水性媒体とする。必要に応じ、水性媒体を攪拌して両者の接触を促進してもよい。
【0090】
また、当業者であれば、セルラーゼ遺伝子のアミノ酸配列及び塩基配列、並びに第1の骨格タンパク質及び第2の骨格タンパク質のアミノ酸配列及び塩基配列を適宜決定して、これらの各遺伝子を発現可能に保持する組換えベクターを用いることで、これらのタンパク質を取得できる。また、これらの各種タンパク質を、必要に応じて、大腸菌や酵母等を利用したタンパク質発現システムを用いて本発明の酵母外で合成したり、本発明の酵母で分泌発現させたり、本発明の酵母の細胞表層提示させることで、本発明の酵母を得ることができる。こうした組換えベクターの作製、組換え体宿主としての酵母等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、T.Maniatis,J. Sambrookらの実験書(Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1982,1989、2001)等を適宜参照することにより当業者であれば実施することができる。酵母を含む各種細胞に対するこうした遺伝子導入による外来タンパク質の発現のための各種操作は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual second edition(Maniatis et al.,Cold Spring Harbor Laboratory press.1989)等のプロトコールに従うことができる。また、ベクターの導入方法としては、従来公知の各種方法、例えば、リン酸カルシウム法、トランスフォーメーション法や、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法または他の方法が挙げられる。このような手法は、上記した実験書等に記載される。ベクターを導入した酵母につき、マーカー遺伝子を用いた選抜及び活性発現による選抜により、必要なタンパク質を発現する酵母を得ることができる。
【0091】
(酵母)
セルラーゼ群から選択されるセルラーゼを細胞表層に保持する酵母は、特に限定されないで公知の各種酵母を利用できる。サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属の酵母、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属の酵母、カンジダ・クルゼイ(Candida krusei)、キャンディダ・シェハーテ(Candida shehatae)等のキャンディダ属の酵母、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)等のピヒア属の酵母、ハンセヌラ(Hansenula)属の酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属の酵母、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属の酵母、パチソレン(Pachysolen)属の酵母、ヤマダジマ(Yamadazyma)属の酵母、クルイベロマイセス・マーキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)等のクルイベロマイセス属の酵母が挙げられる。なかでも、工業的利用性等の観点からサッカロマイセス属酵母が好ましく、サッカロマイセス・セレビジエがより好ましい。
【0092】
なお、本発明の酵母又はその組み合わせは、本発明のセルラーゼ群から選択されるセルラーゼとともに、β−グルコシダーゼを細胞外に発現するものであってもよい。また、本発明の酵母の組み合わせは、β−グルコシダーゼを細胞外に生産する酵母を含んでいてもよい。β−グルコシダーゼを細胞外に発現することで、本発明のセルラーゼ群から選択されるセルラーゼによって得られるセルロース分解産物を効果的にグルコースにまで分解することができる。また、当該セルラーゼ由来のグルコースを資化して直接、有用物質を生産することができる。β−グルコシダーゼを細胞外に生産する形態としては、細胞外に分泌生産する形態と本発明のセルラーゼ群と同様に細胞表層に保持する形態とが挙げられる。酵母におけるタンパク質の分泌生産には、酵母において機能するシグナルペプチドを付与するなどすればよい。例えば、酵母に由来するシグナルペプチド配列としては、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー、またはRhizopus oryzae やC. albicansグルコアミラーゼリーダーなどが挙げられる。なお、酵母にβ−グルコシダーゼを生産させるには、既に説明した遺伝子導入による形質転換の手法を用いることができる。
【0093】
酵母としては、遺伝子工学的な改変により、乳酸などの有機酸、C3〜C5アルコールなど工業原料等にもなる化合物を生産する酵母も利用できる。β−グルコシダーゼを分解系に並存させることで、こうした酵母にセルロース由来のグルコースを資化させれば、セルロースを原料として直接有用物質を生産できる。を例えば、乳酸生産酵母などの形質転換酵母は、例えば、特開2003−334092、特開2004−187643、特開2005−137306、特開2006−6271、特開2006−20602、特開2006−42719、特開2006−75133、特開2006−296377等に開示されており、本発明においてはこれらの形質転換酵母を用いることができる。これらの公報に記載の内容の全ては引用により本明細書の一部に組み込まれる。
【0094】
以上説明したように、本発明の酵母又はその組み合わせは、酵母の細胞表層において良好なセルラーゼ活性を発揮できるセルラーゼ及びその組み合わせを当該細胞表層に保持している。このため、本発明の酵母とセルロース含有材料とを接触させることで、セルロース含有材料中のセルロースを効率的に分解することができる。特に、酵母自身にこうしたセルラーゼ遺伝子を導入して発現させることで、酵母の培養によって直ちに好ましいセルラーゼを取得できる。また、酵母がセルロースを分解することでセルロースを資化し増殖可能な場合には、一層のセルロース分解活性の増強と発酵による有用物質生産が可能となる。
【0095】
(セルロース分解産物の生産方法) 本発明のセルロース分解産物の生産方法は、セルラーゼを用いてセルロースからセルロース分解産物を生産する方法である。本発明の生産方法は、本発明の酵母又はその組み合わせを用いて、上記セルラーゼ群から選択される2種以上のセルラーゼによりセルロースを分解する工程を備えることができる。本発明によれば、効率的にセルロースを分解し、低分子化し、セルロースオリゴマー、セロビオース又はグルコースを生産できる。
【0096】
本発明のセルラーゼ群から選択される2種類以上のセルラーゼによりセルロースを分解するには、2種類以上のセルラーゼを同時に保持する酵母を用いてもよいし、1種類のセルラーゼを細胞表層に保持する酵母を2種類以上組み合わせて用いてもよいし、こうした酵母を組み合わせて用いてもよい。セルラーゼがセルロソーム由来の第1の骨格タンパク質を介して酵母細胞表層に保持されている場合には、酵母が相互に凝集しやすくなっている。このため、2種類以上のセルラーゼが別々の酵母の細胞表層に保持されていても、効率的にセルロースを分解することができる。また、第1の骨格タンパク質がセルロース結合ドメインを有している場合には、酵母はセルロースに吸着しやすくなっており、このため、別々の酵母に2種類以上のセルラーゼが保持されていても効率的にセルロースを分解できる。また、既に説明したように、分解対象であるセルロースの結晶性の相違(結晶性かあるいは非晶質性か)やその結晶性の程度や異なる結晶性のセルロースの配合比率によって、セルラーゼの組み合わせを適宜選択することもできる。
【0097】
グルコースを分解産物として得る観点からは、分解工程において、β−グルコシダーゼが存在することが好ましい。β−グルコシダーゼは、酵素剤として分解工程に添加されてもよい。また、β−グルコシダーゼは、本発明のセルラーゼ群から選択されるセルラーゼとともにβ−グルコシダーゼを細胞外に生産する酵母によって提供されてもよいし、β−グルコシダーゼを発現する酵母によって提供されてもよい。
【0098】
分解工程は、本発明の酵母をセルロース含有材料に接触させることにより行う。分解の態様は特に限定されないが、予め十分量に準備した酵母をセルロース含有材料に接触させるか、あるいは酵母が増殖可能な条件下でセルロース含有材料に接触させることが好ましい。酵母が増殖可能な条件とは、典型的には、酵母の増殖のための栄養源を含む培地を存在する条件が挙げられる。栄養源のうち炭素源としては、酵母の利用しやすいグルコースやスクロースが挙げられる。また、分解工程にβ−グルコシダーゼが供給される場合には、セルロース由来のグルコースを炭素源として酵母が利用できるため、必ずしも、グルコースやスクロースの添加を要しない。
【0099】
このほか、分解工程における条件は、本発明の酵母の生存、増殖又は発酵条件、表層に保持されるセルラーゼの分解活性等を考慮して決定される。
【0100】
本明細書において、セルロースとは、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により重合した重合体及びその誘導体をいう。セルロースにおけるグルコースの重合度は特に限定しないが、好ましくは200以上である。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、若しくはエステル化などの誘導体が挙げられる。また、セルロースは、その部分分解物である、セロオリゴ糖、セロビオースを含んでいてもよい。さらに、セルロース は、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよいが、好ましくは結晶性セルロースを含む。さらに、セルロースは、天然由来のものでも、人為的に合成したものでもよい。セルロースの由来も特に限定しない。植物由来のものでも、真菌由来のものでも、細菌由来のものであってもよい。
【0101】
セルロースは、セルロース含有材料の形態で分解工程に供されてもよい。本明細書において、セルロース含有材料とは、上記したセルロースを含むものであればよい。したがって、実質的にセルロースのみからなるものであってもよいし、セルロース含有材料は、配糖体であるβ−グルコシド、リグニン及び/又はヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロース、さらにペクチンなどとの複合体であってもよい。また、セルロース含有材料としては、綿や麻などの天然繊維品、レーヨン、キュプラ、アセテート、リヨセルなどの再生繊維品、稲ワラなどの各種ワラ、籾殻、バガス、木材チップなどの農産廃棄物、古紙、建築廃材などの各種廃棄物などを含むバイオマス(木質系及び草本系)が挙げられる。
【0102】
分解しようとするセルロース含有材料の種類によっては、前処理や追加の酵素が必要な場合もありうる。例えば、リグノセルロース材料を用いる場合、効率な分解のためには、物理的、化学的又は酵素的な前処理が必要な場合もある。
【0103】
分解工程の実施により各種のセルロース分解産物が得られる。分解産物を回収するには、培養上清を回収すればよい。培養上清は、そのままあるいは適宜精製等して、各種炭素源として利用が可能である。
【0104】
(有用物質の生産方法)
本発明の有用物質の生産方法は、セルロースから有用物質を生産する方法であって、本発明の酵母の1種又は2種以上を用いて本発明のセルラーゼ群から選択される2種以上のセルラーゼによってセルロースを分解して得られたセルロース分解産物を含む炭素源の存在下、前記酵母又は他の微生物により有用物質を生産する工程、を備えることができる。本発明の有用物質の生産方法によれば、植物バイオマスの代表的な材料であるセルロースを微生物が利用可能な形態として、石油資源の利用を抑制又は回避して有用物質を生産することができる。
【0105】
有用物質の生産工程では、酵母の他、大腸菌、枯草菌、麹菌等、グルコースを利用可能な微生物であれば用いることができる。グルコースを利用可能な微生物としては、例えば、グルコースからの代謝系の1種又は2種以上の酵素を遺伝子組換えにより置換、追加等して本来の代謝物でない化合物を産生可能に改変したものであってもよい。
【0106】
有用物質の生産工程としては、本発明の酵母によるセルロース分解産物を利用する限り、特に限定されないで、各種形態を採ることができる。例えば、本発明の酵母によるセルロースの分解工程との関係で有用物質生産工程は各種形態を採ることができる。例えば、一つの形態では、セルロース分解工程と有用物質生産工程が実質的に一つの工程のように実施される。すなわち、セルロース分解工程において、本発明の酵母のほかβ−グルコシダーゼが存在する場合には、分解産物はグルコースであるため、そのまま本発明の酵母がセルロース由来の当該グルコースを資化して有用物質を生産することができる。
【0107】
また、他の一つの形態では、本発明の酵母によるセルロース分解工程後に、有用物質生産工程を実施する。すなわち、セルロース分解工程にβ−グルコシダーゼが存在しない場合には、分解工程で得られたセルロースの分解産物を含む培養上清等に対し、β−グルコシダーゼを供給してグルコースにまで分解後、あるいは分解とともに、本発明の酵母若しくは他の酵母又は他の微生物によりグルコースを資化して有用物質を生産する工程を実施する形態が挙げられる。なお、この形態でのβ−グルコシダーゼは、酵素製剤や酵母や微生物の細胞外生産等などいずれの形態で供給されてもよい。
【0108】
なお、セルロース分解工程にβ−グルコシダーゼを含有する場合であっても、当該分解工程で得られたグルコースを含む分解産物を、他の酵母又は微生物の炭素源として利用する有用物質生産工程を実施することも可能である。
【0109】
有用物質の生産工程では、酵母又は利用する微生物に一般的に適用される培養条件を適宜選択して用いることができる。典型的には、培養方法としては、静置培養、振とう培養または通気攪拌培養等を用いることができる。通気条件は、嫌気条件下、微好気条件下及び好気条件等、適宜選択することができる。培養温度も、用いる微生物の種類に応じて適宜決定されるものであって特に限定しないが、25℃〜55℃等の範囲とすることができる。また、培養時間も必要に応じて設定されるが、数時間〜150時間程度とすることができる。また、pHの調整は、無機あるいは有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
【0110】
有用物質としては特に限定しないが、酵母やその他の微生物がグルコースを利用して生産可能なものであればよい。有用物質は、酵母におけるグルコースからの代謝系の1種又は2種以上の酵素を遺伝子組換えにより置換、追加等して本来の代謝物でない化合物であってもよい。具体的には、エタノールなどの低級アルコール、乳酸などの有機酸の他、イソプレノド合成経路の追加によるファインケミカル(コエンザイムQ10、ビタミン及びその原料等)、解糖系の改変によるグリセリン、プラスチック・化成品原料など、バイオリファイナリー技術が対象とする材料が挙げられる。
【0111】
有用物質の生産工程の実施により、用いた微生物が有している有用物質生産能力に応じて有用物質が生産される。例えば、一般的な酵母はエタノール発酵するため、エタノールを得ることができる。遺伝子工学的改変等により乳酸などの有機酸生産能力を有している酵母は、乳酸等を生産する。有用物質の生産工程終了後、培養液から有用物質含有画分を回収する工程、さらにこれを精製又は濃縮する工程を実施することもできる。回収工程や精製等の工程は有用物質の種類等に応じて適宜選択される。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら
限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することができる。なお、以下に述べる遺伝子組換え操作は、基本的に、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (T. Maniatis, et al., Cold Spring Harbor Laboratory) に従い行った。
【実施例1】
【0113】
C.thermocellum(ATCC27405)をATCCから取得し、乾燥菌体に直接滅菌水を添加、懸濁後、DNeasy Kit(QUIAGEN社製)によりゲノム抽出を行った。C.thermocellumのゲノムからシグナルペプチドを除いたセルラーゼ遺伝子をクローニングし、図1に示す2μmベクターに挿入後、S.cerevisiae MT8-2に導入した。クローニングした酵素を表7に示す。各酵素をYPDで一晩培養し上清をカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いたハローアッセイに供したところCelA,CelD,CelF,CelR,CelK,CbhAは活性を示した。プロセッシブもしくはエクソグルカナーゼ活性しか持たないFamily48のセルラーゼCelSについては酵母上清液を50mM酢酸緩衝液pH6.O 0.5%リン酸膨潤セルロース(PSC)と混合し、TZアッセイにより遊離還元糖量の測定を行ったが活性は検出されなかった。
【0114】
【表7】

【実施例2】
【0115】
AGA1遺伝子をS.cerevisiae BJ5465のゲノムに導入し、更にC.thermocellum由来スキャホールディンタンパク質の一部であるセルロース結合ドメイン(CBD)+4コヘシンドメインを含むアミノ酸配列に相当するDNA(配列番号36)を取得し、このDNAをAga2蛋白質と融合させ同株のゲノムに導入しBJ004株とした。更にA.aquleatus由来β−グルコシダーゼ(BGL)遺伝子をゲノムに導入しBJ104株とした。
【0116】
実施例1の結果からクローニングしたC.thermocellum由来のセルラーゼはCelS以外はS.cerevisiaeで発現することが分かっている。そこで、BJ104株に実施例1で使用した2μmベクターC.thermocellum由来CelA,CelD,CelR,CelF,CelK,CbhAを導入し、BJ104pA, BJ104pD, BJ104pO, BJ104pR, BJ104pCb各酵母を作製した。各酵母をOD600=5,1mlに調製後、滅菌水+10mM CaCl2溶液1mlで二回洗浄後、1%CMC 50mM酢酸緩衝液pH6.0 1mlに懸濁し、60℃で二時間CMC分解試験を行い、TZアッセイ法で還元糖量活性を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、各酵母は、それぞれ活性を示した。
【実施例3】
【0117】
実施例2で作製した酵母を、単独で及び2種類を組み合わせて、D600=10に調製し、0.5%PSC分解試験を50℃で45時間行った。結果を図3に示す。図3に示すように、プロセッシング系酵素(CelF,CelR)にEG(CelA,CelD)を組み合わせた時に相乗効果が認められ、特にGHファミリー9に属するプロセッシングエンドグルカナーゼである、CelRと他の酵素を組み合わせた場合高い相乗効果が認められた。
【実施例4】
【0118】
実施例2で作製した酵母を、単独で及び2種類を組み合わせて、D600=10に調製し、1%アビセル分解試験を50℃で72時間行った結果を図4に示す。図4に示すように、GHF9に属するプロセッシング系酵素(CelR,CelK,CbhA)を含む組み合わせの時に高い相乗効果が認められた。また、組み合わせる酵素としては、CelA及びCelFのほか、CelDも良好な相乗効果が認められた。
【実施例5】
【0119】
本実施例は、一つの酵母で2種類の酵素を同時発現させて、結晶性セルロースの分解に対する好適な酵素の組み合わせを評価した。
【0120】
酵母BJ104のTrp1遺伝子を破壊し、Trp要求性株を作製した。マーカーはG418を利用し、その両端にTrpの相同組み換え領域を付加しPCRを行った。本PCR断片を酵母BJ104に導入しTrp要求性株BJ104Tを獲得した。本株に2μmプラスミドでpRS436SSRG(Ura3マーカー)とpRS434SSRG(Trp1マーカー)とにそれぞれセルラーゼを導入し、SD-Ura,Trpで一晩培養後、72時間SD-Ura,Trp+2%CAAで培養した。集菌後OD600=10とし、DW+10mMCaCl2を用いて二回洗浄後50mM酢酸緩衝液pH6.0、1%アビセルで、50℃、80時間反応させた。結果を図5に示す。
【0121】
図5に示すように、ファミリー9系のプロセッシング酵素同士を組み合せたとき高い分解活性が認められた(R-K,R-CbhA,K-CbhA)。特にK-CbhAの組み合わせが最も高い活性を示した。A-R,A-K,A-Cbは同一酵母で発現させると単一酵素を発現させた酵母の組み合わせよりも活性が低下した。酵母ではCelAの発現が他の酵素に比較して顕著に高く、同一酵母で生産させると殆どがCelA活性になるものと考えられた。
【実施例6】
【0122】
本実施例では、実施例5で作製した最も高い活性を持つK-CbhA発現酵母BJ104TpKCbを実施例5と同様に培養(SD-Ura,Trpで一晩培養後、72時間SD-Ura,Trp+2%CAAで培養)後、OD600=40としYP+10%アビセルで30℃、65時間培養した。培地中のエタノール濃度を測定した結果を図6に示す。図6に示すように、K-CbhA発現酵母BJ104TpKCbは、YP+10%アビセルの培地で0.24%のエタノールを検出した。なお、YPだけの場合は0.09%エタノールを検出した。以上のことから、K-CbhA発現酵母BJ104TpKCbは、アビセルの約3%を糖化してエタノール発酵したことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質分解酵素ファミリー5に属するセロビオヒドロラーゼCel 5F、同エンドグルカナーゼCel 5C、糖質分解酵素ファミリー8に属するエンドグルカナーゼCel 8A、糖質分解酵素ファミリー9に属するエンドグルカナーゼCel 9D、同エンドグルカナーゼCel 9R、同セロビオヒドロラーゼ Cel 9K及び同セロビオヒドロラーゼCbh Aからなる群から選択される1種又は2種以上のセルラーゼを細胞表層に保持する酵母又はその組み合わせ。
【請求項2】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、少なくともプロセッシブ型のセルラーゼを含む2種類以上である、請求項1に記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項3】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、少なくとも、糖質分解酵素ファミリー9に属するセルラーゼを含む2種類以上である、請求項1又は2記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項4】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、以下の表の第1欄に示すセルラーゼと当該第1欄に対応する第2欄に記載のセルラーゼから選択される1種又は2種以上とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせ。
【表8】

【請求項5】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、以下の表の第1欄に示すセルラーゼと当該第1欄に対応する第2欄に記載のセルラーゼから選択される1種又は2種以上とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせ。
【表9】

【請求項6】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、それぞれ以下の表に記載の配列番号で表される塩基配列又はアミノ酸配列と以下の関係を有する、請求項1〜5のいずれかに及び記載の酵母又はその組み合わせ。
(a)表10に記載の各配列番号で表される塩基配列からなる遺伝子によってコードされるセルラーゼ
(b)表10に記載の各配列番号で表される塩基配列からなるDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子によってコードされ対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(c)表10に記載の各配列番号で表される塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされ対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(d)表10に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列を有するセルラーゼ
(e)表10に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有し対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
(f)表10に記載の各配列番号で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し対応するセルラーゼ活性を有するセルラーゼ
【表10】

【請求項7】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、クロストリジウム属(Clostridium)由来である、請求項1〜6のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項8】
前記セルラーゼは、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)由来である、請求項7に記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項9】
前記酵母の細胞表層に保持される前記セルラーゼは、セルロソーム生産微生物のスキャホールディンタンパク質由来のタンパク質を介して前記細胞表層に保持されている、請求項1〜8のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項10】
前記スキャホールディンタンパク質由来のタンパク質は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)のスキャホールディンタンパク質由来である、請求項9に記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項11】
前記スキャホールディンタンパク質由来のタンパク質は、タイプIスキャホールディンタンパク質由来である、請求項9又は10に記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項12】
前記酵母又はその組み合わせには、β−グルコシダーゼを分泌生産する酵母を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせ。
【請求項13】
セルラーゼを用いてセルロースからセルロース分解産物を生産する方法であって、
請求項1〜12のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせを用いて、前記酵母又はその組み合わせが保持する2種以上の前記セルラーゼを用いてセルロースを分解する工程、
を備える、生産方法。
【請求項14】
セルロースから有用物質を生産する方法であって、
請求項1〜12のいずれかに記載の酵母又はその組み合わせを用いて、前記酵母又はその組み合わせが保持する2種類以上の前記セルラーゼを用いてセルロースを分解して得られたセルロース分解産物を含む炭素源を利用して、前記酵母又は他の微生物により有用物質を生産する工程、
を備える、生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−19429(P2011−19429A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165909(P2009−165909)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】