説明

セルロースエステルフィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置

【課題】本発明は、波長分散が所望の値に制御された偏光板保護膜、及びこれにより作製した偏光板などの光学部材、さらにはこれらを用いた広視野角で黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置の提供を目的とする。
【解決手段】700〜1200nmに最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ下記式(1)〜(3)を満たすセルロースエステルフィルムを偏光板保護膜に用いる。
式(1) Rth(450)≧Rth(550)≧Rth(630)
式(2) 0≦Re(550)≦10
式(3) 30≦Rth(550)≦250
ここで、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースエステルフィルム、これを用いた偏光板および液晶表示装置に係り、特に広視野角かつ黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。従来、画像の視野角依存性が大きいことが液晶表示装置の大きな欠点であったが、近年、液晶セル内の液晶分子の配列状態の異なる様々な高視野角モードが実用化されており、これによりテレビ等の高視野角が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。
一般に液晶表示装置は液晶セル、光学補償シート、偏光子から構成される。光学補償シートは画像着色を解消したり、視野角を拡大するために用いられており、延伸した複屈折フィルムや透明フィルムに液晶を塗布したフィルムが使用されている。例えば、特許文献1ではディスコティック液晶をトリアセチルセルロースフィルム上に塗布し配向させて固定化した光学補償シートをTNモードの液晶セルに適用し、視野角を広げる技術が開示されている。しかしながら、大画面で様々な角度から見ることが想定されるテレビ用途の液晶表示装置は視野角依存性に対する要求が厳しく、前述のような手法をもってしても要求を満足することはできていない。そのため、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、VA(Vertically Aligned)モードなど、TNモードとは異なる液晶表示装置が研究されている。
【0003】
特にVAモードはコントラストが高く、比較的製造の歩留まりが高いことからTV用の液晶表示装置として着目されている。しかしながらVAモードではパネル法線方向においてはほぼ完全な黒色表示ができるものの、斜め方向からパネルを観察すると光漏れが発生し、視野角が狭くなるという問題があった。
【0004】
この問題に対し、液晶セル側の偏光板保護膜のRe値、Rth値、液晶セルのΔndの関係を適切な範囲に設定し、さらに、偏光子を直交配置した時の色味、液晶表示装置のバックライトの色温度を適切な範囲に設定することで広視野角かつ黒表示のカラーシフトを小さくできることが報告された(例えば、特許文献2参照)。また、液晶セルと偏光フィルムとの間に位相差フィルムを設け、この位相差フィルムの波長分散特性を制御し、さらに特定の位相差フィルムを複数併用することにより、可視光領域全体にわたって光漏れが少なく、ほぼ無彩色な黒が表示できる技術が提案された(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の波長分散特性の制御は、主に短波長域(〜550nm)での位相差制御に関する技術であり、長波長域(630nm付近)の位相差までは制御できておらず、完全なカラーシフトの改良はなされていない。長波長域における位相差制御の技術に関する事例として例えば、特許文献4では赤外線吸収剤をセルロースアシレートフィルムに含有することで長波長領域での位相差を制御し、広い範囲で光学異方性の小さな偏光板保護膜を作製する技術が開示されている。また、特許文献5では赤外領域に吸収をもつ化合物の二色性を利用し長波長域での屈折率を制御することで、位相差フィルムの逆分散特性を実現する技術が開示されている。しかしながら、特許文献4や5に開示されてある光学性能では、液晶セルの黒表示時のカラーシフトが低減できない。
【特許文献1】特許第2587398号公報
【特許文献2】特開2007−140497号公報
【特許文献3】特許第3648240号公報
【特許文献4】特開2007−31711号公報
【特許文献5】国際公開第07/075264号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、波長分散が所望の値に制御された偏光板保護膜を提供すること、及びこれにより作製した偏光板などの光学部材を提供すること、さらにはこれらを用いた広視野角で黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下に記載するセルロースエステルフィルムにより、本発明の課題を解決することができた。
〔1〕
700nm以上1200nm以下に最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) Rth(450)≧Rth(550)≧Rth(630)
式(2) 0≦Re(550)≦10
式(3) 30≦Rth(550)≦250
[ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。]
〔2〕
前記セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bが下記式(4)、(5)を満たすことを特徴とする〔1〕に記載のセルロースエステルフィルム。
式(4) 2.0≦A+B≦3.0
式(5) B≧0
〔3〕
380nm以下に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含むことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のセルロースエステルフィルム。
〔4〕
前記紫外線吸収剤が下記一般式(A)で表される紫外線吸収性の化合物であることを特徴とする〔3〕に記載のセルロースエステルフィルム。
【化1】

式中、nは0〜3の整数を表し、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子又は置換基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、イミド基、シリル基、アルキルチオ基)を表し、R6はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。また、R6で表される基は重合性基を部分構造として有してもよい。
〔5〕
偏光子の両側に保護フィルムが貼りあわされてなる偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一枚が〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
〔6〕
液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を備え、少なくとも1枚の偏光板が〔5〕に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
〔7〕
偏光板の液晶セル側の保護フィルムの少なくとも一枚が下記式(6)を満たすことを特徴とする〔6〕に記載の液晶表示装置。
式(6) Re(450)≦Re(550)≦Re(630)
〔8〕
液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする〔6〕又は〔7〕に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、波長分散が所望の値に制御された偏光板保護膜を提供でき、これにより作製した偏光板などの光学部材、さらにはこれらを用いた広視野角で黒表示時のカラーシフトが小さな液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0010】
(光学補償原理)
従来、VAモードの液晶表示装置の斜め方向のコントラストの低下は、二軸プレートとCプレートを用いることで解消できるとされてきた(例えば、前記特許文献3)。ところで、従来光学補償フィルムには種々の延伸ポリマーフィルムが用いられているが、一般的には、延伸ポリマーフィルムは、面内レターデーションReがRe(450)≧ Re(550)≧Re(650)であり、厚さ方向のRthがRth(450)≧Rth(550)≧Rth(650)の関係を満足する、すなわち、Re及びRthともに短波長ほど大きい値を持つもの(以下、この性質を「順分散性」という場合がある)がほとんどである。
【0011】
図1に、二軸プレート及びCプレートを用いた従来のVAモード液晶表示装置の一例の模式図を示す。図1の液晶表示装置は、液晶セル53と一対の偏光板51及び52を有し、偏光板51と液晶セル53との間に二軸プレートの光学補償フィルム54、偏光板52と液晶セル53との間にCプレートの光学補償フィルム55を有する。図2に、図1の構成における補償機構について、ポアンカレ球を用いて説明した図を示す。ポアンカレ球は偏光状態を記述する三次元マップで、球の赤道上は直線偏光を表している。ここで、液晶表示装置内における光の伝播方向は方位角=45度、極角=34度である。図2中、S2軸は、紙面下から上に垂直に貫く軸であり、図2は、ポアンカレ球を、S2軸の正の方向から見た図である。ここで、S1、S2、S3座標は、ある偏光状態のストークスパラメーターの値を表している。また図2は、平面的に示されているので、偏光状態の変化前と変化後の点の変位は、図中直線の矢印で示されているが、実際は、液晶層や光学補償フィルムを通過することによる偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、それぞれの光学特性に応じて決定される特定の軸の回りに、特定の角度回転させることで表される。
【0012】
図1中の偏光板51を通過した入射光の偏光状態は、図2では点(i)に相当し、図1中の偏光板52の吸収軸によって遮光される偏光状態は、図2では点(ii)に相当する。従来、VAモードの液晶表示装置において、斜め方向におけるOFF AXISの光抜けは、出射光の偏光状態が点(ii)からずれていることに起因する。光学補償フィルムは、一般的に、液晶層における偏光状態の変化も含めて、入射光の偏光状態を正しく点(i)から点(ii)に変化させるために用いられる。
【0013】
二軸プレートである光学補償フィルム54を通過することによる入射光の偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、図2中の「A」を付された矢印で示される軌跡をたどる。ポアンカレ球上での回転角度は、液晶表示装置を観察する斜め方向からの実効的なレターデーションΔn’d’を光の波長λで割った値Δn’d’/λに比例する。上記した通り、光学補償フィルム54として一般的な延伸ポリマーフィルムを用いると、Reは波長が短いほど大きくなり、R、G、Bで実効的なレターデーションReは異なり、且つ波長λの逆数も短波長であるほど大きくなることから、波長が異なるR、G、Bの各波長においては、回転角度はB>G>Rの順となる。すなわち回転後におけるR、G、Bの偏光状態、すなわち(S1、S2、S3)座標は図2に示す通りとなる。
【0014】
液晶セル53の液晶層は正の屈折率異方性を示し、垂直配向しているので、液晶層を通過することによる入射光の偏光状態の変化は、ポアンカレ球上では、図2中「LC」を付された上から下への矢印で示さる軌跡をたどり、S1軸周りの回転として表される。
【0015】
次に、Cプレートである光学補償フィルム55を通過する際の、B、G、Rの偏光状態の変換は、ポアンカレ球上では、図2中、「C」を付した矢印で示されている通り、S1−S2面の法線方向への移動で表される。図2に示す通り、この移動によっては、S1座標が一致せず、異なる偏光状態にあるR光、G光、B光の全てを、点(ii)の偏光状態に変換することは不可能である。このずれた波長の光が偏光板2で遮断されないため光漏れが生じる。光の色はR、G、Bの足し合わせからなるので、特定の波長の光だけが光漏れすると、R、G、Bの足し合わせの比率がずれるために、色味の変化がおこる。これが、液晶表示装置を斜め方向から見たときに「色味変化」となって観察される。
ここで、本明細書においては、R、G、Bの波長として、Rは波長630nm、Gは波長550nm、Bは波長450nmを用いた。R、G、Bの波長は必ずしもこの波長で代表されるものではないが、本発明の効果を奏する光学特性を規定するのに適当な波長であると考えられる。
【0016】
本発明者は、この従来の問題点を解決するため、以下の点に着目した。黒表示時のVAモードの液晶セルやCプレート等に代表される厚み方向のレターデーションRthが面内レターデーションReと比較して大きい複屈折媒体を通過することによる偏光状態の変換は、図2中、「LC」及び「C」の矢印で示される通り、ポアンカレ球上では、R光、G光及びB光のいずれについてもS1座標についての変位はほとんどない。従って、偏光子を通過した後、最初に、二軸プレート等に代表される光学的に二軸性の面内に光軸を有する第1の光学異方性層を通過した後のR光、B光及びG光の偏光状態が、図3に示す通り、ポアンカレ球上のS1座標として概ね一致していれば、その後、垂直配向状態の液晶層や所定の光学特性を満足する第2の光学異方性層を通過しても、R光、B光及びG光の偏光状態のS1座標は一致する。従って、R光、B光及びG光の状態がS1座標についても一致していない従来の図2の状態よりも、色味変化は軽減される。
【0017】
その後、図4に示す通り、VAモードの液晶セルを通過すると、R光、G光及びB光の偏光状態は、図中矢印13で示す様に変化し、S3座標が相違して分離してしまうが、この分離は、第2の光学異方性層の波長分散性を利用することで解消することができる。より具体的には、第2の光学異方性層に、0nm<|Re(550)|<10nmかつ|Rth(550)|/|Re(550)|>10を満足し、且つそのRthの波長分散性が順分散性を示す材料を用いれば、図5に示す通り、図中矢印15で示す様に、R光、G光及びB光のS1座標を相違させることなく、いずれについてもS1軸上、即ち、消光点(ii)の偏光状態に変換することができる。その結果、斜め方向において、より色味付きを軽減できるとともに、コントラストをより改善することができる。尚、上記では、偏光子を通過した後の光が第1の光学異方性層を通過するとして説明したが、第1と第2の光学異方性層を入れ替えても同様の効果が得られる。
【0018】
上記原理的考察に基づき検討した結果、光学補償フィルムとして本発明のセルロースエステルフィルム(以下「セルロースアシレートフィルム」とも称する)を用いることにより黒表示の際の斜め方向における色味付きを軽減できるとともに、コントラストを改善できる。
本発明は700nm以上1200nm以下に最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルムに関する。
式(1) Rth(450)≧Rth(550)≧Rth(630)
式(2) 0≦Re(550)≦10
式(3) 30≦Rth(550)≦250
[ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。]
【0019】
(赤外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは700nm以上1200nm以下に極大吸収波長を有する赤外線吸収剤を少なくとも1つ含有する。以下、赤外線吸収剤について説明する。
【0020】
本発明に用いられる赤外線吸収剤は少なくとも1つの極大吸収波長が700nm以上1200nm以下にあることが好ましく、800nm以上1000nm以下であることがより好ましい。本発明において極大吸収波長はジクロロメタンを溶媒として測定して得られた値を指す。
本発明に用いられる赤外線吸収剤は、400nm以上600nm以下の波長領域に実質的に吸収を有さないことが好ましく、400nm以上550nm以下の波長領域に実質的に吸収を有さないことがより好ましい。実質的に吸収を有さないとは赤外線吸収剤の1.0g/リットルのジクロロメタン溶液のセル長1cmでの吸光度が5.0以下であり、2.0以下であることがより好ましく、0〜1.0であることがさらに好ましい。
【0021】
赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、チオール系金属錯塩、アミノチオフェレート系金属錯塩、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、アミニウム塩、ピリリウム系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、トリアリルメタン系化合物、アズレニウム系化合物、インドフェノール系化合物およびアントラキノン系化合物等の有機化合物、及びアルミニウム塩等の無機化合物等を挙げることができる。
【0022】
好ましい赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、アミニウム塩、ポリメチン系化合物、ベンゼンジチオール金属錯体、およびアミノチオフェレート系金属錯塩等を挙げることができる。
【0023】
具体的には、特開昭61−154888、特開昭61−197281、特開昭61−246091、特開昭63−37991、特開昭63−39388、特開昭62−233288、特開昭63−312889、特開平2−43269、特開平2−138382、特開平2−296885、特開平3−43461、特開平3−77840、特開平3−100066、特開平3−62878、特願平3−338557、特願平3−99730、特願平3−252414等に開示されているフタロシアンニン類あるいはナフタロシアニン類、特開昭61−291651、特開昭61−291652、特開昭62−15260、特開昭62−132963、特開平1−129068、特開平1−172458等に開示されているようなアントラキノン類が挙げられる。
【0024】
好ましいシアニン化合物は下記一般式(B)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(B)
【0025】
【化2】

【0026】
式中、Q1、Q2は、縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環を形成するための原子群を示す。R3、R4は、炭素数1〜8のアルキル基を示す。nは、2〜4の整数を示す。
1、Q2は、縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環を形成するための原子群を示し、すなわち、Q1、Q2は、これらに隣接する炭素原子に結合する窒素原子とともに互いに結合して5員または6員の含窒素へテロ環を形成し、この含窒素へテロ環は、縮合環を有していてもよい。この縮合環としては、縮合ベンゼン環、縮合ナフタレン環等が挙げられる。
【0027】
縮合環を有してもよい5員または6員の含窒素へテロ環としては、インドレニン環、4,5−ベンゾインドレニン環、5,6−ベンゾインドレニン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジン環、キノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリミジン環等が挙げられる。
【0028】
これらの環には、ハロゲン原子、アリール基、炭素数1〜4のアルキル基、同じくアルコキシ基、同じくアルキルアミノスルファミド基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基等が置換していてもよい。
【0029】
ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
アリール基としては、単環であっても縮合環を有するものであってもよく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらは、さらに置換基を有していてもよい。
【0031】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0032】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、テトラフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
【0033】
炭素数1〜4のアルキルアミノスルファミド基としては、例えば、メチルアミノスルファミド基、エチルアミノスルファミド基、プロピルアミノスルファミド基、ブチルアミノスルファミド基等が挙げられる。
【0034】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジ−n−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0035】
また、R3、R4は、炭素数1〜8のアルキル基を示す。これらには、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)等が置換していてもよい。
【0036】
さらに、nは、2〜4の整数を示す。
【0037】
好ましいフタロシアニンあるいはナフタロシアンは下記一般式(I)あるいは一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(I)
【0038】
【化3】

【0039】
一般式(II)
【0040】
【化4】

【0041】
式(I)、(II)中、A1 〜A8 は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は未置換のアルキル基、あるいは置換又は未置換のアルコキシ基を表し、かつ、A1 とA2 、A3 とA4 、A5 とA6 、およびA7 とA8 の各組み合わせにおいて、同時に水素原子である組み合わせとなることはない。他方、B1 〜B8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基、置換又は未置換のアルコキシ基、置換又は未置換のアリールオキシ基、置換又は未置換のアルキルチオ基、あるいは置換又は未置換のアリールチオ基を表す。Mは2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子、またはオキシ金属を表す。
【0042】
式(I)、(II)中、A1 〜A8 或いはB1 〜B8 で表される置換又は未置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、1,2-ジメチル−プロピル基、n-ヘキシル基、cyclo-ヘキシル基、1,3-ジメチル-ブチル基、1-iso-プロピルプロピル基、1,2-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2-メチル1-iso-プロピルプロピル基、1-エチル-3-メチルブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-メチル-1-iso-プロピルブチル基、2-メチル-1-iso-プロピル基、1-t-ブチル-2-メチルプロピル基、n-ノニル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基、γ−エトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキル基、クロロメチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピル基等のハロゲン化アルキル基、アルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルアミノカルボニルアルキル基、アルコキシスルホニルアルキル基、アルキルスルホニル基などが挙げられる。
【0043】
また、置換または未置換のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、iso-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、1,2-ジメチル−プロピルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、cyclo-ヘキシルオキシ基、1,3-ジメチル-ブチルオキシ基、1-iso-プロピルプロピルオキシ基、1,2-ジメチルブチルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、1,4-ジメチルペンチルオキシ基、2-メチル-1-iso-プロピルプロピルオキシ基、1-エチル-3-メチルブチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3-メチル-1-iso-プロピルブチルオキシ基、2-メチル-1-iso-プロピルオキシ基、1-t-ブチル-2-メチルプロピルオキシ基、n-ノニルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、プロポキシエトキシ基、ブトキシエトキシ基、γ−メトキシプロピルオキシ基、γ−エトキシプロピルオキシ基、ジメトキシメトキシ基、ジエトキシメトキシ基、ジメトキシエトキシ基、ジエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、ブチルオキシエトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルコキシ基、クロロメトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピルオキシ基等のハロゲン化アルコキシ基、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基などのアルキルアミノアルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基等が挙げられる。
【0044】
1〜B8 で表される置換又は未置換のアリール基の例としては、フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、フッ素化フェニル基、ヨウ素化フェニル基等のハロゲン化フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ピリジル基などが挙げられる。置換又は未置換のアリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アルキルフェノキシ基などが挙げられ、置換又は未置換のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチル−プロピルチオ基、n-ヘキシルチオ基、cyclo-ヘキシルチオ基、1,3-ジメチル-ブチルチオ基、1-iso-プロピルプロピルチオ基、1,2-ジメチルブチルチオ基、n-ヘプチルチオ基、1,4-ジメチルペンチルチオ基、2-メチル1-iso-プロピルプロピルチオ基、1-エチル-3-メチルブチルチオ基、n-オクチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、3-メチル-1-iso-プロピルブチルチオ基、2-メチル-1-iso-プロピルチオ基、1-t-ブチル-2-メチルプロピルチオ基、n-ノニルチオ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキルチオ基、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、エトキシエチルチオ基、プロポキシエチルチオ基、ブトキシエチルチオ基、γ−メトキシプロピルチオ基、γ−エトキシプロピルチオ基、メトキシエトキシエチルチオ基、エトキシエトキシエチルチオ基、ジメトキシメチルチオ基、ジエトキシメチルチオ基、ジメトキシエチルチオ基、ジエトキシエチルチオ基等のアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルキルチオ基、アルコキシアルコキシアルコキシアルキルチオ基、クロロメチルチオ基、2,2,2-トリクロロエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、1,1,1,3,3,3,-ヘキサフルオロ-2-プロピルチオ基等のハロゲン化アルキルチオ基、ジメチルアミノエチルシチオ基、ジエチルアミノエチルチオ基等のアルキルアミノアルキルチオ基、ジアルキルアミノアルキルチオ基等が挙げられる。置換又は未置換のアリールチオ基の例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アルキルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0045】
また、Mで表される2価金属の例としては、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Ru(II),Rh(II),Pd(II),Pt(II),Mn(II),Mg(II),Ti(II),Be(II),Ca(II),Ba(II),Cd(II),Hg(II),Pb(II),Sn(II)などが挙げられる。1置換の3価金属の例としては、Al−Cl,Al−Br,Al−F,Al−I,Ga−Cl,Ga−F,Ga−I,Ga−Br,In−Cl,In−Br,In−I,In−F,Tl−Cl,Tl−Br,Tl−I,Tl−F,Al−C6 5 ,Al−C6 4 (CH3 ),In−C6 5 ,In−C6 4 (CH3 ),Mn(OH),Mn(OC6 5),Mn〔OSi(CH3 3 〕,Fe−Cl,Ru−Cl等が挙げられる。2置換の4価金属の例としては、CrCl2 ,SiCl2 ,SiBr2 ,SiF2 ,SiI2 ,ZrCl2 ,GeCl2 ,GeBr2 ,GeI2 ,GeF2 ,SnCl2 ,SnBr2 ,SnF2 ,TiCl2 ,TiBr2 ,TiF2 ,Si(OH)2 ,Ge(OH)2 ,Zr(OH)2 ,Mn(OH)2 ,Sn(OH)2 ,TiR2 ,CrR2 ,SiR2 ,SnR2 ,GeR2 〔Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す〕,Si(OR')2 ,Sn(OR')2 ,Ge(OR')2 ,Ti(OR')2 ,Cr(OR')2 〔R'はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す〕,Sn(SR")2 ,Ge(SR")2 (R"はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す)などが挙げられる。オキシ金属の例としては、VO,MnO,TiOなどが挙げられる。
【0046】
好ましいポリメチン系化合物として下記一般式(C)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(C)
【0047】
【化5】

【0048】
3〜R6は水素原子または一価の有機残基であって、R3とR4またはR5とR6の組み合わせで環を形成してもよい。またR3〜R6の末端は芳香環に結合する窒素原子に対してオルト位に位置する炭素に結合して環を形成してもよい。R7〜R10は水素原子、ハロゲンまたは一価の有機残基を示す。nは0〜3の整数を示す。X-は、ハロゲンイオン、無機酸イオン、有機酸イオンを示す。
【0049】
3〜R6中、一価の有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の5〜6員環のシクロアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の炭素数10以下のアリールアルキル基等が挙げられる。また環形成の場合、R3〜R6はエチレン、プロピレンおよびトリメチレンより選ばれるアルキレン基を意味し、この場合、窒素原子に結合しない他端は、窒素原子のオルト位に当たるベンゼン核炭素と結合するか、R3とR4の他端同志またはR5とR6の他端同志で結合して、環を形成する。
【0050】
またR7〜R10中、一価の有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の5〜6員環のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;アセチル基;式−N(R11)R12で表されるアミノ基を例示することができる。
【0051】
なお、式−N(R11)R12において、R11、R12は前記に例示の炭素数1〜6のアルキル基;5員または6員環のシクロアルキル基;アリール基;またはエチレン、プロピレンおよびトリメチレンより選ばれるアルキレン基を意味し、アルキレン基の場合、窒素原子に結合しない他端は、窒素原子のオルト位に当たるベンゼン核炭素と結合するか、R11とR12の他端同志で結合して環を形成する。
【0052】
製造の容易性と商品化および特に要望される吸収波長特性の点から、前記一般式(C)において−N(R3)R4と−N(R5)R6とがジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基およびピロリジノ基から選ばれる同一の基であり、R7とR8とがメチル基、エチル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、および塩素原子から選ばれる同一の基であり、R9とR10とがいずれも水素原子であり、nが0または1である化合物が好ましい。
【0053】
前記ハロゲンイオンとしては、例えば、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン等が挙げられる。
【0054】
前記無機酸イオンとしては、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
【0055】
前記有機酸イオンとしては、例えば、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0056】
好ましいチオール系金属錯塩として下記一般式(D)で表されるベンゼンジチオール金属錯体を挙げることができる。
一般式(D)
【0057】
【化6】

【0058】
式中、R5は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、アリール基、ハロゲン原子または−COR6もしくは、−SO27で表される基を示す。R6、R7は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、アリール基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいモルホリノ基、同じくピペリジノ基、同じくピロリジノ基、同じくチオモルホリノ基または同じくピペラジノ基を示す。mは1〜4の整数を示す。A+は第4級アンモニウムイオンまたは第4級ホスホニウムイオンを示す。Mは遷移金属原子を表す。
【0059】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0060】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−n−プロピルアミノ基、N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−エチル−イソプロピルアミノ基、N,N−ジ−イソプロピルアミノ基、N,N−ジ−n−プロピルアミノ基、N,N−ジ−n−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0061】
アリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−クロロ−4−ブロモフェニル基、4−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基等が挙げられる。
【0062】
ハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0063】
上記のR6、および上記のR7は、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、アリール基、ハロゲン原子、置換基を有してもよいモルホリノ基、同じくピペリジノ基、同じくピロリジノ基、同じくチオモルホリノ基または同じくピペラジノ基を示す。
【0064】
置換基を有してもよいモルホリノ基としては、例えば、モルホリノ基、2−メチルモルホリノ基、3−メチルモルホリノ基、4−メチルモルホリノ基、2−エチルモルホリノ基、4−n−プロピルモルホリノ基、3−n−ブチルモルホリノ基、2,4−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルモルホリノ基、4−フェニルモルホニル基等が挙げられる。
【0065】
置換基を有してもよいピペリジノ基としては、例えば、ピペリジノ基、2−メチルピペリジノ基、3−メチルピペリジノ基、4−メチルピペリジノ基、2−エチルピペリジノ基、4−n−プロピルピペリジノ基、3−n−ブチルピペリジノ基、2,4−ジメチルピペリジノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基、4−フェニルピペリジノ基等が挙げられる。
【0066】
置換基を有してもよいピロリジノ基としては、例えば、ピロリジノ基、2−メチルピロリジノ基、3−メチルピロリジノ基、4−メチルピロリジノ基、2−エチルピロリジノ基、4−n−プロピルピロリジノ基、3−n−ブチルピロリジノ基、2,4−ジメチルピロリジノ基、2,5−ジメチルピロリジノ基、4−フェニルピロリジノ基等が挙げられる。
【0067】
置換基を有してもよいチオモルホリノ基としては、例えば、チオモルホリノ基、2−メチルチオモルホリノ基、3−メチルチオモルホリノ基、4−メチルチオモルホリノ基、2−エチルチオモルホリノ基、4−n−プロピルチオモルホリノ基、3−n−ブチルチオモルホリノ基、2,4−ジメチルチオモルホリノ基、2,6−ジメチルチオモルホリノ基、4−フェニルチオモルホリノ基等が挙げられる。
【0068】
置換基を有してもよいピペラジノ基としては、例えば、ピペラジノ基、2−メチルピペラジノ基、3−メチルピペラジノ基、4−メチルピペラジノ基、2−エチルピペラジノ基、4−n−プロピルピペラジノ基、3−n−ブチルピペラジノ基、2,4−ジメチルピペラジノ基、2,6−ジメチルピペラジノ基、4−フェニルピペラジノ基、2−ピリミジルピペラジノ基等が挙げられる。
【0069】
5は、上記した各種の置換基のうち、tert−ブチル基、N,N−ジエチルアミノ基、モルホリノカルボニル基、ピロリジノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基、フェニルカルボニル基、N,N−ジエチルアミノカルボニル基、モルホリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、4−メチルピペラジノスルホニル基、4−クロロフェニルスルホニル基、塩素原子を用いると好ましい。
【0070】
第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムイオン、テトラフェニルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0071】
第4級ホスホニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラ−n−ブチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラベンジルホスホニウムイオン、トリメチルベンジルホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0072】
Mで表される遷移金属原子はニッケル、銅、コバルト、白金、パラジウム原子が好ましく、ニッケル原子がより好ましい。
【0073】
好ましいジインモニウム系化合物として下記一般式(E)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(E)
【0074】
【化7】

【0075】
式中、R1、R2、R3、R4は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基またはアリール基を、X-は、ハロゲンイオン、無機酸イオン、有機酸イオンを示す。
【0076】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0077】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−n−プロピルアミノ基、N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−エチル−イソプロピルアミノ基、N,N−ジ−イソプロピルアミノ基、N,N−ジ−n−プロピルアミノ基、N,N−ジ−n−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0078】
アリール基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−クロロ−4−ブロモフェニル基、4−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基等が挙げられる。
【0079】
ハロゲンイオンとしては、例えば、ヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン等が挙げられる。
【0080】
無機酸イオンとしては、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
【0081】
有機酸イオンとしては、例えば、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0082】
上述したジインモニウム塩は、例えば、日本カーリット株式会社の商品名CIR−1080、CIR−1081、日本化薬株式会社の商品名IRG−022、IRG−023、IRG−040として市販されているものを用いることができる。
【0083】
好ましいアミノチオフェレート系金属錯塩として下記一般式(F)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(F)
【0084】
【化8】

【0085】
XはSまたはSeを表し、Mは、金属元素を表す。R1 〜R8 はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基またはシアノ基を表わし、X1 〜X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基,シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表わし、X1 〜X10のうちの少なくとも1つは水素原子ではない。
【0086】
XはSまたはSeを表し、好ましくはSであり、Mは、金属元素を表し、2〜3価の遷移金属が好適に用いられる。好ましくはNi、Pd、Pt、Co、Fe、Ti、SnまたはCu、さらに好ましくはNi、Pd、Pt、Coが用いられ、Niである場合が最も好ましい。 中でも、XがSであり、MがNiである場合、性能的にも優れ、かつ経済的にも有利であることから好ましい。R1 〜R8 は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基またはシアノ基を表わし、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基またはシアン基を表し、さらに好ましくは、水素原子;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基;アリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜5のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;ニトロ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの置換アミノ基;またはシアノ基が挙げられ、特に好ましくは、水素原子が用いられる。最も好ましいのは、R1 〜R8 が全て水素原子である場合である。
【0087】
1 〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基,シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。具体的には、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基、ニトロ基,シアノ基,メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等の置換アルキル基、アリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラキル基が挙げられ、好ましくは、水素原子及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜5のアルコキシ基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ニトロ基、シアノ基等の電子吸引性基が挙げられ、X1 〜X10の中で、少なくともひとつは、水素原子でない。さらに好ましくはX1 〜X10の少なくとも1つがフッ素原子、塩素原子、またはシアノ基であり、残りは水素原子であるのが望ましい。中でも、一般式(F)で表される有機金属錯体が左右対称である場合が、色素としての安定性や合成の容易さの面から好ましい。X1 〜X5 、及びX6 〜X10のうちのそれぞれ1〜3個、さらに好ましくは1〜2個が、フッ素原子、塩素原子、またはシアノ基であり、残りが水素原子であるのが望ましい。
【0088】
好ましいスクワリリウム系またはクロコニウム系化合物として下記一般式(G)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(G)
【0089】
【化9】

【0090】
一般式(G)において、Xは硫黄原子又は酸素原子を表し、R1、R2は水素及び1価の任意の基を表し、m、nは0、1、2、3又は4を表す。
一般式(G)を更に説明する。
式中、R1、R2は各々1価の置換基を表す。1価の置換基には特に制限はないが、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ベンジル基等)、アリール基(例えばフェニル基、4−クロロフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等)であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、t−ブチル基であることが特に好ましい。R1、R2は共同して環を形成してもよい。m、nは各々0から4の整数を表し、2以下であることが好ましい。
【0091】
好ましいクロコニウム系化合物として下記一般式(H)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(H)
【0092】
【化10】

【0093】
一般式(H)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は各々1価の置換基を表す。l、mは0〜4の整数を表す。
一般式(H)の置換基を更に詳しく説明する。式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6が各々表す1価の置換基には制限はないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等)、ヒドロキシル基、アシル基(例えば、アセチル基等)であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基であることがより好ましく、中でも、炭素数5以上の置換基、エーテル結合を有する置換基また、ヒドロキシル基を有していることが好ましい。更には、アルキル基であることが最も好ましい。特に、R1、R2、R3、R4は炭素数5以上の置換基またはエーテル結合をもつ置換基であることが有機溶媒に対する溶解度が改良されて特に好ましい。また、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は協同して環を形成してもよく、例えばR1、R2、R5が協同してジュロリジル基を形成してもよい。l、mは各々0〜4の整数を表し、0または1であることが好ましい。
【0094】
赤外線吸収剤は上記のカチオン体とアニオン体との対イオン結合体として使用してもよい。具体的には一般式(D)のアニオン体と一般式(B)または(C)のカチオン体の対イオン結合体が好ましい例として挙げられる。
【0095】
上記の赤外線吸収剤は、例えば特公昭43−25335号公報、J.Am.Chem.Soc.,88巻、43頁(1966)、特開平9−309886号公報、特開平10−45767号公報、国際公開第98/34988号パンフレット、および特開2001−89492号公報に記載されている方法と同様の方法で合成することができる。
【0096】
以下に本発明に用いられる赤外線吸収剤の好ましい例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0097】
【化11】

【0098】
【化12】

【0099】
【化13】

【0100】
【化14】

【0101】
【化15】

【0102】
【化16】

【0103】
【化17】

【0104】
【化18】

【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
【化21】

【0108】
【化22】

【0109】
【化23】

【0110】
【化24】

【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
【化27】

【0114】
【化28】

【0115】
【化29】

【0116】
【化30】

【0117】
本発明において赤外線吸収剤は単独あるいは2種類以上混合して用いることができる。
【0118】
本発明において赤外線吸収剤はセルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜30質量部、好ましくは0.01〜10質量部用いられる。赤外線吸収剤の添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒に溶解してから、ドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0119】
(セルロースエステルフィルム)
本発明は700nm以上1200nm以下に最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルムに関する。
式(1) Rth(450)≧Rth(550)≧Rth(630)
式(2) 0≦Re(550)≦10
式(3) 30≦Rth(550)≦250
[ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。]
ReおよびRthの値は温度25℃湿度60%RHの環境下でKOBRA 21ADH、WR、エリプソメーターおよびセナルモン法のいずれかで測定したものである。
本発明のセルロースエステルフィルムは700nm以上1200nm以下に最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含むことで式(1)を満たすことができる。
さらに、上記式(1)〜(3)を満たすことで理想的な光学補償が可能となり、液晶表示装置の視野角コントラストと黒状態での色味変化を両立することができる。
【0120】
光学補償フィルムを兼ねた保護膜のRe値およびRth値は、赤外線吸収剤のみならず、セルロースアシレートの置換度、セルロースアシレートフィルムに添加する紫外線吸収剤の種類・量、セルロースアシレートフィルムの乾燥温度・時間、セルロースアシレートフィルムの延伸倍率・延伸温度・延伸時の残留溶媒量により調整することができる。制御因子各々の好ましい範囲、制御方法について以下に説明する。
【0121】
紫外線吸収剤は可視領域の短波長側に正の屈折率を発現し、短波長側のRthの値を大きくすることができる。また700〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収剤は可視領域の長波長側に負の屈折率を発現し、長波長側のRe、Rthの値を低下することができる。
【0122】
本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。
セルロースアシレートフィルムが偏光板の液晶セル側に配置される保護膜である場合、セルロースを構成するグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度をDS2、3位の水酸基のアシル基による置換度をDS3、6位の水酸基のアシル基による置換度をDS6としたときに、下記式(i)および(ii)を満たすことが好ましい。
式(i) :2.0≦DS2+DS3+DS6≦3.0
式(ii):DS6/(DS2+DS3+DS6)≧0.315
上記式(i)および(ii)を満たすことにより、溶剤への溶解性が向上し、また光学異方性の湿度依存性を小さくすることができる。
DS2+DS3+DS6の総和は小さいほうが光学異方性の発現性が大きいが、光学異方性の湿度変化が大きくなり実用的に問題となる。逆にDS2+DS3+DS6の総和が大きいと、光学異方性の湿度変化は小さくなるが、光学異方性の発現性が小さくなる。したがって、光学異方性の発現性と湿度変化を両立させるためには、DS2+DS3+DS6の総和は2.2〜2.9が好ましく、2.4〜2.85がさらに好ましい。
光学異方性の発現性を損なわずに湿度変化を抑制するためには、さらにDS6/(DS2+DS3+DS6)を0.315以上とすることが好ましく、0.318以上とすることが更に好ましい。
本発明の液晶セルの視認側に設けられる保護膜は上記式(i)および式(ii)を満たすことがとくに好ましい。
【0123】
本発明のセルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bが下記式(4)、(5)を満たすことが好ましい。
式(4):2.0≦A+B≦3.0
式(5) :0<B
ここで、式中AおよびBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。 上記式(4)、(5)を満たすことで本発明のセルロースエステルフィルムが偏光板保護膜としても機能することができる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明では、水酸基のAとBとの置換度の総和(A+B)は、上記数式(iii)に示すように、2.0〜3.0であり、好ましくは2.2〜2.9であり、特に好ましくは2.40〜2.85である。また、Bの置換度は上記数式(iv)に示すように、0より大きいことが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。
A+Bが2.0未満であると、親水性が強くなり環境湿度の影響を受けやすくなる。
さらにBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。
また更に、セルロースアシレートの6位のAとBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の調製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の調製が可能となる。
【0124】
前記炭素原子数3以上のアシル基(B)としては、脂肪族基でも芳香族炭化水素基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、好ましくはプロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などである。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイル基である。また、プロピオニル基の場合には置換度Bは1.3以上であるのが好ましい。
【0125】
前記混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0126】
(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースエステルフィルムは380nm以下に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含むことが好ましい。より好ましくは250nm〜380nmに最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含む。最大吸収波長が上記範囲にある紫外線吸収剤を含むことでセルロースエステルフィルムにより理想的な順分散性を付与することができる。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジ−ヒドロキシ−4,4'−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
【0127】
また、下記一般式(III)、(IV)および(V)で表される化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いることができる。
【0128】
一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III)
【0129】
【化31】

【0130】
上記一般式(III)中、R12は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
11は、各々独立に、単結合または−NR13−を表す。ここで、R13は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0131】
12が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R12が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0132】
12が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
11が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。
【0133】
【化32】

【0134】
一般式(III)中、X11は単結合または−NR13−を表す。R13は独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
13が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0135】
13が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、前述のアルキル基の置換基と同様である。
13が表す芳香族環基および複素環基は、R12が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR12の芳香族環および複素環の置換基と同様である。
【0136】
以下に本発明で使用される一般式(III)で表される紫外線吸収剤の具体例を示す。各例示化合物中の同一構造式内に示す複数のRは、同一の基を意味する。Rの定義は具体例番号と共に式の後に示す。
【0137】
【化33】

【0138】
III-(1)フェニル
III-(2)3−エトキシカルボニルフェニル
III-(3)3−ブトキシフェニル
III-(4)m−ビフェニリル
III-(5)3−フェニルチオフェニル
III-(6)3−クロロフェニル
III-(7)3−ベンゾイルフェニル
III-(8)3−アセトキシフェニル
III-(9)3−ベンゾイルオキシフェニル
III-(10)3−フェノキシカルボニルフェニル
III-(11)3−メトキシフェニル
III-(12)3−アニリノフェニル
III-(13)3−イソブチリルアミノフェニル
III-(14)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(15)3−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(16)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(17)3−メチルフェニル
III-(18)3−フェノキシフェニル
III-(19)3−ヒドロキシフェニル
【0139】
III-(20)4−エトキシカルボニルフェニル
III-(21)4−ブトキシフェニル
III-(22)p−ビフェニリル
III-(23)4−フェニルチオフェニル
III-(24)4−クロロフェニル
III-(25)4−ベンゾイルフェニル
III-(26)4−アセトキシフェニル
III-(27)4−ベンゾイルオキシフェニル
III-(28)4−フェノキシカルボニルフェニル
III-(29)4−メトキシフェニル
III-(30)4−アニリノフェニル
III-(31)4−イソブチリルアミノフェニル
III-(32)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(33)4−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(34)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(35)4−メチルフェニル
III-(36)4−フェノキシフェニル
III-(37)4−ヒドロキシフェニル
【0140】
III-(38)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(39)3,4−ジブトキシフェニル
III-(40)3,4−ジフェニルフェニル
III-(41)3,4−ジフェニルチオフェニル
III-(42)3,4−ジクロロフェニル
III-(43)3,4−ジベンゾイルフェニル
III-(44)3,4−ジアセトキシフェニル
III-(45)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
III-(46)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
III-(47)3,4−ジメトキシフェニル
III-(48)3,4−ジアニリノフェニル
III-(49)3,4−ジメチルフェニル
III-(50)3,4−ジフェノキシフェニル
III-(51)3,4−ジヒドロキシフェニル
III-(52)2−ナフチル
【0141】
III-(53)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
III-(54)3,4,5−トリブトキシフェニル
III-(55)3,4,5−トリフェニルフェニル
III-(56)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
III-(57)3,4,5−トリクロロフェニル
III-(58)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
III-(59)3,4,5−トリアセトキシフェニル
III-(60)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
III-(61)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
III-(62)3,4,5−トリメトキシフェニル
III-(63)3,4,5−トリアニリノフェニル
III-(64)3,4,5−トリメチルフェニル
III-(65)3,4,5−トリフェノキシフェニル
III-(66)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0142】
【化34】

【0143】
III-(67)フェニル
III-(68)3−エトキシカルボニルフェニル
III-(69)3−ブトキシフェニル
III-(70)m−ビフェニリル
III-(71)3−フェニルチオフェニル
III-(72)3−クロロフェニル
III-(73)3−ベンゾイルフェニル
III-(74)3−アセトキシフェニル
III-(75)3−ベンゾイルオキシフェニル
III-(76)3−フェノキシカルボニルフェニル
III-(77)3−メトキシフェニル
III-(78)3−アニリノフェニル
III-(79)3−イソブチリルアミノフェニル
III-(80)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(81)3−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(82)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(83)3−メチルフェニル
III-(84)3−フェノキシフェニル
III-(85)3−ヒドロキシフェニル
【0144】
III-(86)4−エトキシカルボニルフェニル
III-(87)4−ブトキシフェニル
III-(88)p−ビフェニリル
III-(89)4−フェニルチオフェニル
III-(90)4−クロロフェニル
III-(91)4−ベンゾイルフェニル
III-(92)4−アセトキシフェニル
III-(93)4−ベンゾイルオキシフェニル
III-(94)4−フェノキシカルボニルフェニル
III-(95)4−メトキシフェニル
III-(96)4−アニリノフェニル
III-(97)4−イソブチリルアミノフェニル
III-(98)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(99)4−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(100)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(101)4−メチルフェニル
III-(102)4−フェノキシフェニル
III-(103)4−ヒドロキシフェニル
【0145】
III-(104)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(105)3,4−ジブトキシフェニル
III-(106)3,4−ジフェニルフェニル
III-(107)3,4−ジフェニルチオフェニル
III-(108)3,4−ジクロロフェニル
III-(109)3,4−ジベンゾイルフェニル
III-(110)3,4−ジアセトキシフェニル
III-(111)3,4−ジベンゾイルオキシフェニル
III-(112)3,4−ジフェノキシカルボニルフェニル
III-(113)3,4−ジメトキシフェニル
III-(114)3,4−ジアニリノフェニル
III-(115)3,4−ジメチルフェニル
III-(116)3,4−ジフェノキシフェニル
III-(117)3,4−ジヒドロキシフェニル
III-(118)2−ナフチル
【0146】
III-(119)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
III-(120)3,4,5−トリブトキシフェニル
III-(121)3,4,5−トリフェニルフェニル
III-(122)3,4,5−トリフェニルチオフェニル
III-(123)3,4,5−トリクロロフェニル
III-(124)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
III-(125)3,4,5−トリアセトキシフェニル
III-(126)3,4,5−トリベンゾイルオキシフェニル
III-(127)3,4,5−トリフェノキシカルボニルフェニル
III-(128)3,4,5−トリメトキシフェニル
III-(129)3,4,5−トリアニリノフェニル
III-(130)3,4,5−トリメチルフェニル
III-(131)3,4,5−トリフェノキシフェニル
III-(132)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0147】
【化35】

【0148】
III-(133)フェニル
III-(134)4−ブチルフェニル
III-(135)4−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(136)4−(5−ノネニル)フェニル
III-(137)p−ビフェニリル
III-(138)4−エトキシカルボニルフェニル
III-(139)4−ブトキシフェニル
III-(140)4−メチルフェニル
III-(141)4−クロロフェニル
III-(142)4−フェニルチオフェニル
III-(143)4−ベンゾイルフェニル
III-(144)4−アセトキシフェニル
III-(145)4−ベンゾイルオキシフェニル
III-(146)4−フェノキシカルボニルフェニル
III-(147)4−メトキシフェニル
III-(148)4−アニリノフェニル
III-(149)4−イソブチリルアミノフェニル
III-(150)4−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(151)4−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(152)4−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(153)4−フェノキシフェニル
III-(154)4−ヒドロキシフェニル
【0149】
III-(155)3−ブチルフェニル
III-(156)3−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(157)3−(5−ノネニル)フェニル
III-(158)m−ビフェニリル
III-(159)3−エトキシカルボニルフェニル
III-(160)3−ブトキシフェニル
III-(161)3−メチルフェニル
III-(162)3−クロロフェニル
III-(163)3−フェニルチオフェニル
III-(164)3−ベンゾイルフェニル
III-(165)3−アセトキシフェニル
III-(166)3−ベンゾイルオキシフェニル
III-(167)3−フェノキシカルボニルフェニル
III-(168)3−メトキシフェニル
III-(169)3−アニリノフェニル
III-(170)3−イソブチリルアミノフェニル
III-(171)3−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(172)3−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(173)3−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(174)3−フェノキシフェニル
III-(175)3−ヒドロキシフェニル
【0150】
III-(176)2−ブチルフェニル
III-(177)2−(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(178)2−(5−ノネニル)フェニル
III-(179)o−ビフェニリル
III-(180)2−エトキシカルボニルフェニル
III-(181)2−ブトキシフェニル
III-(182)2−メチルフェニル
III-(183)2−クロロフェニル
III-(184)2−フェニルチオフェニル
III-(185)2−ベンゾイルフェニル
III-(186)2−アセトキシフェニル
III-(187)2−ベンゾイルオキシフェニル
III-(188)2−フェノキシカルボニルフェニル
III-(189)2−メトキシフェニル
III-(190)2−アニリノフェニル
III-(191)2−イソブチリルアミノフェニル
III-(192)2−フェノキシカルボニルアミノフェニル
III-(193)2−(3−エチルウレイド)フェニル
III-(194)2−(3,3−ジエチルウレイド)フェニル
III-(195)2−フェノキシフェニル
III-(196)2−ヒドロキシフェニル
【0151】
III-(197)3,4−ジブチルフェニル
III-(198)3,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(199)3,4−ジフェニルフェニル
III-(200)3,4−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(201)3,4−ジドデシルオキシフェニル
III-(202)3,4−ジメチルフェニル
III-(203)3,4−ジクロロフェニル
III-(204)3,4−ジベンゾイルフェニル
III-(205)3,4−ジアセトキシフェニル
III-(206)3,4−ジメトキシフェニル
III-(207)3,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
III-(208)3,4−ジイソブチリルアミノフェニル
III-(209)3,4−ジフェノキシフェニル
III-(210)3,4−ジヒドロキシフェニル
【0152】
III-(211)3,5−ジブチルフェニル
III-(212)3,5−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(213)3,5−ジフェニルフェニル
III-(214)3,5−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(215)3,5−ジドデシルオキシフェニル
III-(216)3,5−ジメチルフェニル
III-(217)3,5−ジクロロフェニル
III-(218)3,5−ジベンゾイルフェニル
III-(219)3,5−ジアセトキシフェニル
III-(220)3,5−ジメトキシフェニル
III-(221)3,5−ジ−N−メチルアミノフェニル
III-(222)3,5−ジイソブチリルアミノフェニル
III-(223)3,5−ジフェノキシフェニル
III-(224)3,5−ジヒドロキシフェニル
【0153】
III-(225)2,4−ジブチルフェニル
III-(226)2,4−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(227)2,4−ジフェニルフェニル
III-(228)2,4−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(229)2,4−ジドデシルオキシフェニル
III-(230)2,4−ジメチルフェニル
III-(231)2,4−ジクロロフェニル
III-(232)2,4−ジベンゾイルフェニル
III-(233)2,4−ジアセトキシフェニル
III-(234)2,4−ジメトキシフェニル
III-(235)2,4−ジ−N−メチルアミノフェニル
III-(236)2,4−ジイソブチリルアミノフェニル
III-(237)2,4−ジフェノキシフェニル
III-(238)2,4−ジヒドロキシフェニル
【0154】
III-(239)2,3−ジブチルフェニル
III-(240)2,3−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(241)2,3−ジフェニルフェニル
III-(242)2,3−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(243)2,3−ジドデシルオキシフェニル
III-(244)2,3−ジメチルフェニル
III-(245)2,3−ジクロロフェニル
III-(246)2,3−ジベンゾイルフェニル
III-(247)2,3−ジアセトキシフェニル
III-(248)2,3−ジメトキシフェニル
III-(249)2,3−ジ−N−メチルアミノフェニル
III-(250)2,3−ジイソブチリルアミノフェニル
III-(251)2,3−ジフェノキシフェニル
III-(252)2,3−ジヒドロキシフェニル
【0155】
III-(253)2,6−ジブチルフェニル
III-(254)2,6−ジ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(255)2,6−ジフェニルフェニル
III-(256)2,6−ジエトキシカルボニルフェニル
III-(257)2,6−ジドデシルオキシフェニル
III-(258)2,6−ジメチルフェニル
III-(259)2,6−ジクロロフェニル
III-(260)2,6−ジベンゾイルフェニル
III-(261)2,6−ジアセトキシフェニル
III-(262)2,6−ジメトキシフェニル
III-(263)2,6−ジ−N−メチルアミノフェニル
III-(264)2,6−ジイソブチリルアミノフェニル
III-(265)2,6−ジフェノキシフェニル
III-(266)2,6−ジヒドロキシフェニル
【0156】
III-(267)3,4,5−トリブチルフェニル
III-(268)3,4,5−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(269)3,4,5−トリフェニルフェニル
III-(270)3,4,5−トリエトキシカルボニルフェニル
III-(271)3,4,5−トリドデシルオキシフェニル
III-(272)3,4,5−トリメチルフェニル
III-(273)3,4,5−トリクロロフェニル
III-(274)3,4,5−トリベンゾイルフェニル
III-(275)3,4,5−トリアセトキシフェニル
III-(276)3,4,5−トリメトキシフェニル
III-(277)3,4,5−トリ−N−メチルアミノフェニル
III-(278)3,4,5−トリイソブチリルアミノフェニル
III-(279)3,4,5−トリフェノキシフェニル
III-(280)3,4,5−トリヒドロキシフェニル
【0157】
III-(281)2,4,6−トリブチルフェニル
III-(282)2,4,6−トリ(2−メトキシ−2−エトキシエチル)フェニル
III-(283)2,4,6−トリフェニルフェニル
III-(284)2,4,6−トリエトキシカルボニルフェニル
III-(285)2,4,6−トリドデシルオキシフェニル
III-(286)2,4,6−トリメチルフェニル
III-(287)2,4,6−トリクロロフェニル
III-(288)2,4,6−トリベンゾイルフェニル
III-(289)2,4,6−トリアセトキシフェニル
III-(290)2,4,6−トリメトキシフェニル
III-(291)2,4,6−トリ−N−メチルアミノフェニル
III-(292)2,4,6−トリイソブチリルアミノフェニル
III-(293)2,4,6−トリフェノキシフェニル
III-(294)2,4,6−トリヒドロキシフェニル
【0158】
III-(295)ペンタフルオロフェニル
III-(296)ペンタクロロフェニル
III-(297)ペンタメトキシフェニル
III-(298)6−N−メチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
III-(299)5−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
III-(300)6−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
III-(301)5−エトキシ−7−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
III-(302)3−メトキシ−2−ナフチル
III-(303)1−エトキシ−2−ナフチル
III-(304)6−N−フェニルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
III-(305)5−メトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
III-(306)1−(4−メチルフェニル)−2−ナフチル
III-(307)6,8−ジ−N−メチルスルファモイル−2−ナフチル
III-(308)6−N−2−アセトキシエチルスルファモイル−8−メトキシ−2−ナフチル
III-(309)5−アセトキシ−7−N−フェニルスルファモイル−2−ナフチル
III-(310)3−ベンゾイルオキシ−2−ナフチル
【0159】
III-(311)5−アセチルアミノ−1−ナフチル
III-(312)2−メトキシ−1−ナフチル
III-(313)4−フェノキシ−1−ナフチル
III-(314)5−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
III-(315)3−N−メチルカルバモイル−4−ヒドロキシ−1−ナフチル
III-(316)5−メトキシ−6−N−エチルスルファモイル−1−ナフチル
III-(317)7−テトラデシルオキシ−1−ナフチル
III-(318)4−(4−メチルフェノキシ)−1−ナフチル
III-(319)6−N−メチルスルファモイル−1−ナフチル
III-(320)3−N,N−ジメチルカルバモイル−4−メトキシ−1−ナフチル
III-(321)5−メトキシ−6−N−ベンジルスルファモイル−1−ナフチル
III-(322)3,6−ジ−N−フェニルスルファモイル−1−ナフチル
【0160】
III-(323)メチル
III-(324)エチル
III-(325)ブチル
III-(326)オクチル
III-(327)ドデシル
III-(328)2−ブトキシ−2−エトキシエチル
III-(329)ベンジル
III-(330)4−メトキシベンジル
【0161】
【化36】

【0162】
III-(331)メチル
III-(332)フェニル
III-(333)ブチル
III-(334);下記化学式の化合物
【0163】
【化37】

【0164】
以下に一般式(IV)で表される化合物について説明する。
一般式(IV):Q71−Q72−OH
(式中、Q71は含窒素芳香族ヘテロ環、Q72は芳香族環を表す。)
一般式(IV)において、Q71は含窒素芳香族へテロ環を表し、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環である。
【0165】
好ましい含窒素芳香族ヘテロ環としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等などの各環があげられ、更に好ましくは、トリアジン及び5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的には、1,3,5−トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールなどの各環が好ましく、特に好ましくは、1,3,5−トリアジン環及びベンゾトリアゾール環である。
【0166】
71で表される含窒素芳香族ヘテロ環は、更に置換基を有してもよく、置換基としては後述する置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0167】
72は芳香族環を表す。Q72で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0168】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0169】
72で表される芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q72は更に置換基を有してもよく、下記の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基など)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基など)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、
【0170】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基など)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基など)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基など)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基など)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基など)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基など)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基など)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなど)、
【0171】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基など)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
【0172】
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0173】
以下に一般式(IV)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0174】
【化38】

【0175】
【化39】

【0176】
【化40】

【0177】
【化41】

【0178】
【表1】

【0179】
紫外線吸収剤は下記一般式(A)で表される化合物であっても良い。
【0180】
【化42】

【0181】
一般式(A)中、nは0〜3の整数を表し、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子又は置換基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、イミド基、シリル基、アルキルチオ基)を表し、R6はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。また、R6で表される基は重合性基を部分構造として有する化合物であり、これらを重合したポリマーであるとより好ましい。
【0182】
以下に一般式(V)で表される化合物について説明する。
一般式(V):
【0183】
【化43】

【0184】
一般式(V)中、Q81及びQ82はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X81はNR81(R81は水素原子又は置換基を表す)、酸素原子又は硫黄原子を表す。
81及びQ82で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0185】
81及びQ82で表される芳香族ヘテロ環として、好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のどれかを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環である。
【0186】
81及びQ82で表される芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換又は無置換のベンゼン環である。
【0187】
81及びQ82は更に置換基を有してもよく、置換基としては前記の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0188】
81はNR81(R81は、水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる)、酸素原子又は硫黄原子を表す。X81として好ましくは、NR81(R81として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい)又は酸素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
以下に一般式(V)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0189】
【化44】

【0190】
【化45】

【0191】
【化46】

【0192】
【化47】

【0193】
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
なお、紫外線吸収剤は前記一般式(A)で表される紫外線吸収性モノマーのように、重合性基を有し、熱あるいは光により重合する化合物であっても良い。
【0194】
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%未満では添加効果を十分に発揮することができず、添加量が5質量%を超えると、フィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトする場合がある。
【0195】
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加しても良い。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
【0196】
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
【0197】
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0198】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
【0199】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
【0200】
(添加剤)
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、前記赤外線吸収剤および紫外線吸収剤の他に、例えば、可塑剤、劣化防止剤、染料、微粒子、剥離促進剤などを挙げることができる。
【0201】
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
【0202】
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。また、前記可塑剤が、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートから選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
また、本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。又インライン添加する紫外線吸収剤液に添加しても良い。特開平5−34858号公報に記載されているアントラキノン誘導体のような縮合環のキノン化合物の染料を用いることができる。
【0203】
これらの添加剤を添加する時期はドープ調製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御株式会社))で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、引張試験機(ストログラフ−R2(東洋精機))で測定する弾性率を1500〜4000MPaすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃、弾性率が1500〜3000MPaである。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tg、弾性率を上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
【0204】
(マット剤微粒子)
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオ
リン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
【0205】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1.5μmよりも大きいとヘイズが強くなり、0.2μmよりも小さいときしみ防止効果が小さくなる。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
【0206】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0207】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0208】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0209】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0210】
次に、本発明のセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
(塩素系溶媒)
本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0211】
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組み合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0212】
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/8/5/5/7、質量部)、・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (70/10/10/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、などを挙げることができる。
【0213】
(非塩素系溶媒)
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を調製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
【0214】
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒としては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
【0215】
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
【0216】
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0217】
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)、・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(70/8/10/5/7、質量部)、・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/7/5/8、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/10/5、質量部)、・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/14/5/6、質量部)、・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール (70/20/5/5、質量部)、・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール (60/20/10/5/5、質量部)、・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、
【0218】
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール (50/20/20/5/5、質量部)、・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン (65/10/10/5/5/5、質量部)、・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール (65/20/10/5、質量部)、・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール (65/20/10/5、質量部)、・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール (60/20/10/5/5、質量部)、などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を調製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法。
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0219】
(セルロースアシレート溶液特性)
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として調製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
【0220】
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、溶剤への溶解性の点で好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
【0221】
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折率計で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
【0222】
(ドープ調製)
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0223】
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率 G'(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であるのが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万である。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
【0224】
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0225】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調整されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
【0226】
(製膜)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、・BR>Hープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0227】
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製する際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の方法を本発明では用いることができる。
【0228】
(重層流延)
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
【0229】
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤および紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層にのみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
【0230】
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0231】
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
ドープ膜が流延された金属支持体上の温度、金属支持体上に流延されたドープ膜に当てる乾燥風の温度および風量を調節することによっても、セルロースアシレートフィルムのRe値およびRth値を調整することができる。特にRth値は金属支持体上における乾燥条件の影響を大きく受ける。金属支持体の温度を高くする、またはドープ膜に当てる乾燥風の温度を高くする、乾燥風の風量を大きくする、つまりドープ膜に与える熱量を大きくすることによりRth値は低くなり、逆に熱量を小さくすることによりRthは高くなる。特に流延直後から剥ぎ取るまでの間の前半部の乾燥がRth値に対して大きく影響を与える。
【0232】
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、延伸時のフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg〜Tg+20℃であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。縦延伸は0.1〜50%の延伸が行われる。好ましくは1〜10%の延伸が、特に好ましくは2から5%延伸を行う。横延伸は3〜100%の延伸が行われる。好ましくは10〜50%の延伸が、特に好ましくは20から40%延伸を行う。フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って横延伸の倍率を縦延伸の倍率よりも大きくすることが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2〜40%で好ましく延伸することができる。
面内の遅相軸の幅方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−10〜Tg+20℃であることが好ましい。また緩和工程における残留溶剤量は2〜20%の範囲とすることが好ましい。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から150℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線をもとめることにより求めた。
【0233】
乾燥後得られる本発明のセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常5から500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用として特にVA液晶表示装置用としては40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたセルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
【0234】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内レターデーションおよび膜厚方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA WR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)はフィルム法線方向を入射角0度とし、面内の遅相軸(KOBRA WRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して入射角−50°から+50°まで10°毎に波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA WRが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折率計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA WRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
全幅のRe(590)値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth(590)値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、およびRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0235】
本発明のセルロースアシレートフィルムのフィルム面内の遅相軸角度のバラつきは、ロールフィルムの基準方向に対して−2度から+2度の範囲にあることが好ましく、−1度から+1度の範囲にあることがさらに好ましく、−0.5度から+0.5度の範囲にあることが最も好ましい。ここで、基準方向とは、セルロースアシレートフィルムを縦延伸する場合はロールフィルムの長手方向であり、横延伸する場合はロールフィルムの幅方向である。
【0236】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃10%RHにおけるRe値と25℃80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%RH−Re80%RH)が0〜10nmであり、25℃10%RHにおけるRth値と25℃80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、25℃80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
【0237】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24hrの透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上1800g/m2・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
ガラス転移温度の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点を、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であるため、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
【0238】
弾性率の測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料10mm×150mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))で、チャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で行なった。
吸湿膨張係数の測定は、25℃80%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定値した値L80から25%10%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L10から、次式にて求めた。
(L10−L80)/(80%RH−10%RH)×1000000
【0239】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが0.01〜2%であるのが、好ましい。ここで、ヘイズは、以下のようにして測定できる。
ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定する。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5%であるのが、好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%であるのが、好ましい。
光弾性係数が、50×10-13cm2/dyne以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0240】
(偏光板)
次に、本発明に用いる偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、両側に保護フィルムが貼りあわされてなる偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一枚が前記本発明のセルロースエステルフィルムである。
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。そして、本発明では、少なくとも一方の保護膜として、本発明のセルロースエステルフィルムを用いるのが好ましい。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。液晶セル側の保護膜と、液晶セルと反対側の保護膜の厚み、弾性率、吸湿膨張係数の関係を調整し、偏光板のカールを調節することができる。
【0241】
偏光子の偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
【0242】
本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、 図6に示すように、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルム(図中のTAC1)の遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
なお、偏光板クロスニコル下で作製した偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸(透過軸と直交する軸)との直交精度が1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じ、液晶セルと組み合わせた場合に、十分な黒レベルやコントラストが得られない為、本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。
偏光板のクロスニコルにおける色相a*およびb*は、液晶表示装置の黒表示状態における色味を適切な範囲に設定するために、それぞれ−1.0≦a*≦2.0かつ−1.0≦b*≦2.0が好ましく、−0.5≦a*≦1.5かつ−0.5≦b*≦1.5であることが更に好ましい。
偏光板の色相a*およびb*は、偏光板の可視域における分光透過率を分光光度計で測定し、測定した分光透過率に等色関数を乗じ積分することで三刺激値X、Y、Zを求め、CIE1976L***色空間の定義から求める。詳細は「色再現光学の基礎」((株)コロナ社)に記載がある。
具体的には分光光度計UV−3100(島津製作所(株)製)においてカラー測定モードにおいて、以下の測定条件にて透過率測定を行い偏光板色相を算出した。測定波長範囲:780〜380nm、スキャンスピード:中速、スリット幅:2.0nm、サンプリングピッチ:1.0nm、光源:C光源、視野:2°。ここで、2枚の偏光板はセル側保護膜同士を向かい合わせ、各々の透過軸が直交となるように組合せ、偏光板透過軸が分光光度計の試料室の法線方向(グレーティングの溝の方向)に対して45°となるように配置した。
【0243】
(表面処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0244】
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルムに塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
【0245】
また、本発明に用いる偏光板は、偏光板の他方の側の保護膜の表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたものであるのが好ましい。すなわち、 図7に示すように偏光板の液晶表示装置への使用時において液晶セルと反対側に配置される保護膜(TAC2)には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としてハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、防眩層を、反射防止層やハードコート層にその機能を持たせることにより反射防止層を反射防止層および防眩層として機能させることにより設けても良い。
本発明の偏光板に用いられる上記各機能層としては、特開2007−140497号公報の〔0158〕〜〔0159〕に記載の反射防止層が、同公報の〔0160〕〜〔0161〕に記載の光散乱層が、同公報の〔0162〕〜〔0163〕に記載の中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)が、同公報の〔0164〕〜〔0165〕に記載のハードコート層、帯電防止層に記載された技術を利用できる。
【0246】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を備え、少なくとも1枚の本発明の偏光板を用いた液晶表示装置である。
すなわち、本発明の保護膜は光学補償シートとして有利に用いられる。また、本発明の保護膜を用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の保護膜は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching )、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードに好ましく用いることができる。
【0247】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード、CPAモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、図8に示すように、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板(TAC1、偏光子およびTAC2からなる偏光板)からなるものが挙げられる。液晶セルは、特に図示しないが二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
【0248】
本発明の液晶表示装置において、偏光板の液晶セル側の保護フィルムの少なくとも一枚が下記式(6)を満たすことが好ましい。
式(6) Re(450)≦Re(550)≦Re(630)
【0249】
上記式(6)を満たす保護フィルムは、例えば特開2008−20896に記載されているセルロースアシレートフィルムを用いることができる。具体的な作製手段としては、セルロースアシレートフィルムの延伸(幅手)方向に分子長軸が配向し、かつ分子長軸と直交する方向に分極率の大きな官能基あるいは部位を有する化合物をセルロースアシレートフィルム内に添加することで上記式(6)を持たすセルロースアシレートフィルムを作製することができる。具体的化合物の例として、特開2008−20896〔0046〕〜〔0082〕などが挙げられる。
【0250】
本発明の透過型液晶表示装置の態様では、図8のセルロースアシレートフィルムTAC1に本発明のシート状保護膜を用いることが好ましい。特に、光源側TAC1に本発明の保護膜が用いられることが好ましい。液晶セルへの貼り合わせは、セルロースアシレートフィルム(TAC1)をVAセル側にすることが好ましい。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに本発明の保護膜を用いた場合、これは、上側偏光板(観察側)、下側偏光板(バックライト側)のどちら側でもよい。図8の保護膜(TAC2)は、市販のセルレートアシレートフィルムでも良く、本発明のセルロースアシレートフィルムより薄いことが好ましい。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト株式会社製40μm)、KC5UX(コニカオプト株式会社製60μm)、TD80(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0251】
以下、本発明を実施例に基づき基本的に説明するが、本発明は下記例に限定されない。
【0252】
〔実施例1:偏光板保護膜(A−1〜A−6、B−1〜B−3)の作製〕
(A−1の作製)
下記表2に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムを作製した。さらに溶剤含有率1.0%以下の該フィルムを165℃の環境下で流延方向に3%延伸しA−1を作製した。膜厚は55μmとした。
【0253】
【表2】

【0254】
【化48】

【0255】
(A−2の作製)
下記表3に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液をA−1と同様に流延・延伸し、透明フィルムA−2を作製した。膜厚は50μmとした。
【0256】
【表3】

【0257】
【化49】

【0258】
(A−3の作製)
下記表4に記載の各成分を混合して、セルロースアシレートプロピオネート溶液を調製した。このセルロースアシレートプロピオネート溶液を、ドープ温度30℃で金属支持体上に流延し、得られたウェブをバンド支持体から剥離し、透明フィルムを作製した。さらに溶剤含有率1.0%以下の該フィルムを165℃の環境下で流延方向に3%延伸しA−3を作製した。膜厚は55μmとした。
【0259】
【表4】

【0260】
(A−4の作製)
下記表5に記載の各成分を混合して、セルロースアシレートプロピオネート溶液を調製した。このセルロースアシレートプロピオネート溶液をA−3と同様に流延・延伸しA−4を作製した。膜厚は55μmとした。
【0261】
【表5】

【0262】
【化50】

【0263】
(A−5の作製)
下記表6に記載の各成分を混合して、A−1と同様の手法でA−5を作製した。膜厚は55μmとした。
【0264】
【表6】

【0265】
(A−6の作製)
下記表7に記載の各成分を混合して、A−1と同様の手法でA−6を作製した。膜厚は55μmとした。
【0266】
【表7】

【0267】
(B−1の作製)
下記表8に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で5%流延方向に延伸し、ついでテンターを用いて25%の延伸倍率で幅方向に延伸し、延伸直後に2%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は55μmとした。
【0268】
【表8】

【0269】
【化51】

【0270】
(B−2の作製)
下記表9に記載の各成分を混合して、セルロースアシレート溶液を調製した。このセルロースアシレート溶液を、金属支持体上に流延した。残留溶剤量が25〜35質量%で金属支持体上から剥ぎ取ったフィルムを、延伸温度が約Tg−5〜Tg+5℃の範囲の条件で剥ぎ取りからテンターまでの区間で5%流延方向に延伸し、ついでテンターを用いて15%の延伸倍率で幅方向に延伸し、延伸直後に2%の倍率で幅方向に収縮させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレートフィルムを製膜した。膜厚は79μmとした。
【0271】
【表9】

【0272】
(B−3の作製)
厚さ100μmのノルボルネン系フィルムゼオノアZF14(日本ゼオン(株)製)を150℃で長手方向に1%、幅方向に25%逐次延伸することでB−3を作製した。膜厚は78μmとした。
【0273】
(光学性能の評価)
作製したフィルム(A−1〜A−6、B−1〜B−3)につき、25℃60%RHで波長450nm、550nm、630nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。ここで、A−1〜A−6、B−1〜B−2においては平均屈折率を1.48とし、B−3においては平均屈折率を1.52として、Rth(λ)を算出した。測定結果を表10に示す。
【0274】
【表10】

【0275】
〔実施例2:偏光板の作製〕
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ化カリウム濃度2質量%のヨウ化カリウム水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子Aを得た。
上記A−1〜A−6、B−1〜B−2で作製した保護膜および市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士写真フイルム(株)製)を1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行ったA−1〜A−6、B−1〜B−2と市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士フイルム(株)製)を偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板A−1〜A−6、B−1〜B−2を得た。偏光子の長手方向と保護膜の長手(流延)方向が一致するように貼り合わせた。偏光板保護膜B−3はセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80UL(富士フイルム(株)製)が片側に貼り合わされた偏光子に粘着剤を介して貼りあわせることで偏光板B−3を得た。偏光子の長手方向と保護膜の長手方向が一致するように貼り合わせた。
【0276】
〔実施例3:液晶表示装置の作製〕
市販の40インチVAモード液晶テレビ(SONY製)の表裏の偏光板および位相差板を剥して、液晶セルとして用いた。作製した偏光板A−1を保護膜A−1が液晶セル側に配置され、かつ偏光子の長手方向が液晶セルの縦方向と一致するようにバックライト側に貼り合わせた。さらに作製した偏光板B−1を保護膜B−1が液晶セル側に配置され、かつ偏光子の長手方向が液晶セルの横方向と一致するように視認側に貼り合わせた。こうして、液晶表示装置1を作製した。全く同様にして、バックライト側の偏光板と視認側の偏光板を表11に示すように組み合わせ、液晶表示装置2〜8を作製した。
【0277】
〔実施例4:表示性能の測定〕
上記液晶表示装置について、測定機(EZ−contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、25℃60%に調整された暗室内で黒表示および白表示の輝度および色度を測定し、黒表示におけるカラーシフト(色味変化)およびコントラスト比を算出した。結果を表11に示した。なお、黒表示におけるカラーシフトおよびコントラスト比は以下の指標を用いた。
[コントラスト比]
方位角45°/135°/225°/315°での極角60°におけるコントラスト比の平均値をCRとした。
[カラーシフト]
極角60°で方位角0〜360°視野を回転させたときのu’v’色度図からu’の最大値、最小値をそれぞれu’(max),u’(min)、v’の最大値、最小値をそれぞれv’(max),v’(min)とし次式からΔu’v’を定義した。
Δu’v’={(u’(max)- u’(min))+(v’(max)-v’(min))0.5
【0278】
【表11】

【0279】
表11に示したように、バックライト側保護膜に本発明の範囲外であるRthが20nmのA−5を用いた液晶表示装置5では、正確な光学補償ができておらず斜めCR値が低くなることがわかる。また、バックライト側保護膜に赤外線吸収剤を含まないA−6を用いた液晶表示装置6および7では、色味変化が大きい。他方、レターデーション値が本発明の範囲内にあり、赤外線吸収剤を含む保護膜A−1〜A−4をバックライト側に用いた液晶表示装置1〜4では、色味変化が小さく、斜めCR値も良好となることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】二軸プレートおよびCプレートを用いたVAモード液晶装置の一例の模式図である。
【図2】ポアンカレ球を用いた補償機構の説明図である。
【図3】二軸プレート通過時のポアンカレ球上の軌道を示した図である。
【図4】液晶セル通過時のポアンカレ球上の軌道を示した図である。
【図5】Cプレート通過時のポアンカレ球上の軌道を示した図である。
【図6】本発明の偏光板の製造時におけるセルロースアシレートフィルムの貼り合わせ方法を示す模式図である。
【図7】本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
700nm以上1200nm以下に最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含み、且つ下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) Rth(450)≧Rth(550)≧Rth(630)
式(2) 0≦Re(550)≦10
式(3) 30≦Rth(550)≦250
[ただし、Reは面内レターデーション、Rthは膜厚方向のレターデーション、(λ)は測定波長がλnmであることを意味する。]
【請求項2】
前記セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bが下記式(4)、(5)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
式(4) 2.0≦A+B≦3.0
式(5) B≧0
【請求項3】
380nm以下に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤が下記一般式(A)で表される紫外線吸収性の化合物であることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルム。
【化1】

式中、nは0〜3の整数を表し、R1〜R5は水素原子、ハロゲン原子又は置換基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、イミド基、シリル基、アルキルチオ基)を表し、R6はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基を表す。また、R6で表される基は重合性基を部分構造として有してもよい。
【請求項5】
偏光子の両側に保護フィルムが貼りあわされてなる偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一枚が請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステルフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板を備え、少なくとも1枚の偏光板が請求項5に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
偏光板の液晶セル側の保護フィルムの少なくとも一枚が下記式(6)を満たすことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
式(6) Re(450)≦Re(550)≦Re(630)
【請求項8】
液晶セルが垂直配向モードであることを特徴とする請求項6乃至7に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−1434(P2010−1434A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163417(P2008−163417)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】