セルロースエステルフィルムの製造方法
【課題】液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルムについて、汚れ、平面性劣化、両端の折れ、擦り傷の発生がなく、また光学的にも問題ない品質を得ることが出来、また生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】流延支持体上にセルロースエステル溶液を流延しウェブを製造する工程、該ウェブを流延支持体からロールによって剥離する工程、該ロール通過直後から剥離したウェブを両端を担持しながら無接触で搬送する工程、を有する溶液流延製膜方法により膜厚20〜85μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、前記無接触でウェブを搬送する工程では、剥離ロール通過直後からウェブの空気面に、スリット状孔またはパンチ板エアー吹き出し孔から圧力のかかった気体を当てながら搬送することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【解決手段】流延支持体上にセルロースエステル溶液を流延しウェブを製造する工程、該ウェブを流延支持体からロールによって剥離する工程、該ロール通過直後から剥離したウェブを両端を担持しながら無接触で搬送する工程、を有する溶液流延製膜方法により膜厚20〜85μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、前記無接触でウェブを搬送する工程では、剥離ロール通過直後からウェブの空気面に、スリット状孔またはパンチ板エアー吹き出し孔から圧力のかかった気体を当てながら搬送することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの溶液流延製膜方法によるセルローストリアセテートフィルムの製造方法は、図1に示したようなセルローストリアセテートフィルムの製造装置により行われている。図1は溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図である。
【0003】
セルローストリアセテートフィルムは、セルローストリアセテート溶液(以下、このような溶液をドープとも呼ぶ)を鏡面処理された表面を有する無端走行する金属支持体(例えばベルトあるいはドラム)3上にダイ2からドープ膜1として流延し、このドープ膜1を(これをウェブ1とも呼ぶ)剥離ロール4で剥離し、乾燥装置5に導入し、ロール群6によってウェブ1を引き回し、その間にウェブ1は導入された乾燥ガス風7によって乾燥されセルローストリアセテートフィルムとして巻取り機8で巻き取られ製造される。
【0004】
通常乾燥は、図1のようにウェブを多数の搬送ロールを千鳥状に通し、乾燥風を当てて行われるのが一般的であるが、特許文献1に記載のように、赤外線などで乾燥する方法もある。このウェブを直接ロールに掛けるのではなくエアを吹き出してその圧でウェブを浮上させることにより掛架体と非接触状態で移動させる方式も開発されている(例えば特許文献2など)。
【0005】
一方、ポリエステル、ポリプロピレンなどのフィルムの機械強度等を改善するために行われる延伸方法の一つにフィルムの両側縁部をクリップ等で固定して2〜6倍延伸するテンター方式がある。このテンター方式を利用してフェノキシ樹脂等のフィルムから液晶表示パネルの基板を製造する技術も開発されており(特許文献3)、このフィルムにはセルロースアセテートフィルムも使用出来ることがその中に示唆されており、特許文献4および5に示されているようなテンターによりセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されている。
【0006】
図2は、テンター乾燥機を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図である。剥離ロール4で剥離されたウェブ1は、テンター乾燥機9に導入されウェブの両端をクリップで把持されて幅を保持されるか、または若干の幅延伸が行われながら乾燥される。
【0007】
しかしながら、セルロースエステルフィルムの生産速度が益々速くなるに従い、金属支持体からウェブを剥離する際のウェブに残留する溶媒量(以降残留溶媒量という)が多くなり、ウェブは柔らかく不安定になる。通常の搬送ロールでは、このような柔らかいウェブは、安定した搬送が出来難いばかりか、搬送中ウェブに擦り傷がついたり、また乾燥中のウェブから可塑剤や紫外線吸収剤等のウェブ中の添加剤が析出しロールを汚す。その結果ウェブに汚れ、ムラや押されによる平面性劣化等を生じ、フィルムの品質を低下させるという問題があった。
【0008】
また、生産速度が高くなると残留溶媒量が多くなり、ウェブは柔らかさが増すため部分的な伸びが生じ易く、平面性が劣化するばかりでなく、このフィルムを使用した液晶画像表示装置の見易さに関係するフィルムの長さ方向、幅方向、厚み方向の屈折率が乱れ、液晶画像表示装置の品質にも影響を及ぼす場合がある。
【0009】
そこで、これらを避けるため、剥離後直ぐに、ウェブの両端をクリップで把持しながら搬送乾燥させるテンター方法があるが、剥離後いきなりテンターで乾燥する方法は、残留溶媒量が多い場合、ウェブの両端のカールが強まり端部が丸まりクリッピングがしにくくなり、端部が折れたり、ウェブに裂けが入ったりするようなクリッピングの失敗により生産中断を引き起こし、生産性が極端に低下していた。
【0010】
ハロゲン化銀写真感光材料に使用していたセルローストリアセテートフィルムの厚さは90〜200μmで比較的厚く、安定して生産することが出来るが、最近の液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムは20〜85μmと薄手のフィルムが求められるようになり、薄手になればなるほどドープ中の添加剤が析出または揮発して汚れ易く、ウェブの両端の折れが発生し易く、また擦り傷も付きやすくなり、従来のセルローストリアセテートフィルムの製造装置では、安定した生産が出来にくくなっている。
【特許文献1】米国特許第2,319,053号公報
【特許文献2】特開昭55−135046号公報
【特許文献3】特開昭59−211006号公報
【特許文献4】特開平4−284211号公報
【特許文献5】特開昭62−115035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、液晶画像表示装置やハロゲン化銀写真感光材料に有用な、特に薄手の液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムを、溶液流延製膜法による製造装置及びその製造方法を用いて高速生産する際、ウェブの残留溶媒量が多くなっても、またフィルムが薄手になっても汚れ、平面性劣化、両端の折れ、擦り傷の発生がなく、また光学的にも問題ない品質を得ることが出来、また生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウェブを剥離後直ちにテンターに導入する従来のセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法と異なり、剥離後のウェブの金属支持体上での空気側の面に対して無接触で搬送する手段を有する装置を、剥離ロール直後からテンター導入口の間に設ける製造装置及び製造方法である。この装置及び方法を用いることにより、擦り傷や、添加剤の析出や揮発による汚れ、両端のカールの発生を防ぐことが出来、更にその部分の乾燥温度をコントロールすることにより、品質及び生産性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることが出来るのである。
【0013】
なお、本発明において、剥離後のウェブの面を指定する表現として、ドープ流延後の金属支持体上でのウェブの面には、金属支持体側に接している面と反対面の空気側の面とがあるが、これより以降、前者をB面と、また後者をA面という場合がある。
【0014】
また、本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0015】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【発明の効果】
【0016】
薄手のセルロースエステルフィルム特に液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムを高品質で、且つ高生産で製造出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は下記の構成よりなる。
【0018】
本発明を詳述する。
【0019】
先ず、本発明に係わる溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製膜方法について説明する。
【0020】
先ず、セルロースエステルを有機溶媒に溶解してドープを形成する。
【0021】
本発明に係るセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプから選ばれるセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートである。本発明に係るセルロースエステルのアセチル基の置換度は少なくとも1.5以上は必要であることが好ましい。
【0022】
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、70,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に80,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。
【0023】
セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。
【0024】
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンが好ましく用いられる。
【0025】
しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。
【0026】
ドープ中に、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることにより、セルロースエステルフィルムに起因するハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置の性能を向上させることが出来る。
【0027】
本発明において、セルロースエステルフィルム中に可塑剤を含有させることが好ましい。用いることの出来る可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0028】
可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい、セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下が、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0029】
また、本発明において、セルロースエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0030】
特に、波長370nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。しかしこれらには限定されない。
【0031】
紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することが出来、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0032】
更に、本発明のセルロースエステルフィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。
【0033】
特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0034】
また本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有するのが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
【0035】
二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。
【0036】
二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばAEROSIL 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0037】
ドープ中には、染料等も添加されることがある。ハロゲン化銀写真感光材料用にはライトパイピング防止用の着色剤が添加される。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。また、この他、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
【0038】
これらの添加剤は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0039】
次に、ドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。
【0040】
金属支持体の表面は鏡面となっている。流延工程は、上記の如きドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に走行する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの金属支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。
【0041】
加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0042】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブを支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。金属支持体を20℃以下にしてドープを冷却し固化させてウェブの剥離を早める方法もあるが、この場合ほとんどウェブの乾燥は進まない状態で剥離することになる。本発明においては、出来る限り金属支持体上で乾燥することが好ましい。
【0043】
剥離工程は、金属支持体上で冷却固化して、あるいは有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後ウェブは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0044】
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。液晶表示装置に用いるセルロースエステルフィルムは乾燥後の膜厚が20〜170μmの範囲にあり、その都度乾燥温度を変えればよい。本発明においては、20〜100μmの範囲が好ましい。100μm以下のセルロースエステルフィルムに対応するウェブは金属支持体上でかなり乾燥されており、より低いレベルの残留溶媒量で剥離される。
【0045】
本発明は、剥離ロールからテンター導入口までの間に新規の手段を用いたセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法に関するもので、ウェブのA面にロール等が接して起こる可塑剤や紫外線防止剤のような添加剤による汚れや押されによる平面性劣化、また剥離後のウェブ両端のカール、更に擦り傷の発止等のトラブルを下記の方法により改善するものである。
【0046】
すなわち、本発明は、ウェブを剥離ロールからテンター導入口までの間に、少なくともウェブのA面に対して無接触で搬送する手段を有するセルロースエステルフィルムの製造装置であり、搬送ロールを使用する場合にはA面に対して接触する搬送ロールを3本以内とするものである。ウェブを剥離ロールからテンター導入口までの間を無接触で搬送する手段を有する装置によるウェブの搬送距離は、剥離ロール以降テンターが終了するまでのウェブの全搬送距離の10〜60%を占めることが好ましい。
【0047】
本発明において、剥離ロールの後からテンター導入口までの間、ウェブを無接触で搬送するというのは、仕上がりフィルム中の製品として使用する両端以外の中程の部分を無接触で搬送するという意味であり、またA面には他の物体を接触させないで搬送するということも含まれる。薄手のウェブになればなるほど、A面からウェブ中の添加物が析出または揮発し易いため、ウェブのA面について特に他の物体に接触させないようにするのである。
【0048】
本発明で用いられる無接触で搬送する手段を有する装置は、本発明でいう無接触で搬送する手段のものであれば制限なく使用出来るが、エアーフローター型のもの、ウェブの両端の部分をクリップやニップロール等で把持し得るもの、またサクションロール型のものが好ましい。またそれらを組み合わせて用いることによって更に効果を上げることが出来る。
【0049】
またウェブが薄手の場合には、金属支持体上での乾燥が進むため、柔らかさも減少し、B面にロール状のものを接触させて搬送させてもよい。また、本発明において、この間での搬送ロール(ガイドロール)を必要とする場合は、A面に接触するロール本数を出来るだけ少なくすることがよく、3本以内である。それも、出来るだけテンター導入口付近で使用するのがよい。
【0050】
図により本発明の無接触搬送手段を有する装置を説明する。
【0051】
図3は、剥離ロールからテンター導入口までの間に、無接触搬送手段を有する溶液流延製膜装置の概略図である。無接触で搬送する手段10については、下記図4〜11に示した無接触で搬送する手段で具体例として説明する。11は無接触で搬送する手段10の装置のカバーで、剥離ロール4の後テンター9の導入口までの間の搬送手段をカバーし、そこで蒸発する有機溶媒や揮発する添加剤を系外に排出したり、その間のウェブ1の加熱するためのものである。加熱の方式は熱風をウェブに当てるようなものでもよく、マイクロウエーブや、近または遠赤外線等を用いてもよい。また、無接触で搬送する手段10の前後、特に後には、図示してないが、ウェブ1を搬送する駆動系がある。
【0052】
図4は、エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。サイン(sin)カーブ状にウェブ1を搬送するエアーフローター型無接触搬送装置で、ヘッダー20から圧力のかかった気体をウェブの両面に吹き出し、吹き出し風22がウェブ1を浮かせ搬送するものである。
【0053】
図5は、スリット状エアー吹き出し孔を有するヘッダーの見取り図である。ヘッダー20には気体を吹き出す多数の孔(開口部)が開いており、図5ではスリット状孔(開口部)21になっている。ウェブ1の両面にヘッダー20のスリット状孔(開口部)21から吹き出す気体により、ウェブ1は互い違いにあるヘッダー20との間をサイン(sin)カーブ状に彎曲しながら搬送される。スリット状孔(開口部)21はウェブ1に対して自由な角度に開けられているスリットでもよい。
【0054】
図6はパンチ板エアー吹き出し孔を有するへッダーの見取り図である。図6ではパンチ板に小さな孔(開口部)21′が多数開いており、孔の形は真円、楕円、それより細長いものなど形には制限はない。
【0055】
図7は、エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。円筒型ヘッダー23にはパンチ板に小さな孔21′がウェブ1を浮かせて搬送する部分にのみ開けられており、図7のようにそのような円筒型ヘッダー23が交互に配列してある。また、図7の円筒にはウェブ1の出入りの所に円筒の幅方向にウェブ幅くらいの棒状の突起の抵抗物24があり、これは吹き出し風22の吹き出しから急激な解放により生じるウェブの振動を抑えるために設けられているもので、この抵抗物がなくてもウェブが円筒型ヘッダー23に接触しないで搬送出来るヘッダーのエアー条件もあるが、あった方が好ましく、その断面形状は三角形、正方形、その他の形であっても形は問わない。
【0056】
図8は、円筒型ヘッダーの見取り図である。ウェブが浮いて通過する円筒型ヘッダー23の面には多数の小さな孔(開口部)21′が開けられており、孔の形は円形、楕円形、スリット形、より細長い形のものなどウェブを浮かせて搬送出来るものであれば特に制限はない。図8では、円筒型ヘッダー23の面の小さな孔21′が内側よりも周辺部に密に開けられている。パンチ板の周辺部の孔の開口率は内側より大きく、開口率として2〜20倍にすることによりウェブ1を安定して搬送することができる。開口率を変化させるには、孔の大きさ、孔の数などで調節すればよい。
【0057】
図9は、ポケット型の孔の断面拡大図である。このポケット型の孔26はヘッダー20または23の孔(開口部)21′から吹き出す風22が外側(図面では上)に出てウェブ1に当たる時、ウェブの支持体張力変動が発生した際のクッションの効果を発揮する機構のもので、単なる筒型の孔よりこのようなポケット型の孔26となっていることが好ましい。
【0058】
ポケット孔26の形状、広げられた孔の大きさ、深さ、パンチ板との関係は特に制限なく形成してもよいが、例えば、上側のポケットの孔の大きさは内側の孔の2〜5倍くらいで、ポケット孔の深さはその直径の0.2〜5倍くらいがよい。
【0059】
ヘッダー20または23から吹き出る風22の圧力は200〜1200Paであればよく、「パンチ板の小さな孔21′の総面積/ウェブがヘッダーを抱いている全面積」比を抑えた図7及び8の静圧型のエアーフローター型ヘッダーではヘッダー圧力を1000〜4000Paとすることが好ましい。
【0060】
図10は、ウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図である。ウェブ1の両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルト27で把持し、可動式のキャタピラ状のベルト27は動力源(図示してない)から伝達された回転する複数のホイール28で無端走行して回転し、ウェブ1を無接触で搬送する。
【0061】
ホイール28はスプロケットのようなものでもよいし、可動式キャタピラ状ベルトに同調して動力伝達出来るものであれば何れでもよい。可動式のキャタピラ状のベルト27の表面は平面であるよりも、ピンのような突起29やウェブ1の搬送方向に溝(図示してない)がある方がよく、それらが上下の可動式のキャタピラ状のベルト27にあることにより、ウェブ1を上下からしっかりと把持出来るようになっている。可動式のキャタピラ状のベルト27の表面の形状はウェブ1をしっかりと把持出来る物で有れば制限なく用いることが出来る。
【0062】
図11は、ウェブの両面の両端を幅の狭い複数対のニップロールにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図である。ウェブ1の両端を上下からニップする複数対のロール30には、凹凸31がある形状の方がないものより把持し易く好ましく、エンボッシング加工用のような凹凸があってよく、その形には特に制限ない。より好ましくは上下が雄雌の噛み合わせ型になっていることが好ましい。
【0063】
また、その形状は、先の鋭角なもの、溝状のもの等、凹凸の形状、大きさ及び高さはしっかり把持出来るものであれば制限ない。ウェブが自重で垂れ下がるような場合には、ウェブの下側から図5または6のようなヘッダーで気体を当てて支えてもよい。該複数対のニップロール30は駆動ロール(図示してない)と全て同調して回転するのが好ましい。該複数対のニップロール30の圧力としては30〜500Pa程度でよく、50〜200Paが好ましい。
【0064】
図12は、サクションロール型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。ウェブ1のB面がアーチを形成しているサクションロール32に接し、全てのサクションロール32は、図示してないドライブロールと同調して回転しており、サクションチャンバー33が減圧になっていて、サクションロール32とウェブによって隙間が減圧され、ウェブ1は吸い付けられながら移動するようになっている。
【0065】
つまりウェブのA面が無接触でサクションロール32上で搬送されるようになっているのである。サクションロール32は同調しながら回転しているので擦り傷などが出来ないようになっている。サクションチャンバー33における減圧度としては300〜2000Pa程度でよく、好ましくは500〜1000Paである。減圧はダクト34を通して減圧機(図示していない)により行われる。
【0066】
また、図示してないが、ウェブのB面に接する該ウェブ幅以上の長さのロールとウェブのA面の両端を把持する幅の狭いロールでウェブを搬送する手段も好ましく用いることが出来る。幅の狭いロールは図10に示したウェブのA面に接するロール30と同様なものでよい。またB面に接する長いロールのウェブの両端が接する部分に上記ロール30と同様な形状の突起があっても良い。
【0067】
更に、本発明の無接触で搬送する手段は、例えば、ポリエステルフィルムの延伸時に使用するようなクリップでウェブの両端を把持して搬送する手段(図示してない)であってもよい。
【0068】
より更に、これも図示してないが、少なくとも片面のウェブの両端を吸盤のようなウェブを吸い付けるようなもので把持して無接触で搬送する手段でもよい。
【0069】
本発明においては、上記の種々の手段を併用するのが好ましく、エアーフローター型またはサクションロール型の搬送手段の場合には、その前に両端を把持する搬送手段を用い併用するのが好ましいし、複数対のニップロールの場合にはウェブが弛まないようにヘッダーで吹き付けて支えてもよい。
【0070】
本発明において、剥離ロールの直後からテンター導入口までの間で、ウェブを急激に乾燥させることは、ウェブの幅の収縮や、両端からのカールが急激に起こり、操作を失敗したり、また平面性も劣化し、またロール接触による擦り傷が発生するが、本発明の無接触で搬送する手段を用いることによってこれらを防ぐことが出来る。その間では、ウェブを幅方向にはほとんど引っ張ることなく、若干幅方向に弛み、剥離された幅に対して若干幅方向に乾燥収縮により引っ張られるが、無接触部での仕上げフィルムの幅は0.95〜1.05倍くらいになるとよい。
【0071】
またウェブからの有機溶媒の蒸発によるウェブ及び接触する部材の温度を低下(蒸発潜熱による低下)させない程度の温度で30〜60℃がよく、30℃以上40℃以下が好ましい。蒸発潜熱による把持部材や接するロール等の温度が低下するとそれらにウェブからの添加剤が析出し付着し、ウェブを汚し易い。そのために、上記手段でウェブの両端を把持する部材に加熱手段を設け加熱することも好ましい。例えば、突起を有するベルトやニップロールが上記の如く温度を保つことは好ましい。
【0072】
本発明の無接触で搬送する手段を用いる間において、支持体上でのウェブの膜厚、含有する有機溶媒種あるいは加熱方法によって異なるが、ウェブの残留溶媒量は20〜130質量%で搬送されるのがよく、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、ウェブが50μm以下と薄い場合には30質量%以上70質量%未満の残留溶媒量が好ましい。
【0073】
例えば、ウェブの膜厚について、一例を示すと、仕上がり後の膜厚が100μmのウェブでは120質量%以下で本発明の無接触で搬送する手段の部分に導入されるが、膜厚が80μmでは80〜90質量%で、また膜厚が40μmでは30〜40質量%のように、必ずしも直線的な関係にあるとは限らないが変化する。
【0074】
本発明の無接触で搬送する手段の間で、出来れば積極的に加熱するのが好ましいが、加熱温度が高かったり、急激な加熱は、ウェブの両端のカールの発生を招きテンター導入口でのウェブの折れ込みが起こり易く、その都度生産を中断しなければならなくなる。またそればかりでなく、本発明の無接触で搬送する手段においても折れ込みが発生することもあり、このような高温及び急激な加熱は避ける必要がある。
【0075】
なお、本発明のセルロースエステルフィルム製造装置は、本発明の無接触で搬送する手段を有する装置の後にテンター乾燥機を必ず有するものである。テンターはウェブの両端をクリップで把持して、ウェブの幅を保持したり、ウェブを幅方向に延伸したりして、それにより平面性を向上させるのに用いられる。クリップの方式は、ポリエステルフィルムの横延伸に使用されるクリップ、あるいは特開昭62−115035号公報に記載されているようなピンクリップ等を用いるのがよい。
【0076】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段を用いてもよい。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易いので避けた方がよく、テンター内で50〜180℃くらいまで徐々に高くしていくことが好ましい。本発明の無接触搬送後のテンターにおける高温乾燥は、ウェブの膜厚にもよるが、残留溶媒が10質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、50〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間を変える必要がある。
【0077】
乾燥されたウェブは、残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取られる。残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。また、膜厚を均一にする手段として、巻き取り以前で、膜厚検出手段を用いて測定し、プログラムされたフィードバック情報を上記の各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【実施例】
【0078】
本発明を下記実施例により詳細に説明するが、これらに限定されない。
【0079】
実施例1
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150,000)100質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリメチルフォスフェイト10質量部をメチレンクロライド450質量部とエタノール50質量部を加圧密閉容器に投入し、60℃に加温して容器内圧力を2気圧とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させドープを得た。
【0080】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、更に日本精線(株)製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力9.8kPaで濾過し製膜に供した。得られたドープを、ダイからステンレスベルト上に流延した。裏面から38℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、25℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブ中の残留溶媒量が40質量%になった時点でステンレスベルトから剥離した。
【0081】
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図10に示したようなウェブの両端を可動式のキャタピラ状のベルトで把持して搬送する手段と図4及び図6に示したようなエアーフローター型の無接触で搬送する手段を直列に組み合わせて使用した。キャタピラ状のベルトには上下雌雄の互いに咬み合うような突起状凹凸がある。これらにより、ウェブを、ウェブの両端をしっかりと把持して搬送し、両面から40℃の風を当て、その直ぐ後にエアーフローター型の無接触搬送装置で40℃の風をヘッダー開口部静圧として1200Paでウェブに当て支え搬送した。それに続いてテンターにウェブを残留溶媒量25質量%で導入し、70〜100℃でウェブの両端を把持しながら30秒間搬送し乾燥した。更にテンターを出た後、ロール群を有する乾燥機で100〜150℃で10分間乾燥させ、膜厚40μmのフィルムを作製した。なおここで、剥離ロール直後からテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状ベルトで搬送する手段とエアーフローター型の無接触で搬送する手段の合計搬送距離の比率を30%とした。
【0082】
実施例2
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分子量100,000のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、トリメチルフォスフェート10質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、チヌビン171(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.5質量部、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部、酢酸メチル350質量部、エタノール50質量部を加圧密閉容器に投入し、75℃に加温して容器内圧力を2気圧とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させドープを得た。
【0083】
ドープ温度を35℃まで下げて一晩静置し、実施例1と同様に濾過を行い、得られたドープを、ダイからステンレスベルト上に流延した。裏面から50℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、25℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブ中の残留溶媒量が45質量%になった時点でステンレスベルトから剥離した。剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図11に示したようなウェブの両面の両端を複数対のニップロール(ロールには上下雌雄互いに咬み合うように突起状凹凸が施されている)とその後に図7及び8に示したような円筒型のヘッダーを有する無接触で搬送する手段を有する装置を使用した。それにより、先ずウェブを、両端を150Paのニップ圧でしっかりと把持して搬送し、その後、円筒型のヘッダーの内部ヘッダー圧を4000Paとし、ヘッダーから吹き出す風を40℃としてウェブの両面に当てて搬送した。
【0084】
この時のヘッダーの孔(開口部)を、ウェブの出入り部及び両端部の孔の開口率を7%とし、その他の開口率を1%とし、パンチ板の孔を円形で、直径を1mmとし、且つ図9のようなポケット孔のポケット部を直径と深さを各々3mmとし、直径1mm部の厚みを15mmとした。その後、テンターにウェブを残留溶媒量25質量%で導入し、70〜100℃でウェブの両端を把持しながら30秒間乾燥し、テンターを出た後、ロール群を有する乾燥機で100〜150℃で10分間乾燥させ、膜厚40μmのフィルムを作製した。なおここで、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状ベルトで搬送する手段と円筒型のヘッダーを有する彎曲しながら波動のようにウェブを無接触で搬送する手段の合計搬送距離の比率を40%とした。
【0085】
実施例3
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図11に示したようなウェブの両端を複数対の幅の狭いニップロールにより150Paのニップ圧で把持して(上下のニップロールには上下雌雄の咬み合うように設けられた突起状凹凸でしっかりと両端を把持して)搬送し、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対する複数対の幅の狭いニップロールで把持して搬送する手段の搬送距離の比率を45%とした以外は実施例1と同様に厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0086】
実施例4
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図10に示したようなウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトで把持して搬送した後、図12に示したようなサクションロール型のもので500Paの減圧度で吸引しながら搬送し、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状のベルトで把持して搬送手段とサクションロール型の搬送手段の合計搬送距離の比率を55%とした以外は実施例1と同様に厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0087】
比較例1
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間を、図1に示したような搬送ロールを10本通した後に、テンター導入口のウェブの残留溶媒量を20質量%として導入し、剥離ロールの後からテンター出口までの全搬送距離に対する剥離ロールからテンター導入口までの搬送距離の比率を8%とした以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。なお、ロール搬送部での張力を100N/m幅とした。
【0088】
比較例2
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間を、図2のように直ぐにテンターに導入し、剥離ロール後及びテンター導入口でのウェブの残留溶媒量を80質量%とし、剥離ロールの後からテンター出口までの全搬送距離に対する剥離ロールからテンター導入口までの搬送距離の比率を1%とした以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0089】
以上の実施例1〜4及び比較例1及び2において各々を連続24時間製膜した。作製したフィルム面の汚れの状態、擦り傷を、フィルムを蛍光灯に透かして見たり、光を反射させて見たりして観察しフィルムの品質と、またウェブの両端の折れによる作業性のし易さを評価し結果を表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
(結果)
剥離ロールの後からテンター導入口までの間に本発明のウェブを無接触で搬送する手段を用いたものは、ウェブの汚れや擦り傷がなく、ウェブの両端のカールによる折れも全く発生しなかった。これに対して比較例1の汚れと擦り傷が発生し、またウェブはカール起因の端部の折れが発生し作業操作が困難であった。また比較例2は汚れと擦り傷の発生はなかったが、カール起因の端部の折れがはいり生産をしばしば中断しなくてはならず操作性が極めて困難であった。
【0092】
(産業上の利用可能性)
液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルムを、溶液流延製膜法による製造装置及びその製造方法を用いて高速生産する際、汚れ、平面性劣化、両端の折れ、擦り傷の発生がなく、また光学的にも問題ない品質を得ることが出来、また生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図。
【図2】テンター乾燥機を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図。
【図3】剥離ロールからテンター導入口までの間に、無接触搬送手段を有する溶液流延製膜装置の概略図。
【図4】エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【図5】スリット状エアー吹き出し孔を有するヘッダーの見取り図。
【図6】パンチ板エアー吹き出し孔を有するへッダーの見取り図。
【図7】エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【図8】円筒型ヘッダーの見取り図。
【図9】ポケット型の孔の断面拡大図。
【図10】ウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図。
【図11】ウェブの両面の両端を幅の狭い複数対のニップロールにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図。
【図12】サクションロール型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【符号の説明】
【0094】
1 ドープ膜(ウェブ)
2 ダイ
3 金属支持体
4 剥離ロール
5 乾燥装置
6 ロール群
7 乾燥ガス風
8 巻取り機
9 テンター乾燥機
10 無接触で搬送する手段
11 カバー
20 ヘッダー
21 スリット状孔(開口部)
21′ 小さな孔(開口部)
22 吹き出し風
26 ポケット型の孔
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの溶液流延製膜方法によるセルローストリアセテートフィルムの製造方法は、図1に示したようなセルローストリアセテートフィルムの製造装置により行われている。図1は溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図である。
【0003】
セルローストリアセテートフィルムは、セルローストリアセテート溶液(以下、このような溶液をドープとも呼ぶ)を鏡面処理された表面を有する無端走行する金属支持体(例えばベルトあるいはドラム)3上にダイ2からドープ膜1として流延し、このドープ膜1を(これをウェブ1とも呼ぶ)剥離ロール4で剥離し、乾燥装置5に導入し、ロール群6によってウェブ1を引き回し、その間にウェブ1は導入された乾燥ガス風7によって乾燥されセルローストリアセテートフィルムとして巻取り機8で巻き取られ製造される。
【0004】
通常乾燥は、図1のようにウェブを多数の搬送ロールを千鳥状に通し、乾燥風を当てて行われるのが一般的であるが、特許文献1に記載のように、赤外線などで乾燥する方法もある。このウェブを直接ロールに掛けるのではなくエアを吹き出してその圧でウェブを浮上させることにより掛架体と非接触状態で移動させる方式も開発されている(例えば特許文献2など)。
【0005】
一方、ポリエステル、ポリプロピレンなどのフィルムの機械強度等を改善するために行われる延伸方法の一つにフィルムの両側縁部をクリップ等で固定して2〜6倍延伸するテンター方式がある。このテンター方式を利用してフェノキシ樹脂等のフィルムから液晶表示パネルの基板を製造する技術も開発されており(特許文献3)、このフィルムにはセルロースアセテートフィルムも使用出来ることがその中に示唆されており、特許文献4および5に示されているようなテンターによりセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されている。
【0006】
図2は、テンター乾燥機を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図である。剥離ロール4で剥離されたウェブ1は、テンター乾燥機9に導入されウェブの両端をクリップで把持されて幅を保持されるか、または若干の幅延伸が行われながら乾燥される。
【0007】
しかしながら、セルロースエステルフィルムの生産速度が益々速くなるに従い、金属支持体からウェブを剥離する際のウェブに残留する溶媒量(以降残留溶媒量という)が多くなり、ウェブは柔らかく不安定になる。通常の搬送ロールでは、このような柔らかいウェブは、安定した搬送が出来難いばかりか、搬送中ウェブに擦り傷がついたり、また乾燥中のウェブから可塑剤や紫外線吸収剤等のウェブ中の添加剤が析出しロールを汚す。その結果ウェブに汚れ、ムラや押されによる平面性劣化等を生じ、フィルムの品質を低下させるという問題があった。
【0008】
また、生産速度が高くなると残留溶媒量が多くなり、ウェブは柔らかさが増すため部分的な伸びが生じ易く、平面性が劣化するばかりでなく、このフィルムを使用した液晶画像表示装置の見易さに関係するフィルムの長さ方向、幅方向、厚み方向の屈折率が乱れ、液晶画像表示装置の品質にも影響を及ぼす場合がある。
【0009】
そこで、これらを避けるため、剥離後直ぐに、ウェブの両端をクリップで把持しながら搬送乾燥させるテンター方法があるが、剥離後いきなりテンターで乾燥する方法は、残留溶媒量が多い場合、ウェブの両端のカールが強まり端部が丸まりクリッピングがしにくくなり、端部が折れたり、ウェブに裂けが入ったりするようなクリッピングの失敗により生産中断を引き起こし、生産性が極端に低下していた。
【0010】
ハロゲン化銀写真感光材料に使用していたセルローストリアセテートフィルムの厚さは90〜200μmで比較的厚く、安定して生産することが出来るが、最近の液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムは20〜85μmと薄手のフィルムが求められるようになり、薄手になればなるほどドープ中の添加剤が析出または揮発して汚れ易く、ウェブの両端の折れが発生し易く、また擦り傷も付きやすくなり、従来のセルローストリアセテートフィルムの製造装置では、安定した生産が出来にくくなっている。
【特許文献1】米国特許第2,319,053号公報
【特許文献2】特開昭55−135046号公報
【特許文献3】特開昭59−211006号公報
【特許文献4】特開平4−284211号公報
【特許文献5】特開昭62−115035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、液晶画像表示装置やハロゲン化銀写真感光材料に有用な、特に薄手の液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムを、溶液流延製膜法による製造装置及びその製造方法を用いて高速生産する際、ウェブの残留溶媒量が多くなっても、またフィルムが薄手になっても汚れ、平面性劣化、両端の折れ、擦り傷の発生がなく、また光学的にも問題ない品質を得ることが出来、また生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウェブを剥離後直ちにテンターに導入する従来のセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法と異なり、剥離後のウェブの金属支持体上での空気側の面に対して無接触で搬送する手段を有する装置を、剥離ロール直後からテンター導入口の間に設ける製造装置及び製造方法である。この装置及び方法を用いることにより、擦り傷や、添加剤の析出や揮発による汚れ、両端のカールの発生を防ぐことが出来、更にその部分の乾燥温度をコントロールすることにより、品質及び生産性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることが出来るのである。
【0013】
なお、本発明において、剥離後のウェブの面を指定する表現として、ドープ流延後の金属支持体上でのウェブの面には、金属支持体側に接している面と反対面の空気側の面とがあるが、これより以降、前者をB面と、また後者をA面という場合がある。
【0014】
また、本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0015】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【発明の効果】
【0016】
薄手のセルロースエステルフィルム特に液晶画像表示装置用のセルロースエステルフィルムを高品質で、且つ高生産で製造出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は下記の構成よりなる。
【0018】
本発明を詳述する。
【0019】
先ず、本発明に係わる溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製膜方法について説明する。
【0020】
先ず、セルロースエステルを有機溶媒に溶解してドープを形成する。
【0021】
本発明に係るセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプから選ばれるセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートである。本発明に係るセルロースエステルのアセチル基の置換度は少なくとも1.5以上は必要であることが好ましい。
【0022】
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、70,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に80,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。
【0023】
セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。
【0024】
セルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンが好ましく用いられる。
【0025】
しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。
【0026】
ドープ中に、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることにより、セルロースエステルフィルムに起因するハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置の性能を向上させることが出来る。
【0027】
本発明において、セルロースエステルフィルム中に可塑剤を含有させることが好ましい。用いることの出来る可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0028】
可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい、セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下が、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0029】
また、本発明において、セルロースエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0030】
特に、波長370nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。しかしこれらには限定されない。
【0031】
紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することが出来、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0032】
更に、本発明のセルロースエステルフィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等が挙げられる。
【0033】
特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0034】
また本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有するのが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
【0035】
二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。
【0036】
二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばAEROSIL 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0037】
ドープ中には、染料等も添加されることがある。ハロゲン化銀写真感光材料用にはライトパイピング防止用の着色剤が添加される。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。また、この他、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤等も加える場合がある。
【0038】
これらの添加剤は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0039】
次に、ドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。
【0040】
金属支持体の表面は鏡面となっている。流延工程は、上記の如きドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に走行する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの金属支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。
【0041】
加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0042】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブを支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。金属支持体を20℃以下にしてドープを冷却し固化させてウェブの剥離を早める方法もあるが、この場合ほとんどウェブの乾燥は進まない状態で剥離することになる。本発明においては、出来る限り金属支持体上で乾燥することが好ましい。
【0043】
剥離工程は、金属支持体上で冷却固化して、あるいは有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後ウェブは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0044】
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。液晶表示装置に用いるセルロースエステルフィルムは乾燥後の膜厚が20〜170μmの範囲にあり、その都度乾燥温度を変えればよい。本発明においては、20〜100μmの範囲が好ましい。100μm以下のセルロースエステルフィルムに対応するウェブは金属支持体上でかなり乾燥されており、より低いレベルの残留溶媒量で剥離される。
【0045】
本発明は、剥離ロールからテンター導入口までの間に新規の手段を用いたセルロースエステルフィルムの製造装置及び製造方法に関するもので、ウェブのA面にロール等が接して起こる可塑剤や紫外線防止剤のような添加剤による汚れや押されによる平面性劣化、また剥離後のウェブ両端のカール、更に擦り傷の発止等のトラブルを下記の方法により改善するものである。
【0046】
すなわち、本発明は、ウェブを剥離ロールからテンター導入口までの間に、少なくともウェブのA面に対して無接触で搬送する手段を有するセルロースエステルフィルムの製造装置であり、搬送ロールを使用する場合にはA面に対して接触する搬送ロールを3本以内とするものである。ウェブを剥離ロールからテンター導入口までの間を無接触で搬送する手段を有する装置によるウェブの搬送距離は、剥離ロール以降テンターが終了するまでのウェブの全搬送距離の10〜60%を占めることが好ましい。
【0047】
本発明において、剥離ロールの後からテンター導入口までの間、ウェブを無接触で搬送するというのは、仕上がりフィルム中の製品として使用する両端以外の中程の部分を無接触で搬送するという意味であり、またA面には他の物体を接触させないで搬送するということも含まれる。薄手のウェブになればなるほど、A面からウェブ中の添加物が析出または揮発し易いため、ウェブのA面について特に他の物体に接触させないようにするのである。
【0048】
本発明で用いられる無接触で搬送する手段を有する装置は、本発明でいう無接触で搬送する手段のものであれば制限なく使用出来るが、エアーフローター型のもの、ウェブの両端の部分をクリップやニップロール等で把持し得るもの、またサクションロール型のものが好ましい。またそれらを組み合わせて用いることによって更に効果を上げることが出来る。
【0049】
またウェブが薄手の場合には、金属支持体上での乾燥が進むため、柔らかさも減少し、B面にロール状のものを接触させて搬送させてもよい。また、本発明において、この間での搬送ロール(ガイドロール)を必要とする場合は、A面に接触するロール本数を出来るだけ少なくすることがよく、3本以内である。それも、出来るだけテンター導入口付近で使用するのがよい。
【0050】
図により本発明の無接触搬送手段を有する装置を説明する。
【0051】
図3は、剥離ロールからテンター導入口までの間に、無接触搬送手段を有する溶液流延製膜装置の概略図である。無接触で搬送する手段10については、下記図4〜11に示した無接触で搬送する手段で具体例として説明する。11は無接触で搬送する手段10の装置のカバーで、剥離ロール4の後テンター9の導入口までの間の搬送手段をカバーし、そこで蒸発する有機溶媒や揮発する添加剤を系外に排出したり、その間のウェブ1の加熱するためのものである。加熱の方式は熱風をウェブに当てるようなものでもよく、マイクロウエーブや、近または遠赤外線等を用いてもよい。また、無接触で搬送する手段10の前後、特に後には、図示してないが、ウェブ1を搬送する駆動系がある。
【0052】
図4は、エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。サイン(sin)カーブ状にウェブ1を搬送するエアーフローター型無接触搬送装置で、ヘッダー20から圧力のかかった気体をウェブの両面に吹き出し、吹き出し風22がウェブ1を浮かせ搬送するものである。
【0053】
図5は、スリット状エアー吹き出し孔を有するヘッダーの見取り図である。ヘッダー20には気体を吹き出す多数の孔(開口部)が開いており、図5ではスリット状孔(開口部)21になっている。ウェブ1の両面にヘッダー20のスリット状孔(開口部)21から吹き出す気体により、ウェブ1は互い違いにあるヘッダー20との間をサイン(sin)カーブ状に彎曲しながら搬送される。スリット状孔(開口部)21はウェブ1に対して自由な角度に開けられているスリットでもよい。
【0054】
図6はパンチ板エアー吹き出し孔を有するへッダーの見取り図である。図6ではパンチ板に小さな孔(開口部)21′が多数開いており、孔の形は真円、楕円、それより細長いものなど形には制限はない。
【0055】
図7は、エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。円筒型ヘッダー23にはパンチ板に小さな孔21′がウェブ1を浮かせて搬送する部分にのみ開けられており、図7のようにそのような円筒型ヘッダー23が交互に配列してある。また、図7の円筒にはウェブ1の出入りの所に円筒の幅方向にウェブ幅くらいの棒状の突起の抵抗物24があり、これは吹き出し風22の吹き出しから急激な解放により生じるウェブの振動を抑えるために設けられているもので、この抵抗物がなくてもウェブが円筒型ヘッダー23に接触しないで搬送出来るヘッダーのエアー条件もあるが、あった方が好ましく、その断面形状は三角形、正方形、その他の形であっても形は問わない。
【0056】
図8は、円筒型ヘッダーの見取り図である。ウェブが浮いて通過する円筒型ヘッダー23の面には多数の小さな孔(開口部)21′が開けられており、孔の形は円形、楕円形、スリット形、より細長い形のものなどウェブを浮かせて搬送出来るものであれば特に制限はない。図8では、円筒型ヘッダー23の面の小さな孔21′が内側よりも周辺部に密に開けられている。パンチ板の周辺部の孔の開口率は内側より大きく、開口率として2〜20倍にすることによりウェブ1を安定して搬送することができる。開口率を変化させるには、孔の大きさ、孔の数などで調節すればよい。
【0057】
図9は、ポケット型の孔の断面拡大図である。このポケット型の孔26はヘッダー20または23の孔(開口部)21′から吹き出す風22が外側(図面では上)に出てウェブ1に当たる時、ウェブの支持体張力変動が発生した際のクッションの効果を発揮する機構のもので、単なる筒型の孔よりこのようなポケット型の孔26となっていることが好ましい。
【0058】
ポケット孔26の形状、広げられた孔の大きさ、深さ、パンチ板との関係は特に制限なく形成してもよいが、例えば、上側のポケットの孔の大きさは内側の孔の2〜5倍くらいで、ポケット孔の深さはその直径の0.2〜5倍くらいがよい。
【0059】
ヘッダー20または23から吹き出る風22の圧力は200〜1200Paであればよく、「パンチ板の小さな孔21′の総面積/ウェブがヘッダーを抱いている全面積」比を抑えた図7及び8の静圧型のエアーフローター型ヘッダーではヘッダー圧力を1000〜4000Paとすることが好ましい。
【0060】
図10は、ウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図である。ウェブ1の両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルト27で把持し、可動式のキャタピラ状のベルト27は動力源(図示してない)から伝達された回転する複数のホイール28で無端走行して回転し、ウェブ1を無接触で搬送する。
【0061】
ホイール28はスプロケットのようなものでもよいし、可動式キャタピラ状ベルトに同調して動力伝達出来るものであれば何れでもよい。可動式のキャタピラ状のベルト27の表面は平面であるよりも、ピンのような突起29やウェブ1の搬送方向に溝(図示してない)がある方がよく、それらが上下の可動式のキャタピラ状のベルト27にあることにより、ウェブ1を上下からしっかりと把持出来るようになっている。可動式のキャタピラ状のベルト27の表面の形状はウェブ1をしっかりと把持出来る物で有れば制限なく用いることが出来る。
【0062】
図11は、ウェブの両面の両端を幅の狭い複数対のニップロールにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図である。ウェブ1の両端を上下からニップする複数対のロール30には、凹凸31がある形状の方がないものより把持し易く好ましく、エンボッシング加工用のような凹凸があってよく、その形には特に制限ない。より好ましくは上下が雄雌の噛み合わせ型になっていることが好ましい。
【0063】
また、その形状は、先の鋭角なもの、溝状のもの等、凹凸の形状、大きさ及び高さはしっかり把持出来るものであれば制限ない。ウェブが自重で垂れ下がるような場合には、ウェブの下側から図5または6のようなヘッダーで気体を当てて支えてもよい。該複数対のニップロール30は駆動ロール(図示してない)と全て同調して回転するのが好ましい。該複数対のニップロール30の圧力としては30〜500Pa程度でよく、50〜200Paが好ましい。
【0064】
図12は、サクションロール型の無接触搬送手段を有する装置の概略図である。ウェブ1のB面がアーチを形成しているサクションロール32に接し、全てのサクションロール32は、図示してないドライブロールと同調して回転しており、サクションチャンバー33が減圧になっていて、サクションロール32とウェブによって隙間が減圧され、ウェブ1は吸い付けられながら移動するようになっている。
【0065】
つまりウェブのA面が無接触でサクションロール32上で搬送されるようになっているのである。サクションロール32は同調しながら回転しているので擦り傷などが出来ないようになっている。サクションチャンバー33における減圧度としては300〜2000Pa程度でよく、好ましくは500〜1000Paである。減圧はダクト34を通して減圧機(図示していない)により行われる。
【0066】
また、図示してないが、ウェブのB面に接する該ウェブ幅以上の長さのロールとウェブのA面の両端を把持する幅の狭いロールでウェブを搬送する手段も好ましく用いることが出来る。幅の狭いロールは図10に示したウェブのA面に接するロール30と同様なものでよい。またB面に接する長いロールのウェブの両端が接する部分に上記ロール30と同様な形状の突起があっても良い。
【0067】
更に、本発明の無接触で搬送する手段は、例えば、ポリエステルフィルムの延伸時に使用するようなクリップでウェブの両端を把持して搬送する手段(図示してない)であってもよい。
【0068】
より更に、これも図示してないが、少なくとも片面のウェブの両端を吸盤のようなウェブを吸い付けるようなもので把持して無接触で搬送する手段でもよい。
【0069】
本発明においては、上記の種々の手段を併用するのが好ましく、エアーフローター型またはサクションロール型の搬送手段の場合には、その前に両端を把持する搬送手段を用い併用するのが好ましいし、複数対のニップロールの場合にはウェブが弛まないようにヘッダーで吹き付けて支えてもよい。
【0070】
本発明において、剥離ロールの直後からテンター導入口までの間で、ウェブを急激に乾燥させることは、ウェブの幅の収縮や、両端からのカールが急激に起こり、操作を失敗したり、また平面性も劣化し、またロール接触による擦り傷が発生するが、本発明の無接触で搬送する手段を用いることによってこれらを防ぐことが出来る。その間では、ウェブを幅方向にはほとんど引っ張ることなく、若干幅方向に弛み、剥離された幅に対して若干幅方向に乾燥収縮により引っ張られるが、無接触部での仕上げフィルムの幅は0.95〜1.05倍くらいになるとよい。
【0071】
またウェブからの有機溶媒の蒸発によるウェブ及び接触する部材の温度を低下(蒸発潜熱による低下)させない程度の温度で30〜60℃がよく、30℃以上40℃以下が好ましい。蒸発潜熱による把持部材や接するロール等の温度が低下するとそれらにウェブからの添加剤が析出し付着し、ウェブを汚し易い。そのために、上記手段でウェブの両端を把持する部材に加熱手段を設け加熱することも好ましい。例えば、突起を有するベルトやニップロールが上記の如く温度を保つことは好ましい。
【0072】
本発明の無接触で搬送する手段を用いる間において、支持体上でのウェブの膜厚、含有する有機溶媒種あるいは加熱方法によって異なるが、ウェブの残留溶媒量は20〜130質量%で搬送されるのがよく、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、ウェブが50μm以下と薄い場合には30質量%以上70質量%未満の残留溶媒量が好ましい。
【0073】
例えば、ウェブの膜厚について、一例を示すと、仕上がり後の膜厚が100μmのウェブでは120質量%以下で本発明の無接触で搬送する手段の部分に導入されるが、膜厚が80μmでは80〜90質量%で、また膜厚が40μmでは30〜40質量%のように、必ずしも直線的な関係にあるとは限らないが変化する。
【0074】
本発明の無接触で搬送する手段の間で、出来れば積極的に加熱するのが好ましいが、加熱温度が高かったり、急激な加熱は、ウェブの両端のカールの発生を招きテンター導入口でのウェブの折れ込みが起こり易く、その都度生産を中断しなければならなくなる。またそればかりでなく、本発明の無接触で搬送する手段においても折れ込みが発生することもあり、このような高温及び急激な加熱は避ける必要がある。
【0075】
なお、本発明のセルロースエステルフィルム製造装置は、本発明の無接触で搬送する手段を有する装置の後にテンター乾燥機を必ず有するものである。テンターはウェブの両端をクリップで把持して、ウェブの幅を保持したり、ウェブを幅方向に延伸したりして、それにより平面性を向上させるのに用いられる。クリップの方式は、ポリエステルフィルムの横延伸に使用されるクリップ、あるいは特開昭62−115035号公報に記載されているようなピンクリップ等を用いるのがよい。
【0076】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段を用いてもよい。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易いので避けた方がよく、テンター内で50〜180℃くらいまで徐々に高くしていくことが好ましい。本発明の無接触搬送後のテンターにおける高温乾燥は、ウェブの膜厚にもよるが、残留溶媒が10質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、50〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間を変える必要がある。
【0077】
乾燥されたウェブは、残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取られる。残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。また、膜厚を均一にする手段として、巻き取り以前で、膜厚検出手段を用いて測定し、プログラムされたフィードバック情報を上記の各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【実施例】
【0078】
本発明を下記実施例により詳細に説明するが、これらに限定されない。
【0079】
実施例1
アセチル置換度2.88のセルローストリアセテート(数平均分子量150,000)100質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリメチルフォスフェイト10質量部をメチレンクロライド450質量部とエタノール50質量部を加圧密閉容器に投入し、60℃に加温して容器内圧力を2気圧とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させドープを得た。
【0080】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、更に日本精線(株)製のファインメットNM(絶対濾過精度100μm)、ファインポアNF(絶対濾過精度50μm、15μm、5μmの順に順次濾過精度を上げて使用)を使用して濾過圧力9.8kPaで濾過し製膜に供した。得られたドープを、ダイからステンレスベルト上に流延した。裏面から38℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、25℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブ中の残留溶媒量が40質量%になった時点でステンレスベルトから剥離した。
【0081】
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図10に示したようなウェブの両端を可動式のキャタピラ状のベルトで把持して搬送する手段と図4及び図6に示したようなエアーフローター型の無接触で搬送する手段を直列に組み合わせて使用した。キャタピラ状のベルトには上下雌雄の互いに咬み合うような突起状凹凸がある。これらにより、ウェブを、ウェブの両端をしっかりと把持して搬送し、両面から40℃の風を当て、その直ぐ後にエアーフローター型の無接触搬送装置で40℃の風をヘッダー開口部静圧として1200Paでウェブに当て支え搬送した。それに続いてテンターにウェブを残留溶媒量25質量%で導入し、70〜100℃でウェブの両端を把持しながら30秒間搬送し乾燥した。更にテンターを出た後、ロール群を有する乾燥機で100〜150℃で10分間乾燥させ、膜厚40μmのフィルムを作製した。なおここで、剥離ロール直後からテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状ベルトで搬送する手段とエアーフローター型の無接触で搬送する手段の合計搬送距離の比率を30%とした。
【0082】
実施例2
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、数平均分子量100,000のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、トリメチルフォスフェート10質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、チヌビン171(チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.5質量部、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部、酢酸メチル350質量部、エタノール50質量部を加圧密閉容器に投入し、75℃に加温して容器内圧力を2気圧とし、撹拌しながらセルロースエステルを完全に溶解させドープを得た。
【0083】
ドープ温度を35℃まで下げて一晩静置し、実施例1と同様に濾過を行い、得られたドープを、ダイからステンレスベルト上に流延した。裏面から50℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、25℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブ中の残留溶媒量が45質量%になった時点でステンレスベルトから剥離した。剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図11に示したようなウェブの両面の両端を複数対のニップロール(ロールには上下雌雄互いに咬み合うように突起状凹凸が施されている)とその後に図7及び8に示したような円筒型のヘッダーを有する無接触で搬送する手段を有する装置を使用した。それにより、先ずウェブを、両端を150Paのニップ圧でしっかりと把持して搬送し、その後、円筒型のヘッダーの内部ヘッダー圧を4000Paとし、ヘッダーから吹き出す風を40℃としてウェブの両面に当てて搬送した。
【0084】
この時のヘッダーの孔(開口部)を、ウェブの出入り部及び両端部の孔の開口率を7%とし、その他の開口率を1%とし、パンチ板の孔を円形で、直径を1mmとし、且つ図9のようなポケット孔のポケット部を直径と深さを各々3mmとし、直径1mm部の厚みを15mmとした。その後、テンターにウェブを残留溶媒量25質量%で導入し、70〜100℃でウェブの両端を把持しながら30秒間乾燥し、テンターを出た後、ロール群を有する乾燥機で100〜150℃で10分間乾燥させ、膜厚40μmのフィルムを作製した。なおここで、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状ベルトで搬送する手段と円筒型のヘッダーを有する彎曲しながら波動のようにウェブを無接触で搬送する手段の合計搬送距離の比率を40%とした。
【0085】
実施例3
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図11に示したようなウェブの両端を複数対の幅の狭いニップロールにより150Paのニップ圧で把持して(上下のニップロールには上下雌雄の咬み合うように設けられた突起状凹凸でしっかりと両端を把持して)搬送し、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対する複数対の幅の狭いニップロールで把持して搬送する手段の搬送距離の比率を45%とした以外は実施例1と同様に厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0086】
実施例4
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間の搬送手段として、図10に示したようなウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトで把持して搬送した後、図12に示したようなサクションロール型のもので500Paの減圧度で吸引しながら搬送し、剥離ロールからテンター出口までの全搬送距離に対するキャタピラ状のベルトで把持して搬送手段とサクションロール型の搬送手段の合計搬送距離の比率を55%とした以外は実施例1と同様に厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0087】
比較例1
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間を、図1に示したような搬送ロールを10本通した後に、テンター導入口のウェブの残留溶媒量を20質量%として導入し、剥離ロールの後からテンター出口までの全搬送距離に対する剥離ロールからテンター導入口までの搬送距離の比率を8%とした以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。なお、ロール搬送部での張力を100N/m幅とした。
【0088】
比較例2
剥離ロールの直後からテンター導入口までの間を、図2のように直ぐにテンターに導入し、剥離ロール後及びテンター導入口でのウェブの残留溶媒量を80質量%とし、剥離ロールの後からテンター出口までの全搬送距離に対する剥離ロールからテンター導入口までの搬送距離の比率を1%とした以外は実施例1と同様に行い、厚さ40μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0089】
以上の実施例1〜4及び比較例1及び2において各々を連続24時間製膜した。作製したフィルム面の汚れの状態、擦り傷を、フィルムを蛍光灯に透かして見たり、光を反射させて見たりして観察しフィルムの品質と、またウェブの両端の折れによる作業性のし易さを評価し結果を表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
(結果)
剥離ロールの後からテンター導入口までの間に本発明のウェブを無接触で搬送する手段を用いたものは、ウェブの汚れや擦り傷がなく、ウェブの両端のカールによる折れも全く発生しなかった。これに対して比較例1の汚れと擦り傷が発生し、またウェブはカール起因の端部の折れが発生し作業操作が困難であった。また比較例2は汚れと擦り傷の発生はなかったが、カール起因の端部の折れがはいり生産をしばしば中断しなくてはならず操作性が極めて困難であった。
【0092】
(産業上の利用可能性)
液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルムを、溶液流延製膜法による製造装置及びその製造方法を用いて高速生産する際、汚れ、平面性劣化、両端の折れ、擦り傷の発生がなく、また光学的にも問題ない品質を得ることが出来、また生産性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図。
【図2】テンター乾燥機を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の概略図。
【図3】剥離ロールからテンター導入口までの間に、無接触搬送手段を有する溶液流延製膜装置の概略図。
【図4】エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【図5】スリット状エアー吹き出し孔を有するヘッダーの見取り図。
【図6】パンチ板エアー吹き出し孔を有するへッダーの見取り図。
【図7】エアーフローター型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【図8】円筒型ヘッダーの見取り図。
【図9】ポケット型の孔の断面拡大図。
【図10】ウェブの両面の両端を可動式のキャタピラ状のベルトにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図。
【図11】ウェブの両面の両端を幅の狭い複数対のニップロールにより把持して無接触で搬送する手段の見取り図。
【図12】サクションロール型の無接触搬送手段を有する装置の概略図。
【符号の説明】
【0094】
1 ドープ膜(ウェブ)
2 ダイ
3 金属支持体
4 剥離ロール
5 乾燥装置
6 ロール群
7 乾燥ガス風
8 巻取り機
9 テンター乾燥機
10 無接触で搬送する手段
11 カバー
20 ヘッダー
21 スリット状孔(開口部)
21′ 小さな孔(開口部)
22 吹き出し風
26 ポケット型の孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流延支持体上にセルロースエステル溶液を流延しウェブを製造する工程、該ウェブを流延支持体からロールによって剥離する工程、該ロール通過直後から剥離したウェブを両端を担持しながら無接触で搬送する工程、を有する溶液流延製膜方法により膜厚20〜85μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、前記無接触でウェブを搬送する工程では、剥離ロール通過直後からウェブの空気面に、スリット状孔またはパンチ板エアー吹き出し孔から圧力のかかった気体を当てながら搬送することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記無接触で搬送する工程内でのウェブ幅が、当該工程を出る際の幅の0.95〜1.05倍に維持されていることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項1】
流延支持体上にセルロースエステル溶液を流延しウェブを製造する工程、該ウェブを流延支持体からロールによって剥離する工程、該ロール通過直後から剥離したウェブを両端を担持しながら無接触で搬送する工程、を有する溶液流延製膜方法により膜厚20〜85μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、前記無接触でウェブを搬送する工程では、剥離ロール通過直後からウェブの空気面に、スリット状孔またはパンチ板エアー吹き出し孔から圧力のかかった気体を当てながら搬送することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記無接触で搬送する工程内でのウェブ幅が、当該工程を出る際の幅の0.95〜1.05倍に維持されていることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−315417(P2006−315417A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223952(P2006−223952)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願2000−100671(P2000−100671)の分割
【原出願日】平成12年4月3日(2000.4.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願2000−100671(P2000−100671)の分割
【原出願日】平成12年4月3日(2000.4.3)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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