説明

セルロースエステル系複合糸及びその製造方法並びに織編物

【課題】シルキー調膨らみ感と従来にない光沢感を有し、かつ毛羽の発生が少ないセルロースエステル系複合糸並びにその織編物を提供する。
【解決手段】単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸1が含まれる複数のフィラメント糸からなり、糸表面に該セルロースエステル系フィラメント糸がループを形成している複合糸8並びにその複合糸からなる織編物。複合糸は、インターレースノズル等の混繊交絡ノズルに、高伸度セルロースエステル系マルチフィラメント糸が含まれる複数のフィラメント糸を、0%を超え20%未満の範囲で過供給し、混繊交絡処理を施して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステル系複合糸及びその製造方法並びにそのセルロースエステル系複合糸を用いた織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースエステル系繊維、特にアセテート繊維と一般に呼称されるセルロースアセテート繊維は、独特のドライタッチ感や優れた発色性、光沢感を有し、ファッション性に優れ、衣料分野における種々の織編物用の素材として提供されている。また、近年では膨らみ感やストレッチ性を付与する目的で仮撚加工や他繊維との複合糸或いはそれらの複合織編物が提案されている。
【0003】
例えば、セルロースアセテート繊維と他の繊維とで構成され、糸全体に交絡部とともに毛羽とループが形成された加工糸が、特許文献1及び特許文献2にて提案されている。しかしながら、これらの提案による加工糸は、毛羽やループの形成により嵩高で紡績糸様の風合いが得られるものの、毛羽やループに起因する製織・製編工程や染色工程での問題が発生しやすく、さらにはセルロースアセテート繊維の特徴である光沢感や発色性の発現が不十分である。
【0004】
また、前記加工糸の問題点を解決するものとして、特許文献3にて交絡部数と仮撚撚数の規制により毛羽の発生を抑制する混繊交絡処理が提案されているが、仮撚による嵩高加工ではカサツキ感があり、シルキー調の膨らみ感を表現するには至っておらず、また、毛羽の発生はある程度抑制されるものの、撚糸及び製織・製編工程、染色工程等でのシゴキによる毛羽の増加や糸切れ、ネップの発生等が生じ、工程通過性の問題を十分に解決するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−134148号公報
【特許文献2】特開昭56−4728号公報
【特許文献3】特許第3288287号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のセルロースアセテート繊維は他の熱可塑性合成繊維に比べ、繊維の強度が弱いため、混繊交絡や仮撚加工等の糸加工や製織・製編の際に毛羽が発生し易く、取り扱いが煩雑であり、特に毛羽発生の問題の解決が求められていることに鑑み、なされたものである。本発明の目的は、セルロースエステル系繊維、特にセルロースアセテート繊維特有のドライタッチ感を損なうことなく、シルキー調膨らみ感と従来にない光沢感を有し、かつ毛羽の発生が少ないセルロースエステル系複合糸並びにその織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の要旨は、単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸が含まれる2本以上のフィラメント糸からなる混繊交絡糸であって、糸表面に該セルロースエステル系フィラメント糸がループを形成しているセルロースエステル系複合糸にある。本発明の第2の要旨は、インターレースノズル若しくは流体撹乱ノズルに、単繊維伸度が30%以上であるセルロースエステル系マルチフィラメント糸が含まれる2本以上のフィラメント糸を、0%を超え20%未満の範囲で過供給し、混繊交絡処理を施すことを特徴とするセルロースエステル系複合糸の製造方法にある。また、本発明の第3の要旨は、前記のセルロースエステル系複合糸を用いてなる織編物にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複合糸に高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸を存在させたことにより、毛羽の発生原因となる外部応力を繊維自身の伸度に吸収・緩和させ、仮撚加工、製織、製編等各種加工工程中での毛羽の発現率が極めて少ない、シルキー調の膨らみ感と従来にない光沢感を有するセルロースエステル系複合糸を得ることができ、また、この複合糸により表面がシルキー調の膨らみ感と光沢感を有し、かつ表面に毛羽の発生が極めて少ない織編物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のセルロースエステル系複合糸(以下、単に複合糸と標記)において、複合糸中に含まれ、かつ複合糸を構成するセルロースエステル系フィラメント糸としては、単繊維伸度が30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは45%以上のセルロースエステル系フィラメント糸であることが必要である。単繊維伸度が30%未満のセルロースエステル系フィラメント糸では、複合糸を得る際の混繊交絡処理において、糸の供給量や交絡ノズルへのエアー供給量を多くする等の手法を用いたとしても、複合糸にループによる膨らみ感は得られるものの、毛羽の発生が著しく、本発明のような複合糸を得ることは不可能である。
【0010】
本発明における高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸を構成するセルロースエステルとしては、セルロースの有する水酸基の一部又は全部がアセチル基に置換されたセルロース誘導体におけるその平均置換度に応じ、平均置換度が2.22〜3.00のセルロースアセテート、より具体的には、平均置換度が2.76〜3.00のセルローストリアセテート、平均置換度が2.22以上2.60未満のセルロースジアセテート等のセルロースアセテートが好ましいものとして挙げられ、また、平均置換度が2.3〜3.0のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のセルロースエステルも挙げられる。
【0011】
また、本発明の複合糸の製造に用いる単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸を得るには、乾式紡糸法や溶融紡糸法等の公知の紡糸方法が用いられるが、次に、かかる高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸を、セルロースエステルとしてセルロースアセテートを用い、乾式紡糸法により得る場合を例にして説明する。乾式紡糸法においては、下記式(1)(2)を満たす条件で行う。
(1) 0.15<Vf/Vj<0.60
(2)1000<Vj<2000
(式中、Vfは紡出糸の巻き取り速度(m/分)、Vjは紡糸原液の吐出線速度(m/分)。また、Vjは(紡糸原液の吐出量/紡糸口金の総孔面積)で定義する。)
【0012】
前記の紡糸条件において、(1)式でVf/Vjが0.60以上及び(2)式でVjが1000以下では、繊維軸方向への収縮挙動が得られず、また(1)式でVf/Vjが0.15以下、(2)式でVjが2000以上では安定した乾燥固化挙動が得られず糸切れが発生する。かかる方法により得られるセルロースアセテートフィラメント糸は、紡糸直後に形成されるスキン層が乾燥固化過程における繊維軸方向への収縮挙動により高伸度を有し、また繊維軸の垂直方向に微小なヒダが発現し、従来にない光沢感を与えるものとなる。また、溶融紡糸法により特開2005−248341号公報、特開2005−256184号公報等に示されるような手段によっても、30%以上の単繊維伸度を有するセルロースアセテートフィラメント糸を得ることができる。
【0013】
本発明の複合糸においては、単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸が少なくとも含まれる2本以上のフィラメント糸が混繊交絡されて交絡部と非交絡部とが形成されており、高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸が糸表面に顕在してループを形成しており、糸表面に形成されたループによってシルキー調の膨らみ感が発現する。複合糸を構成する2本以上のフィラメント糸は、少なくともそのうちの1本が単繊維伸度が30%以上の高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸である必要があるが、他のフィラメント糸は、単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸であってもよいし、単繊維伸度が30%未満のセルロースエステル系フィラメント糸であってもよく、また、複合糸の強度や織編物にハリコシ感を付与するために、他のフィラメント糸を高伸度のセルロースエステル系フィラメント糸より低伸度の熱可塑性合成繊維フィラメント糸としてもよい。
【0014】
熱可塑性合成繊維フィラメント糸としては、ポリエステルフィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸が挙げられるが、織編物にさらなる膨らみ感、ハリコシ感を付与するために、熱収縮性の異なる2種の熱可塑性重合体を貼り合わせた複合繊維フィラメント糸が好ましく用いられ、染色性の点やコスト優位性の点でポリエチレンテレフタレート同士の複合繊維フィラメント糸がより好ましく用いられるが、ポリトリメチレンテレフタレート同士の複合繊維フィラメント糸やポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートの複合繊維フィラメント糸、或いはポリアミド系の複合繊維フィラメント糸等であってもよい。また、これらフィラメント糸は、異形の単糸断面形状若しくは糸長手方向における単糸繊度斑を有する繊維、或いは分散染料易染性やカチオン染料可染性等の染色性を有する繊維であってよい。
【0015】
本発明の複合糸は、糸表面にループを有しながら、長さ1mm以上の毛羽数が0.5本/m以下で、かつその毛羽指数が0.1以下である。通常、混繊交絡処理では、得られる加工糸にはループと毛羽が混在する。このとき毛羽の発現が多い場合は、スパン調の風合い、またループの発現が多い場合は、シルキー調の風合いとなる。したがい、シルキー調の膨らみ感を得るには、発生する毛羽数、及びループと毛羽の発生率の指標である毛羽指数を制御することが必要である。この毛羽指数とは、糸長1mにおける長さ1mm以上の毛羽数の比率を示すものである。風合いに影響を及ぼす長さ1mm以上の毛羽数が0.5本/mを超え、その毛羽指数が0.1を超えると、毛羽によるスパン調のザラツキ感や染色後の毛羽端面によるイラツキ感、さらには各工程でのシゴキによる毛羽の増加や糸切れ、ネップの発生となり、工程通過性に問題を生ずる。
【0016】
本発明の複合糸は、交絡部と非交絡部が交互に形成された混繊交絡糸であって、形成された交絡部数は10〜50個/mであることが好ましい。複合糸に形成された交絡部数が10個/m未満では、ループの弛みが大きく、交絡直後や巻き返し、撚糸等の各工程のガイドでシゴかれ、糸切れや毛羽、ネップが発生し易く好ましくない。また、交絡部数が50個/mを超えると、複合糸全体が集束した状態となるためザラツキ感が発現し、シルキー調の風合いを得ることができない。
【0017】
本発明の複合糸は、次のようにして、図1に示すような工程で混繊交絡処理手段を用いることより製造される。すなわち、本発明の複合糸は、混繊交絡処理手段としてインターレースノズルまたは流体撹乱ノズルを用い、かかるインターレースノズルまたは流体撹乱ノズルに、単繊維伸度が30%以上であるセルロースエステル系マルチフィラメント糸が少なくとも含まれる前述した同種又は異種の2本以上のフィラメント糸を、0%を超え20%未満の過供給率で供給し、即ち、図1に示す工程では、供給ローラー3又は/及び供給ローラー4による供給速度を引取りローラー6の速度より0%を超え20%未満の範囲で多くし、混繊交絡処理を施すことにより得ることができる。混繊交絡処理においては、特に複合糸にシルキー調の膨らみ感を得るにはループがアーチ状であることが好ましいが、かかるアーチ状のループを形成しうるインターレースノズルがより好ましく用いられる。インターレースノズルまたは流体撹乱ノズルへの過供給率が0%以下では、アーチ状のループが得られ難く、過供給率が20%以上では、工業的に安定な加工が困難である。
【0018】
混繊交絡処理用のノズルに2本以上のフィラメント糸を供給するに際しては、0%を超え20%未満の過供給率の範囲であれば、フィラメント糸間の供給率に差を設けてもよく、単繊維伸度30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸同士の一方を他方より過供給してもよいし、また単繊維伸度30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸を他の低伸度のフィラメント糸条よりも過供給することで、より膨らみ感に富んだ複合糸が得られる。混繊交絡処理用のノズルに供給するエアーの圧力は、特に限定されるものではないが、0.1〜0.5MPaとすることが好ましい。
【0019】
本発明の複合糸は、織編物の構成糸として用いられ、公知の製織手段によって織物或いは公知の製編手段によって編物とすることができる。本発明の複合糸を用いてなる織編物は、シルキー調の膨らみ感と従来にない光沢感を有し、かつその製織、製編工程での毛羽の発生も少ない。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明における各特性値の測定は以下の方法に拠った。
【0021】
(複合糸中の単繊維伸度)
複合糸の5mm以上の非交絡部のうち任意の3ヶ所をはさみで切断し、分繊し、10本のサンプルを採取した。このサンプルをステープルファイバー強伸度自動測定機(オリエンテック社製、AMS−B)を用いて、試長20mm、引張速度20mm/分で、応力−伸長曲線を測定し、繊維の破断点での伸度を求め、10本のサンプルの平均値で示した。
(複合糸の交絡部数)
エンタングルメントカウンター(カネボウエンジニアリング社製、EC−3)により、測定長10m、巻取速度10m/分、測定張力1/10(g/d)の測定チャートによりピーク数を読み取り、1m当たりに換算して計数した。
(毛羽数)
糸長1mの試料に0.1g/dの荷重をかけた状態で、糸表面より長さ1mm以上突出した毛羽数を任意の一方向より目視にて観察して計数し、10回繰り返した平均値を毛羽数とした。
【0022】
(ループ数)
毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製、DT−105(F))により長さ1mm以上の毛羽として計測されたカウンター数より前述の毛羽数を差し引いた数値の半数をループ数(個/m)とした。
(毛羽指数)
糸長1mにおける長さ1mm以上の毛羽数とループ数より、次式により算出した。
毛羽指数=[毛羽数/(毛羽数+ループ数)]×100
(風合い)
試料糸を用い、20Gの筒編機で製編し、得られた編地をハンドリングによる官能評価し、シルキー調膨らみ感を有するものを○、シルキー調膨らみ感を有しないものを×とした。
【0023】
(実施例1)
アセチル基への平均置換度が2.76〜3.00のセルローストリアセテートを塩化メチレン/メタノールの混合溶剤(質量比91/9)に溶解し、固形分濃度が22.0質量%の紡糸原液を調製した。この紡糸原液を用いて、ノズル孔形状が円形で、孔径0.026mm、ノズル孔数20の紡糸ノズルより、Vf/Vj=0.35、Vj=1700m/分(Vfは紡出糸の巻き取り速度(m/分)、Vjは紡糸原液の吐出線速度(m/分)。また、Vjは(紡糸原液の吐出量/紡糸口金の総孔面積)で定義する。)として、紡糸速度600m/分で乾式紡糸し、84dtex/20フィラメント(f))のセルローストリアセテートフィラメント糸を得た。得られたセルローストリアセテートフィラメント糸は、単繊維伸度が55.6%で、単繊維表面には繊維軸と垂直方向に微小なヒダを有していた。
【0024】
得られたセルローストリアセテートフィラメント糸を2本用い、この2本を引き揃え、過供給率を4%として、エアー圧力0.2MPaのインターレースノズルに供給して、糸加工速度200m/分で混繊交絡処理を施し、168dtex/40fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は55.8%であった。
【0025】
(実施例2)
実施例1で調製した紡糸原液及び紡糸ノズルを用いて、Vf/Vj=0.33、Vj=1200m/分として、紡糸速度400m/分で乾式紡糸し、84dtex/20fのセルローストリアセテートフィラメント糸を得た。得られたセルローストリアセテートフィラメント糸は、単繊維伸度が39%であり、単繊維表面には繊維軸と垂直方向に微小なヒダを有していた。セルローストリアセテートフィラメント糸を2本用い、一方の過供給率を0.5%、他方の過供給率を4.0%として、エアー圧力0.4Mpaのインターレースノズルに供給し、糸加工速度200m/分で混繊交絡処理を施し、168dtex/40fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。編地はさらにハリ感のあるものであった。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は50.8%であった。
【0026】
(実施例3)
実施例1での乾式紡糸で得られた単繊維伸度55.6%のセルローストリアセテートフィラメント糸(84dtex/20f)1本と伸度14.0%ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(ブライト11dtex/4f)1本を用い、セルローストリアセテートフィラメント糸の過供給率を4%、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸の過供給率を0.5%として、エアー圧力0.4Mpaのインターレースノズルに供給して、糸加工速度200m/分で混繊交絡処理を施し、96dtex/24fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は48.3%であった。
【0027】
(比較例1)
実施例1で調製した紡糸原液及び紡糸ノズルを用いて、通常の乾式紡糸法により得た単繊維伸度29.7%のセルローストリアセテートフィラメント糸(84dtex/20f)を2本用い、実施例1と同様にして混繊交絡処理を施し、168dtex/40fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。編地はスパン調膨らみ感のあるものであった。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は25.5%であった。
【0028】
(比較例2)
比較例1で得られた単繊維伸度29.7%のセルローストリアセテートフィラメント糸(84dtex/20f)を2本用い、実施例2と同様にして混繊交絡処理を施し、168dtex/40fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。編地はシャリ感のあるものであった。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は21.5%であった。
【0029】
(比較例3)
実施例3において、単繊維伸度55.6%のセルローストリアセテートフィラメント糸(84dtex/20f)を比較例1で得られた単繊維伸度29.7%のセルローストリアセテートフィラメント糸(84dtex/20f)に代えた以外は、実施例3と同様にして混繊交絡処理を施し、95dtex/24fの複合糸を得た。この複合糸についての長さ1mm以上の毛羽数、ループ数、毛羽指数、交絡部数の測定結果、及び複合糸による編地の風合い評価結果を表1に示した。編地はカサツキ感のあるものであった。また、複合糸中に含まれるセルローストリアセテートフィラメント糸の単繊維伸度は20.7%であった。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のセルロースエステル系複合糸は、混繊加工、製織、製編等の各種加工工程中に生じる外部応力を高い伸度が吸収・緩和することで、毛羽が極めて少なく特定のループ数を有するものであり、また、このセルロースエステル系複合糸からなる織編物は、シルキー調膨らみ感と光沢感を有し、衣料用の織編物として好適なるもので、衣料用用途に有用なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のセルロースエステル系複合糸を得るための加工工程の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 単繊維伸度30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸
2 他のフィラメント糸
3 供給ローラー
4 供給ローラー
5 エアー混繊交絡ノズル
6 引取りローラー
7 巻取り機
8 複合糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維伸度が30%以上のセルロースエステル系フィラメント糸が含まれる2本以上のフィラメント糸からなる混繊交絡糸であって、糸表面に該セルロースエステル系フィラメント糸がループを形成しているセルロースエステル系複合糸。
【請求項2】
セルロースエステル系フィラメント糸が、アセチル基の平均置換度2.22〜3.00のセルロースアセテートからなるフィラメント糸である請求項1に記載のセルロースエステル系複合糸。
【請求項3】
長さ1mm以上の毛羽数が0.5本/m以下、毛羽指数が0.1以下である請求項1又は2に記載のセルロースエステル系複合糸。
【請求項4】
交絡部と非交絡部が交互に形成され、交絡部数が10〜50個/mである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースエステル系複合糸。
【請求項5】
インターレースノズル若しくは流体撹乱ノズルに、単繊維伸度が30%以上であるセルロースエステル系マルチフィラメント糸が含まれる2本以上のフィラメント糸を、0%を超え20%未満の範囲で過供給し、混繊交絡処理を施すセルロースエステル系複合糸の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースエステル系複合糸を用いてなる織編物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−91683(P2009−91683A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262581(P2007−262581)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】