説明

セルロースナノファイバー積層体およびその製造方法

【課題】石油資源に対する依存度が少なく、層と層との間の界面剥離がない、酸素バリア性および水蒸気バリア性を同時に有するセルロースナノファイバー積層体を提供する。
【解決手段】少なくともセルロースナノファイバーからなるセルロースナノファイバー積層体の製造方法は、基材の少なくとも一方の面に、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して、積層体を形成する工程と、該積層体に荷電粒子線を照射する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医療、エレクロトニクス部品等の包装材料に用いられる、天然資源であるセルロースを含む、酸素バリア性および水蒸気バリア性を兼ね備えた積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医療、エレクトロニクス部材等の包装材料には、加工性や重量の点で、ガラス、金属、セラミックス材料より優れている石油資源由来の有機高分子材料が非常に多く用いられている。包装材料としては、内容物の劣化を防止するために、酸素バリア性と水蒸気バリア性が要求されているが、それぞれのバリア性を高次元で同時に満足する有機高分子材料は存在しない。そこで、それぞれの有機高分子材料の長所と欠点を補完するため、複数の有機高分子材料を貼合あるいはコーティングすることにより、酸素バリア性と水蒸気バリア性を同時に満足する積層体を得ている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ガスバリア性に優れるフィルムおよび包装体として、プラスティックフィルム基材の片面に、水酸基含有高分子体と、ポリアクリル酸またはその部分中和物、ポリメタクリル酸またはその部分中和物から選ばれる少なくとも1種以上の成分とからなる層を設け、もう一方の片面にセラミックス蒸着層を設けたことを特徴とするガスバリアフィルムおよびそれを用いた包装体が記載されている。
【0004】
一方、石油資源由来の有機高分子材料の代替材料として、セルロース系材料が注目されている。セルロースは、植物の細胞壁や微生物の体外分泌物、ホヤの外套膜などに含まれており、地球上でもっとも多く存在する多糖類である。また、セルロースは、生分解性を有し、結晶性が高く、安定性や安全性に優れており、環境配慮型の材料として注目されている。また、これらの特性を活かし、酸素バリア性と水蒸気バリア性を有する材料としても注目されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、セルロース繊維の水分散液を調製し、基材表面にキャスティングして製膜して、酸素等のガスバリア性を有するガスバリア性成形体を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−202822号公報
【特許文献2】特開2009−298972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の石油資源由来の有機高分子材料を用いる積層体では、製造・廃棄時に二酸化炭素を放出するため、地球環境への負荷増大、および有限の資源である石油の枯渇等の問題がある。
【0008】
また、酸素バリア性と水蒸気バリアを両立させるため、複数の有機高分子材料を積層しているが、貼合界面あるいはコーティング界面で剥離しやすいという課題があった。
【0009】
一方、特許文献2に記載のセルロース繊維を用いたガスバリア性成形体についても、セルロース繊維を含む分散液を基材に塗布、あるいは貼合しただけでは、酸素バリア性と水蒸気バリア性を同時に有するが、基材との密着性が低く、容易に基材から剥離してしまう問題があり、実用上使用が困難であった。
【0010】
すなわち、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、石油資源に対する依存度が少なく、界面剥離がない、酸素バリア性および水蒸気バリア性を同時に有する積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、基材の少なくとも一方の面に、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して、積層体を形成する工程と、該積層体に荷電粒子線を照射する工程とを備えることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体の製造方法としたものである。
【0012】
また、請求項2の発明では、前記荷電粒子線が、電子線またはガンマー線であることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体の製造方法としたものである。
【0013】
また、請求項3の発明では、請求項1または2に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体としたものである。
【0014】
また、請求項4の発明では、前記カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの繊維幅が50nm以下であり、繊維長が3μmであることを特徴とする請求項3に記載のセルロースナノファイバー積層体としたものである。
【0015】
また、請求項5の発明では、前記カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーのカルボキシル基量が、セルロースの乾燥重量1g当たり0.3mmol以上であることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、石油資源に対する依存度が少なく、界面剥離がない、酸素バリア性および水蒸気バリア性を同時に有する積層体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明のセルロースナノファイバー積層体は、基材と、基材の少なくとも一方の面に形成したカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む被膜とからなる。このカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーは、原料であるセルロースを酸化する工程と、酸化されたセルロースを微細化する工程とを経て得ることができる。
【0018】
原料であるセルロースは、針葉樹や広葉樹から得られる木材パルプ、また、ケナフ、サトウキビ、藁、竹、綿、海草等から得られる非木材パルプ、さらに、ホヤや微生物から得られるセルロース等、天然のセルロースが使用できる。特に、木材の場合は、漂白及び未漂白クラフト木材パルプ、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプならびにこれらの混合物を用いることができ、これらを物理的、化学的処理した物質の何れを用いてもよい。好適には、結晶形Iを有する天然セルロースが望ましい。
【0019】
これらのセルロース原料は、セルロース分子が水素結合した、繊維幅20〜30μm、繊維長1〜3mmのセルロース繊維からなり、このままでは、酸素バリア性も水蒸気バリア性も全くない。しかし、後述するように、このセルロース原料に対して、ニトロキシラジカル化合物の存在下、酸化剤を用いてカルボキシル基を導入し、アルカリ水溶液中で超音波やミル等の物理的処理を行うと、静電反発により容易に解繊して溶液中に分散し、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーが得られる。このとき、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの繊維幅は50nm以下であり、繊維長は3μm以下であることが好ましい。上記範囲を満たすカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーであれば、酸素バリア性と水蒸気バリア性が発現する。
【0020】
ニトロキシラジカル化合物の存在下、アルコールを酸化すると1級アルコールのみが選択的に酸化さる。本反応を原料であるセルロースに適用すると、グルコースユニットのC6位の水酸基のみを選択的に酸化し、セルロースミクロフィブリルの表面のみにカルボキシル基が導入される。
【0021】
触媒として用いるニトロキシラジカル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)が望ましい。このほかに、TEMPOの誘導体である4−アセトアミドTEMPO、4−カルボキシTEMPO、4−ホスホノオキシTEMPO等も好適に用いることができる。
【0022】
酸化剤としては、次亜ハロゲン酸やその塩、亜ハロゲン酸やその塩、過酸化水素などを用いることができるが、次亜塩素酸ナトリウムが好適に用いられる。
【0023】
TEMPOと共に用いる共酸化剤である臭化アルカリとしては、反応性が良好である臭化ナトリウムが望ましい。
【0024】
酸化反応温度は、0℃以上80℃以下に調整され、更に、10℃以上60℃以下が好ましい。上記酸化反応の反応進行は、温度に対して敏感であり、温度調整を行わないと、外気温や反応熱による影響を受け、反応生成物の物性等について再現性が得られない。反応温度が低すぎると反応が停滞し、反応時間が長くなる。また、反応温度が高すぎると反応速度が非常に速くなり、反応を制御するのが困難になるだけでなく、セルロース材料表面への酸化反応が不均一になる。
【0025】
上記酸化反応により得られた酸化セルロースは、カルボキシル基を有するが、カルボキシル基の導入量は、生成物の乾燥重量当たり0.3mmol/g以上であることが好ましく、0.5mmol/g以上3mmol/g以下であることがより好ましい。この範囲のカルボキシル基量を有する酸化多糖類は、分散処理を施した際の分散性が良好であり、その分散液は透明性が高く、粘度の上昇が抑制される。
【0026】
酸化セルロースは、アルカリ水溶液中で物理的処理を行うと、ミクロフィブリルの表面に生成したカルボキシル基が分散媒中で荷電反発し、浸透圧効果を示すため、ナノオーダーのミクロフィブリルが孤立しやすく、透明な分散体が得られる。酸化セルロースは、水を分散媒とした時に最も安定的に分散状態を保持するため、分散媒として水を用いることが望ましい。ただし、分散状態や乾燥状態、液性制御など種々の目的に応じて、分散媒としてアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)を始め、エーテル類、ケトン類を含んでもよい。
【0027】
用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、さらには水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどから水酸化ナトリウムが好ましい。また、これらのアルカリを用いて、分散液のpHを6〜12に調製することが好ましい。
【0028】
また、物理的処理としては、ボールミル、ミキサー、高速ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、三本ロールの何れか或いはこれらを組み合わせた分散方法を用いることができる。
【0029】
カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液は、例えばディッピング法、ロールコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビアコート法、ダイコート法など公知の塗工方法によって基材上に塗工することができる。塗膜後、オーブン等により乾燥させることにより、基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの被膜が形成できる。
【0030】
被膜を基材の片面に形成する場合には、乾燥後の被膜の厚さが、0.01μm以上100μm以下となるようにコーティングすることが好ましく、特に、0.01μm以上50μm以下とすることが好ましい。被膜が薄すぎると、塗膜が形成されにくく、反対に被膜が厚すぎると、コストが高くなり不利である。なお、被膜を基材の両面に形成する場合、被膜の厚さは、0.01μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0031】
基材となる材料は、用途に応じて適宜選ぶことが可能であり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ乳酸(PLA)などの各種ポリエステル、ナイロンなどの各種ポリアミド、などのプラスチック類のほか、紙材料などが挙げられる。また、基材をポリ乳酸系もしくはポリエステル系の生分解性樹脂材料、バイオマス由来材料、または、紙材料とした場合には、より環境負荷の小さいガスバリア性材料を提供することができる。
【0032】
カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む被膜は、上記のように、基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して形成してもよく、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む膜を別途形成し、基材上に貼合してもよい。上記膜を別途形成する方法としては、別の基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して形成した膜を剥離して、基材上に貼合する方法や、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液をキャストすることで膜を形成して、基材上に貼合する方法などが挙げられる。
【0033】
カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む膜を別途形成する方法で用いる別の基材としては、形成された上記膜が容易に剥離できるような基材であれば、公知の基材を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等からなる高分子材料を含む基材が挙げられる。また、上記膜が基材から容易に剥離できるように、基材中にフッ素系またはシリコーン系などの離型剤を含有させたり、基材上に予め上記離型剤を塗布して離型層を形成させたりしてもよい。
【0034】
基材上にカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して、被膜を形成することで得られた積層体には、荷電粒子線を照射することが好ましい。カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを基材に塗布、あるいは貼合した積層体に電子線やガンマー線等の荷電粒子線を照射すると、原子間の結合が切断されてラジカルが形成するが、瞬時に再結合して共有結合ができる。荷電粒子線を照射する前では、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバー分子と基材分子の密着力は、非常に弱いファンデルワールス力のみであったが、照射後は強固な共有結合ができるため、大幅に密着力が向上する。
【0035】
荷電粒子線としては、電子線もしくはガンマー線が特に好ましい。電子線の照射方法として、カーテン型、スキャン型、プラズマ放電型等、いずれも適用可能であり、加速電圧としては1keVから10MeVが適用可能である。ガンマー線は、コバルト60を線源に用いることができる。照射線量としては、10〜1000kGyが好ましく、10kGyより少ないと共有結合の生成反応が不十分であり、また、1000kGyより大きいと、基材およびカルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの損傷が大きくなるという問題が生じる。
【0036】
電子線あるいはガンマー線を照射する環境としては、酸素が存在しないことが好ましい。酸素が存在すると、共有結合の生成を阻害するため、酸素濃度としては、500ppm以下が好ましい。
【0037】
ガンマー線は、物質の透過能力が非常に高いため、照射面に関しては特に限定されず、被膜側でも基材側、何れの面からでも問題ない。電子線に関しては、加速電圧により、物質の透過能力が異なり、加速電圧が高いほど電子線の物質中の透過能力が高くなる。一般的な高分子フィルムの場合で、電子線の加速電圧が500keVで200μm、1MeVで500μm、2MeVで1mm、5MeVで2.5mmの透過能力がある。そのため、被膜と基材の厚さによって、電子線を照射する面を考慮する必要があり、電子線が積層体に入射してから基材/被膜界面あるいは貼合界面までの飛程距離が小さくなる面から照射する方が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1]
(カルボキシル基を有するセルロースナノファイバー分散液の調整)
<セルロースの酸化>
針葉樹晒クラフトパルプ30gを蒸留水1800gに懸濁し、蒸留水200gにTEMPOを0.3g、臭化ナトリウムを3g溶解させた溶液を加え、15℃まで冷却した。ここに、2mol/l、密度1.15g/mlの次亜塩素酸ナトリウム水溶液172gを滴下し、酸化反応を開始した。系内の温度は、常に15℃に保ち、反応中のpHの低下は、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、pH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが2.85mmol/gになったところで十分量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、pH3になるまで塩酸を添加した後、蒸留水で十分洗浄を繰り返し、酸化パルプを濾別し真空乾燥した。
【0040】
<酸化セルロースの分散>
上記TEMPO酸化パルプ2gを198gの蒸留水に分散させ、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7.5に調製した。調製した分散液を超音波ホモジナイザーで60分間微細化処理を行い、固形分が1%のカルボキシル基含有セルロースナノファイバー分散液を得た。
【0041】
(積層体の作製)
<カルボキシル基を有するセルロースナノファイバー分散液の基材への塗工>
得られたカルボキシル基を有するセルロースナノファイバー分散液を、厚さ12μmのPETフィルム上に#20のワイヤーバーでコートし、120℃のオーブンで十分乾燥させ、積層体を得た。
【0042】
<積層体への電子線照射>
エリア型電子線照射装置キュアトロン(日新ハイボルテージ社製)を用いて、酸素濃度200ppmで、加速電圧175kVにて、照射量50kGyの電子線を上記積層体へ照射した。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様に積層体を作製した後、RDI社製ダイナミトロンを用いて、加速電圧5MeVにて、照射量80kGyの電子線を積層体へ照射した。
【0044】
[実施例3]
実施例1と同様に積層体を作製した後、コバルト60を用いて、照射線量100kGyのガンマー線を積層体に照射した。
【0045】
[比較例1]
実施例1と同様に積層体を作製したが、本積層体へは電子線またはガンマー線の照射は行わなかった。
【0046】
[比較例2]
カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む被膜を有しない厚さ12μmのPETフィルムを比較例として用いた。
【0047】
<ガスバリア性の評価>
実施例1〜3、および比較例1の積層体のガスバリア性を、酸素透過度測定および水蒸気透過度測定により評価した。酸素透過度は、モダンコントロール社製MOCON OX−TRAN 2/21を用いて、25℃、40%RHの雰囲気下で測定した。水蒸気透過度は、カップ法にて温度25℃、湿度90%RHの雰囲気下で測定した。
【0048】
<密着力の評価>
実施例1〜3、および比較例1積層体に、クロスカットガイド「CCJ−1」(コーテック社製)を用い、縦×横にそれぞれ10本×10本の碁盤目(間隔1mm、計100カット)をきり、その上にセロテープ(登録商標)「CT24」(ニチバン社製)を貼り付けて剥離試験を行った。剥離後、基材表面に、剥離せず残った碁盤目の数を数え、(残った碁盤目の数/100)を密着性の指標とした。残存碁盤目数が多いほど、密着性が高いことを示す。
【0049】
上記評価の結果を表1に示す。表1の結果から、本発明のコーティング剤を用いた成形体は、密着性を低下させることなく良好なガスバリア性を有することが確認された。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、食品、医療、エレクロトニクス部品等に用いられる酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するフィルム状、シート状などの包装材料に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して、積層体を形成する工程と、
該積層体に荷電粒子線を照射する工程と
を備えることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体の製造方法。
【請求項2】
前記荷電粒子線が、電子線またはガンマー線であることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により製造されてなることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体。
【請求項4】
前記カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーの繊維幅が50nm以下であり、繊維長が3μmであることを特徴とする請求項3に記載のセルロースナノファイバー積層体。
【請求項5】
前記カルボキシル基を有するセルロースナノファイバーのカルボキシル基量が、セルロースの乾燥重量1g当たり0.3mmol以上であることを特徴とするセルロースナノファイバー積層体。

【公開番号】特開2011−212569(P2011−212569A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82332(P2010−82332)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】