説明

セルロース系材料の水可溶化物、その製造方法およびその利用

【課題】効率的なハイドロサーマルプロセスでセルロース系材料を可溶化して可溶化セルロース系材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】セルロース系材料の水可溶化物の製造方法であって、セルロース系材料を含有する水性スラリーを準備する水性スラリー準備工程と、前記水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料の水可溶化物を含有する溶液を調製する可溶化工程と、を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系材料の水可溶化物、その製造方法、その製造装置、およびこれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木粉、木質廃材、木質チップなどのいわゆるセルロース系材料の成分を燃料や樹脂原料等として有効に利用するため、成分の可溶化が試みられている。セルロース系材料の可溶化技術としては、おおきく分けて3つに分類される。一つは、酸やアルカリあるいは金属を触媒としてバイオマス成分を分解する方法であり、一つは、バイオマス成分を有機溶媒に溶かしこむ方法であり、最後の一つは、加圧熱水、蒸煮・爆砕、超臨界水のようなハイドロサーマルプロセスを用いる方法である。第1の可溶化技術としては、例えば、木粉を、硫酸などを触媒として常圧下、150℃付近で可溶化が行なわれることが知られている(非特許文献1)。また、第2の可溶化技術としては、例えば、ベンゼンやフェノールに溶かし込む方法が提案されている(特許文献1)。さらに、第3の可溶化技術としては、木粉に対して飽和水蒸気圧よりもやや高い圧力を加えた100℃〜300℃程度の液体状態の水(加圧熱水)により利用することも開示されている(非特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開平3-59035号公報
【非特許文献1】埼玉県工業技術センター研究報告第3巻(2001)「木質資源の液化に関する研究」
【非特許文献3】鹿児島県工業技術センター研究報告No.14(2000)p.45−p.51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の可溶化技術によれば、触媒の回収や分解反応の制御が困難であり、第2の可溶化技術によれば、有機溶剤の処理が課題となる。第3の可溶化技術では、いまだ効率的な可溶化が確立されていない。
【0005】
そこで、本発明では、効率的なハイドロサーマルプロセスでセルロース系材料を可溶化してセルロース系材料の水可溶化物を製造する方法および製造装置を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、セルロース系材料の利用を促進できるセルロース系材料水可溶化物、成形用組成物、セルロース系材料成形体、および該成形体の製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セルロース系材料を一定粒径範囲とした微紛を含む水性スラリーを調製して、当該バイオマススラリーを用いてハイドロサーマルプロセスを実施することで効率的に可溶化セルロース系材料を得られることを見出した。そして、当該知見に基づき、以下の発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0007】
本発明の一つの形態によれば、セルロース系材料の水可溶化物の製造方法であって、セルロース系材料を含有する水性スラリーを準備する水性スラリー準備工程と、前記水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料の水可溶化物を含有する溶液を調製する可溶化工程と、を備える、製造方法が提供される。この形態においては、前記可溶化工程は、前記水性スラリーを160℃以上に急速加熱する工程であることが好ましく、より好ましくは、前記可溶化工程は前記水性スラリーを5分以内に160℃以上に急速加熱する工程である。また、この形態においては、前記可溶化工程は、前記セルロース系材料の可溶化率が60%以上となる程度に前記水性スラリーを急速加熱する工程であることが好ましい。さらに、この形態においては、前記可溶化工程は、前記水性スラリーを水の飽和水蒸気圧以上に加圧する工程であることが好ましい態様であり、前記可溶化工程は、連続式で行うことが好ましい。
【0008】
また、この形態においては、前記セルロース系材料は、前記セルロース系材料粉末はアスペクト比が2以下の粒子が80%以上であることが好ましい態様であり、さらに好ましくは、光散乱法による粒子径が100μm以下の粒径を有する粒子が全体の80%以上を占めるセルロース系材料粉末であることが好ましい。さらにまた、この形態においては、前記水性スラリーは、セルロース系材料100重量部に対して、水性媒体450重量部以上1000重量部以下からなることが好ましく、また、前記セルロース系材料は、少なくともセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含むことが好ましい。
【0009】
さらに、この形態においては、前記可溶化工程後、前記溶液を160℃未満に急速冷却する冷却工程を備えることが好ましい態様であり、また、前記溶液に含まれる少なくとも一部の水分を除去する水分除去工程を備えることが好ましい態様である。
【0010】
本発明の他の一つの形態によれば、セルロース系材料の水可溶化物の製造装置であって、セルロース系材料を含有する水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料を含有する溶液を調製する可溶化手段を備える、製造装置が提供される。この形態においては、前記水性スラリーを前記可溶化手段に供給する水性スラリー供給手段を備えていることが好ましい態様であり、前記可溶化手段は前記水性スラリーが移動する反応容器と、該反応容器において前記水性スラリーを加熱する加熱手段と、を備えることが好ましい態様であり、前記加熱手段は、前記反応容器の前記水性スラリーの導入部分近傍にて前記水性スラリーを160℃以上に加熱可能であることも好ましい態様であり、さらに前記可溶化手段のすぐ後段には前記溶液を冷却する冷却手段を備えることも好ましい態様である。さらにまた、前記溶液に含まれる少なくとも一部の水分を除去する乾燥手段を備えることも好ましい態様である。また、上記いずれかの製造装置において、前記可溶化手段はマイクロ波加熱手段を備えていることが好ましい態様である。
【0011】
また、本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかのセルロース系材料水可溶化物の製造方法によって得られるセルロース系材料の水可溶化物が提供される。この形態においては、水可溶化物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算平均分子量が50以上20000以下の化合物を含有することが好ましい態様である。
【0012】
さらにまた本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかのセルロース材料の水可溶化物を含有する加熱による成形体製造用組成物が提供される。さらに、本発明の他の一つの形態によれば、セルロース系材料の成形体であって、上記いずれかのセルロース系材料水可溶化物を含有する、成形体が提供される。また、本発明の他の一つの形態によれば、セルロース系材料の成形体の製造方法であって、上記いずれかのセルロース系材料の水可溶化物を含有する成形用組成物を加熱し前記セルロース系材料水可溶化物を可塑化させて成形する工程、を備える、成形体の製造方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一形態であるセルロース系材料の水可溶化物の製造方法は、セルロース系材料の粉砕物を含有する水性スラリーを準備する水性スラリー準備工程と、前記水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料の水可溶化物を含有する溶液を調製する工程と、を備えている。本製造方法は、セルロース系材料の水性スラリーを調製することができたこと、およびこの水性スラリーを加圧下で加熱することで、該水性スラリー中の水分に由来する加圧熱水によってセルロース系材料の分解反応を効果的に生じさせることができることをはじめて見出したことに基づいて創出されたものである。本製造方法は、このような水性スラリー中に生じさせた加圧熱水によるセルロース系材料の分解可溶化反応を実施できるため、複合的な組成を有し剛直な植物細胞壁構造を保持するセルロース系材料であっても、効率的な可溶化を実現することができる。本発明を理論的に拘束するものではないが、粉砕され水性スラリー化されたセルロース系材料一定の粒径以下に粉砕することによって、セルロース系材料に含まれる各種成分がハイドロサーマルプロセスによる分解剤である水に高い活性を有するようになるものと推測される。また、ハイドロサーマルプロセスに対する活性は、セルロース系材料が粉砕されて植物細胞壁構造が部分的に損傷され破壊された結果、酸化能力の高い水に部分的に破壊された植物細胞壁が高率で曝されることになるものとも推測される。
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、上記一形態であるセルロース系材料の水可溶化物の製造方法について本製造方法の一例である図1を参照しながら説明するとともに、該製造方法を実施するのに好ましい製造装置、セルロース系材料の水可溶化物、セルロース系材料の成形体ならびにその製造方法について順次説明する。
【0015】
(セルロース系材料の水可溶化物の製造方法)
図1には、セルロース系材料の水可溶化物を得る本発明の製造方法の一例を示す。
(セルロース系材料)
本製造方法に利用できるセルロース系材料としては、セルロースを少なくとも含有していればよく、さらにヘミセルロースおよびリグニンなどのその他の植物細胞壁構成成分を1種あるいは2種以上を含む材料であることが好ましい。したがって、その由来植物種も特に限定しないで、針葉樹、広葉樹などの樹木由来の樹木のほか、稲、きび、麻、ケナフ等の草本であってもよい。また、化学的処理により植物細胞壁構造を留めない程度に加工された加工原料であってもよい。さらに、各種パルプ、各種の紙のほか、ダンボール、新聞紙などの使用済み製品も本発明のセルロース系材料に包含される。
【0016】
本発明においては、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含むセルロース系材料を用いることが好ましい。後述するように、本製造方法によれば、複合的組成を有するセルロース系材料であっても、それぞれを分解することができ、必要に応じて分離することができるからである。また、本発明においては、植物細胞壁構造を一部に保持する木紛や草本の粉末などのセルロース系材料を用いることが好ましい。後述するように、本製造方法によれば、このような剛直な構造を保持するバイオマス材料であっても、粉砕し水性スラリー化することで加圧熱水で効果的に分解できるからである。
【0017】
(水性スラリー準備工程)(ステップS10)
本製造方法においては、まずセルロース系材料の粉末を含有する水性スラリーを準備する。水性スラリーは、後段の反応工程に先立って逐次調製することもできるし、あるいは一括して調製することで準備することができる。また、他から入手することで準備することもできる。
【0018】
(水性スラリー)
本製造方法における水性スラリーには、セルロース系材料粉末を含有している。また、セルロース系材料の粉末はアスペクト比が2以下の粒子が60%以上であることが好ましい。2以下のアスペクト比の粒子が全体の60%以上であれば好ましい流動性を確保できるからであり、60%を大きく下回ると水性スラリーを移動させて反応させる反応管を閉塞させる可能性が高まるからである。より好ましくは、アスペクト比が2以下の粒子が80%以上である。アスペクト比の測定は、粉砕したセルロース系材料を顕微鏡下におけるCCDカメラ等による観察画像に基づいて画像処理等などを用いて個々の粒子のアスペクト比を測定することによって得ることができる。セルロース系材料の粉末全体におけるアスペクト比が2以下の粒子の比率は、均一に混合したセルロース系材料粉末の適数個所から適量を採取し、それらの各個所におけるアスペクト比2以上の粒子比率を求め、これらを平均することによって求めることができる。
【0019】
また、セルロース系材料の粉末は、100μm以下の粒径を有する粒子が全体の80%以上であることが好ましい。100μm以下の粒径を有する粒子が80%を下回ると、均一なスラリーを調製することが困難となり、結果として効率的な分解反応が困難になるからである。より好ましくは、当該粒子が90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。さらに、中心粒径が50μm以下であることが好ましい。なお、粒子径は、レーザー光などを用いる光散乱法によって測定することができる。例えば、島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。
【0020】
セルロース系材料の粉末は、公知の方法によって、チップ状、ファイバー状等の予め細断されたあるいは細断されていないセルロース系材料を粉砕することによって得ることができる。粉砕方法は特に限定しないで、グラインダー、カッターミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、遊星ミルなどの各種の粉砕手段を用いることができるが、好ましくは、振動ミルおよび遊星ミルなどのロッドやボールなどを粉砕媒体として備える粉砕手段を用いる。これらのミルによれば、他の粉砕手段で粉砕したものと同程度の粒径であっても、表面積の大きなセルロース系材料粉末を得ることができ、効率的に可溶化することができる。また、これらのミルを用いることで、アスペクト比が2以下の粒子に容易に粉砕できるからである。
【0021】
微粉砕可能な粉砕方法による場合は、粉砕物がそのまま好ましい粒径範囲に一致している場合もあるが、通常、商業的入手可能な各種の規定サイズのメッシュを有する篩にて得られたセルロース系材料粉末を篩過することによって粒径範囲を調整することが好ましい。
【0022】
水性スラリーは、水を含んでいる。水性スラリーは、水と相溶する水溶性有機溶媒や酸やアルカリなどを含むことができるが、好ましくは、セルロース系材料粉末以外には水のみを含んでいる。水のみとすることで、分解反応処理物の分離精製を容易に行なうことができる。また、分解反応の制御が容易になるからである。水性スラリーにおけるセルロース系材料粉末と水性媒体(好ましくは水のみである。)は、セルロース系材料100重量部に対して水性媒体450重量部以上であることが好ましい。水性媒体が450重量部以上であると搬送可能な流動性を確保することができるからである。好ましくは500重量部以上である。なお、バッチ式等によって分解反応を実施する場合には水性媒体は450重量部以下であってもよい。また、生産性を考慮するとセルロース系材料100重量部に対して水性媒体1000重量部以下であることが好ましい。
【0023】
(可溶化工程)(ステップS20)
可溶化工程は、所定の粒径範囲のセルロース系材料を含有する水性スラリーを加圧下で加熱してセルロース系材料を分解し可溶化してセルロース系材料水可溶化物を含有する溶液を調製する工程である。本工程において、水性スラリーを加圧下で加熱することで、反応系内において加圧熱水が生成する。本工程では、加圧熱水によりセルロース系材料が加水分解等され可溶化されると推測される。本工程では、水性スラリー状態で加熱加圧されるため均質でかつ効率的な可溶化が可能となっている。ここで、加圧熱水とは、100℃以上の液体状態の熱水を意味している。反応効率を考慮すれば、こうした反応系は、水性スラリー中の水が蒸発しない程度の水蒸気分圧に調整されていることが好ましい。
【0024】
好ましい加熱温度は、セルロース系材料の組成によっても異なるが、本発明者らによれば、本方法にてリグニンを分解して可溶化するには160℃程度であればよいことがわかっている。このため、リグニンを含有するセルロース系材料を可溶化するには、すくなくとも160℃近傍まで急速加熱することが好ましい。160℃近傍まで急速加熱することで、余分な副反応をことなくリグニンを分解させることができて全体としてセルロース系材料を良好生じさせるに可溶化することができる。160℃までの昇温工程は、できるだけ短時間で行うことが好ましく、例えば、常温近傍から加熱開始して10分以内で160℃に到達するように昇温させることが好ましい。10分を大きく越えて160℃に到達させる昇温工程では、最終的に固形分残渣が数10%程度に及ぶこともあり、効率的な可溶化が困難となるからである。より好ましくは5分以内、さらに好ましくは1分以内、最も好ましくは30秒以内とする。
【0025】
このような急速加熱による昇温工程は、本工程で調製するセルロース系材料水可溶化物含有溶液におけるセルロース系材料の可溶化率に関連し、適切な昇温工程は実施された場合には、使用したセルロース系材料の60%以上が可溶化される。例えば、160℃以上に急速加熱(5分以内)したときには、可溶化率を60%以上とすることができ、250℃以上に急速加熱(5分以内)したときには、可溶化率を90wt%以上とすることができる。なお、可溶化率は、使用セルロース系材料の重量に対する可溶化重量[(使用したセルロース系材料の重量)−(可溶化工程における固形分残渣)]の比率(%)として求めることができる。なお、250℃を超え300℃近傍の高温で加熱するにつれ、セルロース系材料がガス化したメタンガスなどのガス化成分が増加してくる。これらのガス化成分は、水可溶性であるため、これらのガス化成分を可溶化成分に含めることができる。
【0026】
また、本発明者らによれば、本方法においては、ヘミセルロースを分解して可溶化するには200℃近傍が好ましく、セルロースを分解して可溶化するには250℃近傍とすることが好ましいこともわかっている。したがって、本工程においては、160℃近傍まで急速加熱し160℃に到達以降は、用いるセルロース系材料の組成に応じてあるいは分解可溶化させようとする成分に応じて適宜温度や昇温工程を設定することができる。例えば、室温近傍から250℃まで急速加熱して、全体の分解水可溶化物を一挙に生成させてもよいし、160℃近傍にてリグニンの水可溶化物を生成させた後、200℃近傍まで昇温し200℃近傍で所定時間加熱した上、250℃近傍まで昇温して250℃近傍で所定時間加熱してもよい。さらに、160℃近傍にまで急速加熱した上200℃以下の範囲で加熱した上、250℃まで急速加熱して300℃以下の範囲で加熱することもできる。こうして異なる温度域でそれぞれ加圧熱水を生成させてセルロース系材料を分解することで、セルロース系材料の組成が複合的であっても効果的に含まれる各成分を容易に分解して可溶化することができる。
【0027】
可溶化工程におけるセルロース系材料の可溶化を促進するには、反応系のガスの少なくとも一部を窒素などの不活性ガスで置換することも好ましい。こうすることで飽和水蒸気圧よりも大きい圧力下で可溶化することができる。
【0028】
なお、可溶化工程に先立って水性スラリーを予熱することができる。予熱工程を実施することにより、可溶化工程において目的とする加熱温度に速やかに到達させることができて可溶化率を高めることができる。予熱工程は、可溶化工程で到達させようとする温度よりも低い温度域にまで水性スラリーを到達させるように行うことができる。特に、ヘミセルロースやセルロースを可溶化して高い可溶化率を得るには、予熱工程を実施するのが効果的である。なお、予熱工程における反応を抑制するため、セルロース系材料の成分であるリグニンの分解が促進されない程度の温度および時間とすることが好ましい。したがって、例えば、予熱工程は、水性スラリーを160℃以下の範囲で加熱する工程とすることが好ましい。また、予熱工程で水性スラリーが160℃近傍に到達したら、ただちに可溶化工程で急速加熱することが好ましい。したがって、予熱工程と可溶化工程とは連続的に実施されることが好ましい。
【0029】
なお、各種の態様の可溶化工程は、水性スラリーを加圧可能な容器内に供給して加熱することで実施できる。例えば、反応容器としては、圧力弁などを有して内部を加圧可能であってかつ圧力調節も可能な反応管や反応槽を好ましく用いることができる。
【0030】
可溶化工程は、バッチ式、半バッチ式、連続式のいずれによっても行うことができるが、急速加熱を行うには連続式によって行うことが好ましい。連続式の可溶化工程によれば、温度条件および処理時間の制御がバッチ式よりも容易であって、容易に急速加熱が可能である。また大量のセルロース系材料の処理に適している。さらに、予熱工程とも容易に連結される。また、可溶化工程の後段で行う冷却工程においても急速冷却が可能であるため、連続式を採用することが好ましい。
【0031】
可溶化工程においてセルロース系材料が分解されて、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニン等が分解され水性媒体に可溶化されることで、セルロース系材料(セルロース系材料の水可溶化物が生成され、該水可溶化物を含有する溶液が調製される。
【0032】
(冷却工程)(ステップS30)
本製造方法では、可溶化工程で得られたセルロース系材料の水可溶化物を含む溶液を、可溶化工程後冷却する冷却工程を備えることが好ましい。冷却工程は、自然冷却工程であってもよいが、適当な熱交換器や冷却器などの冷却手段によって積極的に処理物を冷却する工程であることが好ましい。また、冷却工程は、可溶化工程後できるだけ速やかに実施されることが好ましく、該溶液を積極的に冷却して分解反応を停止させることで、水性スラリーに対する熱等の作用を適切に制御して意図しない分解反応の進行を抑制することができる。したがって、冷却工程は、前記溶液が160℃未満に冷却することが好ましく、より好ましくは50℃以下になるまで冷却し、さらに好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下となるように冷却する。また、前記溶液は可溶化工程後、急速に冷却されることが好ましく、例えば、10分以内に前記各温度以下に冷却されることが好ましく、より好ましくは5分以内であり、さらに好ましくは1分以内である。こうした急速冷却によって、溶液における残渣量を効果的に低減することができる。
【0033】
(水分除去工程)(ステップS40)
本製造方法では、可溶化溶液はそのまま各種用途に適用することもできるが、該溶液に含まれる少なくとも一部の水分を除去する水分除去工程を備えることができる。こうすることで、セルロース系材料水可溶化物含有溶液中の水分量を調製して、水可溶化物含有組成物を必要に応じてペースト、粒状物、粉末など各種の形態で得ることができる。水分除去工程は、各種公知の乾燥方法を用いることができるが、例えば、噴霧乾燥による場合には、可溶化工程後の溶液を冷却することなくそのまま噴霧乾燥することで、可溶化工程からの吐出圧力を利用し水分除去工程と冷却工程とを同時に達成することができる。
【0034】
なお、特に図示はしないが、必要に応じて可溶化溶液の固液分離工程を行うこともできる。固液分離工程は、遠心分離、ろ過等の各種の分離手段を使用することができる。
【0035】
(水可溶化物)
こうして本製造方法によって可溶化溶液あるいはペースト、粒状物、粉末などの各種の形態の水可溶化物を得ることができる。これらの水可溶化物は、加圧熱水を分解剤として作用させて得られるため分離精製が容易である。特に、水可溶化物は、以下の特徴を有している。
(1) ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量が50以上20000以下である。
(2)水可溶化物の水溶液(水可溶化物粉末8gを水72mlに溶かしたもの)は、澄明である。
(3)水可溶化物の水溶液(水可溶化物粉末8gを水72mlに溶かしたもの)のpHが2以上3.5以下である
【0036】
水可溶化物は、加熱により可塑化する特性を有していることから、水可溶化物を加熱による成形材料として用いることができる。したがって、本水可溶化物を含有する成形用組成物が提供される。成形方法としては、通常の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂に適用される各種の成形方法を適用することができ、例えば、圧縮成形、射出成形、押出し成形等が挙げられる。水可溶化物が120℃〜130℃程度の熱流動開始温度であるとき、200℃〜300℃程度で20MPa〜30MPa程度の条件下で加熱圧縮成型を行うことで樹脂様の成形体を得ることができる。したがって、本発明によれば水可溶化物を含有する成形体および水可溶化物を含有する成形用組成物を加熱して前記水可溶化物を可塑化して成形する工程を備える成形体の製造方法が提供される。
【0037】
本成形用組成物は、水可溶化物のみおよび水可溶化物および水とからなる組成物の形態で用いて成形体を製造できるほか、他の材料を含有して、該他の材料と複合化された成形体を製造することもできる。このような他の材料としては、天然あるいは合成の高分子材料、金属、セラミックス、ガラスなどを用いることができ、その形態もファイバー、チップ、粉末など各種形態とすることができる。さらに、他の樹脂材料などのバインダ材料を使用することもできる。
【0038】
水可溶化物は、水可溶化物セルロース系材料を水溶化したものであることから土中に存在する微生物等による生分解性を備えている。したがって、本成形用組成物は生分解性成形材料であり、本組成物を利用した成型体は生分解性成形体である。
【0039】
こうした本成形用組成物を用いた成形体は、容器、食器や家具などの日用品の他、各種製品の躯体、建築用の内外装材料、構造材料;シートやネット等の農業用材;車両などの移動体の躯体や内装用基材等、各種用途に好ましく用いることができる。
【0040】
(セルロース系材料の水可溶化物の製造装置)
本発明のセルロース系材料の水可溶化物の製造装置は、セルロース系材料の可溶化装置であって、セルロース系材料粉末の水性スラリーを加圧下で加熱して加圧熱水でセルロース系材料を可溶化する可溶化手段を、備えている。この水可溶化物の製造装置によれば、セルロース系材料が水性スラリーとして可溶化手段に供給され、可溶化手段においては、水性スラリーが加圧下で加熱され、該水性スラリー中の水分が加圧熱水としてセルロース系材料に作用しセルロース系材料が加水分解される。したがって、本装置によれば、分解しようとするセルロース系材料と分解剤として作用する水とがスラリーとなって反応装置に供給されるため、効率的なセルロース系材料の分解が可能となっている。すなわち、本装置は、セルロース系材料の水性スラリーからセルロース系材料の水可溶化物を得るのに適している。従来、このような水性スラリーはなく、したがってこのようなセルロース系材料の水可溶化物の製造装置が検討されることはなかった。
【0041】
(水可溶化物の製造装置)
次に、本製造方法を実施するのに好ましい水可溶化物の製造装置について図2を参照しながら説明する。本装置2は、スラリー供給手段22と、可溶化手段32と、を備えている。また、本装置は、さらに、スラリー調製手段12、冷却手段42、固液分離手段および水分除去手段62、コントローラ72、セルロース系材料の粉砕手段および予熱手段のいずれかあるいは2種以上を備えることができる。
【0042】
(スラリー調製手段)
本発明の水可溶化物製造装置2は、スラリー調製手段12を備えることができる。スラリー調製手段12は、所定の粒径範囲のセルロース系材料と水とを混合して水性スラリーを調製する手段である。スラリー調製手段12は、セルロース系材料粉末と水とが投入されて混合攪拌できる混合器14を備えている。混合器には回転羽根等の機械的攪拌手段をはじめとする各種公知の攪拌手段を備えることができる。また、セルロース系材料粉末を貯留可能な貯留槽16と貯水槽18とを備えることができ、これらの貯留槽16、18から連続的あるいは断続的にそれぞれセルロース系材料粉末を供給する連絡管を備えることもできる。なお、セルロース系材料粉末貯留槽16には、当該貯留槽から混合器へセルロース系材料粉末を搬送するために、必要に応じて、フィーダー、コンベア、ポンプなどの搬送手段を備えることができる。なお、スラリー調製手段の前段には、振動ミルなどのセルロース系材料を粉砕する手段を備えることができる。
【0043】
(スラリー供給手段)
本可溶化装置2は、水性スラリーを可溶化手段に供給するためのスラリー供給手段22を備えている。スラリー供給手段22は、スラリーを搬送できる公知の手段を用いることができる。特に、連続式の可溶化装置においては、好ましくは、高圧ポンプ、遠心式ポンプ、回転式ポンプやプランジャーポンプを含むポンプ手段など、連続供給可能であって、供給量の制御が容易な圧送手段を用いることが好ましい。なお、本装置2において、加圧した状態で連続して送液する場合には、必要に応じ高圧ポンプを用いることが好ましい。スラリー調製手段12からスラリー供給手段22への連絡管およびスラリー供給手段22から可溶化手段32への連絡管にはそれぞれコントローラ72などの制御装置によって制御可能なバルブを設けることができる。
【0044】
(可溶化手段)
可溶化手段32は、水性スラリーを加圧下で加熱して、水性スラリー中のセルロース系材料粉末を加圧熱水で分解する分解反応工程を実施する手段である。可溶化手段32は、加圧下で加熱するため、内部を加圧可能な反応容器34を備えている。可溶化手段32は、各種の管型反応器、塔型反応器、槽型反応器を用いることができる。好ましくは、管型反応器である。反応容器34の内部を加熱するための加熱手段36も備えている。
【0045】
加熱手段36は、例えば、反応容器34の外部を覆う外部ジャケットに備えられているとともに、コントローラ72に接続されている。好ましい加熱手段36としては、マイクロ波加熱手段が挙げられる。マイクロ波加熱手段は、急速加熱に適しており、セルロース系材料の可溶化率を高めることができる。また、マイクロ波加熱は、応答が速いとともに出力調整により温度制御が容易であるため、可溶化を容易に制御できる。さらに、マイクロ波によりセルロース系材料の分解も促進される。なお、ここで、マイクロ波とは、周波数300MHz〜30GHz(波長1cm〜1m)の電波である。典型的には、2450MHzの電波が用いられる。
【0046】
マイクロ波加熱手段によって反応容器34内の水性スラリーを加熱するには、例えば、図3に示すように、マイクロ波発生装置52で発生させたマイクロ波を案内する導波管54と反応容器34の一部に設けたマイクロ波透過性の照射部56とを備えることができる。マイクロ波発生装置52は、クライストロン、トランジスタ、ガン・ダイオード、マグネトロン等を用いることができる。照射部56には、サファイヤガラスやセラミックスなどを用いることができるが、マイクロ波透過性や耐圧性の観点からはサファイヤガラスが好ましい。また、マイクロ波加熱手段を用いる場合には、水性スラリーへのマイクロ波の吸収性を高めるため、マイクロ波の照射方向における反応容器34の奥行きを小さくするなどして、マイクロ波が照射される水性スラリーの厚みが均一でかつ薄くなるようにすることが好ましい。例えば、図3に示すように、筒状の反応容器34の一つの端面を照射部56とし、この照射部56の近傍に水性スラリー導入部58aと排出部58bとを設けることができる。
【0047】
反応容器34には、内部温度を測定する温度測定手段37が備えられ、当該温度測定手段37はコントローラ72に接続されている。また、反応容器34の内部圧力を計測する圧力測定手段39も備えられており、該手段39もコントローラ72に接続されている。
【0048】
反応容器34の水性スラリーの導入部分において水性スラリーを少なくとも160℃近傍にまで加熱できるように加熱手段36を備えることが好ましい。可溶化工程が昇温ステップを介して複数の定温ステップを有する場合、それに応じて反応容器34を直列状に設けることもできるし、加熱手段36を連設することもできる。なお、反応容器34を並列に設けて効率的に可溶化工程を実施することもできる。なお、可溶化工程に先立って予熱工程を実施するときには、予熱手段を可溶化手段32の前段に設けることができる。予熱手段は、特に、可溶化手段32の加熱手段36としてマイクロ波加熱手段を用いるときにおいて有用である。
【0049】
(冷却手段)
可溶化手段32の反応容器34の後段には、冷却手段42を備えることができる。冷却手段42は、生成した水可溶化物の溶液を冷却する冷却工程を実施する手段である。冷却手段42は、速やかに可溶化液を冷却するため、反応容器34のすぐ後段に配置されていることが好ましい。冷却手段42としては、公知の冷却手段を用いることができ、各種の熱交換器、冷却塔等を用いることができる。
【0050】
(水分除去手段)
可溶化手段32の反応容器34の後段あるいは冷却手段42の後段には水分除去手段62を備えることができる。水分除去手段62は、可溶化液から少なくとも一部の水分を除去する手段である。水分除去手段62としては、回転乾燥装置、気流乾燥装置、通気乾燥装置、噴霧乾燥機等の公知の乾燥手段を用いることができる。水分除去手段62を、反応容器34の後段に備えることは、反応容器34内の可溶化液が高温である点において有利である。また、反応容器34内の可溶化液が高温であることを利用するには、水分除去手段62として噴霧乾燥装置を用いるのに有利である。水分除去手段62として噴霧乾燥装置を用いる場合、反応容器34のすぐ後段に噴霧乾燥装置を備え、反応容器34内の高温高圧の可溶化液を直接噴霧乾燥装置内に噴出させることで、可溶化液の水分除去と同時に冷却が可能であり、さらに粒状化あるいは粉末化が可能である。特に、固形分残渣が10wt%以下、あるいは5wt%以下の場合には、反応容器34から直接噴霧乾燥によって水分除去することが好ましい。
【0051】
(固液分離手段)
なお、必要に応じて可溶化手段32の後段に固液分離手段を備えることができる。固液分離手段は、可溶化手段32で生成された可溶化液中の固形分と溶液を分離して溶液を採取する固液分離工程を実施する手段である。固液分離手段は、遠心分離機、フィルタープレス、回転式ろ過機、プリコートろ過機等の各種公知の手段を用いることができる。
【0052】
(コントローラ)
コントローラ72は、可溶化手段32の後段側の連絡管に備えたバルブ44,45の開閉度を制御して、可溶化手段32への水性スラリーの供給量と反応容器34内の圧力とを制御する。また、コントローラ72は、圧力測定手段39において内部圧力値を取得した上で、バルブ44,45の開閉度を制御して可溶化手段32における内部圧力を制御する。さらに、コントローラ72は温度測定手段37からの検出値を取得して、検出値に基づいて加熱手段36による熱供給量を制御する。
【0053】
こうした可溶化装置2を用いることで、既に述べたセルロース系材料の水可溶化物の製造方法を容易に実施することができる。特に、圧送可能な程度の流動性を有するセルロース系材料の水性スラリーの可溶化に適しており、当該スラリーを用いて連続的に分解反応工程を実施できる。また、スラリー調製手段を備えることで、セルロース系材料粉末の状態から可溶化することができるため便利である。さらに、冷却手段42を備えることで、可溶化手段32から排出された可溶化液を速やかに冷却することで、分解反応を停止させるとともに反応処理物中の水蒸気が凝縮して可溶化させることができる。また、ガス化していた分解物も液体中に速やかに取り込むことができ、最大限の水可溶化物を速やかに得ることができる。
【0054】
また、水分除去手段62として噴霧乾燥装置を用いることで、粉末あるいは粒状の固形の水可溶化物を容易に得ることができる。
【0055】
なお、例示した製造装置2においては、スラリー調製手段12、冷却手段42、水分除去手段62、コントローラ72を備えるものとしたが、これらを必ずしも要するものではない。これらは必要に応じて適宜付加されるものである。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に拘束されるものではない。
【0057】
ブナや杉などの各種樹種の木質系バイオマスのチップ混合物を振動ミルを用いて粒径が30μm以下となるように粉砕した。得られた粉末について、製造した木粉10gに対して水50gを添加し、混合することで木粉水性スラリーを調製した。調製した水性スラリーを2〜3秒以内に250℃まで昇温し反応管(容積0.1L)に約1分間保持するような速度で反応管に連続的に導入するとともに反応管に付属のヒーターを制御した。反応管内の圧力はその温度の飽和水蒸気圧に維持した。反応保持後、反応器を約50℃まで10分以内に冷却した。冷却されて得られた溶液と残渣の分離は、フィルター式の分離装置を用いて行った。
【0058】
得られた水可溶化物の特性を以下に示す。
(1) ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量が50以上20000以下である。
(2)水可溶化物の水溶液(水可溶化物粉末8gを水72mlに溶かしたもの)は、澄明である。
(3)水可溶化物の水溶液(水可溶化物粉末8gを水72mlに溶かしたもの)のpHが2以上3.5以下である
【0059】
また、得られた水可溶化物10gを採取して、加熱圧縮成形型(直径4cm)に投入し、型締めして250℃で約10MPaで熱圧したところ、樹脂様の成形体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の可溶化セルロース系材料の製造工程の一例を示す図。
【図2】本発明の可溶化装置の一例の概略を示す図。
【図3】本発明の可溶化装置の反応容器の一例を示す図。
【符号の説明】
【0061】
2 可溶化装置 12 スラリー調製手段、14 混合器、16 セルロース系材料粉末貯留槽、18 貯水槽、22 スラリー供給手段、32 可溶化手段、34 反応容器、36 加熱手段、37 温度測定手段、39 圧力測定手段、42 冷却手段、44,45 バルブ、52、マイクロ波発生装置、54 導波管、56 照射部、58a 水性スラリー導入部、 58b 水性スラリー排出部、62 乾燥手段、72 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料の水可溶化物の製造方法であって、
セルロース系材料を含有する水性スラリーを準備する水性スラリー準備工程と、
前記水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料の水可溶化物を含有する溶液を調製する可溶化工程と、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記可溶化工程は、前記水性スラリーを160℃以上に急速加熱する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記可溶化工程は、前記水性スラリーを5分以内に160℃以上に急速加熱する工程である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記可溶化工程における、前記セルロース系材料の可溶化率は60%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記可溶化工程は、前記水性スラリーを水の飽和水蒸気圧以上に加圧する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記可溶化工程は、連続式で行う、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記セルロース系材料粉末はアスペクト比が2以下の粒子が80%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記セルロース系材料は、光散乱法による粒子径が100μm以下の粒径を有する粒子が全体の80%以上を占めるセルロース系材料粉末である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記水性スラリーは、セルロース系材料100重量部に対して、水性媒体450重量部以上1000重量部以下からなる、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記セルロース系材料は、少なくともセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記可溶化工程後、前記溶液を160℃未満に急速冷却する冷却工程を備える、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記溶液に含まれる少なくとも一部の水分を除去する水分除去工程を備える、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
セルロース系材料の水可溶化物の製造装置であって、
セルロース系材料を含有する水性スラリーを加圧下で加熱して前記セルロース系材料を可溶化して該材料を含有する溶液を調製する可溶化手段を備える、製造装置。
【請求項14】
前記水性スラリーを前記可溶化手段に連続的に供給する水性スラリー供給手段を備える、請求項13に記載の製造装置。
【請求項15】
前記可溶化手段は前記水性スラリーが移動する反応容器と、該反応容容器において前記水性スラリーを加熱する加熱手段と、を備える、請求項13または14に記載の製造装置。
【請求項16】
前記加熱手段は、前記反応容器の前記水性スラリーの導入部分近傍にて前記水性スラリーを160℃以上に加熱可能である、請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記可溶化手段のすぐ後段には前記溶液を冷却する冷却手段を備える、請求項13〜16のいずれかに記載の製造装置。
【請求項18】
前記溶液に含まれる少なくとも一部の水分を除去する乾燥手段を備える、請求項13〜17のいずれかに記載の製造装置。
【請求項19】
前記可溶化手段はマイクロ波加熱手段を備えている、請求項13〜18のいずれかに記載の製造装置。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれかに記載のセルロース系材料水可溶化物の製造方法によって得られるセルロース系材料の水可溶化物。
【請求項21】
前記水可溶化物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量が50以上20000以下である、請求項20に記載の水可溶化物。
【請求項22】
ペースト状、固形状、ペレット状である、請求項20または21に記載の水可溶化物。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれかに記載の水可溶化物を含有する、加熱による成形体製造用組成物。
【請求項24】
セルロース系材料の成形体であって、
請求項20〜22のいずれかに記載のセルロース系材料水可溶化物を含有する、成形体。
【請求項25】
セルロース系材料の成形体の製造方法であって、
請求項20〜22のいずれかに記載の水可溶化物を含有する成形用組成物を加熱し前記セルロース系材料水可溶化物を可塑化させて成形する工程、
を備える、成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−28357(P2006−28357A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209877(P2004−209877)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(598091860)財団法人名古屋産業科学研究所 (23)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】