説明

セルロース系製造物の製造方法

本発明は、繊維の少なくとも約60重量%がセルロース系繊維である繊維含有懸濁物を提供すること、及び、懸濁物をワイヤ上で脱水して、セルロース系繊維ウェブを形成することを含み、さらに、形成されたウェブに対するシリカ系粒子と、懸濁物及び/又は形成されたウェブに対する湿潤紙力増強剤とを加えることを含む、セルロース系製造物の製造方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる製造物に関する。本発明はさらに、シリカ系粒子と、実質的にアルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤とを含む分散物に関する。本発明のさらなる態様が、約1000m/gから約1700m/gの範囲の比表面積を有するシリカ系粒子と、湿潤紙力増強剤とを含む分散物に関する。本発明のさらに別の態様が、製紙プロセスにおける添加剤としての本発明の分散物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び相対的湿潤剛性のパラメーターのうちの少なくとも1つを改善するセルロース系製造物の製造方法に関する。本発明は、具体的には、形成されたウェブに対するシリカ系粒子と、繊維含有懸濁物及び/又は形成されたウェブに対する湿潤紙力増強剤とを加えることを含む、セルロース系製造物の製造方法に関し、また、そのような方法によって得ることができるセルロース系製造物に関する。本発明はさらに、シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤を含む分散物、並びに、製紙プロセスにおける添加剤としてのそのような分散物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なセルロース系製造物、及び、そのような製造物を作製するための様々な方法が当分野では周知である。様々なセルロース系製造物が典型的には、繊維含有懸濁物から排水し、ウェブをワイヤ上で形成することによって作製される。懸濁物は通常、薄い層としてワイヤに堆積させられる前にヘッドボックスに含有される。繊維ウェブが典型的には、真空脱水操作及び圧搾操作によって脱水される(これらの操作において、ウェブは、機械的部材(例えば、円筒状ロールや拡張ニッププレスなど)に対することによって発生させられる圧力に供される)。
【0003】
セルロース系製造物は一般に、低い湿潤強度及び湿潤剛性を有しており、また、多くの場合、その性能及び有用性を制限し得る湿度条件での寸法変化を示す。従って、寸法安定性が、例えば、包装材では重要な要因である。しかしながら、湿潤強度を、同時に乾燥強度を同じ程度増大させることなく増大することがこれまで困難であった。乾燥強度が大きくなりすぎると、セルロース系製造物(例えば、厚紙及びティッシュペーパーなど)は、乾燥したとき、脆くなりすぎることがあるか、又は、硬くなりすぎることがあり、このことは多くの適用において望ましくない。ティッシュペーパーは、湿っているときには強く、しかし、乾燥状態にあるときには軟らかいことが望ましい。厚紙は、湿っているとき、又は、濡れているとき、良好な寸法安定性を有しなければならず、しかし、乾燥したとき、脆くなりすぎてはならない。従って、湿潤強度及び/又は湿潤剛性を、乾燥強度及び乾燥剛性に実質的な影響を及ぼすことなく増大させ、その結果、いわゆる相対的湿潤強度(RWStr)及び相対的湿潤剛性(RWSti)を増大させるようにすることが望ましい。
【0004】
先行技術分野において、セルロース系製造物の湿潤強度及び湿潤剛性を改善するための試みがこれまでいくつかなされている。
【0005】
米国特許第2,980、558号は、紙の中しん原紙が、高い相対湿度における中しん原紙の剛性を改善するために、6.0よりも低いpHにおいて、活性な非凝集シリカの、本質的に塩非含有のゾルにより含浸されるプロセスを開示する。
【0006】
米国特許第4,033,913号は、セルロース繊維が、工業的使用のための紙製品(例えば、腐食性液体及び酸化性液体のためのフィルターなど)の乾燥強度、湿潤強度、剛性及び化学的抵抗性を増大させるために、モノマー−オリゴマーのケイ酸の溶液により含浸されるプロセスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,980、558号
【特許文献2】米国特許第4,033,913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セルロース系製造物の湿潤強度及び/又は湿潤剛性の特性を改善することが依然として求められている。セルロース系製造物の湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び/又は相対的湿潤剛性のパラメーターのうちの少なくとも1つを改善する方法を提供することが、本発明の目的の1つである。
【0009】
本発明の別の目的が、改善された湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び/又は相対的湿潤剛性をセルロース系製造物に与える分散物を提供することである。具体的には、環境に適合した製造物(例えば、実質的にアルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤など)を含む分散物を提供することが目的の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様が、
(I)繊維の少なくとも約60重量%がセルロース系繊維である繊維含有懸濁物を提供すること;
(II)懸濁物をワイヤ上で脱水して、セルロース系繊維ウェブを形成すること
を含む、セルロース系製造物の製造方法であって、
さらに、
(i)形成されたウェブに対するシリカ系粒子;及び
(ii)懸濁物及び/又は形成されたウェブに対する湿潤紙力増強剤
を加えることを含む、セルロース系製造物の製造方法
に関する。
【0011】
本発明の別の態様が、この方法によって得ることができる製造物に関する。
【0012】
本発明の1つのさらなる態様が、
(a)シリカ系粒子;及び
(b)実質的にアルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤
を含む分散物に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様が、
(a)約1000m/gから約1700m/gの範囲の比表面積を有するシリカ系粒子;及び
(b)湿潤紙力増強剤
を含む分散物に関する。
【0014】
本発明のさらに別の態様が、製紙プロセスにおける添加剤としてのそのような分散物の使用に関する。
【0015】
本発明の方法又は分散物において使用することができるシリカ系粒子には、例えば、ポリケイ酸、ポリケイ酸ミクロゲル、ポリシリケート、ポリシリケートミクロゲル、コロイド状シリカ、コロイド状アルミニウム修飾シリカ、ポリアルミノシリケート、ポリアルミノシリケートミクロゲル、ボロシリケートなどが含まれる。好適なシリカ系粒子の例には、米国特許第4,388,150号、同第4,927,498号、同第4,954,220号、同第4,961,825号、同第4,980,025号、同第5,127,994号、同第5,176,891号、同第5,368,833号、同第5,447,604号、同第5,470,435号、同第5,543,014号、同第5,571,494号、同第5,573,674号、同第5,584,966号、同第5,603,805号、同第5,688,482号及び同第5,707,493号に開示されるシリカ系粒子が含まれる(これらは参照により本明細書中に組み込まれる)。好適なシリカ系粒子の例には、約100nm未満の平均粒子サイズを有するもの、例えば、約20nm未満の平均粒子サイズを有するもの、例えば、平均粒子サイズを約1nm〜約10nmの範囲に有するものが含まれる。
【0016】
1つの実施形態によれば、シリカ系粒子は水性のコロイド状分散物(いわゆるシリカ系ゾル)の形態である。シリカ系ゾルは修飾することができ、また、水相に、並びに/或いは、シリカ系粒子の内部及び/又は表面に存在することができる他の元素(例えば、アルミニウム、ホウ素、窒素、ジルコニウム、ガリウム及びチタンなど)を含有することができる。
【0017】
シリカ系粒子の比表面積は、例えば、少なくとも50m/gであるか、又は、少なくとも約100m/gであり、かつ、約1700m/gまでであることが可能である。比表面積は、滴定を妨害し得るサンプルに存在する何らかの化合物(例えば、アルミニウム系化学種及びホウ素系化学種など)の適切な除去の後で、又は、そのような化合物についての適切な調節の後で、G.W.Searsによって、Analytical Chemistry 28(1956):12, 1981-1983に記載されるように、また、米国特許第5,176,891号に記載されるように、NaOHによる滴定によって測定される。従って、与えられる面積は粒子の平均比表面積を表す。
【0018】
1つの実施形態によれば、シリカ系粒子は、約8%から約50%の範囲のS値(例えば、約10%から約40%の範囲のS値)を有するゾルに存在させることができる。S値は、Iler&Daltonによって、J. Phys. Chem. 60(1956), 955-957に記載されるように測定及び計算される。S値は凝集又はミクロゲル形成の程度を示しており、より低いS値は、凝集の程度がより大きいことを示す。1つの実施形態によれば、シリカ系粒子は、約300m/gから約1000m/gの範囲の比表面積を有し、例えば、約500m/gから約950m/gの範囲の比表面積、又は、約750m/gから約950m/gの範囲の比表面積を有する。ゾルにおけるシリカ系粒子の乾燥含有量は約1重量%から約50重量%にまで及ぶことができ、例えば、約5重量%から約30重量%にまで及ぶことができるか、又は、約7重量%から約30重量%にまで及ぶことができる。
【0019】
1つの実施形態によれば、シリカ系粒子は、約1000m/gから約1700m/gの範囲の比表面積を有し、例えば、約1050m/gから約1600m/gの範囲の比表面積を有する。本発明による分散物におけるシリカ系粒子の乾燥含有量は約10重量%までが可能であり、例えば、約6重量%まで、又は、約4重量%までが可能である。
【0020】
本明細書中で使用される用語「湿潤強度」は、セルロース系製造物の機械的強度、並びに、物理的一体性を使用中のときに、特に、湿潤条件での使用中のときに維持し、かつ、引裂き、破裂及び破砕に耐えるその能力を示す。本明細書中で使用される用語「湿潤剛性」は、湿潤条件におけるセルロース系製造物の剛軟度を示す。相対的湿潤強度の値が、RWStr(%単位)=(WStr/DStr)*100の式(式中、RWStrは相対的湿潤強度を表し、WStrは紙の湿潤時比引張り強さであり、DStrは紙の乾燥時比引張り強さである)に従って、湿潤時比引張り強さと、乾燥時比引張り強さとの間における比率として定義される。相対的湿潤剛性(RWStif(%単位)=(WStif/DStif)*100)が相対的湿潤強度からの類推によって計算される。
【0021】
本発明の方法及び分散物において使用することができる湿潤紙力増強剤には、ウレア−ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(MF)、ジアルデヒドに基づく樹脂(例えば、グリオキサール処理ポリアクリルアミドなど)、及び、エピハロヒドリンに基づく樹脂(例えば、ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン樹脂など)、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、湿潤紙力増強剤は、実質的にアルデヒド非含有の薬剤(例えば、エピハロヒドリンに基づく樹脂(例えば、ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン樹脂(PAAE))など)、又は、ジアルデヒドに基づく樹脂(例えば、グリオキサール処理ポリアクリルアミド樹脂)、又は、これらの混合物から選択される。定義「実質的にアルデヒド非含有の」は、この文脈では、湿潤紙力増強剤又はその混合物が平均して、アルデヒドを湿潤紙力増強剤の総重量に基づいて約10重量%未満の量(例えば、約5重量%未満の量、又は、約1重量%未満の量、又は、約0.5重量%未満の量)で含有することを意味する。
【0023】
エピハロヒドリンに基づく樹脂は一般に、窒素含有前駆体及びハロゲン含有架橋剤を含む。架橋剤はエピハロヒドリンが可能であり、これには、エピブロモヒドリン及び/又はエピクロロヒドリンが含まれる。窒素含有ポリマーは、例えば、ポリアミノアミド及び/又はポリアミンである場合がある。使用されるポリアミノアミドは、ポリカルボン酸(例えば、ジカルボン酸)及びポリアミンの反応生成物である場合がある。用語「カルボン酸」は、カルボン酸誘導体(例えば、無水物及びエステルなど)を包含することが意味される。使用することができるポリカルボン酸には、飽和又は不飽和の脂肪族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸が含まれ、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及び、それらの混合物又は誘導体などが含まれる。使用することができるポリアミンには、ポリアルキレンポリアミンが含まれ、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、及び、それらの混合物が含まれる。ポリカルボン酸及びポリアミンは典型的には、約1:0.7から約1:1.5の範囲のモル比で適用される。
【0024】
1つの実施形態によれば、水溶性であり、窒素を含有する、エピハロヒドリンに基づく樹脂が、一般には、ポリアミノアミドの溶液から調製される。そのような溶液は、水混和性溶媒(例えば、エタノール又はジメチルホルムアミドなど)との混合で純水又は水から形成されるので、水性であり得る。エピハロヒドリンと、ポリアミノアミドとの反応を行う多くの異なる様式が、特に、米国特許第3,311,594号、米国特許第4,336,835号、米国特許第3,891,589号及び米国特許第2,926,154号の開示において記載されている。ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン樹脂を、例えば、米国特許第3,700,623号、米国特許第3,772,076号、米国特許第5,200,036号、米国特許第4,416,729号に開示される方法に従って、又は、有機塩素含有量が低下させられ、総ハロゲン含有量が1重量%未満である、欧州特許第0776923号に記載される方法に従って製造することができる。エピハロヒドリンに基づく樹脂(例えば、ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン)の乾燥含有量は、樹脂の総重量に基づいて約30重量%までが可能であり、例えば、約5重量%〜約20重量%、又は、約7.5重量%〜約15重量%が可能である
【0025】
ジアルデヒドに基づく樹脂が、ジアルデヒド(例えば、グリオキサール、或いは、C〜Cの飽和又は不飽和のアルキレンジアルデヒド又はフェニレンジアルデヒドなど)をジアルデヒド反応性コモノマー(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド及びN−メチルメタクリルアミドなど)と反応することによって調製される。例えば、グリオキサール処理ポリ(アクリラート)樹脂を、グリオキサールをアクリルアミドのコポリマー及び少量のカチオン性コモノマーと反応することによって調製することができる。そのような樹脂が、米国特許第3,556,933号及び同第4,605,702号に記載される。カチオン性コモノマーはさらに、樹脂を形成させるためにジアルデヒドと反応させることができる。カチオン性コモノマーには、第三級及び第四級のジアリルアミノ誘導体、或いは、アクリル酸又は(メタ)アクリル酸又はアクリルアミド又はメタ(アクリルアミド)の第三級及び第四級のアミノ誘導体、ビニルピリジン系化合物及び第四級ビニルピリジン系化合物、或いは、第三級及び第四級のアミノ誘導体を含有するパラ−スチレン誘導体が含まれる。カチオン性コモノマーは、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)である場合がある。ジアルデヒドに基づく樹脂は、例えば、グリオキサール処理ポリアクリルアミド樹脂(これはまた、本明細書中ではグリオキサール−ポリアクリルアミドとして示される)であり、これは、WO2006/068964に開示される方法に従って製造することができる。この樹脂は、約2重量%から約25重量%の範囲の乾燥含有量を有することができ、又は、例えば、約5重量%から約15重量%の範囲の乾燥含有量を有することができる。1つの実施形態によれば、樹脂におけるアルデヒド含有量は約10重量%未満であり、例えば、約7.5重量%未満であるか、又は、約5重量%未満である。
【0026】
1つの実施形態によれば、ウェブの乾燥含有量は少なくとも約20重量%であり、例えば、少なくとも約50重量%であるか、又は、少なくとも約90重量%である。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤(これらはまた、本明細書中では成分として示される)は、形成されたウェブに別個に加えられるか、或いは、形成されたウェブに、混合物として、例えば、プリミックス又は分散物の形態で加えられる。これらの成分は任意の順序で加えることができ、又は、同時に加えることができる。例えば、湿潤紙力増強剤を懸濁物に加えることができ、シリカ系粒子を形成されたウェブに加えることができる。シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤は、ウェブに含浸するためのいずれかの好適な手段によって、例えば、サイズ・プレス・デバイス及び/又は噴霧デバイスによって、形成されたウェブに加えることができる。
【0028】
乾燥含有量として計算されるシリカ系粒子の好適な投与量が、広い限界の範囲内で変化し得る。例えば、シリカ系粒子を、形成されたウェブに、懸濁物の乾燥重量に基づいて約0.01kg/t(kg/トン)から約50kg/tの範囲の量で加えることができ、例えば、約0.05kg/tから約35kg/tの範囲の量、又は、約0.5kg/tから約30kg/tの範囲の量などで加えることができる。
【0029】
湿潤紙力増強剤の好適な投与量もまた、広い限界の範囲内で変化し得る。湿潤紙力増強剤を、懸濁物及び/又は形成されたウェブに、例えば、懸濁物の乾燥重量に基づいて約0.01kg/tから約50kg/tの範囲の量で加えることができ、例えば、約0.05kg/tから約35kg/tの範囲の量、又は、約0.5kg/tから約30kg/tの範囲の量などで加えることができる。
【0030】
1つの実施形態によれば、さらなる成分が懸濁物に加えられる。そのような成分の例には、ドレネージ助剤及び歩留まり向上剤、従来的フィラー、蛍光増白剤、サイズ剤、乾燥紙力増強剤、さらなる湿潤紙力増強剤などが含まれる。好適なドレネージ助剤及び歩留まり向上剤の例には、カチオン性及びアニオン性の有機ポリマー、シリカ質物質、及び、それらの混合物が含まれる。好適な従来的フィラーの例には、カオリン、チャイナクレー、二酸化チタン、石膏、タルク、天然炭酸カルシウム及び合成炭酸カルシウム(例えば、チョーク、粉砕大理石及び沈降炭酸カルシウム)、水素化された酸化アルミニウム(様々なアルミニウムトリヒドロキシド)、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウムなどが含まれる。好適なサイズ剤の例には、セルロース非反応性のサイズ剤(例えば、ロジン系石けん、ロジン系エマルション/分散物のようなロジン系サイズ剤)、及び、セルロース反応性のサイズ剤(例えば、アルケニルコハク酸無水物(ASA)のような酸無水物のエマルション/分散物、アルケニルケトン及びアルキルケトンのダイマー(AKD)及びマルチマー)が含まれる。
【0031】
繊維含有懸濁物は、数種類のパルプ(例えば、化学パルプ(例えば、硫酸塩パルプ及び亜硫酸パルプ)、オルガノソルブパルプ、機械パルプ(例えば、サーモメカニカルパルプ、ケモサーモメカニカルパルプなど)、軟木及び/又は堅木に由来するリファイナーパルプ又は砕木パルプなど)、又は、非木材に由来する繊維(アフリカチカラシバ(elephant grass)、バガス、亜麻、わらなどのような1年草植物を含む)、及び、再生繊維に基づく懸濁物に由来することができる。1つの実施形態によれば、繊維含有懸濁物は、例えば、繊維の総重量に基づいて約80重量%〜約100重量%のセルロース系繊維、又は、約95重量%〜約100重量%のセルロース系繊維を含有する。
【0032】
1つの実施形態によれば、セルロース系製造物は、紙(例えば、ファインペーパー又はティッシュペーパー)、又は、板紙(例えば、ペーパーボード、厚紙又は液体包装板紙)である。
【0033】
本発明の1つのさらなる態様が分散物に関し、例えば、本明細書中で定義されるようなシリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤を含む水性の分散物に関する。本発明の1つの実施形態において、分散物は、シリカ系粒子、及び、実質的にアルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤(例えば、エピハロヒドリンに基づく樹脂(例えば、ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン)など)を含む。本発明の1つの実施形態によれば、分散物は、約1000m/gから1700m/gの範囲の比表面積を有するシリカ系粒子、及び、湿潤紙力増強剤を含む。
【0034】
本発明の分散物は、シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤を混合することによって得ることができる。1つの実施形態によれば、シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤が、希釈されることなく混合される。別の実施形態によれば、シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤が水相において希釈される。例えば、比表面積が約300m/g〜約1000m/gであるシリカ系粒子を、湿潤紙力増強剤と混合する前に、約0.1重量%から約10重量%の範囲の乾燥含有量(例えば、約0.5重量%から約5重量%の範囲の乾燥含有量、又は、約1重量%から約2.5重量%の範囲の乾燥含有量)に希釈することができる。比表面積が約1000m/g〜約1700m/gであるシリカ系粒子を、湿潤紙力増強剤と混合する前に、約7重量%までの乾燥含有量(例えば、約0.5重量%から約5.5重量%の範囲の乾燥含有量、又は、約1重量%から約2.5重量%の範囲の乾燥含有量)に希釈することができる。湿潤紙力増強剤を、シリカ系粒子と混合する前に、約0.1重量%から約10重量%の範囲の乾燥含有量(例えば、約0.5重量%から約5重量%の範囲の乾燥含有量、又は、約1重量%から約2.5重量%の範囲の乾燥含有量)に希釈することができる。1つの実施形態によれば、シリカ系粒子の希釈された溶液を、希釈された湿潤紙力増強剤溶液に、撹拌下で加えることができる。
【0035】
1つの実施形態によれば、分散物におけるシリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤の乾燥含有量は約0.1重量%〜約10重量%である。例えば、比表面積が約1000m/g〜約1700m/gであるシリカ系粒子と、湿潤紙力増強剤(例えば、アルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤)とを含有する分散物は、約0.1重量%から約7重量%の範囲の乾燥含有量を有することができ、例えば、約0.5重量%から約5重量%の範囲の乾燥含有量、又は、約1重量%から約3.5重量%の範囲の乾燥含有量を有することができる。比表面積が約300m/g〜約1000m/gであるシリカ系粒子と、湿潤紙力増強剤(例えば、アルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤)とを含有する分散物は、約0.1重量%から約10重量%の範囲の乾燥含有量を有することができ、例えば、約0.5重量%から約5重量%の範囲の乾燥含有量、又は、約1重量%から約3.5重量%の範囲の乾燥含有量を有することができる。
【0036】
1つの実施形態によれば、分散物におけるシリカ系粒子対湿潤紙力増強剤の重量比率は約5:1から約1:100にまで及び、例えば、約1.5:1から約1:20にまで及ぶか、又は、約1:1から約1:10にまで及ぶ。分散物はpHを約2〜約7の範囲内に有することができ、例えば、pHを約2.5〜約5の範囲内に有することができる。シリカ系粒子及び湿潤紙力増強剤のさらなるパラメーター及び特性は、本明細書中で定義される通りであり得る。
【0037】
本発明の1つの実施形態によれば、分散物は、製紙プロセスにおいて、添加剤として、例えば、形成されたセルロース系繊維ウェブに対する添加剤として、及び/又は、繊維含有懸濁物に対する添加剤として使用される。
【0038】
本発明が下記の実施例においてさらに例示される。しかしながら、下記の実施例は、本発明を限定するために意図されない。すべての部及び百分率は、別途言及されない限り、重量部及び重量パーセントを示す。
【実施例】
【0039】
下記の添加剤を、本発明及び比較例を例示するために使用した。
シリカ系粒子:
IWS1:オリゴマー状ケイ酸、バッチ1;比表面積、約1200m/g;pH、約2.5
IWS2:コロイド状シリカ;比表面積、約850m/g;pH、約9
IWS3:オリゴマー状ケイ酸、バッチ2;比表面積、約1200m/g;pH、約2.5
IWS4:ポリケイ酸、5時間貯蔵されたIWS3;比表面積、約1100m/g;pH、約2.5
湿潤紙力増強剤:
OWS1:ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン、バッチ1;乾燥含有量、約15重量%;pH、約3.5
OWS2:ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン、バッチ2;乾燥含有量、約15重量%;pH、約3.5
【0040】
シリカ系粒子と、湿潤紙力増強剤との下記の分散物を使用した。
WSAC1:比率が1:1の、IWS1:OWS1の分散物;pH、約3.5
WSAC2:比率が2:1の、IWS1:OWS1の分散物;pH、約3.0
WSAC3:比率が1:2の、IWS1:OWS1の分散物;pH、約3.5
WSAC4:比率が1:4の、IWS3:OWS2の分散物;pH、約3.5
WSAC5:比率が1:4の、IWS3:OWS2(5時間貯蔵)の分散物;pH、約3.5
【0041】
実施例1
面積が22cmx16cmである、さらし針葉樹クラフトパルプの吸取り紙サンプルを、下記の方法に従って異なる添加剤を含浸させることによって処理した。
・サンプルを、少なくとも24時間、50%RH、23℃で状態調節する。
・乾燥サンプルを重量測定する。
・250mlの異なる添加剤溶液において2分間含浸する。
・吸取り紙(それぞれの側に2枚)の間で圧搾する。
・湿潤サンプルを重量測定する。
・サンプルを日本製シリンダー乾燥機において92℃で9分間乾燥する。
・サンプルを、少なくとも24時間、50%RH、23℃で状態調節する。
・乾燥含浸サンプルを重量測定する。
・Lorentzon&Wettre(スェーデン)によって供給されるTensile Strength Testerによって、乾燥強度及び乾燥剛性の特性をSCAN−P方法67:93に従って測定し、湿潤強度及び湿潤剛性の特性をSCAN−P方法20:95に従って測定する。
【0042】
サンプルの乾燥強度、湿潤強度及び相対的湿潤強度が表1に示される。サンプルの乾燥剛性、湿潤剛性及び相対的湿潤剛性が表2に示される。投与量を、(乾燥含浸重量−乾燥重量)/乾燥重量の式に従って、乾燥紙における乾燥添加剤として計算した。試験番号1は、無添加での結果を示す。試験番号2〜試験番号6は、サンプルがオリゴマー状ケイ酸の形態でのシリカ系粒子により含浸された基準物についての結果を示す。試験番号7〜試験番号13は、サンプルが、シリカ系粒子及びポリアミノアミド−エピクロロヒドリンを含む分散物により含浸された本発明の結果を示す。
【表1】

【表2】

【0043】
表1及び表2に示される結果から理解され得るように、本発明に従って含浸された紙サンプルは、湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び/又は相対的湿潤剛性における改善を示す。
【0044】
実施例2
紙シート(粉砕されたさらし針葉樹クラフトパルプ(100%マツ)から製造されたもの)を、Fibertech AB(スェーデン)によって供給されるDynamic Sheet Former(Formette Dynamique)で調製した。
【0045】
含浸を、表3及び表4に従った投与量により、実施例1に記載される方法に従って行った。湿潤紙力増強剤を繊維含有懸濁物に加えた。サンプルの乾燥強度、湿潤強度及び相対的湿潤強度が表3に示される。サンプルの乾燥剛性、湿潤剛性及び相対的湿潤剛性が表4に示される。投与量を乾燥紙における乾燥添加剤として計算した。
【表3】

【表4】

【0046】
表3及び表4に示される結果から理解され得るように、本発明に従って含浸されたサンプルは、湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び/又は相対的湿潤剛性における改善を示す。
【0047】
実施例3
さらし針葉樹クラフトパルプの吸取り紙に、シリカ系粒子及び/又は湿潤紙力増強剤を、実施例1に記載される方法に従って、かつ、表5及び表6に従った投与量により含浸させた。サンプルの乾燥強度、湿潤強度及び相対的湿潤強度が表5に示される。サンプルの乾燥剛性、湿潤剛性及び相対的湿潤剛性が表6に示される。投与量を乾燥紙における乾燥添加剤として計算した。
【表5】

【表6】

【0048】
表5及び表6に示される結果から理解され得るように、本発明に従って含浸されたサンプルは、湿潤強度、湿潤剛性、相対的湿潤強度及び/又は相対的湿潤剛性における改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)繊維の少なくとも約60重量%がセルロース系繊維である繊維含有懸濁物を提供すること;
(II)前記懸濁物をワイヤ上で脱水して、セルロース系繊維ウェブを形成すること
を含む、セルロース系製造物の製造方法であって、
さらに、
(i)前記形成されたウェブに対するシリカ系粒子;及び
(ii)前記懸濁物及び/又は前記形成されたウェブに対する湿潤紙力増強剤
を加えることを含む、セルロース系製造物の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ系粒子及び前記湿潤紙力増強剤が混合物として加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカ系粒子及び前記湿潤紙力増強剤が別個に加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリカ系粒子が、約1000m/gから約1700m/gの範囲の比表面積を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリカ系粒子が、前記懸濁物の乾燥重量に基づいて約0.05kg/tから約35kg/tの範囲の量で前記形成されたウェブに加えられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記湿潤紙力増強剤が、前記懸濁物の乾燥重量に基づいて約0.05kg/tから約35kg/tの範囲の量で前記懸濁物及び/又は前記形成されたウェブに加えられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記湿潤紙力増強剤が実質的にアルデヒド非含有である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記湿潤紙力増強剤がポリアミノアミド−エピクロロヒドリンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記形成されたウェブが少なくとも約20重量%の乾燥含有量を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シリカ系粒子及び/又は前記湿潤紙力増強剤が前記形成されたウェブにサイズ・プレス・デバイス及び/又は噴霧デバイスによって適用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記セルロース系製造物が板紙である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載される方法によって得ることができるセルロース系製造物。
【請求項13】
板紙である、請求項12に記載の製造物。
【請求項14】
(a)シリカ系粒子;及び
(b)実質的にアルデヒド非含有の湿潤紙力増強剤
を含む分散物。
【請求項15】
(a)約1000m/gから約1700m/gの範囲の比表面積を有するシリカ系粒子;及び
(b)湿潤紙力増強剤
を含む分散物。
【請求項16】
前記湿潤紙力増強剤のアルデヒド含有量が約10重量%未満である、請求項14に記載の分散物。
【請求項17】
水性である、請求項14から16のいずれか一項に記載の分散物。
【請求項18】
前記シリカ系粒子対前記湿潤紙力増強剤の重量比率が約1.5:1から約1:20の範囲である、請求項14から17のいずれか一項に記載の分散物。
【請求項19】
前記シリカ系粒子及び前記湿潤紙力増強剤の乾燥含有量が約0.1重量%〜約10重量%である、請求項14から18のいずれか一項に記載の分散物。
【請求項20】
前記湿潤紙力増強剤がポリアミノアミド−エピクロロヒドリンである、請求項14から19のいずれか一項に記載の分散物。
【請求項21】
製紙プロセスにおける添加剤としての、請求項14から20のいずれか一項に記載される分散物の使用。
【請求項22】
形成されたセルロース系繊維ウェブに対する添加剤としての、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
繊維含有懸濁物に対する添加剤としての、請求項21に記載の使用。

【公表番号】特表2010−528196(P2010−528196A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509302(P2010−509302)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050481
【国際公開番号】WO2008/143580
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】