説明

セレン化鉄錯体を有するガラス・フリット

【課題】基礎材料ならびにFeおよびSeを含む着色剤を含む、着色ガラスを提供すること。
【解決手段】FeおよびSeを、基礎材料に添加する前に、フリットまたはガラス中でFe−Se錯体として結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、自動車および建築用ガラス組成物に関し、より詳細には、ガラス製造工程の間、組成物中にセレンを保持するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス型のガラスは、主として自動車用途(例えば、フロントガラスおよびバックライト)および建築用途(例えば、ビルディングおよび家の窓ガラスおよびドア)用に製造される。自動車および建築用のガラスの望ましい特性の多くが、非常によく似ているが、用途の各分野において通常使用されるガラス組成物は、全く異なっている。例えば、可視透過性を高水準に保ちながら、ガラス製品の赤外線吸収を向上させるためのガラスを作りだし、また、スペクトルの紫外線部分において良好な吸収を有するために、特定の化学元素および化合物を組み合わさせる。
【0003】
自動車用ガラスは、赤外線を大幅に遮断しながら、可視光線の非常に良好な透過率を提供しなければならない。これらの要求は、緑色に着色された着色ガラスを使用して、通常満たされてきた。しかし、スタイルを改善し、ガラスの色が乗物の他の部分と不調和になることを避けるためには、中間色のガラスの色が望ましいはずである。乗物のフロントガラス用のガラスは、通常、透明なプラスチックの中間層を有する、2枚の薄いガラス層を有する積層板である。乗物の残りの部分のガラスは、単層であってもよいし、またはフロントガラスと類似の構成を有することもできる。
【0004】
ビルディング用の建築用ガラスを選択する場合は、ガラスの色およびガラスの物理的/機械的特徴がより重要視される。透明ガラスがしばしば使用されるが、美的および光学的特性のためには中間色の灰色を利用することが、多くの場合望ましいはずである。他の望ましいスペクトル特性(すなわち、色)を得るために、さまざまな被覆を灰色ガラスに施すこともできる。他方で、建築用途において既に使用されている灰色ガラス組成物は、自動車用ガラスの要求を満たすには不十分な可視透過率を提供する。厚さ4mmの、代表的な建築用灰色ガラスは、A光源を用いた場合、55.5%の透過率(LTA)、40.5%の紫外線透過率、57%の赤外線透過率、および57%の総太陽エネルギー透過率を提供する。規則では、自動車用ガラス(トラックのBピラー(B−pillar)の後を除く)は70%のLTAを提供するように要求している。
【0005】
ガラス組成物のバッチ成分は、ガラスのさまざまな特性を決める添加物と共に、いくつかの基礎成分(例えば、砂、ソーダ灰、石灰石、苦灰石など)を含む。1つのよく知られた添加物は鉄である。酸化鉄はガラス中で2つの化学的形態、黄色の酸化形態(Fe)および青色の還元形態(FeO)で存在する。有利には、酸化形態の酸化鉄は、ガラス製品中を通過する紫外線の一部を吸収し、還元形態の酸化鉄は、ガラス製品中を通過する赤外線の一部を吸収する。加えて、他の着色剤と共にFeを使用して、緑色、青色、茶色、および灰色色調の、さまざまな微妙な違いをガラス製品に付与する。このような色調を生み出すために、しばしばセレンを着色剤として添加する。不幸にも、セレンはガラス炉の処理温度において、極めて揮発性である。通常、最終ガラス製品を処理した後では、セレンの僅か15%から20%が保持されるのみである。使用するセレンの量、元素状セレン顆粒の寸法、または石炭もしくはケイ素などの還元剤の使用、または硝酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウムなどの酸化剤の使用を含む多くの方法が、セレンの蒸発を抑制するために用いられてきた。米国特許第2955948号は、セレンをできるだけ多く保持することを試みるために、硝酸カリウムなどの酸化剤を使用することを教示している。米国特許第3291585号は、セレンを含む材料の揮発性を低減する1つの方法として、容易に蒸発する化学薬品を粉末ガラスと共に焼結することを教示している。より最近では、米国特許第6672108号が、セレンの蒸発を低減させるために、エプソム塩を使用することを教示している。しかし、セレンは非常に高価であり、より多くのセレンまたは他の添加剤をガラス・バッチに加えてセレンの蒸発を補償することは、最終ガラス製品のコストを押し上げることになる。加えて、硝酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムなどの酸化剤は、有毒気体としてガラス・バッチから蒸発する。
【0006】
ガラス業界における一般的な慣行は、工程で発生した、いかなる未使用ガラスをもバッチ供給原料中に戻すことである。ガラス化学者は、セレンのバッチ成分、またはセレンのバッチ成分および工程に戻されるカレットの成分の組合せから発生するセレンの損失を計算するという、苦労の多い義務を有する。
【0007】
米国特許第3915722号は、さまざまな着色剤を含有する、一連の容易に溶解するガラス・フリットを製造するための方法および組成物を記載しているが、いずれもセレンを使用していない。この参考資料およびその他の参考資料は、フリット中のホスト・ガラスを製造するための、容易に溶解する、低シリカおよび高ソーダ型のバッチならびに所望の着色剤が、所望の工業用ガラス製品よりも、より高度に濃縮されていることを、記載していない。
【特許文献1】米国特許第2955948号
【特許文献2】米国特許第3291585号
【特許文献3】米国特許第6672108号
【特許文献4】米国特許第3915722号
【0008】
したがって、セレンがガラス製造炉において処理されているときに、セレンの蒸発を補償するまたは低減させるために、ガラス・バッチまたはフリットに追加のセレンまたは他の作用剤を供給する費用を負担する必要なしに、セレンを利用するガラス製品を製造することが、ガラス業界において求められている。
【発明の要約】
【0009】
本発明は、着色ガラスを製造する間、セレンの大部分が保持される、セレン含有着色ガラスを製造するという利点を含む。Fe−Se錯体を含むフリットを、着色ガラスを製造するためのバッチ原料と混合する。錯体としての酸化鉄およびセレンは、ガラス構造内のセレンの移動度を低減させ、このことが、セレンが蒸発する傾向を著しく低下させる。
【0010】
本発明の一態様において、基礎ガラス材料ならびにFeおよびSeを含む着色剤を含む、容易に溶解する着色ガラスを提供する。FeおよびSeは、混合してFe−Seを形成させた後、溶解中に基礎材料に添加する。Feの重量は、添加されるSeの重量の少なくとも70%でなければならない。Fe−Se錯体を含む、このように生成されたフリットは、着色剤前炉に添加するか、炉のバッチ投入機へ供給される混合物の一部として添加することができる。
【0011】
本発明の別の態様においては、着色ガラスを形成する際に、ガラス・バッチ内のSeの蒸発を低減させるための、着色ガラスを提供する。複数の物質を混合機に供給して、ガラス・バッチを形成する。着色ガラスの製造工程の間に蒸発するSeの量を低減させるために、FeおよびSeを混合して、着色剤内部でFe−Se錯体を形成させる。
【0012】
本発明のさらに別の態様においては、基材ガラスおよび着色剤を含む着色ガラスを提供する。このガラスは、通常、カレットと呼ばれ、工程において以前に生成している。カレット組成物は、FeおよびSeを錯体の形態で含む。FeおよびSeは、着色ガラス製造工程の間に蒸発するSeの量を低減させるFe−Se錯体を、ガラス製造工程内で形成する。
【0013】
本発明のさらに別の態様においては、着色ガラスを形成する際に、ガラス・バッチ内のSeの蒸発を低減させるための方法を提供する。複数の物質を混合機に供給して、ガラス・バッチを形成する。Fe−Se錯体を含有するフリットまたはカレットを、混合機に供給してガラス・バッチに添加する。合わせたガラス・バッチならびにそれぞれがFe−Se錯体を有するフリットおよびカレットを加熱して、着色ガラスを形成する。Fe−Se錯体は、着色ガラスを処理する間のSeの蒸発を低減させる。
【0014】
本発明のさらに別の態様においては、ガラス・バッチを、Fe−Se錯体を含む別のガラスと混合することを含む、ガラス・バッチ原料段階から着色ガラスを製造する時点までの処理の間、着色ガラス中にセレンを保持するための方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様においては、Fe−Se錯体を含有するフリットは、容器炉(container furnace)の着色剤前炉において溶融ガラスに添加することができ、次いで、このフリットを物理的に撹拌して溶融ガラス中に入れることにより、溶融ガラスにブレンドして、色を均一化する。
【0016】
本発明のさまざまな目的および利点は、添付図面を考慮して読むことによって、以下の好ましい実施形態の詳細な記述から、当分野の技術者に明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ガラス・フロー・プロセスによって製造された、自動車および建築業界において使用される着色ガラスは、一般に以下の基本組成物によって特徴付けられる。全ガラス組成物の重量パーセントに基づく成分の一例は以下の通りである:
【0018】
【表1】

【0019】
上記組成物は、さらに、SOが、最終製品中に0.03から0.30wt%、より好ましくは0.15から0.25wt%の量で通常存在する、ガラスの基礎材料を使用する。加えて、フリットまたはカレットを介して、他の成分を着色剤としてガラス・バッチへ添加することができる。そのような成分には、酸化鉄(Fe)、マンガン化合物、およびコバルトまたはその他の着色剤が含まれる。
【0020】
着色ガラス中に存在する酸化鉄は通常、0.1から1.9wt%Feの量の範囲にある。従来技術の工程においては、この成分は、酸化形態、すなわちFeの形態でバッチ成分に添加する。組成物中に混合された酸化鉄は、ガラス製品の紫外線および赤外線透過率の両方を低下させる。通常の工業生産を介してこの工程により生じたガラス製品中の酸化鉄は、約0.18から0.26の範囲のレドックス比(FeOの重量をFeとしての全体の鉄で割り算したものに等しい、と定義される)を有する。
【0021】
セレン(Se)の添加によりガラスの色は、ブロンズに向かって変化し、コバルトにより、ガラスは青色に向かい、それぞれ、主波長および刺激純度を低下させる。所望の中間色灰色は、慎重なバッチ投入によってまたは本発明のガラスを製造するために使用する、炉内で溶解された以前の製品の残り物(カレットなど)からの、セレンおよび/または酸化コバルトの相対的な量を選択することによって得られる。二酸化マンガンは酸化剤としての役割を果たすので、二酸化マンガンを使用して、鉄が平衡を維持することを支援する。
【0022】
本発明のガラスは、従来のジーメンス(SIEMENS)フロート・ガラス炉へ供給するための、成分を混合したバッチによって製造される。硫酸ナトリウムは、硫酸塩の分解を促進する無煙炭または黒鉛と一緒にバッチ中で混合され、泡(bubble)またはシード(seed)を除去する際に清澄剤としての役割を果たす。二酸化マンガンは、セレンの保持を支援するためにバッチ中に添加することができる。通常、バッチ成分は、単一段階で一緒に混合し、次いで炉内に計量して入れる。
【0023】
マンガン化合物は、ガラス組成物中に、MnO基準で0から0.5wt%の量で存在する。このマンガン化合物は、さまざまな形態で、例えば、これに限らないが、MnO、Mn、MnO、MnCO、MnSO、MnF、またはMnClなどの形態でバッチのガラス成分に添加することができる。
【0024】
下表IIは、灰色ガラス組成物を形成するために好ましく使用される、原料バッチ成分の例示的な量を開示している。
【0025】
【表2】

【0026】
セレンを着色剤として使用し、元素またはセレン・フリットとしてガラスの基礎混合物に添加する場合、セレンは低融点(すなわち400°F)を有し、溶融物が約2600°Fを超える高温に曝されたときは、ガラス・バッチ溶融物中で急速に蒸発する。フリットは、溶融ガラスを冷却するとき、容器炉の前炉内でガラス工程に添加する、溶融または半溶融原料である。フリットは、磁器、釉薬およびエナメルを製造する際に一般に使用される。フリットは一般に、最終ガラス構造体に所望のデザインまたは表面仕上げ剤を形成するために、冷却段階の間にバッチ・ガラス原料に添加する。セレン・フリットは、セレンを、他の基礎材料または基礎ガラス・バッチ混合物に添加した際に、着色剤混合物を形成するための着色剤と共に、溶解することによって製造される。セレン・フリットは、セレンの蒸発を低減させようとして、冷却段階(例えば、2000°F)の間に添加される。セレン・フリットは、セレンの蒸発を低減させるために、ガラス形態から急速に溶解させる;しかし、最終ガラス製品中に保持されているセレンのパーセントは、元素形態のセレンを添加することによって製造された最終ガラス製品中に保持されているセレンと比較して、ほんの僅か高いだけである。追加のセレンまたは追加の酸化剤を、バッチまたはセレン・フリットに添加して、蒸発を低減させ、要求されている所望の色を実現することができるが、欠点は、還元剤を酸化するための追加のコスト、または高価なセレンを追加するコストである。
【0027】
セレンが元素形態でガラス・バッチに添加された場合と、セレンがセレン・フリットでガラス・バッチに添加された場合とのセレンの保持率を調べるために、実験室内で被験溶融物を製造した。バッチを計量し、高さ約2インチ、内径約2インチのガラス広口瓶に入れ、それぞれターブラー(Turbula)混合機で10分間乾式混合を行った。乾燥バッチを、高さが2インチ、最上部の内径が2.5インチ、1.75インチの内径を有する底部まで勾配がついている、80%白金/20%ロジウムのルツボ中に入れた。4.5mlの量の水をルツボ中の乾燥バッチに添加し、金属のスプーンで混合した。このような準備の後で、一群の異なったバッチを、2600°Fで1時間、ガス/空気燃焼炉において同時に溶解し、それぞれのルツボを炉から取り出し、フリットにした。ガラスをフリットにすることには、溶融ガラスをルツボの内面の周りに回転させることによって、白金/ロジウムルツボの内面を被覆すること、次いで、このルツボを冷水の中に投入することが含まれる。ルツボを水から取り出して排水した後、壊れたガラス粒子をルツボの側面から剥がし、ルツボ内で機械的に混合する。同様にして全ての試料をフリット化し、全てのルツボを、2600°Fでさらに1時間の間をおいて、炉内へ戻して設置し、フリット化手順を繰り返す。第2のフリット化工程の後で、ルツボを、2600°Fで4時間、炉の中へ戻す。それぞれのルツボを炉から取り出し、それぞれの溶融ガラス試料を、2.5インチの内径を有する黒鉛の鋳型の中へ流し込む。それぞれのガラスをゆっくりと冷却し、標識を付け、徐冷炉の中へ入れ、温度を急速に1050°Fに上げ、2時間保持し、次いで、炉を閉め切ってゆっくりと冷却し、14時間以上を経た後、試料を取り出す。試料を粉砕し、研磨して約4.0mm厚さにし、引き続きそれぞれの試料のスペクトル特性を測定する。
【0028】
以下の表には、実験で使用した要素の実際の重量および/または使用した重量パーセントが含まれている。セレンを元素の形態でバッチに添加するかまたはセレン・フリットとして添加したそれぞれの場合、結果は、ガラス・バッチ原料段階から着色ガラスが製造されるときまでの処理の間の、セレンの保持率が不足していた。実験のこの群は、Fe−Se錯体を形成するのに必要な酸化鉄のない状態で、フリットがセレンから構成される場合は、セレンの揮発性は、シリーズFでほんの僅か改善されていることを示す。ブリコックス(Brickox)バッチ原料は、他のガラス適合原料と共に78%MnOを含有するバッチ原料の商標名である。ブリコックス(Brickox)は、プリンス製造会社(Prince Manufacturing Company)が使用する、鉱物の軟マンガン鉱の商標名である。
【0029】
【表3】

【0030】
処理する間、セレンの蒸発を低減させ、ガラス・バッチ内にセレンを保持するために、セレンは、Fe−Se錯体を含有するフリットの状態でガラス・バッチに添加する。この錯体は、アンバー発色団(硫化鉄)と類似であり、この発色団はガラス中に茶色を発生させるために、480nmのピークで光を吸収する化学的集団(chemical grouping)と呼ぶことができる。Fe−Se錯体は、ガラスの網目構造と共に存在する。錯体としてのセレンおよび酸化鉄の集団は、セレンの蒸発を低減させ、その蒸発温度を上昇させる。ガラス・バッチ中のセレンは、Fe−Se錯体として添加された場合、鉄と結合し、ガラス網目の部分では酸素に取って代わる。セレンと鉄とが化学結合すると、セレンはガラス・ネットワーク中を自由に動きまわることができないので、セレンに蒸発に対する抵抗力を持たせることになる。製造後の最終ガラス製品では、25%未満のセレンが蒸発している。
【0031】
Fe−Se錯体は、砂、石灰石および苦灰石などのその他のガラス成分と組み合わせて、鉄およびセレンと一緒に溶解することにより、フリットとして製造される。フリットを冷却し、次いでガラス・バッチに添加し、次いで、バッチ投入機によりフロート炉などのガラス炉へ供給する。
【0032】
好ましくは、Fe−Se錯体は、コールド・トップ溶解炉(cold top melter furnace)[図示せず]において形成され、セレンがFe−Se錯体に形成されるため、セレンの蒸発を低減する。このような構成においては、ガラス溶解炉は、溶融ガラスを収容する溶解槽を含む。溶融ガラスを加熱するために、側壁または底壁における電極などの加熱素子を備える。溶融ガラスの最上部を完全に覆うために、未処理の形態で固体状態の着色剤原料を堆積させるための開口部が設けられる。バッチ原料は、溶融ガラスの下層から連続的に溶解し、上層は実質的に固体の形態を留めている。新たな、固体状態の着色剤原料を、溶融ガラスの最上層に連続的に供給し、バッチ原料の全体の層を所望の深さに維持する。溶融ガラス着色剤は、下層から連続的に引き出し、新たな、固体状態の着色剤原料を、コールド・トップ溶解炉における最上層に断続的に添加する。固体状態の着色剤原料を添加することは、蒸発するセレンを保持することを支援する。すなわち、溶融ガラスの下層内のセレンが加熱されて蒸発する際に、最表面上の固体状態の着色剤原料が溶融ガラスの最上部を覆い、それによって、蒸気の障壁を形成し、蒸発したセレンの大部分が最上層を通り抜けて逃げていくのを防ぐことによって、セレンの揮発性を低減させる。Fe−Se錯体は、冷却されて固体状態のフリットを形成する。別法としては、その他の方法を使用してFe−Se錯体を製造する。Fe−Se錯体は、カレットと同じようにガラス・バッチに添加されうることに留意されたい。
【0033】
その結果、セレンの蒸発を低減させるだけの目的のために必要とされる、追加のセレンまたはその他の添加剤を添加することなく、セレンは保持される。ガラス製品に所望の色をもたらすために、バッチ中で現在使用されている、現存する化合物である酸化鉄を、錯体を形成するためのフリットとしてセレンと混合する。フリットを使用して着色剤をガラス・バッチに添加することができるので(すなわち、着色剤前炉を利用しない場合)、追加の原料または処理ステップに掛かる費用が避けられる。例えば、Fe−Se錯体を含有する灰色カレットを、ブロンズ色を作りだすためにセレンをも使用する、ブロンズ色を作りだそうとしている、バッチ混合物の成分として、使用することができる。ガラス化学者は、所望の製品を製造するために必要とされる、異なった濃度の着色剤を反映するために、バッチの化学を調節することになるはずである。
【0034】
図1は、セレンを含有する着色ガラスを製造するための方法の流れ図である。ステップ20においては、複数の物質を混合機に供給して、ガラス・バッチを形成する。複数の物質は、ガラスを形成するための基礎材料を含む。加えて、着色剤原料も、ステップ20において添加することができる。ステップ21においては、Fe−Se錯体をガラス・バッチに添加するために、Fe−Se錯体を混合機に供給する。ステップ22においては、混合されたガラス・バッチおよびFe−Se錯体を、炉に供給し、着色ガラスを形成するために加熱する。Fe−Se錯体は、着色ガラスを製造する間のセレンの蒸発を低減させる。MnOを、ガラス・バッチにまたは着色ガラスを製造するために加熱される際の、セレンの蒸発を低減するために酸化剤として使用するためのFe−Se錯体の一部として添加することができる。
【0035】
特許法規の規定に従って、本発明の原理および操業モードを、好ましい実施形態において説明し、例示してきた。しかし、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、具体的に説明し、例示したやり方とは別のやり方で、本発明を実施することができることを理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】セレンを含有する着色ガラスを製造するための方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0037】
20 ステップ20
21 ステップ21
22 ステップ22

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎材料ならびに
FeおよびSeを含む着色剤
を含む着色ガラスであって、FeおよびSeはFe−Se錯体として混合した後に基礎材料に添加する、着色ガラス。
【請求項2】
基材および着色剤を有する着色ガラスであって、着色剤の組成が、
Feおよび
Se
を含み、着色ガラス製造工程の間に蒸発するSeの量を低減させるために、FeおよびSeを混合して、着色剤内部でFe−Se錯体を形成させる着色ガラス。
【請求項3】
Feの重量が、添加されるSeの重量の少なくとも70%である、請求項2に記載の着色ガラス。
【請求項4】
着色ガラスを形成する際に、ガラス・バッチ内のSeの蒸発を低減させる方法であって、
複数の物質を混合機に供給してガラス・バッチを形成するステップと、
Fe−Se錯体を混合機に供給してガラス・バッチに添加するステップと、
合わせたガラス・バッチおよびFe−Se錯体を加熱して着色ガラスを形成するステップと
を含み、Fe−Se錯体が、着色ガラスを処理する間のSeの蒸発を低減させる方法。
【請求項5】
MnOをガラス・バッチに供給して、着色ガラスを処理する間のSeの蒸発を低減させるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Fe−Se錯体を、着色剤の一部としてガラス・バッチに添加する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
着色剤前炉において、Fe−Se錯体を含む着色剤をガラス・バッチに添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Fe−Se錯体を含む着色剤を撹拌してガラス・バッチの中に入れることにより、Fe−Se錯体を含む着色剤をガラス・バッチとブレンドして、色を均一化する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらに、MnOを、前記複数の物質の一部としてガラス・バッチに添加する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
Fe−Se錯体およびガラス・バッチを混合するために、Fe−Se錯体を炉のバッチ投入機へ供給する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
Fe−Se錯体の少なくとも一部を、カレットとして混合機へ添加する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
ガラス・バッチを、Fe−Se錯体を含む着色剤と混合することを含む、ガラス・バッチ原料段階から着色ガラスを製造する時点までの処理の間、着色ガラス中にセレンを保持する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−105940(P2008−105940A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277252(P2007−277252)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(505410508)オータモウティヴ、カムポウナンツ、ホウルディングス、エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】