説明

センサシステムおよびその動作方法

【課題】互いに変位する2物体間の隙間を変位の全範囲にわたって正確に測定するセンサシステムを提供すること。
【解決手段】感知されたパラメータを表す出力信号を供給するように動作可能なセンサ(12)を備えるセンサシステム(10)が提供される。センサシステム(10)は、また、センサ(12)に結合された制御システム(20)を備え、この制御システム(20)は、感知されたパラメータを表す出力信号に基づいてセンサ(12)の物理特性を変えるように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にセンサシステムに関し、より詳細には、センサの出力に応じてセンサの物理特性を調整するように動作可能なセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2物体間の距離を測定するために、センサの様々な型が使用されている。その上、これらのセンサは、様々な用途で使用されている。例えば、タービンは、シュラウドに隣接して配置されたタービン羽根を有する。タービン羽根とシュラウドの間の隙間は、タービン羽根の温度に依存して変化する。例えば、シュラウドとタービン羽根の間の隙間はタービンが冷たいとき最も大きく、タービンが熱くなるにつれて徐々に減少する。タービン羽根とシュラウドの間のギャップすなわち隙間は、タービンの安全で効率的な動作のために維持されることが望ましい。タービン羽根とシュラウドの間の距離を測定するようにセンサをタービン内に配置することができる。この距離は、シュラウドとタービン羽根の間の所望の変位を維持するようにシュラウドの動きを導くために使用することができる。
【0003】
ある特定の用途では、2物体間の距離を測定するために、キャパシタンスプローブが使用される。従来、キャパシタンスプローブ先端の寸法は、2物体間の単一変位距離に対応するように選ばれている。小さなプローブは、一般に、信号対雑音比のために小さな距離の測定に制限される。同様に、大きなプローブは、一般に、小さな距離の測定では2物体間の距離の分解能が悪いので、大きな距離の測定に制限される。その結果として、従来のキャパシタンスプローブは、プローブ先端がそのために設計された変位距離以外の変位距離では不正確であることがある。
【特許文献1】米国特許5166626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、互いに変位する2物体間の隙間を変位の全範囲にわたって正確に測定するセンサシステムを実現する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に言うと、本発明の一態様に従って、センサシステムが提供される。このセンサシステムは、感知されたパラメータを表す出力信号を供給するように動作可能なセンサを備える。また、センサシステムはセンサに結合された制御システムを備え、この制御システムは、感知されたパラメータを表す出力信号に基づいてセンサの物理特性を変えるように動作可能である。
【0006】
本発明の他の態様に従って、センサシステムを動作させる方法が提供される。この方法は、センサによって感知されたパラメータを表す出力信号を受け取ること、および感知されたパラメータを表す出力信号に基づいてセンサの物理特性を制御することを備える。
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および有利点は、添付の図面を参照して次の詳細な説明を読むとき、より適切に理解されるようになるだろう。この図面では、図面全体を通して、同様な符合は同様な部分を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで図1を参照すると、センサシステムが与えられ、全体的に参照数字10で表されている。このセンサシステム10は、感知されたパラメータを表す出力信号を供給するように動作可能なプローブ12を備える。プローブ12は、第1の導電要素14、第2の導電要素16、および第3の導電要素18を備える。しかし、もっと少ない数またはもっと多い数の導電要素をセンサシステム10で使用することができる。その上、センサシステム10の図示の実施形態は、導電要素14、16および18をプローブ制御システム20に選択的に結合するために、プローブ制御システム20、第1のスイッチ22、第2のスイッチ24、および第3のスイッチ26を備える。以下でより詳細に説明するように、プローブ制御システム20は、導電要素14、16および18を互いに選択的に結合することによって、プローブ12の出力に基づいてプローブ12の構成を最適化するように動作可能である。導電要素14、16および18は、また、間隔制御システム28にも結合されており、この間隔制御システム28は、プローブ12と、また以下で詳細に説明する対象との間の間隔を制御するように動作可能である。追加の導電要素30が、戻り経路として作用しかつプローブ12を雑音および干渉から遮蔽するように設けられる。しかし、プローブ12を遮蔽するために、より多い数の導電要素を導電要素30に結合することができる。さらに、導電要素14、16および18は、ケーブル32および34を介してそれぞれ間隔制御システム28およびプローブ制御システム20に結合される。
【0009】
図示の実施形態では、プローブ12は、プローブ12と物体36の間のキャパシタンスを感知するキャパシタンスプローブである。2物体間のキャパシタンスは、プローブ12と物体36の間の重なり表面積(A)および間隔(S)38の関数である。センサシステム10では、物体36の面積はプローブ12の面積よりも大きいので、重なり表面積(A)はプローブ12の面積である。2枚の平行板間のキャパシタンスは、次式で与えられる。
【0010】
C=εA/S (1)
ここで、Cはキャパシタンス、
εは平行板間の媒体の誘電率、
Aは平行板間の重なり面積、そして、
Sは平行板の隔たりである。
【0011】
キャパシタンス(C)を感知することによって、プローブ12で、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38を定めることができるようになる。上の式(1)を操作することで、次式によって、間隔(S)はキャパシタンス(C)に関係付けられる。
【0012】
S=εA/C (2)
以下でより詳細に議論するように、間隔制御システム28は、プローブ12から受け取られるキャパシタンス(C)を表す信号に基づいて、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38を制御するように動作可能である。この実施形態では、間隔制御システム28は、上の式(2)および間隔制御システム28にプログラムされたデータを使用して、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38を定めるように動作可能である。しかし、間隔制御システム28はただ単にキャパシタンス(C)を使用して、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38を制御することができる。キャパシタンス(C)および/または間隔(S)は、キャパシタンスおよび/または間隔(S)の所望の値と比較される。この実施形態では、間隔制御システム28は、所望のキャパシタンス(C)または間隔(S)を維持するように物体36の変位を導くように動作可能である。
【0013】
プローブ制御システム20は、実際の間隔(S)38またはキャパシタンス(C)に対応するようにプローブ12の面積(A)を最適化するように動作可能である。プローブ制御システム20は、間隔(S)38が減少するにつれてプローブ12の面積(A)を減少させ、そして間隔(S)38が増加するにつれてプローブ12の面積(A)を増大させる。プローブ制御システム20は、スイッチ22、24および26を選択的に閉じ、それによって、間隔制御システム28に結合される特定の導電要素14、16および18を制御して、プローブ12の面積(A)を制御する。例えば、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38が小さい場合には、プローブ制御システム20は、スイッチ26を閉じかつスイッチ22および24を開いて、戻り経路30以外に、ただ1つの導電要素18を間隔制御システム28に結合することができる。代わりに、プローブ12と物体36の間の間隔(S)38が増すときに、プローブ制御システム20は、スイッチ22および24を閉じて、導電要素14および16を間隔制御システム28に動作可能に結合することができる。
【0014】
図示の実施形態では、プローブ制御システム20は、スイッチ22、24および26の制御を容易にするためにインタフェース40を備える。さらに、プローブ制御システム20は、また、プローブ12からのキャパシタンス信号を処理し、かつインタフェースにスイッチ22、24、および26を選択的に開いたり閉じたりするように命令するプロセッサ42を備える。この実施形態では、プローブ制御システム20は、また、導電要素14、16および18の選択的結合を制御する予め定義されたプログラム、内部参照、および他の情報を格納するためのメモリ回路44も含む。
【0015】
先に説明したように、スイッチ22、24および26は、導電要素14、16および18をプローブ12に結合するために使用される。一実施形態では、スイッチ22、24および26は、固体スイッチを備える。他の実施形態では、スイッチ22、24および26は、機械的なリレーを備えることができる。さらに他の実施形態では、スイッチ22、24および26は、無線周波超小型電気機械システムスイッチを備えることができる。留意すべきことであるが、スイッチ24および26を介して追加の導電要素16および18を結合することで、プローブ12の測定範囲は増大する。他の実施形態では、互いに結合されて使用されることのない導電要素は、追加の遮蔽を行うように導電要素30に結合することができる。他の実施形態では、使われていない導電要素は、測定での干渉を減らすために予め決められた電位に保持することができる。
【0016】
全体的に図2および3を参照すると、図1のセンサシステムで実現することができる導電要素の様々な型および構成が与えられている。図2に示すように、導電要素が導電シャフトである第1のプローブ50が実現される。導電シャフトは、中心導体52、第1のグループの導電要素54、および所定のパターンに配列された第2のグループの導電要素56を備える。中心導電要素52は、プローブ12による全測定範囲でプローブ12に結合することができる。第1のグループの導電要素54は、面積(A)を増大するために中心導体52に結合することができる。追加の面積が必要である場合には、第2のグループの導電要素56を中心導体52および第1のグループの導電要素54に結合することができる。しかし、他の構成を使用することができる。外側導電要素58は、導電要素52、54、および56のまわりに配置されて、戻り経路として作用し、かつ導電要素52、54、および56を電気的な雑音および干渉から遮蔽する。他の実施形態では、使用されない導電要素はどれも外側導電要素58に結合することができる。
【0017】
図3は、プローブ60の他の例示の実施形態を示す。プローブ60は、中心導体要素62、および中心導電要素62を環状パターンで取り囲む円筒形導電要素64および68を備える。外側導電要素68は、導電要素62、64および66のまわりに配置されて、キャパシタンスおよび/または間隔の測定に及ぼすどのような電気的な雑音および干渉の影響も減少させる。再び、プローブ60は、所望の測定範囲に基づいてより少ない数またはより多い数の導電要素を有することができる。さらに、導電要素64および68は、プローブ60の分解能を高めるために中心導電要素62に選択的に結合することができる。
【0018】
全体的に図4を参照すると、図1のセンサシステム10を動作させる例示の方法70が図示されている。最初に、ブロック72で表すように、外部物体のセンサからの隔たりを測定するために、センサのセンサ要素の初期構成が選択される。次に、ブロック74で、センサからの測定データを使用して、センサと外部物体の間のキャパシタンス(C)を定める。ブロック76で表すように、センサと外部物体の間の間隔(S)がセンサで感知されたキャパシタンス(C)に基づいて定められる。次に、ブロック78で表すように、測定されたキャパシタンス(C)または間隔(S)が、キャパシタンス(C)および間隔(S)の値の所望の範囲と比較される。
【0019】
測定されたキャパシタンス(C)または間隔(S)がキャパシタンス(C)および/または間隔(S)の所望の範囲の外にある場合、ブロック80で表すように、センサの構成が変更される。センサの構成は、より多くの導電要素をセンサの初期構成に結合することで変更することができる。もしくは、センサの構成は、センサの初期構成から導電要素を取り除いて変えることができる。最後に、ブロック82で表すように、変更された構成を使用してシステムを動作させて、所望の間隔を定める。当業者は理解するように、本方法のステップ74〜82は、異なる時点にセンサと外部物体の間の所望の間隔を実現するように繰り返すことができる。
【0020】
図5は、図1のセンサシステム10を動作させる他の例示の方法84を示す。図示された方法では、ブロック86で表すように、間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)は、複数のセンサ要素構成の各々について定められる。次に、ブロック88で表すように、複数のセンサ要素構成で測定されたような間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)は、最適な間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)の設定を特定するために解析される。測定された間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)の解析は、実時間で行うことができる。もしくは、測定された間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)の解析は、オフラインで行うことができる。後で、ブロック90に表すように、所望の隙間または間隔(S)が、最適設定で測定された間隔(S)および/またはキャパシタンス(C)に基づいて推定される。
【0021】
以上で説明した測定技術は、静止物体と近接した移動部分の間の隙間の正確な測定を実現する。以上で説明した方法の様々な態様は、広い距離範囲にわたった隙間測定が要求される用途で有用である。例えば、上で説明した技術は、航空機エンジンの回転部品と静止部品の間の隙間を測定するために使用することができる。上で言及したように、ここで説明した方法は、物体間の距離を測定するセンサの面積を調整するようにセンサの導電要素を選択的に結合することによって、距離の広い範囲にわたった測定に有利であることがある。
【0022】
本発明の特定の特徴だけを本明細書で図示し説明したが、多くの修正および変更が当業者の心に浮かぶであろう。したがって、理解すべきことであるが、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神に含まれるような全ての修正および変更を範囲に含む意図である。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本技術の例示の実施形態に従った、回転機械の隙間測定用のセンサシステムを示す図である。
【図2】本技術の例示の実施形態に従った、センサ要素のパターン化配列を有するセンサを示す図である。
【図3】本技術の例示の実施形態に従った、センサ要素の環状配列を有するセンサを示す図である。
【図4】本技術の例示の実施形態に従った図1のセンサシステムを動作させる方法を示す流れ図である。
【図5】本技術の例示の実施形態に従った図1のセンサシステムを動作させる方法を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0024】
10 センサシステム
12 センサ(プローブ)
14、16、18 導電要素
30 導電要素(戻り経路)
20 プローブ制御システム
22、24、26 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知されたパラメータを表す出力信号を供給するように動作可能なセンサ(12)と、
前記センサ(12)に結合された制御システム(20)と、を備えるセンサシステム(10)であって、前記制御システム(20)が、前記感知されたパラメータを表す前記出力信号に基づいて前記センサ(12)の物理特性を変えるように動作可能であるセンサシステム(10)。
【請求項2】
前記センサ(12)が複数の導電要素(14)を備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の導電要素の少なくとも1つ(30)が、前記センサ(12)を雑音および干渉から遮蔽するように動作可能である、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の導電要素(14)の各々を前記センサ(12)の出力に選択的に結合するように動作可能な複数のスイッチ(22)をさらに備える、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
感知されたパラメータを表す出力信号を供給するように動作可能なセンサ(12)であって、複数の導電要素(14)と、前記複数の導電要素(14)の各々を前記センサ(12)の出力に選択的に結合するように動作可能な複数のスイッチ(22)とを備えるセンサ(12)、および、
前記複数のスイッチ(22)の各々を制御して、前記複数の導電要素(14)の各々を前記センサ(12)の出力に選択的に結合するように動作可能な制御システム(20)、を備えるセンサシステム(10)。
【請求項6】
センサ(12)の感知要素(14)と外部物体(36)の間の距離を表す出力信号を供給するように動作可能な前記センサ(12)を備えるセンサシステム(10)であって、前記感知要素(14)と前記外部物体(36)の間の距離を表す出力信号に基づいて前記感知要素(14)の面積を自動的に変えるように動作可能なセンサシステム(10)。
【請求項7】
多レンジセンサ(12)であって、
パラメータを感知するように動作可能な複数の導電要素(14)と、
前記複数の導電要素(14)の各々を前記センサ(12)の出力に選択的に結合するように動作可能な複数のスイッチ(22)と、を備える多レンジセンサ(12)。
【請求項8】
センサシステムを動作させる方法であって、
センサによって感知されたパラメータを表す出力信号を受け取るステップと、
前記感知されたパラメータを表す出力信号に基づいて、前記センサの物理特性を制御するステップと、を備える方法。
【請求項9】
センサシステムを動作させる方法であって、
センサによって感知されたパラメータを表す出力信号を受け取るステップと、
前記感知されたパラメータを表す前記出力信号に基づいて、複数の導電要素を前記センサの出力に選択的に結合するステップと、を備える方法。
【請求項10】
センサシステムを動作させる方法であって、
センサの複数の構成によって感知されたパラメータを表す複数の出力信号を受け取るステップと、
前記感知されたパラメータを表す前記複数の出力信号を解析するステップと、
前記感知されたパラメータの所望の範囲を測定するために前記センサの所望の構成を選択するステップと、を備える方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−98403(P2006−98403A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279269(P2005−279269)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】