説明

センサーデバイス画像検査データ収集装置およびその方法ならびにプログラムおよび記録媒体

【課題】ウェハ上にチップとして形成されたセンサーデバイスの保存する画像検査データを削減させながら、画像検査データの正確さを確保する。
【解決手段】画像メモリ部32に保存された画像データを例えば同一レティクルによるショット毎にデータ識別部33によってグループ化する。差分検出部34により、隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像データの差分である差分データを検出する。オフセット設定部35により、差分が最も“0”に近づくように差分データのオフセットを設定し、当該オフセットを差分データから差し引くとともにオフセット保存部36に保存させる。可逆圧縮部37により、オフセットが差し引かれた差分データを可逆圧縮する。データ制御部39により、差分データを取る2つの画像検査データのうち小さい方である基本画像データと圧縮された差分データとを対応付けてデータ格納部38に格納させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーデバイスの画像検査による画像データを収集するセンサーデバイス画像検査データ収集装置に係り、特にウェハ状態でのセンサーデバイスの画像検査による画像データ収集を行うのに適したセンサーデバイス画像検査データ収集装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサーデバイスの画像検査においては、実際にセンサーデバイスを撮影した画像データを用いてセンサーデバイスの良否を判定する。この際に使用される画像データの情報量は、近年増加している撮像画素数に比例して膨大になっている。
【0003】
例として、市販されている1000万画素のデジタルスチールカメラでの、各撮像画素数での画像データの情報量(製品独自の圧縮方法を使用している)を示す。例えば、VGA(640×480)の画像サイズでは、約240KBの情報量があり、約1000万画素(3,648×2,736)の画像サイズでは、約2.8MBの情報量がある。また、1ロット当たりのウェハ数が25であり、1ウェハが500チップを含み、1チップの画像検査にて3回の画像データを撮像した場合、1ロットの画像データの情報量は以下の計算式より、約102.5GBとなる。
【0004】
2.8MB×3回×500チップ×25ウェハ=105,000MB≒102.5GB
このため、一般の画像検査において、画像データは良否判定に使用された後、全て削除される。しかし、センサーデバイスの品質向上のための品質情報管理および品質異常解析のためには、良品および不良品の両方の画像データを保持管理する必要がある。例えば、製品状態での撮像検査において、シミやキズによる不良が発生した場合、最終工程(アセンブリやパッケージングなど)で新たに発生した不良か、ウェハ状態からの経時変化により発生した不良かを見極めるために、製品状態での撮像データとウェハ状態での撮像データと比較する。このため、静止画像の国際標準符号化方式としてISOおよびITU−Tにより勧告されているJPEGで一部の画像データを単純に非可逆圧縮したり、複数の検査データの差分を取って保存するデータ量を抑えたりする手法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、メモリのファンクション試験についてであるが、保存するデータを各セルのデータの差分データとすることによって、保存するデータの容量を低減することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−197892号公報(2002年7月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、非可逆圧縮して検査データを保存する場合には、データの欠損が発生するため、圧縮率によってはシミやキズなどの情報が不正確になる。また、単純に差分データを取って保存する情報量を削減する手法は、近年の膨大な画像データを保存するためには削減量が少ないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保存する画像検査データの削減量を増大させながら、画像検査データの正確さを確保することができるセンサーデバイス画像検査データの収集を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセンサーデバイス画像検査データ収集装置は、ウェハ上にチップとして形成されたセンサーデバイスを画像にて検査するための画像検査データを収集するセンサーデバイス画像データ収集装置において、上記の課題を解決するために、ウェハ上の任意の領域で複数の前記チップをグループ化するグループ化手段と、隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像検査データの差分である差分データを検出する差分検出手段と、前記差分が最も“0”に近づくように前記差分データのオフセットを設定し、前記差分データから当該オフセットを差し引く差分調整手段と、前記オフセットを保存手段に保存させるオフセット保存制御手段と、前記オフセットが差し引かれた前記差分データを可逆圧縮するデータ圧縮手段と、前記差分データを検出する対象となる2つの画像検査データのうちいずれか一方を基本画像データとして、当該基本画像データと前記データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データとを対応付けて格納手段に格納させる格納制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るセンサーデバイス画像検査データ収集方法は、ウェハ上にチップとして形成されたセンサーデバイスを画像にて検査するための画像検査データを収集するセンサーデバイス画像データ収集方法において、上記の課題を解決するために、ウェハ上の任意の領域で複数の前記チップをグループ化するグループ化工程と、隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像検査データの差分である差分データを検出する差分検出工程と、前記差分が最も“0”に近づくように前記差分データのオフセットを設定し、前記差分データから当該オフセットを差し引く差分調整工程と、前記オフセットを保存手段に保存させるオフセット保存制御工程と、前記オフセットが差し引かれた前記差分データを可逆圧縮するデータ圧縮工程と、当該データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データを格納する格納手段と、前記差分データを検出する対象となる2つの画像検査データのうちいずれか一方を基本画像データとして、当該基本画像データと前記データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データとを対応付けて格納手段に格納させる格納制御工程とを有することを特徴としている。
【0010】
上記の構成では、まず、グループ化手段(工程)によって、ウェハ上に形成された複数のチップが任意の領域(例えばショット単位)でグループ化される。すると、差分検出手段(工程)によって、隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップ(例えば製造工程でレティクルの同一箇所が使用されたチップ)の画像の画像データの差分が差分データとして検出される。
【0011】
そして、差分調整手段(工程)によって、検出された差分データのオフセットが差分が最も“0”に近づくように設定され、差分データから当該オフセットが差し引かれる。オフセットは、オフセット保存制御手段(工程)によって、保存手段に保存される。
【0012】
これにより、データ圧縮手段(工程)によって圧縮される差分データの情報量が削減されるので、圧縮率を高めることができる。また、オフセットが保存されるので、圧縮によるデータ欠損の可能性を低減することができる。
【0013】
圧縮された差分データは、格納制御手段(工程)によって、基本画像データとを対応付けられて格納手段に格納される。
【0014】
前記センサーデバイス画像検査データ収集装置およびその方法における前記オフセット調整手段(工程)は、全グループの差分データにおいて差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定すること、あるいは2グループ間の差分データ毎に差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定することのいずれかを選択することが好ましい。
【0015】
これにより、いずれの設定でも圧縮される差分データの情報量を削減することができる。特に、2グループ間でのオフセット設定の場合が、グループ間の情報変化を細かくオフセット情報として保持するために、より効果的な圧縮率の向上が望める。これに対して、全グループでのオフセット設定の場合、圧縮率に関しては2グループ間でのオフセット設定の場合よりも圧縮効果は低くなるが、保持するオフセット情報が少なくなるために、画像データを高速に復元することができる。このように、それぞれのオフセットの設定に利点があるため、両設定を選択することにより、所望の設定を利用することが可能となる。
【0016】
前記前記センサーデバイス画像検査データ収集装置およびその方法における前記オフセット調整手段(工程)は、最小2乗法を用いて前記オフセットを設定することが好ましい。
【0017】
このように、一般的に知られた最小2乗法でオフセットを設定することにより、容易に差分データのオフセットを調整することができる。
【0018】
本発明のプログラムは、前記のいずれかのセンサーデバイス画像データ収集方法の各工程をコンピュータに実行させる。また、本発明の記録媒体は、前記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0019】
これにより、コンピュータを用いて前述のセンサーデバイス画像データ収集方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセンサーデバイス画像検査データ収集装置およびその方法は、以上のように、ウェハ上の任意の領域で複数の前記チップをグループ化し、隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像検査データの差分である差分データを検出し、前記差分が最も“0”に近づくように前記差分データのオフセットを設定し、前記差分データから当該オフセットを差し引き、前記オフセットが差し引かれた前記差分データを可逆圧縮し、前記差分データを検出する対象となる2つの画像検査データのうちいずれか一方を基本画像データとして、当該基本画像データと圧縮された前記差分データとを対応付けて格納手段に格納させる。これにより、圧縮される差分データの情報量が削減されるので圧縮率を高めることができるとともに、オフセットが保存されるので圧縮によるデータ欠損の可能性を低減することができる。したがって、保存する検査データの削減量を増大させながら、検査データの正確さを確保することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図1ないし図9に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0022】
図1は本発明の一実施例のセンサーデバイス検査システム1の構成を示している。
【0023】
図1に示すように、当該センサーデバイス検査システム1は、センサーデバイス検査部2と、センサーデバイス画像検査データ収集装置3とを備えている。
【0024】
センサーデバイス検査部2は、例えばCCDセンサー、CMOSセンサー、指紋センサーなどのセンサーデバイスの検査回路、あるいは検査装置である。このセンサーデバイス検査部1は、ウェハに形成されたセンサーデバイスのチップの画像を撮影し、検査用の画像データとして出力する。また、センサーデバイス検査部2は、その画像データについてのチップ座標データも併せて出力する。チップ座標データは、画像データに対応するウェハ上の各チップの位置を特定する座標のデータ(チップ座標データ)である。
【0025】
センサーデバイス画像検査データ収集装置3は、画像データ入力部31と、画像メモリ部32と、データ識別部33と、差分検出部34と、オフセット設定部35と、オフセット保存部36と、可逆圧縮部37と、データ格納部38と、データ制御部39とを備えている。
【0026】
画像データ入力部31は、センサーデバイス検査部2から出力された画像データを取り込むインターフェース部であり、センサーデバイス検査部2の画像出力インターフェース部から送信された画像データを受信する。
【0027】
画像メモリ部32は、画像データ入力部31から入力された画像を一時的に蓄えておくための記憶装置である。画像メモリ部32は、DRAMなどで構成される画像メモリが用いられる。
【0028】
データ識別部33は、画像データ入力部31から入力された複数チップの画像データを、その画像データに対応するウェハ上のチップ座標データに基づいて所定の単位で任意の座標領域にグループ分けする。このグループ分けは、例えば、1枚のレティクル(フォトマスク)で露光形成されるチップ群の領域(ショット)や、検査装置の同時測定領域などの製造工程あるいは検査工程で関連する領域を単位として行われる。検査装置の同時測定領域については、次のように考えられる。
【0029】
検査装置では、テスト時間を短縮するために、2個以上のチップを同時に検査する。また、センサーデバイスの画像検査においては、使用する光源とチップとの位置関係によって、検査結果にある程度の差異が生じる。例えば、光源の中心から発される光と光源の端から発される光とでは、その光量に若干の差がある。このため、それぞれの光が照射されるチップについては、検査結果にその光量の差に応じた差異が発生する。したがって、通常は、検査装置の光量の評価や検証を行って、光量を均一になるように補正して検査が実施されるが、それでも上記の差異を全く0することは難しい。よって、検査装置の同時測定領域についても、グループ分けの対象としている。また、同様に各種製造装置においても、製造工程の手法によって、差異が生じる場合が考えられるので、グループ分けの対象とすることが考えられる。
【0030】
差分検出部34は、ウェハ上で隣接するグループ内の画像データにおいて、共通する特性を有することが予測される画像データの差分を取る差分検出回路である。例えば、画像データがショット単位でグループ化された場合、差分検出部34は、隣接するグループ間でショット内の同一座標のチップの画像データの差分を取って差分データを出力する。差分検出部34は、対象となる2つの画像データの同一画素の電荷量(輝度)の差を演算(減算)して差分を求める。
【0031】
半導体デバイスは、一般にレティクルを遮光板として半導体ウェハ上に半導体回路を露光して作製される。1枚のレティクルによって、同時に複数の半導体回路が露光される。このため、レティクル内に異常があった場合に、異常のある箇所で露光された半導体回路が、同じ異常(特性)を持つことになる。また、異常となる程でなくても、同じ位置で作製された半導体回路は同じような特性を持つ。
【0032】
したがって、レティクル内の同一座標で作製されたセンサーデバイスは共通する特性を持つことが予測される。このため、当該センサーデバイスについて出力される画像データは、他の座標で作製されたセンサーデバイスの画像データよりも類似しやすい。
【0033】
オフセット設定部35は、差分検出部34によって算出された差分データの圧縮効果を高めるために差分データのオフセットを変化させる。差分データを圧縮するためには、差分が限りなく“0”であればよい。このため、オフセット設定部35は、差分データのオフセットを“0”を基準として、差分が“0”となる画素の比率が最大となるように、換言すれば、差分が最も“0”に近づくように差分を変化させ、その変化量をオフセット成分として、差分データから当該オフセット成分を差し引く。
【0034】
また、オフセット設定部35は、全グループの差分データにおいて差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定すること(全グループ設定)、あるいは2グループ間の差分データ毎に差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定すること(2グループ間設定)のいずれかを選択する。これは、ユーザの指示によっていずれを選択するかがオフセット設定部35に予め設定されている。
【0035】
また、オフセット設計部35は、設定したオフセットをオフセット保存部36に保存させる。
【0036】
オフセット保存部36は、オフセット設定部35で設定されたオフセットをオフセット設定部35の指示により保存する。オフセット保存部36としては、例えば、SRAMなどが用いられる。
【0037】
可逆圧縮部37は、オフセット設定部35で圧縮効果を高めた差分データを可逆圧縮する。また、可逆圧縮部37は、差分の基本画像データも圧縮する。ここで、基本画像データとは、差分が取られる2つのチップの画像データのいずれか一方の画像データのことをいう。
【0038】
データ格納部38は、可逆圧縮部37で圧縮された差分データ、および差分の基本画像データの圧縮データを関連付けた状態で格納する記憶装置である。その関連付けは、データ制御部39によって行われる。
【0039】
データ制御部39は、データ格納部38で格納された基準データと差分データとの関連性の情報を管理する。また、データ制御部39は、グループ毎に1つの基本画像データと複数の差分データとをチップ番号で関連付けてデータ格納部38に格納する。基本画像データには、チップ情報(チップ番号、ウェハ番号、ロット番号およびシリアルナンバー(S/N))が付加されている。また、データ制御部39は、差分データに、前述のオフセットと、チップ番号と、シリアルナンバーとを付加してデータ格納部38に格納する。ここで、チップ番号は、各チップC1,C2,…に付与されている識別のための番号である。
【0040】
なお、上記のセンサーデバイス画像検査データ収集装置3は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、センサーデバイス画像検査データ収集装置3の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0041】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであってもよいし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
【0042】
また、いずれの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0043】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0044】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0045】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0046】
また、センサーデバイス画像検査データ収集装置3は、前述のような専用の装置ではなく、例えば汎用パーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータシステムに、本機能を実現するプログラムを動作させる場合にも適用できるのは勿論である。
【0047】
続いて、センサーデバイス画像検査データ収集装置3による画像データの収集について説明する。
【0048】
ここでは、製造工程のショット依存性を考慮し、画像データを圧縮する場合の処理を図2ないし図8を参照して説明する。
【0049】
まず、画像データとその画像データのチップ座標データとが画像データ入力部31を介して入力されると、画像データは画像メモリ部32に保存される。チップ座標データは、対応する画像データとの関連付けを保った状態(例えば対応する画像データが画像メモリ部32に格納される領域のアドレスとチップ座標データとの関連付け)で、他の記憶部に記憶される。次に、画像メモリ部32に保存された画像データは、順次読み出されて、対応するチップ座標データを元にデータ識別部33によってグループ化される。データ識別部33は、ショット毎にグループ化される場合、各ショットに対応したチップ座標データに基づいて画像データが同一のグループにまとめられる。
【0050】
図2は、データ識別部33によって、ショット毎にグループ化される識別情報の一例を示している。
【0051】
図2に示すように、1行目の(3,1,1)は、チップ位置のX座標が3であり、Y座標が1であるチップにおいて、所属するグループが1であることを示す。2行目の(4,1,1)も同様に、チップ位置のX座標が4、Y座標が1のチップにおいて、所属するグループが1(図3ではG1)であることを示す。また、4行目の(6,1,2)は、チップ位置のX座標が6、Y座標が1のチップにおいて、所属するグループが2(図3ではG2)であることを示す。
【0052】
このような設定情報により、図3に示す破線で囲まれたグループG1,G2が製造工程のショット単位であること、およびチップC1,C4がショット内での位置が左上端であり、かつ製造工程でレティクルの同一箇所が使用されたことが識別される。また、このとき、レティクルに異常、あるいは製造装置に異常がある場合、チップC1の画像データによる画像には、図4(a)に示すように、画像下部に製造工程上で生じたキズS1がある。一方、チップC4の画像データによる画像には、図4(b)に示すように、チップC1と同様に製造工程上で生じたキズS2があり、かつチップC1よりも製造工程上のばらつきにより、輝度が高くなっている。
【0053】
ここで、図5(a)および図5(b)は、それぞれチップC1およびチップC4の画像データのある行の信号波形図を示している。図5(a)に示すように、チップC1の画像データでは、キズS1の画素の輝度が高くなっている。図5(b)に示すように、チップC4の画像データでは、チップC1の画像データと同様に、キズS2の画素の輝度が高くなっているが、各画素の輝度が全体的にチップC1の画像データより高い。
【0054】
次に、差分検出部34により、隣接ショットのレティクル内の同一座標の画像データ(画素の電荷量(輝度))の差分が取られる(例えば、図4(a),(b)における斜線部分の画素)。図6(a)は、隣接ショットのレティクル内の同一座標であるチップC1およびチップC4の画像データの差分の程度を説明するために、図5(a)および図5(b)の波形図を重ねた信号波形図である。図6(b)は、チップC1とチップC4との画像データの差分データである。このように、差分検出部34によって同一座標の画素の輝度の差分が差分データとして得られることで、データの情報量が削減される。
【0055】
更に、オフセット設定部35により、差分データのオフセットが調整される。オフセット設定部35は、最小2乗法を用いてオフセットを求める。図7は、差分データのオフセットの調整について示している。
【0056】
オフセット設定部35は、差分検出部34による差分検出結果(差分データ)を測定結果とし、その測定結果の近似関数との差の2乗を最小にするような近似関数をオフセットとして求めている。具体的には、オフセット設定部35は、近似関数をオフセットのみの関数と定義して最小2乗法を適用している。この結果、最小2乗法で求められた関数が、オフセット成分となる。図7では、太い破線で示す直線を近似関数f(x)=a(aは定数)とすると、aがオフセット成分となる。このように、一般的に知られた最小2乗法でオフセット成分を求めることにより、容易に差分データのオフセットを調整することができる。
【0057】
一般に、製造工程上、同じ製造装置を使用しても、製造時の温度、湿度、ダスト分布などの製造環境によって、全く同じ特性のセンサーデバイスが製造されることはない。ここで、その製造時の環境(製造上の温度、湿度、ダスト分布、製造装置の電源ノイズなど)あるいは別の要因を「製造条件のゆらぎ」と称する。
【0058】
差分を算出するための対象となる2つの画像データが全く同一のものであれば、差分データは当然“0”となる。ところが、実際には上記の製造条件のゆらぎがあるため、差分データが“0”にはならない。したがって、製造条件のゆらぎがオフセット成分として差分データに反映される。
【0059】
そこで、前述のように、差分データのオフセットを調整することにより、差分データから隣接ショット間での製造条件のゆらぎの部分が削減される。また、求められたオフセット情報はオフセット保存部36に格納される。
【0060】
ところで、オフセットは、画像データと比較すると情報が充分に小さい。具体的には、センサーデバイスの画像データが前述のように約2.8MBであるのに対し、オフセットは数バイト程度である。このため、オフセットは、可逆圧縮されても可逆圧縮されない状態の情報量と大差ない。したがって、あえてオフセットを可逆圧縮する必要はない。
【0061】
そして、オフセット設定部35から出力される差分データが圧縮の最終段階として可逆圧縮部37にて可逆圧縮される。ここでは、差分データからオフセット成分が差し引かれているので、より保存する情報量が削減し、可逆圧縮部37での圧縮率を高めることができる。
【0062】
可逆圧縮部37により圧縮された差分データは、データ格納部38に保存される。このとき、データ制御部39により、図8に示すように、グループ毎に1つの基本画像データと複数の差分データとがチップ番号で関連付けて保存される。基本画像データには、前述のチップ情報(チップ番号、ウェハ番号、ロット番号およびシリアルナンバー(S/N))が付加されている。また、差分データには、前述のオフセットと、チップ番号と、シリアルナンバーとが付加されている。
【0063】
ここで、差分データと基本画像データとの画像データの復元前後における関係について説明する。
【0064】
図3に示す例では、まず、チップC1,C4の画像データの差分データを取り、チップC1の画像データを基本画像データとする。次に、チップC4,C16の画像データの差分を取り、さらに、チップC16,C19の画像データの差分を取る。このように、最終的に必要なデータは、チップC1の画像データ(基本画像データ)と隣接するグループ間での差分データである。例えば、チップC19の画像データを復元するときには、チップC1,C4の差分データ(オフセット情報含む)と基本画像データとから、チップC4の画像データが復元される。また、チップC4,C16の差分データと、復元されたチップC4の画像データとから、チップC16の画像データが復元される。さらに、チップC16,C19の差分データと復元されたチップC16の画像データとから、チップC19の画像データが復元される。
【0065】
差分を取るところまでは、全グループの差分データについてオフセットを設定する場合と、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合とで同じ手順で処理される。つまり、どちらの場合でもグループG1,G2について、チップC1,C4の差分、チップC2,C5の差分、チップC3,C6の差分、…が取られ、他のグループ間でも同様である。オフセットの算出については、次のように、全グループの差分データについてオフセットを設定する場合と、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合とで異なる処理が行われる。
【0066】
まず、全グループの差分データについてオフセットを設定する場合について説明する。この場合では、チップC1,C4、チップC4,C16、チップC16,C19、…の差分のすべてが、最も“0”に近づくような値(オフセット)が最小2乗法で求められる。この場合のオフセットは、各ショットの特定座標毎に1つとなる。ショット内のチップ数が2×3であれば、6つのオフセットが算出される。以下に、より詳しく説明する。
【0067】
各グループに対して1つのオフセットを算出する。例えば、チップC1,C4の差分データを10とし、チップC4,C16の差分データを12とし、チップC16,C19の差分データを8とすると、全グループの差分データからオフセットを求める場合、3つの差分データから最小2乗法を使用して1つのオフセットを算出する。この場合のオフセットは10となる。同様に、チップC2,C5の差分データ、チップC5,C17の差分データ、チップC17,C20の差分データの3つの差分データから、1つのオフセットを算出する。このように、ショット内の2つの特定座標に関して2つのオフセットを算出する。図3の例では、ショット内に特定座標が6つあるので、設定されるオフセットが6つとなる。
【0068】
続いて、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合について説明する。この場合は、チップC1,C4、チップC4,C16の差分に対して最も“0”に近づくような値(オフセット)が最小2乗法で求められる。さらに、チップC4,C16、チップC16,C19の差分に対して最も“0”に近づくような値(オフセット)が最小2乗法で求められる。この手順が最終チップまで実施されるので、ショットが2×3であれば、(ウェハ上のチップ数−12)個のオフセットが算出される。この場合のオフセット算出方法は次のように説明できる。各ショットの特定座標(例えば、チップC1,C4,C16,C19,…)のチップ数をn(nは3以上の整数)とすると、チップ間の差分データ数はn−1である。その差分データについてオフセットを算出するので、上記特定座標についてのオフセットの数はn−2となる。図3の例では、ショット内のチップ数が2×3であるので、ウェハ上のチップ数から12を引いた数(すなわち6×(n−2))がオフセットの数となる。
【0069】
より具体的には、チップC1,C4の差分データを10とし、チップC4,C16の差分データを12として、2つの差分データから1つ目のオフセットを算出する。次に、チップC4,C16の差分データとチップC16,C19の差分データとの2つの差分データから2つ目のオフセットを算出する。この処理をショット内の6座標分行うので、12のオフセットを設定することになる。
【0070】
このように、全グループの差分データについてオフセットを設定する場合、オフセット数は必ずショット内のチップ数となる。n=4以上であれば、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合の方がオフセット数は多くなる。ただし、n=3であれば、両方の場合でオフセット数が同じになる。通常、1ウェハ上には数百から数千のチップが形成されるために、nも同様に100〜500程度となる。このため、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合の方が、全グループの差分データについてオフセットを設定する場合よりもオフセット数が多いと言える。
【0071】
なお、図8の例では、差分データとオフセットとが1対で格納されるように図示されているが、2グループ間の差分データについてオフセットを設定する場合のようにオフセットが差分データより少ない場合、最初か最後のオフセット用格納エリアにダミーのデータを格納すればよい。実際にオフセットを使用するときには、ダミーデータを格納しているオフセット用格納エリアを明示しておくルールを規定しておけば、運用上の問題はない。
【0072】
図9に、比較例として、差分データを取らない場合の保存データ構造を示す。図9に示すように、保存されるデータは、各チップC1,C2,…の画像データに、チップ番号と、ウェハ番号と、ロット番号と、シリアルナンバーとが付加される構造となる。このようなデータ構造では、各データに差分が含まれるため、重複して同じ成分のデータが保存されることになり、保存される情報量が膨大になる。
【0073】
これに対し、本実施形態のセンサーデバイス検査システム1によれば、グループ(ショット)間で類似性の高い2つのチップの画像データの差分を取り、その差分データのオフセットを求めて、差分データから減じることにより、圧縮する情報量が可及的に少なくなるので、データの圧縮率が大幅に向上する。また、オフセットを保存するので、圧縮によるデータ欠損の可能性が低減する。したがって、保存する検査データの削減量を増大させながら、検査データの正確さを確保することができる。
【0074】
また、オフセット設定部35が、オフセットの設定について、前述の全グループ設定あるいは2グループ間設定のいずれかを選択するので、所望の設定を利用することが可能となる。いずれの設定でも圧縮される差分データの情報量を削減することができる。特に、2グループ間でのオフセット設定の場合が、グループ間の情報変化を細かくオフセット情報として保持するために、より効果的な圧縮率の向上が望める。これに対して、全グループでのオフセット設定の場合、圧縮率に関しては2グループ間でのオフセット設定の場合よりも圧縮効果は低くなるが、保持するオフセット情報が少なくなるために、画像データを高速に復元することができる。
【0075】
なお、上記の例では、求められたオフセットをオフセット保存部36およびデータ格納部38に格納するが、少なくともいずれか一方にオフセットを保存すればよい。
【0076】
また、データを展開(復元)する際には、データ格納部38に保存されているデータから任意のチップ情報と基本画像データとを読み出し、任意の画像データを復元する。この復元の手順に関しては、前述のデータ収集手法の手順を逆から実施することで実現可能である。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のセンサーデバイス画像検査データ収集装置は、センサーデバイスの画像検査データの保存量を大幅に削減することができるので、センサーデバイスの画像検査において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の一形態を示すセンサーデバイス検査システムの構成を示すブロック図である。
【図2】上記センサーデバイス検査システムのセンサーデバイス画像検査データ収集装置におけるデータ識別部によってショット毎にグループ化される識別情報の一例を示す図である。
【図3】ウェハ上で各センサーデバイスのチップがグループ分けされた状態を示す図である。
【図4】(a)および(b)はグループ間で同じ位置のチップの画像を示す図である。
【図5】(a)は図4(a)の画像の画像データ(画素の輝度)の信号波形を示す波形図であり、(b)は図4(b)の画像の画像データの信号波形を示す波形図である。
【図6】(a)は図5(a),(b)の信号波形図を重ね合わせた状態を示す波形図であり、(b)は図4(a),(b)の画像データの差分の信号波形を示す波形図である。
【図7】センサーデバイス画像検査データ収集装置におけるオフセット設定部によるオフセット成分の生成を示す図である。
【図8】センサーデバイス画像検査データ収集装置におけるデータ格納部に格納されるデータ構造を示す図である。
【図9】本発明の実施形態の比較例として、差分データを取らない場合に保存されるデータ構造を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 センサーデバイス検査システム
2 センサーデバイス検査部
3 センサーデバイス画像検査データ収集装置
33 データ識別部(グループ化手段)
34 差分検出部(差分検出手段)
35 オフセット設定部(差分調整手段,オフセット保存制御手段)
36 オフセット保存部(保存手段)
37 可逆圧縮部(データ圧縮手段)
38 データ格納部(格納手段)
39 データ制御部(格納制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ上にチップとして形成されたセンサーデバイスを画像にて検査するための画像検査データを収集するセンサーデバイス画像データ収集装置において、
ウェハ上の任意の領域で複数の前記チップをグループ化するグループ化手段と、
隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像検査データの差分である差分データを検出する差分検出手段と、
前記差分が最も“0”に近づくように前記差分データのオフセットを設定し、前記差分データから当該オフセットを差し引く差分調整手段と、
前記オフセットが差し引かれた前記差分データを可逆圧縮するデータ圧縮手段と、
前記オフセットを保存手段に保存させるオフセット保存制御手段と、
前記差分データを検出する対象となる2つの画像検査データのうちいずれか一方を基本画像データとして、当該基本画像データと前記データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データとを対応付けて格納手段に格納させる格納制御手段とを備えていることを特徴とするセンサーデバイス画像データ収集装置。
【請求項2】
前記オフセット調整手段が、全グループの差分データにおいて差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定すること、あるいは2グループ間の差分データ毎に差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定することのいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載のセンサーデバイス画像データ収集装置。
【請求項3】
前記オフセット調整手段が、最小2乗法を用いて前記オフセットを設定することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサーデバイス画像データ収集装置。
【請求項4】
ウェハ上にチップとして形成されたセンサーデバイスを画像にて検査するための画像検査データを収集するセンサーデバイス画像データ収集方法において、
ウェハ上の任意の領域で複数の前記チップをグループ化するグループ化工程と、
隣接するグループ間で共通する特性を有することが予測されるチップの画像の画像検査データの差分である差分データを検出する差分検出工程と、
前記差分が最も“0”に近づくように前記差分データのオフセットを設定し、前記差分データから当該オフセットを差し引く差分調整工程と、
前記オフセットを保存手段に保存させるオフセット保存制御工程と、
前記オフセットが差し引かれた前記差分データを可逆圧縮するデータ圧縮工程と、
当該データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データを格納する格納手段と、
前記差分データを検出する対象となる2つの画像検査データのうちいずれか一方を基本画像データとして、当該基本画像データと前記データ圧縮手段によって圧縮された前記差分データとを対応付けて格納手段に格納させる格納制御工程とを有することを特徴とするセンサーデバイス画像データ収集方法。
【請求項5】
前記オフセット調整工程が、全グループの差分データにおいて差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定すること、あるいは2グループ間の差分データ毎に差分が最も“0”に近づくようにオフセットを設定することのいずれかを選択することを特徴とする請求項4に記載のセンサーデバイス画像データ収集方法。
【請求項6】
前記オフセット調整工程が、最小2乗法を用いて前記オフセットを設定することを特徴とする請求項4または5に記載のセンサーデバイス画像データ収集方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載のセンサーデバイス画像データ収集方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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