説明

センサ付き転がり軸受装置

【課題】軌道部材に作用しているモーメント荷重と軸方向の並進荷重とを感度良く求めることができるセンサ付き転がり軸受装置を提供すること。
【解決手段】内軸1にナット63を螺合し、ナット63の外周面に、第1スペーサ190、第2筒部材191および第2スペーサ191を外嵌して固定する。第2筒部材191を、複数のケイ素鋼板を軸方向に隙間なく積層して構成し、軸方向において第1スペーサ190と第2スペーサ192との間に配置する。第2筒部材191の外周面の外径を、第1スペーサ190の外周面の外径および第2スペーサ192の外周面の外径よりも大きくする。第1変位検出部70の検出面を、第2スペーサ192と第2筒部材191の接触部に径方向に対向させる一方、第2変位検出部71の検出面を、第1スペーサ190と第2筒部材191の接触部に径方向に対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材、転動体およびセンサ装置を有するセンサ付き転がり軸受装置に関し、特に、センサ装置を有するハブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ付き転がり軸受装置としては、特開2001−21577号公報(特許文献1)に記載されているハブユニットがある。
【0003】
このハブユニットは、回転軌道輪、固定軌道輪および一つの変位センサを備え、上記変位センサは、上記固定軌道輪に設けられている。具体的には、上記固定軌道輪の外周面は、径方向に延在する穴を有し、上記変位センサは、上記穴に挿入されている。上記変位センサの検出面は、上記回転軌道輪の外周面に向けられている。
【0004】
上記変位センサは、車両の車輪に荷重が作用した際に発生する回転軌道輪の外周面の変位によって変動する回転軌道輪と固定軌道輪との間のギャップ(具体的には、このギャップに対応して変化する電気信号)を検出するようになっている。上記ハブユニットは、上記変位センサが検出したギャップに基づいて車輪に作用する鉛直方向の荷重を算出するようになっている。
【0005】
上記従来のセンサ付き転がり軸受装置では、上記変位センサが一つで、かつ、上記変位センサの検出面が、上記回転軌道輪の外周面に向けられているから、変位センサの検出値に基づいて車輪に対して鉛直方向に作用する並進荷重を求めることが可能である一方、車両の旋回走行時の遠心力等に伴って発生する車両の前後方向のモーメント荷重や、車両の上下方向のモーメント荷重や、車輪の軸方向の並進荷重を求めることが不可能であるという問題がある。
【0006】
また、センサ付き転がり軸受装置において、センサ装置の感度を向上して、転がり軸受にかかっている荷重を精密に測定することの要請が存在している。
【特許文献1】特開2001−21577号公報(図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、軌道部材に作用しているモーメント荷重と軸方向の並進荷重とを感度良く求めることができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり装置は、
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記第2軌道部材は、
内軸と、
その内軸の外周面の軸方向の一端部に螺合した第1筒部材と、
上記第1筒部材の外周面に固定されると共に、複数のケイ素鋼板を上記軸方向に積層してなる第2筒部材と、
上記第1筒部材の外周面に固定されると共に、上記第2筒部材の両側に位置する非磁性体からなる第3筒部材と
を有し、
上記被変位検出部は、上記第2筒部材の外周面および上記第3筒部材の外周面で構成され、
上記第1筒部材の内周面の開放端には、係合穴を有し、
上記第2筒部材の外周面の外径は、上記第3筒部材の外径より大きく、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部の出力信号と、上記第2変位検出部の出力信号とに基づいて、上記被変位検出部に作用している並進荷重と、上記被変位検出部に作用しているモーメント荷重とを算出する演算部と
を有していることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部と、第2変位検出部とを有しているから、第1変位検出部の検出信号と、第2変位検出信号の検出信号に基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
【0010】
また、本発明によれば、上記第2筒部材は、複数のケイ素鋼板を上記軸方向に積層してなっているから、変位検出部において、インダクタンスの変化に基づいて、変位を検出する形式のように、電磁誘導の法則を利用して、変位を検出した場合において、上記第2筒部材中に渦電流が発生することがない。したがって、変位信号を獲得する際のエネルギーロスを低減できて、変位検出部の感度を大きくすることができる。
【0011】
また、一実施形態では、
上記第2筒部材は、上記第2筒部材の両側で上記第3筒部材に上記軸方向に当接しており、
上記第3筒部材の外周面の外径は、略一定であり、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なり、かつ、上記第1変位検出部の検出面は、上記径方向から見て、上記第2筒部材の上記軸方向の一方の側の上記第3筒部材側の端部と、この一方の側の第3筒部材の上記軸方向の上記第2筒部材側の端部とに重なる一方、上記第2変位検出部の検出面は、上記径方向から見て、上記第2筒部材の上記軸方向の他方の側の上記第3筒部材側の端部と、この他方の側の第3筒部材の上記軸方向の上記第2筒部材側の端部とに重なっている。
【0012】
上記実施形態によれば、上記第2筒部材と上記第2筒部材の一方の側の上記第3筒部材との間に位置する段部の位置と、上記第2筒部材と上記第2筒部材の他方の側の上記第3筒部材との間に位置する段部の位置とを検出することにより、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の並進の変位を容易に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態であるハブユニットの軸方向の断面図である。
【0015】
このハブユニットは、内軸1、内輪2、第1軌道部材としての外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、ケース部材6、および、センサ装置10を備える。
【0016】
上記内軸1は、小径軸部19と、中径軸部20と、大径軸部21とを有している。上記小径軸部19の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21は、中径軸部20の小径軸部19側とは反対側に位置している。上記大径軸部21は、中径軸部20に段部22を介して連なると共に、中径軸部20の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝23を有している。上記軌道溝23の外径は、中径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0017】
上記内軸1は、センター穴31を有している。上記センター穴31は、内軸1の軸方向の大径軸部21側の端面の径方向の中央部に、形成されている。上記第センター穴31は、円筒状の部分を有し、軸方向に所定距離延在している。また、上記内軸1は、軸方向の大径軸部21側の端部に、車輪(図示せず)を取り付けるための、車輪取付用のフランジ50を有している。
【0018】
上記内輪2は、内軸1の中径軸部20の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、上記段部22に当接している。上記内輪2は、その外周面に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝28を有している。この軌道溝28の外径は、大径軸部21から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0019】
内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、段部22に当接している。第1筒部材としてのナット63が、小径軸部19のネジに螺合している。内輪2の軸方向の大径軸部21側とは反対側の端面は、ナット63の軸方向の大径軸部21側の端面に当接している。後に詳述するが、締結工具の一例としての六角レンチを用いて、ナット63を、軸方向の大径軸部21側に所定距離ネジ込むことにより、内輪2を、内軸1に確実に固定するようになっている。
【0020】
上記外輪3は、大径軸部21の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝44と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝45とを有している。上記外輪3は、車体への固定のための車体取付用のフランジ75を有している。上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝28と、外輪3の第1軌道溝44との間に、第1保持器40によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉5は、内軸1の軌道溝23と、外輪3の第2軌道溝45との間に、第2保持器41によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0021】
上記ケース部材6は、筒部材52と、円板状の蓋部材53とで構成されている。筒部材52の内周面の外輪3側の端部は、外輪3の外周面の小径軸部19側の端部に止めネジ55により固定されている。一方、蓋部材53は、筒部材52の外輪側とは反対側の開口を閉塞している。上記蓋部材53は、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。
【0022】
上記センサ装置10は、第1変位検出部70と、第2変位検出部71と、ターゲット部材73とを有する。上記第1および第2変位検出部70,71は、筒部材52の内周面に固定されている。一方、上記ターゲット部材73は、第1筒部材としてのナット63と、第3筒部材としての第1スペーサ190と、第2筒部材191と、第3筒部材としての第2スペーサ192と、固定用ナット193とからなる。
【0023】
上記ナット63の軸方向の内輪2側の端部は、フランジ197になっている。上記第1スペーサ190は、プラスチック等の非磁性材からなっている。上記第1スペーサ190は、ナット63の外周面に圧入によって外嵌されて固定されている。上記第1スペーサ190は、フランジ197の軸方向の内方側の端面に当接するまで軸方向の内輪2側に押しこまれている。
【0024】
上記第2筒部材191は、複数のケイ素鋼板を軸方向に隙間無く積層してなっている。上記第2筒部材191は、ナット63の外周面に圧入によって外嵌されて固定されている。上記第2筒部材191の軸方向の内輪2側の端面は、第1スペーサ190の軸方向の内輪2側とは反対側の端面に当接している。
【0025】
上記第2スペーサ192は、プラスチック等の非磁性材からなっている。上記第2スペーサ192は、ナット63の外周面に圧入によって外嵌されて固定されている。上記第2スペーサ190の軸方向の内輪2側の端面は、第2筒部材191の軸方向の内輪2側とは反対側の端面に当接している。上記第1スペーサ190の外周面の外径は、第2スペーサ192の外周面の外径と略同一になっている一方、第1スペーサ190の外周面の外径は、第2筒部材191の外周面の外径よりも小さくなっている。上記第1スペーサ190の外周面は、段部を介して第2筒部材191の外周面に連なっており、第2筒部材191の外周面は、段部を介して第2スペーサ192の外周面に連なっている。
【0026】
上記固定用ナット193は、第2スペーサ192の軸方向の第2筒部材191側とは反対側に位置している。固定用ナット193を軸方向の内輪2側に締め込みことにより、第1スペーサ190、第2筒部材191および第2スペーサ192を、フランジ197と固定用ナット192とで挟み込んで、第1スペーサ190、第2筒部材191および第2スペーサ192を、ナット63に確実に固定すると共に、第1スペーサ190、第2筒部材191および第2スペーサ192をナット63に対して正確に位置決めするようになっている。
【0027】
上記内軸1、内輪2およびターゲット部材73は、第2軌道部材を構成している一方、第1スペーサ190の外周面、第2筒部材191の外周面および第2スペーサ192の外周面は、被変位検出部を構成している。
【0028】
図2は、ターゲット部材73を径方向から見たときの拡大図Aと、ターゲット部材73を軸方向の固定ナット193側から見たときの正面図Bとを、同一の縮尺度で示したものである。
【0029】
図2のAに示すように、ナット63の内周面の軸方向のフランジ197側の端部には、内軸1の小径軸部19に形成された雄ネジに螺合する雌ネジ201が形成されている。一方、図2のAおよびBに示すように、ナット63の内周面の軸方向のフランジ197側とは反対側の端部は、六角レンチを挿入する係合穴の一例としての六角レンチ挿入穴205の内面になっている。
【0030】
ナット63は、締結工具である六角レンチを用いて締め付けられることにより、小径軸部19上を、中径軸部20側へ軸方向に移動するようになっている。
【0031】
再び図1を参照して、センサ装置10は、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とを有する。第1および第2変位検出部70,71の夫々は、筒部材52の内周面に固定されている。上記第1変位検出部70は、第2変位検出部71よりも軸方向において蓋部材53側に位置している。上記第1変位検出部70は、第2変位検出部71に対して軸方向に間隔をおいて配置されている。上記第1変位検出部70は、第2変位検出部71に軸方向に略重なっている。
【0032】
上記第1変位検出部70は、センサリング83と、4つの変位センサ84とを有する一方、第2変位検出部71は、センサリング93と、4つの変位センサ94とを有する。図1に示すように、センサリング83およびセンサリング93は、環状のスペーサ58を介在させた状態で、筒部材52の鍔部57に対して止めネジ59で固定されている。
【0033】
図示しないが、上記4つの変位センサ84は、センサリング83の径方向の内方側の部分に、周方向に所定間隔おきに複数配置されている(本実施形態では、周方向に一定間隔おきに配置されている)一方、4つの変位センサ94は、センサリング93の径方向の内方側の部分に、周方向に所定間隔おきに複数配置されている(本実施形態では、周方向に一定間隔おきに配置されている)。
【0034】
図3は、4つの変位センサ84の周方向の配置構成を説明する図である。尚、説明しないが、4つの変位センサ94についても、4つの変位センサ84と同一の周方向の配置構造を有している。また、図3において、参照番号75は、図1に75で示す外輪3のフランジを示している。
【0035】
図3に示すように、各変位センサ84は、周方向に互いに近接配置されて対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bからなっている。4つの変位センサ84は、センサ付き転がり軸受装置(この実施形態では、ハブユニット)が所定の位置に設置されている状態で、ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向する位置、ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向する位置、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向する位置、および、ターゲット部材73における、このセンサ付き転がり軸受装置が取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されている。尚、4つの変位センサ84は、4つの変位センサ94に軸方向に略重なっている。
【0036】
各組において、対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bの夫々は、独立した検出面を有し、対をなすコイル素子100aおよびコイル素子100bは、直列に連結されている。センサリング83は、径方向の内方側の端部に、径方向の内方に突出した一対の磁極83aおよび83bを有している。コイル素子100aは、磁極83aの周囲にコイルを巻付けてなっている一方、コイル素子100bは、磁極83bの周囲にコイルを巻付けてなっている。磁極83aおよび磁極83bの夫々において、径方向の内方の端面28は、検出面になっている。これらの検出面は、ターゲット部材73の外周面に対して間隔をおいて径方向に対向している。
【0037】
図4は、上記第1変位検出部70の二つの変位センサ84,84に接続されたギャップ検出回路の一例を示す図である。
【0038】
尚、説明しないが、上記第1変位検出部70の残りの二つの変位センサ84,84に接続されたギャップ検出回路や、第2変位検出部71の二組の二つの変位センサの夫々に接続されたギャップ検出回路は、図4に示すギャップ検出回路と同一である。
【0039】
図4に示すように、鉛直方向に位置する2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bの夫々は、発振器130に接続されている。発振器130から一定周期の交流電流が、2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bに供給されるようになっている。2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bには、同期用のコンデンサ131が並列に接続されている。
【0040】
一方のコイル素子100aおよびコイル素子100bと、他方のコイル素子100aおよびコイル素子100bの出力電圧(検出値)を、差動アンプ132に入力して、上記同一直線の方向に対応する出力電圧(検出値)とすることにより、温度ドリフトを取り除くようにしている。なお、図示していないが、ハブユニットを所定の位置に設置した状態で、車両の前後方向に位置する他方の2組のコイル素子100aおよびコイル素子100bについても、上記と同様に差動アンプで差を取ることによって温度ドリフトを取り除いている。
【0041】
上記変位センサ84,94の夫々において、コイル素子100a(または、コイル素子100b)のインダクタンスをL、検出面の面積をA、透磁率をμ、コイルの巻き数をN、検出面からターゲット部材73までの間隔(ギャップ)をdとすると、次の式(a)が成立する。
L=A×μ×N/d ・・・(a)
【0042】
ターゲット部材73までのギャップdが変化すると、変位センサ24のインダクタンスLが変化して出力電圧が変化する。したがって、この出力電圧の変動を検出することにより、変位センサ84,94の夫々において、変位センサ84,94の検出面からターゲット部材73の被変位検出部までの径方向のギャップを検出することができるのである。
【0043】
上記変位センサ84,94の夫々は、ターゲット部材73に対する独立した検出面を有しかつ対をなすコイル素子100a,100bを直列に連結した構造を有している。したがって、図5に示すように、一つのコイル素子200で一つの変位センサを構成する場合と比較して、発生する磁束密度を大きくすることができて、ターゲット部材73とのギャップの検出感度を高くすることができる。
【0044】
図6は、ターゲット部材73の被変位検出部と、変位センサ84と、変位センサ94との位置関係を表す模式拡大図である。
【0045】
図6に示すように、第2スペーサ192の外周面134の一部は、変位センサ84の検出面に径方向に対向する位置に存在している一方、第1スペーサ190の外周面135の一部は、変位センサ94の検出面に径方向に対向する位置に存在している。
【0046】
ハブユニットに如何なる荷重も作用していない状態で、変位センサ84の検出面A1の軸方向の中央部は、第2スペーサ192と第2筒部材191の接触部に径方向に略対向している一方、変位センサ94の検出面A2の軸方向の中央部は、第1スペーサ190と第2筒部材191の接触部に径方向に略対向している。
【0047】
この状態から仮にハブユニットに並進荷重が作用して、図6に示すように、ターゲット部材73が軸方向の蓋部材53側に距離δだけ変位したとすると、上記検出面A1と第2スペーサ192の外周面134との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が減少する一方、検出面A2と第1スペーサ190の外周面135との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が増大する。このことから、変位センサ84のギャップの検出値が減少する一方、変位センサ94のギャップの検出値が増大する。このように、ターゲット部材73が軸方向に変位すると、変位センサ84が検出する検出値と、変位センサ94とが検出する検出値とに差が生じる。
【0048】
第2スペーサ192の外周面134および第1スペーサ190の外周面135は、ターゲット部材73が軸方向に移動した場合に、変位センサ84と変位センサ94が検出する検出値を正負逆向きに変化させるように、センサ側に対する軸方向位置が設定されている。変位センサ84の変位検出値と、変位センサ94の変位検出値の差を取ることにより、内輪2(内軸1)の軸方向の並進量(軸方向の変位であり、並進荷重と相関関係がある)を検出するようになっている。
【0049】
車両の中心側(以下、インナ側という)の変位センサ84の変位検出値と、車輪側(以下、アウタ側という)の変位センサ94の変位検出値の差を取ることにより、第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対する変位検出値が増幅され、これによってセンサ装置10の軸方向の変位の検出感度を高めることができるのである。
【0050】
尚、図6に図示した配置とは逆に、インナ側の第2スペーサの外周面を、第1変位検出部の検出面に対してアウタ側にずらし、アウタ側の第1スペーサの外周面を第2変位検出部の検出面に対してインナ側にずらして配置しても良く、この場合でも上記と同様の作用効果を獲得することができる。
【0051】
図7は、変位検出部70,71と、蓋部材53に対して、変位検出部70,71とは反対側に位置する信号処理部140との接続構造を示す図である。
【0052】
上記センサ装置10は、演算部としての信号処理部140を有し、8つの変位センサ84,94の夫々は、ケース部材6の蓋部材53を貫通する信号線36を介して信号処理部140に接続されている。信号処理部140は、ECU等よりなっている。各変位センサ84,94から得られた出力電圧(変位検出値)は、信号処理部140で以下に述べる演算方法で演算され、これによって車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重が、算出されるようになっている。
【0053】
図8は、本実施形態で使用する方向について説明する図であり、図9、図10は、本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。図9は、変位センサを、径方向の外方からみた図であり、図10は、変位センサを、軸方向からみた図である。尚、図10においては、簡単のため、周方向に隣接する二つのコイル素子100a,100b(図3参照)を、一つのコイル素子で表している。
【0054】
図8に示すように、本実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
【0055】
また、図9および図10に示すように、インナ側の4つの変位センサ84の変位検出値に、添え字「i」を使用し、アウタ側の4つの変位センサ94に添え字「o」を使用する。
【0056】
また、今後、ハブユニットが所定の位置に設置されている状態において、
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も前方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84f(fは、frontの略)とし、
ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も後方側の位置に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84r(rは、rearの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84t(tは、topの略)とし、
ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に略径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84b(bは、bottomの略)とする。
【0057】
また、今後、センサの変位検出値においても、
前側のセンサの変位検出値に添え字「f」を使用し、
後側のセンサの変位検出値に添え字「r」を使用し、
上側のセンサの変位検出値に添え字「t」を使用し、
下側のセンサの変位検出値に添え字「b」を使用する。
【0058】
図10に示されている事実、すなわち、インナ側の変位センサ84t,84b,84f,84rと、アウタ側の変位センサ94t,94b,94f,94rとが、軸方向に略重なっているといる事実は、上述した第1変位検出部70が、第2変位検出部71に軸方向に略重なっているという事実と整合している。
【0059】
話を元に戻して、センサ装置10が有する合計8つのセンサの変位検出値は、次のように定義される。
fi:変位センサ84fの変位検出値
ri:変位センサ84rの変位検出値
ti:変位センサ84tの変位検出値
bi:変位センサ84bの変位検出値
fo:変位センサ94fの変位検出値
ro:変位センサ94rの変位検出値
to:変位センサ94tの変位検出値
bo:変位センサ94bの変位検出値
【0060】
図11は、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合における、ターゲット部材73と、幾つかの変位センサの位置関係を模式的に示す図である。以下、図11を用いて、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数(sFy)について説明する。
【0061】
図11に示すように、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合、第2軌道部材(回転軌道部材)は、その荷重の向きに変位し、各スペーサ190,192の外周面134,135の位置が軸方向にずれる。このため上述したように、インナ側の各変位センサの変位検出値(本実施形態では出力電圧)fi、ri、ti、biは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも減少し、アウタ側の各変位センサの変位検出値fo、ro、to、boは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも増大する。
【0062】
そこで、図12、すなわち、各変位センサ出力から演算した独立変数と、車輪に作用する実際の荷重との対応関係を示すマトリックス図、に示すように、次の式(1)で算出されるsFyを、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数として採用する。
sFy=(fi+ri+ti+bi)−(fo+ro+to+bo)
・・・(1)
【0063】
このように、インナ側の各変位センサの変位検出値とアウタ側の各変位センサの変位検出値の差を取ることで、回転軌道輪である第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対するsFyが増幅されるので、センサ装置10全体としての軸方向変位の検出感度を高めることができる。
【0064】
x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値については、次のように求められる。
【0065】
x軸方向については、前センサの変位検出値fと、後センサの変位検出値rとの差によってx軸方向変位の変位検出値とし、z軸方向については、上センサの変位検出値tと、下センサの変位検出値bの差によってz軸方向変位の変位検出値とする。前後のセンサの出力同士及び上下のセンサの出力同士では、それぞれ同じ方向に同じ量だけ温度の影響が出ることから、上記のように差を取ることによって温度ドリフトが取り除かれる。
【0066】
本実施形態では、インナ側と、アウタ側に変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rを配置しているので、次に示す通り、インナ側とアウタ側のそれぞれの位置において、x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値が得られる。
インナ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xi=fi−ri
インナ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zi=−ti+bi
アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xo=fo−ro
アウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zo=−to+bo
【0067】
z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数(sMz)は、次のように求められる。
【0068】
図13は、z軸回りのモーメント荷重Mzのみが作用する純モーメントの状態の各種変数の関係を示す図である。
【0069】
軸受装置の中心O(図1参照)からインナ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLi、軸受中心Oからアウタ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLoとすると、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する変位検出値は、理論的には次の式(2)で算出されるmzで表される。このmzは、図13に示すように、θが十分に小さい場合には、xiと一致する。
mz=Li×tanθ
=Li×tan((xi−xo)/(Li−Lo))
・・・(2)
【0070】
しかし、実際には、ターゲット部材73に、第2筒部材191の外周面136(図6参照)の外径よりも小さい外径を有するスペーサ190,192の外周面134,135が形成されているため、図14、すなわち、z軸回りのモーメント荷重Mzのみを作用させた場合におけるMzと、mzおよびxiの変位検出値との関係を示す図に示すように、mzは、xiとは一致せず、かつ、mzと、xiの変位検出値の傾きも一致しない。
【0071】
このため、図15にkzで示すxi直線の傾きをmz直線の傾きで除算して得られる補正係数を導入する。補正係数kzを、上記mzに乗じることで、次の式(3)に示す通り、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzが得られる。
sMz=−mz×kz
・・・(3)
【0072】
尚、式(3)において、右辺のマイナス(−)は、その他の独立変数(上記sFy及び下記のsMx等)と符号を一致させるためのものである。
【0073】
x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数(sMx)は、次のように求められる。
【0074】
x軸方向と、z軸方向とは90度、座標変換した関係にある。したがって、x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数sMxは、上記sMzの場合と同様の考え方により、次の式(4)によって算出することができる。
sMx=mx×kx
・・・(4)
【0075】
なお、上記式(4)におけるkxは、図15で定義される値であり、kzと同じ趣旨で導入した補正係数であり、zi直線の傾きをmx直線の傾きで除算して得られる補正係数である。このkxは、図16に示す、x軸回りのモーメント荷重Mxのみを作用させた場合における、Mxと、mxおよびziの変位検出値との関係を示す図から求められる。
【0076】
z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数(sFz)、および、x軸方向の並進荷重Fxに対応する独立変数(sFx)は、夫々次のように求められる。
【0077】
図17は、z軸回りのモーメント荷重Mzとともに、x軸方向の並進加重Fxが作用する状態を仮定した場合の第2軌道部材の変形状態を示す図であり、各種変数の関係を示す図である。
【0078】
インナ側でのx軸方向変位の変位検出値xiには、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzの成分と、x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxの成分が含まれている。x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxは、上記xiからsMzを差し引くことによって求めることができる。
【0079】
このことは、z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数であるsFzの場合にも、同様に当てはまる。したがって、z軸方向の並進荷重Fzによる独立変数sFzと、x軸方向の並進荷重Fxによる独立変数sFxは、それぞれ次の式(5)及び式(6)で算出することができる。
sFz=zi−mx×kx
・・・(5)
sFx=xi−mz×kz
・・・(6)
【0080】
図18は、これまで説明した、変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzの算出方法を、ダイアグラム的に示す図である。図18に示すように、sFy、sFx、sFz、sMxおよびsMzを求めることができるようになっている。
【0081】
図19は、上記式(1),(3),(4),(5),(6)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMx及びsMzと、車輪に作用する実際の荷重であるFx、Fy、Fz、Mx及びMzとの対応関係を表すマトリックス図である。
【0082】
すなわち、車輪に対して実際に負荷したFx、Fy、Fz、Mx及びMzを入力とし、式(1),(3),(4),(5),(6)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzを出力として、それらの変数間の直線グラフをマトリックス化したものである。
【0083】
図19のマトリックス図に示すように、Fxに対してはsFxのみが傾きを有する直線グラフとなり、その他のFy、Fz、MxおよびMzには反応がなく、これと同様に、マトリックス図の対角部分だけが直線グラフになっている。従って、これら5つの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzは、車輪に作用する実際の荷重である5分力Fx、Fy、Fz、MxおよびMzと線形独立の関係にある。
【0084】
このため、それらの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzが求まれば、車輪に作用する5つの荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを未知数とした5元連立一次方程式を解くことにより、その各荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを演算することができる。
【0085】
本実施形態では、ECU等よりなる前記信号処理部140には、上記した各式(1),(3),(4),(5),(6)と5元連立一次方程式を解く演算回路(ハードウェア)ないし制御プログラム(ソフトウェア)が組み込まれている。このため、各変位センサによる8つの変位検出値fi、ri、ti、bi、fo、ro、toおよびboに基づいて、車輪に作用する実際の荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを求めることができる。
【0086】
上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とを有しているから、第1変位検出部70の検出信号と、第2変位検出信号71の検出信号とに基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。また、ハブユニットに作用している並進荷重に加えて、車輪に作用しているモーメント荷重を算出できるから、車両の走行の際の運転制御を正確に行うことができる。
【0087】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、第2筒部材191は、複数のケイ素鋼板を軸方向に積層してなっているから、変位検出部において、電磁誘導の法則を利用して、被変位検出部の変位の検出を行っている最中に、第2筒部材191中に渦電流が発生することがない。したがって、変位信号を獲得する際のエネルギーロスを低減できて、変位検出部の感度を大きくすることができる。
【0088】
磁気特性が良好で、磁束が通過し易くて、渦電流が発生しにくい構造、すなわち、ケイ素鋼板を軸方向に積層してなる構造をしているから、渦電流の発生に起因する電気信号の損失の低減を行うことができて、センサの感度を高くすることができるのである。
【0089】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受によれば、第1変位検出部70および第2変位検出部71を、予めケース部材6に固定した後に、センサ付き転がり軸受装置の組み立ての際に、ケース部材6を、外輪1の外周面に固定するだけで、8個の変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rを、センサ付き転がり軸受装置に簡単に固定することができる。また、内軸1の小径軸部19の外周面にナット63を螺合し、かつ、ナット63の外周面に第1スペーサ190、第2筒部材191および、第2スペーサ192を外嵌し、かつ、ナット63の外周面に、固定用ナット193を締め付けるだけで、センサ装置10におけるターゲット部材73を簡単に内軸1および内輪2に固定することができる。
【0090】
したがって、二つの変位検出部の夫々を、個別に外輪3に取り付ける必要がなく、しかも、従来例のように、外輪3にセンサ装着用の貫通穴等の取付構造を設ける必要もない。また、ケース部材6に対する第1および第2変位検出部70,71の相対位置が予め正確に確定することになる。したがって、ターゲット部材73に対するセンサ装置10の位置決めを正確かつ容易に行うことができると共に、センサ装置10を、容易にハブユニットに実装できる。
【0091】
尚、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、内軸1に、内軸1と別体の内輪2が嵌合される構成であったが、この発明では、内輪がなくて、二つの軌道溝が、ともに内軸に形成されていても良い。
【0092】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、変位検出部70,71を、ケース部材6に固定したが、この発明では、変位検出部を、外輪に直接取り付けても良い。更に、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、外輪1が、固定軌道部材を構成し、内周側の内軸2等が、回転軌道部材を構成したが、内周側の内軸等が、固定軌道部材を構成し、外輪が、回転軌道部材を構成しても良い。
【0093】
また、上記実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、ハブユニットであったが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、ハブユニットに限らず、例えば磁気軸受装置(ターボ分子ポンプ)等のハブユニット以外の如何なる軸受装置であっても良い。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
【0094】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が、ころであっても良く、また、ころおよび玉を含んでいても良い。
【0095】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受では、ナット63に、ナット63の軸方向の一方の端面に開口する六角レンチ挿入穴205を形成したが、この発明では、ナットに、ナットの軸方向の一方の端面に開口するトルクスレンチ挿入穴等、ナットの軸方向の一方の端面に開口する六角レンチ挿入穴以外の係合穴を形成しても良い。
【0096】
尚、上記被変位検出部の加工を行う際、軸方向において最もターゲット部材に近い軌道面とターゲット部材との間に、径方向に延在するシール装置(図示せず)を設置すると共に、内軸1にターゲット部材73を固定した状態で、ターゲット部材73の被変位検出部に、切削および研磨を施すと、加工時において各部材の精度バラツキをキャンセルできて、加工精度を精密なものにすることができる。
【0097】
ターゲット部材73に加工処理を施してから、ターゲット部材73を内軸1に固定すると、内軸1やターゲット部材73を構成する各部材の精度バラツキや、第1および第2スペーサ190,192や第2筒部材191をナット63に圧入する際の寸法変化や、ナット63を内軸1に圧入する際の寸法変化が問題になって、加工精度を精密にすることが難しいからである。
【0098】
また、上記被変位検出部の加工を行う際、軸方向において最もターゲット部材に近い軌道面とターゲット部材との間に、径方向に延在するシール装置(図示せず)を設置すると共に、内軸1にターゲット部材73を固定し、更に、内軸1を回転させた状態で、ターゲット部材73の被変位検出部に、切削および研磨を施すと、センサ付き転がり軸受装置の回転振れ(芯ずれ)を抑制することができて、更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態であるハブユニットの軸方向の断面図である。
【図2】ターゲット部材を径方向から見たときの拡大図と、ターゲット部材を軸方向の固定ナット側から見たときの正面図とを、同一の縮尺度で示したものである。
【図3】第1変位検出部を構成する4つの変位センサの周方向の配置構成を説明する図である。
【図4】変位センサに接続されたギャップ検出回路の一例を示す図である。
【図5】本実施形態で使用されている変位センサが、一つのコイル素子からなる変位センサと比較して、発生する磁束密度を大きくすることができることを説明する図である。
【図6】ターゲット部材の被変位検出部と、第1変位検出部の変位センサと、第2変位検出部の変位センサとの位置関係を表す模式拡大図である。
【図7】変位検出部と、蓋部材に対して、変位検出部とは反対側に位置する信号処理部との接続構造を示す図である。
【図8】本実施形態で使用する方向について説明する図である。
【図9】本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。
【図10】本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。
【図11】車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合における、ターゲット部材と、幾つかの変位センサの位置関係を模式的に示す図である。
【図12】各変位センサ出力から演算した独立変数と、車輪に作用する実際の荷重との対応関係を示すマトリックス図である。
【図13】z軸回りのモーメント荷重Mzのみが作用する純モーメントの状態の各種変数の関係を示す図である。
【図14】z軸回りのモーメント荷重Mzのみを作用させた場合におけるMzと、mzおよびxiの変位検出値との関係を示す図である。
【図15】補正係数について説明する図である。
【図16】x軸回りのモーメント荷重Mxのみを作用させた場合における、Mxと、mxおよびziの変位検出値との関係を示す図である。
【図17】z軸回りのモーメント荷重Mzとともに、x軸方向の並進加重Fxが作用する状態を仮定した場合の第2軌道部材の変形状態を示す図である。
【図18】変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzの算出方法を、ダイアグラム的に示す図である。
【図19】各独立変数sFx、sFy、sFz、sMx及びsMzと、車輪に作用する実際の荷重であるFx、Fy、Fz、Mx及びMzとの対応関係を表すマトリックス図である。
【符号の説明】
【0100】
1 内軸
2 内輪
3 外輪
4 第1の玉
5 第2の玉
10 変位センサ装置
63 ナット
70 第1変位検出部
71 第2変位検出部
73 ターゲット部材
84,94 変位センサ
140 信号処理部
190 第1スペーサ
191 第2筒部材
192 第2スペーサ
193 固定用ナット
197 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記第2軌道部材は、
内軸と、
その内軸の外周面の軸方向の一端部に螺合した第1筒部材と、
上記第1筒部材の外周面に固定されると共に、複数のケイ素鋼板を上記軸方向に積層してなる第2筒部材と、
上記第1筒部材の外周面に固定されると共に、上記第2筒部材の両側に位置する非磁性体からなる第3筒部材と
を有し、
上記被変位検出部は、上記第2筒部材の外周面および上記第3筒部材の外周面で構成され、
上記第1筒部材の内周面の開放端には、係合穴を有し、
上記第2筒部材の外周面の外径は、上記第3筒部材の外径より大きく、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部の出力信号と、上記第2変位検出部の出力信号とに基づいて、上記被変位検出部に作用している並進荷重と、上記被変位検出部に作用しているモーメント荷重とを算出する演算部と
を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第2筒部材は、上記第2筒部材の両側で上記第3筒部材に上記軸方向に当接しており、
上記第3筒部材の外周面の外径は、略一定であり、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なり、かつ、上記第1変位検出部の検出面は、上記径方向から見て、上記第2筒部材の上記軸方向の一方の側の上記第3筒部材側の端部と、この一方の側の第3筒部材の上記軸方向の上記第2筒部材側の端部とに重なる一方、上記第2変位検出部の検出面は、上記径方向から見て、上記第2筒部材の上記軸方向の他方の側の上記第3筒部材側の端部と、この他方の側の第3筒部材の上記軸方向の上記第2筒部材側の端部とに重なっていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−275510(P2008−275510A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120989(P2007−120989)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】