説明

センサ付電子点灯回路及びセンサ付電子点灯管

【課題】人体検知センサを設けた照明器具において、人体検知センサ用の電源を設けなくともよいようにする。
【解決手段】スターター回路10に人体検知センサを備え、その人体検知センサでスターター回路10をオン・オフするようにする。こうすることで、待機時に器具全体をオフにするためのスイッチ手段を交流電源と器具との間に設けなくして、人体検知センサを待機状態にするための電力を供給できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人体検知センサを備えた蛍光灯のセンサ付電子点灯回路とセンサ付電子点灯管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化への懸念から省エネを図って温暖化ガスの発生を減らすことが急務となっている。そのため、照明の分野においても不必要な点灯は極力減らさなければならない。
【0003】
このような問題を解決する一つの方法として、例えば(特許文献1)には、人体検知センサを用いた照明器具が記載されている。
【0004】
この器具は、図6(a)のように、人体検知センサ1を例えば、器具本体や器具の蛍光灯のソケットに設けるとともに、図6(b)のように、交流電源と器具の入力間にスイッチ手段2を設けて、そのスイッチ手段2を人体検知センサ1からの信号を受けた制御部3がオン・オフして蛍光灯の点灯と消灯を行うものである。そして、このようにすることにより、人が器具の近くにいる時のみ蛍光灯を点灯させて、省エネ化を図れるようにしたものである。
【特許文献1】特開2001−184936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の人体検知センサを設けた照明器具では、交流電源と器具との間にスイッチ手段を設けて、そのスイッチ手段を制御部が人体検知センサからの信号を受けてオン・オフするようにしている。
【0006】
そのため、制御部がスイッチ手段をオフにしてしまうと、器具全体がオフになってしまうため、器具とは別に制御部と人体検知センサ用の電源を設けなければならない。
【0007】
しかしながら、このように別に電源を設けると、部品点数が多くなり、しかも、待機時の電力も大きくなる問題がある。
【0008】
また、上記のものでは、器具にスイッチ手段を設けたうえ、人体検知センサと制御部も組み込まなければならないので、既設の器具に適用する際には大幅な改修が必要となり、組み込めない場合も考えられる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、別に電源を設けなくとも(例えば、スターター回路を利用して)、人体検知センサによってオン・オフできるようにすることである。また、その際、大幅な改修をせずに既設の器具にも適用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するため、この発明では、人体検知センサの出力でスターター回路を直接オン・オフする構成を採用したのである。
【0011】
このような構成を採用することにより、照明器具の蛍光灯の点灯と消灯を、器具全体をスイッチ手段でオン・オフしないで、人体検知センサの出力でスターター回路のオン・オフでもって行うので、スターター回路に給電している器具から電力を供給できる。
【0012】
また、電子点灯管に人体検知センサを備えて、その人体検知センサの検知出力に基づいて前記点灯回路をオン・オフするようにしたので、既設の点灯管に代えて使用すれば、既設の器具に大幅な改修をしなくとも人体検知センサ付のものとして使用できる。
【0013】
また、その際、スターター回路と人体検知センサからなる回路部と口金とに分離して、前記回路部を照明器具の近傍に取り付けられるようにすることにより、前記センサの検知領域の設定が行えるようにするとともに、前記スターター回路を組み込むケースも互換性のあるケースに限定されないので、回路の自由度も大きくできる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、上記のように構成したことにより、簡単に省エネ効果の計れる人体検知センサ付の蛍光灯点灯装置を実現できる。また、既設の器具も簡単に人体検知センサ付の蛍光灯として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明のセンサ付電子点灯回路とセンサ付電子点灯管について図面に基づいて説明する。
【0016】
この発明のセンサ付電子点灯回路は、図1に示すように、蛍光灯FLの電子スターター回路(以下、スターター回路)10に人体検知センサ回路(以下、センサ回路)11を設けた構成となっている。
【0017】
スターター回路10は、蛍光灯FLの両端のヒーター端子f1−4の他方f2,4、すなわち、一方f1,3をリアクタンスCHを介して電源と接続した残りの他方f2,4に接続するもので、そのスターター回路10に設けられるセンサ回路11は、焦電型赤外線センサ12とタイマ回路13及びスイッチ回路14とからなっている。
【0018】
焦電型赤外線センサ12は、焦電素子の前方に光学フィルターとマルチレンズを設けたもので、マルチレンズが集光した赤外線をフィルターを介して焦電素子で検知する。
【0019】
また、焦電素子で検知した出力は、内蔵のアンプで増幅してコンパレータでデジタル(パルス)出力に波形成形してタイマ回路13へ出力する。
【0020】
タイマ回路13は、例えば、リトリガブルのワンショットマルチバイブレータなどで構成したもので、前記センサ12からの出力信号が入力するとトリガされ、トリガされると予め設定した所定幅のパルスをスイッチ回路14へ出力する。
【0021】
スイッチ回路14は、オン用のスイッチ回路14aと短絡用のスイッチ回路14bとからなっており、例えば、トランジスタ、FET、トライアック、サイリスタなどの半導体で構成されている。前記オン用のスイッチ回路14aは、図1のように、電子スターター回路10と直列に設けることにより、タイマ回路13からの「H」信号が入力すると、オンとなって電子スターター回路10を作動させて蛍光灯FLを点灯させる。また、タイマ回路13からの出力信号が反転して「L」になると、電子スターター回路10をオフにする。
【0022】
一方、短絡スイッチ回路14bは、蛍光灯FLのヒーター端子f2,4 間と並列に設けて、タイマ回路13からの出力信号が反転して「L」になったときに、短時間短絡することにより蛍光灯FLを消灯させる。
【0023】
具体的には、例えば図2のような回路で構成することができる。
【0024】
この回路は、センサ回路11、タイマ回路13、スイッチ回路14、スターター回路10、センサー用電源回路15とで構成され、図4(a)のような電子点灯管ケース16に収容するようにしたものである。
【0025】
センサ回路11は、センサモジュール17と反転増幅回路18とで構成されている。前記センサモジュール17には、ここでは、例えば波形成形用のアンプを内蔵した焦電型のモーションセンサを使用している。前記焦電型センサは、センサ素子表面の自発分極作用を利用して赤外線を検知するというもので、人体がセンサの検知範囲に侵入したとき、熱源である人体の動きを壁などの背景との温度差による赤外線の変化から検知してパルス信号を出力する。このパルス信号出力は、負論理なのでトランジスタによる反転増幅回路18を介してタイマ回路13へ出力する。
【0026】
タイマ回路13は、リトリガブルのワンショットマルチバイブレータで、前記反転増幅回路18からのパルス信号出力(正論理に変換された)が入力してトリガされると、所定幅(所定時間)のパルスを出力する。その際、タイマ回路13は、所定幅のパルスを出力中にリトリガされると、そのリトリガされた時点から再度所定幅のパルスを出力する。そのため、タイマ回路13は、所定の幅のパルスの出力中にセンサ回路11からの入力があると、ステップ信号を出力し続ける。この信号はスイッチ回路14へ出力される。
【0027】
スイッチ回路14は、この形態では、後述のように、スターター回路10と直列に接続したオン用のトライアック14aと、並列に接続した短絡用のトライアック14bからなっている。
【0028】
また、前記オン用のトライアック14aのゲート回路は、タイマ回路13の出力と接続しており、タイマ回路13の「L」レベル出力でオンするようになっている。一方、短絡用のトライアック14bのゲート回路は、フォトカプラーを用いたもので、フォトカプラーのLED14eを、図2のように微分用のコンデンサCtを介してタイマ回路13の出力と接続されたトランジスタ19で駆動する。こうすることで、前記短絡用のトライアック14bをタイマ回路13のパルス出力と微分パルス出力で短時間(例えば、約50から100ms)オンするようにしてある。
【0029】
スターター回路10は、例えば、図3のように、出力段にC−MOSFET20を使用したもので、C−MOSFET20と直列にダイオード21を設けてある。また、出力段のC−MOSFET20のゲート回路にゲート抵抗22とコンデンサ23の直列回路を接続し、その直列回路のコンデンサ23と並列にドライブ用のC−MOSFET24を設けて、そのドライブ用のC−MOSFET24のゲート回路にコンデンサ25と抵抗26からなる時定数回路を接続した構成となっている。
【0030】
このようなスターター回路10では、始動時に出力段のC−MOSFET20は、交流電源の正のサイクル毎に抵抗22を介してオンされる。そのため、接続された蛍光灯FLのヒータf1−4 に電流が流れて予熱を行う。
【0031】
一方、電源の負の半サイクルでは、電源→抵抗(ドライブトランジスタの時定数回路)26→コンデンサ25→保護ダイオード(出力段のC−MOSFET20のもの)27→リアクタンスCH→電源と電流が流れてコンデンサ25を充電する。
【0032】
こうした充電により、コンデンサ25の電圧がドライブ用のC−MOSFET24のゲートのスレッショルド電圧に達すると、前記C−MOSFET24がオンとなり、出力段のC−MOSFET20をオフにして予熱電流を急激に遮断する。その結果、リアクタンスCHがキック電圧を発生し蛍光灯FLを点灯させる。
【0033】
また、このスターター回路10には、前記オン用のトライアック14aをダイオード21と蛍光灯FLのヒーター端子fとの間に設けることにより、前記トライアック14aをオンすることで、スターター回路10と蛍光灯FLとを接続できるようにしてある。そして、そのスターター回路10と並列に短絡用のトライアック14bを設けて、前記トライアック14bをオンにして蛍光灯FLのヒーター端子f2,4 を短時間短絡するようにしてある。
【0034】
一方、センサ用電源回路15は、センサ回路11とタイマ回路13へ電力を供給するだけなので、図1のように、ツェナーダイオードを用いた簡単な定電圧電源で構成してある。
【0035】
このように図2の回路は、部品点数の少ないシンプルな回路で構成できるので、電子点灯管ケース16への収容も容易にできる。
【0036】
この形態は、上記のように構成されており、電子点灯管のケースに収容された前記回路は図4(a)のように、既設の照明器具のグローランプに代えて取り付ける。
【0037】
この既設の器具に取り付けられた前記ケースの回路は、例えば蛍光灯FLのヒータ−端子f1−4 を介して、器具のスイッチを経て交流電源と接続される。いま、器具のスイッチをオンにして前記回路を作動させる。
【0038】
すると、前記スターター回路10のC−MOSFET20は、蛍光灯FLのヒーター端子f1−4 を介して交流電源と接続されるが、前記オン用のトライアック14aは、後述のようにオフになっており、スターター回路10は起動しない。
【0039】
このとき、前記スターター回路10のセンサ用電源回路15は交流電源と接続されるので、センサ回路11とタイマ回路13へ所定の電圧が印加される。そのため、前記電圧の印加されたセンサ回路11とタイマ回路13は作動を開始する。その際、作動した前記センサ回路11は、検知領域内に人体を検知すると、「L」レベル(負論理)となり、その検知した人のわずかな動きに対しても「L」を出力する。一方、検知領域内に人体を検知しない場合は、その出力は「H」レベルとなり、このような人体検知センサの出力は、反転回路で反転して(正論理に変換して)タイマ回路13へ出力する(図5参照)。
【0040】
タイマ回路13は、図5のように、「H」レベルの立ち上がりでトリガされ、予め設定された所定幅のパルスを出力する。そのため、タイマ回路13は、前記センサ回路11が人を検知した時に作動して予め設定された所定幅のパルスを出力する。また、その所定幅のパルス(以下、幅広パルス)は、パルスが入力する度にその入力時点を起点として出力されるので、例えば幅広パルスの終了するまでに順次センサ回路11からパルスが入力すれば、パルスが入力しなくなるまでタイマ回路は幅広パルスを出力し続ける。
【0041】
このタイマ回路13からの幅広パルスの出力は、オン用のトライアック14aのゲート回路に入力して前記トライアック14aをオンにする。このとき、タイマ回路13からの幅広パルスは、短絡用のトライアック14bに微分コンデンサCtを介して入力するが、この入力は微分入力で前記トライアック14bをオンする期間は微少なので、直ぐにオフとなる。
【0042】
したがって、前記オン用のトライアック14aがオンになると、出力段のC−MOSFET20は、交流電源の正のサイクル毎に抵抗22を介してオンされる。その結果、蛍光灯FLはヒーター端子f1−4に電流が流れて予熱を開始する。一方、電源の負の半サイクル時には、電源→抵抗(ドライブ用のC−MOSFETの時定数回路)26→コンデンサ25→保護ダイオード27→リアクタンスCH→電源と電流が流れてコンデンサ25を充電する。
【0043】
このような交流電源の正負のサイクルの繰り返しにより、ヒーターf1−4 の予熱がなされ、コンデンサ25が充電されると、充電されたコンデンサ25の電荷により、ドライブ用のC−MOSFET24がオンして、出力段のC−MOSFET20がオフとなり、リアクタンスCHによるキック電圧が発生して蛍光灯FLは点灯する。
【0044】
点灯した蛍光灯FLは、センサ回路11が人体の僅かな動きに対しても「L」を出力するので、点灯状態を維持できる。
しかるのち、器具から人が離れて、センサ回路11の検知領域から外れると、センサ回路11からの出力は「H」レベル(負論理)の出力となり、反転回路18からの出力は「L」となる。そのため、タイマ回路13はトリガされなくなり、所定幅のパルスが終了すると「H」から「L」になって、その「H」から「L」へ変化する際のパルスの立ち下がりにより、短絡用のトライアック14bのゲート回路へは、微分コンデンサCtを介してパルスが出力される。そのため、前記短絡用のトライアック14bがオンして蛍光灯FLの両端のヒーター端子f2,4を短絡するので、蛍光灯FLは消灯する。このとき、オン用のトライアック14aのゲート回路には「L」レベル出力が入力して前記トライアック14aをオフにするので、出力段のC−MOSFET20は交流電源から切り離される。その結果、短絡用のトライアック14bがオフとなるため、再び交流電源が印加されても蛍光灯FLは点灯しない。
【0045】
また、再度、人が器具に近づいて人体検知センサの検知領域に入ると、検知領域に人が入ったことをセンサ回路11が検知して、先に述べたような動作を繰り返し、蛍光灯FLが点灯する。また、人が器具から遠ざかると蛍光灯FLは消灯する。
【0046】
このようにセンサ回路11の出力でスターター回路10をオン・オフするようにして、交流電源と器具との間にスイッチ手段を設けて器具全体をオフにしないので、器具にセンサ回路11を設けなくともスタンバイ時(消灯時)に電力を供給できる。その結果、別電源を設けなくともよくできる。
【0047】
また、電子点灯管ケース16に人体検知センサを備え、その人体検知センサの検知出力に基づいて前記点灯回路をオン・オフするようにしたので、この電子点灯管を既設の点灯管に代えて使用すれば、既設の器具に大幅な改修をしなくとも人体検知センサ付のものとして使用することができる。
【実施例1】
【0048】
この実施例は、図4(b)に示すように、センサ付電子点灯管のセンサ回路(人体検知センサ)11を備えたスターター回路10からなる回路部と、グロースターターと互換性のある口金30とを分離して、前記回路部の配置場所を任意に設定することで、センサの検知領域も設定できるようにしたものである。また、このように回路部を分離したので、回路はグローランプと互換性のあるケース収めるためにコンパクトにまとめなくともよいので、製作面やコスト面で有利にできるというものである。
【0049】
そのため、回路部は、器具の近傍に取り付けやすい形状のケースに収容し、口金30とコードでもって接続する。また、このとき、前記ケースにセンサモジュール17を取り付けても良いが、図4(b)のようにコードでもって分離して自由に設置できるようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施形態のブロック図
【図2】実施形態のブロック図
【図3】実施形態の要部のブロック図
【図4】(a)実施形態の作用説明図、(b)実施例1の斜視図
【図5】実施形態の作用説明図
【図6】(a)従来例の斜視図、(b)従来例のブロック図
【符号の説明】
【0051】
10 スターター回路
11 人体検知センサ回路
16 電子点灯管ケース
30 口金
CH リアクタンス
1−4 ヒーター端子
FL 蛍光灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光灯の両端に設けられた一対のヒーター端子の一方をリアクタンスを介して電源と接続し、他方にスターター回路を接続するとともに、前記スターター回路に人体検知センサを備え、その人体検知センサの出力でもって、前記スターター回路をオン・オフするようにしたセンサ付電子点灯回路。
【請求項2】
半導体素子を用いたスターター回路をグロースターターと互換性のあるケースに収納し、そのケースを照明器具に取り付けて、蛍光灯の点灯を行う電子点灯管に、人体検知センサを備え、その人体検知センサの検知出力に基づいて前記スターター回路をオン・オフするようにしたセンサ付電子点灯管。
【請求項3】
人体検知センサを備えたスターター回路からなる回路部と、グロースターターと互換性のある口金とからなり、その口金と回路部とをコードでもって接続して、前記コードでもって接続された回路部を照明器具の近傍に取り付けられるようにして配置するとともに、前記口金を照明器具に取り付け、前記回路部の人体検知センサの検知出力に基づいてスターター回路をオン・オフするようにしたセンサ付電子点灯管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−310034(P2006−310034A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129877(P2005−129877)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(598170017)
【出願人】(593096480)
【出願人】(505157603)株式会社エム・エイ・テイ (1)
【Fターム(参考)】