説明

センサ回路

【課題】センサの出力信号の線形性を損なうことなく、センサの出力信号が供される後段の回路のダイナミックレンジに適した出力信号を得る。
【解決手段】ブリッジ部2を構成するセンサ抵抗5a〜5dが線形領域で動作するようセンサ抵抗5a〜5dの駆動を行うセンサ駆動装置1が設けられると共に、センサ抵抗5a〜5dが平衡状態にある場合のAB間の出力信号の電圧が、後段の回路の入力ダイナミックレンジの中心値となるようブリッジ部2の出力信号の電圧を調整するセンサ動作点調整装置3が設けられたものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ回路に係り、特に、出力信号の線形性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用に際して所定の駆動電圧、電流の供給が必要とされるセンサにあっては、例えば、図3に示された構成の抵抗ブリッジ型センサ回路が用いられていた。
以下、図3を参照しつつ、かかる従来回路において圧力センサを構成する場合について説明すれば、4つのセンサ抵抗5a´〜5d´によって、ブリッジ回路を構成して用いられるようになっている。
かかるブリッジ接続された4つのセンサ抵抗5a´〜5d´は、センサ駆動装置(図3においては「S−DRV」と表記)1Aによって、所定の駆動電圧、電流で駆動されるようになっており、圧力変化に応じて、各センサ抵抗5a´〜5d´のインピーダンスが変化し、平衡状態が崩れることで、その崩れに応じた電位差が2つの接続点A,Bにセンサ出力信号として出力されるようになっている。
【0003】
AB間に得られたセンサ出力信号は、信号処理回路(図3においては「SP」と表記)4Aに入力されて、必要な信号処理が施されて、図示されない後段の回路へ供されるようになっている。
ここで、センサ出力信号は、通常、数mV〜数百mV程度であるため、後段の図示されない回路に供するには、不十分な場合が殆どである。
そのため、信号処理回路4Aは、かかるセンサ出力信号を、図示されない後段の回路へ供するために適切な信号振幅に増幅すると共に、必要に応じて適切なオフセット電圧を重畳させる等の信号処理を施すものとなっている。
【0004】
ところで、この種のセンサ抵抗5a´〜5d´にあっては、加えられる圧力範囲に対してセンサ出力信号の線形性が最適となる駆動電圧、電流が存在することは良く知られている通りである。
一方、信号処理回路4Aは、ダイナミックレンジの中心電圧付近で回路の線形性が最適化されているのが一般的である。
そのため、センサ抵抗5a´〜5d´は、センサ出力信号の線形性が最適となる駆動電圧、電流で駆動され、平衡状態にある場合に、信号処理回路4Aへ入力されるセンサ出力信号の電圧が、信号処理回路4Aのダイナミックレンジの中心電圧になっていることが望ましい。
【0005】
しかし、センサの種類などによりそれぞれのインピーダンスが異なるため、センサ出力信号が信号処理回路4Aのダイナミックレンジに入るようにセンサ駆動電圧、電流でセンサを駆動しても、センサ出力信号の線形性が最適になるとは限らない。
かかる不都合を解消する方策として、従来は、信号処理回路4Aなどに、入力されたセンサ出力信号の非線形を補正するための非線形補正回路11を設けるのが一般的である。
なお、この種の従来回路としては、例えば、特許文献1等に開示されたものなどがある。
【特許文献1】特開2001−343439号公報(第3−5頁、図1−図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような非線形補正回路11は、一般に複雑な構成となるため、部品点数の増加による装置の信頼性の低下を招くだけでなく、装置の高価格化を招くなどの問題がある。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、センサの出力信号の線形性を損なうことなく、しかも、センサの出力信号が供される後段の回路のダイナミックレンジに適した出力を可能とするセンサ回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るセンサ回路は、
センサが線形領域で動作するよう当該センサの駆動を行う駆動装置が設けられてなるセンサ回路であって、
前記センサが平衡状態にある場合の出力信号の電圧が、当該センサの出力信号が印加される後段の回路の入力ダイナミックレンジの中心値となるよう当該センサの出力信号の電圧を調整するセンサ動作点調整装置を設けてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、センサが平衡状態にある際の出力信号の電圧を、後段の回路のダイナミックレンジの中心となるように調整可能に構成したので、従来と異なり、複雑な回路構成を必要とする非線形性補正回路を不要とし、比較的簡易な構成でセンサの出力信号の線形性を損なうことなく、しかも、センサの出力信号が供される後段の回路のダイナミックレンジに適したセンサ信号を得ることができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるセンサ回路101の基本構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるセンサ回路101は、センサ駆動装置(図1においては「S−DRV」と表記)1と、ブリッジ部2と、センサ動作点調整装置3とに大別されて構成されたものとなっている。図1に示された構成例においては、このセンサ回路101の出力信号が用いられる後段の回路の一部として、前段部分となる信号処理回路(図1においては「SP」と表記)4が、センサ回路101に接続されたものとなっている。
【0011】
以下、具体的に説明すれば、まず、ブリッジ部2は、第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dがブリッジ接続されて構成されたものと等価的に表すことができる。かかる第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dは、基本的に同一の構成を有してなるものが用いられている。
【0012】
第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dは、その使用に際して電圧、電流の供給を必要とするものであり、センサ駆動装置1は、かかる第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dへ駆動電圧、電流の供給を行うものとなっている。
すなわち、センサ駆動装置1は、電源電圧VDDの供給を受け、第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dの駆動に必要とされる電圧、電流を生成、出力するよう構成されたものとなっている。
【0013】
本発明の実施の形態においては、第1のセンサ抵抗5aと第4のセンサ抵抗5dの接続点に、センサ駆動装置1の出力端が接続される一方、第2のセンサ抵抗5bと第3のセンサ抵抗5cの接続点が、後述するセンサ動作点調整装置3を構成する動作点調整部3Bを介してグラウンドに接続されるようになっている。
【0014】
そして、第1のセンサ抵抗5aと第2のセンサ抵抗5bの接続点と、第3のセンサ抵抗5cと第4のセンサ抵抗5dの接続点との間に、ブリッジ部2としての出力、すなわち、換言すれば、センサ出力信号が得られるようになっている。なお、本発明の実施の形態においては、便宜的に、第1のセンサ抵抗5aと第2のセンサ抵抗5bの接続点を”B”点とし、第3のセンサ抵抗5cと第4のセンサ抵抗5dの接続点を”A”点とする。
【0015】
かかるAB点間に得られたセンサ出力信号は、これを必要とする後段の回路の一部をなす信号処理回路4を介して、図示されない後段の回路へ供給されるものとなっている。
ここで、センサ出力信号は、通常、数mV乃至数百mVであるため、図示されない後段の回路において用いるには、十分なレベルとは言い難い。そのため、信号処理回路4は、かかるセンサ出力信号を、図示されない後段の回路に必要な信号振幅に増幅し、また、必要に応じて適切なオフセットを施すようになっているもので、それ自体の回路構成は、従来から用いられているものである。
【0016】
本発明の実施の形態におけるセンサ動作点調整装置3は、第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dの動作点を調整するためのもので(詳細は後述)、検出部(図1においては「DET」と表記)3Aと動作点調整部(図1においては「D−ADJ」と表記)3Bとに大別されてなり、検出部3Aは、信号処理回路4内に設けられたものとなっている一方、動作点調整部3Bは、先に述べたようにブリッジ部2とグラウンドとの間に設けられたものとなっている。
【0017】
検出部3Aは、信号処理装置4に入力されたブリッジ部2のAB間の電圧を検出し、その検出電圧に応じて後述する動作点調整部3Bの動作を制御する制御電圧を出力するよう構成されてなるものである。
一方、動作点調整部3Bは、検出部3Aからの制御電圧に応じて、ブリッジ部2が平衡状態にある場合のAB間の電圧が所定の値となるように、ブリッジ部2とグラウンドとの間に流れる電流を調整するよう構成されたものとなっている。
なお、本発明の実施の形態においては、検出部3Aを、信号処理回路4内に設ける構成としたが、必ずしも、このような構成に限定されるものではなく、信号処理回路4と別体に設けて、ブリッジ部2からのセンサ出力信号が、それぞれ並列に入力されるような構成としても良い。
【0018】
次に、上記構成における動作について説明する。
まず、センサ駆動装置1は、センサ動作点調整装置3とは無関係に、ブリッジ接続された第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dの動作点が、AB間のセンサ出力信号の線形特性が最適となるように、その駆動電圧、電流が定められて第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dを駆動するものとなっている。
そして、第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dが標準状態にある場合には、AB間のセンサ出力信号は平衡状態となり、例えば、AB間の電圧は0Vとなるようになっている。
【0019】
一方、センサ動作点調整装置3においては、ブリッジ部2のAB間の電圧が0vとなった際、すなわち、センサ出力信号が平衡状態となった際に、検出部3Aにより動作点調整部3Bが制御されて、AB間の電圧が信号処理回路4のダイナミックレンジの中心値となるように、ブリッジ部2とグラウンドとの間に流れる電流が調整されることとなる。
このような動作により、従来であれば、例えば、センサ出力信号が平衡状態の場合のAB間の電圧が、信号処理回路4のダイナミックレンジの中心値となるようにセンサ駆動装置1の駆動電圧、電流を定めた場合には、センサ出力信号の線形性は必ずしも最適な状態とは限らず、第1乃至第4のセンサ抵抗5a〜5dは、寧ろ、非線形部分での駆動状態となることがあったが、本発明の実施の形態においては、かかる不適切な駆動状態が確実に回避されることとなる。
【0020】
図2には、本発明の実施の形態におけるセンサ動作点調整装置3のより具体的な構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この構成例について説明する。なお、図1に示された構成例と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
この構成例は、特に、動作点調整部3Bの具体例を示したものである。
すなわち、動作点調整部として可変抵抗素子6が用いられており、検出部3Aからの制御電圧によって、抵抗値が可変できるようになっている。
【0021】
このような可変抵抗素子6としては、例えば、電界効果トランジスタのゲート電圧の制御によって、ドレイン・ソース間の抵抗値が可変可能に構成されたいわゆる電子抵抗素子などが好適である。
なお、この図2に示された構成における動作は、図1に示された構成例で説明したと基本的に同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態におけるセンサ動作点調整装置の基本構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示されたセンサ動作点調整装置の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【図3】従来回路の構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1…センサ駆動装置
2…ブリッジ部
3…センサ動作点調整装置
3A…検出部
3B…動作点調整部
4…信号処理回路
5a〜5d…センサ抵抗
6…可変抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサが線形領域で動作するよう当該センサの駆動を行う駆動装置が設けられてなるセンサ回路であって、
前記センサが平衡状態にある場合の出力信号の電圧が、当該センサの出力信号が印加される後段の回路の入力ダイナミックレンジの中心値となるよう当該センサの出力信号の電圧を調整するセンサ動作点調整装置を設けてなることを特徴とするセンサ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate