説明

センサ本体および接続機器

【課題】測定精度や汎用性を損なうことなく、TEDS機能およびリモートセンス機能の両方が搭載されたセンサ本体を提供する。
【解決手段】センサ本体は、測定対象の物理量に応じた電気信号を出力するセンサ回路16と、センサ本体に関する情報を記憶するTEDS18と、TEDS18に接続されたセンサ情報ライン32と、センサ回路16に印加される駆動電圧の変動量を示す信号を出力するリモートセンスライン34と、切替スイッチ42,44を介してセンサ情報ライン32またはリモートセンスライン34に切替接続されるF端子およびG端子を備えている。コントロール部20は、駆動電圧が印加されている間だけ、リモートセンスライン34とF端子およびG端子が接続されるように切替スイッチ42,44の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の物理量に応じた電気信号をコネクタ部に接続された接続機器に出力するセンサ本体、および、当該センサ本体に接続される接続機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、重量を測定する重量測定システムや、加速度を測定する加速度測定システムなど、様々な物理量を測定する測定システムが知られている。こうした測定システムでは、対象となる物理量を電気信号に変換するセンサ本体と、当該センサ本体から出力される電気信号に所定の信号処理等を施す接続機器(例えばアンプや指示計など)と、を備えている。通常、センサ本体と接続機器とは、コネクタを介して接続される。このコネクタの形式としては、汎用性を考慮して、規格で規定されたコネクタ形式である7ピンコネクタ形式が用いられることが多い。
【0003】
ところで、こうしたセンサシステムでは、近年、TEDS(Transducer Electronic Date Sheet)機能やリモートセンス機能の搭載が望まれている。TEDSは、校正情報をはじめとするセンサ本体固有の情報を記憶した電子データシートの略である。このTEDSを各センサ本体に搭載することで、当該センサ本体に必要な校正量などを確実、かつ、正確に接続機器側に出力することができ、より信頼性の高い測定が可能となる。また、リモートセンス機能は、センサ本体に印加される駆動電圧の変動量を測定する機能である。このリモートセンス機能を設けることにより、接続ケーブルの電気抵抗による電圧降下や温度変化などの外乱に起因する駆動電圧の変動、ひいては、こうした外乱等に起因する測定値の誤差を補正することができ、測定精度の更なる向上が図れる。このようにTEDS機能およびリモートセンス機能は、それぞれ、利点を有しているため、現在、両機能を搭載した測定システムが強く望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−179107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既述したとおり、現在、多くの測定システムでは、規格で規定された7ピンコネクタを介してセンサ本体と接続機器とを接続している関係上、TEDS機能およびリモートセンス機能の両方を搭載することは困難であった。すなわち、7ピンコネクタに設けられた7つの端子のうち、5つは、センサ本体への駆動電圧印加や、センサ本体からの検出信号の出力、および、シールドなどに用いられており、その他の機能に用いることができる空き端子は二つしか確保できない。しかし、TEDS機能およびリモートセンス機能を実現するためには、それぞれ、二つの端子を必要としており、両機能を搭載するためには合計四つの空き端子が必要となる。つまり、7ピンコネクタを用いた場合、TEDS機能およびリモートセンス機能の両方を搭載するには端子の数が足りないという問題があった。
【0006】
かかる問題を避けるために、9ピンコネクタなどを用いることも考えられるが、現在、市場に流通している測定システムに関係する機器の多くは、7ピンコネクタに対応して構成されており、9ピンコネクタを用いた場合には汎用性が損なわれるという問題がある。また、特許文献1では、歪みセンサから出力される被測定対象物理量に応じたアナログ信号(検出信号)と、情報記憶媒体(TEDS)が記憶している情報に応じて出力されるデジタル信号とを、共通の2つの出力端子に選択的に出力させることで、端子の数不足を補う技術が開示されている。しかし、この場合、検出信号の出力信号線上にスイッチを設ける必要があり、当該スイッチのON抵抗による検出信号の精度低下を招くおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、測定精度や汎用性を損なうことなく、TEDS機能およびリモートセンス機能の両方が搭載されたセンサ本体および当該センサ本体に接続される接続機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセンサ本体は、測定対象の物理量に応じた電気信号をコネクタ部に接続された接続機器に出力するセンサ本体であって、前記測定対象の物理量を感知するとともに当該感知した物理量に応じた電気信号を検出信号として出力するセンサ回路と、当該センサ本体に関する情報をセンサ情報として記憶する記憶媒体と、前記記憶媒体に記憶されたセンサ情報に応じた電気信号をセンサ情報信号として出力するためのセンサ情報ラインと、前記センサ回路に印加される駆動電圧の変動量を示す信号をリモートセンス信号として出力するためのリモートセンスラインと、前記接続機器に接続されるセンサ側コネクタ部であって、1以上の共用端子を備えたセンサ側コネクタ部と、各共用端子ごとに設けられた切替スイッチであって、対応する共用端子の接続先をセンサ情報ラインまたはリモートセンスラインに択一的に切り替える切替スイッチと、前記物理量の非測定時にはセンサ情報ラインを、前記物理量の測定時にはリモートセンスラインを、それぞれ、共用端子に接続するべく前記切替スイッチの駆動を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記制御手段は、前記センサ回路への駆動電圧の印加の有無に基づいて前記物理量の測定状態を判断する。他の好適な態様では、前記センサ側コネクタ部は、予め規格で規定されるとともに、7つの端子を備えた7ピンコネクタであり、前記7つの端子は、前記センサ回路への駆動電圧の印加を受け付ける二つの端子と、検出信号を外部に出力する二つの端子と、共用端子として機能する二つの端子と、これら六つの端子をシールドする端子と、を備える。
【0010】
他の本発明である接続機器は、上述したセンサ本体に電力供給するとともに、当該センサ本体から出力される検出信号に対して規定の信号処理を施す接続機器であって、前記記憶媒体からセンサ情報を読み出す読出手段と、前記リモートセンス信号に基づいて検出信号の補正を行う補正手段と、前記センサ側コネクタ部に対応する接続機器側コネクタ部であって、センサ本体の共用端子に接続される対応端子を備えた接続機器側コネクタ部と、各対応端子ごとに設けられた切替スイッチであって、対応する対応端子の接続先を読取手段または補正手段に択一的に切り替える切替スイッチと、前記物理量の非測定時には読出手段を、前記物理量の測定時には補正手段を、それぞれ、対応端子に接続するべく前記切替スイッチの駆動を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つの端子に、リモートセンスラインまたはセンサ情報ライン(読出手段または補正手段)が択一的に接続されるため、端子の数を増やすことなく、TEDS機能およびリモートセンス機能の両方を搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である重量測定システムの概略構成図である。この重量測定システムは、ロードセルであるセンサ本体10と、当該センサ本体10に接続された接続機器50と、に大別される。ロードセルであるセンサ本体10は、重量を感知するとともに当該感知した重量に応じた電気信号を検出信号として出力する。このセンサ本体10からは信号ケーブル12が引き出されており、当該信号ケーブル12の先端にはセンサ側コネクタ部14(例えば、プラグ)が設けられている。
【0013】
接続機器50は、センサ本体10に駆動電圧を供給するとともに、当該センサ本体10から出力された検出信号に対して規定の信号処理(例えば増幅処理や校正処理など)を施すもので、例えば、ひずみアンプやデジタル指示計などが該当する。この接続機器50には、センサ本体10に設けられたセンサ側コネクタ部14に対応する接続機器側コネクタ部54(例えばレセプタクル)が設けられており、このセンサ側・接続機器側コネクタ部14,54を介してセンサ本体10と接続機器50とが接続されるようになっている。
【0014】
ここで、本実施形態では、このセンサ側・接続機器側コネクタ部14,54として、規格で規定されている7ピンコネクタ(プラグ、ジャック、レセプタクル等)を採用している。かかる規格で規定されたコネクタを採用した場合、センサ本体10や接続機器50の汎用性を向上させることができる一方で、取り扱う信号種類が限定されるという問題がある。すなわち、7ピンコネクタの場合は、入出力端子の数が7つに限定されているため、従来、7種類以上の信号を取り扱うことが困難であった。そして、その結果、従来の測定システムでは、後述するTEDS機能およびリモートセンス機能の両方を搭載することが困難であった。本実施形態の重量測定システムは、かかる問題を解決するために、一つの端子で二種類の信号を入出力できるようにしている。以下、この重量測定システムについて詳説する。
【0015】
はじめに、図2を参照してセンサ本体10の構成について詳説する。図2は、本実施形態で用いるセンサ本体10の構成図である。このセンサ本体10は、センサ回路16、TEDS18、センサ側コネクタ部14、および、複数の信号ラインなどを備えている。
【0016】
センサ回路16は、実際に重量を感知するとともに、当該感知した重量に応じた電気信号を検知信号として出力する回路である。このセンサ回路16は、ホイートストンブリッジ回路になるように四つのひずみゲージ22a〜22dを互いに接続することで構成される。より具体的には、第一ひずみゲージ22aの一端に第二ひずみゲージ22bの一端が接続されている。同様に、第二ひずみゲージ22bの他端には第三ひずみゲージ22cの一端が、第三ひずみゲージ22cの他端には第四ひずみゲージ22dの一端が、第四ひずみゲージ22dの他端には第一ひずみゲージ22aの他端が、それぞれ接続されている。そして、第一ひずみゲージ22aと第二ひずみゲージ22bとの接続点、および、第三ひずみゲージ22cと第四ひずみゲージ22dとの接続点が、それぞれ、正の出力端24p、および、負の出力端24m(以下、正負を区別しない場合は添字p,mを省略する。他部材も同じ)となる。センサ回路16で得られた検知信号は、この正負の出力端24p,24mから出力される。また、第二ひずみゲージ22bと第三ひずみゲージ22cとの接続点、および、第四ひずみゲージ22dと第一ひずみゲージ22aとの接続点は、それぞれ、正負の入力端26p,26mとなる。接続機器50から印加された駆動電圧は、この正負の入力端26p,26mを介してセンサ回路16に入力される。
【0017】
TEDS18(Transducer Electronic Data Sheet)は、センサ本体10に関する情報であるセンサ情報を記憶する記憶媒体として機能するもので、内部に読み書き可能なメモリを有した電子データシートである。このTEDS18に記憶されるセンサ情報としては、例えば、センサ本体10の識別情報やメーカ名、センサ本体10が扱う物理量種類、定格容量、定格出力、入力抵抗、推奨印加電圧、校正値などが含まれる。センサ本体10を用いて測定を行う場合、接続機器50は、予め、TEDS18から、このセンサ情報を読み出し、当該情報に基づいて初期設定を行うようになっている。そして、このようにTEDS18を用いることにより、校正値や定格容量などの数値を手動入力する場合に比して、初期設定にかかる手間や誤入力の問題を低減することができる。
【0018】
センサ側コネクタ部14は、接続機器50(ひずみアンプ)と接続される部位で、規定の規格に従った構成となっている。具体的には、このコネクタ部14は、7つの端子、すなわち、A端子〜G端子を備えた7ピンコネクタ形式となっている。
【0019】
A端子およびC端子は、接続機器50からセンサ回路16の駆動電圧が印加される端子であり、それぞれ、正負の電力ライン28p,28mを介して、センサ回路16の正負の入力端26p、26mに接続されている。
【0020】
また、B端子およびD端子は、検出信号を接続機器50に出力する端子で、それぞれ、正負の検出信号ライン30p,30mを介して、センサ回路16の正負の出力端24p,24mに接続されている。さらに、E端子は、接地端子として機能するもので、各信号ラインをシールドするシールド線46に接続されている。なお、ここまでで説明したA〜E端子は、センサ本体10の最低限の機能を発揮するために必須な端子であり、これらA〜E端子を他の用途に用いることは困難であるといえる。
【0021】
F端子およびG端子は、センサ情報ライン32およびリモートセンスライン34のうちいずれか一方が択一的に接続される共用端子として機能する端子である。センサ情報ライン32は、TEDS18に記憶されたセンサ情報に応じた電気信号、センサ情報信号を出力するための信号ラインで、プラス信号ライン32pおよびコモン信号ライン32cの二本(以下、プラス信号ラインとコモン信号ラインとを区別しない場合は「センサ情報ライン32」という)からなる。このうちプラス信号ライン32pは、第一切替スイッチ42を介してF端子に、コモン信号ライン32cは第二切替スイッチ44を介してG端子にそれぞれ接続されている。
【0022】
また、リモートセンスライン34は、センサ回路16に印加される駆動電圧の変動を示すリモートセンス信号を出力する信号ラインである。すなわち、センサ回路16に印加される駆動電圧の値は、ケーブル長の変動や温度変化に起因して微妙に変動することが知られている。かかる駆動電圧の変動は、検出値の変動を招き、測定値の精度低下の原因となる。そこで、本実施形態では、リモートセンスライン34を介して駆動電圧の変動量を接続機器50に通知し、接続機器50において、この駆動電圧の変動を補償するようなリモートセンス機能を搭載している。正のリモートセンスライン34pの一端は正の電力ライン28pに、負のリモートセンスライン34mの一端は負の電力ライン28mに、それぞれ接続されている。また、正のリモートセンスライン34mの他端は第一切替スイッチ42を介してF端子に、負のリモートセンスライン34mの他端は第二切替スイッチ44を介してG端子に、それぞれ接続されている。
【0023】
第一切替スイッチ42および第二切替スイッチ44は、互いに連動して駆動するスイッチで、コントロール部20により駆動制御される。この二つの切替スイッチ42,44は、例えば、二極双投のリレーなどで実現することができる。コントロール部20は、センサ回路16への駆動電圧の印加状況に応じて、この二つの切替スイッチを切り替える。
【0024】
具体的には、コントロール部20は、センサ回路16に駆動電圧が印加されている期間中は、各切替スイッチ42,44をリモートセンスライン側接点であるr接点がONとなるように切り替え、リモートセンスライン34とF端子およびG端子とを接続させる。これにより、F端子およびG端子からリモートセンス信号が出力されることになる。一方、センサ回路16に駆動電圧が印加されていない期間中、コントロール部20は、各切替スイッチ42,44をセンサ情報ライン側接点であるt接点側がONとなるように切り替え、センサ情報ライン32とF端子およびG端子とを接続させる。この場合には、F端子およびG端子からはセンサ情報信号が出力されることになる。なお、切替スイッチ42,44の切り替えは、印加された駆動電圧を利用して行われる。また、このスイッチの切り替えで消費する電力は、リモートセンス機能により補正される。
【0025】
ここで、「センサ回路16に駆動電圧が印加されている期間」とは、センサ回路16による重量検知、すなわち、重量の測定が行われている期間を意味する。したがって、G端子およびF端子は、いずれも、重量測定時にはリモートセンス信号の出力端子として機能し、重量の非測定時にはセンサ情報信号の出力端子として機能するともいえる。そして、このように、一つの端子に二種類の機能を割り当てることにより、端子の数を増やすことなく取り扱う信号種類を増加させることができる。そして、結果として、TEDS機能とリモートセンス機能の両方を搭載することができる。
【0026】
ところで、複数種類ある信号のうち、センサ情報信号およびリモートセンス信号で、出力端子を共有させたのは、センサ情報信号およびリモートセンス信号であれば、その出力タイミングが干渉しないためである。すなわち、既述したとおり、センサ情報信号は、センサ本体10の識別情報や校正値などといったセンサ本体10固有の情報を示す信号であり、測定開始前に接続機器50に出力され、当該接続機器50の初期設定などに利用される信号である。換言すれば、センサ情報信号は、測定開始前にのみ出力されればよい信号であると言える。一方、リモートセンス信号は、測定中における駆動電圧の変動、ひいては、当該駆動電圧変動に起因する検出値の誤差を補償するための信号である。換言すれば、リモートセンス信号は、測定中にのみ出力されればよい信号であると言える。つまり、リモートセンス信号の出力が要求される測定中にはセンサ情報信号の出力は要求されず、センサ情報信号の出力が要求される測定前にはリモートセンス信号の出力は要求されない。換言すれば、リモート信号およびセンサ情報信号の出力タイミングが干渉する恐れがないといえる。そのため、一つの出力端子で、リモートセンス信号およびセンサ情報信号の両方を出力するようにしても、信号同士の干渉の恐れがなく、極めて簡易な制御で二種類の信号を出力することができる。
【0027】
また、センサ情報信号とリモートセンス信号の出力端子を共通化させる構成とすれば、検出精度を向上できるという利点もある。すなわち、出力タイミングの干渉を避けるためだけであれば、例えば特許文献1記載の技術のように、センサ情報信号および検出信号の出力端子を共用させる構成とすることも考えられる。しかし、この場合には、検出信号ライン上に、切替スイッチを設けることになる。ここで、検出信号の電圧値は、通常、mVオーダーの非常に小さい値であることが多い。かかる低レベルの検出信号ライン上に切替スイッチを設けた場合、スイッチのON抵抗が顕著に影響し、検出信号の誤差を助長する恐れがある。
【0028】
一方、本実施形態のように、センサ情報信号およびリモートセンス信号の出力端子を共用させる構成とした場合には、切替スイッチ42,44はリモートセンスライン34上に設けることになる。そして、これにより、特許文献1記載の技術に潜在していた検出信号に対するスイッチのON抵抗の影響という問題を排除でき、検出精度を向上できる。また、リモートセンスライン34上に流れる信号は、通常、Vオーダー(印加電圧相当)の信号であり、検出信号に比して十分に大きな値をとる。そのため、リモートセンスライン34上にスイッチ42,44を設けたとしても、ON抵抗による影響を相対的に小さくすることができる。
【0029】
次に、接続機器50の構成について図3を参照して説明する。なお、接続機器50のうち、センサ本体10との接続に直接、関与しない部分、例えば、アンプ回路や表示部、ユーザインターフェースなどの構成は、公知の従来技術を利用できるため、ここでの説明は省略する。以下では、接続機器50のうちセンサ本体10の接続に関与する部分の構成を中心に説明する。
【0030】
接続機器50のコネクタ部54には、センサ本体10のA〜G端子に対応するa〜g端子が設けられている。このうち、f端子およびg端子は、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66に接続されている。この第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66のr接点は、ひずみアンプ56内に設けられた補正回路に接続されている。補正回路は、リモートセンス信号に基づいて、印加電圧の変動に起因する検出信号の誤差を補正する回路である。また、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66のt接点は、CPU62に接続されている。このCPU62は、接続機器50全体の駆動を制御する制御手段として機能するとともに、TEDS18からセンサ情報を読み出す読出手段としても機能する。
【0031】
a端子は、第五切替スイッチ67に接続されており、第五切替スイッチ67のr接点はひずみアンプ56内に設けられた電源回路(図示せず)に接続されており、t接点には信号ラインは接続されていない。センサ本体10に駆動電圧を供給する期間、換言すれば、センサ本体10による重量測定を実行する期間、第5切替スイッチ67はr接点ONとなる。ここで、第三〜第五切替スイッチ64,66,67は、互いに連動して駆動する。換言すれば、第五切替スイッチ67がr接点ONとなる重量測定期間中は、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66もr接点ONとなっており、f端子およびg端子に補正回路が接続されることになる。逆に、第五切替スイッチ67がt接点ONとなる非測定期間中は、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66もt接点ONとなっており、f端子およびg端子には読出手段として機能するCPU62が接続されることになる。つまり、接続機器50においても、センサ本体10と同様に、駆動電圧の印加状況に応じて、f端子およびg端子の接続先が切り替えられるようになっている。
【0032】
コントロール部60は、CPU62からの指示に応じて第三〜第五切替スイッチ64,66,67を駆動制御する。CPU62は、既述したとおり、接続機器50全体の駆動を制御するとともに、TEDS18からセンサ情報を読み出す読出手段としても機能する。そして、このCPU62は、TEDS18から読み出したセンサ情報に基づいて、センサ本体10の種類識別を行ったり、検出値の校正処理をしたりする。また、このCPU62は、ユーザインターフェース(図示せず)を介して入力されるユーザからの指示に従って、コントロール部60の駆動も制御する。
【0033】
次に、このように構成された測定システムによる重量測定の流れについて説明する。重量測定を行う場合には、予め、センサ本体10と接続機器50とを接続するとともに、センサ本体10を測定位置にセットしておく。
【0034】
この状態で、ユーザから測定開始が指示されたとする。この場合、接続機器50のCPU62は、まず、センサ情報の取得を実行する。具体的には、第三〜第五切替スイッチ64,66,67をt接点ONとなるようにコントロール部60に指示を出力する。第5切替スイッチ67がt接点ONとなると、センサ本体10への電力供給が停止することになる。また、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66がt接点ONとなることで、f端子およびg端子は、読出手段として機能するCPU62に接続されることになる。センサ本体10においては、駆動電圧が供給されていないため、第一切替スイッチ42および第二切替スイッチ44はt接点ONとなる。その結果、F端子およびG端子はセンサ情報ラインを32介してTEDS18に接続されることになる。つまり、接続機器50のCPU62(読出手段)とセンサ本体10のTEDS18とが、F端子とf端子およびG端子とg端子を介して接続されることになる。CPU62は、この状態でTEDS18にアクセスし、TEDS18に記録されているセンサ情報を読み取る。そして、読み取ったセンサ情報に基づいて接続機器50の初期設定、例えば、校正値や定格容量の設定などを行う。なお、この時点において、センサ本体10のセンサ回路16は駆動しておらず、重量の測定は開始されていない。したがって、この時点において、リモートセンス機能は不要であり、リモートセンスライン34が、端子に接続されていなくても問題ない。
【0035】
センサ情報の読み取りが完了すれば、続いて、CPU62は、第三〜第五切替スイッチ64,66,67の接点切替を指示する。この指示により、第三〜第五切替スイッチ64,66,67は、いずれも、r接点ONとなる。第五切替スイッチ67がr接点ONとなることで、電源回路とa端子とが接続されることになる。そして、このa端子およびc端子を介して、センサ本体10に駆動電圧が供給される。また、第三切替スイッチ64および第四切替スイッチ66もr接点ONとなるため、CPU62に代わって補正回路がf端子およびg端子に接続されることになる。
【0036】
接続機器50からの駆動電圧供給によりセンサ回路16が駆動することになり、重量の測定が開始される。また、この供給電圧により、第一切替スイッチ42および第二切替スイッチ44の接点切替が実行され、r接点ONとなる。第一切替スイッチ42および第二切替スイッチ44がr接点ONとなることで、リモートセンスライン34がF端子およびG端子に接続される。そして、リモートセンスライン34に流れるリモートセンス信号がF端子とf端子およびG端子とg端子を介して接続機器50のひずみアンプ56内に設けられた補正回路に出力されることになる。補正回路は、入力されたリモートセンス信号に応じて、検出信号の補正を行う。なお、この時点において、センサ情報は既に取得済みであるため、センサ情報ライン32が、端子に接続されていなくても問題ない。
【0037】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態では、センサ情報信号およびリモートセンス信号の入出力端子を共通化しているため、端子の数を増やすことなくTEDS機能とリモートセンス機能の両方を搭載することができる。その結果、汎用性を損なうことなく、信頼性の高い物理量測定が可能となる。
【0038】
なお、本実施形態のセンサ本体10は、規格で規定された形式のコネクタ部14を有しているため、市場に流通している汎用的な接続機器にも接続することができる。すなわち、従来、多用されている接続機器の多くは、電力供給ライン上にスイッチは設けられておらず、接続されたセンサ本体に対して駆動電圧を常時出力するようになっている。かかる接続機器に接続された場合、本実施形態のセンサ本体10は、常時、第一切替スイッチ42および第二切替スイッチ44がr接点ONとなったリモートセンス機能付きのセンサ本体10として機能することになる。つまり、本実施形態のセンサ本体10は、他の接続機器にも接続することができ、高い汎用性を有している。同様に、本実施形態の接続機器50も、市場に流通している汎用的なセンサ本体が接続可能であり、高い汎用性を有しているといえる。
【0039】
また、上述した説明では、センサ本体10の一例として、重量の測定に好適なロードセルを例示したが、測定対象の物理量を感知するとともに当該感知した物理量に応じた電気信号を出力するものであれば、他のセンサ、例えば、加速度センサや圧力センサなどをセンサ本体10として用いてもよい。また、上述した説明では、センサ本体10を直接、接続機器50に接続しているが、両者の間にアダプタを介在させてもよい。すなわち、接続機器の中には、センサ本体10のコネクタ部とは異なるコネクタ部、例えば、9ピン形式のコネクタ部や先バラ形式のコネクタ部を有したものもある。かかる接続機器に接続する場合には、センサ本体10と接続機器との間にアダプタを介在させることが望ましい。この場合には、アダプタの内部に、経路切替用の切替スイッチを搭載することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態である測定システムの概略構成図である。
【図2】センサ本体の構成図である。
【図3】接続機器の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 センサ本体、12 信号ケーブル、14 センサ側コネクタ部、16 センサ回路、20 コントロール部、22 ひずみゲージ、28 電力ライン、30 検出信号ライン、32 センサ情報ライン、34 リモートセンスライン、42 第一切替スイッチ、44 第二切替スイッチ、46 シールド線、50 接続機器、54 接続機器側コネクタ部、56 ひずみアンプ、60 コントロール部、64 第三切替スイッチ、66 第四切替スイッチ、67 第五切替スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の物理量に応じた電気信号をコネクタ部に接続された接続機器に出力するセンサ本体であって、
前記測定対象の物理量を感知するとともに当該感知した物理量に応じた電気信号を検出信号として出力するセンサ回路と、
当該センサ本体に関する情報をセンサ情報として記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体に記憶されたセンサ情報に応じた電気信号をセンサ情報信号として出力するためのセンサ情報ラインと、
前記センサ回路に印加される駆動電圧の変動量を示す信号をリモートセンス信号として出力するためのリモートセンスラインと、
前記接続機器に接続されるセンサ側コネクタ部であって、1以上の共用端子を備えたセンサ側コネクタ部と、
各共用端子ごとに設けられた切替スイッチであって、対応する共用端子の接続先をセンサ情報ラインまたはリモートセンスラインに択一的に切り替える切替スイッチと、
前記物理量の非測定時にはセンサ情報ラインを、前記物理量の測定時にはリモートセンスラインを、それぞれ、共用端子に接続するべく前記切替スイッチの駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするセンサ本体。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ本体であって、
前記制御手段は、前記センサ回路への駆動電圧の印加の有無に基づいて前記物理量の測定状態を判断することを特徴とするセンサ本体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサ本体であって、
前記センサ側コネクタ部は、予め規格で規定されるとともに、7つの端子を備えた7ピンコネクタであり、
前記7つの端子は、前記センサ回路への駆動電圧の印加を受け付ける二つの端子と、検出信号を外部に出力する二つの端子と、共用端子として機能する二つの端子と、これら六つの端子をシールドする端子と、を備える、
ことを特徴とするセンサ本体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のセンサ本体に電力供給するとともに、当該センサ本体から出力される検出信号に対して規定の信号処理を施す接続機器であって、
前記記憶媒体からセンサ情報を読み出す読出手段と、
前記リモートセンス信号に基づいて検出信号の補正を行う補正手段と、
前記センサ側コネクタ部に対応する接続機器側コネクタ部であって、センサ本体の共用端子に接続される対応端子を備えた接続機器側コネクタ部と、
各対応端子ごとに設けられた切替スイッチであって、対応する対応端子の接続先を読取手段または補正手段に択一的に切り替える切替スイッチと、
前記物理量の非測定時には読出手段を、前記物理量の測定時には補正手段を、それぞれ、対応端子に接続するべく前記切替スイッチの駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする接続機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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