説明

センサ素子の検査装置およびセンサ素子の電気的特性検査方法

【課題】検査効率が優れるとともに信頼性の高い検査を行える検査装置を提供する。
【解決手段】一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であり、開口部から続く略筒状の空間である素子挿脱部と、素子挿脱部と連接し、かつ、内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部と、テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間であるガス導入部と、を備えるチャンバを準備し、センサ素子を、チャンバとの間に隙間を設けつつ先端がテーパー部に達するようにチャンバ内へ挿入した状態で、所定のガス供給手段からガス導入部に設けた供給口を通じてチャンバに対し検査用ガスを供給し、検査用ガスを隙間から流出させつつ、センサ素子の電気的測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ用のセンサ素子の検査装置に関し、特に、ガス雰囲気下での素子特性の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被測定ガス中の所望のガス成分の濃度を知るために、各種のガスセンサが用いられている。例えば、燃焼ガス等の被測定ガス中のNOx濃度を測定する装置として、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質を用いて形成したセンサ素子を備えるNOxセンサが公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2に開示されているNOxセンサをはじめとするガスセンサのセンサ素子は、測定電極において測定対象ガス成分(対象成分)を分解させると、その際に発生する酸素イオンの量が測定電極と基準電極とを流れる電流に比例することを利用して、該測定対象ガス成分の濃度を求めるようになっている。具体的には、対象成分の濃度が既知の混合ガスを用いて個々のセンサ素子における濃度値と電流値(出力信号値)との関係(感度特性、濃度プロファイル)をあらかじめ求めておき、実際の使用時には、測定される電流値を感度特性に基づいて濃度値に換算することで、対象成分の濃度値を知るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−284223号公報
【特許文献2】特許第3537983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した感度特性は、それぞれのガスセンサの使用開始前(例えば出荷前)に決定され、通常は、その後のガスセンサの使用において変更されることなく固定的なものとして取り扱われる。このことは、ガスセンサを使用している間に実際の感度特性が変動しないことが前提となっている。係る実際の感度特性が経時的に変化してしまうと、ガスセンサの使用を継続するにつれて出荷時に決定した感度特性に基づいて算出される濃度値の信頼性がなくなり、やがては、ガスセンサが仕様として定められた測定精度を有しないことになってしまう。
【0006】
係る測定精度の確保のため、センサ素子の製造工程においては、被測定ガスに類似する混合ガス雰囲気の下でセンサ素子の電気的特性を評価する素子特性検査を行い、感度特性が所定の仕様(管理幅)をみたさないセンサ素子や感度特性が変動するセンサ素子を不良品として判定するようにしている。
【0007】
感度特性は個々のセンサ素子個体ごとに微妙に異なるので、製品として出荷される全てのガスセンサが所定の品質(測定精度)をみたすようにするには、全てのセンサ素子個体を検査対象として素子特性検査を行うことが必要である。しかも、信頼性という観点からは、係る素子特性検査は、全てのセンサ素子について、略同一の状況下で行われる必要がある。その一方で、生産性向上のためには、複数のセンサ素子を同時並行的に検査することによって検査時間を短縮することが求められる。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、検査効率が優れるとともに信頼性の高い検査を行える検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ガスセンサ用のセンサ素子の検査装置であって、一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であり、それぞれに1つのセンサ素子が挿入される複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれに所定の検査用ガスを供給するガス供給手段と、前記複数のチャンバのそれぞれに対応させて設けられた、前記複数のチャンバのそれぞれにおける前記混合ガスの流量を個別に制御可能な複数の流量調整手段と、前記複数のチャンバのそれぞれに挿入された状態のセンサ素子と電気的に接続されて所定の電気的測定を行う測定手段と、を備え、前記複数のチャンバのそれぞれが、前記開口部から続く略筒状の空間であり、前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、前記素子挿脱部と連接し、かつ、前記チャンバの内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部と、前記テーパー部から前記チャンバの底部まで連続する略筒状の空間であり、前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、ガスセンサ用のセンサ素子の検査装置であって、一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であり、それぞれに1つのセンサ素子が挿入される複数のチャンバと、前記複数のチャンバのそれぞれに所定の検査用ガスを供給するガス供給手段と、前記複数のチャンバのそれぞれに対応させて設けられた、前記複数のチャンバのそれぞれにおける前記混合ガスの流量を個別に制御可能な複数の流量調整手段と、前記複数のチャンバのそれぞれに挿入された状態のセンサ素子と電気的に接続されて所定の電気的測定を行う測定手段と、を備え、前記複数のチャンバのそれぞれが、前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、前記素子挿脱部と前記ガス導入部とのそれぞれに連接するテーパー部と、を備え、前記素子挿脱部は、前記開口部から続く略筒状の空間であり、前記ガス導入部は、前記テーパー部から前記チャンバの底部まで連続する略筒状の空間であり、前記素子挿脱部の内径は前記ガス導入部の内径よりも小さく、前記テーパー部においては、前記素子挿脱部の側から前記ガス導入部の側へ向かうほど前記チャンバの長手方向に垂直な断面が大きくなっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の検査装置であって、前記検査用ガスの前記供給口が、前記ガス導入部の内壁面の接線方向に延在するように前記ガス導入部と接続されてなる、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、ガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であるチャンバであって、前記開口部から続く略筒状の空間である素子挿脱部と、前記素子挿脱部と連接し、かつ、内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部と、前記テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間であるガス導入部と、を備えるチャンバを準備するチャンバ準備工程と、前記センサ素子を、前記チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように前記チャンバ内へ挿入する挿入工程と、前記チャンバに前記センサ素子が挿入された状態で、所定のガス供給手段から前記ガス導入部に設けた供給口を通じて前記チャンバに対し検査用ガスを供給するガス供給工程と、前記チャンバに挿入された前記センサ素子の他端部近傍に備わる端子電極と所定の測定手段とを電気的に接続して電気的測定を行う測定工程と、を備え、前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記電気的測定を行う、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、ガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であるチャンバであって、前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、前記素子挿脱部と前記ガス導入部とのそれぞれに連接するテーパー部と、を備え、前記素子挿脱部が、前記開口部から続く略筒状の空間であり、前記ガス導入部が、前記テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間であり、前記素子挿脱部の内径が前記ガス導入部の内径よりも小さく、かつ、前記テーパー部においては、前記素子挿脱部の側から前記ガス導入部の側へ向かうほど長手方向に垂直な断面が大きくなっているチャンバを準備する、チャンバ準備工程と、前記センサ素子を、前記チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように前記チャンバ内へ挿入する挿入工程と、前記チャンバに前記センサ素子が挿入された状態で、所定のガス供給手段から前記ガス導入部に設けた供給口を通じて前記チャンバに対し検査用ガスを供給するガス供給工程と、前記チャンバに挿入された前記センサ素子の他端部近傍に備わる端子電極と所定の測定手段とを電気的に接続して電気的測定を行う測定工程と、を備え、前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記電気的測定を行う、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項4または請求項5に記載の検査方法であって、前記検査用ガスの前記供給口が、前記ガス導入部の内壁面の接線方向に延在するように前記ガス導入部と接続されてなる、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の検査装置を用いてガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、前記複数のチャンバのそれぞれに、前記センサ素子を、当該チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように挿入した状態で、前記ガス供給手段から前記供給口を通じて前記複数のチャンバのそれぞれに対し前記検査用ガスを供給することにより、前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記測定手段による前記電気的測定を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし請求項7の発明によれば、センサ素子が挿入される素子挿脱部の内径が、その奥に設けられたガス導入部の内径よりも小さいので、検査の際には、測定チャンバを解放状態に保ったままでありながら、外部雰囲気の流入を抑制することができる。特に、混合ガスを流出させつつ測定を行った場合には、外部雰囲気の流入をより確実に抑制することができる。
【0017】
特に、請求項1ないし請求項3の発明によれば、複数のチャンバにおける測定を、同じ混合ガス供給条件のもとで同時並行的に行うことができる。
【0018】
また、請求項3および請求項6の発明によれば、検査時には混合ガスがチャンバ内を螺旋状に流れるので、混合ガスによるセンサ素子の温度低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】センサ素子101の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】検査装置1の構成を概略的に示す図である。
【図3】測定チャンバ4の具体的構成を示す図である。
【図4】分岐供給路5と測定チャンバ4との接続関係を示す図である。
【図5】測定チャンバ4にセンサ素子101を挿入する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<センサ素子の概略構成>
図1は、本実施の形態に係る検査装置1(図2参照)における検査対象たるセンサ素子101の構造を模式的に示す断面図である。図1に示すセンサ素子101は、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニアを主成分とするセラミックスを構造材料として構成されたNOxセンサである。
【0021】
係るセンサ素子101は、第一の内部空室102が第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120を通じて外部空間に開放されたガス導入口104と連通し、第二の内部空室103が第三の拡散律速部130を通じて第一の内部空室102と連通する構成を備える、いわゆる直列二室構造型のNOxセンサ素子である。係るセンサ素子101を用い、以下のようなプロセスが実行されることで、被測定ガス中のNOxガス濃度が算出される。
【0022】
まず、第一の内部空室102に導入された被測定ガスは、センサ素子101の外面に設けられた外部ポンプ電極141と、第一の内部空室102に設けられた内部ポンプ電極142と、両電極の間のセラミックス層101aとによって構成される電気化学的ポンプセルである主ポンプセルのポンピング作用(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整されたうえで、第二の内部空室103に導入される。第二の内部空室103においては、同じく電気化学的ポンプセルである、外部ポンプ電極141と、第二の内部空室103に設けられた補助ポンプ電極143と、両電極の間のセラミックス層101bとによって構成される補助ポンプセルのポンピング作用により、被測定ガス中の酸素が汲み出されて、被測定ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。
【0023】
係る低酸素分圧状態の被測定ガス中のNOxは、第二の内部空室103に保護層144に被覆される態様にて設けられた測定電極145において還元ないし分解される。そして、係る還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定電極145と、基準ガス導入口105に通じる多孔質アルミナ層146内に設けられた基準電極147と、両者の間のセラミックス層101cとによって構成される電気化学的ポンプセルである測定ポンプセルによって汲み出される。そして、その際に生じる電流(NOx電流)の電流値と、NOx濃度との間に線型関係があることに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度が求められる。
【0024】
なお、センサ素子101には図示しないヒータ部が設けられており、上述の動作は、ヒータ部に通電することでセンサ素子101を600℃〜700℃程度の温度に加熱しつつ行われる。それゆえ、検査装置1における検査も、係る温度にまでセンサ素子を加熱したうえで行われる。
【0025】
<検査装置の概略構成>
図2は、本実施の形態に係る検査装置1の構成を概略的に示す図である。検査装置1は、ガスセンサの一種であるNOxセンサに用いるセンサ素子101の電気的特性(素子特性)を検査する装置である。素子特性検査は、センサ素子101をNOxセンサの本体部に組み込むに先立ち、上述した各ポンプセルや種々のセンサセルなどがあらかじめ規格として定められた範囲内の特性を有することを確認するために行う、電気的特性の検査である。
【0026】
検査装置1は、概略、検査用のガスである混合ガスを所望の混合比にて供給する混合ガス供給部2と、混合ガス供給部2から供給される混合ガスの雰囲気下でセンサ素子101の測定が行われる測定部3とから構成される。
【0027】
混合ガス供給部2は、窒素(N2)ガスを供給する窒素供給系11と、NO存在比が3%であるNOと窒素ガスとの混合ガスを供給するNO供給系12と、酸素(O2)ガスを供給する酸素供給系13と、水(H2O)を供給する水供給系14とを備えている。それぞれの供給系は、それぞれの物質の供給源(ボンベもしくはタンクなど)として、窒素供給源11aと、NO供給源12aと、酸素供給源13aと、水供給源14aとを備えている。また、それぞれの供給源からの供給路11b、12b、13b、および14bは気化器15に接続されてなる。また、供給路11b、12b、13b、および14bの途中には、各供給路におけるガスの流量を調整するための流量調整手段11c、12c、13c、および14cが設けられてなる。なお、それぞれの流量調整手段は、バルブやマスフローコントローラーなどから構成される。
【0028】
気化器15においては、水供給系140から供給される水が気化され、水蒸気とされて、他の供給路11b、12b、および13bから供給される窒素ガス、NOガス、および酸素ガスと混合される。これにより、混合ガスが生成される。混合ガスは、混合ガス供給路16にて気化器15から測定部3へと供給される。混合ガス供給路16の途中には、適宜、流量調整手段17やリークバルブ18などが設けられてなる。
【0029】
また、混合ガス供給路16の測定部3側には、ヒータ19が設けられている。ヒータ19は、検査に際し測定部3に供給する混合ガスの温度を、100℃から120℃程度に保つ目的で設けられてなる。
【0030】
測定部3は、複数の測定チャンバ4と、混合ガス供給路16から分岐してそれぞれの測定チャンバ4に混合ガスを供給する複数の分岐供給路5と、それぞれの測定チャンバ4においてセンサ素子101の電極端子と接続されるプローブ6と、プローブ6を通じて所定の電気的測定を行える測定手段7とを備える。検査装置1においては、個々のセンサ素子101ごとに個別の測定チャンバ4が用いられる。また、それぞれの分岐供給路5には、各分岐供給路5におけるガスの流量を調整するための流量調整手段8が設けられてなる。これにより、それぞれの分岐供給路5における混合ガスの流量が個別に調整可能となっている。係る構成を有する測定部3においては、それぞれの測定チャンバ4にてセンサ素子101に対する測定を同時並行的に行えるようになっている。すなわち、検査装置1においては、それぞれに個別の測定チャンバ4を用いつつ、一度に複数のセンサ素子101に対する検査を行えるようになっている。なお、測定手段7としては、検査内容に見合った測定が行える測定器等が適宜に用いられればよい。
【0031】
<測定チャンバ>
図3は、測定チャンバ4の具体的構成を示す図である。なお、図3においては、測定チャンバ4の長手方向をx軸方向とする右手系のxyz座標を付している(以降の図においても同様)。図3(a)は、測定チャンバ4の長手方向に沿った断面図である。図3(b)は、測定チャンバ4を+x側からみた図である。
【0032】
測定チャンバ4は、一方端側が外部に開口しているとともに他方端側が有底端部である略筒状体である。測定チャンバ4の内部は、開口部4aから続く円筒形状の空間であり、センサ素子101が挿脱される素子挿脱部41と、該素子挿脱部41と連接し、かつ、内部に向かうほど(−x方向に向かうほど)長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部42と、該テーパー部42から底部4bまで連続する円筒形状の空間であるガス導入部43とを備える。換言すれば、測定チャンバ4は、相対的に小さな内径を有し端部が開放された円筒状の部位である素子挿脱部41と、相対的に大きな内径を有し端部が閉じている円筒状の部位であるガス導入部43とを、テーパー部42で連接した構成を有しているともいえる。
【0033】
ガス導入部43においては、測定チャンバ4の底部4bの近傍(図3(a)の矢印AR1にて示す位置)に、分岐供給路5が接続される。係る分岐供給路5を通じて、混合ガスが、測定チャンバ4の内部へと導入される。図4は、分岐供給路5と測定チャンバ4との接続関係を示す図である。分岐供給路5は、ガス導入部43の内壁面43aの接線方向に延在させる態様にて、ガス導入部43と接続されてなる。図4においては、ガス導入部43のyz断面である円の、接線方向に延在させる態様にて示している。なお、図3(b)に示すように、測定チャンバ4を外側から見た場合、分岐供給路5は、開口部4aを通るzx平面(図3(a)の断面位置に相当する)から−y方向にずらして、接続されてなるようにみえる。
【0034】
また、測定チャンバ4においてはテーパー部42からガス導入部43にかけての外周部分に、ヒータ44が設けられてなる。ヒータ44は、ヒータ19と同様、検査に際し測定チャンバ4内の混合ガスの温度を、100℃から120℃程度に保つ目的で設けられてなる。
【0035】
図5は、測定チャンバ4にセンサ素子101を挿入する様子を示す図である。図5(a)は、測定チャンバ4にセンサ素子101を挿入する前の様子を示しており、図5(b)は、測定チャンバ4にセンサ素子101を挿入した後、プローブ6をセンサ素子101に接触させた状態を示す図である。
【0036】
センサ素子101は、載置台45に載置され図示しない保持手段にて保持された状態で、図5(a)にて矢印AR3に示すように、測定チャンバ4の素子挿脱部41へと挿入される。具体的には、センサ素子101は、その全体が測定チャンバ4内に挿入されるのではなく、図5(b)に示すように、ガス導入口104が設けられた側の先端部E1がテーパー部42に達する程度にまで、測定チャンバ4へと挿入される。すなわち、係る状態において、センサ素子101と素子挿脱部41との間には隙間46が存在していることになる。後述するように、検査装置1においては、係る隙間46を塞ぐことなく、解放状態のまま、センサ素子101の測定を行うようになっている。なお、係るセンサ素子101の挿入は、載置台45がx軸方向に進退自在とされてなることで実現される態様であってもよいし、載置台45は固定されていて、測定チャンバ4がx軸方向に進退自在とされてなることで実現される態様であってもよい。後者の場合、測定部3に備わる複数の測定チャンバ4が同時に進退自在に設けられていてもよい。
【0037】
<素子特性検査>
検査装置1における素子特性の検査は、それぞれの測定チャンバ4において、図5(b)に示す状態にセンサ素子101を配置し、プローブ6をセンサ素子101の基準ガス導入口105が設けられた側の先端部E2の近傍に備わる端子電極と接触させた状態で、混合ガス供給部2から所定の混合比にて混合ガスを流しつつ行われる。
【0038】
なお、本実施の形態においては、図示の簡単のため、図1においては測定電極145とリード線L1にて導通する端子電極151と、基準電極147とリード線L2にて導通する端子電極152のみを例示し、図5(b)においては、端子電極151、152と接触させるべく2つのプローブ6にてセンサ素子101の先端部E2を挟んだ態様を例示している。ただし、実際の端子電極およびプローブ6の個数や接続態様は、これに限られるものではない。センサ素子101の具体的構造および素子特性検査の検査内容に応じて適宜に用意された、電圧印加用、通電用、電流検出用、さらにはヒータ加熱用のプローブ6が、それぞれの電極に対応する図示しない端子電極に接続されればよい。
【0039】
混合ガスとしては、窒素(N2)ガスを混合比(流量比)が最大の第1主成分とし、酸素(O2)ガスを次に混合比の大きな第2主成分として10%〜18%程度含み、微量成分として、水蒸気(H2O)を全体のおよそ数%程度含む混合ガス(第1混合ガス)や、あるいは係る第1混合ガスにさらに数百ppm〜1000ppm程度(例えば500ppm程度)の一酸化窒素(NO)ガスを混合した混合ガス(第2混合ガス)が用いられる。例えば、酸素(O2)ガスを18%、水蒸気(H2O)を3%、そして残余を窒素(N2)ガスとするのが第1混合ガスの好適な一例であり、酸素(O2)ガスを18%、水蒸気(H2O)を3%、一酸化窒素(NO)ガスを500ppm、そして残余を窒素(N2)ガスとするのが第2混合ガスの好適な一例である。係る第2混合ガスは、センサ素子101を備えるNOxセンサが検出対象とする内燃機関からの排ガス成分に類似している。
【0040】
本実施の形態に係る検査装置1においては、上述のように、分岐供給路5が、ガス導入部43の内壁面43aの接線方向に延在させる態様にて設けられている。よって、図4において矢印AR2にて模式的に示したように、分岐供給路5から供給される混合ガスは、概略、ガス導入部43において外側から内側へと螺旋状に流れることになる(図4においては図示の都合上、yz面内における回転のみ図示しているが、実際には、混合ガスは+x方向つまりは図面手前方向に向かって流れる)。これにより、分岐供給路5から測定チャンバ4内へ導入される混合ガスが、センサ素子101に対して直接に吹き付けることがないので、検査時におけるセンサ素子101の温度低下が抑制される。これにより、素子特性検査の信頼性が高まる。
【0041】
また、検査装置1においては、検査中も、開口部4aとセンサ素子101との隙間46は解放状態のままに保たれる。それゆえ、隙間46から測定チャンバ4内への外部雰囲気の流入が懸念されるが、ガス導入部43の内径に比べて素子挿脱部41の内径は小さいので、隙間46を通じた外部雰囲気の流入は抑制される。しかも、検査中は、隙間46から混合ガスが絶えず外部に流出するので、係る隙間46からの外部雰囲気の流入は好適に阻害されてなる。すなわち、本実施の形態に係る検査装置1においては、測定チャンバ4を開放状態に保ったまま好適な検査が行えるようになっている。これにより、密閉した測定チャンバ内にセンサ素子を配置するといった、手間やコストをかけることなく、素子特性検査を行うことが出来る。すなわち、検査の効率化が実現される。
【0042】
加えて、本実施の形態に係る検査装置1においては、上述のように、それぞれの測定チャンバ4に対応させて流量調整手段8が設けられているので、それぞれの測定チャンバ4における混合ガスの供給状態を個別に制御することができる。これにより、複数のセンサ素子101について同一の条件で同時並行的に素子特性検査を実行することが出来る。
【0043】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、センサ素子の素子特性検査を行う検査装置が、複数の測定チャンバを備え、検査に際しては、センサ素子個体ごとに個別の測定チャンバが用いられるように構成される。かつ、それぞれの測定チャンバに対応させて混合ガスの流量調整手段を備えることで、複数のセンサ素子について、同一の条件で同時並行的に素子特性検査を行うことが出来るように構成される。そして、混合ガスを外周側から螺旋状に流れるように測定チャンバに混合ガスの供給路を接続することで、検査の際に供給された混合ガスによってセンサ素子の温度が低下することが好適に抑制される。また、測定チャンバにおいて、センサ素子が挿入される素子挿脱部の内径を、その奥に設けられたガス導入部の内径よりも小さくすることで、検査の際には、混合ガスは外部に流出するが外部雰囲気の流入が阻害された状態が実現される。これにより、測定チャンバを解放状態に保ったままでの素子特性検査が実現される。
【0044】
なお、ここまでの説明はNOxセンサ用のセンサ素子の素子特性を検査する検査装置を主たる対象として行ってきたが、本実施の形態に係る検査装置の構成は、ガス雰囲気中での検査を必要とする他のセンサ素子についても同様に適用可能であることは言うまでもない。その場合、センサ素子の種類に応じて混合ガスの成分を適宜に選択し、センサ素子の形状・構造に応じて、測定チャンバの形状やプローブとの接触態様を適宜に設定するなどの対応をとることで、本実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 検査装置
2 混合ガス供給部
3 測定部
4 測定チャンバ
4a (測定チャンバの)開口部
4b (測定チャンバの)底部
5 分岐供給路
6 プローブ
7 測定手段
8 流量調整手段
15 気化器
16 混合ガス供給路
17 流量調整手段
19 ヒータ
41 素子挿脱部
42 テーパー部
43 ガス導入部
43a (ガス導入部の)内壁面
44 ヒータ
45 載置台
46 (素子挿脱部とセンサ素子の)隙間
101 センサ素子
104 ガス導入口
105 基準ガス導入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ用のセンサ素子の検査装置であって、
一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であり、それぞれに1つのセンサ素子が挿入される複数のチャンバと、
前記複数のチャンバのそれぞれに所定の検査用ガスを供給するガス供給手段と、
前記複数のチャンバのそれぞれに対応させて設けられた、前記複数のチャンバのそれぞれにおける前記混合ガスの流量を個別に制御可能な複数の流量調整手段と、
前記複数のチャンバのそれぞれに挿入された状態のセンサ素子と電気的に接続されて所定の電気的測定を行う測定手段と、
を備え、
前記複数のチャンバのそれぞれが、
前記開口部から続く略筒状の空間であり、前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、
前記素子挿脱部と連接し、かつ、前記チャンバの内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部と、
前記テーパー部から前記チャンバの底部まで連続する略筒状の空間であり、前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
ガスセンサ用のセンサ素子の検査装置であって、
一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であり、それぞれに1つのセンサ素子が挿入される複数のチャンバと、
前記複数のチャンバのそれぞれに所定の検査用ガスを供給するガス供給手段と、
前記複数のチャンバのそれぞれに対応させて設けられた、前記複数のチャンバのそれぞれにおける前記混合ガスの流量を個別に制御可能な複数の流量調整手段と、
前記複数のチャンバのそれぞれに挿入された状態のセンサ素子と電気的に接続されて所定の電気的測定を行う測定手段と、
を備え、
前記複数のチャンバのそれぞれが、
前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、
前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、
前記素子挿脱部と前記ガス導入部とのそれぞれに連接するテーパー部と、
を備え、
前記素子挿脱部は、前記開口部から続く略筒状の空間であり、
前記ガス導入部は、前記テーパー部から前記チャンバの底部まで連続する略筒状の空間であり、
前記素子挿脱部の内径は前記ガス導入部の内径よりも小さく、
前記テーパー部においては、前記素子挿脱部の側から前記ガス導入部の側へ向かうほど前記チャンバの長手方向に垂直な断面が大きくなっている、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検査装置であって、
前記検査用ガスの前記供給口が、前記ガス導入部の内壁面の接線方向に延在するように前記ガス導入部と接続されてなる、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項4】
ガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、
一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であるチャンバであって、
前記開口部から続く略筒状の空間である素子挿脱部と、
前記素子挿脱部と連接し、かつ、内部に向かうほど長手方向に垂直な断面が大きい断面視テーパー状の空間であるテーパー部と、
前記テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間であるガス導入部と、
を備えるチャンバを準備するチャンバ準備工程と、
前記センサ素子を、前記チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように前記チャンバ内へ挿入する挿入工程と、
前記チャンバに前記センサ素子が挿入された状態で、所定のガス供給手段から前記ガス導入部に設けた供給口を通じて前記チャンバに対し検査用ガスを供給するガス供給工程と、
前記チャンバに挿入された前記センサ素子の他端部近傍に備わる端子電極と所定の測定手段とを電気的に接続して電気的測定を行う測定工程と、
を備え、
前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記電気的測定を行う、
ことを特徴とするセンサ素子の電気的特性検査方法。
【請求項5】
ガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、
一方端側が外部に開口した開口部であるとともに他方端側が有底端部である略筒状体であるチャンバであって、
前記センサ素子が挿脱される素子挿脱部と、
前記ガス供給手段からの前記検査用ガスの供給口が接続されるガス導入部と、
前記素子挿脱部と前記ガス導入部とのそれぞれに連接するテーパー部と、
を備え、
前記素子挿脱部が、前記開口部から続く略筒状の空間であり、
前記ガス導入部が、前記テーパー部から底部まで連続する略筒状の空間であり、
前記素子挿脱部の内径が前記ガス導入部の内径よりも小さく、かつ、前記テーパー部においては、前記素子挿脱部の側から前記ガス導入部の側へ向かうほど長手方向に垂直な断面が大きくなっているチャンバを準備する、チャンバ準備工程と、
前記センサ素子を、前記チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように前記チャンバ内へ挿入する挿入工程と、
前記チャンバに前記センサ素子が挿入された状態で、所定のガス供給手段から前記ガス導入部に設けた供給口を通じて前記チャンバに対し検査用ガスを供給するガス供給工程と、
前記チャンバに挿入された前記センサ素子の他端部近傍に備わる端子電極と所定の測定手段とを電気的に接続して電気的測定を行う測定工程と、
を備え、
前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記電気的測定を行う、
ことを特徴とするセンサ素子の電気的特性検査方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の検査方法であって、
前記検査用ガスの前記供給口が、前記ガス導入部の内壁面の接線方向に延在するように前記ガス導入部と接続されてなる、
ことを特徴とするセンサ素子の電気的特性検査方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の検査装置を用いてガスセンサ用のセンサ素子の電気的特性を検査する方法であって、
前記複数のチャンバのそれぞれに、前記センサ素子を、当該チャンバとの間に隙間を設けつつ先端が前記テーパー部に達するように挿入した状態で、前記ガス供給手段から前記供給口を通じて前記複数のチャンバのそれぞれに対し前記検査用ガスを供給することにより、前記検査用ガスを前記隙間から流出させつつ前記測定手段による前記電気的測定を行う、
ことを特徴とするセンサ素子の電気的特性検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145234(P2011−145234A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7732(P2010−7732)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(509302663)エヌジーケイ・セラミックデバイス株式会社 (20)
【Fターム(参考)】