説明

センサ素子及び表示装置

【課題】薄型化を実現でき、生産性の向上を図ることができるセンサ素子及びこれを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るタッチパネル10(センサ素子)は、入力操作子の操作位置を静電的に検出する第1及び第2の導体パターンが両面に形成された透明基材11を有する。上記タッチパネル10によれば、共通の透明基材11で第1の導体パターン21a及び第2の導体パターン22aを支持する構造を有するため、導体パターンが各々形成された2枚の基材を貼り合わせる構造と比較して、素子厚みを低減することができる。これにより、タッチパネルの薄型化を実現することができるとともに、2枚の基材を貼り合わせる工程が不要になるため、生産工数を削減し、生産性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式のタッチパネルとして用いることが可能なセンサ素子及びこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、例えば表示パネルに積層されることで、情報処理端末の入力デバイスとして用いられている。静電容量方式タッチパネルとして、例えば特許文献1には、縦方向に形成された透明導電膜パターンを有する上部透明フィルムと、横方向に形成された透明導電膜パターンを有する下部透明フィルムと、両透明フィルムを接着する透明粘着材とを有するタッチパネルが記載されている。上記タッチパネルは、各透明導電膜パターンを外部のコントローラへ電気的に接続するフレキシブル配線基板をさらに有しており、当該フレキシブル配線基板は、両透明フィルムの間に挟み込まれるようにして各透明導電膜パターンに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−152640号公報(段落[0026]、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、情報処理端末の薄型化・軽量化が進められており、これに伴って、タッチパネルの薄型化が求められている。しかしながら、従来のタッチパネルは上述のように透明導電膜パターンが形成された2枚の透明フィルムを相互に貼り合わせる構成であるため、薄型化が困難であった。また、透明フィルムの貼り合わせ作業には高精度なアライメント精度が要求されるため、生産性の向上が図れなかった。
【0005】
一方、個々の透明フィルムを薄くすることでタッチパネルの薄型化を図ることも考えられるが、透明フィルムは薄くなるほど取り扱い性が低下するため、貼り合わせ時に所期のアライメント精度を確保することが困難となる。さらに、両透明フィルムの間に外部接続用の配線基板を挟み込む構造は、タッチパネル表面の局所的な湾曲あるいは変形を招き、これが原因で表示画像の視認性を低下させるおそれがある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、薄型化を実現でき、生産性の向上を図ることができるセンサ素子及びこれを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るセンサ素子は、可撓性の透明基材と、第1の導体パターンと、第2の導体パターンとを具備する。
上記透明基材は、第1の面と、上記第1の面に対向する第2の面とを有する。
上記第1の導体パターンは、第1の方向における入力操作子の操作位置を静電的に検出するためのものであり、上記第1の面に形成される。
上記第2の導体パターンは、上記第1の方向と異なる第2の方向における上記入力操作子の操作位置を静電的に検出するためのものであり、上記第2の面に形成される。
【0008】
上記センサ素子は、共通の透明基材で第1の導体パターン及び第2の導体パターンを支持する構造を有するため、導体パターンが各々形成された2枚の基材を貼り合わせる構造と比較して、素子厚みを低減することができる。これにより、センサ素子の薄型化を実現することができる。また、上記センサ素子によれば、2枚の基材を貼り合わせる工程が不要になるため、生産工数を削減し、生産性の向上を図ることができる。さらに、上記センサ素子によれば、各透明導電パターンを外部と電気的に接続するための配線基板を基材間に挟み込む構造を廃止できるため、上記配線基板の挟み込みによる透明基材の局所的な湾曲あるいは変形を防止することができる。
【0009】
上記第1の導体パターンは、上記第2の方向に延在し、上記第1の方向に配列された複数の第1の透明電極部を有してもよい。この場合、上記第2の導体パターンは、上記第1の方向に延在し、上記第2の方向に配列された複数の第2の透明電極部を有する。
これにより、入力操作子の操作位置における当該入力操作子と第1及び第2の透明電極部との間の静電容量の変化、あるいは、入力操作子の操作位置における第1及び第2の透明電極部間の静電容量の変化に基づいた、操作位置の検出が可能となる。
【0010】
上記センサ素子は、第1の配線基板と、第2の配線基板とをさらに具備してもよい。
上記第1の配線基板は、上記第1の面に取り付けられ、上記第1の導体パターンと電気的に接続される第1の端子群を有する。
上記第2の配線基板は、上記第2の面に取り付けられ、上記第2の導体パターンと電気的に接続される第2の端子群を有する。
【0011】
これにより、透明基材の第1の面及び第2の面に局所的な湾曲あるいは変形をもたらすことなく、配線基板を接続することができる。第1及び第2の配線基板は、透明基材に、第1の面(第2の面)と垂直な方向から見て相互に重なるように取り付けられてもよいし、相互に重ならないように取り付けられてもよい。
【0012】
上記センサ装置は、導体部と、層間接続部と、配線基板とをさらに具備してもよい。
上記導体部は、上記第1の面に形成される。上記層間接続部は、上記基材を貫通し、上記導体部と上記第2の導体パターンとの間を接続する。上記配線基板は、上記第1の面に取り付けられ、配線基板で形成される上記第1の導体パターンと電気的に接続される第1の端子群と、上記導体部と電気的に接続される第2の端子群とを有する。
【0013】
この構成により、第1及び第2の導体パターンを共通の配線基板に接続することができるので、部品点数の削減と素子厚みの更なる低減を図ることができる。また、上記構成においても、透明基材の第1の面及び第2の面に局所的な湾曲あるいは変形をもたらすことなく、配線基板を接続することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る表示装置は、表示パネルと、センサ素子とを具備する。
上記表示パネルは、画像を表示する表示面を有する。
上記センサ素子は、可撓性の透明基材と、第1の導体パターンと、第2の導体パターンとを含む。上記透明基材は、第1の面と、上記第1の面に対向する第2の面とを有する。上記第1の導体パターンは、第1の方向における入力操作子の操作位置を静電的に検出するためのものであり、上記第1の面に形成される。上記第2の導体パターンは、上記第1の方向と異なる第2の方向における上記入力操作子の操作位置を静電的に検出するためのものであり、上記第2の面に形成される。上記センサ素子は、上記第2の面と上記表示面とが相互に対向するように上記表示パネルに積層される。
【0015】
上記表示装置によれば、センサ素子の厚みを低減できるため、当該表示装置の薄型化を図ることができる。また、センサ素子を外部と電気的に接続するための配線基板を基材間に挟み込む構造を廃止できるため、上記配線基板の挟み込みによるセンサ素子の局所的な湾曲あるいは変形が防止される。これにより、表示画像の視認性の低下を回避することができる。
【0016】
上記表示装置は、透明基板をさらに具備してもよい。上記透明基板は、上記センサ素子の上記第1の面に積層され、上記入力操作子により入力操作される操作面を形成する。
上記透明基板により、センサ素子の保護を図ることができるとともに、センサ素子の平面度を維持して操作性の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサ素子及びこれを備えた表示装置の薄型化を実現することができる。また、センサ素子の生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るタッチパネルを備えた表示装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図2】上記タッチパネルの構成を示す分解斜視図である。
【図3】比較例に係るタッチパネルを備えた表示装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るタッチパネルを備えた表示装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るタッチパネルの層構造を示す部分断面図である。
【図6】図5に示す光学調整層を有する2種のタッチパネルサンプルの構成を比較するための模式図である。
【図7】図6に示した2種のサンプルの透過率特性を示す一実験結果である。
【図8】図5に示す光学調整層を有する他の2種のタッチパネルサンプルの構成を比較する模式図である。
【図9】図8に示した2種のサンプルの透過率特性を示す一実験結果である。
【図10】図1に示すタッチパネルの変形例を模式的に示す部分断面図である。
【図11】図1に示すタッチパネルの変形例を模式的に示す部分断面図である。
【図12】図1に示すタッチパネルの変形例を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
[表示装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概略断面図である。本実施形態の表示装置1は、表示パネル50と、表示パネル50の上に積層されたタッチパネル10と、タッチパネル10の上に積層されたトッププレート60と、制御ユニット70と、これらを収容する図示しない筐体等を備える。図1において、X軸方向及びY軸方向は相互に直交する水平方向を示し、Z軸方向はX軸及びY軸方向にそれぞれ直交する、表示装置1の厚み方向を示している。
【0020】
本実施形態の表示装置1は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話等の携帯情報端末、あるいは携帯型ゲーム機などの電子機器の表示部を構成する。また、本実施形態の表示装置1は、据付型のパーソナルコンピュータ、金融機関の自動現金支払機、交通機関の自動発券機等の電子機器の表示部に適用されてもよい。
【0021】
[表示パネル]
表示パネル50は、液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等で構成された表示面50aを有する。表示パネル50は、制御ユニット70によって画像の表示が制御される。
【0022】
[タッチパネル]
図2は、タッチパネル10の構成を示す分解斜視図である。タッチパネル10は、トッププレート60の上面に入力操作される入力操作子の操作位置を静電的に検出するためのセンサ素子を構成する。すなわち、タッチパネル10は、透明基材11と、透明基材11の表面11a(第1の面)に形成された第1の透明電極部21と、透明基材11の裏面11b(第2の面)に形成された第2の透明電極部22とを有する。
【0023】
透明基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等の光学的に透明で可撓性(フレキシブル性)及び電気絶縁性を有する単一層のプラスチックフィルムで形成される。透明基材は、無色透明である場合に限られず、適宜の色に着色されてもよい。
【0024】
透明基材11の厚みは特に限定されないが、タッチパネル10の薄型化を図る観点からでは100μm以下とすることができ、例えば50μm以下とされる。本実施形態では、透明基材11として、厚み25μmのPETフィルムが用いられる。
【0025】
第1及び第2の透明電極部21、22は、ITO(インジウム錫酸化物)で形成されているが、これ以外にも、SnO、ZnO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)等の他の透明導電酸化物材料で形成されてもよい。透明電極部21、22の厚みは特に限定されず、例えば40nm以下である。第1及び第2の透明電極部21、22は、あらかじめ透明基材11の両面に形成されたITO膜をエッチング加工、レーザ加工等によってそれぞれ所定形状にパターニングすることで形成される。なおこれ以外にも、透明基材11上に、導電性のペースト材料を例えばスクリーン印刷法等を用いて形成することによって、上記透明電極部を形成してもよい。
【0026】
第1の透明電極部21は、Y軸方向に延在する短冊状の形状を有しており、透明基材11の表面11aにX軸方向に沿って所定ピッチで複数本形成されている。第2の透明電極部22は、X軸方向に延在する短冊状の形状を有しており、透明基材11の裏面11bにY軸方向に沿って所定ピッチで複数本形成されている。電極部21、22の形状は短冊形状に限られず、例えば、ひし形形状が延在方向に連続して形成されたものでもよい。これら第1及び第2の透明電極部21、22は、透明基材11のXY平面上の所定領域内に形成される。上記所定領域は、例えば、表示パネル50による画像の表示領域を含む。
【0027】
次に、透明基材11の表面11aには、第1の透明電極部21と電気的に接続される第1の配線群21aが形成されている。第1の配線群21aは、第1の透明電極部21の各々から透明基材11の一周縁部11cに向けて引き回され、各配線の端部が周縁部11cに沿って表面11a上に整列して配置されている。同様に、透明基材11の裏面11bには、第2の透明電極部22と電気的に接続される第2の配線群22aが形成されている。第2の配線群22aは、第2の透明電極部22の各々から透明基材11の一周縁部11cに向けて引き回され、各配線の端部が周縁部11cに沿って裏面11b上に整列して配置されている。第1及び第2の配線群21a、22aは、例えば、Ag(銀)ペースト等の導電性ペーストの印刷体で形成されている。
【0028】
以上のようにして、透明基材11の表面11a及び裏面11bにそれぞれ所定形状の導体パターンが構成される。ここで、第1の透明電極部21及び第1の配線群21aは「第1の導体パターン」に相当し、第2の透明電極部22及び第2の配線群22aは「第2の導体パターン」に相当する。
【0029】
タッチパネル10は、上述の第1及び第2の導体パターンをタッチパネル10の外部と電気的に接続するための第1及び第2の配線基板31、32(配線部材)をさらに有する。本実施形態では、タッチパネル10は、第1及び第2の配線基板31、32を介して、表示装置1の制御ユニット70に接続されている。
【0030】
第1及び第2の配線基板31、32は、それぞれフレキシブル配線基板で形成されている。第1の配線基板31は、第1の配線群21aの各端部と電気的に接続される第1の端子群31aを有し、透明基材11の表面11a側の周縁部11cに接続されている。第2の配線基板32は、第2の配線群22aの各端部と電気的に接続される第2の端子群32aを有し、透明基材11の裏面11b側の周縁部11cに接続されている。本実施形態では、第2の配線基板31は2枚の配線基板で構成されているが、これに限られず、第1の配線基板31と同様に、1枚の配線基板で構成されてもよい。
【0031】
透明基材11と配線基板31、32との接続形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム(ACF)を介して各々が接続される。また、透明基材11の表裏面11a、11bに対する第1及び第2の配線基板31、32の接続は同時に行われてもよいし、個々に独立して行われてもよい。さらに、第1及び第2の配線基板31、32は、透明基材11に、厚み方向(Z軸方向)から見て相互に重なるように取り付けられてもよいし、相互に重ならないように取り付けられてもよい。
【0032】
以上のように構成されるタッチパネル10は、トッププレート60と、表示パネル50との間に配置される。タッチパネル10は、透明基材11の裏面11bが表示面50aと対向するように、透明粘着材42を介して表示パネル50に積層される。また、トッププレート60は、透明粘着材41を介して、タッチパネル10(透明基材11)の表面11aに積層されている。
【0033】
透明粘着材41、42は、光学的に透明な接着剤(OCA:Optically Clear Adhesive)で形成される。透明粘着材41、42としては、典型的には、粘着シートが用いられる。これ以外にも、透明粘着材41、42として紫外線硬化樹脂等が用いられてもよい。透明粘着材41、42の厚みは特に限定されないが、本実施形態では、100μm以下、例えば50μmとされる。特に本実施形態では、透明粘着材41の厚みは、第1の配線基板31の厚みよりも大きく形成される。これにより、トッププレート60と第1の配線基板31との間の干渉を回避することができる。
【0034】
[トッププレート]
トッププレート60(透明基板)は、タッチパネル10を被覆し、その表面は、入力操作子による入力操作を受ける平坦な入力操作面60aを形成する。上記入力操作子には、ユーザの手指のほか、各種スタイラスが含まれる。トッププレート60は、タッチパネル10を保護する機能のほか、タッチパネル10の平面度を維持して入力操作性の低下を回避する機能を有する。
【0035】
トッププレート60は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル)(PMMA)等の光学的に透明な可撓性(フレキシブル性)を有するプラスチックフィルム、プラスチックシートあるいはプラスチックプレートで形成される。トッププレートは、無色透明である場合に限られず、適宜の色に着色されてもよい。また、入力操作面60aには、潤滑層やハードコート層の形成など、入力操作子の操作性を高めるための処理が施されてもよい。
【0036】
トッププレート60の厚みは特に限定されないが、タッチパネル10の平面度を維持できる適度な剛性が得られる厚みで形成され、例えば100μm以上1.5mm以下とされる。本実施形態では、トッププレート60は、厚み1mmのポリカーボネート樹脂で形成される。
【0037】
[制御ユニット]
制御ユニット70は、表示パネル50に対する画像表示制御と、タッチパネル10に対する操作子の検出制御とを行う。制御ユニット70は、当該表示装置1を備えた電子機器の制御部の一部として構成されてもよい。
【0038】
制御ユニット70は、表示パネル50に画像信号を供給して表示面50aに画像を表示させる。例えば、制御ユニット70は、タッチパネル10との関連において、表示パネル50に対してユーザへタッチパネル10への入力操作を促す画像信号、及び、タッチパネル10への入力操作に基づいて生成される画像信号を供給する。
【0039】
制御ユニット70による入力操作子の検出方法は、特に限定されない。すなわち、入力操作子と第1及び第2の透明電極部21、22との間の静電容量の変化に基づいて入力操作子の操作位置が検出されてもよいし、第1及び第2の透明電極部21、22間の静電容量の変化に基づいて入力操作子の操作位置が検出されてもよい。前者の場合、第1の透明電極部21及び第2の透明電極部22に対して入力信号(パルス信号など)を供給するための信号発生部が必要とされ、後者の場合、第1の透明電極部21または第2の透明電極部22に対して入力信号(パルス信号など)を供給するための信号発生部が必要とされる。上記信号発生部は、制御ユニット70に含まれてもよいし、制御ユニット70とは別に設けられてもよい。
【0040】
[表示装置の作用]
以上のように構成される本実施形態の表示装置1において、タッチパネル10は、共通の透明基材11で第1の透明電極部21及び第2の透明電極部22を支持する構造を有するため、透明電極部が各々形成された2枚の基材を貼り合わせる従来の構造と比較して、タッチパネルの厚みを低減することができる。これにより、タッチパネル10の薄型化を実現することができる。
【0041】
したがって、本実施形態の表示装置1によれば、タッチパネル10を薄型化することで、表示装置1全体の薄型化を図ることができる。これにより、表示装置1を備える電子機器の薄型化、軽量化も図ることが可能となる。
【0042】
比較例として、上述した従来の構造を有するタッチパネル及びこれを備えた表示装置の構成例を図3に示す。図3において図1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図3に示す表示装置100は、タッチパネル110を有する。タッチパネル110は、第1の導体パターン121aが形成された上側透明基材111と、第2の導体パターン122aが形成された下側透明基材112と、両透明基材111、112を相互に接合する透明粘着材113とを有する。このような構造のタッチパネル110は、上下2枚の透明基材111、112とこれらを貼り合わせる透明粘着材113とが必要であるため厚みの低減を図ることは困難であった。
【0043】
本実施形態のタッチパネル10によれば、従来のタッチパネル110と比較して、透明基材1枚分の厚み及び透明粘着材113の厚みを削減できるので、効果的な薄型化を実現することができるとともに、層数の減少により透過率等の光学特性の向上を図ることができる。また、基材の貼り合わせ工程を省略できるので、生産工数の削減により生産性の向上を図ることができる。さらに、貼り合わせ工程を省略できることで、2つの導体パターン間のアライメント精度を確保でき、所望の素子特性を有するタッチパネル10を安定して製造することができる。
【0044】
一方、従来のタッチパネル110は、2枚の透明基材111、112の間に配線基板32を挟み込む構造を有するため、透明粘着材113及び配線基板32の厚みのバラツキによって透明基材111、112に局所的な湾曲あるいは変形をもたらし、表示画像の視認性を低下させるおそれがあった。また、上側透明基材111の周縁部に形成した切欠きを介して配線基板32を下側透明基材112に取り付けることで上述の問題を回避することも可能である。しかしながら、当該切欠きの形成のための工程が別途必要となり、更には、切欠き形成部位にクラックが生じ易くなることでタッチパネルの耐久性の低下を招くおそれがある。
【0045】
これに対して本実施形態のタッチパネル10においては、配線基板31、32は透明基材11の表面11a及び裏面11bにそれぞれ取り付けられる。これにより、配線基板を透明基材の間に挟み込む構造を廃止できるため、上述の問題を根本的に解消することが可能となる。また、本実施形態のタッチパネル10においては、配線基板31、32は、各々の端子群31a、31bを相互に対向させるようにして透明基材11に取り付けられている。したがって、端子群31a、31bの形成面とは反対側の配線基板31、32の表面に導体層からなるシールド層を設けることで、電磁ノイズの混入を防止でき、検出精度の優れたタッチパネルを構成することが可能となる。
【0046】
[タッチパネルの製造方法]
次に、本実施形態のタッチパネル10の製造方法について説明する。本実施形態のタッチパネル10の製造方法は、透明基材11の表面11aに第1の導体パターン(第1の透明電極部21、第1の配線群21a)を形成する工程と、透明基材11の裏面11bに第2の導体パターン(第2の透明電極部22、第2の配線群22a)を形成する工程とを有する。
【0047】
上記各導体パターンの形成に先立ち、透明基材11のアニール処理が実施される。透明基材11のアニール処理は、ロール状態に巻回された帯状の基材をアニール炉に連続的に送り込む方法が挙げられるが、それ以外にも、帯状の基材を所定サイズに裁断した後、個々の基材を炉内に装填する方法などがある。アニール処理は、透明基材11の残留応力の除去を主な目的として実施される。このとき、導体膜との密着性を高めるための表面処理を基材11に対して施してもよい。
【0048】
次に、透明基材11の表面に、第1の透明電極部21と第1の配線群21aとを含む第1の導体パターンを形成する。第1の透明電極部21は、透明基材11の表面にITO膜を成膜した後、所定形状にパターニング(エッチング)するようにしてもよいし、表面に形成したレジストパターンをマスクとしてITO膜を成膜するようにしてもよい。第1の配線群21aの形成には、スクリーン印刷法等の各種印刷法を用いることができる。第1の導体パターンの形成時、透明基材11の裏面11bに保護シートを貼り付けることで、当該裏面11bの保護が図られる。
【0049】
第1の導体パターンの形成後、透明基材11の表面11aに粘着シートが貼り合わされる。この粘着シートは、図1を参照して説明した透明粘着材41に相当し、後工程において、その表面に積層されたセパレータ(保護フィルム)を剥離することで、トッププレート60に積層される。
【0050】
次いで、透明基材11の裏面11bから上記保護シートを剥離し、当該裏面11bに第2の透明電極部22と第2の配線群22aとを含む第2の導体パターンを形成する。第2の導体パターンは、上述した第1の導体パターンと同様な方法で形成される。第2の導体パターンの形成後、透明基材11の裏面11bに粘着シートが貼り合わされる。この粘着シートは、図1を参照して説明した透明粘着材42に相当し、後工程において、その表面に積層されたセパレータ(保護フィルム)を剥離することで、表示パネル50の表示面50aに積層される。
【0051】
上述のように本実施形態によれば、従来のタッチパネル110の製造において必須とされていた透明基材同士の貼り合わせ工程が不要であるため、タッチパネルの生産性の向上を図ることができる。
【0052】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の概略断面図である。図4において、図1と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の表示装置2は、タッチパネルの構成が上述の第1の実施形態と異なる。本実施形態のタッチパネル20は、透明基材11の周縁部11c側に、複数の導体部22bと、層間接続部22cとを有する。導体部22bは、透明基材11の表面11aに各々形成されている。層間接続部22cは、透明基材11を貫通し、第2の配線群22aとこれらに対応する導体部22bとの間を各々電気的に接続する。配線基板33は、第1の配線群21aと電気的に接続される端子群と、導体部22bと電気的に接続される端子群とを同一平面上に有している。
【0054】
本実施形態のタッチパネル20によれば、1枚の配線基板33によって透明基材11の両面の導体パターンを外部へ引き出すことができる。これにより、上述の第1の実施形態と比較して、配線基板を含めたタッチパネル全体の厚みを低減できる。また、このタッチパネル20を備えた表示装置2、及び、表示装置2を備えた電子機器の更なる薄型化を図ることが可能となる。また、1枚の配線基板33でタッチパネル20を構成できるため、配線基板の取り付け工程における作業数を軽減でき、生産性の向上と製造コストの削減を図ることができる。
【0055】
<第3の実施形態>
次に、図5を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。図5は、本実施形態に係るタッチパネルの概略断面図である。本実施形態のタッチパネル30は、透明基材11と第1の透明電極部21との間に形成された第1の光学調整層210と、透明基材11と第2の透明電極層22との間に形成された第2の光学調整層220とを有する。
【0056】
第1及び第2の光学調整層210、220は、高屈折率膜211、221と低屈折率膜212、222との積層構造を有する。高屈折率膜211、221及び低屈折率膜212、222はそれぞれ光学的に透明な金属酸化物で形成される。本実施形態では、高屈折率膜211、221として厚みが10nmの酸化ニオブ(Nb)膜(相対屈折率2.2〜2.4)が用いられ、低屈折率膜212、222として厚みが75nmの酸化シリコン(SiO)膜(相対屈折率1.4〜1.6)が用いられるが、材料及び積層数は上記の例に限られない。高屈折率膜211、221は透明基材11側にそれぞれ配置され、低屈折率膜212、222は透明電極部21、22側にそれぞれ配置される。
【0057】
なお、透明基材11と光学調整層210、220との間に、透明樹脂からなるハードコート層が形成されてもよい。ハードコート層は、透明基材11と光学調整層210、220との密着性の向上、透明基材11の平坦性の維持等を目的として形成される。ハードコート層は、透明基材11の両面に形成されてもよいし、いずれか一方の面にのみ形成されてもよい。
【0058】
光学調整層210、220は、可視光帯域におけるタッチパネルの透過率を向上させる機能を有する。これにより、トッププレート60から視認される表示画像の画質の向上を図ることができる。特に本実施形態によれば、一枚の透明基材11の両面に透明電極部を形成することでタッチパネルを構成しているため、2枚の透明基材を貼り合わせて構成される従来のタッチパネル(図3)に比べて、透過率の更なる向上を図ることができる。
【0059】
本発明者らは、図6(A)に示すように2枚の透明基材を貼り合わせるタイプ(図3)のタッチパネル(サンプル1)の透過率特性と、図6(B)に示すように1枚の透明基材の両面に透明電極部を形成するタイプ(図1)のタッチパネル(サンプル2)との透過率特性とをそれぞれ比較した。各層の屈折率条件は、図示のとおりとした。その結果、図7に示すように、サンプル2は、サンプル1よりも、可視光帯域の全域にわたって高い透過率特性を有することが確認された。
【0060】
本発明者らは、サンプル3及びサンプル4として、サンプル1とサンプル2の各々の最上層及び最下層から透明粘着材41、42を取り外した構成で、上述と同様の透過率特性を評価した。サンプル3及びサンプル4の層構造及び透過率特性を図8及び図9にそれぞれ示す。図9に示すように、サンプル4は、サンプル3よりも、可視光帯域の全域にわたって高い透過率特性を有することが確認された。また、図7の測定結果と比較して透過率が低いのは、ITO層21、22と空気層(屈折率1)との間の光の反射ロスに依るものと考えられる。したがって、透明粘着材41、42として、タッチパネルとこれに積層される層(表示パネル50、トッププレート60など)との間の屈折率差を緩和できる大きさの屈折率を有するものが用いられることで、透過率特性の高いタッチパネルを提供することが可能となる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0062】
例えば図10に示すように、タッチパネル10の配線基板31、32と表示パネル50とが、厚み方向から見て相互に重なるように、表示パネル50を構成してもよい。これにより、表示パネル50の画像表示領域を大きく形成することができる。
【0063】
また、図11に示すように、タッチパネル10とトッププレート60との間に形成される透明粘着材41の厚みを、タッチパネル10の透明基材表面11aに取り付けられる配線基板31の厚みよりも小さくしてもよい。この場合、トッププレート60と配線基板31との間の干渉を回避するために、図示するように、トッププレート60の裏面に凹所60bを形成してもよい。
【0064】
さらに、以上の実施形態では、タッチパネルの透明基材11を単一層からなるプラスチックフィルムで形成したが、これに限られない。例えば図12に示すタッチパネル40は、第1の透明基材411と第2の透明基材412とを透明粘着材413で接合した積層構造の透明基材410を有する。この場合、第1の導体パターン21aは第1の透明基材411の表面に形成され、第2の導体パターン22aは第2の透明基材412の裏面に形成される。これら導体パターン21a、22aは、透明基材411の積層後に形成される。これにより、基材の貼り合わせ時において、導体パターン21a、21b間のアライメント精度の確保が不要となる。その結果、両透明基材411、412として、貼り合わせ時のハンドリング性が確保される程度に薄いフィルムを用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1、2…表示装置
10、20、30、40…タッチパネル
11、411…透明基材
21、22…透明電極層
21a、22a…配線群
22b…導体部
22c…層間接続部
31、32、33…配線基板
31a、31b…端子群
41、42、413…透明粘着材
50…表示パネル
50a…表示面
60…トッププレート
60a…入力操作面
70…制御ユニット
210、220…光学調整層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを有する可撓性の透明基材と、
前記第1の面に形成され、第1の方向における入力操作子の操作位置を静電的に検出するための第1の導体パターンと、
前記第2の面に形成され、前記第1の方向と異なる第2の方向における前記入力操作子の操作位置を静電的に検出するための第2の導体パターンと
を具備するセンサ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ素子であって、
前記第1の導体パターンは、前記第2の方向に延在し、前記第1の方向に配列された複数の第1の透明電極部を有し、
前記第2の導体パターンは、前記第1の方向に延在し、前記第2の方向に配列された複数の第2の透明電極部を有する
センサ素子。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサ素子であって、
前記第1の面に取り付けられ、前記第1の導体パターンと電気的に接続される第1の端子群を有する第1の配線基板と、
前記第2の面に取り付けられ、前記第2の導体パターンと電気的に接続される第2の端子群を有する第2の配線基板と
をさらに具備するセンサ素子。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ素子であって、
前記第1の面に形成された導体部と、
前記基材を貫通し、前記導体部と前記第2の導体パターンとの間を接続する層間接続部と、
前記第1の導体パターンと電気的に接続される第1の端子群と、前記導体部と電気的に接続される第2の端子群とを有する、前記第1の面に取り付けられた配線基板と
をさらに具備するセンサ素子。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサ素子であって、
前記第1の面と前記第1の導体パターンとの間に、屈折率が異なる複数の金属酸化物の積層構造を有する光学調整層をさらに具備する
センサ素子。
【請求項6】
画像を表示する表示面を有する表示パネルと、
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを有する可撓性の透明基材と、前記第1の面に形成され、第1の方向における入力操作子の操作位置を静電的に検出するための第1の導体パターンと、前記第2の面に形成され、前記第1の方向と異なる第2の方向における前記入力操作子の操作位置を静電的に検出するための第2の導体パターンとを含み、前記第2の面と前記表示面とが相互に対向するように前記表示パネルに積層されたセンサ素子と、
を具備する表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記センサ素子の前記第1の面に積層され、前記入力操作子により入力操作される操作面を形成する透明基板をさらに具備する
表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−154442(P2011−154442A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14116(P2010−14116)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】