説明

センサ装置および生産方法

本発明は、電気接続部(2、2’)を備える少なくとも1つのセンサ素子(1)を有する、センサ装置に関する。少なくとも1つのセンサ素子(1)が固形のプラスチック体(3)内に配置され、センサ素子(1)を取り囲む少なくとも1つの第1の絶縁層(4)が、センサ素子(1)とプラスチック体(3)の間に配置される。センサ素子(1)は、測定されるべき媒体の少なくとも1つの物理的特性を直接感知する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特許文献1は、センサ素子を保護するための保護筐体を有するセンサ装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008022465号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
達成すべき目的は、十分な電気的保護を有し、保護によるセンサ素子の反応時間の制限がわずかであるセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載のセンサ装置および請求項12に記載のセンサ装置の生産方法によって達成される。センサ装置および生産方法の有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0005】
少なくとも1つのセンサ素子を有するセンサ装置が提供される。センサ素子は電気接続部を有し、それによってセンサ装置は電気的に接続される。センサ素子は固体のプラスチック体内に配置される。固体のプラスチック体とは、所定の基本形状を有する柔軟なプラスチック製の体という意味であると理解すべきである。プラスチック体は少なくとも部分的に変形可能であるが、プラスチック体はいつでもその本来の形状に再び戻る。電気接続部は好ましくはプラスチック体の寸法を超えて延びる。
【0006】
センサ素子とプラスチック体の間には、少なくとも1つの絶縁層が配置され、該絶縁層はセンサ素子を組み込んでいる。センサ素子に近い電気接続部の少なくとも部分領域が、第1の絶縁層によって取り囲まれる。第1の絶縁層はセンサ素子から電気接続部の前記近い部分領域まで延びる。好ましくは、少なくとも電気接続部の領域が、第1の絶縁層によって取り囲まれ、該第1の絶縁層はプラスチック体の内側の空間に位置する。
【0007】
一実施形態では、センサ素子は測定すべき媒体の少なくとも1つの物理的パラメータを直接感知する。センサ素子は、例えば、温度センサまたは光センサとして形成される。温度センサの場合には、例えば、取り囲む媒体の温度が感知される。光センサの場合には、例えば、センサ装置に作用する光信号が感知される。
【0008】
センサ装置の一実施形態では、さらなる絶縁層が第1の絶縁層とプラスチック体の間に配置される。
【0009】
プラスチック体は、好ましくは、一方に開いた少なくとも1つの中空空間を有する形状をとる。しかしながら、プラスチック体は、そのような形状に限定されることなく、所望の任意の形状をとってもよい。
【0010】
プラスチック体の材料、第1の絶縁層の材料、およびさらなる絶縁層の材料は、好ましくは互いに独立している。それらの材料は、好ましくはそれぞれの要望に合致するものにされ、また、高電圧耐性を有する。温度センサの場合は、用いられる材料は好ましくは高い熱伝導性を有する。光センサの場合は、好ましくは、用いられる材料は光センサによって感知される波長範囲に関して中立な光学的特性を有する。材料は、好ましくは、光センサの波長範囲における放射に対して可能な限り透明である。
【0011】
第1の絶縁層およびさらなる絶縁層は、好ましくは柔軟な、または固体の高分子化合物を含む。
【0012】
多数のセンサ素子を有するセンサ装置の実施形態では、個々のセンサ素子はそれぞれ第1の絶縁層によって取り囲まれる。さらなる実施形態では、センサ素子は共通の第1の絶縁層を有し、該第1の絶縁層はすべての、またはいくつかのセンサ素子を取り囲む。
【0013】
一実施形態では、センサ素子の接続部は堅いリード線として構成される。リード線は好ましくは、ある配置を保つワイヤまたは撚られた導体からなり、リード線は、センサ装置のプラスチック体の特定の位置にセンサ素子を固定するように構成される。
【0014】
さらなる実施形態では、センサ素子は柔軟なリード線または電気接続部を有する。
【0015】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのセンサ素子は堅い担体またはプリント回路基板に配置され、それはプラスチック体内に位置する。
【0016】
センサ装置の一実施形態では、プラスチック体は少なくとも1つの誘導装置を有し、それはプラスチック体の内部空間において所定の位置にセンサ素子を位置決めするのに適する。誘導装置は好ましくは、センサ素子とプラスチック体の誘導装置の間に、センサ素子を取り囲む第1の絶縁層に対して少なくとも十分な空間ができるように、配置または形成される。誘導装置は、例えば、ウェブまたは突起として形成される。
【0017】
センサ装置の一実施形態では、少なくとも1つのセンサ素子が温度センサの機能を有する。知られている温度センサは、例えば、NTC(負温度係数)またはPTC(正温度係数)の特性を有する電気的構成要素である。
【0018】
センサ装置のさらなる実施形態では、少なくとも1つのセンサ素子が光学センサの機能を有する。
【0019】
センサ装置の一実施形態では、少なくとも1つのセンサ素子が温度素子として構成され、さらなるセンサが光センサとして形成される。適切には、例えば、光センサは光ダイオードまたは光トランジスタである。
【0020】
温度センサおよび光センサを有するセンサ装置の一実施形態では、温度および光信号が可能な限り同時に感知されることが可能である。
【0021】
さらなる実施形態では、センサ装置は光電子構成要素を含む。光電子構成要素は好ましくは発光ダイオード、例えばLEDまたはOLEDなどの性質を有する。
【0022】
一実施形態では、センサ装置は少なくとも1つの光センサおよび少なくとも1つの光電子構成要素を含み、それらは、例えば光障壁の機能を共に有するように配置される。
【0023】
一実施形態では、プラスチック体は、少なくともセンサ素子の領域において、少なくとも1mmの壁厚を有する。センサ装置の電源リード線の領域におけるプラスチック体の壁厚は、センサ素子の領域における壁厚よりも小さくてもよく大きくてもよい。好ましくは、プラスチック体は、少なくともセンサ装置が測定すべき媒体と接触する領域において、少なくとも1mmの壁厚を有する。
【0024】
センサ装置の一実施形態では、センサ装置は少なくともAC(交流)3000Vの電圧耐性を有する。センサ装置の電圧耐性は装置の個々の絶縁層の電圧耐性の和となる。
【0025】
センサ装置の一実施形態では、第1の絶縁層は好ましくは少なくともAC1000Vの電圧耐性を有する。特に好ましい実施形態では、第1の絶縁層はAC1250Vの電圧耐性を有する。
【0026】
そのような方法で構成されることによって、センサ装置はVDE基準によって定められた保護クラスIIの電圧耐性を有する。保護クラスは少なくともセンサ素子の領域、およびこの領域に近い電気接続部の部分領域において達成される。センサ装置は、少なくともセンサ装置が測定すべき媒体と接触する領域において保護クラスIIである。センサ装置のさらなる電気的接触のためのむき出しの電気接続部は、一般に保護クラスIIの電圧耐性を有さないが、保護装置は、例えば、保護クラスIIに合致するプラグイン接続を有する。したがって、例えば、完全なセンサ装置は保護クラスIIに合致する。上記のセンサ装置の構造は、絶縁によってセンサ素子の応答時間が許容できないくらい大きく制限されることをなくし、センサ装置が、例えばセンサ装置に作用する温度または光信号などの物理的特性を急速に感知することに適するものとなることを保証する。
【0027】
上記のようなセンサ装置の生産方法において、中空空間を有するプラスチック体が提供される。電気接続部を有する少なくとも1つのセンサ素子が、プラスチック体の中空空間に保持される。
【0028】
一実施形態では、センサ素子が中空空間の所定の位置に配置されるように、センサ素子はプラスチック体からあらかじめ定められた距離にある。
【0029】
方法の一実施形態では、少なくともセンサ素子の領域内の中空空間が高分子化合物で満たされる。高分子化合物は、好ましくはセンサ素子の周囲の空間を完全に満たし、好ましくはこの領域にもはや空気が存在しなくなる。界面または中空空間における部分的な放電はしたがって避けられる。
【0030】
さらなる実施形態では、プラスチック体の中空空間はセンサ素子の位置決めの前に高分子化合物で満たされる。高分子化合物はセンサ素子の第1の絶縁層を形成する。センサ素子はその後、高分子化合物で満たされたプラスチック体の中空空間内で、所望の位置まで埋められる。
【0031】
本方法のさらなる実施形態では、センサ素子はプラスチック体の中空空間内への位置決めの前に、第1の絶縁層に組み込まれる。これのために適切なのは、例えば、センサ素子と、第1の絶縁層において少なくとも電気接続部に近い領域とをカプセル化するための、射出成形過程である。
【0032】
本方法の一実施形態では、第1の絶縁層によって取り囲まれ、プラスチック体の中空空間に位置決めされたセンサ素子は、さらなる絶縁層によって取り囲まれる。センサ素子の第1の絶縁層とプラスチック体の間の少なくとも中間の空間が、好ましくは高分子化合物によって満たされる。
【0033】
上記の主題および方法は、以下の図および例としての実施形態に基づいて、より詳細に説明される。
【0034】
以下の図は概略的なものであり、原寸に比例するものとみなすべきではない。互いに同じ要素および同じ機能を担う要素は同じ参照符号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】センサ装置の第1の実施形態の概略構造を示す図である。
【図2】センサ装置のさらなる実施形態を示す図である。
【図3】センサ素子と光電子構成要素を含むセンサ装置のさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、センサ装置の第1の実施形態の構造を概略的に示す。センサ装置はプラスチック体3を有する。プラスチック体3内部の空間にセンサ素子1が配置され、それは図示された実施形態においては堅い電気接続部2、2’を有する。図1に示されるセンサ素子1および電気接続部2、2’の一部は第1の絶縁層4によって取り囲まれる。図1においては、完全なセンサ装置のうち関連する部分のみが示される。電気接続部2、2’の端部は、センサ素子1との接触のために、好ましくは外側から接触することができる。第1の絶縁層4は、好ましくは固体、液体、または柔軟性の高分子化合物を含む。液体高分子化合物を含む第1の絶縁層4の実施形態において、プラスチック体3は、少なくとも高分子化合物が好ましくは気密状態で密封される範囲で、プラスチック体3内部の空間内で、好ましくは端部領域において閉じている。
【0037】
図2において、センサ装置のさらなる実施形態の概略的な構造が示される。センサ装置はプラスチック体3を有し、該プラスチック体3の中空空間7内にセンサ素子1が配置される。センサ素子1は電気接続部2、2’を有し、センサ素子1および電気接続部2、2’は、少なくともセンサ装置の図示された部分領域においては、第1の絶縁層14によって取り囲まれる。第1の絶縁層14とプラスチック体3の内壁との間には中間空間があり、該空間はさらなる絶縁層5を形成してもよい。さらなる絶縁層5は、例えば、空気または高分子化合物を含んでもよい。センサ装置のセンサ素子1が温度センサの特性を有する一実施形態では、好ましくはさらなる絶縁層5は良好な熱伝導性を有する高分子化合物である。センサ素子1が光センサの特性を有する一実施形態の場合は、好ましくはさらなる絶縁層5は光学的に透明な気体または高分子化合物である。図2はセンサ素子1が配置されたプラスチック体3の領域のみを示す。さらなる領域は好ましくは、少なくとも外側から電気的に接触可能な接続部2、2’を有する。
【0038】
図3は2つの構成要素を有するセンサ装置のさらなる実施形態の構造を概略的に示す。少なくとも1つの構成要素がセンサ素子11として構成される。さらなる構成要素は光電子構成要素6として構成される。センサ装置はプラスチック体13を有し、該プラスチック体の内部空間に担体8が配置される。センサ素子11および光電子構成要素6は導電トラック12、12’と共に担体8に配置される。センサ素子11および光電子構成要素6は導電トラック12、12’によって電気的に接続される。プラスチック体13の内部空間はセンサ素子11の周囲および光電子構成要素6の周囲を第1の絶縁層24を形成する高分子化合物で満たす。図3において、例えば液体または固体の高分子化合物を有する少なくとも第1の絶縁層24が、好ましくはプラスチック体13内部の空間にとどまる範囲で、プラスチック体は担体8を取り囲む。
【0039】
図示された実施形態において、センサ装置は、例えば光ダイオードまたは光トランジスタである光学センサを含む。光電子構成要素6は、例えばLEDである。図示された実施形態において、センサ装置は、例えば光障壁の機能を有する。
【0040】
例示の実施形態においては限られた数の可能な発展形態を記載することしかできなかったが、本発明はそれらに限定されない。原則としてセンサ装置は、異なるタイプまたは同一のタイプの複数のセンサ素子を含むことができ、センサ装置が保護クラスIIとなるさらなる構成要素を含むことができる。
【0041】
特定の項目および方法の記載は個々の特定の実施形態に限られない。それどころか、技術的に実現可能な範囲で、個々の実施形態の特徴は所望のように互いに組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1、11 センサ素子
2、2’ 電気接続部
3、13 プラスチック体
4、14、24 第1の絶縁層
5 さらなる絶縁層
6 光電子構成要素
7 プラスチック体3内の中空空間
8 担体
12 導電トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続部(2、2’)を有する少なくとも1つのセンサ素子(1)を有し、
前記少なくとも1つのセンサ素子(1)が、固体のプラスチック体(3)内に配置され、
前記センサ素子(1)を組み込む少なくとも第1の絶縁層(4)が、前記センサ素子(1)と前記プラスチック体(3)の間に配置される、
センサ装置。
【請求項2】
さらなる絶縁層(5)が前記第1の絶縁層(4)と前記プラスチック体(3)の間に配置される、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記さらなる絶縁層(5)が高分子化合物を含む、請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記第1の絶縁層(4)が柔軟な、または固体の高分子化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記電気接続部(2、2’)が堅いリード線として構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサ素子(1)が温度センサの機能を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
少なくとも1つのセンサ素子(1)が光センサの機能を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
少なくとも1つの光電子構成要素(6)を含む、請求項6または7に記載のセンサ装置。
【請求項9】
少なくとも3000VのAC電圧耐性を有するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記プラスチック体(3)が少なくとも1mmの厚さの材料を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
中空空間(7)を有するプラスチック体(3)が提供され、該中空空間内に少なくとも1つのセンサ素子(1)が位置決めされる、請求項1から10のいずれか一項に記載のセンサ装置の生産方法。
【請求項12】
前記センサ素子(1)と前記プラスチック体(3)の間の中空空間(7)は高分子化合物で満たされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記センサ素子(1)の前記位置決めの前に、前記プラスチック体(3)の前記中空空間(7)が高分子化合物で満たされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスチック体(3)の前記中空空間(7)の前記位置決めの前に、前記センサ素子(1)が第1の絶縁層(4)内に組み込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記センサ素子(1)の前記第1の絶縁層(4)と前記プラスチック体(3)の間の中間空間が高分子化合物で満たされる、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−522208(P2012−522208A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501296(P2012−501296)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053843
【国際公開番号】WO2010/108961
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】