説明

センサ装置

【課題】本発明は、センサ装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、処理回路部14A、14Bからのセンス信号を出力する第1の出力端子15A、15Bと、駆動回路部11A、11B、検知素子12A、12B、検出回路部13A、13B、及び処理回路部14A、14Bの内少なくともいずれか1つを被故障診断部とし、被故障診断部が正常か異常かを判断するとともに異常と判断した場合には故障検知信号を第2の出力端子16Aから出力する故障診断回路16と、を備え、被故障診断部からの故障検知信号に関する出力が第2の出力端子16Aにたどり着くまでの時間が、被故障診断部からのセンス信号に関する出力が第1の出力端子15A、15Bにたどり着くまでの時間よりも短いセンサ装置としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶、ロボット、その他各種電子機器等に用いられるセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のセンサ装置は、図3に示すごとく、駆動信号を出力する第1、第2の駆動回路部1A、1Bと、駆動回路部1A、1Bからの駆動信号が入力される検知素子2と、検知素子2から応答信号を取り出す第1、第2の検出回路部3A、3Bと、第1、第2の検出回路部3A、3Bからの応答信号からセンス信号を取り出す第1、第2の処理回路部4A、4Bと、第1、第2の処理回路部4A、4Bからのセンス信号を出力する出力端子5A、5Bとを備えている。
【0003】
そして、第1、第2の駆動回路部1A、1B、検知素子2、第1、第2の検出回路部3A、3B、及び第1、第2の処理回路部4A、4Bの内少なくとも1つを被故障診断部とし、この被故障診断部に電気的に接続される故障診断回路6により、適宜、前記被故障診断部の故障検知を行い、故障診断回路6に設けられた出力端子8から故障検知信号を出力する構成としていた。
【0004】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−301512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のセンサ装置では、その信頼性の低さが問題となっていた。
【0007】
すなわち、上記従来の構成においては、その信号伝達経路の相違により、故障検知信号が出力端子8から出力されるよりも先に、センス信号が出力端子5A、5Bから出力されてしまうような場合、実際には既に故障診断回路6により被故障診断部の故障が検知されているにもかかわらず、その異常時のセンス信号が自動車等の制御対象に伝達されてしまうため、この異常時におけるセンス信号を自動車等の制御に用いてしまう可能性があり、その結果として信頼性が低くなってしまっていた。
【0008】
そこで本発明は、センサ装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、駆動信号を出力する駆動回路部と、前記駆動回路部からの駆動信号が入力される検知素子と、前記検知素子から応答信号を取り出す検出回路部と、前記検出回路部からの応答信号が入力されるとともにこの応答信号からセンス信号を取り出す処理回路部と、前記処理回路部からのセンス信号を出力する第1の出力端子と、前記駆動回路部、前記検知素子、前記検出回路部、及び前記処理回路部の内少なくともいずれか1つを被故障診断部とし、前記被故障診断部が正常か異常かを判断するとともに異常と判断した場合には故障検知信号を第2の出力端子から出力する故障診断回路と、を備え、前記故障診断回路が前記被故障診断部が異常であると判断した場合には、前記故障診断回路が異常電圧値出力命令信号を出力することにより、前記第1の出力端子が通常の出力電圧範囲外の信号を出力する構成とし、前記被故障診断部からの前記故障検知信号に関する出力が前記故障診断回路に伝達されることにより前記故障検知信号が前記故障診断回路により生成されるとともに前記故障診断回路が前記異常電圧値出力命令信号を出力するのに要する時間が、前記被故障診断部からの前記センス信号に関する出力が前記第1の出力端子にたどり着くまでの時間よりも短いセンサ装置としたものである。
【発明の効果】
【0010】
このような構成とすることにより、異常時におけるセンス信号を確実に通常の出力電圧範囲外の値として出力することができ、より一層の信頼性の向上を図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセンサ装置を示す電気回路図
【図2】本発明の実施の形態1におけるセンサ装置のその他の実施例を示す電気回路図
【図3】従来のセンサ装置を示す電気回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における慣性センサについて図面を参照しながら説明する。本実施の形態における慣性センサは、図1に示すごとく、駆動信号を出力する第1、第2の駆動回路部11A、11Bと、この第1の駆動回路部11Aからの第1の駆動信号が入力される角速度検知素子12Aと、第2の駆動回路部11Bからの第2の駆動信号が入力される加速度検知素子12Bと、角速度検知素子12Aから第1の応答信号を取り出す第1の検出回路部13Aと、加速度検知素子12Bからの第2の応答信号を取り出す第2の検出回路部13Bと、第1の検出回路部13Aからの第1の応答信号が入力されるとともに、この第1の応答信号から第1のセンス信号を取り出す第1の処理回路部14Aと、第2の検出回路部13Bからの第2の応答信号が入力されるとともに、この第2の応答信号から第2のセンス信号を取り出す第2の処理回路部14Bと、これら第1、第2の処理回路部14A、14Bからのセンス信号を出力する第1の出力端子15A、15Bを備えている。
【0013】
そして、前記第1の駆動回路部11A、前記角速度検知素子12A、前記第1の検出回路部13A、及び前記第1の処理回路部14Aの内少なくとも1つを第1の被故障診断部とし、前記第2の駆動回路部11B、前記加速度検知素子12B、前記第2の検出回路部13B、及び前記第2の処理回路部14Bの内少なくとも1つを第2の被故障診断部とし、前記第1、第2の被故障診断部が正常か異常かを判断するとともに、異常と判断した場合には、前記センス信号が異常である旨の故障検知信号を第2の出力端子16Aから出力する故障診断回路16を有している。
【0014】
そして、前記第1、第2の被故障診断部からの前記故障検知信号に関する出力が前記第2の出力端子16Aにたどり着くまでの時間が、前記第1、第2の被故障診断部からの前記センス信号に関する出力が前記第1の出力端子15A、15Bにたどり着くまでの時間よりも短い構成としている。
【0015】
具体的には、例えば故障診断回路16を第1の検出回路部13Aと第2の検出回路部13Bの双方に電気的に接続し、第1の被故障診断部を前記第1の検出回路部13Aとし、第2の被故障診断部を前記第2の検出回路部13Bとする。そして、この第1、第2の検出回路部13A、13Bのそれぞれが正常か異常かを故障診断回路16が判断するわけであるが、この第1、第2の被故障診断部である第1、第2の検出回路部13A、13Bから前記故障検知信号に関する出力が、故障診断回路16経由で第2の出力端子16Aまで伝達される時間をT1とし、前記第1、第2の検出回路部13A、13Bから第1、第2のセンス信号に関する出力、即ち第1、第2の応答信号が、第1の出力端子15A、15Bにたどり着くまでの時間をT2とした場合に、T1の方がT2よりも短い構成、即ち、故障検知信号が第1、第2のセンス信号よりも先に出力される構成としている。
【0016】
このような構成により、第1、第2のセンス信号が前記第1の出力端子15A、15Bから出力されるよりも先に、故障検知信号を前記第2の出力端子16Aから出力することができるため、誤って異常時の第1、第2のセンス信号を自動車等の制御に用いないようにすることができ、信頼性を向上させることができるのである。
【0017】
即ち、故障検知信号が前記第2の出力端子16Aから出力されるよりも先に第1、第2のセンス信号が第1の出力端子15A、15Bから出力される構成であれば、実際には既に故障診断回路16により被故障診断部(本実施の形態においては第1、第2の検出回路部13A、13B)の故障が検知されているにもかかわらず、その異常時の故障検知信号の出力が間に合わないために、この異常時における第1、第2のセンス信号を自動車等の制御に用いてしまう可能性があるが、本実施の形態によれば、異常時の結果である前記第1、第2のセンス信号が前記第1の出力端子15A、15Bから出力されるよりも先に、当該センス信号が異常時のものであることを示す故障検知信号を第2の出力端子16Aから出力することができるため、当該異常時の第1、第2のセンス信号を自動車等の制御に用いないようにすることができ、その結果として信頼性を向上させることができるのである。
【0018】
なお、本実施の形態においては、前記第1、第2のセンス信号及び前記故障検知信号がデジタル出力信号であっても、アナログ出力信号であっても構わないが、図1に示すごとく、第1、第2のセンス信号が出力される第1の出力端子15A、15Bと、故障検知信号が出力される前記第2の出力端子16Aを別個独立に設ける構成とすることにより、アナログ出力信号を採用する構成を実現することができる。
【0019】
なお、本実施の形態では第1、第2の被故障診断部を第1、第2の検出回路部13A、13Bとし、角速度検知系、加速度検知系それぞれにおける同一部分を被故障診断部とする例を説明したが、第1の被故障診断部を第1の駆動回路部11Aとし、第2の被故障診断部を第2の処理回路部14Bとするように、2つの被故障診断部を角速度検知系、加速度検知系それぞれにおける同一部分としない構成としても構わない。その場合においては、前記第1、第2の被故障診断部から第1の出力端子15A、15Bまでの前記第1、第2のセンス信号に関する出力の伝達時間の内、短い方をT2とし、前記第1、第2の被故障診断部から第2の出力端子16Aまでの故障検知信号に関する出力の伝達時間の内、長い方の時間をT1とし、当該T1がT2よりも短くなるよう設定する必要がある。その理由は、上述のとおり、第1、第2のセンス信号よりも故障検知信号を先に第2の出力端子16Aから出力するためである。
【0020】
なお、本実施の形態においては、検知素子12として角速度検知素子12Aと加速度検知素子12Bとの2つを用い、これに対応する回路構成として、第1、第2の駆動回路部11A、11B、第1、第2の検出回路部13A、13B、第1、第2の処理回路部14A、14Bを有する構成を用いて説明したが、検知素子12を1つとし、これに対応する回路構成として、駆動回路部、検出回路部、処理回路部をそれぞれ1つずつのみ設ける構成としても構わない。
【0021】
なお、図2に示すごとく、第1の駆動回路部11Aから、角速度検知素子12A、第1の検出回路部13A、第1の処理回路部14A、第1の出力端子15Aまでの電気的接続ラインにおけるいずれかの場所に第1の遅延回路18Aを設けると共に、第2の駆動回路部11Bから、加速度検知素子12B、第2の検出回路部13B、第2の処理回路部14B、第1の出力端子15Bまでの電気的接続ラインにおけるいずれかの場所に第2の遅延回路18Bを設けることにより、上述した信頼性向上に関する効果をより確実に得ることができるため望ましい。
【0022】
即ち、前記故障検知信号に関する出力が前記第1、第2の被故障診断部から前記故障診断回路16経由で前記第2の出力端子16Aにたどり着くまでの時間T1が何らかの事由により長くなってしまうような場合、具体的には、前記第1、第2の被故障診断部から前記故障診断回路16経由で前記第2の出力端子16Aにたどり着くまでの各回路部における処理時間が長くなってしまうような場合においても、第1、第2の遅延回路18A、18Bを第1、第2の駆動回路部11A、11Bから、角速度検知素子12A、加速度検知素子12B、第1、第2の検出回路部13A、13B、第1、第2の処理回路部14A、14B、第1の出力端子15A、15Bまでの電気的接続ラインにおけるいずれかの場所に設けておくことにより、前記時間T1を、前記第1、第2のセンス信号に関する出力が前記被故障診断部から前記第1の出力端子15A、15Bにたどり着くまでの時間T2よりも確実に短くすることができ望ましい。
【0023】
なお、本実施の形態においては、角速度検知素子12A、加速度検知素子12Bなどを用いて説明したが、その他圧力センサなど、各種センサ装置についても実施することが可能である。
【0024】
なお、故障診断回路16が前記被故障診断部が異常であると判断した場合には、前記第1の出力端子15A、15Bから通常の出力電圧範囲外の信号を出力する構成とすることが望ましい。
【0025】
具体的には、前記故障診断回路16が前記被故障診断部が異常であると判断した場合、前記故障診断回路16がその情報を前記第1、第2の処理回路部14A、14Bに伝達し、この情報伝達を受けた第1、第2の処理回路部14A、14Bがその第1の出力端子15A、15Bから出力する値を、通常の出力電圧範囲外の値として出力するような構成である。ここで、故障診断回路16が前記第1、第2の処理回路部14A、14Bに伝達する前記情報を、以下「異常電圧値出力命令信号」とする。
【0026】
なお、上述した「通常の出力電圧範囲」とは、例えば感度が6mV/deg/sで、ダイ
ナミックレンジが±300deg/sであるとすると、0点電圧から±1.8Vの範囲を意
味する。即ち、0点電圧が2.5V±0.15Vであれば、1.55V〜4.45Vが通常の出力電圧範囲となる。
【0027】
このような構成とすることにより、自動車等の制御対象が、前記第1の出力端子15A、15Bから出力されたセンス信号が正常時のものであるのか、あるいは異常時のものであるのかを判断するまでもなく、当該制御対象側において、異常時のセンス信号を誤って制御に使用してしまう可能性をより一層低減させることができ、その結果としてより一層の信頼性向上を図ることができるのである。
【0028】
また、このように、故障診断回路16が前記被故障診断部が異常であると判断した場合に前記第1の出力端子15A、15Bから通常の出力電圧範囲外の信号を出力する構成を採用するに際しては、前記被故障診断部から前記故障検知信号に関する出力が、故障診断回路16に伝達され、前記故障診断回路16が「異常電圧値出力命令信号」を出力するのに要する時間T3を、前記第1、第2の被故障診断部から第1、第2のセンス信号に関する出力が、第1の出力端子15A、15Bにたどり着くまでの時間T2よりも短くする構成とすることが望ましい。このような構成とすることにより、異常時におけるセンス信号を確実に上述した「通常の出力電圧範囲外」の値として出力することができ、より一層の信頼性の向上を図ることができるためである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のセンサ装置は、信頼性を向上させることができるという効果を有し、自動車、航空機、船舶、ロボット、その他各種電子機器等において有用である。
【符号の説明】
【0030】
11A 駆動回路部(第1の駆動回路部)
12A 検知素子(角速度検知素子)
13A 検出回路部(第1の検出回路部)
14A 処理回路部(第1の処理回路部)
15A 第1の出力端子
16 故障診断回路
16A 第2の出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号を出力する駆動回路部と、
前記駆動回路部からの駆動信号が入力される検知素子と、
前記検知素子から応答信号を取り出す検出回路部と、
前記検出回路部からの応答信号が入力されるとともに
この応答信号からセンス信号を取り出す処理回路部と、
前記処理回路部からのセンス信号を出力する第1の出力端子と、
前記駆動回路部、前記検知素子、前記検出回路部、及び前記処理回路部の内
少なくともいずれか1つを被故障診断部とし、
前記被故障診断部が正常か異常かを判断するとともに
異常と判断した場合には故障検知信号を第2の出力端子から出力する故障診断回路と、
を備え、
前記故障診断回路が前記被故障診断部が異常であると判断した場合には、
前記故障診断回路が異常電圧値出力命令信号を出力することにより、
前記第1の出力端子が通常の出力電圧範囲外の信号を出力する構成とし、
前記被故障診断部からの前記故障検知信号に関する出力が前記故障診断回路に伝達されることにより前記故障検知信号が前記故障診断回路により生成されるとともに前記故障診断回路が前記異常電圧値出力命令信号を出力するのに要する時間が、前記被故障診断部からの前記センス信号に関する出力が前記第1の出力端子にたどり着くまでの時間よりも短い
センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−181393(P2010−181393A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117494(P2009−117494)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【分割の表示】特願2009−24663(P2009−24663)の分割
【原出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【特許番号】特許第4358301号(P4358301)
【特許公報発行日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】