説明

センサ配置構造

【課題】エンジンの吸気通路に設置されるセンサへの水滴の付着を抑えてセンサの故障を防止し、センサが使用される吸気量制御システム等の信頼性を向上するセンサ配置構造を提供する。
【解決手段】吸気装置12の吸気通路は、上流側に設けられた吸気配管17と、この吸気配管17の下流側に設けられるとともにエンジン本体11の側方に位置する吸気チャンバ22と、この吸気チャンバ22からエンジン本体11の各気筒11A、11B、11C、11Dに吸気を導く吸気管28とから構成され、吸気配管17が、エンジン本体11の長手方向のいずれかの側より吸気チャンバ22に流入するように配置され、吸気管28を構成する各気筒毎の分岐管24〜27のうち、吸気配管17に近い側の分岐管24に対して酸素センサ30が配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ配置構造に関し、特に酸素濃度を検出する酸素センサをエンジンの吸気管に配置するセンサ配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンにおいて、排気ガス中のNOxを低減するためにEGR(排気再循環)量を増やすと、排気ガスを含む吸気ガス中に含まれる水分が多くなり、吸気ガスが冷却された場合に、水分が凝縮して水滴が出来やすくなる。この水滴がヒータで高温となった酸素センサの検出部に付着すると、検出部は熱衝撃を受けて破損することがあるため、酸素センサへの水滴の付着を防止することが必要となる。
なお、排気系に取付けられる酸素センサについては、高温の排ガスに晒されるため酸素センサ設置部位の温度が高くなり、排気ガス中の水分の凝縮が少ないため、上記のような課題は発生しにくい。
【0003】
従来の酸素センサ配置構造として、酸素センサを、吸気マニホールドを構成する吸気チャンバに配置した例を図11に示す。また、吸気通路に酸素濃度センサを配置したものとして、例えば、特許文献1(特開2010−90848号公報)が知られている。さらに、酸素濃度センサをサージタンク内に配置するものとして、例えば、特許文献2(特開2003−65171号公報)が知られている。
【0004】
図11に示すエンジン100は、複数の気筒が設けられたエンジン本体101と、このエンジン本体101の一側面に接続された吸気装置102と、エンジン本体101の他側面に接続された排気装置103とを備える。なお、図11はエンジン100の平面視図である。
【0005】
吸気装置102は、エアクリーナ、インタクーラ等からなる吸気入口部106と、この吸気入口部106に接続された吸気配管107と、この吸気配管107に一端が接続されるとともに他端がエンジン本体101に接続された吸気マニホールド108とから構成されている。
【0006】
吸気マニホールド108は、吸気配管107に接続された接続口115と、この接続口115に隣接する吸気チャンバ116と、この吸気チャンバ116からエンジン本体101の各気筒に延びる分岐管121〜124とからなる。
【0007】
吸気チャンバ116の中央部の上部には、吸気チャンバ116内における吸気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ126が取付けられている。
排気装置103は、排気マニホールド111を備える。そして、排気マニホールド111と吸気配管107とを接続するEGR通路113が設けられている。
【0008】
特許文献1の図1によれば、多気筒型のエンジン10は、エンジン本体に複数の燃焼シリンダ12が並設され、各燃焼シリンダ12にそれぞれストレート状の吸気通路14が接続され、EGRガス通路22の各枝通路24は、EGRガス合流部26で各吸気通路14に接続され、各吸気通路14のEGRガス合流部26の下流側に酸素濃度センサ30が取付けられている。
【0009】
また、特許文献2によれば、サージタンク30に、内部空間に向かって陥没し、かつ、内部空間に張り出すように形成されたセンサ取り付け部32を設け、センサ取り付け部32に収容されるように、空燃比センサ38を組み付ける構成が示されている。また、センサ取り付け部32の底面34に、サージタンク30の壁面を伝わって流れるオイルや水分をせき止めるための環状凸部50が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−90848号公報
【特許文献2】特開2003−65171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図11に示した技術では、酸素センサ126が取付けられた吸気チャンバ116内では、EGR通路113を介して吸気配管107内に流入した排ガスの温度が低下し、排ガスを含む吸気ガスに含まれる水分が凝縮して水滴が生じやすい。その水分の発生の際に、EGR通路113の出口が接続される吸気配管107から吸気チャンバ116までの距離が比較的近いために、吸気配管107から吸気チャンバ116までの吸気通路壁面に付着する水滴の量が少ないので、吸気ガス中の水滴の量がまだ多い状態で、吸気チャンバ116で吸気ガスの冷却によって水滴が多く発生する。従って、酸素センサ126に付着する水滴量が多くなるという課題がある。
【0012】
また、特許文献1では、EGRガス通路22が気筒数分の枝通路24に分岐し、各枝通路24が各吸気通路14に接続されて、排気ガス中の水分が各吸気通路14に分割されて流入するため、吸気通路14内に存在する水分は少なくなるが、吸気通路14はストレート形状であるため、吸気通路14内の水分が凝縮して出来た水滴は、その多くが酸素濃度センサ30に付着することになる。
更に、酸素濃度センサ30は、吸気通路14に水平に取付けられているため、例えば、吸気通路14の内壁面を伝わって重力により落ちてくる水滴が酸素濃度センサ30の検出素子に付着しやすくなる。
【0013】
また、特許文献2では、センサ取り付け部32の低面34に、サージタンク30の壁面を伝わって流れるオイルや水分をせき止めるための環状凸部50が設けられることが示されているが、サージタンク30は、EGR通路113の出口の接続やベーパ(蒸気燃料)をパージする通路の接続に近い位置に設けられる場合が多いため、サージタンク30の壁面を伝わって流れるオイルや水分は、サージタンクから下流側の各気筒への吸気通路より多い状態になっている。
従って、前記図11で説明した場合と同様に、サージタンク内に配置した空燃比センサに付着する水滴量が多くなる問題があるため、特許文献2に開示の環状凸部50だけでは十分な対策効果が得られ難い。
【0014】
そこで、本発明の目的は、エンジンの吸気通路に設置されるセンサへの水滴の付着を抑えてセンサの故障を防止し、センサが使用されるシステムの信頼性を向上するセンサ配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、かかる目的を達成するため、エンジンの吸気通路に吸気中の空燃比を測定するセンサが配置されたセンサ配置構造において、前記吸気通路は、上流側に設けられた吸気配管と、この吸気配管の下流側に設けられるとともに、前記エンジンの各吸気ポートと連通して分岐通路を形成する複数の分岐管と各分岐管が接続された集合部を有する吸気マニホールドから構成され、前記吸気配管が、前記分岐通路配列方向の一方側より前記集合部に接続するように配置され、前記吸気配管よりも下流のうち、前記一方側の吸気通路にセンサが配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、吸気配管が、分岐通路配列方向の一方側より集合部に接続するように配置され、該集合部を含めて集合部からエンジンの吸気ポートに至る前記吸気配管よりも下流の吸気通路のうち、前記一方側の吸気通路にセンサが配置されるものである。すなわち、センサが前記一方側の分岐通路または集合部(吸気チャンバ)内の前記一方側の位置に設置される。
【0017】
吸気配管が集合部(吸気チャンバ)に接続される側(一方側)の分岐通路または集合部内においては、吸気が吸気配管から集合部に入りそこからエンジンの吸気ポートに向かう主流に対して内側に位置する関係になる。そのため、主流は慣性で直進する方向に流れるため、回り込むようにして流れてくる関係になり、吸気に含まれる水滴は途中で吸気通路内壁に付着し前記分岐通路配列方向の一方側に位置する分岐通路には到達しにくい状態になる。
従って、例えば、酸素センサを吸気通路の前記一方側に配置することで水滴が酸素センサに付着するのを抑えることができる。その結果、水滴の付着によるセンサの故障を防止し、センサが使用される吸気量制御システム等の信頼性を向上できる。
なお、吸気とは、新気のみまたは新気にEGRガスが付加された両方を意味する。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記一方側の分岐通路は、前記集合部から前記エンジンに向かって前記分岐通路配列方向の外側に張り出すように屈曲する屈曲部が形成され、前記センサは、分岐通路の中心を通る軸線よりも前記屈曲部の内周側にオフセットして配置されるとよい。
【0019】
かかる構成によれば、センサを分岐通路の中心を通る軸線よりも屈曲部の内周側にオフセットして配置することで、分岐通路内の主流がセンサに当たりにくくなり、水滴もセンサに当たりにくくなる。
つまり、水滴は、屈曲部ではその慣性で直進しようとするので、分岐通路の外周側内壁に当たりやすくなり、分岐通路の内周側へは進行しにくいため、内周側にオフセットして設置したセンサには水滴が当たりにくくなる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、前記センサは、各分岐通路のうち、前記エンジン寄りの末端部に配置されるのがよい。
かかる構成によれば、吸気通路を流れる水滴は、吸気通路各部で内壁に付着するため、吸気通路の最も下流である分岐通路の末端部では水滴がほとんど無くなり、センサが水滴の影響をほとんど受けなくなる。
また、末端部は吸気通路内でエンジンの燃焼室に最も近いため、エンジンの燃焼を制御する上で有効なデータを検出できる。
【0021】
また、本発明において好ましくは、複数の分岐通路からなる吸気管には分岐部が複数段設けられ、前記センサは、前記吸気管の上流側から2段目以降の分岐部に配置されているとよい。
かかる構成によれば、吸気ガス中の水分が凝縮して発生した水滴は、吸気管の1段目の分岐通路の壁面に付着し、2段目以降の分岐通路では水滴が減少し、センサに付着しにくくすることができる。
【0022】
また、本発明において好ましくは、前記センサは、前記2段目以降の分岐部から分岐した分岐管であって前記分岐通路配列方向の中心側の分枝管に配置されるとよい。
かかる構成によれば、吸気管内の主流は慣性で直進しようとするため、分岐部から分岐通路配列方向の中心側への分岐通路へは進行し難くなるため、主流とともに流れる水滴が減少し、センサへの付着を一層低減できる。
【発明の効果】
【0023】
以上記載のごとく本発明によれば、吸気配管が、分岐通路配列方向の一方側より集合部に接続するように配置され、該集合部を含めて集合部からエンジンの吸気ポートに至る前記吸気配管よりも下流の吸気通路のうち、前記一方側の吸気通路にセンサが配置される。
主流は慣性で直進する方向に流れるため、センサ位置には回り込むようにして流れてくる関係になり、吸気に含まれる水滴は途中で吸気通路内壁に付着し前記分岐通路配列方向の一方側に位置する分岐通路には到達しにくい状態になる。
従って、例えば、酸素センサを吸気通路の前記一方側に配置することで水滴が酸素センサに付着するのを抑えて酸素センサの内部素子の被水割れを防止でき、その結果、センサの故障を防止し、センサが使用される吸気量制御システム等の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るセンサ配置構造(第1実施形態)を説明するエンジンの平面図である。
【図2】本発明に係るセンサ配置構造(第1実施形態)を説明するエンジンの側面図(一部断面図)である。
【図3】本発明に係るエンジン吸気系へのセンサの配置を説明する説明図(第1実施形態)である。
【図4】図3の4−4線断面図(第1実施形態)であり、図4(a)は丸パイプ状分岐管の断面図、図4(b)は角パイプ状分岐管の断面図である。
【図5】本発明に係るセンサ配置構造の作用を示す作用図(第1実施形態)であり、図5(a)は吸気ガスの流れを示す作用図、図5(b)は分岐管内壁への水滴の付着を示す作用図である。
【図6】本発明に係るセンサ配置構造(第2実施形態)を説明するエンジンの平面図である。
【図7】本発明に係るセンサ配置構造(第2実施形態)の要部拡大平面図である。
【図8】本発明に係るセンサ配置構造(第2実施形態)の作用を示す作用図である。
【図9】本発明に係るセンサ配置構造(第2実施形態)の変形例を説明するエンジンの要部平面図である。
【図10】本発明に係るセンサ配置構造(第3実施形態)を説明するエンジンの平面図である。
【図11】従来のセンサ配置構造を説明するエンジンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、エンジン10は、シリンダブロック、シリンダヘッド等からなるエンジン本体11と、このエンジン本体11のシリンダヘッド一側面に接続された吸気装置12と、エンジン本体11のシリンダヘッド他側面に接続された排気装置13とを備える直列4気筒ディーゼルエンジンである。
【0027】
エンジン本体11は、第1気筒11A、第2気筒11B、第3気筒11C及び第4気筒11Dが設けられている。
吸気装置12は、エアクリーナ、インタクーラ等からなる吸気入口部16と、この吸気入口部16に接続されてエンジン本体11の長手方向とほぼ平行に延びる吸気配管17と、この吸気配管17に一端部が接続されるとともに他端部がエンジン本体11に接続された吸気マニホールド18とからなる。
【0028】
吸気マニホールド18は、吸気配管17の端部に接続された接続端部21と、この接続端部21に隣接するとともにエンジン本体11の側方に位置する吸気チャンバ22と、この吸気チャンバ22からエンジン本体11に延びてエンジン本体11に設けられた各気筒に吸気を供給する分岐管24〜27とからなる一体成形品である。
これらの分岐管24〜27は、4本で吸気管28を構成している。
なお、「吸気」とは、既に説明したように、エンジン10に吸入されるガスをいい、新気のみ、又は新気にEGRにより戻されたガスを加えたものを言う。
【0029】
吸気配管17は、エンジン本体11の長手方向のいずれかの側より吸気入口部16を介して吸気チャンバ22に吸気ガスが流入するように配置されている。
4本の分岐管24〜27のうち、吸気配管17に近い側の第1気筒11Aの分岐管24に、吸気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ(リニアA/Fセンサ)30が取付けられている。このように、分岐管24に酸素センサ30を取付ける主な理由の一つは、分岐管24が吸気配管17に対して最も遠い位置であり、吸気装置12内の吸気通路を流れる吸気ガスが最も遠回りする位置だからである。
【0030】
上記の酸素センサ30が取付けられる分岐管24に対応する気筒は、ここでは第1気筒11Aであるが、吸気配管17が、図1においてエンジン本体11の長手方向下側に位置する場合には、第4気筒11Dの分岐管27に酸素センサが取付けられる。要は最も端の気筒に対応する分岐管に酸素センサ30が取付けられる。
【0031】
また、例えば、V型6気筒エンジンで、一方のバンクに第1気筒〜第3気筒が設けられ、他方のバンクに第4気筒〜第6気筒が設けられる場合であって、各バンクに対して図1に示すような吸気配管17の配置関係を持って設置された場合には、上記した直列4気筒のエンジン10と同様に、最も端の気筒である第1気筒、第3気筒、第4気筒、第6気筒のいずれか1気筒に対応する分岐管に酸素センサ30が取付けられる。
【0032】
排気装置13は排気マニホールド33を備え、この排気マニホールド33と吸気配管17の端部とがEGR通路34で接続されることで、排気ガス中のNOx低減のために、排気マニホールド33内の排気ガスがEGR通路34を介して吸気配管17に戻される。
【0033】
図2に示すように、酸素センサ30は、分岐管24のエンジン本体11側の末端部に上から下へ鉛直方向に挿入されて取付けられ、酸素センサ30の先端に設けられた検出部30bにて分岐管24内を流れる吸気ガスの酸素濃度が検出される。なお、酸素センサ30は内部素子が取り付け点よりも下方に位置すればよく、必ずしも鉛直方向に挿入される例に限定されない。例えば、分岐管24に対して下方に向けて傾斜して取り付けられても良い。
【0034】
図3に示すように、分岐管24は、吸気チャンバ22からエンジン本体11の一端側へ斜めに且つ直線状に延びる上流側直管部24aと、この上流側直管部24aの先端からエンジン本体11の中央部側へ屈曲した屈曲管部24bと、この屈曲管部24bの先端から直線状に延びてエンジン本体11のシリンダヘッド側面にほぼ垂直に接続される下流側直管部24cとからなる。
上流側直管部24aと屈曲管部24bと下流側直管部24cとからなる分岐管24は、全体として、吸気チャンバ22からエンジン本体11に向かってエンジン長手方向のエンジン外側に張り出すように屈曲する屈曲部が形成された形状になっている。
【0035】
酸素センサ30は、分岐管24における屈曲管部24bの下流側直管部24c寄りの位置、又は下流側直管部24cに設けられ、且つ分岐管24の中心を通る軸線24dに対して、屈曲した分岐管24の内周側にオフセットして設けられている。
【0036】
図4(a)に示すように、丸パイプ状の分岐管24に、詳しくは、分岐管24の軸線24d(紙面表裏方向に延びる線であり、ここでは黒丸で示している。)を通る鉛直線40に対してオフセット量eだけオフセットした位置に、酸素センサ30が上から下へ挿入されて取付けられている。また、鉛直線40に対する許容傾斜角度θは0〜45°である。
【0037】
酸素センサ30は、分岐管24に取付けられるボディ30aと、このボディ30aの先端に設けられた検出部30bとからなる。
酸素センサ30の分岐管24への取付けは、例えば、酸素センサ30のボディ30aの外周面に形成されたおねじと分岐管24に形成されためねじとのねじ結合による。
図4(b)のように、分岐管24に代えて角パイプ状の分岐管25であってもよい。
【0038】
例えば、分岐管の側部に水平方向に延びるように酸素センサを取付ける場合には、分岐管の内壁面を伝わって重力により落ちてくる水滴が酸素センサに付着しやすくなるが、本実施形態では、酸素センサ30を分岐管24の上部に且つ鉛直方向に延びるように取付けることで、酸素センサ30への上記したような水滴付着を防止することができる。
略鉛直方向に上から下に向かって酸素センサ30が配置されるので、酸素センサ30の内部素子に伝わった水滴は酸素センサ30に留まることなく分岐管24の底に落下する。また、水滴は、酸素センサ30の近くに形成されている分岐管24の内壁面に沿って流下するため酸素センサ30の内部素子に伝わりにくい。
【0039】
以上に述べた酸素センサ配置構造の作用を次に説明する。
図5(a)に示すように、分岐管24内を吸気ガスが流れるときには、上流側直管部24aでは、吸気ガスは、矢印で示すように管内を一様な流れとなって直進するが、屈曲管部24bでは、吸気ガスの慣性の影響で上流側直管部24aでの流れがそのまま維持される。
【0040】
また、屈曲管部24bの下流側及び下流側直管部24cでは、吸気ガスは、矢印で示すように、屈曲した分岐管24の外周側内壁24fに寄った状態で流れ、屈曲した分岐管24の内周側内壁24gの近傍では、外周側内壁24f側に比べて大きな速度の流れがほとんど発生しない。このような内周側内壁24gの近傍に酸素センサ30が配置されている。
【0041】
また、図5(a)に示した吸気ガスの流れによって、図5(b)に示すように、分岐管24の内壁において、内周側内壁24gの方が外周側内壁24fよりも水滴45の付着が少なく、特に、内周側内壁24gの屈曲管部24bの下流側から下流側直管部24cに亘る範囲では、水滴45がほとんど付着していない。
【0042】
即ち、酸素センサ30は、エンジン本体11における最も外側の分岐管24に且つエンジン本体11寄りの末端部に配置されているため、吸気装置12(図1参照)の上流側の内壁に多くの水滴が付着して吸気装置12の最も下流である分岐管24の末端部では水滴45がほとんど無くなるのに加え、酸素センサ30は、軸線24dよりも屈曲した分岐管24の内周側にオフセットして配置されているために、分岐管24内の主要な流れが酸素センサ30に当たりにくくなり、水滴45は酸素センサ30に付着しにくくなる。
【0043】
水滴45は、屈曲管部24bではその慣性で直進するので、分岐管24の外周側内壁24fに当たりやすくなり、分岐管24の内周側内壁24g側へは進行しにくいため、酸素センサ30に水滴が付着しにくくなる。
以上の事より、酸素センサ30は、水滴の影響をほとんど受けなくなる。
【0044】
以上に説明したように、分岐管24に酸素センサ30を取付ける主な理由の二つ目は、エンジン本体11の最も端の気筒に対応する分岐管24は、分岐管24〜27のうちで最も屈曲の程度が大きくなっているからである。
分岐管24の屈曲の程度が大きければ、図5(a),(b)に示したように、酸素センサ30に水滴45がより付着しにくくなり、酸素センサ30の安定な酸素濃度検出を長期に亘って確保することができる。
【0045】
また、分岐管24に酸素センサ30を取付けることで、例えば、従来のように吸気チャンバに酸素センサを取付けるのに比べて吸気ガス中に含まれる水滴を各分岐管24〜27に分割して流すことができ、分岐管24内の水滴量が大幅に減少して酸素センサ30に水滴をより一層付着しにくくすることができる。
【0046】
更に、酸素センサ30を、分岐管24のエンジン本体11に近い末端部に取付けることで、エンジン本体11の第1気筒11Aの燃焼室に近い位置で酸素濃度を検出することになり、酸素センサ30で検出された酸素濃度に基づいて燃焼室での燃料の燃焼を制御する際に燃焼室内に吸入される酸素濃度の実態に近いデータを取得できるので、上記制御の精度向上を図ることができる。
【0047】
(第2実施形態)
以下に説明する第2実施形態については、図1に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図6に示すように、エンジン50は、エンジン本体11のシリンダヘッド一側面に接続された吸気装置52を備える4気筒ディーゼルエンジンである。
【0048】
吸気装置52は、吸気配管17に一端が接続されるとともに他端がエンジン本体11に接続された吸気マニホールド58を備える。
吸気マニホールド58は、接続端部21と、吸気チャンバ22と、この吸気チャンバ22からエンジン本体11に延びてエンジン本体11の各気筒11A、11B、11C、11Dに吸気ガスを供給する吸気管60とからなる一体成形品である。
吸気管60には、エンジン本体11に近い位置に且つ吸気配管17に近い側の第2気筒11Bに対応する位置に酸素センサ30が取付けられている。
【0049】
図7に示すように、吸気管60は、吸気チャンバ22に接続された主通路60Aと、この1本の主通路60Aから2つに分岐する第1分岐部61と、この第1分岐部61で分かれた上流枝管61a、61bと、一方の上流枝管61aが2つに分岐する第2分岐部62と、この第2分岐部62で分かれた下流枝管62a、62bと、他方の上流枝管61bが2つに分岐する第3分岐部63と、この第3分岐部63で分かれた下流枝管63a、63bと、第2分岐部62及び第3分岐部63のそれぞれを連通させる連通管64と、この連通管64の中間部に設けられた開閉バルブ66とからなり、下流枝管62a、62bと下流枝管63a、63bとはエンジン本体11の各気筒11A、11B、11C、11Dにそれぞれ連通し、酸素センサ30は、図8で説明する理由により、第2気筒11Bに連通する下流枝管62bに取付けられている。
【0050】
連通管64及び開閉バルブ66は、吸気管有効長さを可変にすることで各気筒に供給する吸気ガス量を変更可能な動圧過給機構70を構成するものである。
エンジンの低速回転時に開閉バルブ66を閉じると、連通管64内の吸気ガスの流通が遮断され、スロットルバルブ(不図示)から吸気管60のエンジン本体11側の端部までの吸気管有効長さが長くなるので、低速回転時に発生する吸気ガスの脈動を利用して圧力波に同調させて吸気ガス量を増加させることができ、エンジンの低速トルクを向上させることができる。
【0051】
また、エンジンの高速回転時に開閉バルブ66を開けると、連通管64が吸気ガスのバイパス通路となり、上記した吸気管有効長さが短くなるので、高速回転時に発生する吸気ガスの脈動を利用して吸気ガス量を増加させることができる。
【0052】
以上に述べた吸気管60の作用を次に説明する。
図8において、矢印Aで示すように、吸気ガスは、吸気チャンバ22から吸気管60の主通路60Aに流入すると、矢印B、Cで示すように、第1分岐部61で2つに分岐し、上流枝管61a、61bに分かれて流れる。
【0053】
このとき、吸気ガスに含まれる水滴45は、第1分岐部61で分岐した直後の上流枝管61a、61bの内側壁61c、61dに当たって付着し、更に、流れの途中で上流枝管61a、61bの外側壁61e、61fにも付着する。
【0054】
更に、吸気ガスは、上流枝管61a、61bから第2分岐部62、第3分岐部63を介して引き続き吸気ガスの慣性で矢印B、Cのように下流枝管62a、63bに流れ、また、矢印D、Eに示すように、第2分岐部62、第3分岐部63で分岐して下流枝管62b、63aにも流れる。
【0055】
このとき、上流枝管61a、61bを流れる吸気ガス中に残っている水滴45は、慣性で下流枝管62a、63bには進行しやすいが、下流枝管62b、63aは、上流枝管61a、61bに対しては逸れた位置にあるため、水滴45は下流枝管62b、63aに進行しにくい。従って、酸素センサ30を下流枝管62b(又は吸気配管17(図6参照)の位置によっては下流枝管63a)に配置することで、酸素センサ30へ水滴45を付着しにくくすることができる。
【0056】
図9に示すように、酸素センサ30を吸気管60の第2分岐部62(又は吸気配管17(図6参照)の位置によっては第3分岐部63)に配置してもよい。
これは、図8で説明したように、吸気ガス中の水滴の多くが第1分岐部61直後の上流枝管61a、61bの内側壁61c、61dや外側壁61e、61fに付着するため、図9に示した第2分岐部62での吸気ガスに残る水滴が少なくなっていて、水滴が酸素センサ30に付着しにくいからである。
【0057】
(第3実施形態)
以下に説明する第3実施形態については、図1に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図10に示すように、エンジン80は、シリンダブロック、シリンダヘッド等からなるエンジン本体81と、このエンジン本体81のシリンダヘッド一側面に接続された吸気装置82と、エンジン本体81のシリンダヘッド他側面に接続された排気装置83とを備える直列6気筒ディーゼルエンジンである。
エンジン本体81は、第1気筒81A、第2気筒81B、第3気筒81C、第4気筒81D、第5気筒81E及び第6気筒81Fが設けられている。
【0058】
吸気装置82は、吸気配管17に一端が接続されるとともに他端がエンジン本体11に接続された吸気マニホールド88を備える。
【0059】
吸気マニホールド88は、接続端部21と、吸気チャンバ22と、この吸気チャンバ22からエンジン本体81に延びてエンジン本体81の各気筒81A、81B、81C、81D、81E、81Fに吸気ガスを供給する吸気管90とからなる一体成形品である。
吸気管90には、エンジン本体81に近い位置に且つ吸気配管17に近い側の第3気筒81C(又は第1気筒)に対応する位置に酸素センサ30が取付けられている。
【0060】
吸気管90は、吸気チャンバ22に接続された主通路90Aと、この1本の主通路90Aから2つに分岐する第1分岐部91と、この第1分岐部91で分かれた上流枝管91a、91bと、一方の上流枝管91aが3つに分岐する第2分岐部92と、この第2分岐部92で分かれた下流枝管92a、92b、92cと、他方の上流枝管91bが3つに分岐する第3分岐部93と、この第3分岐部93で分かれた下流枝管93a、93b、93cとからなり、下流枝管92a、92b、92cと下流枝管93a、93b、93cとは、エンジン本体81の各気筒81A、81B、81C、81D、81E、81Fにそれぞれ連通している。
【0061】
3本の下流枝管93a、93b、93cのうち、下流枝管93bは上流枝管91aの延長線上に配置されるため、上流枝管91a内に残る水滴が下流枝管93bに流れ込みやすく、下流枝管93cへの水滴の流入が最も少なく、次に下流枝管93aへの水滴の流入が少ないため、酸素センサ30は、第3気筒81Cに連通する下流枝管92c(又は第1気筒81Aに連通する下流枝管92a)に取付けられる。
【0062】
尚、図3に示した第1実施形態では、分岐管24を、直線状に延びる上流側直管部24aと、屈曲した屈曲管部24bと、直線状に延びる下流側直管部24cとで構成したが、これに限らず、分岐管24を、単純な円弧形状、複数の円弧からなる湾曲形状としてもよく、要は、酸素センサ30が、分岐管24のエンジン本体11側の末端部に且つ分岐管24の中心を通る軸線24dに対して屈曲した分岐管24の内周側にオフセットして配置されていればよい。
【0063】
また、図8に示した第2実施形態では、酸素センサ30を下流枝管62bに配置したが、これに限らず、酸素センサ30を最も端の第1気筒11A(図6参照)に対応する下流枝管62aに配置する、詳しくは、屈曲する下流枝管62aのエンジン本体11側の末端部であって下流枝管62aの軸線よりも内周側にオフセットさせて配置してもよい。
【0064】
また、第1〜第3実施形態の何れにおいても酸素センサ30を吸気チャンバ22より下流の分岐管24や分岐部61、62、63に設置したが、吸気通路を構成する吸気チャンバ22内の吸気配管17側に設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エンジンの吸気装置に配置される酸素センサに好適である。
【符号の説明】
【0066】
10、50、80 エンジン
11、81 エンジン本体
17 吸気配管
22 吸気チャンバ(集合部)
24、25 分岐管(分岐通路)
24b 屈曲部(屈曲管部)
24d 軸線
28、60、90 吸気管
30 酸素センサ
61、62、63 分岐部(第1分岐部、第2分岐部、第3分岐部)
62a、62b、92a、92c 枝管(下流枝管)
91、92、93 分岐部(第1分岐部、第2分岐部、第3分岐部)
e 酸素センサのオフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気通路に吸気中の空燃比を測定するセンサが配置されたセンサ配置構造において、
前記吸気通路は、上流側に設けられた吸気配管と、この吸気配管の下流側に設けられるとともに、前記エンジンの各吸気ポートと連通して分岐通路を形成する複数の分岐管と各分岐管が接続された集合部を有する吸気マニホールドから構成され、
前記吸気配管が、前記分岐通路配列方向の一方側より前記集合部に接続するように配置され、
前記吸気配管よりも下流のうち、前記一方側の吸気通路にセンサが配置されていることを特徴とするセンサ配置構造。
【請求項2】
各分岐通路のうち、前記一方側の分岐通路にセンサが配置されていることを特徴とする請求項1記載のセンサ配置構造。
【請求項3】
前記一方側の分岐通路は、前記集合部から前記エンジンに向かって前記分岐通路配列方向の外側に張り出すように屈曲する屈曲部が形成され、前記センサは、分岐通路の中心を通る軸線よりも前記屈曲部の内周側にオフセットして配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ配置構造。
【請求項4】
前記センサは、各分岐通路のうち、前記エンジン寄りの末端部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のセンサ配置構造。
【請求項5】
複数の分岐通路からなる吸気管には分岐部が複数段設けられ、前記センサは、前記吸気管の上流側から2段目以降の分岐部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ配置構造。
【請求項6】
前記センサは、前記2段目以降の分岐部から分岐した分岐管であって前記分岐通路配列方向の中心側の分枝管に配置されていることを特徴とする請求項5記載のセンサ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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