説明

センタリングデバイス

【課題】 簡単な構造で管腔の湾曲状態や内径の変化に容易に対応できるセンタリングデバイスを提供すること。
【解決手段】センタリングデバイス1は、管腔内で内視鏡の挿入部の径方向移動を規制するセンタリングデバイスであって、挿入部を挿通する貫通孔5を有して一体に形成され、挿入部に対して先端位置を位置決めする先端固定部6と、先端固定部6よりも基端側に配され、先端固定部6に対して軸方向に進退可能な移動部7と、挿入部に対して基端位置を位置決めする基端固定部8と、移動部7と先端固定部6との間に配され、挿入部に対する移動部7の位置によって貫通孔5に対する径が拡縮する第一変径部(変径部)10と、移動部7と基端固定部8との間に配され、第一変径部10と同様の構造とされる第二変径部(変径部)11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内で内視鏡の挿入部の径方向移動を規制するセンタリングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス管,水道管等の管腔内面の傷や接続部の溶接状態を非破壊的に検査等する際、検査手段として内視鏡が広く使用されている。
内視鏡で管腔内面の計測を行う場合には、管腔内面の観察面と内視鏡の挿入部との距離が、挿入部の回転位置にかかわらず大幅に変わらないようにする必要がある。そのため、管腔内で挿入部の径方向位置を位置決めするため、管腔径に対応して挿入部外径よりも大きい径を有するセンタリングデバイスが種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
しかしながら、上記従来のセンタリングデバイスは、内視鏡にねじ止めされていることから材質が剛体であると考えられる。従って、例えばL字状に形成された管のように管自体が湾曲している場合には、センタリングデバイスを装着した状態で挿入部を挿通させることは困難となる。
また、小径部分と大径部分とが別体とされているので、構造が複雑となる。
さらに、大径部分の径が一定とされているので、挿入する管径に合わせたものを用意しなければならず、管腔内に凹凸があっても通過できない場合がある。
【特許文献1】特許第317413号公報(第7図、第8図)
【特許文献2】実用新案登録第2503900号公報(第4図、第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、簡単な構造で管腔の湾曲状態や内径の変化に容易に対応できるセンタリングデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係るセンタリングデバイスは、管腔内で内視鏡の挿入部の径方向移動を規制するセンタリングデバイスであって、前記挿入部を挿通する貫通孔を有して一体に形成され、前記挿入部に対して先端位置を位置決めする先端固定部と、該先端固定部よりも基端側に配され、前記先端固定部に対して軸方向に進退可能な移動部と、該移動部と前記先端固定部との間に少なくとも一つ配され、前記挿入部に対する前記移動部の位置によって前記貫通孔に対する径が拡縮する変径部とを備えている。
このセンタリングデバイスは、先端固定部に対して移動部が軸方向に進退移動することによって、変径部の径が変化して管腔内径に対応する径とすることができる。
【0006】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記変径部に、軸方向に延びる複数の拡縮用スリットが配され、各前記拡縮用スリット間に帯状部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このセンタリングデバイスは、先端固定部に対して移動部が軸方向に進退移動することによって、スリット幅が拡縮するとともに拡縮用スリット間に形成される帯状部の中心部が径方向に湾曲する。従って、帯状部の湾曲程度によって変径部の外径を変化させることができ、所望の管腔に合う径に調整することができる。
【0008】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記複数の拡縮用スリットの各スリット長さが同一とされ、周方向の各スリット間隔が同一とされていることを特徴とする。
【0009】
このセンタリングデバイスは、帯状部の幅と長さとをそれぞれ均等にすることができる。従って、帯状部を貫通孔に対して均等に湾曲させることができ、貫通孔に対して変径部を円形に拡開することができる。
【0010】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記複数の拡縮用スリットの各両端隅部が曲面状に形成されていることを特徴とする。
このセンタリングデバイスは、帯状部の湾曲に伴う拡縮用スリットの変形が長時間繰り返されても、拡縮用スリット両端への応力集中を緩和することができ、拡縮用スリット形状を長時間維持して帯状部の変形を抑えることができる。
【0011】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記変径部が、予め一定の拡開径を有して形成されていることを特徴とする。
このセンタリングデバイスは、管腔径が途中で細くなるような場合でも、移動部の軸方向移動によって、変形部の径を管腔の変化に応じて変化させることができ、管腔壁から変形部に対する径方向の外力を一定にすることができる。
【0012】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記挿入部に対して基端位置を位置決めする基端固定部を備えている。
このセンタリングデバイスは、移動部を軸方向に移動させて変径部の径を所定の大きさとした後、基端固定部にて基端部の位置決めをすることによって、変径部の径を所定の範囲内に維持することができる。
【0013】
また、本発明に係るセンタリングデバイスは、前記センタリングデバイスであって、前記基端固定部に、軸方向に延びる複数の固定用スリットが配されていることを特徴とする。
このセンタリングデバイスは、基端固定部を固定する際、固定用スリット間隔を調整することによって基端固定部を容易に変形することができ、挿入部に対する位置決めをより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構造で、かつ、一つのセンタリングデバイスで様々な管腔径に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
本実施形態に係るセンタリングデバイス1は、管腔内で内視鏡2の挿入部3の径方向移動を規制するセンタリングデバイスであって、図1及び図2に示すように、挿入部3を挿通する貫通孔5を有して一体に形成され、挿入部3に対して先端位置を位置決めする先端固定部6と、先端固定部6よりも基端側に配され、先端固定部6に対して軸方向に進退可能な移動部7と、挿入部3に対して基端位置を位置決めする基端固定部8と、移動部7と先端固定部6との間に配され、挿入部3に対する移動部7の位置によって貫通孔5に対する径が拡縮する第一変径部(変径部)10と、移動部7と基端固定部8との間に配され、第一変径部10と同様の構造とされる第二変径部(変径部)11とを備えている。
【0016】
センタリングデバイス1は、先端固定部6及び基端固定部8以外が樹脂等の柔軟な部材によって構成されている。
先端固定部6は、管状に形成されて先端側に配されており、先端固定部6の内面には、図3に示すように、挿入部3の外周面3Aに形成されたおねじ部12と螺合可能なめねじ部13が形成されている。めねじ部13は、挿入部3からの脱落を困難にするため、軸方向に2箇所に分かれて配される二重ねじ構造とされている。
【0017】
基端固定部8には、軸方向に延びる複数の固定用スリット15と、挿入部3に締付固定するための止め輪16とが配されている。ここで、固定用スリット15の端隅部15Aは曲面状に形成されている。
移動部7は、第一変径部10及び第二変径部11の軸方向長さをセンタリングデバイス1に対して略二分するように、軸方向の略中央部に配されている。
【0018】
第一変径部10及び第二変径部11には、図4(a)に示すように、軸方向に延びる8本の拡縮用スリット17が配され、各拡縮用スリット17間には8つの帯状部18がそれぞれ形成されている。各拡縮用スリット17は、第一変径部10及び第二変径部11共通の軸線上に配されている。ここで、拡縮用スリット17の両端の端隅部15Aは曲面状に形成されている。
【0019】
拡縮用スリット17の各スリット長さは同一の長さとされ、各スリットの周方向の間隔も同一間隔とされている。そのため、図4(b)に示すように、先端固定部6の位置を固定した状態で基端固定部8を先端固定部6の方向に移動させることによって、先端固定部6と移動部7、及び、移動部7と基端固定部8とが互いに接近する一方、各帯状部18は軸方向の圧縮力が負荷されて貫通孔5の径方向外方に湾曲して拡開し、第一変径部10及び第二変径部11が形成される。
【0020】
次に、本実施形態に係るセンタリングデバイス1の使用方法、及び、作用・効果について説明する。
まず、樹脂製の中空円管に拡縮用スリット17及び固定用スリット15とを付したものに対し、センタリングデバイス1の第一変径部10及び第二変径部11を拡開作成する。
即ち、先端固定部6を固定した状態で、基端固定部8を先端固定部6側に移動する。この際、センタリングデバイス1全体が一体に形成されているので、移動部7も基端固定部8の移動に伴って軸方向に移動する。
【0021】
このとき、第一変径部10及び第二変径部11の各帯状部18の軸方向の圧縮力が変化して径方向外方に膨らむように湾曲する。そして、挿入部3を挿入する図示しない管腔内径に対応する所定の径となるまで基端固定部8を移動して、第一変径部10及び第二変径部11の外径を調整する。
【0022】
次に、センタリングデバイス1の貫通孔5に内視鏡2の挿入部3を挿通して、センタリングデバイス1を挿入部3の先端近傍まで移動する。そして、挿入部3のおねじ部12と先端固定部6のめねじ部13とを螺合して、センタリングデバイス1の先端を挿入部3に固定する。
図5に示すように、所定の外径となるように再度調整した後、固定用スリット15をつぶすように止め輪16を締付けて、基端固定部8を挿入部3に固定する。
【0023】
この状態で、例えば、図6に示すように、小さい内径の小管腔20から大きい内径の大管腔21に変化する管腔内に挿入部3を挿入する。
この際、第一変径部10及び第二変径部11の各帯状部18が小管腔20の内壁から径方向内方に押圧される一方、先端固定部6と基端固定部8とが挿入部3にそれぞれ固定されているので、第一変径部10が小管腔20から大管腔21内に移動したとき、第一変径部10への上記押圧力が緩和され、移動部7が先端側に移動して第一変径部10が拡径する。
【0024】
一方、図7に示すように、大きい内径の大管腔21から小さい内径の小管腔20に変化する管腔内に挿入部3を挿入する場合、第一変径部10が大管腔21から小管腔20内に移動したとき、上述とは逆に、第一変径部10への押圧力が増加するとともに、移動部7が基端側に移動して第一変径部10が縮径する。
【0025】
こうして、管腔径が変化する場合でも、管腔全体の中心軸線Cの近傍に挿入部3を保持した状態で管腔内を挿通させることができる。
また、L字状の管腔内に挿入する場合には、センタリングデバイス1が柔軟部材で構成され、かつ、移動部7が軸方向に進退可能なので、第一変径部10及び第二変径部11の拡開径を大きく変化させることなく、センタリングデバイス1全体を湾曲させることができる。
【0026】
このセンタリングデバイス1によれば、先端固定部6に対して移動部7が軸方向に進退移動することによって、第一変径部10及び第二変径部11の径が変化して管腔内径に対応する径とすることができる。
【0027】
この際、基端固定部8の軸方向の移動量に応じて、拡縮用スリット17のスリット幅が拡縮するとともに拡縮用スリット17間に形成される帯状部18の中心部が径方向外方に湾曲する。従って、帯状部18の湾曲程度によって第一変径部10及び第二変径部11の外径を変化させることができ、所望の管腔に合う径に調整することができる。
【0028】
また、帯状部18の幅と長さとをそれぞれ均等にすることができ、帯状部18を貫通孔に対して均等に湾曲させることができ、貫通孔に対して第一変径部10及び第二変径部11を軸方向から見たときに円形に拡開することができる。
さらに、拡縮用スリット17の両端隅部18Aが曲面状とされているので、帯状部18の湾曲に伴う拡縮用スリット17の変形が長時間繰り返されても、拡縮用スリット17の両端隅部18Aの応力集中を緩和することができ、拡縮用スリット17の形状を長時間維持して帯状部18の変形を抑えることができる。
【0029】
また、移動部7を軸方向に移動させて第一変径部10及び第二変径部11の径を所定の大きさとした後、基端固定部8にて基端部の位置決めをすることによって、第一変径部10及び第二変径部11の径を所定の範囲内に維持することができる。
【0030】
この際、固定用スリット15間隔を調整することによって基端固定部8を容易に変形することができ、挿入部3に対する位置決めをより容易に行うことができる。また、拡縮用スリット17と同様に、固定用スリット15の端隅部15Aが曲面状とされているので、固定用スリット15の端隅部15Aの応力集中を緩和することができ、固定用スリット15の形状を長時間維持して基端固定部8の変形を抑えることができる。
【0031】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、樹脂製の円管部材から作製しているが、シード状の樹脂から作製しても構わない。
【0032】
また、基端固定部8を先端固定部6に対して軸方向に移動させることによって、移動部7も軸方向に移動して第一変径部10及び第二変径部11の径を変化させているが、例えば、柔軟な形状記憶合金等によってセンタリングデバイスを構成し、基端固定部を挿入部に固定しない状態で軸方向に移動可能として第一変径部及び第二変径部が予め一定の拡開径を有して形成されるように帯状部を湾曲させたものとしても構わない。
【0033】
このセンタリングデバイスを挿入部に装着して管腔内径が変化する管腔に挿入する場合、移動部のみならず基端部側も第一変径部及び第二変径部に負荷される径方向内方の押圧力の変化によって軸方向に移動して、第一変径部及び第二変径部の外径が変化する。従って、上述のように挿入部を保持することができる。
【0034】
さらに、図8に示すように、変径部25を一つのみ有するセンタリングデバイス26としても構わない。この場合、基端部側が移動部27とされることによって上述と同様の作用・効果を奏することができる。
【0035】
また、図9に示すように、第二変径部11よりも基端側に、第一変径部10及び第二変径部11と同様の構成を有する第三変径部(変径部)30を備えるセンタリングデバイス31としても構わない。
この場合、第一変径部10は先端固定部6と第一移動部(移動部)32との間に配され、第二変径部11は第一移動部32と第二移動部(移動部)33との間に配され、第三変径部30は第二移動部33と基端固定部8との間に配されている。
【0036】
このセンタリングデバイス31によれば、上記実施形態と同様の作用・効果を奏することができるが、第三変径部30を備えているので、L字状の管腔であっても、第一移動部32のみならず第二移動部33でもセンタリングデバイス31全体を湾曲させることができ、センタリングデバイス31をより柔軟に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスが配された内視鏡を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスを示す(a)正面図、(b)中心軸方向先端図、(c)斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスを内視鏡の挿入部に装着した状態を示す一部断面を含む説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスの作成状態を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスの変径部の径を調整する状態を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスの使用状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るセンタリングデバイスの使用状態を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るセンタリングデバイスを示す正面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るセンタリングデバイスを示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、26、31 センタリングデバイス
2 内視鏡
3 挿入部
5 貫通孔
6 先端固定部
7、27 移動部
8 基端固定部
10 第一変径部(変径部)
11 第二変径部(変径部)
15 固定用スリット
17 拡縮用スリット
18 帯状部
25 変径部
30 第三変径部(変径部)
32 第一移動部(移動部)
33 第二移動部(移動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内で内視鏡の挿入部の径方向移動を規制するセンタリングデバイスであって、
前記挿入部を挿通する貫通孔を有して一体に形成され、
前記挿入部に対して先端位置を位置決めする先端固定部と、
該先端固定部よりも基端側に配され、前記先端固定部に対して軸方向に進退可能な移動部と、
該移動部と前記先端固定部との間に少なくとも一つ配され、前記挿入部に対する前記移動部の位置によって前記貫通孔に対する径が拡縮する変径部とを備えていることを特徴とするセンタリングデバイス。
【請求項2】
前記変径部に、軸方向に延びる複数の拡縮用スリットが配され、各前記拡縮用スリット間に帯状部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンタリングデバイス。
【請求項3】
前記複数の拡縮用スリットの各スリット長さが同一とされ、
周方向の各スリット間隔が同一とされていることを特徴とする請求項2に記載のセンタリングデバイス。
【請求項4】
前記複数の拡縮用スリットの各両端隅部が曲面状に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のセンタリングデバイス。
【請求項5】
前記変径部が、予め一定の拡開径を有して形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のセンタリングデバイス。
【請求項6】
前記挿入部に対して基端位置を位置決めする基端固定部を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のセンタリングデバイス。
【請求項7】
前記基端固定部に、軸方向に延びる複数の固定用スリットが配されていることを特徴とする請求項6に記載のセンタリングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−227125(P2006−227125A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38448(P2005−38448)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】