説明

ゼオライト分離膜の製造方法

【課題】支持体表面積あたりの粒界発生の頻度を制御でき、共存成分の粒界通過を抑制し高濃縮条件での膜分離性能を向上するゼオライト分離膜の製造方法を提供する。
【解決手段】ゼオライト分離膜の製造方法は、支持体となる多孔質管1の表面にゼオライト結晶種粒子4含有スラリーを固着させ、水熱合成法により同結晶種からゼオライト膜を2次成長させる方法において、多孔質管表面へのゼオライト結晶種粒子の固着工程で、規則的な目開きを有するスクリーン2を多孔質管の表面に外装し、該スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを塗布し、スクリーン目開きに従った規則的な分散パターンで同スラリーを多孔質管の表面に固着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシ、サトウキビ等のバイオマス原料を発酵してエタノールを生成させるエタノール製造プラントにおいて、エタノール精製工程で使用されるエタノール/水の膜分離装置、また、各種含水有機溶剤から水を除去して組成濃度の高い有機溶剤を回収する膜分離装置等の主体をなすゼオライト分離膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼオライト分離膜は、ゼオライト結晶種粒子を含むスラリーに支持体となる多孔質管を浸漬した後、スラリー付着層を室温または加熱条件下で乾燥させて多孔質管の表面に該種粒子を固着させ、これを水熱合成によりゼオライト膜に2次成長させる方法で製造されていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009一66528号公報 段落[0022]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来法では、多孔質管表面に対するゼオライト結晶種粒子含有スラリーの付着状態はきわめて不均一であり、孔質管に付着したスラリーの乾燥によって同粒子の付着割合(管表面積当たり)は局所的に異なったものとなった。このため、2次成長によって水熱合成されるゼオライト結晶は、このような不均一な結晶種に依存して成長することになり、結晶成長は非常に不均一となった。その結果、得られるゼオライト層は厚さの不均一なものとなり、結晶粒界の存在を制御することが不可能であった。
【0005】
本発明は、従来法のこのような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体となる多孔質管の表面にゼオライト結晶種粒子含有スラリーを固着させ、水熱合成法により同結晶種からゼオライト膜を2次成長させる方法において、多孔質管表面へのゼオライト結晶種粒子の固着工程で、規則的な目開きを有するスクリーンを多孔質管の表面に外装し、該スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを塗布し、スクリーン目開きに従った規則的な分散パターンで同スラリーを多孔質管の表面に固着させることを特徴とするゼオライト分離膜の製造方法である。
【0007】
本発明において、スクリーンの目開きは0.001〜0.2mmであることが好ましい。ゼオライト結晶種粒子の平均径は0.0001〜0.005mmであることが好ましい。スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを加圧しながら塗布することが好ましい。スクリーンの厚みは0.01〜0.3mmであることが好ましい。ゼオライト種はLTA、FAUまたはMFIであることが好ましい。多孔質管は高純度アルミナからなることが好ましい。水熱合成法の反応温度は75〜200℃であることが好ましい。水熱合成法の反応時間は3〜48時間であることが好ましい。
【0008】
使用するスクリーンは、規則的な細孔を持った薄いシート状のものであれば良く、材質として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ナイロン(登録商標)、テトロン(登録商標)等が使用可能である。また、例えばステンレス鋼製の網、あるいはまたステンレス鋼等の金属製の平板に規則的に孔を穿ったもの(メタルメッシュ)でも良い。シルクスクリーンも使用できる。
【0009】
スクリーンを多孔質管からの取り外しは、スラリー塗布後かつ水熱合成反応前に適宜行って良い。例えば、多孔質管の表面にゼオライト結晶種含有スラリーを塗布した後、またはこの状態で乾燥した後、スクリーンを多孔質管から取り外す。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゼオライト分離膜の製造方法によれば、規則的な目開きを有するスクリーンを多孔質管の表面に外装し、該スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを塗布し付着させるので、スクリーン目開きの仕様条件(孔開きの面積、孔径)、結晶種スラリーの濃度を所定値に設定することで、多孔質管の表面に付着する結晶種粒子群(クラスター)の大きさおよび相互間隔を一定に制御することができる。したがって、その後の水熱合成反応によって、結晶種を起点として成長する個々のゼオライト結晶の成長速度および大きさを均一に制御でき、規則性の高いゼオライト層を形成できる。このことは、支持体表面積あたりの粒界発生の頻度を制御できることを意味するものであり、共存成分の粒界通過を抑制したゼオライト分離膜の製造を可能にし、高濃縮条件すなわち水分吸着量の少ない条件における膜分離性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ゼオライト分離膜の製造方法の一部を示す概略フローシートである。
【図2】ゼオライト分離膜の試験装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明を具体的に説明するために、本発明の実施例を挙げる。
【0013】
実施例1
1)ゼオライト分離膜の合成
図1に示すように、支持体となるセラミック多孔質管(1)(外形16mm、内径12mm)の表面に碁盤目状の規則的な目開きを有するスクリーン(2)(ステンレス鋼製の網、500メッシュ)を密着状に外装した。次いで、スクリーン(2)を通して多孔質管(1)の表面にA型ゼオライト結晶種粒子(東ソー株式会社製「ゼオラム」)を含む水性スラリー(0.10wt%)をへらを使って塗布し、スラリー層(3)を形成した。この状態で室温で2時開放置後、多孔質管(1)からスクリーン(2)を取り外し、スクリーン(2)の目開きに従った規則的な分散パターンで結晶種粒子含有スラリーを多孔質管(1)の表面に残した。その後37℃で1晩乾燥し、ゼオライト結晶種粒子(4)を支持体(1)の表面に固着させた。
【0014】
次に、このゼオライト結晶種固着多孔質管を反応ゲル液(組成NaO:SiO:A1:HO=88:100:4:3960)に浸漬し、100℃で4時間、水熱合成を行った。合成後のゼオライト膜付き多孔質管を純水で洗浄した後、室温で1昼夜乾燥させた。こうして、ゼオライト分離膜(長さ60mm、膜有効面積10.1cm)を形成した。
【0015】
2)性能試験
得られたゼオライト分離膜について、図2に示す試験装置を用いて、下記の条件でエタノール/水の浸透気化試験(PV試験)を行った。
【0016】
試験条件: 膜有効面積=10.1cm
エタノール/水=90wt%/10wt%
反応温度=75℃
図2中、(5)は真空系、(6)はスターラ、(7)は高温槽、(8)はゼオライト分離膜、(9)は液体窒素トラップ、(10)は真空トラップ、(11)は真空ポンプである。
【0017】
試験の結果、高濃縮条件すなわち水分吸着量の少ない条件において、膜分離性能が向上することが確認できた。
【符号の説明】
【0018】
(1)支持体となるセラミック多孔質管
(2)スクリーン
(3)スラリー層
(4)ゼオライト結晶種粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体となる多孔質管の表面にゼオライト結晶種粒子含有スラリーを固着させ、水熱合成法により同結晶種からゼオライト膜を2次成長させる方法において、多孔質管表面へのゼオライト結晶種粒子の固着工程で、規則的な目開きを有するスクリーンを多孔質管の表面に外装し、該スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを塗布し、スクリーン目開きに従った規則的な分散パターンで同スラリーを多孔質管の表面に固着させることを特徴とするゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項2】
スクリーンの目開きが、0.001〜0.2mmであることを特徴とする請求項1記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項3】
ゼオライト結晶種粒子の平均径が、0.0001〜0.005mmであることを特徴とする請求項1または2記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項4】
スクリーンを通して多孔質管の表面に前記スラリーを加圧しながら塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項5】
スクリーンの厚みが、0.01〜0.3mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項6】
ゼオライト種が、LTA、FAUまたはMFIであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項7】
多孔質管が、高純度アルミナからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項8】
水熱合成法の反応温度が、75〜200℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。
【請求項9】
水熱合成法の反応時間が、3〜48時間であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のゼオライト分離膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−24656(P2012−24656A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162952(P2010−162952)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】