説明

ゼラチンスポンジ

【課題】密な気泡構造を有し、さらになめらかな感触を有するゼラチンスポンジ体を提供する。
【解決手段】ゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し、凍結したのち、真空凍結乾燥を行うことにより得られる。また、ポリアニオンの添加量をゼラチン100部に対して1〜50部とすること、真空凍結乾燥後に減圧下で、120〜140℃の温度で10〜48時間加熱あるいは、ゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンの混合時に架橋剤を添加すること、ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時にセルロースなどの繊維径が10〜500μm、繊維長が0.1〜5mmである繊維状物、絹パウダーを分散させること、または、可塑剤を添加すること等が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼラチンスポンジ体に関し、詳細には、密な気泡構造で水湿潤時の強度が補強され、さらに乾燥時の感触が良好なゼラチンスポンジ体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱傷や褥傷に生じる皮膚欠損側面に適用し、治療を促進させる創傷被覆剤、創傷用グラフトおよび培養皮膚基材として、ゼラチン等からなるスポンジ状成形体が利用されている。(例えば特許文献1)
このようなスポンジ状成形体では、創傷被覆剤および創傷用グラフトにおいては、スポンジ内へ血管や繊維芽細胞を侵入させ欠損した皮膚細胞を再構築させ、また、培養皮膚基材においては、繊維芽細胞や角質化細胞などの懸濁液を基材へ滴下し密着させ一定期間培養し作成するため、スポンジ表面・内部の空孔径やその連続性、内部空孔の形態が皮膚細胞形成に影響する。
【0003】
培養皮膚は、一般にその基材と皮膚由来の繊維芽細胞や角質化細胞などより構成される。該培養皮膚を皮膚欠損部位に適用したとき、前記繊維芽細胞や角質化細胞などより産生される液性因子により、創縁からの繊維芽細胞、角質化細胞、血管内皮細胞の遊走・増殖を促進させ、皮膚を再構築させるといわれている。培養皮膚は前記繊維芽細胞や角質化細胞などの懸濁液を基材へ滴下し、接着させて一定期間培養して作製することができる。培養皮膚基材がスポンジ状成型体である場合、スポンジ表面の空孔径が一定であり、さらに内部空孔の形態も一定であれば、滴下した細胞は一様に基材に接着し得ると考えられ、作製した培養皮膚は一定の創傷治癒能力が期待される。
しかしながら、従来のスポンジ状成形体からなる培養皮膚基材は、内部空孔の大きさが不均一であり、配向性も有しないため、滴下した細胞の一様な接着を期待することができず、また一定の創傷治癒能力も期待することができない。
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/057121号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また従来のゼラチンスポンジ体は、ゼラチン水溶液を冷却してゲル化、凍結させたのち、真空凍結乾燥を行うことにより製造されていたが、ゲル化時にゼラチンが結晶化するために、まだらで気泡構造が粗いスポンジ体しか得られなかった。
本発明は、上記課題を解決する為になされたものであり、密な気泡構造を有し、さらになめらかな感触を有するゼラチンスポンジ体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、銑意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することによって、上記目的が達成され、本発明を成すに至った。
即ち本発明は、以下の通りである。
(1)ゼラチン水溶液とポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し、凍結したのち、真空凍結乾燥を行うことで得られたゼラチンスポンジ体。
(2)塩状態のポリアニオンを用いた(1)に記載のゼラチンスポンジ体。
(3)ポリアニオンの添加量をゼラチン100部に対して1〜50部とした(1)に記載のゼラチンスポンジ体。
(4)真空凍結乾燥後に減圧下で、120〜140℃の温度で10〜48時間加熱あるいは、前記混合時に架橋剤を添加した(1)に記載のゼラチンスポンジ体。
(5)酸処理ゼラチン水溶液をpH5〜7に調整した後、塩状態のポリアニオンを混合した(1)〜(4)に記載のゼラチンスポンジ体。
(6)酸処理ゼラチンの等イオン点がpH8〜9である(1)〜(5)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
(7)酸処理ゼラチンが魚由来のものである(1)〜(6)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
【0007】
(8)前記混合時に繊維状物を分散させた(1)〜(7)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
(9)繊維状物がセルロースである(8)に記載のゼラチンスポンジ体。
(10)繊維状物の繊維径が10〜500μm、繊維長が0.1〜5mmである(8)に記載のゼラチンスポンジ体。
(11)前記混合時に絹パウダーを分散させた(1)〜(8)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
(12)絹パウダーの粒径が100μm以下である(11)に記載のゼラチンスポンジ体。
(13)絹パウダーの粒径が10μm以下である(11)または(12)に記載のゼラチンスポンジ体。
(14)絹パウダーの添加量が,乾燥重量比で1%以上である(11)〜(13)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
(15)絹パウダーの添加量が,乾燥重量比で10%以上50%未満である(11)〜(14)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
(16)前記混合時に可塑剤を添加した(1)に記載のゼラチンスポンジ体。
【0008】
(17)ゼラチン水溶液とポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し凍結したのち、真空凍結乾燥を行うゼラチンスポンジ体の製造方法。
(18)塩状態のポリアニオンを用いる(17)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(19)ポリアニオンの添加量をゼラチン100部に対して1〜50部とする(17)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(20)真空凍結乾燥後に減圧下で、120〜140℃の温度で10〜48時間加熱あるいは、前記混合時に架橋剤を添加する(17)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(21)酸処理ゼラチン水溶液をpH5〜7に調整した後、塩状態のポリアニオンを混合した(17)〜(20)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(22)酸処理ゼラチンの等イオン点がpH8〜9である(17)〜(21)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(23)酸処理ゼラチンが魚由来のものである(17)〜(22)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
【0009】
(24)前記混合時に繊維状物を分散させる(17)〜(23)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(25)繊維状物がセルロースである(24)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(26)繊維状物の繊維径が10〜500μm、繊維長が0.1〜5mmである(24)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(27)前記混合時に絹パウダーを分散させた(17)〜(24)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(28)絹パウダーの粒径が100μm以下である(27)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(29)絹パウダーの粒径が10μm以下である(27)または(28)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(30)絹パウダーの添加量が,乾燥重量比で1%以上である(27)〜(29)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(31)絹パウダーの添加量が,乾燥重量比で10%以上50%未満である(27)〜(30)のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
(32)前記混合時に可塑剤を添加する(17)に記載のゼラチンスポンジ体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゼラチンスポンジ体は、ゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し、凍結したのち、真空凍結乾燥を行うことで、密な気泡構造を有することができる。
また、真空凍結乾燥後に減圧下で120〜140℃の温度で10〜48時間加熱あるいは、ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時に架橋剤を添加することや、ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時に繊維物と絹パウダーを分散させたことにより、上記スポンジ体の水湿潤時の強度を優れたものとしたり、乾燥時及び湿潤時の感触をなめらかなものとしたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のゼラチンスポンジ体及びゼラチンスポンジ体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のゼラチンスポンジ体は、ゼラチン水溶液とポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し、凍結したのち、真空凍結乾燥を行うことで得られる。
ゼラチン水溶液とポリアニオンを混合するとポリイオンコンプレックスを形成し、ゼラチン水溶液のpH条件によっては沈殿物となる。このため、ゼラチン水溶液のpHはポリイオンコンプレックスが形成されても沈殿物の発生しないpH5〜11であり、pH5〜7が好ましい。
また、塩になっていないポリアニオンをゼラチン水溶液に加えると添加量に応じてゼラチン水溶液のpHが低下する。上記の通りpHが5以下になると、急激にポリイオンコンプレックスの沈殿が生じてしまうので、特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩状態で添加するのが好ましい。
【0012】
ゼラチン水溶液とポリアニオンを混合する際の混合比としては、特に限定されないが、ゼラチン100部に対しポリアニオン1〜50部が好ましい。
ポリアニオンの混合量が少ないと気泡構造を密にする効果に欠け、多いとゼラチン固有の特性・感触が少なくなることがある。
本発明に用いられるゼラチン水溶液のゼラチンとしては、特に限定されないが、Aタイプゼラチンと呼ばれる酸処理ゼラチンであることが好ましく、特に限定されないが、等イオン点がpH8〜9であることが好ましい。また、酸処理ゼラチンとしては、特に限定されないが、魚由来であることが好ましい。
【0013】
本発明に含まれるポリアニオンは、特に限定されないが、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、水に可溶で、かつ、官能基としてカルボキシル基をもつ高分子であり、生体に対して強い毒性を示さないものであれば、生体由来の天然高分子でも、合成高分子でも、いずれを用いてもよい。また、前述の通りポリアニオンは塩状態が好ましい。
【0014】
また、本発明に係るゼラチンスポンジ体は、真空凍結乾燥後に減圧下で120〜140℃の温度で10〜48時間加熱あるいは、ゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンの混合時に架橋剤を添加、またはゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンの混合時に繊維物を分散、もしくは可塑剤を添加することにより、水湿潤時の強度に優れたものとなる。
【0015】
ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時に添加する架橋剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の多価エポキシ化合物等が好ましい。ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時に添加する繊維状物としては、特に限定されないが、セルロースに代表される親水性の繊維が好ましい。疎水性の繊維でも親水処理を施し、ゼラチン、ポリアニオン混合水溶液中に均一に分散できればよい。
前記繊維状物の繊維径は、10〜500μm、繊維長は0.1〜5mmが好ましい。繊維径が細すぎると補強効果が弱くなり、太すぎると肌への感触が悪くなることがある。繊維長は短すぎると補強効果が弱くなり、長すぎると感触が優れなくなることがある。
本発明のゼラチンスポンジ体における、該繊維状物の添加量は、特に限定されないが、ゼラチン100部に対して、10〜200部が適当であり、添加量が少ないと補強効果に欠け、添加量が多すぎるとかえって弱くなることがある。
【0016】
本発明に係るゼラチンスポンジ体は、ゼラチン水溶液と塩状態のポリアニオンの混合時に絹パウダーを分散することにより、乾燥時の感触がなめらかなものとなる。
【0017】
ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合時に添加する絹パウダーとしては、ゼラチン、ポリアニオン混合水溶液中に均一に分散できるものであれば、特に限定されない。
前記絹パウダーの粒径は100μm以下であるのが好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。粒径が100μm以上だと滑らかな感触が得られないことがある。
本発明のゼラチンスポンジ体における、該絹パウダーの添加量は、特に限定されないが、ゼラチンに対し乾燥重量比で1%以上であるのが好ましく、10%以上50%未満であることがさらに好ましい。添加量が1%以下では絹パウダー特有のなめらかさが得られず、また、50%を超えると感触に差がなくなることがある。
【0018】
なお、ポリイオンコンプレックスの沈殿を形成させることなく混合したゼラチンとポリアニオンとの混合液は粘度が上昇し、混合液を冷却してゲル化する間に繊維状物や絹パウダーが沈降して分離することがない。
【0019】
また、乾燥時のスポンジ体に柔軟性が求められる場合は、柔軟性を付与するために可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、特に限定されないが、グリセリン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン等、いずれを用いてもよい。水不溶性の可塑剤を添加する場合は、乳化剤との併用が好ましい。
【0020】
以下に本発明のゼラチンスポンジ体の製造方法についてより具体的に説明する。
ゼラチン水溶液とポリアニオンの混合液をステンレス容器に気泡が混入しないように充填し、5℃の冷蔵庫内で予備冷却し気泡構造を安定させた後、−60℃の送風型冷凍庫で凍結する。
得られた凍結ゼラチン溶液ブロックを50Pa以下の真空度で真空凍結乾燥を行い、ブロック状のスポンジ体を得る。真空凍結乾燥の終点は圧力上昇法で確認できる。
【0021】
さらに上記ブロック状のスポンジ体を真空乾燥機中100Pa以下・120℃で加熱脱水架橋を行う。加熱脱水架橋を行うことで、水湿潤時の強度を付与したスポンジ体を得ることができる。また、前記混合液に架橋剤を添加する場合は、加熱脱水架橋を行わなくてもよい。
【0022】
ゲル化時の形状でスポンジ体の形状は決まり、シート状のスポンジ体、ブロック状のスポンジ体、さらにはブロック状のスポンジ体をスライスしてシート状のスポンジ体等、用途に合わせた形状のゼラチンスポンジ体を得ることができる。
【実施例】
【0023】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
サケ皮を脱脂、水洗後、熱水で抽出したゼラチンを用い、pH5.8の5%ゼラチン水溶液250gに0.5%キサンタンガム水溶液250g(ゼラチン固形分100に対して10部)加え、50℃の温水浴中で攪拌機でよく混合した。この時、水溶液の粘度は上昇したが沈殿の発生は認めなかった。
さらに3mmに粉砕されたパルプを水に4%分散させたスラリー状パルプ250g(ゼラチン固形分100に対して80部)を加え、50℃の温水浴中で攪拌機により混合し、パルプ分散ゼラチン溶液を得た。
上記パルプ分散ゼラチン溶液を120mm×170mm×50mm(深さ)のステンレス容器に30mmの厚さに気泡が混入しないように注意深く充填し、そのステンレス容器を5℃の冷蔵庫内に12時間以上放置した後、−60℃の送風型冷凍庫内に1時間放置し、ゼラチン溶液を凍結させ凍結ブロックを得た。
上記凍結ブロックを50Pa以下の真空度で真空凍結乾燥を行い、ブロック状のスポンジ体を得た。さらにブロック状のスポンジ体を真空乾燥機中で、100Pa以下・120℃で48時間放置し、加熱脱水架橋を行った。
そのブロック状スポンジ体を1.5mmの厚さにスライスし、スポンジ体シートを得た。得られたスポンジ体シートの外観像写真を図1に、電子顕微鏡写真を図2に示す。得られたスポンジ体シートは均一な気泡構造をもった感触のよいものであった。
また、スポンジ体シートの表面のきめの細かさの指標として、色差計(ミノルタ(株)製 CR−300)により明度指数を測定した。ランダムに5ヶ所測定した明度指数は、88.9±2.52(平均±SD)であった。
次に、スポンジ体シートを50mm×50mmの大きさに切り取り、水に浸したところ瞬時に吸水した。吸水したシートは端をつまんで持ち上げても破れることなく、架橋剤を用いなくても肌に密着させるパック用シートとして充分な強度をもっていた。
【0024】
実施例2
キサンタンガムをγ−ポリグルタミン酸ナトリウムに代えた以外、実施例1と同様にスポンジ体シートを作製した。得られたスポンジ体シートの外観像写真を図3に、電子顕微鏡写真を図4に示す。
得られたスポンジ体シートは均一な気泡構造をもった感触のよいものであった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、86.2±3.54(平均±SD)であった。
また、スポンジ体シートの吸水性・強度共に実施例1と同様であった。
【0025】
実施例3
サケ皮を脱脂、酸処理、水洗後、熱水で抽出したゼラチンにクエン酸を用いてpH6.0に調整した5%ゼラチン水溶液250gに0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC1280:ダイセル化学工業(株)製)水溶液250g(ゼラチン固形分100に対して10部)加え、50℃の温水浴中で攪拌機によりよく混合した。さらに、3mmに粉砕されたパルプを水に4%分散させたスラリー状パルプ125g(ゼラチン固形分100に対して40部)、平均粒径5μmの絹パウダーを水に4%分散させたスラリー状絹パウダー62.5g(ゼラチン固形分100に対して20部,全固形分中11.6%)、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.25g(ゼラチン固形分100に対して2部)を加え、50℃の温水浴中で攪拌機により1時間混合した。
上記水溶液を120mm×170mm×50mm深さのステンレス容器に20mmの厚さに気泡が混入しないように注意深く充填し、そのステンレス容器を5℃の冷蔵庫内に12時間以上放置した後、−60℃の送風型冷凍庫内に1時間放置し、ゼラチン溶液を凍結させ凍結ブロックを得た。
上記凍結ブロックを50Pa以下の真空度で真空凍結乾燥を行い、ブロック状のスポンジ発泡体を得た。そのブロック状スポンジ発泡体を1.5mmの厚さにスライスし、スポンジ発泡体シートを作成した。
得られたスポンジ体シートは均一で密な気泡構造をもち、柔軟で感触は良好な、絹パウダーによる独特ななめらかなものであった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、89.0±1.67(平均±SD)であった。
また、スポンジ体シートの吸水性・強度共に実施例1と同様であり、肌の細かい部分への密着性も良好であった。
【0026】
実施例4
スラリー状絹パウダーに代えてスラリー状パルプを増量した以外は実施例3と同様にスポンジ体シートを作成した。
得られたスポンジ体シートは均一な気泡構造をもち、柔軟で感触は良好であったが、なめらかさに欠けるものであった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、86.5±1.77(平均±SD)であった。
また、スポンジ体シートの吸水性・強度共に実施例3と同様であった。
【0027】
比較例1
0.5%キサンタンガム水溶液250gを水250gに代えた以外、実施例1と同様スポンジ体シートを作製した。得られたスポンジ体シートの外観像写真を図5に、電子顕微鏡写真を図6に示す。
得られたスポンジ体シートはまだらな外観でざらついた感触のものであった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、69.5±1.29(平均±SD)であった。
【0028】
比較例2
キサンタンガムをアニオン性官能基をもたないグアーガムに代えた以外、実施例1と同様にスポンジ体シートを作製した。得られたスポンジ体シートの外観像写真を図7に、電子顕微鏡写真を図8に示す。
得られたスポンジ体シートはまだらな外観でざらついた感触のものであった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、72.5±1.77(平均±SD)であった。
【0029】
比較例3
実施例1のゼラチン水溶液にクエン酸を添加してpHを4.5に調製したゼラチン水溶液に、0.5%キサンタンガム水溶液250gを加え、50℃の温水浴中で攪拌機により混合したところ沈殿物が発生し、その溶液を5℃の冷蔵庫中に12時間放置してもゲル化ができなかった。
【0030】
比較例4
実施例1のパルプ分散ゼラチン溶液に10%クエン酸水溶液を加えてpHを4.5にしたところ、沈殿物が発生し、その溶液を5℃の冷蔵庫中に12時間放置してもゲル化ができなかった。
【0031】
比較例5
カルボキシメチルセルロースナトリウムをアニオン性官能基をもたない増粘剤であるグアーガムにした以外は実施例3と同様に行った。
得られたスポンジ体シートはまだらな外観でざらついた感触のものであり、絹パウダー含有による感触の向上は認められなかった。
また、スポンジ体シートをランダムに5ヶ所測定した明度指数は、70.5±1.57(平均±SD)と低値であった。
【0032】
以上から明らかなように、本発明に係る実施例1〜4のゼラチンスポンジ体は気泡構造が密で、水湿潤時の強度に優れている。また、実施例3のゼラチンスポンジ体は乾燥時の感触もなめらかである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のゼラチンスポンジ体から得られる成形品は、細胞を培養する基材や化粧水等を
含浸させたスキンケアシートとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1で得られたゼラチンスポンジ体の外観像写真である。
【図2】実施例1で得られたゼラチンスポンジ体の電子顕微鏡像写真である。
【図3】実施例2で得られたゼラチンスポンジ体の外観像写真である。
【図4】実施例2で得られたゼラチンスポンジ体の電子顕微鏡像写真である。
【図5】比較例1で得られたゼラチンスポンジ体の外観像写真である。
【図6】比較例1で得られたゼラチンスポンジ体の電子顕微鏡像写真である。
【図7】比較例2で得られたゼラチンスポンジ体の外観像写真である。
【図8】比較例2で得られたゼラチンスポンジ体の電子顕微鏡像写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン水溶液とポリアニオンをpH5〜11の条件で混合し、冷却してゲル化し、凍
結したのち、真空凍結乾燥を行うことで得られたゼラチンスポンジ体。
【請求項2】
塩状態のポリアニオンを用いた請求項1に記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項3】
酸処理ゼラチン水溶液をpH5〜7に調整した後、塩状態のポリアニオンを混合した請求項1または2に記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項4】
酸処理ゼラチンの等イオン点がpH8〜9である請求項1〜3のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項5】
酸処理ゼラチンが魚由来のものである請求項1〜4のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項6】
前記混合時に繊維状物を分散させた請求項1〜5のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項7】
前記混合時に絹パウダーを分散させた請求項1〜6のいずれかに記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項8】
絹パウダーの粒径が100μm以下である請求項7に記載のゼラチンスポンジ体。
【請求項9】
絹パウダーの添加量が、乾燥重量比で1%以上である請求項7又は8記載のゼラチンスポンジ体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−9185(P2007−9185A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138972(P2006−138972)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】