説明

ゼラチン剥離層およびその使用方法

【課題】電子写真感光体の基体上に形成された感光体コーティングを基体から除去する方法を提供する。
【解決手段】感光体の基体10を再生する方法であって、前記感光体は、基体と、前記基体上に形成されたゼラチン剥離層9と、前記ゼラチン剥離層9上に形成された1または複数のコーティング層と、を含み、前記方法は、前記感光体を室温の液体浴に浸漬する工程と、前記液体浴の温度を上昇させて前記ゼラチン剥離層9を溶解させる工程と、前記1または複数のコーティング層を前記基体から分離する工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、電子写真感光体の基体上に形成された感光体コーティングを基体から除去する方法に関する。より具体的には、本発明は、感光体基体と1または複数のコーティング層の間にゼラチン剥離層を含む電子写真感光体に基づく、感光体コーティングの除去方法を開示する。本発明は、電子写真感光体を再生、再利用、または再製する、簡便且つ効率的な方法を提供する。
【0002】
電子写真技術においては、剛性ドラムの形態をした感光体用の基体は直線性および丸み、最適な表面反射率および粗さ、ならびに所望の厚さの点で高い寸法精度を有している必要がある。そのような寸法精度を達成するために、サンドブラスト、ガラスビーズホーニング、ダイヤモンドツール等を用いて高精度で基体表面を研磨する。基体表面を形成した後、電荷発生層および電荷輸送層またはそれらが混合した単層等であり得る1以上の感光性材料コーティングを基体に塗布して感光体デバイスが完成される。
【0003】
現行の感光体は通常、直線性、丸み、および座ぐり穴(counter bore)の同心性に要求される特定の寸法を有するアルミニウム基体からなり得る。例えば、原材料コストの効率化のためには壁を最小限にする必要があるが、1回で加工するための条件と仕上げ後の感光体デバイスの物理的条件とを満たすのに十分な厚さである必要もある。ダイヤモンド加工で鏡面仕上げにした後ガラスビーズホーニングすることで、最大の反射率を有する欠陥のない表面が得られる。最大の表面粗さも特定される。均一で欠陥のない印刷品質を維持するためには、アルミニウム基体表面の加工工程が重要である。表面の反射を最小限に抑えることで、表面反射により印刷物のハーフトーン領域に生じるベニヤ模様の欠陥がなくなる。表面粗さが上限を超えると、電荷注入および高バックグラウンドが生じる。
【0004】
感光体の最終製品は通常、3つの有機コーティング、すなわち、下塗りとして機能する下引き層(UCL)、電荷発生層、および電荷輸送層、ならびに場合によっては反射防止コーティングおよび正孔ブロック層を含む。組立後の完成品は、2つの末端キャップ(またはフランジ)を有する。一方の末端キャップは駆動ギアを含み、もう一方の末端キャップは軸受けと軸受けシャフトへのばね接点および内部基体表面への摩擦接点を有するアース用ストラップとを含む。末端キャップはエポキシ系接着剤で固定されており、所定の熱サイクル試験後に所定のトルクおよび押出力(put out force)を満たす必要がある。
【0005】
作製された感光体デバイスは、印刷機またはプリンター中で良好な電気的性能および機械的性能を有することが期待される。しかし、製造プロセスが複雑であるため、印刷機またはプリンターの品質条件を満たさない恐れのある種々の欠陥が一部の感光体デバイスに生じることは避けられない。欠陥のあるデバイスは不合格にしなければならない。また、感光体デバイスの使用寿命は有限である。感光体デバイスが機械中で十分に機能できなくなったら、それはデバイスの使用寿命の終わりを意味する。使用済の感光体デバイスは通常、欠陥デバイスが処理されるのと同じように処分されていた。デバイスの処分は非常に出費がかさみ、多くの環境問題を引き起こし得る。
【0006】
感光体デバイスの寸法は非常に具体的に決まっており、わずかな変化が結果に大きく悪影響を与え得るので、感光体デバイスの再製は困難である。例えば、基体の表面反射率と表面粗さの間には特定のバランスが維持されている必要がある。更に、そのような感光体は壁厚が薄すぎて再度機械加工することができず、コーティング層に含まれるポリマーは、最も浸食性が強く多くの場合環境によくない溶媒以外に対して化学的に抵抗性である。
【0007】
現在利用されているコーティングプロセスでは、フランジのない状態のアルミニウム基体しかコーティングできない。ライン製造の終わりにおける不合格品(5〜15%)の場合、ほとんどはコーティングの欠陥で不合格となっており、これらにはフランジがない。しかし、現場から戻ってきたものは、既存の製造プロセスによる再コーティングが容易になるように、また、フランジが摩耗しすぎて新たなまたは再製された感光体の寸法的条件が満たされなくならないように、再製前にフランジを取り外す必要がある。最終的な再製された組立品の全体的な直線性、丸み、および同心性を維持するためには、基体を変形させず、かつ接着剤残渣を完全に除去するようにフランジの取り外しを行うことが重要であるが、現在用いられているプロセスではこれは困難である。例えば、酸は、グラウンドプレーンの表面反射率を変化させるため、更なる加工なしに反射特性を調節するのが困難になることが知られている。パワーウォッシュまたは機械的剥離技術も、基体表面を損傷させるか変化させる可能性があるため、利用は限られている。
【0008】
更に、コーティングされた感光体を再利用するために基体から効果的且つ完全に除去する方法は、しばしば大量に使用する必要がある酸または溶媒を含む強力な化学物質を使用する必要があり、危険廃棄物処理のコストが大きくなり、安全上の懸念となり得るため、問題がある。コーティングされた剥離層の環境に優しい溶媒中での除去を容易にする剥離層は、基体再生プロセスのコストを低減し、基体の再利用を可能にすることで大幅なコスト削減になる。
【0009】
したがって、上記の問題が克服された電子写真感光体デバイスの再利用または再生方法が求められている。更に、例えば基体の構造に損傷を与えずに感光層またはコーティング層を除去することで使用不能な感光体デバイスを再利用するなどして電子写真感光体の再製コストを低減することに対するニーズがある。これにより、感光体の製造コストが低減するだけでなく、デバイス中の全ての関連材料の廃棄コストが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,489,496号
【特許文献2】米国特許第4,579,801号
【特許文献3】米国特許第4,518,669号
【特許文献4】米国特許第4,775,605号
【特許文献5】米国特許第5,656,407号
【特許文献6】米国特許第5,641,599号
【特許文献7】米国特許第5,344,734号
【特許文献8】米国特許第5,721,080号
【特許文献9】米国特許第5,017,449号
【特許文献10】米国特許第6,200,716号
【特許文献11】米国特許第6,180,309号
【特許文献12】米国特許第6,207,334号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載のある態様によれば、基体と、基体上に形成されたゼラチン剥離層と、ゼラチン剥離層上に形成された1または複数のコーティング層とを含む感光体を室温の液体浴に浸漬する工程、前記液体浴の温度を上昇させてゼラチン剥離層を溶解する工程、および前記1または複数のコーティング層を基体から分離する工程を含む、感光体の基体を再生する方法が提供される。
【0012】
別の実施形態では、剛性基体、基体上に形成されたゼラチン剥離層、およびゼラチン剥離層上に形成された1または複数のコーティング層を含む感光体であって、前記ゼラチンがバイオポリマーを含む、感光体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示に係るドラム状電子写真感光体の一例を示す図である。
【図2】本開示に係るドラム状電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、各種の層を有するドラム形状の典型的な電子写真感光体を示す。図から分かるように、この例示的な画像形成部材は、剛性基体である円筒形の感光体ドラム10と、感光体ドラム10の両端の開口部に設けられたフランジ2および3を含む。アウトボードフランジ2とインボードフランジ3とは、環状の座ぐり穴5にエポキシ接着剤で接着される。インボードフランジ3はベアリング6、グラウンドストラップ7および駆動ギア8からなる。ある態様では、いずれかのフランジがグラウンドストラップを含み、駆動ギアとベアリングは、ベアリング軸にばね接触しかつ基体内部表面に摩擦接触するような組み合わせで両フランジに機能を分担させてもよい。負に帯電した感光体の典型的な構成におけるコーティング層13の構成は、図2に詳細に示されている。
【0015】
本開示の実施態様における主要な層としては、図2に示すように、基体ドラム10の上に直接形成されたゼラチン剥離層9、ゼラチン剥離層9の上に形成された下引き層14、および下引き層の上に形成された1又は複数のより電子写真的に活性な画像形成層18および19が挙げられる。図2では、画像形成部材は上記のコーティング層13に加えてさらに、非導電性または電気的に絶縁性の剛性基体10、導電性のグラウンドプレーン12、オーバーコート層32を有している。しかしながら、基材10そのものが導電性ドラム10である場合は、グラウンドプレーン12は省略することができる。導電性剛性基体10は、金属、金属合金、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料からなり得る。電気写真画像形成機能を付与する電荷発生層18および電荷輸送層20は、別々の2層として記載されている。正に帯電する感光体の場合は電荷発生層18が電荷輸送層20の上に形成されてもよい。その他に含まれてよい層としては、例えばオーバーコート層32が挙げられる。オーバーコート層は、通常、機械的摩耗およびスクラッチに対する耐性を増加させて感光体デバイスの寿命を延ばすために含まれる。別の実施形態では、これらの層の機能性成分を組み合わせて単層にしてもよい。
【0016】
導電性基体10は、任意の金属、例えばアルミニウム、ニッケル、鋼、銅等の金属、炭素、金属粉末等の導電性物質が充填されたポリマー材料、もしくは導電性有機材料等であってもよい。ある実施形態では、基体はアルミニウムまたはアルミニウム合金から作製される。
【0017】
電気絶縁性または導電性の基体10は、可撓性無端ベルト、ウェブ、剛性シリンダー、シート等の形態であり得る。基体層の厚さは、所望の強度、経済的条件等の多くの要因によって異なる。したがって、剛性基体10がドラム状やシート状である場合、この層の実質的な厚さは、例えば最大で数センチメートル(many centimeters)であってもよく、最も薄くて1ミリメートル未満であってもよい。同様に、可撓性ベルトの実質的な厚さはもっと薄くてもよく、最終的な電子写真デバイスに悪影響を与えない限り、例えば約250ミクロンであってもよく、最も薄くて50ミクロン未満であってもよい。剛性ドラム基体10の壁の厚さは、感光体デバイスの物理的、寸法的、機械的条件を満たすために、少なくとも約0.25mmとなるように製造される。ある実施形態では、基体の厚さは約0.25〜約5mmである。ある実施形態では、基体の厚さは約0.5〜約3mmである。ある実施形態では、基体の厚さは約0.9〜約1.1mmである。しかし、基体の厚さはこれらの範囲外であってもよい。
【0018】
剛性基体10の表面は、ダイヤモンド旋削や冶金学的研磨等の好適なプロセスで研磨して鏡面仕上げにされる。あるいは、ガラスビーズホーニング、あるいはダイヤモンド旋削と冶金学的研磨またはガラスビーズホーニングとの組み合わせによって、基体の表面を粗面化して表面反射率を抑制してもよい。表面反射率を最小限に抑えることで、表面反射により起こる印刷物のハーフトーン領域にベニヤ模様状に現れる欠陥を除くことができる。特定の表面粗さ、例えば5ミクロン、を超えると、デバイス全体の望ましくない非均一な電気的特性につながり、画像形成品質が悪化する。ある実施形態では、基体の表面粗さは1ミクロン未満、または0.5ミクロン未満に調整される。
【0019】
基体層が導電性でない実施形態では、導電性コーティングによって表面を導電性にしてもよい。導電性コーティングの厚さは、光透過性、所望の可撓性の程度、および経済的要因により、かなり広範囲で変わり得る。
【0020】
本実施形態では、剛性基体10の上に形成されたゼラチン剥離層9が提供される。ゼラチン剥離層は、基体とその他のコーティング層との間に位置し、厚さは約2.0ミクロン未満、または約0.2〜約2.0ミクロン、またある実施形態では約0.2〜約1.5ミクロンであり得る。
【0021】
本開示におけるゼラチン剥離層の使用は、以下の事実に基づくものである。
【0022】
(1)ゼラチン剥離層は、それ自体が電子写真画像形成/印刷時に導電性グラウンドプレーンまたは導電性基体からの正孔注入を防止する能力を有する電荷阻止層である。
【0023】
(2)ゼラチンは55℃以上の温水に容易に溶解するため水溶液が容易に調製でき、これを剛性基体に塗布して昇温下で乾燥させてゼラチン剥離層を形成することができる。
【0024】
(3)ゼラチン剥離層は、環境にやさしい基体再生方法を提供する。すなわち、ゼラチンは55℃以上の温水に容易に溶解するため、使用済のドラム感光体を熱水に浸漬するだけで有害な有機溶媒や硝酸を使用することなくコーティング層を容易に基体から除去することができる。
【0025】
従って、ゼラチン剥離層により、製造上のコーティング不合格品の再生または再利用および現場から戻った感光体の再製のための方法が実現される。ゼラチン剥離層は、感光体の再作製に使用するための基体の回収を可能にし、感光体製造コストを大幅に低減する。
【0026】
ある実施形態では、ゼラチン剥離層は動物の皮または骨から直接抽出されたバイオポリマーである。バイオポリマーは、生物から製造されるポリマーに属する。バイオポリマーはアミノ酸残基の繰り返し単位からなり、以下の一般的構造を有する。
【化1】

ある実施形態では、バイオポリマーは剥離層9の総重量の100%に相当する量で存在する。
【0027】
ある実施形態では、感光体上にコーティング層を塗布する前に、まず基体および座ぐり穴を高温の薄いゼラチン水溶液に浸漬してごく薄いゼラチン内層を形成する。ある実施形態では、水溶液の温度は約55〜95℃、あるいは約60〜約90℃、またあるいは70〜80℃である。ある実施形態では、水溶液の温度は約80℃である。基体の内層、外層はいずれも最後の末端キャップの取り付け工程の前に形成される。乾燥して得られるゼラチン薄層により、基体への良好な接着、グラウンドプレーン、UCL層または接着層への良好な結合、および末端キャップへの良好な結合が得られる。更に、ゼラチン剥離層は、熱水に溶解するため、容易な基体回収処理が可能となる。
【0028】
したがって、本実施形態は、基体を損傷させることなく効率的に基体を回収するために座ぐり穴からの全ての感光体コーティング層およびフランジを除去する、改善された方法を提供する。本方法におけるゼラチン剥離層の使用は、基体の表面特性または再生した基体の寸法的完全性を変化させない剥離プロセスを容易にする。更に、この方法では、環境に優しい溶媒を使用し、感光体コーティング層を剥離するために通常必要とされる毒性の溶媒を使用しない。
【0029】
ある実施形態では、末端キャップ(フランジ)およびコーティング層は、感光体全体を室温の水浴に約24時未満浸漬し、水を浸透させて剥離、除去される。ある実施形態では、感光体は水浴に約9時間以上約24時間未満、または約9〜約16時間浸漬される。またある実施形態では、感光体は一晩かけて約16時間、または約9時間浸漬される。感光体の浸漬時間の経過後、水浴の温度を上昇させてゼラチン剥離層を溶解する。ある実施形態では、浸漬後の水浴の温度は室温から約55〜約95℃に、または約60〜約90℃に、または約70〜約80℃に昇温される。次いで、複数のコーティング層をドラム基体から剥がすか、手作業またはかみそり、ドクターブレード、スカイビング(skive)、ブラシ、洗浄パッド等の道具を用いてこそぎ落とし、基体から分離する。フランジは、グリッパーにトルクおよび引張力を加えるか一方の末端に挿入されたバーまたはロッドを用いた衝撃により除去することができる。コーティング層は部分的または完全に分解されていてもよい。
【0030】
感光体のコーティングを除去する際のゼラチン層の有効性については、実験による評価も行った。実験は、平らな基体を用いて製造した試験用の感光体を用いて行った。その結果、ゼラチン剥離層を使用することにより、感光体を90℃の熱水に浸漬することで自然かつ完全にすべてのコーティング層を除去することができた。
【0031】
回収された基体はその後、再製に用いることができる。アルミニウム基体等の基体は有機感光体製造における感光体原材料コストの約50パーセントを占めるので、本実施形態は大幅なコスト削減を容易にする。
【0032】
本開示の方法はさらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’ジアミン(m−TBD)などの高価な材料の回収を可能にする点や、ゼラチン剥離層がそれ自体正孔阻止機能を有する点などの付随的な利点も提供する。感光体コーティング層の除去後、不溶性のコーティング層はろ過して水から分離される。次いで、ろ過された電荷輸送層を乾燥し、電荷輸送層中のm−TBDを溶媒抽出によって回収することができる。
【0033】
画像形成部材のその他の層として、例えば必要に応じて用いるオーバーコート層32が含まれる。所望により、画像形成部材表面の保護および耐摩耗性向上のために、電荷輸送層20の上に必要に応じてオーバーコート層32を形成してもよい。ある実施形態では、オーバーコート層32の厚さは約0.1〜約10ミクロン、または約1〜約10ミクロンであってよく、ある特定の実施形態では約3ミクロンであってよい。これらのオーバーコート層は、電気絶縁性またはわずかに半導電性の熱可塑性有機ポリマーまたは無機ポリマーを含み得る。例えば、オーバーコート層は、樹脂中に微粒子添加剤を含む分散液から作製され得る。
好適な微粒子添加剤としては、酸化アルミニウムなどの金属酸化物や、シリカなどの非金属酸化物や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低表面エネルギー材料や、これらの組み合わせが挙げられる。
好適な樹脂としては、上述の電荷発生層および電荷輸送層に好適に使用されるもの、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロリド、ビニルクロリド、ビニルアセテート共重合体、カルボキシル変性ビニルクロリド/ビニルアセテート共重合体、ヒドロキシル変性ビニルクロリド/ビニルアセテート共重合体、カルボキシルおよびヒドロキシル変性ビニルクロリド/ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、フェニレンオキサイド樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体、ポリ−N−ビニルピロリドン、アクリレート共重合体、アルキド樹脂、セルロース成膜材、ポリ(アミドイミド)、スチレン/ブタジエン共重合体、ビニリデンクロリド/ビニルクロリド共重合体、ビニルアセテート/ビニリデンクロリド共重合体、スチレン/アルキド樹脂、ポリビニルカルバゾール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
オーバーコート層は連続していてもよく、少なくとも約0.5ミクロンまたは10ミクロン以下の厚さであってよく、別の実施形態では少なくとも約2ミクロンまたは6ミクロン以下であってよい。
【0034】
電気的に絶縁性または非導電性の基体10を使用する場合は、電気的に活性なグラウンドプレーン12を基体上に形成する。導電性のグラウンドプレーン12は、例えば、真空蒸着技術等の任意の好適なコーティング技術で基体10上に形成され得る導電性金属層であってよい。好適な材料としては、アルミニウム、ジルコニウム、ニオビウム、タンタル、バナジウム、ハフニウム、チタニウム、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、タングステン、モリブデン、その他の導電性材料、およびこれらの組み合わせが挙げられる。導電層の厚さは、電子光伝導性(electrophotoconductive)部材に所望の光透過性および可撓性に応じてかなり広範囲に変わり得る。したがって、可撓性の光応答性画像形成デバイスの場合、導電性、可撓性、および光透過の最適な組合せを得るための導電層の厚さは少なくとも約20オングストローム、または約750オングストローム以下、または少なくとも約50オングストローム、または約200オングストローム以下であり得る。
【0035】
金属層の形成に用いられる技術に関係なく、空気にさらされると大抵の金属の外表面には金属酸化物の薄層が形成される。したがって、金属層の上のその他の層を「隣接(contiguous)」層とした場合、これら金属層上の隣接層は事実上、酸化可能な金属層の外表面上に形成された金属酸化物の薄層に接触し得る。通常、背面消去露光(rear erase exposure)のためには、導電層の光透過性は少なくとも約15%であることが望ましい。導電層は必ずしも金属である必要はない。その他の例としては、導電層は、波長が約4000〜約9000オングストロームの光を透過させる層として、導電性酸化インジウムスズ等の材料の組合せであってよく、不透明な導電層として、ポリマーバインダー中に分散された導電性カーボンブラックであってもよい。
【0036】
導電性グラウンドプレーン層を形成した後、そこに正孔阻止層14を塗布してもよい。正に帯電した感光体の電子阻止層は、正孔を感光体の画像形成面から導電層に移動させる。負に帯電した感光体では、導電層から反対の光伝導層への正孔注入を阻止する障壁を形成できる任意の好適な正孔阻止層が利用できる。
正孔阻止層は、ポリマー、窒素含有シロキサン、窒素含有チタン化合物等を含んでもよく、例えばポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、トリメトキシシリルプロピレンジアミン、加水分解したトリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソプロピル4−アミノベンゼンスルホニル等、ジ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルジ(4−アミノベンゾイル)イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−エチルアミノ−エチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリアントラニルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジメチルエチルアミノ)チタネート、チタニウム−4−アミノベンゼンスルホネートオキシアセテート、チタニウム4−アミノベンゾエートイソステアレートオキシアセテート、[HN(CH]CHSi(OCH、(γ−アミノブチル)メチルジエトキシシラン、[HN(CH]CHSi(OCH、(γ−アミノプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
下引き層の一般的な実施形態は、金属酸化物および樹脂バインダーを含み得る。本明細書の実施形態で用いることのできる金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化モリブデン、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。下引き層バインダー材料としては、例えばポリエステル、モートンインターナショナル社(Morton International Inc.)のMOR−ESTER 49,000、グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー社(Goodyear Tire and Rubber Co.)のVITEL PE−100、VITEL PE−200、VITEL PE−200D、およびVITEL PE−222;アモコ・プロダクション・プロダクツ(AMOCO Production Products)のARDEL等のポリアリレート、アモコ・プロダクション・プロダクツのポリスルホン、ポリウレタン等が含まれ得る。
【0038】
正孔阻止層は連続的であり、厚さは約1〜約23ミクロンであり得る。正孔阻止層は、スプレー、ディップコーティング、ドローバーコーティング、グラビアコーティング、シルクスクリーニング、エアナイフコーティング、反転ロールコーティング、真空蒸着、化学処理等の任意の好適な従来技術で形成されてよい。薄層を形成しやすくするために、正孔阻止層は希釈溶液の形態で塗布され、コーティング形成後に減圧、加熱等の従来技術で溶媒を除去する。一般に、スプレーコーティングに適した正孔阻止層材料と溶媒の重量比は約0.05:100〜約0.5:100である。
【0039】
ある実施形態、例えばウェブ状の可とう性感光体では、さらに所望により接着中間層を設けてもよい(図2には不図示)。図2の例示的形態でいえば、このような中間層は正孔阻止層と電荷発生層との間に設けられる。中間層はコポリエステル樹脂を含んでよく、例としてはToyota Hsutsu社製のARDEL POLYARYLATE(U−100)等のポリアリレートポリビニルブチラール、Bostik社製のVITEL PE−100、VITEL PE−200、VITEL PE−200D、VITEL PE−222、Rohm Hass社製の49,000ポリエステル、ポリビニルブチラール等が挙げられる。接着中間層は、正孔阻止層の上に直接形成されてよい。よって、ある実施形態では、接着中間層は、その下の正孔阻止層とその上の電荷発生層と直接隣接して両層の接着力を高める。他の実施形態では、接着中間層はまったく設けられない。
【0040】
接着中間層を形成するポリエステルを含むコーティング溶液には、あらゆる好適な溶媒又は溶媒混合物が使用できる。溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、メチレンクロリド、シクロヘキサノン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。その他の通常使用される溶媒を併用してもよい。得られたコーティング溶液を正孔阻止層上に塗布する方法としては、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング等が挙げられる。塗布された溶液はオーブン乾燥、赤外線乾燥、風乾などの好適な方法で乾燥される。
【0041】
接着中間層の乾燥後の厚みは、例えば約0.01ミクロン以上約900ミクロン以下とすることができる。ある実施形態では、乾燥後の厚みは約0.03ミクロン以上約1ミクロン以下である。
【0042】
下引き層14の上に電荷発生層18を塗布してもよい。任意の好適な電荷発生バインダー、例えば、粒子の形態であってもよい電荷発生/光伝導性(photoconductive)材料が不活性樹脂等の成膜性バインダー中に分散されたもの等、が用いられ得る。
電荷発生材料の例としては、アモルファスセレニウム、トリゴナルセレニウム、セレニウム−テルリウム、セレニウム−テルリウム−ヒ素、ヒ化セレニウム、これらの混合物などのセレニウム合金等の無機光伝導性材料、および各種フタロシアニン色素、例えばX型無金属フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、銅フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、キナクリドン、ジブロモアンタントロン色素、ベンズイミダゾールペリレン、置換2,4−ジアミノトリアジン、多核芳香族キノン等の有機光伝導性材料が挙げられる。これらの材料から連続的かつ均質な電荷発生層が形成されうる。
光伝導層が電荷発生層の特性を増加または低減する場合、複数の電荷発生層組成物を用いてもよい。選択される電荷発生材料は、静電潜像を形成する電子写真画像形成プロセスの像様放射線露光工程の間、波長が約400〜約900nmの活性化放射線に感受性である。例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは波長が約370〜約950ナノメートルの光を吸収する。
【0043】
本明細書に記載の光伝導体に用いられるチタニルフタロシアニンまたはオキシチタンフタロシアニンの多くは、800ナノメートル付近の近赤外線を吸収することが知られている光発生顔料であり、例えばヒドロキシガリウムフタロシアニン等のその他の顔料よりも良い感受性を有し得る。一般に、チタニルフタロシアニンはI、II、III、X、およびIV型として知られる5つの主な結晶形を有することが知られている。
【0044】
電荷発生層18中のバインダー材料として任意の好適な不活性樹脂材料が用いられ得る。
有機樹脂バインダーとしては熱可塑性及び熱硬化性樹脂があり、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、フェニレンオキサイド樹脂、テレフタル酸樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体、ポリビニルクロリド、ビニルクロリド/ビニルアセテート共重合体、アクリレート共重合体、アルキド樹脂、セルロース製膜材、ポリ(アミドイミド)、スチレン−ブタジエン共重合体。ビニリデンクロリド/ビニルクロリド共重合体、ビニルアセテート/ビニリデンクロリド共重合体、スチレン/アルキド樹脂等が挙げられる。その他の製膜性ポリマーバインダーとしては、PCZ−400(ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン)、分子量40,000、三菱ガス化学株式会社製が挙げられる。
【0045】
電荷発生材料は、樹脂性バインダー組成物中に種々の量で存在し得る。通常、少なくとも約5体積パーセントまたは約90体積パーセント以下の電荷発生材料が、少なくとも約95体積パーセントまたは約10体積パーセント以下の樹脂性バインダーに分散され、より具体的には、少なくとも約20体積パーセントまたは約60体積パーセント以下の電荷発生材料が少なくとも約80体積パーセントまたは約40体積パーセント以下の樹脂性バインダー組成物に分散される。
【0046】
ある特定の実施形態では、電荷発生層18の厚さは1μm未満、または約0.25μmであり得る。これらの実施形態は、クロロガリウムフタロシアニンまたはヒドロキシガリウムフタロシアニン、またはその混合物を含み得る。電荷発生材料および樹脂性バインダー材料を含む電荷発生層18は、通常、乾燥時の厚さが少なくとも約0.1μmまたは約5μm以下、例えば約0.2〜約3μmである。電荷発生層の厚さは、通常、バインダー含有量に関連する。バインダー含有量が大きいと、一般に電荷発生層はより厚くなる。
【0047】
ドラム型感光体では、電荷輸送層は同じ組成の単層から構成される。したがって、電荷輸送層は単層20として具体的に記載されているが、その詳細は2層の電荷輸送層を有する実施形態にも適用される。その後、電荷発生層18の上に電荷輸送層20が塗布される。電荷輸送層20は、画像形成部材表面上で選択的に表面電荷を放電するために、発生した正孔または電子の電荷発生層18からの注入を支援できると同時にこれらの正孔/電子の電荷輸送層の通過を可能にする任意の好適な透明有機ポリマーまたは非ポリマー材料を含み得る。ある実施形態では、電荷輸送層20は、正孔輸送の機能を果たすだけでなく、摩耗または化学的侵食から電荷発生層18を保護することで、画像形成部材の耐用年数を伸ばすことができる。電荷輸送層20は、光発生した正孔の電荷発生層18からの注入を支援できるものであれば、実質的に非光伝導性の材料であってもよい。
【0048】
電荷輸送層20は通常、露光時に電子写真画像形成部材が使用される波長域に対して透過性であり、入射された放射線の大部分がその下の電荷発生層18で利用される。電荷輸送層は、ゼログラフィーに有用な波長、例えば400〜900ナノメートルの光に露光された時に、光吸収がごくわずかであり且つ電荷を発生しない、優れた光透過性を示す。透明基体10、およびこれも透過性または部分的に透過性である導電層12を用いて感光体を作製する場合、像様の露光または消去は、基体10で全ての光が基体の背面を通過することでなされ得る。この場合、電荷発生層18が基体と電荷輸送層20の間に挟まれていれば、電荷輸送層20の材料は有用な波長領域の光を透過させる必要はない。電荷輸送層20と電荷発生層18の組合せは、照射がない場合には電荷輸送層上の静電荷が伝導されない程度の絶縁性を有する。電荷輸送層20は、放電プロセス中に電荷輸送層20を電荷が通過する時、最小限の電荷を捕捉する。
【0049】
電荷輸送層20は、任意の好適な電荷輸送性分、またはポリカーボネートバインダー等の電気的に不活性なポリマー材料に溶解または分子的に分散された添加剤として有用な活性化化合物を含んで固溶体を形成してもよく、これにより、材料は電気的に活性になる。「溶解された」とは、例えば、ポリマーに小分子が溶解されて均一な相を形成している溶液を形成することを意味する。ある実施形態では、分子的に分散されたとは、例えば、小分子がポリマーに分子スケールで分散されている、ポリマーに分散された電荷輸送分子を意味する。電荷輸送成分を添加しなければ生成された正孔の電荷発生材料からの注入を支援できないまたは電荷輸送層を通るこれらの正孔の輸送を可能にできない成膜性ポリマー材料には、電荷輸送成分を添加してもよい。電荷輸送成分の添加により、電気的に不活性なポリマー材料が光発生された正孔の電荷発生層18からの注入を支援でき且つ電荷輸送層20を通るこれらの正孔の輸送を可能にする材料に変換されて、電荷輸送層上の表面電荷が放出できるようになる。高移動度の電荷輸送成分は、協同して分子間で電荷を輸送して最終的に電荷輸送層表面に電荷を輸送する有機化合物の小分子を含み得る。例えば、これに限定されないが、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)及びその他のアリールアミン、例えばトリフェニルアミンやN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TM−TPD)等が挙げられる。
【0050】
電荷輸送層中には各種の電荷輸送化合物を含んでよく、この層の厚さは通常、約15〜約40ミクロン、より具体的には約15〜約35ミクロンである。電荷輸送性成分の例としては、以下の式/構造で表されるアリールアミン、
【化2】

(式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびその誘導体等の好適な炭化水素;ハロゲン、またはその混合物であり、特に、ClおよびCHからなる群から選択される置換基である。)、ならびに以下の式で表される分子が挙げられる。
【化3】

(式中、X、Y、およびZは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはその混合物であり、YおよびZの少なくとも一方は存在する。)
【0051】
上記のアルキルおよびアルコキシとしては、1〜25の炭素原子を含むもの、あるいはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びこれらに対応するアルコキシ等の1〜12の炭素原子を含むものが挙げられる。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等が挙げられる。置換基を有するアルキル、アルコキシ、アリールも、上記の例から選択されうる。
【0052】
電荷輸送層用に選択することができる具体的なアリールアミンの例としては、アルキルがメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等からなる群から選択されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン等;ハロ置換基がクロロ置換基であるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン等が含まれる。
他の実施形態では、上記以外の公知の電荷輸送層分子を選択してもよい。
【0053】
ポリマーバインダー材料の具体例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、およびエポキシ、およびこれらのランダムまたは交互コポリマーが含まれる。ある実施形態では、正孔輸送層等の電荷輸送層の厚さは少なくとも約10μmまたは約40μm以下であり得る。
【0054】
例えば側方電荷移動(lateral charge migration:LCM)抵抗の改善を可能にするために、複数の電荷輸送層または少なくとも1つの電荷輸送層に導入してもよい成分または材料の例としては、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)メタン(IRGANOX(登録商標)1010、チバ・スペシャルティ・ケミカル社から入手可能)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ならびにSUMILIZER(商標) BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、およびGS(住友化学株式会社から入手可能)、IRGANOX(登録商標)1035、1076、1098、1135、1141、1222、1330、1425WL、1520L、245、259、3114、3790、5057、および565(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能)、ならびにADEKA STAB(商標)AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、およびAO−330(旭電化工業株式会社から入手可能)等のその他のヒンダードフェノール系酸化防止剤;サノール(商標)LS−2626、LS−765、LS−770、およびLS−744(三共株式会社から入手可能)、チヌビン(TINUVIN)(登録商標)144および622LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能)、MARK(商標)LA57、LA67、LA62、LA68、およびLA63(旭電化工業株式会社から入手可能)、ならびにSUMILIZER(登録商標)TPS(住友化学株式会社から入手可能)等のヒンダードアミン系酸化防止剤;SUMILIZER(登録商標)TP−D(住友化学株式会社から入手可能)等のチオエーテル系酸化防止剤;MARK(商標)2112、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、329K、およびHP−10(旭電化工業株式会社から入手可能)等のリン酸系酸化防止剤;ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)等のその他の分子が含まれる。電荷輸送層の少なくとも1つに含まれる酸化防止剤の重量パーセントは約0〜約20、約1〜約10、または約3〜約8重量パーセントである。
【0055】
電荷輸送層は、その上の静電潜像の形成および維持を防止するのに十分な割合の照射がない場合には正孔輸送層上の静電荷が導電されない程度に絶縁性であるべきである。電荷輸送層は、意図した使用の領域の可視光または放射線を実質的に吸収しないが、光発生層すなわち電荷発生層からの光発生した正孔の注入を可能にし、これらの正孔がこの層を通過して活性層表面上の表面電荷を選択的に放出することを可能にするという点で、電気的に「活性」である。
【0056】
電荷輸送層混合物を形成し、その後、支持基体層上に塗布するために、任意の好適な従来技術が用いられ得る。電荷輸送層は、単一のコーティング工程で形成してもよく、複数のコーティング工程で形成してもよい。ディップコーティング、リングコーティング、スプレー、グラビアコーティング、または任意のその他のドラムコーティング方法が使用され得る。
【0057】
形成されたコーティングの乾燥は、オーブン乾燥、赤外線乾燥、風乾等の任意の好適な従来技術でなされ得る。最適な光電気的および機械的結果を得るためには、乾燥後の電荷輸送層の厚さは約10〜約40μm、または約12〜約36μmである。別の実施形態では、厚さは約14〜約36μmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の基体を再生する方法であって、前記感光体は、
基体と、
前記基体上に形成されたゼラチン剥離層と、
前記ゼラチン剥離層上に形成された1または複数のコーティング層と、を含み、前記方法は、
前記感光体を室温の液体浴に浸漬する工程と、
前記液体浴の温度を上昇させて前記ゼラチン剥離層を溶解させる工程と、
前記1または複数のコーティング層を前記基体から分離する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記ゼラチンがバイオポリマーを含み、前記バイオポリマーはアミノ酸残基の繰り返し単位を含み、下記式で表される構造を有する、請求項1に記載の方法。
【化1】

【請求項3】
感光体の剛性基体を再生する方法であって、前記感光体は、
剛性基体と、
前記剛性基体上に形成されたゼラチン剥離層と、
前記ゼラチン剥離層上に形成された1または複数のコーティング層と、を含み、前記方法は、
前記感光体を室温の液体浴に浸漬する工程と、
前記液体浴の温度を上昇させて前記ゼラチン剥離層を溶解させる工程と、
前記1または複数のコーティング層を前記剛性基体から分離する工程と、
前記除去された1または複数のコーティング層を前記液体浴からろ過する工程と、
前記濾過された1または複数のコーティング層からN,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンを含む電荷輸送層を取り出す工程と、
前記取り出された電荷輸送層を乾燥する工程と、
前記乾燥された電荷輸送層からN,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミンを溶媒抽出により回収する工程と、を含む方法。
【請求項4】
剛性基体と、
前記剛性基体上に形成されたゼラチン剥離層と、
前記ゼラチン剥離層上に形成された1または複数のコーティング層と、を含み、前記ゼラチンがバイオポリマーを含む、感光体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−100127(P2011−100127A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243793(P2010−243793)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】