説明

ゼリー剤

【課題】 イソソルビド内服剤の強い苦味を有効にマスキングし、服用性を改善することが強く望まれている。そこで本発明ではイソソルビドを有効成分として含み、苦味が低減されて、服用し易いゼリー剤を提供する
【解決手段】 本発明では酸性ムコ多糖類、甘味剤、香味料、無機塩類、有機酸、防腐剤、イソソルビド及び水を含み、特に酸性ムコ多糖類としてκ型カラギーナンを用いることにより、ソソルビドの顕著な苦味が緩和され、口中に含んだ際にゲル状態が安定に保持される、服用性の良いゼリー剤を提供できることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理活性成分のイソソルビドを含有する苦味が顕著に軽減又は抑制された内服し易いゼリー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
経口浸透圧利尿・メニエール病改善剤として脳腫瘍時の脳圧効果、頭部外傷に起因する脳圧亢進時の脳圧降下、腎・尿管結石時の利尿、緑内障の眼圧降下又はメニエール病などの治療に有効な薬剤であるイソソルビド(化学名:1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール)は、メニエール病の症状であるめまい等の発作が発現した際には頓服服用する場合もある。これまでに、速やかに薬効を発現させるために本剤を水に溶解した製剤である内服液剤、シロップ剤又は寒天をゲル化剤として用いたゼリー剤が開発されている。
【0003】
イソソルビドは、脳圧及び眼圧降下を目的とした場合は通常成人1日量70〜140g、メニエール病改善剤を目的とした場合は通常成人1日量90〜120gと大量服用する必要がある。従って患者が1回に服用する液剤の容量を減らすためにいずれの既開発液剤製品においては、イソソルビド濃度を70w/v%と高く設定されている。
【0004】
イソソルビドは特有の強い苦味を有するので経口製剤における苦味低減は非常に重要な課題である。市販製剤、例えば内服液剤ではアスパルテーム,エリスリトール,塩化ナトリウム,キシリトール,クエン酸水和物,L−グルタミン酸ナトリウム,香料,サッカリンナトリウム水和物及び乳酸を、シロップ剤ではサッカリンナトリウム水和物、D−ソルビトール液及び乳酸を、更にゼリー剤ではカンテン末、サッカリンNa水和物、クエン酸水和物、無水リン酸一水素Na、水酸化Na、カカオ末及び香料を含ませることにより苦味低減を図っている。しかしながら各成分の添加による苦味抑制効果はイソソルビド濃度が70w/v%と高く設定されていること及び水性の製剤形態ではその苦味が増長されることも影響して十分なものではない。そこで現在、市販製品に対して、更に苦味が顕著に軽減又は抑制された服用し易い製剤が臨床上で望まれている。
【非特許文献】第14改正日本薬局方解説書(2001、廣川書店)。医療用医薬品添付文書情報;「イソバイド」(興和創薬株式会社)、「イソソルビドシロップ70%」(タイヨー)、「イソソルビド内用液70%」(あすか)、/「イソソルビド内用液70%分包30mL」(あすか)、「メニレット70%ゼリー20g及び30g」(三和化学研究所)。
【0005】
一般に、糖類、糖アルコール類、高甘味度甘味料、香料などを配合し、薬物が有する苦味、刺激等の不快な味質を改善する方法は知られている。しかしながら、薬物ごとにマスキング効果を発揮し得る成分は異なっており、最適な組み合わせを見出すことは困難である。これまでにも苦味を示す薬物を含む液剤の味を改善する試みは多々検討されているが、いずれも十分な苦味の抑制及び良好な服用性が得られていない。
【特許文献】特開2001−226293 κカラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガムをゲル化剤としレシチンとミルク香味料、アスコルビン酸ならびにクエン酸三ナトリウムを含む服用補助剤。特開2003−171314号公報 有機酸及び有機酸のアルカリ金属塩の少なくともいずれかを0.5〜35mg/mlと、苦味を有する生理活性成分と、甘味剤と、フルーツ系香料とを含有し、pHが3.5〜6である内服液剤組成物 特開2004−292360号公報 イソソルビド、アセスルファム塩、及び有機酸、さらにサッカリン及び/又は香料を含む水性の医薬組成物 再公表06−1344 甘味剤を添加するなどの一般的な方法以外にはゼリー化による方法、及び苦くて飲みにくいイソソルビド液剤は、驚くことにゲル化剤として寒天を用いることにより、イソソルビドは液剤と同様にゼリー製剤から速やかに溶出し、服用性も改善されることを見出した。特開2006−131625号公報 アスパルテーム及び/又はアセスルファムカリウムから選ばれる高甘味度甘味料及び香料を含有することを特徴とする味質の改善されたイソソルビド製剤。開2006−193514号公報 イソソルビドと、第1の甘味剤としてのアスパルテームと、サッカリン又はその塩、アセスルファム又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、及びステビアから選択された少なくとも一種の第2の甘味剤と、酸味剤とを含む経口製剤 特開平11−228450号公報 不快な味を有する塩基性薬物及びアニオン性高分子物質を含有する不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物。特開2000−290199号公報 不快な味を有する医薬有効成分、2種以上の高甘味剤(甘味度150以上)及び酸味を呈する物質を含有する経口用医薬組成物。特開2001−106641号公報 苦味を有する有効成分、糖アルコール、清涼剤及び油脂性基剤を含有する口内薬。特開2000−290199号公報 不快な味を有する医薬有効成分、甘味度150以上の2種以上の高甘味剤(ステビア、アスパルテーム、サッカリン又はその塩など)及び酸味剤(クエン酸、リンゴ酸など)を含有する経口用医薬組成物。特開2008−106048 酸性ムコ多糖類、清涼化剤及びサッカリン、アスパルテーム、アセスルファム、ショ糖、乳糖及び還元麦芽糖水アメ等の甘味剤、更に界面活性剤(を含有する苦味が抑制された経口製剤。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の様にイソソルビド内服剤の強い苦味を有効にマスキングし、服用性を改善することが強く望まれている。そこで本発明ではイソソルビドを有効成分として含み、苦味が低減されて、服用し易いゼリー剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した.
まず、医薬品添加物として収載されている水性ゲル形成性高分子をピックアップし、イソソルビドの70w/v%水溶液に添加してゲル化の可能性を調べた。その結果、安定なゲルを形成させる水性ゲル形成性高分子としては寒天(再公表06−1344にて用いられている)及びκ型カラギーナンが最も優れており、その他の水性ゲル形成性高分子はゲルを形成するものの、放置しておくと離水が顕著であったり、口腔内に含むと速やかに液化してしまう、更に配合により着色するなどの欠点があり実用性のあるゼリー剤が調製できなかった。結局のところ、医薬品添加物として収載されている水性ゲル形成性高分子の中では、寒天以外ではκ型カラギーナンだけがイソソルビドとの共存下で安定性の良い水性ゲルを形成した。更に、口に含んで確かめたところ、驚くべきことにκ型カラギーナンにはイソソルビドの苦みも緩和せしめる性質が見られた。
以上の観察に基づき、本発明のゼリー剤ではκ型カラギーナンをゲル化剤として用いることとし、κ型カラギーナンの苦味抑制効果を更に補強するために、κ型カラギーナンと種々な甘味剤と香味剤との併用による苦味のマスキング効果を調べた。その結果、甘味剤では特にサッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムが他の甘味剤に較べてより顕著な苦みに対する緩和効果を示した。
一般に、苦味に対する緩和効果を期待して植物精油由来の香料や糖類や豆類由来の香味料の添加が試みられる。本発明でも種々な香り成分を添加してそれらの効果をしらべた。その結果、イソソルビド、κ型カラギーナン、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムの共存によってを緩和されされた苦味は、植物精油由来の香料の添加ではそれ以上は殆ど緩和されなかった。これに対して、糖類や豆類由来の香味料、例えばコーヒー香料、チョコレート香料、紅茶香料、キャラメル香料、カラメル及びカカオの添加は予期せざることにゼリー剤の味を更に良好にした。一般に、甘味の持続は塩味や酸味で増強されるといわれるが、本発明でも塩味剤や酸味剤の添加を試みた。その結果、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムの多量配合により甘味を強めようとすると、却って、これら甘味剤自体の悪味が発現することになる。これら甘味剤は適度な配合量で用いる必要があるが、この甘味は塩味剤や酸味剤の添加により更にまろやかになった。
更に、イソソルビド、κ型カラギーナン、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウム、糖類や豆類由来の香味料、塩味剤及び酸味剤を含む水性ゲルを口腔内に含んだときのゲル状態を安定に保持する目的でκ型カラギーナン以外の酸性ムコ多糖類、水溶性高分子、多価アルコール及び糖類の添加効果について調べた。これらの成分は、いずれもその添加により大なり小なり、水性ゲルの口腔内に含んだときのゲル状態の保持性を高める傾向が見られた。特に、ソルビトールやグリセリンの共存においては効果が顕著であった。
【発明の効果】
【0008】
以上により、本発明では酸性ムコ多糖類、甘味剤、香味料、無機塩類、有機酸、防腐剤、イソソルビド及び水を含み、特に酸性ムコ多糖類としてκ型カラギーナンを用いることにより、イソソルビドの顕著な苦味が緩和され、口中に含んだ際にゲル状態が安定に保持される、服用性の良いゼリー剤を提供できることができた。
【0009】
本発明のゼリー製剤の製造方法は例えば次の通りであるが、各成分の添加の順序は特別に限定されない。
【0010】
酸性ムコ多糖類、甘味剤、香味料、無機塩類、有機酸、防腐剤、イソソルビド、(処方の選択によっては多価アルコール、水溶性高分子又は糖類をも)を各々秤量採取して約85〜95℃加熱撹拌下で水に溶解し、得られた水溶液を分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー製剤とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のゼリー剤について更に詳細に説明する。
現在市販されているシロップ、内用液及びゼリー剤についての製剤容量は20又は30mL、イソソルビドの濃度は70w/w%に設定されている。従って、本発明におけるイソソルビドの濃度も70w/w%を基本とする。その許容濃度範囲は70w/w%を中央値としてその95〜105%、即ち66.5〜73.5w/w%である。
【0012】
本発明において用いられる酸性ムコ多糖類としては、ゲル化剤としてκ型カラギーナンが用いられる。そのゼリ−製剤における添加量は0.2〜0.5w/w%、より好ましくは0.25〜0・35w/w%、更に好ましくは0.3〜0.4w/w%である。添加量が0.1w/w%より少ない場合にはゲルは形成されにくくなりゲル化による苦味の低減効果が消失する。また、添加量が多いと口腔内及び消化管内でゲルがいつまでも崩壊しない、イソソルビドの溶出が遅くなる、服用感が悪くなる、加熱混合溶液の粘度が高いために分包装容器への充填が困難となるなどの欠点が生じる。
【0013】
水性ゲルの口腔内に含んだときのゲル状態を安定に保持する目的でκ型カラギーナンと併用する酸性ムコ多糖類としては例えば、ι及びλ型カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、植物由来酸性高分子のトラガントガム及びフコイダン、微生物由来酸性高分子のキサンタンガム、ゲランガム、グリコサミノグリカン類のコンドロイチコンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、デルマタン硫酸及びデキストラン硫酸などが挙げられる。これらのゼリー製剤全体への添加量はの0.1〜10w/w%、より好ましくは0.3〜7w/w%、更に好ましくは0.5〜5w/w%である。
【0014】
κ型カラギーナンと併用する甘味剤としては、サッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムを各々単独に使用するか、又は両剤を併用して使用する。これらのゼリー剤全体への添加量は、サッカリンナトリウムが単独の場合は、0.1〜0.4w/w%、より好ましくは0.2〜0.3w/w%、アセスルファムカリウム単独の場合は0.04〜0.1w/w%、より好ましくは0.02〜0.05w/w%、併用の場合はサッカリンナトリウムとアセスルファムカリウムの4:1重量混合物を0.05〜0.35w/w%、より好ましくは0.1〜0.25w/w%程度である。
【0015】
水性ゲルの口腔内に含んだときのゲル状態を安定に保持する目的でκ型カラギーナンと併用する水溶性高分子としては、セルローズエーテル類のメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、多糖類のペクチン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、合成高分子のポリアクリル酸ナトリウム及びカルボキシビニルポリマーが挙げられる。その他にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メタアクリル酸コポリマーが挙げられる。これらのゼリー剤全体への添加量は0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜7w/w%、更に好ましくは0.5〜5w/w%程度である。
【0016】
水性ゲルの口腔内に含んだときのゲル状態を安定に保持する目的でκ型カラギーナンと併用する多価アルコールとしては、グリセリン又はプロピレングリコールが挙げられる。これらのゼリー剤全体への添加量は1〜15w/w%、より好ましくは2〜10w/w%、更に好ましくは3〜5w/w%程度である。
【0017】
本発明において用いられる香味料としては、コーヒー香料、チョコレート香料、紅茶香料、キャラメル香料、カラメル及びカカオが挙げられ、これらから選択された一種を単独に使用するか、又は二種以上を併用する。これらのゼリ−剤における添加量は0.05〜0.5w/w%、より好ましくは0.1〜0.2w/w%、更に好ましくは0.2〜0.3w/w%である。
【0018】
本発明において用いられる無機塩類としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一素カリウム及びリン酸二水素ナトリウムが挙げられ、これらから選択された一種を単独に使用するか、又は二種以上を併用する。これらのゼリ−剤における添加量は0.05〜0.5w/w%、より好ましくは0.1〜0.4w/w%、更に好ましくは0.2〜0.3w/w%である。
【0019】
本発明において用いられる有機酸としてはコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、イノシン酸及びグルコン酸が挙げられ、これらから選択された一種を単独に使用するか、又は二種以上を併用する。これらのゼリ−剤における添加量は0.05〜0.5w/w%、より好ましくは0.1〜0.4w/w%、更に好ましくは0.2〜0.3w/w%である。
【0020】
本発明において用いられる糖類としてショ糖、還元麦芽糖水アメ及びソルビトールが挙げられ、これらから選択された一種を単独に使用するか、又は二種以上を併用する。これらのゼリ−製剤における添加量は0.5〜10w/w%、より好ましくは1〜7w/w%、更に好ましくは2〜5w/w%である。なお、その他に、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノース、マルチトール、ラクチトール、、ブドウ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、ハチミツ、トレハロース、キシロース、マンノース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、高フルクトースシロップ又はパラチノース等を用いてもよい。
【0021】
本発明のゼリー剤には防腐剤又は保存剤、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸アルキルエステル、酸化防止剤、金属キレート剤なども必要に応じて配合される。
【0022】
本発明のゼリー剤は、小分け可能な包装形態(使い捨て容器、スティック容器)に充てんされた場合は、一回飲み切りが可能であり、携帯性も付与できる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例によって本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定されることはない。
【0024】
実施例1
κ型カラギーナン0.2g、ι型カラギーナン0.5g、λ型カラギーナン0.1g、サッカリンナトリウム0.15g、アセスルファムカリウム0.05g、チョコレート香料0.1g、キャラメル香料0.1g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、酒石酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01g、水28.19gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0025】
実施例2
κ型カラギーナン0.3g、ι型カラギーナン0.2g、λ型カラギーナン0.2、サッカリンナトリウム0.1g、アセスルファムカリウム0.1g、チョコレート香料0.2g、カカオ0.2g、無水リン酸一水素カリウム0.2、リンゴ酸0.1g、グリセリン5g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01g、ソルビトール2g、還元麦芽糖水あめ0.5gを水25.49gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0026】
実施例3
κ型カラギーナン0.3g、ι型カラギーナン0.4g、λ型カラギーナン0.5g、アセスルファムカリウム0.3g、カカオ0.1g、カラメル0.2g、無水リン酸二水素ナトリウム0.3g、酒石酸0.2g、キサンタンガム0.1g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水27.39gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0027】
実施例4
κ型カラギーナン0.4g、ι型カラギーナン0.4g、サッカリンナトリウム0.2g、アセスルファムカリウム0.1g、コーヒー香料0.1g、カカオ0.2g、塩化ナトリウム0.1g、無水リン酸水素二ナトリウム0.1g、クエン酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.09gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0028】
実施例5
κ型カラギーナン0.5g、ι型カラギーナン0.5、λ型カラギーナン0.25、サッカリンナトリウム0.3g、キャラメル香料0.1g、カラメル0.2gびカカオ0.1g、無水リン酸水素一カリウム0.3g、塩化ナトリウム0.2g、酒石酸0.2g、ポリアクリル酸ナトリウム0.1g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水27.64gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0029】
実施例6
κ型カラギーナン0.3g、ι型カラギーナン0.25、アセスルファムカリウム0.15g、紅茶香料0.1g、カラメル0.2gびカカオ0.1g、無水リン酸ニ水素ナトリウム0.3g、塩化ナトリウム0.2g、リンゴ0.2g、ソルビトール2g、グリセリン3g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース400タイプ0.1g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水22.99gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0030】
実施例7
κ型カラギーナン0.4g、λ型カラギーナン0.1g、サッカリンナトリウム0.2g、紅茶香料0.1g、キャラメル香料0.1g、カラメル0.1g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、クエン酸0.2g、グリセリン5g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水23.39gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0031】
実施例8
κ型カラギーナン0.3g、ι型カラギーナン0.1g、アセスルファムカリウム0.35g、チョコレート香料0.2g、キャラメル香料0.1g、カラメル0.1g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、酒石酸0.2g、ローカストビーンガム0.1g、グリセリン6g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.59gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0032】
比較例1
κ型カラギーナン0.1g、ι型カラギーナン0.05g、λ型カラギーナン0.5g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、クエン酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.74gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0033】
比較例2
κ型カラギーナン0.05g、ι型カラギーナン0.6g、λ型カラギーナン0.3g、サッカリンナトリウム0.2g、無水リン酸水素二ナトリウム0.2g、酒石酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.24gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0034】
比較例3
κ型カラギーナン0.6g、ι型カラギーナン0.4g、λ型カラギーナン0.1g、サッカリンナトリウム0.15g、アセスルファムカリウム0.05g、チョコレート香料0.1g、カカオ0.1g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、酒石酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.39gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0035】
比較例4
κ型カラギーナン0.7g、ι型カラギーナン0.75、λ型カラギーナン0.1g、サッカリンナトリウム0.2g、無水リン酸水素二ナトリウム0.3g、酒石酸0.2g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、パラオキシ安息香酸プロピル0.01gを水28.19gに85〜90℃加熱撹拌下で溶解し、更にイソソルビド70gを攪拌しつつ徐々に加えて溶解し、得られた水溶液の20又は30gを分包容器に熱時充てんシールし、常温まで冷却してゼリー剤とした。
【0036】
[実験例]
【0037】
1.容器からの排出し易さ及び口中におけるゼリー剤の状態
5名の被験者により、実施例1〜8及び比較例1〜4のゼリー製剤について容器からの排出し易さ及び口中(非咀嚼)におけるゼリー剤の状態について観察した。結果を表1に示す。
【表1】

考 察:
容器からの排出し易さ及び口中におけるゼリー剤の状態はκ型カラギーナンの添加量及び多価アルコールの存在によって影響され、κ型カラギーナンの至適な添加量は0.2〜0.7w/w%である。
【0038】
2.苦味、風味、食感及びと服用し易さの観察、
5名の被験者により、実施例1〜8及び比較例1〜4のゼリー製剤について、苦味、風味、食感及びと服用し易さについて観察した。
評価基準:5段階評価
苦味 [感じない 1、やや感じる 2、感じる 3、強く感じる 4、非常に強 く感じる 5]
風味 [非常に良 5、良 4、やや良 3、不良 2、不良 1]
食感 [非常に良 5、良 4、やや良 3、不良 2、不良 1]
服用し易さ [非常に良 5、良 4、やや良 3、不良 2、不良 1]
がある場合を5り服用し難いをとするにより行った。はい結果を表2に示す。
【表2】

考 察:
本発明・実施例のゼリー剤においては、イソソルビドの苦みが顕著に改善され、風味も良好で食感が良く、服用し易い結果が示された。
【0039】
3.ゼリー剤から水中へのソルビトールの溶出性
本発明・実施例1〜8及び比較例1〜4のゼリー剤からのイソソルビドの溶出性を、日本薬局方XIV収載のパドル法による溶出試験法にて測定した。この際、試験液としては、水、日本薬局方 崩壊試験法 第1液及び第2液900mLを用い、パドル回転数を50rpmとに設定して測定した。イソソルビド濃度の定量は液体クロマトグラフC法により行った。表3に、ゼリー剤を試験液に投入15分及び30分後の溶出率の測定値を示す。
【表3】

考 察:
本発明実施例1〜5において、投入15分後のゼリー剤からのイソソルビドの溶出率は約80〜98%近辺であり、速やかな溶出性を示した。このことから本発明のゼリー剤は、服用後に、遅滞なく薬効の発現が期待される。一方、本発明実施例7〜8は実施例1〜5よりも若干溶出率が低いが薬効発現には支障がない値を示している。一方、比較例3〜4は顕著に溶出率が低く、速やかな薬効の発言は期待できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ムコ多糖類、甘味剤、香味料、無機塩類、有機酸、防腐剤、イソソルビド及び水を含むことを特徴とするゼリー剤。
【請求項2】
酸性ムコ多糖類がκ型カラギーナンであり、その添加量が0.2〜0.5w/w%である請求項1に記載のゼリー剤。
【請求項3】
κ型カラギーナンと併用する甘味剤がサッカリンナトリウム及びアセスルファムカリウムの各々の単独使用又は両剤の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項4】
κ型カラギーナンと併用する酸性ムコ多糖類がι及びλ型カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、植物由来酸性高分子、微生物由来酸性高分子及びグリコサミノグリカン類であり、これらの一種単独又は二種以上の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項5】
κ型カラギーナンと併用する水溶性高分子がペクチン、セルローズエーテル類、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム及びカルボキシビニルポリマーであり、これらの一種単独又は二種以上の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項6】
κ型カラギーナンと併用する多価アルコールがグリセリン又はプロピレングリコールであり、その添加量が2〜10w/w%である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項7】
香味料がコーヒー香料、チョコレート香料、紅茶香料、キャラメル香料、カラメル及びカカオから選択された一種の使用又は二種以上の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項8】
無機塩類が塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一素カリウム及びリン酸二水素ナトリウムから選択された一種の使用又は二種以上の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項9】
有機酸がコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、イノシン酸、グルコン酸から選択された一種の使用又は二種以上の併用である請求項1記載のゼリー剤。
【請求項10】
糖類のショ糖、還元麦芽糖水アメ及びソルビトールの各々を単独又は併用して含有する1記載のゼリー剤。

【公開番号】特開2010−265248(P2010−265248A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132510(P2009−132510)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(509153353)
【Fターム(参考)】