説明

ソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置

【課題】固化剤余剰液をリサイクルして再利用する際にその性状を推測できる程度に安定させて貯留しておくことが可能な、ソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の固化剤余剰液処理装置100は、分離機2において土砂が分離された固化剤余剰液(A液)を第1の貯留用タンク20に貯留するとともに、サイクロン24から排出された微粒状の土砂類に含まれている固化剤余剰液(B液)を残土Sと共に分離機2の外部に排出し、かつサイクロン9において微粒状の土砂類から分離されたリサイクル用固化剤余剰液(C液)を第2の貯留用タンクに貯留する。これにより、第2の貯留用タンク26にはリサイクル用固化剤余剰液(C液)のみが貯留されるから、掘削作業の進行や中断に伴ってその成分や微粒子の分布状態が大きく変動することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置に関し、より詳しくは、特許第3655260号明細書に記載されている装置をさらに改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模開削工事においては、ソイルセメントミキシング工法による止水性山留め壁としての連続壁の造成が一般に行われている。
【0003】
このソイルセメントミキシング工法は、掘削原位置土とセメント系固化剤液とを掘削機による掘削時に混合撹拌して地中壁(または杭)を造成するものであり、造成される地中壁等の均一性の確保、および応力材の挿入性の向上、ならびに掘削機(オーガー)への負荷の軽減のために造成対象土単位体積当り50〜90%程度のセメント系固化剤液の注入を必要とするのが一般的である。そのため、セメント系固化剤液の注入量に比例する形で泥水状の固化剤余剰液が発生し、多くの場合これを自然乾燥させたのち産業廃棄物として処理するようになっている。
【0004】
しかしながら、この廃棄処理においては、固化剤余剰液あるいは混合土を産業廃棄物として処理する工程が必要となり、その産業廃棄物処理対策が極めて大きな負担となっていた。そこで、本願の出願人らは、このような廃棄処理に伴う負担を取り除くとともに固化剤余剰液を回収してリサイクルすることにより固化剤液の有効利用を図る技術を先に開発して出願し、特許の登録を受けている(下記、特許文献1を参照)。
【0005】
この特許発明の装置について図2を参照して概説すると、掘削時に排出された泥水状の固化剤余剰液は、管路1を介して分離機2の内部の振動スクリーン3上に供給され、加振装置4による振動によって土砂と固化剤液とに分離される。そして、分離された土砂は発生残土Sとして排出され、固化剤余剰液は振動スクリーン3を透過してその下部の貯留用タンク5内に受け入れられる。
【0006】
一方、貯留用タンク5内には、モータMにより回動する撹拌機6が設置され、この撹拌機6の撹拌羽根7,7によって貯留用タンク5内の固化剤余剰液を撹拌するようになっている。また、撹拌された固化剤余剰液はポンプPによって汲み上げられ、管路8を介してサイクロン9に供給されて、微粒状の土砂類とリサイクル可能な固化剤余剰液とに分離される。そして、微粒状の土砂類は分離機2の内部の振動スクリーン10上で捕捉されて排出されるが、リサイクル可能な固化剤余剰液はオーバーフロー管路11を介して貯留用タンク5に戻される。
【0007】
他方、オーバーフロー管路11の途中には、余剰液リサイクルプラントに向かう分岐管路12が接続され、リサイクル用の固化剤余剰液を圧送用ポンプ13で圧送するようになっている。また、オーバーフロー管路11および分岐管路12には、それぞれ切換弁14,15が設けられ、固化剤余剰液を貯留用タンク5へ戻すか余剰液リサイクルプラントへ送るかの選択的な切り換えができるようになってきる。
【0008】
さらに、貯留用タンク5にはフロートスイッチ16が設けられ、貯留用タンク5内の水位が所定値を超えたときには貯留用タンク5内への固化剤余剰液の流入を停止させて、貯留用タンク5のオーバーフロー等のトラブルを未然に防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3655260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した特許発明の装置の貯留用タンク5内に貯留されている固化剤余剰液は、振動スクリーン3を透過した固化剤余剰液(A液)、サイクロン9から排出された微粒状の土砂類に含まれていて振動スクリーン10を透過した固化剤余剰液(B液)、およびサイクロン9において分離されたリサイクル用固化剤余剰液(C液)が混合したものとなっている。
このとき、掘削作業が進行している間にはA液が大量に発生して貯留用タンク5に次から次へと流入するが、掘削作業が中断している間にはA液の流入はなく、B液とC液の比率が高くなる。
このように、貯留用タンク5内に貯留されている固化剤余剰液の性状、例えばその成分や微粒子の分布状態は、A液、B液、C液の比率に応じて時間とともに変動する。
【0011】
ところで、貯留用タンク5に貯留されている固化剤余剰液をリサイクルして再利用する際には、固化剤余剰液の成分や微粒子の分布状態を分析し、再添加する固化剤の量を決定しなければならない。
このとき、貯留用タンク5に貯留されている固化剤余剰液の成分や微粒子の分布状態が時間とともに変動すると、固化剤余剰液を再利用する度にその成分や微粒子の分布状態を分析しなければならず、作業が煩雑なものとなってしまう。
したがって、再利用する固化剤余剰液の成分は、時間とともに変動することがなく、その性状を容易に推測できる程度に安定していることが好ましい。
【0012】
そこで本発明の目的は、上述した特許発明の装置をさらに改良し、固化剤余剰液をリサイクルして再利用する際にその性状を容易に推測できる程度に安定させて貯留しておくことが可能な、ソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明は、
掘削機の掘削ヘッドから吐出される固化剤液と前記掘削機により掘削された掘削原位置土とを混合撹拌して地中壁等の造成物を構築するソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置であって、
掘削撹拌中に排出される泥水状の固化剤余剰液から土砂を分離する分離機と、
前記固化剤余剰液から微粒子分を分離除去して前記分離機の外部に排出するサイクロンと、
前記分離機において土砂から分離された固化剤余剰液を受け入れて貯留する第1の貯留用タンクと、
前記第1の貯留用タンクに貯留されている前記固化剤余剰液を汲み上げて、第1の管路を介して前記サイクロンへと供給する第1のポンプと、
前記サイクロンで微粒子分が分離除去されたリサイクル用固化剤余剰液を受け入れて貯留する第2の貯留用タンクと、
前記第2の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を汲み上げて前記掘削機の側に供給する第2の管路と、を備えることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明のソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置においては、分離機において土砂が分離された固化剤余剰液(A液)が第1の貯留用タンクに貯留されるとともに、サイクロンから排出された微粒状の土砂類に含まれている固化剤余剰液(B液)は微粒状の土砂類とともに分離機の外部に排出され、かつサイクロン9において微粒状の土砂類から分離されたリサイクル用固化剤余剰液(C液)が第2の貯留用タンクに貯留される。
これにより、第2の貯留用タンクにはリサイクル用固化剤余剰液(C液)のみが貯留されるから、掘削作業の進行や中断に伴ってその成分や微粒子の分布状態が大きく変動することはなく、その性状を容易に推測できる程度に安定させて貯留しておくことができる。
したがって、第2の貯留用タンクに貯留されているリサイクル用固化剤余剰液(C液)を利用すると、性状を分析する作業を省略できるばかりでなく、固化剤を再添加する無駄を省くことができる。
【0015】
一方、前記第1の貯留用タンクは、その底部ほど内径の小さいすり鉢状に形成し、かつ前記第1のポンプは、前記第1の貯留用タンクの底部に接続された排水管路を介して前記第1の貯留用タンクの内部に貯留されている固化剤余剰液を汲み上げるように構成することが好ましい。
同様に、前記第2の貯留用タンクは、その底部ほど内径の小さいすり鉢状に形成し、かつ前記第2のポンプは、前記第2の貯留用タンクの底部に接続された排水管路を介して前記第2の貯留用タンクの内部に貯留されている固化剤余剰液を汲み上げるように構成することが好ましい。
【0016】
すなわち、第1および第2の貯留用タンク内の固化剤余剰液を第1および第2のポンプでそれぞれ汲み上げると、すり鉢状の各貯留用タンクの内部の固化剤余剰液には下向きの流れが生じる。
このとき、各貯留用タンク内の固化剤余剰液にはコリオリ力に起因した渦巻き状の流れが生じるから、各貯留用タンクの円錐状の内壁面や底壁面に付着している土砂等を洗い流すことができる。
【0017】
他方、前記第1の管路の途中から分岐して前記第1の貯留用タンクに延びる、前記第1のポンプが汲み上げた固化剤余剰液を前記第1の貯留用タンクに環流させる第3の管路をさらに備えることが好ましい。
同様に、前記第2の管路の途中から分岐して前記第2の貯留用タンクに延びる、前記第2のポンプが汲み上げた固化剤余剰液を前記第2の貯留用タンクに環流させる第4の管路をさらに備えることが好ましい。
【0018】
すなわち、第1および第2のポンプと第3および第4の管路をそれぞれ用いて、第1および第2の貯留用タンク内の各固化剤余剰液を循環させることにより、各貯留用タンク内の固化剤余剰液の固化やその内部に含まれている土砂の沈殿を防止することができるから、貯留用タンク内に撹拌装置を設ける必要がない。
また、各貯留用タンクの内部にはポンプや攪拌機が存在しないから、各貯留用タンクの内部を洗浄する作業を容易にかつ短い時間で行うことができる。
【0019】
加えて、前記第1および第3の管路に切換弁を設け、前記第1の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を前記サイクロンへあるいは前記第1の貯留用タンクへと選択的に供給できるようにすることが好ましい。
同様に、前記第2および第4の管路に切換弁を設け、前記第2の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を前記掘削機の側へあるいは前記第2の貯留用タンクへと選択的に供給できるようにすることが好ましい。
【0020】
すなわち、第1の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液のサイクロンへの供給および第1の貯留用タンクへの環流を、第1のポンプによって効率よく行うことができる。
同様に、第2の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液の掘削機側への供給および第2の貯留用タンクへの環流を、第2のポンプによって効率よく行うことができる。
これにより、設備費を低減できるばかりでなく、ポンプの運転に伴う電力消費の低減を図ることもできる。
【0021】
前記第1の貯留用タンク内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する、前記第1貯留用タンクの上方に設置された第1の液面レベルセンサをさらに備えることが好ましい。同様に、前記第2の貯留用タンク内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する、前記第2貯留用タンクの上方に設置された第2の液面レベルセンサをさらに備えるが好ましい。
【0022】
すなわち、貯留用タンクの内部にフロート式の液面レベルセンサを設ける場合には、固化剤余剰液が液面レベルセンサの近傍に滞留して土砂が沈殿したり、貯留用タンクの内部を洗浄するときに邪魔になったりする。
これに対して、第1および第2の貯留用タンク内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する液面レベルセンサを用いることにより、貯留用タンクの内部には液面レベルセンサが存在しないから、土砂が沈殿したり洗浄の邪魔になったりしない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固化剤余剰液をリサイクルして再利用する際にその性状を推測できる程度に安定させて貯留しておくことが可能な、ソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置の一実施形態の構造を模式的に示す図。
【図2】特許第3655260号明細書に記載されている固化剤余剰液処理装置の構造を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1を参照し、本発明のソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、前述した従来技術と同一の部分に同一の符号を用いる。
【0026】
図1に示した本実施形態の固化剤余剰液処理装置100は、図2に示した特許発明の装置に対し、貯留用タンクを2つに分けるとともに、サイクロン9を分離機2の外側に配置し、貯留用タンク5の内部からポンプP、攪拌機6およびフロートスイッチ16を取り除いた構造となっている。
【0027】
具体的に説明すると、掘削時に排出された泥水状の固化剤余剰液は、管路1を介して分離機2の内部の振動スクリーン3上に供給され、加振装置4による振動によって土砂と固化剤液とに分離される。
そして、分離された土砂は発生残土Sとして分離機の外部に排出され、振動スクリーン3を透過した固化剤余剰液(A液)は下方の第1の貯留用タンク20に受け入れられる。
このとき第1の貯留用タンク20は、その底部ほど内径が小さい円錐であるすり鉢状に形成されるとともに、その底部に接続された排出管路21を介して固化剤余剰液を排出できるようになっている。
【0028】
第1の貯留用タンク20の下方に配置された第1の汲上用ポンプ22は、排出管路21を介して第1の貯留用タンク20に接続されており、貯留されている固化剤余剰液を汲み上げ、第1の管路23を介してサイクロン24に供給する。
サイクロン24に供給された固化剤余剰液は、微粒状の土砂類とリサイクル可能な固化剤余剰液とに分離される。
サイクロン24から排出される微粒状の土砂類に含まれている固化剤余剰液(B液)は残土Sとして分離機2の外部に排出されるが、リサイクル可能な固化剤余剰液(C液)はオーバーフロー管路25介して第2の貯留用タンク26に供給される。
【0029】
第2の貯留用タンク26は、その底部ほど内径が小さい円錐であるすり鉢状に形成されるとともに、その底部に接続された排出管路27を介して固化剤余剰液を排出できるようになっている。
また、第2の貯留用タンク26の下方に配置された第2の汲上用ポンプ28は、排出管路27を介して第2の貯留用タンク26に接続されており、貯留されているリサイクル用の固化剤余剰液(C液)を汲み上げ、第2の管路29を介して掘削機の側に供給する。
【0030】
また、第1の管路23の途中で分岐する第3の管路31は、第1の貯留用タンク20の上方に延びており、第1の汲上用ポンプ22が汲み上げた固化剤余剰液(A液)を第1の貯留用タンク20に環流させることができるようになっている。
また、第1および第3の管路23,31には切換弁32,33がそれぞれ設けられ、第1の汲上用ポンプ22が第1の貯留用タンク20から汲み上げた固化剤余剰液(A液)をサイクロン24あるいは第1の貯留用タンク20へと選択的に供給できるようになっている。
【0031】
同様に、第2の管路29の途中で分岐する第4の管路34は、第2の貯留用タンク26の上方に延びており、第2の汲上用ポンプ28が汲み上げたリサイクル用の固化剤余剰液(C液)を第2の貯留用タンク26に環流させることができるようになっている。
また、第2および第4の管路29,34には切換弁35,36がそれぞれ設けられ、第2の汲上用ポンプ28が第2の貯留用タンク26から汲み上げたリサイクル用の固化剤余剰液(C液)を掘削機の側あるいは第2の貯留用タンク26へと選択的に供給できるようになっている。
【0032】
さらに、第1の貯留用タンク20の上方には液面レベルセンサ37が設けられており、第1の貯留用タンク20内の固化剤余剰液(A液)の液面レベルを非接触で、例えば超音波を用いて検出するようになっている。
そして、第1の貯留用タンク20内の固化剤余剰液(A液)の液面レベルが所定の位置を上回ると、切換弁33を作動させ、第3の管路31を介した第1の貯留用タンク20への固化剤余剰液の供給を停止させるようになっている。
【0033】
同様に、第2の貯留用タンク26の上方にも液面レベルセンサ37が設けられており、第2の貯留用タンク26内のリサイクル用の固化剤余剰液(C液)の液面レベルを非接触で、例えば超音波を用いて検出するようになっている。
そして、第2の貯留用タンク26内のリサイクル用の固化剤余剰液(C液)の液面レベルが所定の位置を上回ると、切換弁36を作動させ、第4の管路34を介した第2の貯留用タンク26へのリサイクル用の固化剤余剰液(C液)の供給を停止させるようになっている。
【0034】
すなわち、本実施形態の固化剤余剰液処理装置100においては、分離機2において土砂が分離された固化剤余剰液(A液)が第1の貯留用タンク20に貯留されるとともに、サイクロン24から排出された微粒状の土砂類に含まれている固化剤余剰液(B液)は残土Sとして分離機2の外部に排出され、かつサイクロン9において微粒状の土砂類から分離されたリサイクル用固化剤余剰液(C液)が第2の貯留用タンクに貯留される。
これにより、第2の貯留用タンク26にはリサイクル用の固化剤余剰液(C液)のみが貯留されるから、掘削作業の進行や中断に伴ってその成分や微粒子の分布状態が大きく変動することはなく、その性状を容易に推測できる程度に安定させて貯留しておくことができる。
したがって、第2の貯留用タンク26に貯留されているリサイクル用固化剤余剰液(C液)を利用すると、性状を分析する作業を省略できるばかりでなく、固化剤を再添加する無駄を省くことができる。
【0035】
また、第1および第2の貯留用タンク20,26は、それぞれすり鉢状に形成されるとともに、それらの底部に接続された排出管路21,27を介して各貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液を各ポンプ22,28で汲み上げる構造となっている。
これにより、各貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液の全てを各ポンプ22,28によって汲み上げることができるから、固化剤余剰液の全てを効率よく利用することができる。
【0036】
また、第1および第2のポンプ22,28と第3および第4の管路31,34を用いて、各貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液をそれぞれ循環させると、各貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液の固化やその内部に含まれている土砂の沈殿を防止することができるから、各貯留用タンク20,26の内部に撹拌装置を設ける必要がない。
【0037】
さらに、第1および第2の貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液をポンプ22,28がそれぞれ汲み上げると、すり鉢状の各貯留用タンク20,26の内部の固化剤余剰液には下向きの流れが生じる。
このとき、各貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液にはコリオリ力に起因した渦巻き状の流れが生じるから、各貯留用タンク20,26の円錐状の内壁面や底壁面に付着している土砂等を固化剤余剰液によって洗い流すことができる。
加えて、各貯留用タンク20,26の内部には、図2に示した従来装置のようにポンプPや攪拌機6が存在しないから、各貯留用タンク20,26の内部を洗浄する作業を容易にかつ短い時間で行うことができる。
【0038】
さらにまた、本実施形態の固化剤余剰液処理装置100においては、第1の管路23および第3の管路31に切換弁32,33を設けたので、第1の貯留用タンク20から第1のポンプ22が汲み上げた固化剤余剰液をサイクロン24あるいは第1の貯留用タンク20へと選択的に供給することができる。
同様に、第2の管路29および第4の管路34に切換弁35,36を設けたので、第2の貯留用タンク26から第2の汲上用ポンプ28が汲み上げたリサイクル用の固化剤余剰液を掘削機の側あるいは第2の貯留用タンク26へと選択的に供給することができる。
これにより、第1の貯留用タンク20内の固化剤余剰液のサイクロン24への供給や、第2および第4の管路31,34を介した固化剤余剰液の循環による沈殿の防止、さらには第1および第2の貯留用タンク20,26の洗浄を、2台のポンプ22,28で効率よく行うことができるから、設備費を低減できるばかりでなく、ポンプ22,28の運転に伴う電力消費の低減を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態の固化剤余剰液処理装置100においては、第1および第2の貯留用タンク20,26内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する液面レベルセンサ27が、各貯留用タンク20,26の上方に設けられている。
これにより、各貯留用タンク20,26の内部にフロートスイッチ式の液面レベルセンサを設ける場合のように、固化剤余剰液が液面レベルセンサの近傍で滞留してその内部に含まれている土砂が沈殿したり、貯留用タンクの内部を洗浄するときに邪魔になったりすることがない。
【0040】
以上、本発明のソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液処理装置の一実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、第1および第2の貯留用タンク20,26をそれぞれ円錐状に構成しているが、その水平断面が楕円状である錐状の貯留用タンクを含めて、他の形状の貯留用タンクを用いることもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 管路
2 分離機
3 振動スクリーン
4 加振装置
5 貯留用タンク
6 攪拌機
7 撹拌羽根
8 管路
9 サイクロン
10 振動スクリーン
11 オーバーフロー管路
12 分岐管路
13 圧送用ポンプ
14,15 切換弁
16 フロートスイッチ
20 第1の貯留用タンク
21 排出管路
22 第1の汲上用ポンプ
23 第1の管路
24 サイクロン
25 オーバフロー管路
26 第2の貯留用タンク
27 排出管路
28 第2の汲上用ポンプ
29 第2の管路
31 分岐管路(第3の管路)
32,33 切換弁
34 分岐管路(第4の管路)
35,36 切換弁
37 液面レベルセンサ
100 一実施形態の固化剤余剰液処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機の掘削ヘッドから吐出される固化剤液と前記掘削機により掘削された掘削原位置土とを混合撹拌して地中壁等の造成物を構築するソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置であって、
掘削撹拌中に排出される泥水状の固化剤余剰液から土砂を分離する分離機と、
前記分離機で土砂と分離された固化剤余剰液を受け入れて貯留する第1の貯留用タンクと、
前記第1の貯留用タンクに貯留されている前記固化剤余剰液を汲み上げ、この固化剤余剰液から微粒子分を分離除去するサイクロンへと第1の管路を介して供給する第1のポンプと、
前記サイクロンで微粒子分が分離除去されたリサイクル用固化剤余剰液を受け入れて貯留する第2の貯留用タンクと、
前記第2の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を汲み上げて前記掘削機の側に供給する第2の管路と、
を備えることを特徴とするソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項2】
前記第1の貯留用タンクは、その底部ほど内径の小さいすり鉢状に形成され、
かつ前記第1のポンプは、前記第1の貯留用タンクの底部に接続された排水管路を介して前記第1の貯留用タンクの内部に貯留されている固化剤余剰液を汲み上げるようになっていることを特徴とする請求項1に記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項3】
前記第2の貯留用タンクは、その底部ほど内径の小さいすり鉢状に形成され、
かつ前記第2のポンプは、前記第2の貯留用タンクの底部に接続された排水管路を介して前記第2の貯留用タンクの内部に貯留されている固化剤余剰液を汲み上げるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項4】
前記第1の管路の途中から分岐して前記第1の貯留用タンクに延びる、前記第1のポンプが汲み上げた固化剤余剰液を前記第1の貯留用タンクに環流させる第3の管路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項5】
前記第1および第3の管路に切換弁を設け、前記第1の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を前記サイクロンへあるいは前記第1の貯留用タンクへと選択的に供給できるようになっていることを特徴とする請求項4に記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項6】
前記第2の管路の途中から分岐して前記第2の貯留用タンクに延びる、前記第2のポンプが汲み上げた固化剤余剰液を前記第2の貯留用タンクに環流させる第4の管路をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項7】
前記第2および第4の管路に切換弁を設け、前記第2の貯留用タンクに貯留されている固化剤余剰液を前記掘削機の側へあるいは前記第2の貯留用タンクへと選択的に供給できるようになっていることを特徴とする請求項6に記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項8】
前記第1の貯留用タンク内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する、前記第1貯留用タンクの上方に設置された第1の液面レベルセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。
【請求項9】
前記第2の貯留用タンク内の固化剤余剰液の液面レベルを非接触で計測する、前記第2貯留用タンクの上方に設置された第2の液面レベルセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載したソイルセメントミキシング工法に用いる固化剤余剰液の処理装置。

【図1】
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【図2】
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