説明

ソフトカプセル

【課題】 経時的に皮膜から内容物中への水分の移行を防止し、内溶液の変色・結晶析出や、剤皮の透明性が損なわれる等の問題を防止した塩酸ジフェンヒドラミンを含有するソフトカプセルを提供すること。
【解決手段】 塩酸ジフェンヒドラミン、ポリエチレングリコールおよび高分子化合物を含有する充填液を、ゼラチンおよび濃グリセリンを含有する皮膜成分で被覆してなるソフトカプセル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は睡眠を改善するためのソフトカプセルに関する。更に詳細には、睡眠成分として塩酸ジフェンヒドラミンを含有しながら、経時的な外観低下の問題が生じることのないソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本に於いて、一般用医薬品の睡眠改善薬として、塩酸ジフェンヒドラミンを就寝前一回投与量50mgで処方される内服錠剤が用いられている。一般用医薬品の睡眠改善薬による治療の対象となる「寝つきが悪い」、「眠りが浅い」といった多くの現代人の抱える一時的な不眠症状(「一時的な不眠」とは、精神疾患等の病的な原因のない人が一時的な環境の変化やストレスなどが原因で経験する一過性の不眠のことで、その持続期間は数日間程度で1週間を超えない不眠)を訴える国民の数は5人に1人の割合で存在するという調査結果もあり、一般用医薬品の睡眠改善薬の治療対象は、15歳以上の大人から高齢者までの幅広い年齢層の様々な嗜好をもった非常に大多数の消費者が対象となっている。
【0003】
ところで、現在病院で主に処方されている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主であり、これは、大脳辺緑系・大脳皮質に分布するベンゾジアゼピン受容体に作用し、抑制系神経伝達物質GABAの作用を亢進し、催眠・鎮静作用を発揮することから、催眠導入効果が強い半面、大量の服用は多幸感が得られるが死に至ることもあり、自殺や犯罪利用などの不正使用が絶えない。
【0004】
これに対し、一般用医薬品で用いられる塩酸ジフェンヒドラミンは、睡眠効果はベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも弱いが、抗ヒスタミン作用により、覚醒の維持に関与するヒスタミンの働きを抑制し、睡眠作用を発揮することから睡眠導入剤として利用されている。そしてこのものは、大量の服用でも多幸感が得られずに不快感が増加し、「100錠飲んでも死ねない今時の睡眠薬」といわれるほど安全性は非常に高い。
【0005】
一般に睡眠導入には、種々の方法があるが、寝酒による方法は、深い睡眠を減らして夜中に目覚める原因となり、睡眠不足に至ることが知られている。また、夜の睡眠導入や眠りの深さは、就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙、読書、音楽、入浴の仕方、香り、筋弛緩トレーニング、夕方以降の昼寝、寝酒などの就寝時の環境や精神及び身体の状態など様々な要因に左右されやすいことが科学的に解明されてきている。そして、一時的な不眠症状に対しては、一般用医薬品である塩酸ジフェンヒドラミンを利用した睡眠改善薬を利用した睡眠導入は、上記のように医療用の睡眠薬よりも安全性が高く習慣性もない為、より好ましいと考えられている。
【0006】
ところで、本邦では白色の錠剤が医薬品の剤形として最も好まれ、現在市販されている睡眠改善薬は白色の錠剤である。そして、成人男子を対象にした塩酸ジフェンヒドラミン50mgを含有する錠剤及び溶液製剤の体内動態を比較した薬物動態試験では、錠剤と溶液製剤でジフェンヒドラミンの最高血清中濃度、最高血清中濃度到達時間および生物学的利用能に差がなかったことが明らかにされており(非特許文献1)、錠剤と溶液製剤で吸収性が同等であることが知られている。
【0007】
しかしながら、本質的にソフトカプセル剤や、液剤、シロップ剤などの服用時に溶液状態の剤形の方が、薬剤が溶解する過程がないため、効果発現までの確実性が高く、しかも、一般用医薬品の睡眠効果の効き目は、環境や精神及び身体の状態などと共に使用者の嗜好にも左右されることがあるため、ソフトカプセルなどの剤形を好む消費者にその剤形の薬剤を提供することは非常に有意義である。
【0008】
従来、ソフトカプセルは、主成分を大豆油等の植物油又はポリエチレングリコール類などの基剤に溶解又は懸濁或いは乳化した充填液を用いてカプセル化され、製剤化されている(特許文献1〜4)。また、ソフトカプセルの皮膜成分としては、ゼラチン(特許文献5、6)、ゼラチンおよび水溶性高分子(特許文献7)、寒天および水溶性高分子(特許文献8)、アルギン酸塩(特許文献9、10)、デンプン(特許文献11、12)などが用いられている。そして、塩酸ジフェンヒドラミンに関しては、ポリエチレングリコール600及び水に溶解し、ゼラチン皮膜でカプセル化する方法(特許文献13)が提案されている。
【0009】
しかしながら、上記した技術に従い、睡眠用薬効成分として塩酸ジフェンヒドラミンを含有するソフトカプセルを製造すると、経時的に皮膜から内容物中に水分が移行することがあり、内溶液の変色・結晶析出などの外観変化が生じたり、剤皮の透明性が損なわれるなどの問題が生じることがあった。
【0010】
そして、透明な液状のソフトカプセルは美観に優れ商品価値が高いが、その透明な内容物や皮膜が変色したり、結晶が生じたり、透明性が損なわれたり、分離したりして、外観が損なわれると、商品価値が低下するだけでなく、消費者にも不快感を与えるため、たとえ、成分含量の低下がなくても望ましいことではなかった。
【0011】
このような問題があるため、気象条件の変動が大きい本邦では、無色透明なソフトカプセルとして市販に供することは難しく、現在に至るまで塩酸ジフェンヒドラミンを主成分とするソフトカプセルは提供されていなかった。
【0012】
【非特許文献1】Gielsdorf W, Pabst G,Lutz D, Graf F:Pharmacokinetics and bioavailability ofdiphenhydramine in man:Arznei- mittelforschung.1986Apr;36(4):752-756
【特許文献1】特開2006−321718号公報
【特許文献2】特開2005−192494号公報
【特許文献3】特開2002−291419号公報
【特許文献4】特開平11−1427号公報
【特許文献5】特開昭59−139317号公報
【特許文献6】特開昭61−151127号公報
【特許文献7】特開2004−175746号公報
【特許文献8】特開平9−25228号公報
【特許文献9】特開平3−68508号公報
【特許文献10】特開平3−285654号公報
【特許文献11】特開2006−96695号公報
【特許文献12】特開2005−170929号公報
【特許文献13】特表2004−521104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明は、経時的に皮膜から内容物中への水分の移行を防止し、内溶液の変色・結晶析出や、剤皮の透明性が損なれる等の問題を防止した塩酸ジフェンヒドラミンを含有するソフトカプセルの提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高分子物質を配合したポリエチレングリコール溶液にジフェンヒドラミンを溶解するとジフェンヒドラミンを高濃度に含有した透明な組成物が得られ、この組成物をソフトカプセルに充填すると、長期の保存においても安定性に優れ、内容物や皮膜の透明性を損なうことがないソフトカプセルが得られることを見いだした。
【0015】
さらに、皮膜に香料を添加したソフトカプセルを製すると、睡眠改善薬としての嗜好性も高まり、服用がしやすく、商品価値が向上することも見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、塩酸ジフェンヒドラミン、ポリエチレングリコールおよび高分子化合物を含有する充填液を、ゼラチンおよび濃グリセリンを含有する皮膜成分で被覆してなるソフトカプセルを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のソフトカプセルは、透明性を維持した経時的に安定なソフトカプセルであり、服用が容易で、計量の煩雑さがなく、携帯性に優れた睡眠改善ソフトカプセルとして利用可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のソフトカプセルでの有効成分である塩酸ジフェンヒドラミン(化学名:N-(2-Benzhydryloxyethyl)-N,N-dimethylamine monohydrochloride)は、従来より睡眠導入剤に用いられているものである。この塩酸ジフェンヒドラミンは、本発明のソフトカプセルの充填液全質量に対し0.5〜20質量%(以下、単に「%」で示す)であり、好ましくは、4〜15%、より好ましくは9〜12%である。また、皮膜を含めたソフトカプセル製剤全質量に対しては、0.3〜15%であり、3〜10%が好ましく、6〜9%であることが特に好ましい。
【0019】
また、本発明のソフトカプセルの充填液には、基剤としてポリエチレングリコールが配合される。このポリエチレングリコールとしては、例えばポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400(凝固点4〜8℃)、ポリエチレングリコール600(凝固点18〜23℃)など常温で液状のポリエチレングリコールが好ましく、これらはいずれも本発明に使用することができ、2種以上を混合して用いても良い。特に好ましいものとしては、ポリエチレングリコール400を挙げることができる。
【0020】
更に、本発明のソフトカプセル剤の充填液に配合される高分子化合物としては、好ましくは、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸及びその塩などを用いることができる。これらの中でも、特にポリビニルピロリドンを用いることが好ましく、更に、K値が27〜33のポリビニルピロリドンが好適である。このようなK値を有するポリビニルピロリドンの市販品としては、コリドン30(BASFジャパン社製)、ポリビニルピロリドンKW−30(日本触媒社製)等を挙げることができる。尚、K値とは分子量と相関する粘性特性値で、毛細管粘度計により測定される相対粘度値(25℃)を次のFikentscherの式に適用して計算される。
【0021】
K=(1.5 logηrel −1)/(0.15+0.003c)+(300clogηrel
(c+1.5clogηrel1/2/(0.15c+0.003c
ηrel:ポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度
c:ポリビニルピロリドン水溶液中のポリビニルピロリドン濃度(%)
【0022】
充填液中でのポリエチレングリコールの添加量は、充填液全質量に対し60〜99%程度であることが好ましく、この添加量は、皮膜を含めたソフトカプセル製剤全質量に対しては、およそ35〜80%であり、好ましくは50〜60%であり、より好ましくは52〜54%程度となる。
【0023】
また、充填液中での高分子化合物の添加量は、用いる高分子化合物によって異なるが、内容物全質量に対し、0.1〜4.0%程度であり、好ましくは0.5〜2.0%であり、特に好ましくは、0.9〜1.0%である。この添加量は、皮膜を含めた製剤全質量に対しては、およそ0.06〜3%であり、好ましくは0.3〜1.5%であり、特に好ましくは0.6〜0.7%である。
【0024】
この充填液中には、上記成分の他、水、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコール等添加することもできる。これらの成分は予め、混合しておくこともできる。
【0025】
充填液中での、水の添加量は、充填液全質量に対し、0.2〜20%であり、好ましくは4〜15%、特に好ましくは12〜13%である。この添加量は、皮膜を含めたソフトカプセル製剤全質量に対しては、0.1〜20%であり、好ましくは3〜13%であり、特に好ましくは8〜10%である。
【0026】
一方、本発明のソフトカプセルの皮膜成分は、ゼラチンおよび濃グリセリンを含有するものである。
【0027】
このうちゼラチンは、ソフトカプセルの皮膜成分基材として広く使用されているものである。このゼラチンの添加量は、皮膜成分全質量に対し、45〜80%であり、好ましくは55〜70%、特に好ましくは66〜68%である。この添加量は、内容物を含めたソフトカプセル製剤全質量に対しては、およそ7〜45%であり、好ましくは15〜25%、特に好ましくは19〜22%である。
【0028】
また、皮膜成分中の濃グリセリンの添加量は、皮膜成分全質量に対し、5〜35%であり、好ましくは10〜27%、特に好ましくは16〜24%である。この添加量は、内容物を含めた製剤全質量に対しては、およそ1.5〜21%であり、好ましくは3〜9%、特に好ましくは4〜8%である。
【0029】
本発明のソフトカプセルの皮膜成分には、上記成分の他、通常ソフトカプセルに用いる寒天、プルラン、セルロース、カラギーナン、コハク化ゼラチン等の基材を用いたり、ソルビトール液、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液、プロピレングリコール、エリスリトール、キシリトール、マルチトース、グリセリン、防腐剤、着色剤、酸化チタン等の添加成分を加えることもできる。
【0030】
このうち、ソルビトール液を使用する場合の皮膜成分に対する添加量は、皮膜成分全質量に対し、2〜46%、好ましくは7〜33%、特に好ましくは8〜17%である。この添加量は、内容物を含めたソフトカプセル製剤全質量に対しては、およそ0.7〜30%であり、好ましくは2〜12%、特に好ましくは2〜6%となる。なお、ソルビトール液としては、ソルビトール含量が70%前後のものを用いることが好ましい。また、ソルビトール液に変えて、ソルビトール液相当量のソルビトールと精製水を用いてもよい。
【0031】
さらに、本発明のソフトカプセルには、香料を添加、賦香することが望ましい。使用される香料としては、睡眠改善効果を高める様な働きのあるもの、例えば、シソ科のラベンダー、ローズマリー、クラリセージ、パルマローザ、ヒソップ、メリッサ、バジル、セージ、ペニーロイヤル、ペパーミント、スペアミント、タイム(タチジャコウソウ)、セイボリー、パチュリー(バチョリ)等、ミカン科のオレンジ、オレンジフラワー、グレープフルーツ、シトラス(カンキツ)、プチグレイン、ベルガモット、ミカン、ユズ、レモン、ライム、マンダリン等、キク科のカモミル、タラゴン(エストラゴン)、キク等、イネ科のレモングラス、シトロネラ、パルマローザ等、フトモモ科のユーカリ、ニアウリ、フトモモ、セリ科のコリアンダー、フェンネル(ショウウイキョウ)、キャラウェイ(ヒメウイキョウ)、セロリ、アンゼリカ等、クスノキ科のシナモン、ローレル(ゲッケイジュ)、クスノキ等、ヒノキ科のヒノキ等、マツ科のマツ(パイン)等、コショー科のコショー(ペッパー)等、ショウガ科のジンジャー(ショウガ)等、ビャクダン科のサンダルウッド(ビャクダン)等、カンラン科のミルラ等、バンレイシ科のイランイラン等、フウロウソウ科のゼラニウム等、バラ科のバラ(ローズ)等が挙げられる。特に好ましくは、ラベンダー、ローズマリー、クラリセージ、パルマローザ、ヒソップ、メリッサ、バジル、セージ、ペニーロイヤル、ペパーミント、スペアミント、タイム(タチジャコウソウ)、セイボリー、パチュリー(バチョリ)、オレンジ、オレンジフラワー、グレープフルーツ、シトラス(カンキツ)、プチグレイン、ベルガモット、ミカン、ユズ、レモン、ライム、マンダリンが挙げられる。
【0032】
これらの香料は、皮膜外表面に賦香させても良く、また皮膜内に添加しても良い。この香料を賦香ないし添加する方法としては、ソフトカプセルを製した後、混合機などで皮膜表面に付着させる方法、皮膜を調製する際に他の皮膜用原料と共に混合して添加し皮膜内に内包させる方法等が挙げられる。
【0033】
香料を賦香、添加する場合の使用量は、皮膜全質量に対し0.1〜0.4%程度であることが好ましく、内容物を含めた製剤全質量に対しては、およそ0.05〜0.1%程度であることが好ましい。
【0034】
本発明のソフトカプセルは、これを睡眠導入剤として製剤する場合には、上記のジフェンヒドラミンに加えて、さらに、釣籐鈎、ホップ、ニンジン、オート、セイヨウヤドリギ、甘草、茯苓、センキュウ、知母、天南星、牡丹皮、ポテンティラ、カモミール、カバカバ、リンデン、トケイソウ、西洋チャボトケイソウ、カノコソウ(吉草根)、酸棗仁などの植物由来成分、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム等のビタミンC及びその塩、塩酸チアミン、硝酸チアミン、チアミンジスルフィド、塩酸フルスルチアミン、フルスルチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、コカルボキシラーゼなどのビタミンB及びその塩並びにその誘導体、リボフラビン、酪酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、フラビンアデニンジヌクレオチドなどのビタミンB及びその塩並びにその誘導体、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、リン酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサミンなどのビタミンB及びその塩並びにその誘導体、コバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミンなどのビタミンB12及びその塩並びにその誘導体、ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのナイアシン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール、パンテチンなどのパントテン酸及びその塩並びにその誘導体、ビオチン、葉酸、オロチン酸、パンガミン酸、チオクト酸(リポ酸)、イノシトール、コリン等のビタミンB及びビタミン様作用物質、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン酸エチルアミド、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、γ-アミノ酪酸、グリシン、メチオニン、カルニチン、スレオニンなどのアミノ酸、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、アミノ酢酸などの制酸剤、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、L−グルタミン酸カルシウム、5'−リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、プロピオン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、酸化カルシウムなどのミネラル等の催眠改善効果をさらに向上させることが期待できる成分を適宜組み合わせて配合してもよい。
【0035】
本発明のソフトカプセルを睡眠導入剤として使用する場合の塩酸ジフェンヒドラミンの成人1回当たりの投与量は、25〜75mgとすることが好ましく、特に50mgとすることが好ましい。そして、カプセル化に当たっては、睡眠成分の1回当たりの投与量相当分を1カプセルに充填するか、又は1以上の多数個のカプセルに分けて充填することができるが、服用のし易さから、1〜数カプセルに充填することが好ましく、特に1〜2カプセルに充填することが特に好ましい。
【0036】
従って、1カプセル当たりの塩酸ジフェンヒドラミンの含有量は、25mg又は50mgとすることが特に好ましい。本発明のソフトカプセルの1個あたりの質量は、1カプセル中の塩酸ジフェンヒドラミンの含有量が50mgの場合は、400〜800mg程度とすることが好ましく、550〜650mg程度が特に好ましく、1カプセル中の塩酸ジフェンヒドラミンの含有量が25mgの場合は、200〜600mg程度とすることが好ましく、375〜425mg程度とすることが好ましい。この場合、全質量に対する内容物の比率は67〜72%程度となる。なお、本発明のソフトカプセルは、睡眠導入剤として就寝前に一日一回服用することが好ましい。
【0037】
本発明のソフトカプセルは、通常の方法で上記の各成分を配合して調製できる。その一例を示すと、水に、高分子化合物、さらに有効成分である塩酸ジフェンヒドラミンを添加溶解し、次いでこのものをポリエチレングリコールに適当な順序で添加し、必要に応じて加温して溶解すると、無色透明な溶液として充填液が得られる。一方、皮膜成分は、ゼラチン、濃グリセリン、ソルビトール液、香料などの皮膜成分を必要に応じて加温・溶解して適宜の厚さのシート状に成形することにより調製する。前記のようにして得た充填液を好ましくは脱気した後、篩過し、上記のように調製した皮膜成分を用い、通常の方法によってカプセル化し、これを乾燥することにより、目的のソフトカプセルが得られる。
【0038】
本発明のソフトカプセルの形状は、特に制約されるものではなく、オーバル型(フットボール型)、オブロング型(長だ円型)、ラウンド型(球型)、ドングリ型、長ナス型、三角型、ひし型、チューブ型などどのような形状に調製しても良い。しかし、つまみやすく、かつ、嚥下しやすいという点では、オーバル型、オブロング型、または、ラウンド型とすることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0040】
実 施 例 1
精製水 275gに、コリドン30(BASFジャパン社製;K値30)20gを添加して混合し、更に塩酸ジフェンヒドラミン250gを加え、撹拌して溶解した。そのものをポリエチレングリコール400 1630gに溶解し、これを減圧下で脱気した後、次いで、50メッシュで篩過することにより透明溶液(充填液)を得た。
【0041】
一方、ゼラチン 100重量部(以下、単に「部」で示す)に対して、濃グリセリン
35.1部、ソルビトール液12.8部およびラベンダー香料0.5部の割合で配合して皮膜成分を得た。このゼラチン皮膜成分を用い、上記の充填液を常法により1カプセル当り435mgとなるように6号オーバル型にカプセル化し、乾燥して1個中に塩酸ジフェンヒドラミン50mgを含む全質量約610mgのソフトカプセル約4000個を製造した。
【0042】
実 施 例 2
精製水 325gに、コリドン30 25gを添加して混合し、更に塩酸ジフェンヒドラミン250gを加え、撹拌して溶解した。そのものをポリエチレングリコール4002100gに溶解し、減圧下で脱気した後、次いで、50メッシュで篩過して透明溶液(充填液)を得た。
【0043】
一方、ゼラチン 100部に対して、濃グリセリン35.1部、ソルビトール液12.8部およびラベンダー香料0.5部の割合で配合して皮膜成分を得た。このゼラチン皮膜成分を用い、上記の充填液を常法により1カプセル当り270mgとなるように4号オーバル型にカプセル化し、乾燥して1個中に塩酸ジフェンヒドラミン25mgを含む全質量約398mgのソフトカプセル約6000個を製造した。
【0044】
比 較 例 1
透明溶液(充填液)の調製において、ポリビニルピロリドンを除き、他の成分の配合量を調整した以外は実施例1と同様にして1個中に塩酸ジフェンヒドラミン50mgを含む全質量約606mgのソフトカプセル約4000個を製造した。
【0045】
比 較 例 2
透明溶液(充填液)の調製において、ポリビニルピロリドンを除き、他の成分の配合量を調整した以外は実施例2と同様にして1個中に塩酸ジフェンヒドラミン25mgを含む全質量約395.5mgのソフトカプセル約6000個を製造した。
【0046】
試 験 例 1
外観変化:
(1)実施例1および2並びに比較例1および2で調製したソフトカプセルをPTPでシールした後、シリカゲルと共にアルミニウム袋に入れて紙箱で包装し、室温(25℃)で1年間保存した。1年間保存後の各ソフトカプセルについて、液体クロマトグラフィーで塩酸ジフェンヒドラミンの量の測定を行うと共に製剤自体の変色、結晶析出などによる外観の変化を観察し、安定性を評価した。その結果を第1表に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
この結果から、実施例1ないし比較例2の製剤はいずれも、塩酸ジフェンヒドラミンの定量値の低下がなかったが、比較例1および比較例2の製剤は、内容物に結晶の析出がみられ、また、剤皮にくもりが生じやや不透明となり商品性が著しく低下することが示された。これに対し、実施例1および2の製剤は、外観に変化はなく、商品性が低下することはなかった。
【0049】
実 施 例 3
精製水 275gに、コリドン30 20gを添加して混合し、更に塩酸ジフェンヒドラミン 250gを加え、撹拌して溶解した。そのものをポリエチレングリコール400 1630gに溶解し、減圧下で脱気した後、50メッシュで篩過して透明溶液(充填液)を得た。
【0050】
ゼラチン 100部に対して、濃グリセリン25部、ソルビトール液 25部、ラベンダー香料 0.5部の割合で配合して皮膜成分を得た。このゼラチン皮膜成分を用い、上記の充填液を常法により1カプセル当り435mgとなるように6号オーバル型にカプセル化し、乾燥して1個中に塩酸ジフェンヒドラミン50mgを含む全質量約605mgのソフトカプセル約4000個を製造した。
【0051】
実 施 例 4
精製水 325gに、コリドン30 25gを添加して混合し、更に塩酸ジフェンヒドラミン250gを加え、撹拌して溶解した。そのものをポリエチレングリコール400 2100gに溶解し、減圧下で脱気した後、50メッシュで篩過して透明溶液(充填液)を得た。
【0052】
ゼラチン 100部に対して、濃グリセリン25部、ソルビトール液 25部およびラベンダー香料 0.5部の割合で配合して皮膜成分を得た。このゼラチン皮膜を用い、上記の充填液を常法により1カプセル当り270mgとなるように4号オーバル型にカプセル化し、乾燥して1個中に塩酸ジフェンヒドラミン25mgを含む全質量約390mgのソフトカプセル約6000個を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のソフトカプセルは、塩酸ジフェンヒドラミンを含有しながらも、経時的に外観の低下が起こることのないものである。従って、催眠導入剤をはじめとする塩酸ジフェンヒドラミンを含有する製剤として有利に使用できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸ジフェンヒドラミン、ポリエチレングリコールおよび高分子化合物を含有する充填液を、ゼラチンおよび濃グリセリンを含有する皮膜成分で被覆してなるソフトカプセル。
【請求項2】
塩酸ジフェンヒドラミンの含有量が、充填液全質量に対し、0.5〜20質量%である請求項第1項記載のソフトカプセル。
【請求項3】
高分子化合物の含有量が、充填液全質量に対し、0.1〜4質量%であり、ポリエチレングリコールの含有量が、充填液全質量に対し、60〜99質量%である請求項第1項または第2項記載のソフトカプセル。
【請求項4】
ゼラチンの含有量が、皮膜成分全質量に対し、45〜80質量%であり、濃グリセリンの含有量が、皮膜成分全質量に対し、5〜35質量%である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載のソフトカプセル。
【請求項5】
高分子化合物が、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルギン酸もしくはその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載のソフトカプセル剤。
【請求項6】
高分子化合物が、K値が27〜33のポリビニルピロリドンである請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載のソフトカプセル剤。
【請求項7】
さらに、香料を添加したものである請求項第1項ないし第6項の何れかの項記載のソフトカプセル。
【請求項8】
香料を皮膜内に添加したものである請求項7記載のソフトカプセル。
【請求項9】
香料を皮膜外表面に付着したものである請求項第7項記載のソフトカプセル。
【請求項10】
塩酸ジフェンヒドラミンを1カプセル当たり50mg含有し、全質量が400〜800mgである請求項第1項ないし第9項の何れかの項記載の睡眠改善ソフトカプセル。
【請求項11】
塩酸ジフェンヒドラミンを1カプセル当たり25mg含有し、全質量が200〜600mgである請求項第1項ないし第9項の何れかの項記載の睡眠改善ソフトカプセル。


【公開番号】特開2008−184430(P2008−184430A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19705(P2007−19705)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000102496)エスエス製薬株式会社 (50)
【出願人】(591285169)キャタレント・ジャパン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】