説明

ソラレン不活化HIVに基づく免疫原性組成物及びワクチンの開発方法

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の所定の不活化された株の抗原性及び免疫原性組成物が、開示されている。不活化は、ソラレン及び紫外線を使用して実施され、前記組成物は、免疫反応を妨げるHIVの構造的特徴の除去によって、より効果的になる。特に、シアル酸は、組成物の免疫認識を促進するため、及び補体因子Hの結合を弱めるために除去される。補体因子Hの結合を妨げるために、CD55及びCD59も除去される。不活化のための株の決定は、免疫療法のジェノタイピングまたは曝露の危険の可能性評価を使用して実施されて良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年10月23日出願の米国仮出願第60/513,827号の優先権の利益を享受する。
【0002】
本発明は、ウイルス学及び免疫学の分野に関する。特に、本発明は、HIVのソラレン不活化組成物を使用するHIVに対する免疫反応を誘導する方法、及びそれを達成するための物質に関するが、それらに限らない。
【背景技術】
【0003】
ヒト免疫不全ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、スローまたはレンチウイルス群に属するレトロウイルスであり、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因である。HIV-1のような免疫系を攻撃する幾つかのレトロウイルスは、可変であり、容易に変異して、効果的な治療を開発するための取り組みを阻害する異なる遺伝組成を有する多くの株を作り出す。これらの株は、群またはサブタイプで分類されて良く、個別の生物学的特徴を有する。サブタイプ内の配列は、遺伝学的な集積性または類似性を有する可能性があり、それらの共通の系統を明らかにすることがある。しかしながら、進化速度におけるバリエーションは、一つのサブタイプに属していても変異体間の違いを作り出すことができる。更に、関連するレトロウイルスと組換えを起こすレトロウイルスの傾向が、ウイルスの遺伝子型を複雑にする。
【0004】
HIVは、逆転写を介して標的細胞内で相補鎖ウイルスDNAを作り出すための鋳型として自身のRNAを使用する。ウイルスDNAは、感染した宿主のDNAに組み込まれうる。HIVは、リンパ球、単球、樹状細胞、及びマクロファージのような表面にCD4を有する細胞に感染し、CD4陽性ヘルパーTリンパ球を破壊する。この過程は、HIVの二つの糖タンパク質に部分的に依存する。これらの糖タンパク質は、gp120(外側のレセプター結合構成成分であるEnv糖タンパク質)及び非共有結合パートナーであるgp41(Env膜貫通糖タンパク質)である。gp120とgp41は、三量体で会合する。三分子のgp120がビリオンの表面に露出し、ウイルスの脂質膜において三分子のgp41と会合する。gp120はヘルパーT細胞の表面でCD4レセプターに結合する。この結合は、高いアフィニティーであると一般的に解されており、ウイルス表面の高シアル酸含有量によって更に促進されうる。シアル酸は、反発する静電気力を克服するために必要とされるしきい値結合エネルギーを減少する。次いで、ウイルスは、T細胞と融合し始め、構造的または立体配座の変化を引き起こし、他のレセプターを露出する。融合すると、gp120断片は減少し、立体配座的に変化する過程の中でgp41の細胞外ドメインが露出される。次いで、gp41は切断され、標的細胞に結合するためのペプチド融合ドメインを作り出すために利用できる。この事が、標的細胞へのHIVの進入及び感染を引き起こす。
【0005】
HIVのエンベロープは、ウイルスが細胞膜を介して出芽する際に、宿主細胞の細胞膜から形成を始める。次いで、エンベロープは、宿主細胞の脂質及びタンパク質構成物を含む(Frank, lnes, Heribert Stoiber, et al., Vol. 10, pp.1611-20(1996))(Stoiber, Heribert, et al., Vol. 15, pp.649-74(1997))。幾つかのエンベロープを有するウイルスは、標的細胞レセプターに結合し、他の標的細胞に進入するために宿主分子に似せたスパイクタンパク質を使用する。しかしながら、これらのスパイクタンパク質は、免疫系の認識のための抗原性表面でもありうる。更にHIVは保護を提供する。立体配座的な変化の多様性に加え、gp120は、糖タンパク質のコーティング、シアル酸残基との共有結合、または立体閉塞のような免疫検出及び攻撃からHIVを隠す他の表面の特徴を提供する(Haurum, John, Treffen Thiel, et al., Vol. 7(10), pp. 1307-13(Oct. 1993))(Sande, Merle, et al., The Medical Management of Aids, (6th ed. 1999))(Cohen, P. T., The AIDS Knowliddge Base,(3rd ed. Feb 1999))。
【0006】
HIVウイルス粒子のコアは司令部として機能する。HIVビリオンの内側は、ウイルスタンパク質であるp24(CA)からなるキャプシドである。キャプシドは、2本の一本鎖RNAを保持する。各RNA鎖は、15タンパク質をコードするHIVの9遺伝子の複製を提供する。9遺伝子のうち、三つ(gag、pol及びenv)は必須であると解されている。更なる6遺伝子も、9キロ塩基対RNAゲノム内に見られる(vif、vpu、vpr、tat、rev、及びnef)。より具体的には、env遺伝子は、gp120とgp41に分解されるgp160を作り出すための情報または暗号を保持している。同様に、gag遺伝子はマトリックス(p17またはMA)、キャプシド(p24またはCA)、ヌクレオキャプシド(p9またはNC)、及びp6をコードしている。pol遺伝子は、インテグラーゼ酵素及びRNアーゼ H酵素、更に逆転写酵素を作り出すための遺伝情報をウイルスに提供する。他の6遺伝子は、調節遺伝子であり、感染及び複製の機構の制御を行っている(vif、vpu、vpr、tat、rev、及びnef)。他の遺伝子の中で、nef遺伝子は、効果的な複製のための情報を保持しており、vpu遺伝子は、感染した宿主細胞からの新しいウイルス粒子の放出を調節する情報を保持している。究極的には、HIVが標的細胞に感染するためには、HIVの遺伝物質が標的細胞の細胞質に注入されなければならない。
【0007】
上記のように、nef遺伝子は、HIVの効率的な複製を促進すると解されている。新しいウイルス粒子の作製は、宿主細胞の膜で起こる。nefは、複製を最適化する方法で感染細胞の環境に影響を与えるようである。ウイルスタンパク質は、宿主細胞の膜の近くに集まり、膜の中で出芽し、離脱する。これらのタンパク質は、三つの構造タンパク質(gp160、gp120、gp41)と二つの他の内部前駆体ポリタンパク質(Gag及びGag-Pol)である。Gag-Polタンパク質が、2本のプラス鎖RNAを芽にもたらし、同時にプロテアーゼが自身を切断し、遊離する。ウイルスが出芽した後、プロテアーゼが自身を切断することで遊離し、GagまたはGag-Polにおける残りのタンパク質を切断することで、各種の構造タンパク質及び逆転写酵素を放出する。ウイルスタンパク質は、プロテアーゼによって分離されるまで機能的でない。この様に、プロテアーゼは、Gag-Pol及びより小さいGagポリタンパク質の構造タンパク質への切断に関与している。放出されたタンパク質であるp24、p7、及びp6は、新しいキャプシドを形成するが、脂質膜の基礎はp24である。この過程において、gp160は、宿主の酵素によってgp120とgp41に分解される。
【0008】
ほとんどのHIVワクチンは、ウイルスのエンベロープスパイクに対する中和抗体の産生を誘導する試みにおいて、エンベロープのこれらの糖タンパク質(gp160、gp120、及びgp41)の部分を使用する(Johnston, et al., 2001)。幾つかは、高い力価の中和抗体を産生することに成功している。この方法の裏にある考えは、これらの糖タンパク質に結合する抗体がウイルスを中和し、感染を阻害するということである。次いで、免疫系を働かせることは、補体系を活性化することができ、ウイルスの溶解及び破壊につながる。補体系は、抗体の役割を「補完」する一連の循環タンパク質である。補体系の構成成分は、次々とまたは順に活性化され、これが補体カスケードである。補体の結末は、進入した生物の表面付着し、細胞膜に穴を開けることによりそれらを破壊しようとする細胞膜傷害複合体(MAC)というタンパク質複合体である。
【0009】
しかしながら、HIVは、液性免疫反応に対する更なる保護を提供する。HIVは、特定の抗体の非存在下でも、ヒトの補体系を活性化する。補体が、妨げられることなく、ウイルス分解を引き起こすMACに到達すると、この活性化は、ウイルスに対して危険なものである。しかしながら、HIVは、補体を調節する各種の分子(例えばCD55、CD59)を自身の構造に取り込むことによって、ウイルス溶解を避けている。HIVは、感染細胞からの出芽、またはgp41及びgp120に対する結合によって、これらの細胞膜分子をウイルス膜に含む。補体因子Hは、gp41とgp120の両者の構造に取り込まれている可能性がある。補体因子Hは、補体カスケードの中心に存在する分子であるC3bの活性を阻害する。この補体成分との相互作用が、感染性、濾胞への局在、及び標的細胞の範囲を促進する補体の活性化のHIVによる利用を可能にする。
【0010】
ワクチン治療及び関連する技術
免疫治療は、病気または過敏症に関する免疫系の使用または刺激を含む。ワクチンは、免疫治療の一つの形態である。1955年に、Dr.Salkが、ポリオウイルスワクチンを発表した。このワクチンには、ウイルスを殺害または非感染性化若しくは不活化するために化学的なホルムアルデヒド(ホルマリン)を使用したため、患者に投与されることが可能であった。1961年に、Dr.Sabinは、比較的無毒な弱毒化生ポリオウイルスワクチンを発表した。Sabinワクチンは、免疫反応は誘発できるが、有意に活性的な複製または毒性の能力が無いウイルス変異株から基本的には構成されており、そのため、ヒトの使用には比較的安全であると解されている。
【0011】
動物においてレトロウイルスに効果的なワクチンが、存在している。一つのワクチンは、ネコ免疫不全レトロウイルス(またはFIV)に適用できる(例えばFel-O-Vax)。二つ目の例として、ウマの重要なレトロウイルス感染であるウマ伝染性貧血ウイルス(またはEIAV)に対するワクチンが存在する(例えばEIAV(UK)deltaS2)。これらのワクチンは、病気はヒトのHIVに対する理想的なモデルではないが、ワクチンがレトロウイルスに対して働けることを強く主張している(Beyer, 2003)。
【特許文献1】米国仮出願第60/513827号
【非特許文献1】Frank, lnes, Heribert Stoiber, et al., Vol. 10, pp.1611-20(1996)
【非特許文献2】Stoiber, Heribert, et al., Vol. 15, pp.649-74(1997)
【非特許文献3】Haurum, John, Treffen Thiel, et al., Vol. 7(10), pp. 1307-13(Oct. 1993)
【非特許文献4】Sande, Merle, et al., The Medical Management of Aids, (6th ed. 1999)
【非特許文献5】Cohen, P. T., The AIDS Knowliddge Base,(3rd ed. Feb 1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、HIVに対するワクチンは得難いことが証明されている。考察、研究、または試験中の膨大な数のワクチンには、弱毒化生ウイルス粒子または全不活化ウイルス粒子が含まれる。組換え技術、アデノウイルスベクター、DNAをベースにしたワクチン、またはそれらを組み合わせた使用及び研究が、免疫学の限界を検証し、HIVを解決するために幾つかの希望を提供している。そのような免疫原性組成物は、以下の目的のために使用することができる:
・既に全身に病気が感染しているヒトの免疫系を促進する目的。
・ヒトが曝露後に病気にかかることから防ぐ目的。
・ヒトが曝露前に病気にかかることから防ぐ目的。これは、今日最も一般的なワクチンの使用である。
・患者、特に非従順であるまたは免疫抑制されている患者が、HIV病の異なる種にかかることから防ぐ目的。
・母から胎児または母から新生児に垂直感染することを防ぐ目的。
・後に病気にかかるHIV陰性の患者のHIV病を弱毒化する目的。
・上記の目的のいずれかのための潜在的な組成物及び方法を研究する目的。
不幸なことに、医薬は、HIVの免疫のための規定を欠いている(Gonsalves, Gregg, Basic Science (2000))(Cohen, 1999)。これは、HIVからの防御に関連するものが知られていないという、重要な結果を伴う基本的な問題である。しかしながら、ウイルス量及びCD4カウントのような、良く特徴付けられた病気の進行に関連するものは存在している。更に、現在候補になっているワクチンのいずれも、長期間これらのパラメーター(ウイルス量及びCD4カウント)を改善するという反応をHIV陽性患者において引き出すことができる根拠は存在しない(Beyrer, Chris, The HIV/AIDS Vaccine Research: An Update. The Hopkins Report(Jan. 2003))。更に、幾つかの動物モデルにおいて進展しているが、ワクチンの候補を試験するための有効な動物モデル系は存在せず、それがHIVのような高い致死性の病原体で作業する際に、明白な制限となる(Beyrer, 2003)。HIVに罹った後の現在の平均余命は、約10から15年である。感染を防ぐことはできないが感染後の患者の平均余命を延ばすワクチンでも、改善を構成する。
【0013】
不活化ウイルスは、研究及び医薬に有用である可能性がある。実際、成功した初期のワクチンの多くが、不活化ウイルスを利用していた。不活化は、残存する特徴に基づく免疫反応を増大するが感染性は存在しないウイルスを作り出す。不活化ウイルスは、通常、培養細胞または動物において育成した感染力の強い株のストックから生産される。潜在的に感染力の強いウイルスは、化学的な処理によって非感染性化または不活化される。ウイルスは、非生物として規定される。ウイルスは、酸素や食物を消費すること、または消耗物を消費する事が無い。ウイルスは、HIVに対して上で記載したように、宿主を介して複製する。ウイルスは、生来の代謝活性を有さず、アデノシン3リン酸(ATP)を作り出すことが無い。しかしながら、死ウイルスワクチンでは不可能であるが、生ウイルスワクチンは、再生産することが可能である。一般的に、生ウイルスは、死ウイルスよりも有効ではあるが危険でもある。
【0014】
ウイルスが不活化される際に、不活化ウイルスに基づく免疫原性組成物が有用であるためには、抗原性を保持していなければならない。不活化の過程は、ウイルスの三次元構造を保つと同時に、毒性を除外するべきである。多数の方法が、ウイルスを不活化または殺すことには有効であるが、その多くが、ビリオンの三次元構造を破壊または変化し、抗原性の特徴に悪影響を与える。当初は、ホルムアルデヒド(ホルマリン)処理が、使用されていた。例えば、Salkポリオウイルスワクチンは、三つのウイルスの抗原型のホルマリン不活化による調製物である。初期のワクチンには、それが広く使用されていたが、ホルマリンは、除去することが困難であるため、残存する毒性の危険を引き起こす。より最近では、試薬の残存量が容易に非毒性産物に加水分解されるため、β-プロプリオラクトンが、ウイルスを不活化するために一般的に使用される化学物質になっている。J. Hearst, et al.,に対する米国特許第 4,169,204号は、ワクチンの調製のためのウイルスの不活化に、照射と共にソラレンの使用を提示している。危険な残基が無く、構造に害を与えずにウイルスを不活化できるため、ソラレンは魅力的である(Hanson, C. V., Bloodcells, Vol. 18(1), pp. 7-25(1992))。ソラレンは、ライム及びセロリを含む植物の中に天然に存在し、虫及び菌類を攻撃するのに使用される。
【0015】
上記のように、ウイルスを不活化するためのソラレンの使用の一般的な概念は、既知である。例えば、米国特許第5,106,619号は、ワクチンを調製するための生ウイルスのソラレンによる不活化を開示した。その発明は、制限された酸素環境における4'-アミノメチル-4,5',8-トリメチルソラレンヒドロクロライド(AMT)を含むフロクマリン及び紫外線を使用するビリオンの処理または不活化を含んだ。前記不活化は、二本鎖及び一本鎖DNAウイルス、二本鎖及び一本鎖RNAウイルス、並びにエンベロープを有する及び有さないウイルスを対象としている。この開示は、一般的なものであり、具体的にHIVを意図していない。
【0016】
数人の発明者が、HIVワクチンまたは組成物においてソラレンの使用を意図している。米国特許第6,107,543号は、ガンマ線照射によって好ましく不活化される全粒子HIV抗原を開示しているが、ソラレン、ホルマリン、β-プロプリオラクトン等を含む各種の他の不活化方法も開示した。全粒子は、残りの構造を保持しながら、外側のエンベロープタンパク質であるgp120またはgp160の除去のために処理される。一つの他の実施態様は、精製された状態の遺伝子産物を含む縮小した免疫原であり、その遺伝子産物は、gag遺伝子、pol遺伝子、膜貫通タンパク質gp41、またはHIVゲノムの残りの遺伝子によってコードされているものである。
【0017】
米国特許第6,383,806号及び第6,503,753号は、逆転写(RT)のソラレン光不活化に基づくHIVワクチンの組成物または開発方法を開示している。換言すると、この発明の対象は、HIVの単一の不活化される酵素の不活化に基づく免疫反応を促進することである。粒子の残りの保存は、組成物に対する免疫反応を促進するとみなされる。
【0018】
ソラレンは、HIV免疫原またはワクチンにおける使用のために発明者によって意図されてきたが、HIVのソラレンによる不活化に本来関わる構造の保存の問題に、誰も目を向けていない。例えば、HIVは、高い変異性を持ち、逆転写の過程において頻繁に構造変化を起こす。変異は、ワクチンによって引き起こされる免疫反応から逃れる方法をHIV株に提供する可能性がある(Cohen, 1999)。更に、HIVの構造の保存は、結果として免疫反応を不利にするHIVの構成成分を保存する可能性がある。
【0019】
過去の試みは、変異の問題に焦点を当てていない。HIVは、逆転写酵素によるRNAからDNAへの変換を介する高い変異性を有するレトロウイルスである。HIV逆転写酵素はエラーを起こしがちであり、変異を引き起こす。更に、急速な複製は、変異を悪化させる。HIVにおける高度な遺伝的多様性は、診断、治療、及び病気の進行の公衆衛生モニタリングを複雑にする。特に、感染力、伝播性、及び免疫原性として特徴付けられる生物学的特性において、この多様性が明らかにされている。HIVのウイルスの遺伝子型における多様性は、多型、伝染効率、及びHIVの歴史的な伝染性の発達に貢献している。固有の三次元構造を有する多様なサブタイプ及びサブ-サブタイプが、一つのサブタイプのワクチンを異なるサブタイプを有する患者にとって効果の無いものにする可能性がある。HIVの高い確率の変異は、当然適当な抗原の選択を複雑にする。
【0020】
HIVの構造の構成成分の保存は、性能の問題を提示する可能性がある。米国特許第 5,106,619号のように、第6,383,806号と第6,503,753号の両特許は、全粒子を保存している。後者の発明は、RTのみの不活化を対象としている。抗原構造の保存は、より広い範囲の免疫原の活用を目的としている。この正確な抗原の立体構造の保存は、樹上細胞におけるミクロピノサイトーシスまたはマンノースレセプター介在性の摂取を介した細胞質へのアクセスに重要であると解されている。米国特許第6,107,543号は、開示された方法の範囲内で、ソラレンによる不活化を含むが、エンベロープの糖タンパク質であるgp120及びgp160(gp41は含まない)に対する抗体が、細胞へのウイルスの吸収を促進する可能性があるため、それら糖タンパク質の除去を必要とした。実際、感染性免疫複合体の樹上細胞及びBリンパ球への結合を可能にするリガンドとして、HIVはC3Bに結合する事及びC3Bを使用する事ができることが知られている。gp160またはgp120に対する抗体は、リンパ節及び脾臓におけるウイルスの濃縮を引き起こすことがある。米国特許第6,107,543号の方法は、他と同様に、膜貫通タンパク質gp41、及びウイルス膜の一部または全てを保存しているであろう。
【0021】
いずれにしても、この保存されたウイルスの構造は、意図しない結果を提供する。まず、上記のようにgp160、gp120、及びgp41は、補体因子Hのための結合領域を提供する(Pinter, Claudia et al., Aids Research and Human Retroviruses,Vol. 11(5),pp. 577-88 (1995)( Pinter, Claudia et al., Aids Research and Human Retroviruses,Vol. 11(8) (1995))(Stoiber, Heribert, et al., Immunobiology, Vol. 193, pp 98-113(1995))。したがって、これらの構造の保存は、補体因子Hがワクチン接種に続く液性免疫反応を妨げることを意味する。米国特許第6,107,543号におけるgp120及びgp160の除去は、この試みをある程度まで軽減するが、gp41の補体因子H結合部位の保存は、組成物の免疫原性に不利に働く。二つ目に、両方法は、細胞膜に関しては言及せず、免疫反応を妨げる特定の結合タンパク質を含むウイルス膜の一部または全てを保存している。感染細胞の細胞膜を介してHIV粒子の芽が組み立ち、複製されており、その膜には、補体を調節するCD55(分解促進因子)及びCD59(相同性制限因子)が豊富に存在する。これらの分子は、感染細胞から出芽の際に、ウイルス膜に組み込まれる。これらの特徴若しくは構造の一部または全ての保存は、補体の活性化及び液性反応を妨げる(Saifuddin, 1995)。三つ目に、HIVの表面の構成成分はシアル酸を有し、そのシアル酸は不活化されたHIVの保存された構造に残存する。シアル酸は、通常、宿主タンパク質及び宿主細胞の構造に見られる。ウイルスが不活化されていても、ウイルスにおける高シアル酸含有量が、ウイルスを認識し、適切に反応する宿主の能力を制限する。重要なことに、シアル酸残基は補体因子Hの結合においても使用される(Meri, Seppo, et al.," Discrimination Between Activator and Nonactivators of the Alternative Pathway of complement Regulation: Regulation Via a Sialic acid/Polyanion binding site on Factor H." Proc. Natl. Acad. Sci., USA, Vol. 87(10), pp.3982-6 (May 1990))(Blackmore, T. K., et al., J. of Immunology, Vol. 157(12), pp.5422-7 (Ded. 1997))(Kuhn, S., et al., Eur. J. Immunol., Vol. 26(10), pp. 2383-7 (Oct. 1996))(Pangburn, M.K., J. of Immunology, Vol. 164(9)(May 2000))。
【0022】
本発明は、これらの問題を解決する免疫原性組成物を対象とする。本発明は、HIVの異なるサブタイプ及び態様を標的とすることが可能である組成物の作製を意図しており、治療及び研究を発展させる。究極的には、感染者の生存の延長及び生活の質の改善が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
HIVは、ソラレンによる不活化に敏感に反応するウイルスに属する。ウイルスの構造は、ソラレンによる不活化の過程の間で保存される。前記保存は、幅広い抗原反応の生産のために有用である。本発明では、免疫反応を妨げる選択された特徴を除去または中和するために、不活化されたウイルスの構造を改変している。特に、シアル酸及び補体因子Hとの特定の結合部位は、中和される。幾つかの場合では、外側の細胞膜は、除去されて良い。この処理の主要な効果は、ヒトの補体因子H及び補体活性の他の調節因子(RCA)による液性免疫反応の妨害を取り除くことである。更に、シアル酸の除去は、ウイルスの構成成分が宿主と異なることを免疫系に明らかにする。
【0024】
本発明は、提示されるウイルスの遺伝子型に適応させている。HIVは、急速に複製し、逆転写酵素及び組換えを介して容易に変異する。HIV-1とHIV-2のそれぞれの群、サブタイプ、サブ-サブタイプ、及び組換え流行株は、構造的に独立したものである。サブタイプを間違えることは、深刻な結果を引き起こしうる。免疫原性組成物が効果的であるのためには、保存された構造による妨害だけでなく、所定の状況下において関連するそれぞれのウイルスの群、サブタイプ、サブ-サブタイプ等を考慮に入れなければならない。この様に、ワクチンは、宿主に存在するウイルス株に適合させて良い。したがって、前記組成物は、遺伝的に関連性のあるサンプルから好ましく生成されて良い。感染した宿主のワクチンを意図する組成物の場合では、例えば、前記関連性のあるサンプルは、宿主から得るか、または宿主に適合させて良い。感染していないヒトまたは他の動物のワクチンを意図した組成物の場合では、前記関連性のあるサンプルは、当該ヒトまたは他の動物にとっての曝露の危険の可能性評価に基づいて良い。
【0025】
したがって、本発明は、免疫反応を引き起こすことが可能である組成物であり、組成物の使用に関連するHIVの特定の所定の株は、単離され、ソラレン及び紫外線の照射の使用により不活化される。本発明は、免疫反応を弱める不活化HIV由来の特定の特徴の除去によって更に特徴付けられる。前記組成物は、薬理学的な担体、安定剤、または賦形剤を更に含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記のように、免疫原性組成物またはワクチンを生成するためのHIVの不活化に対するソラレンの一般的な使用は、既知である。しかしながら、HIVの変異性、及び免疫反応を妨害する能力は、過去の取り組みの性能を弱めうる。本発明は、ウイルスの構造の保存された特徴、HIVの変異の高い速度、及び免疫反応に対するHIVの抵抗性によって提示される問題を対象とした免疫原性組成物及び方法である。本発明は、免疫療法であり、特定の病気または過敏症に対する免疫系の使用または刺激を含む。関連する免疫系は、ヒトまたはチンパンジー若しくはマウスの様な他の動物のいずれのものであって良い。ここで使用されるように、免疫療法は、活性ウイルスによる免疫反応の妨害と併せて高い変異性を有する遺伝子型が存在する中で、性能を最適化するための免疫原性組成物の適応を含む。本発明は、診断方法、分析を進展させ、動物における免疫反応を引き起こすことが意図されている。効果的な免疫原性組成物の開発を考慮して、ワクチンが、患者の免疫防御因子を生成するために前記組成物を使用して開発または投与されて良いことも意図されている。
【0027】
したがって、本発明の一つの態様は、免疫反応を引き起こすことが可能である組成物であり、前記組成物の使用に関するHIVの特定の所定の株は、単離され、ソラレン及び光の照射を使用して不活化される。更に、免疫反応を弱めるHIVの特徴は、不活化HIVから除去される。前記組成物は、薬理学的に適当な担体、安定剤、または賦形剤を更に含んでよい。
【0028】
感染した動物のためのワクチンとしての使用を意図する他の実施態様では、前記ワクチンは、サンプルを得る際に、その動物に存在する株を含んで良く、感染した株の遺伝子型に対してワクチンの遺伝子型を適合しても良い。あるいは、予防ワクチンは、曝露の可能性に基づいて関連する株を含んで良い。ワクチンは、免疫反応を弱めるHIVの特徴を除去するために処理されて良い。
【0029】
本発明の他の態様は、組成物の使用に関連するHIVの株の決定、ソラレン及び光の照射を使用する前記株の不活化、及び免疫反応を弱めるHIVの特徴の除去または改変を含む免疫原性組成物の調製方法である。特に、これらの特徴または構成成分は、gp160、gp120、及びgp41の補体因子H結合部位、シアル酸残基の除去、並びに任意に外側の細胞膜の除去を含んで良い。そのため、免疫原性組成物の調製のための本発明の方法体系は、以下の手順を含む。
1.関連するHIVの株の決定
2.関連する株の単離及び培養
3.培地からウイルスの分離
4.任意に、外側の細胞膜の除去
5.ソラレン及びDNA修復酵素阻害剤の添加
6.紫外線の照射
7.CD55及びCD59の除去または中和
8.不活化ウイルスの脱シアル酸
【0030】
本発明は、したがって、ソラレン不活化HIVサブタイプの適応させた組み合わせを含む免疫原性組成物、及びその免疫原性組成物の調製または使用の方法である。
【0031】
関連する株の決定
HIVの株の決定は、本発明の実施態様及び応用に依存するであろう。免疫原性組成物の各種の応用が、存在する。したがって、以下の記載は、典型例として解釈されるべきであり、それらに制限されない。関連するHIVの株の決定は、3つの典型的なカテゴリーに関する:(1)開発及び分析に関する研究;(2)治療に関する研究;(3)予防に関する研究。
【0032】
実施態様の一つのカテゴリーでは、免疫原性組成物は、研究または臨床分析における使用のために意図されて良い。研究のためには、関連する株が、科学的な研究の対象によって決定される。つまり、HIVウイルスの入手、単離、及び培養は、研究のデザイン及び対象と一致する。医学研究のための関連する株の決定は、ワクチンの開発の様な想定されるいずれの治療または予防の必要のための決定と同様であって良い。純粋にアカデミックな研究は、研究ツールの開発、またはHIVの伝染性には関連しない株についての知識の拡大のような態様を含んで良い。免疫原性組成物は、免疫反応、ウイルスの進化、疫学、ウイルスの習性の研究において有用であっても良い。
【0033】
実施態様の他のカテゴリーでは、免疫原性組成物は、恐らくは治療ワクチンとして、HIVに感染したヒト(または他の動物、または宿主)に対する投与のために意図されて良い。一般的には、多価免疫原性組成物は、各種のウイルス分離株に対する免疫反応を誘導する能力を有するべきである。従来、この多価性は、関連する各種の株由来の不活化ウイルス粒子の組み合わせを含む。しかしながら、個々の宿主内のHIVは、めったに静的であることが無く、遺伝的な変異及び組換えを介して、進化し続けている。多価HIVワクチンにおいて共通の株または変異体を標的とした過去の試みは、巨視的な公衆衛生の予測者及び保守的な過剰のHIVの株のサンプリングに依存していた。本発明では、HIVの株は、感染したヒトまたは他の動物から得られたサンプルから遺伝子型を特定し、単離されて良い。つまり、末梢血単核細胞(PBMC)または他のサンプルは、感染したヒトまたは他の動物に存在するHIVを同定するために得られて良い。状況に適当である、いずれのタイピング方法が使用されて良く、その方法は、配列を基にした診断による遺伝子型決定、ヘテロ二本鎖移動度試験(HMA)、検体に特定の試薬試験による遺伝子型決定、分子診断、遺伝子検出製品、及びDNAプローブを基にした製品を含む。ワクチンは、サンプルが得られる際にヒトに存在する株から成るものであって良い。したがって、一つの実施態様では、ヒト(または動物モデル)におけるHIVは、遺伝子型が決定され、その情報は、不活化ウイルス由来の保存された構成成分から成る同定した株それぞれに対する混合ワクチンの作製のために使用される。以下に記載のように、この別法は、in vitroでヒトPBMCから培養されたウイルス、またはヒト(または他の動物)から得られた他のサンプル由来のワクチンが含まれてよい。そのワクチンは、免疫原としてヒトまたは他の動物に再導入される前に、ソラレンによる不活化の過程が行われる。この方法では、免疫療法は、宿主のウイルスの遺伝子型に適応される。本発明の方法体系は、経時的な株の優性または組成における変化の同定及びそれに対応するため、並びにそれに応じて変化を治療可能にするために多数のサンプルを意図する。優性株が破壊された際に、異なるが関連のある抵抗力を有する変異株が出現する可能性があり、更なる免疫療法を必要とする。
【0034】
実施態様の他のカテゴリーでは、免疫原性組成物は、恐らくは予防ワクチンとして、感染していないヒトへの投与のために意図されて良い。従来、予防組成物及び予防投与は、治療のための多価組成物として使用されるものと類似している。その様な組成物は、広範な免疫反応の誘導を目的とする各種の株由来のウイルス粒子の組み合わせた使用に基づいたものであって良い。その様な方法は、予防形態における本発明の一つの実施態様として意図される。
【0035】
あるいは、予防実施態様における本発明は、当該ヒトのための曝露の危険の可能性評価に基づいたものであっても良い。明白に、米国特許第6,503,753号は、伝播の危険が主に特定の個人を介したものである場合における、個別の予防ワクチンを意図している。したがって、不活化された株は感染者から得られたサンプル由来であって良い。その様な個別ワクチンは、本発明の一つの実施態様として使用されうる。同様に、実験室研究者または医療従事者は、特定の既知の株への業務上での曝露の高度の危険に向かい合う可能性があり、それら特定の株に対する改善された免疫反応による恩恵を受ける可能性がある。あるいは、個別ワクチンのための株の決定は、関連する地域におけるHIV感染のための行動及び人口統計上の危険因子に基づいたものであって良い。その様な分析は、曝露の可能性の分析を補助する歴史的、伝染性、及び地理的なデータに関連する行動パターンを考慮できるであろう。伝染性が特定可能な危険因子を有する群を超えて広がっている地域では、多価予防は、関連する地域で既知の全ての株を反映できるであろう。
【0036】
照射のための入手及び調製
以下の実施態様は、ウイルスの入手、単離、及び培養のための十分に確立された方法が存在するように、典型例として考慮されるべきであり、それらに制限されない。実際、現実のウイルスは、各種の方法で入手されて良い。HIV株の感染者からサンプルが得られて良く、当該技術分野において既知または一部以下に議論した方法で、ウイルスが単離、精製、培養、及び型の決定がなされて良い。そのようなサンプルは、PBMC、または唾液の様な他の体液若しくは関連する粘膜の様な臓器から得られて良い。しかしながら、当該技術分野で既知のように、PBMCは、その応用に依存して、好ましく免疫成分を含んでいるため好ましいであろう。あるいは、HIVは、既知の営利目的なウイルスのストックまたは研究室の分離株として存在するサンプルから得られて良い。ウイルス粒子は、ウイルスをコードしたベクターを使用した細胞の形質転換により作り出されて良い。この形質転換は、外来遺伝子物質の細胞への取り込みである。形質転換は、通常、不溶性塩化カルシウムとDNAの共沈のような物理的手段によって遂行される(Nicholls, Desmond, An Introduction of Genetic Engineering (2nd ed. Feb 2002))。形質転換されたDNAは、細胞内でエピソーム性の(染色体外)因子として存在するか、核のゲノム内に挿入される。細胞内へのDNAの転移効率は、使用される特定の方法に依存する。以下の記載は、他に記載が無ければ、実施態様の各種のカテゴリーに共通であって良い。
【0037】
本発明は、各種の好ましい培地を意図している。第一の好ましい培地は、HIVに感染した宿主から得られるPBMCである。この実施態様では、HIV細胞は、保存されたin vitroにおける宿主環境で複製するであろう。そのような培地は、後に続く宿主への投与のために、より安全及び単純であって良い。しかしながら、ヒトの細胞または酵母のような多くの培地は、ソラレンの効果を後進させうるDNA修復酵素を含む。これらの酵素は、転写と連動した修復及び広範囲のゲノム修復を介してDNA及びRNAを修復できる。したがって、ソラレン及び紫外線の曝露に続いてDNA及びRNAを修復する傾向にあるいずれかの酵素を阻害する事によって、PBMCまたは酵母細胞における培養は改善される。好ましい実施態様では、その様な培地は、ノボビオシン、アフィジコリン、または両者のような修復酵素阻害剤を使用して処理されて良い(Brenneisen, Peter, et al., J. of Biological Chemistry, Vol. 275 (6), pp. 4336-44 (Feb 11 2000) ) (Niggli, H. J. , Mutation Research, Vol. 295 (3), pp. 125-33 (Aug 1993) ) (Cleaver, J. E. , J. of Cancer Research, Vol. 47 (9), pp. 2393-6 (May 1987) ) (Rosentein, B. S. , et al., Environmental Mutagenis, Vol. 8 (3), pp. 335-43 (1986) )。他の好ましい実施態様では、培地は、Fanconi anemia type Cの様な、DNA修復酵素を欠く、または低レベルに有するいずれかの培地である。Fanconi anemia type Cは、DNA修復酵素が欠損しており、そのことが、組換えを減少させ、及びソラレンによる不活化との使用のために好ましいものとする。幾つかの変異体培養は、UV誘導性のピリミジン二量体の除去修復が欠損していることが知られており、単官能性及び二官能性ソラレンの両者の光付加に対して高感受性である。例としては、escherichia coliのuvrA、B、またはC変異体、saccharomyces cerivisiaeのRAD3型単位、チャイニーズハムスターの卵巣ガン細胞の相補性群1及び4、色素性乾皮症群A及びDである。他の培地は、UV光による損傷DNA修復酵素の働きが阻害されている限り、機能的に同等であって良い。
【0038】
HIV陰性のヒト(または動物)のために、適切なワクチン/抗原が、ソラレンによる不活化前にin vitroにおいてウイルスを培養することによって生産されうる。多くの培地が入手可能であるが、好ましい実施態様は、ヒトの自らの末梢血単核細胞(PBMC)であろう。この事は、ヒトの自己免疫系によって生み出される選択圧をウイルスに受けさせる。その様な培地においてin vitroで複製するHIVの株は、活発な感染の形成でin vivoでも複製しうる株であろう。そのため、それぞれのHIV陰性及びHIV陽性のヒトが、適応させて作られたワクチンを有することができよう。
【0039】
培養細胞からのウイルスの分離は、10分間、2000rpm、及び4℃で細胞を遠心分離機にかけることによって遂行されて良い。上清は、次いで、0.22ミリミクロンのMillipore filterを使用して2回ろ過されて良い。
【0040】
ある場合では、ウイルスの構成成分へのアクセスを妨害しうる宿主の細胞の外側の膜または膜粒子を除去することが望ましい。その場合では、外側の膜の破壊または除去は、エタノール、界面活性剤、フェノール、または他の溶剤を使用する処理のような当該技術分野において既知の方法によって遂行される。重要なことに、外側の膜の除去は、ウイルスの構造を変化、またはどのウイルスタンパク質も変性するべきではない (Levinson, Warren, Medical Microbiology & Immunology:Examination and Board Review (7th ed. July 2002)) 。第一の実施態様では、その様な除去は、界面活性剤によって遂行される。界面活性剤は、長鎖脂質可溶性疎水性部分と極性親水性基からなる「表面活性」剤である。親水性基は、カチオン、アミン、非イオン性基、または多価であって良い。界面活性剤は、疎水性鎖を介して細胞の外側の膜の脂質と、極性基を介して周囲の水と相互作用し、それによって外側の膜を破壊する。塩化ベンザルコニウムのような第四級アンモニウム化合物は、皮膚の滅菌のために広く使用されるカチオン性界面活性剤であり、ここでの応用に好ましい。あるいは、エタノールは、外側の膜の脂質構造を破壊するであろう。エタノールは、制御されずに、タンパク質を変性する可能性があり、制限要素となる可能性がある。エタノールは、水に希釈した際により効果的であり、例えば、70%エタノールは、100%よりも好ましい。三つ目に、ヘキサクロロフェノールまたはクレゾールのようなフェノールは、幾つかの実施態様に適当であって良い。これらの物質のいずれかの使用は、不活化ウイルスの抗原性の性質を保存する条件でなされるべきであり、そのことが、ウイルスの構造を保存し、ウイルスタンパク質の変性を回避する。
【0041】
不活化剤は、RNA及びDNAを不活化すると同時に、ウイルス構造の抗原性の性質を保存することができるため、ソラレンが好ましい。ソラレンは、核酸を共有結合的に修飾する光変異原性及び光化学療法化合物群である。それらは、DNA及びRNA(一本鎖と二本鎖の両者)に挿入し、光アルキル化する小分子の族に属する。ソラレンの主な標的は、DNAのチミジン残基及びRNAのウラシル残基である。これらの分子は、一分子付加化合物と鎖間架橋の両者を形成する。その反応は、ソラレンの3,4(ピロン)または4,5(フラン)二重結合とピリミジンの5,6二重結合との間で起こる。ソラレンの二本鎖DNA(dsDNA)に対する光結合は、通常のDNA二重らせんの実質的な構造上のゆがみをもたらす(Spikes, John D. , Photosensitization in Mammalian Cells, Ch. 2 (1983) ) (Averbeck, D. , et al., Mutagenic Effects of Psoralen-Induced Photo adducts and Their Repair in Eukaryotic Cells, Pp. 933-59 (1988))。
【0042】
HIVの一つ以上の所定のサブタイプのための免疫原性組成物は、以下のように照射のために調製されて良い。培養において関連するHIVビリオンは、4'-アミノメチル-4,5',8-トリメチルソラレン(AMT)を含む溶液に希釈されて良い。ソラレン誘導体は、容易に細胞壁、ウイルス被膜を通過し、UV光に曝露後、内部の核酸と光反応することができ、ピリミジン二量体を生じさせる。AMTは、ウイルスのRNAとDNAを架橋する。全てのソラレンには、光活性が存在する。
【0043】
照射
UV光の曝露の際に、ソラレンは、核酸と光付加化合物を形成する。この過程は、酸素を必要とせず、好ましくは、酸素が除去されるべきである。ソラレンは、核酸の添加及び光付加化合物が未だ生じる前に照射されることが可能である。HIVウイルスは、AMT及びUV光を使用して不活化されうる。架橋されたDNAまたはRNAは複製されないため、ウイルスは、核酸を複製できなくなる。この様に、ウイルスは、DNAまたはRNAの不活化により殺される。光反応は、核酸の複製及び発現を妨げるため、ウイルスの感染性及び毒性の除外のための技術の基礎を形成する。ウイルスの表面は、大部分は改変されず、不活化ウイルスをワクチンのための潜在的に有用なものにする。
【0044】
ソラレン光不活化は、実験的に不活化されたウイルスにおける抗原性及び免疫性の保存のために、ホルムアルデヒド処理のような従来の不活化方法よりも優れていることが証明されている(Hanson (1992))。AMTとの光反応は、抗原性の表面の性質を変える事無く、HIVの感染性をHIV感染細胞から除去することが示されている。これらの不活化された細胞は、各種の細胞またはウイルス抗原に対するモノクローナル抗体との通常の反応性を保持している(Hanson,1992)。
【0045】
HIV感染細胞培養物では、ウイルスゲノムの多数のDNA転写物が、感染細胞内で作り出され、溶解した細胞から培地に流出する。そのようなDNAまたはRNAがトランスフェクションまたは形質転換の汚染を有するかどうかは未知であるが、ソラレンの光反応は、この遊離DNAの不活化が期待されており、存在するのであれば、それよりも迅速にRNA含有ウイルス粒子を不活化し、そのため、加熱、アルコール、または界面活性剤のような従来の不活化技術では得られない安全性要因を提供する。更に、加熱、アルコール、または界面活性剤は、十分にウイルスのRNA及びDNAを不活化することができない(Hanson,1992)。
【0046】
ソラレンによる不活化の反応速度計算は、高い頻度で非線形であり、「テーリングオフ(tailing off)」効果を示す。このテーリングオフは、ウイルスへの照射の間の自身の光分解によるソラレンの活性の損失の結果である可能性がある。好ましくは、ウイルスの不活化の間のソラレンの定期的な添加が、直線的な反応速度を保つであろう。ソラレンの活性の損失が、ウイルスの不活化に対応している。二つの連続する照射の工程が、ワクチンの有効性及び高度な安全域の創出にとって好ましいものである。例えば、405nmの波長の最初の曝露に続いて365nmの波長の曝露が行われることは、DNAまたはRNA分子を無力にする架橋のより高度な生産のために好ましい。単一の照射が必要とされる実施態様では、365nmの波長の曝露が好ましい。線量率は、その状況下でソラレンの吸収に適当であるべきである。ウイルスの不活化を超える過度の線量率は、ウイルスタンパク質の光分解を引き起こす可能性がある。
【0047】
好ましくは、照射されたウイルス細胞のサンプルは、次いで、不活化を確実にし、残存する感染性の可能性を除外するため、培養及び分析されて良い。
【0048】
免疫反応を弱める構造的特徴の処理
CD55及びCD59のような補体活性の調節因子は、好ましくは、組成物から除去されるべきである。これらの表面の糖タンパク質は、補体の阻害に関わっている。CD55は、C3転換酵素(C4b、2b及びC3b、Bb)の両者及びC5転換酵素(C4b、2b、3b及びC3b、Bb、C3b)の両者を不安定化する。CD59及び他の同族の制限因子は、C9の細胞膜への挿入を阻害する細胞表面に発現するタンパク質であり、補体カスケードによる溶解損傷から血液細胞、血管内皮細胞、他の組織を保護する(Hoffman, 1999)。CD55及びCD59は、膜結合性であり、好ましくは、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)を使用する処理によって選択的に除去されて良い。この事が、CD55及びCD59を含む全てのグリコシルホスファチジルイノシトール結合タンパク質を除去するであろう。その様な選択的酵素切断は、既知の処理方法の一つである。
【0049】
不活化組成物の脱シアル化は、有益な工程である。好ましくは、HIV由来のシアル酸残基は、ノイラミニダーゼ酵素処理によって除去されて良い。ノイラミニダーゼは、シアル酸を切断する(Hart, Melanie L., et al., AIDS Res Hum Retroviruses, Vol. 18(17), pp. 1311-7 (2002))(Meri, 1990)。マンノース糖部分の多くが、シアル酸残基のコーティングによって免疫系から保護されている。シアル酸は、通常のヒトの細胞及び組織で見られ、「宿主認識」のために免疫系で使用される。その際に、「宿主」構造に対する免疫反応は制限される。シアル酸残基は、HIVの重度にグリコシル化されたエンベロープにも見られる(Hart, 2002)。シアル酸残基が除去されると、補体因子HがHIVに結合できず、ワクチンが免疫系によって「異物」として認識され、強い免疫反応が起こであろう(Hart, 2002)。トリプシン処理のような、本発明と一致する他の中和または脱シアル化方法が使用されても良い。
【0050】
一般的には、構造的な特徴の処理は、組成物を調製する各種の時点で実施されて良い。活性HIVの脱シアル化がウイルスの複製及び感染性を増大するという点で、脱シアル化は、ソラレンへの曝露及び紫外線の照射後が好ましい(Hart, 2002)。
【0051】
投与のための調製
本発明の免疫原性組成物は、以下に他の実施態様として記載されるものを含む適当な免疫刺激剤またはアジュバントと混合されて良い。そのような組成物は、応用のために適当であるとして使用されて良い。当該技術分野で既知である通常使用される刺激剤またはアジュバントは、フロイント不完全アジュバント、リポソームなどを含む。好ましい実施態様は、通常使用されるアジュバントから得られる一つ以上の刺激剤及び/またはここで更に記載の組成物を含む。
【0052】
免疫原性組成物は、担体または賦形剤、鉱物油のような使用または投与の予想される方法のために適当な製薬組成物または実験組成物と混合されても良い。
【0053】
HIV株及びサブタイピング
上記のように、HIVは、各種の遺伝子型を有する。HIVの高レベルのゲノム多様性が、感染性、伝播性、及び免疫原性の異なりうる株の診断及び治療を複雑にする。多価免疫原性組成物の研究は、多数の株を組み入れなければならないであろう。当該技術分野において既知であり、ここで記載されているようなHIV配列データベース由来の情報資源を使用して、系統発生分析が実施されて良い。
【0054】
HIVのサブタイプとサブ-サブタイプの入手、単離、及び同定は、当該技術分野で良く記載されている(Robinson, D. L., et al., HIV-1 Nomenclature Proposal: A Reference Guide to HIV-1 Classification(Sep 1999))。本発明のために、HIVのサブタイピングは、当業者に既知であるどの医学上の適当な方法を使用して実施されて良い。ジェノタイピングは、HIV-1のサブタイプを同定するための直接的な方法である。感染者の抗体反応によるセロタイピングまたはサブタイプの分析は、別法であり、間接的な手法である。関連するサブタイプを詳述するために系統発生分析を含む際には、DNA及びRNAの配列解析またはジェノタイピングキットが好ましい。env及びgagのサブタイププローブ及び試験(ヘテロ二重鎖移動度試験またはHMA)は、別法であるが、制限される可能性のある技術である(Salminen, Mika, Nat'l Pub. Health Inst. (1994))(Buonaguro, Luigi, J. of Virology, Vol. 69, No. 12 pp. 7971-7981 (1995))。一般的には、より大量のサブタイピングは、際立って少ないサブタイプに制限されて良い。
【0055】
個別のHIV-1群M(major)、O(outlier)、及びN(non-major/outlier)は、別々の伝播現象により生まれた可能性がある。HIV-1には、チンパンジーSIVに対する若干の類似性が存在する。それらの群の各々におけるサブタイプまたはクレードといった系統発生多様性は、遺伝的な変異の結果である。O及びN群株は、カメルーン人から多く単離されるが、M群株が、主にHIV感染に関連している。
【0056】
HIV-1のM群サブタイプ及びサブ-サブタイプは、共通の起源からヒトの中で遺伝的に分化したようである。M群のメンバーは、9種類の等距離の系統発生のサブタイプに切り離される。それらは、A1、A2、B、C、D、F1、F2、G、H、J、及びKで標記される。他のサブタイプとの間に比べて、サブタイプまたはサブ-サブタイプ内における配列は、どれもゲノム全体を通して、より遺伝学的に共有されている。サブタイプは、HIVの異なる系列を構成し、統計上は社会的または地理的因子と関連する可能性がある。この様に、サブタイピングシステムは、遺伝学的なクラスターを同定し、タンパク質のようなHIVの構成成分におけるサブタイプ特異的な生物学的相違または類似を示すために使用される。更に複雑なことに、サブタイプ内のウイルスは異なる速度で進化し、それと同時に、サブタイプも進化の速度が異なる可能性がある。
【0057】
レトロウイルスには、関連するレトロウイルスと組換えを起こす傾向がある。この組換えは、遺伝的多様性に対する他の要因である。組換えの過程が、変異株、薬剤耐性、及び抗原性の特徴の変形した発現を作り出す。HIVの組換え流行株(CRF)は、HIV-1の流行性において疫学的に関連する効果を引き起こす組換えHIV-1ゲノムである。HIVのCRFは、同一のモザイク構造によって特徴づけられる。それぞれのウイルス粒子に共にパッケージされたゲノムRNA鎖同士の間で鋳型の交互の切り替えが存在する際に、組換えが逆転写の間に起こりうる。二つの株が、HIV-1のM群の異なるサブタイプに属すると、その結果は、二つのサブタイプの各々の領域からなるモザイクゲノムである。つまり、共にパッケージされたゲノムが新しい細胞に進入した後に、ウイルスの逆転写酵素が、逆転写の間に一つのパッケージされたRNAゲノムから他のRNAゲノムに鋳型を切り替える。
【0058】
これらのサブタイプ間のモザイクは、多重に感染した各々の患者に共通に見られる。サブタイプ間の組換えウイルスの伝播が存在すると、HIV流行における流行株が作り出されうる。CRFは、初めに記載された番号で標記される。2002には、約三百万人のCRF感染が存在した。CRF感染は、更に起こるようになっており、ゲノム多様性を増大させている。
【0059】
遺伝学的及び抗原的には関連しているが、HIV-2は、生物学的及び疫学的にHIV-1とは異なる。HIV-1の各種の群は、世界中に存在しているが、HIV-2は、アフリカ、ヨーロッパ、及びインドに主に存在している。HIV-2は、sooty-mangabeyから単離されたSIVと関連している。HIV2A、B、C、F、またはGクレード由来の配列は、D及びEクレードとは異なり、HIV-2の各群が別々の伝染を示すという結果を導く。HIV-2は、低い感染性及び病原性を有するようである。
【実施例】
【0060】
更なる実施態様の記載
他の実施態様では、前記組成物は、マンノースまたはマンナンからなるポリサッカリドに共有または他の形態で結合して良い。結合またはカップリングは、当業者に既知である方法を使用して遂行されて良い。マンノースは、人体の中には通常見られない微生物及び病原菌でのみ見られる糖である。マンノース結合タンパク質(MBP)は、コラーゲン様構造の領域を含むCタイプレクチンのコレクチンである。MBPは、ヒトの血清中に存在し、三つのポリペプチド鎖から構成されるサブユニットからなり、コラーゲン様の三つのへリックスと三つのC末端球状糖鎖認識ドメイン(CRD)を形成する。6つのサブユニットが、共に古典的な補体経路のC1qのチューリップ型構造のブーケに似た全体的な構造を形成する。MBPの糖鎖への結合は、C1r2C1s2を活性化する古典的な補体経路を開始する。この事は、直接的に末端細胞膜傷害複合体の挿入、または微生物膜上の補体の沈着によるオプソニン化のどちらかを介する補体による殺害をもたらす。MBPは、MASP(1及び2)セリンプロテアーゼと呼ばれる他の新しく記載されたセリンプロテアーゼを介してC2及びC4を活性化する可能性がある。この様に、MBPは、おそらく食細胞のコレクチンレセプターに対するコラーゲン様ストークの結合を介して、補体から独立したオプソニン化活性も示す(Prodinger, W. M., et al., Fundamental Immunology, Ch. 29, pp. 967-95 (4th ed. 1999))(Septh, Cornelia, et al., The Middle Eu. J. of Medicine, Vol. 111 (10) pp 378-391(1999))。表面にマンノースまたはマンナンを有する生物のいずれもが、補体を活性化するレクチン経路を刺激する。そのようなポリサッカリドに結合する組成物は、血清中のマンノース結合レクチンに結合し、補体系のレクチン経路を活性化する。この様に、この他の実施態様は、ワクチンに対する免疫反応全体を促進する。
【0061】
他の代替的な実施態様では、前記組成物は、補体副経路を刺激または活性化する物質と結合して良い。例えば、テイコ酸の特定の形態が他の形態の補体経路の強力なアクチベーターであることが知られている(Winkelstein, J. A., et al., J. of Immunol., Vol. 120(1), pp. 174-8 (Jan 1978))。更に、酵母細胞由来であって良いザイモサンは、サイトカインを誘導し、補体系の他の経路と同時に免疫反応を刺激する。ザイモサンは、オプソニン化を伴ってまたは伴わずマクロファージによってファゴサイトーシスされ、そのため、補体系の他の経路を活性化する有用な免疫学的性質を有する。ザイモサンとマクロファージの相互作用は、Th-1反応を促進すると解されている。CD4細胞は、Th-1細胞とTh-2細胞に分化されうる。Th-1細胞は、IL-2を産生することによって細胞障害性T細胞を活性化する。一方、Th-2細胞は、IL-4及びIL-5を主に産生することによってB細胞ヘルパー機能を形成する。ザイモサンによって引き起こされるTh-1反応の程度が、C3切断断片であるC3b及びiC3bによって調節されている。増幅されたC3bは、ザイモサンのアクセプター表面に沈着し、マクロファージ、樹状細胞、または他の抗原提示細胞を集める。マクロファージ、樹状細胞、または他の抗原提示細胞は、ザイモサンのオプソニン化後に、抗原特異的なマクロファージの活性化が起こった後、Th-1細胞に抗原を提示する(Ara, Yuki, et al., Immun. Vol. 103(1), pp. 98-105 (May 2001))。ザイモサンは、それゆえ、免疫刺激剤として使用されうる。ザイモサンは、HIVに対する液性及び細胞性免疫反応の両者を促進する。この様に、前記組成物は、テイコ酸またはザイモサンのような補体副経路を刺激する物質に共有または他の形態で結合されて良い。
【0062】
そのため、免疫原性を促進するため、マンノース、テイコ酸、ザイモサン、またはそれらの幾つかの組み合わせは、前記組成物のタンパク質構成成分に結合されて良い。好ましくは、ポリサッカリドは、16個の別々のサッカリド単位からなるものであって良い(Pangburn, M. K., 1989)。糖鎖/組成物の刺激性構成成分のための好ましい供給源は、酵母細胞Cryptococcus neoformans 血清型 Cの莢膜ポリサッカリドである(Sahu, Arvind, et al., Biochem. J. Vol. 302, Part 2, pp. 429-36 (Sep 1 1994))。この酵母細胞は、各トリマンノース繰り返し単位から四つの分岐したキシロース糖を提示する。図2は、最大16までのポリサッカリドの長さの増大に伴う、C3b上の補体因子H及び因子1の活性の減少を明示している。そのような酵母がDNA修復酵素を導入している様であれば、前記酵素は、好ましくは、上記の方法を使用して不活化される。
【0063】
更なるグルコース分子及びポリサッカリドは、組成物から除去されて良い。グルコースは、C3b沈着の速度及び程度の両者を阻害する(Sahu, 1994)。グルコースは、細胞培養にインスリンを加えることによって除去されて良い。
【0064】
他の実施態様では、ヘパリンの効果が阻害されて良い。ヘパリンは、効果的な補体因子Hの機能に必要な補因子である(Linhardt, Robert J., et al., Biology Chemistry, Vol. 263(26), pp. 13090-6 (Sep. 18 1988))(Maillet, Francoise, et al., Mol. Immun., Vol. 25(9), pp. 917-23 (1998))(Blackmore, 1996)(Blackmore, 1998)(Giannakis, Eleni, Immunopharmacology, Vol. 1(3), pp. 433-43 (Oct 2001))。補体因子Hは、補体副経路において主要な制限されるタンパク質である。補体副経路は、微生物またはワクチンに反応する免疫系の第一の武器である。プロタミンは、ヘパリンと結合する。また、凝固を起こしている患者において効果的なヘパリンを減少させるために使用される(Maillet, Francoise, et al., Molecular Immun., Vol. 20(12), pp. 1401-4(Dec 1983))(Weiler, John, et al., J. Exp. Med., Vol. 147(2), pp. 409-21 (Feb 1978))。最近、より毒性の少ないヘパリンアンタゴニストである低分子量プロタミン(LMWP)が、入手可能になっている。プロタミン、またはこの実施態様にとって好ましくはLMWPが、補体副経路の制限における補体因子Hの活性を弱めるために構成成分として含まれて良い(Liang, J. F., et al., Biochemistry, Vol. 68(1), pp. 116-20 (2003))。あるいは、ヘパリナーゼが、酵素的にヘパリンを分解することが知られている。
【0065】
他の実施態様では、硫酸化ポリアニオンが、ワクチンに含まれて良い。硫酸化ポリアニオンは、補体因子Hを吸収し、効果的に血液循環から除去する。硫酸デキストラン及びDNAのような他のポリアニオンは、補体因子Hのアクチベーターである。これらのポリアニオンは、ワクチンから除去されるべきである。デキストランとして知られるグルコースの分岐している一部加水分解されたポリサッカリドは、効果的な血漿増量剤として使用されている(Hoffman, 1999)。硫酸デキストランは、ポリサッカリドデキストランの硫酸化エステルのナトリウム塩である。
【0066】
5×103より大きい分子量を有する可溶性硫酸デキストランは、補体の他の経路の誘導因子である。デキストランにおける100グルコース残基ごとの硫酸エステル基の数が、他の経路におけるデキストランの活性化の効果を決定した。硫酸化の最適の程度は、50-60 SO4/100グルコース分子である(Burger, R., et al., Immunology, Vol. 29(3), pp. 549-54 (1975))。
【0067】
硫酸化セファデックス(SS)は、デキストランの架橋された不溶性の形態である。可溶性硫酸デキストランのように、SSは、補体の古典的な経路、並びに補体の他の経路を活性化する。三つの変数が、それら両者の補体活性化経路に対するSSの活性を調節する。(1)硫酸化の量;15.6重量%以下の高い硫酸化含有量は、高い補体の活性化を生じさせる。2.43%より小さい硫酸エステル含有量では、補体活性化は示されなかった。(2)SSの濃度;40-50μg/mlで最大のC3代謝回転となり、より高い濃度は、補体活性化を生じさせる。(3)温度;4℃で活性の全損失であり、最大のC3代謝回転は、37℃で示された(Burger, R., et al., Immunology, Vol. 33(6), pp. 827-37 (Dec 1997))。
【0068】
デキストランの可溶性及び不溶性の形態の両者(>5000の分子量)が、補体の他の経路を活性化する。このことは、補体因子Hの効果を阻害することによって遂行される(Bitter-Suermann, D, et al., European J. of Immun., Vol. 11(4), pp. 291-5 (Apr 1981))。
【0069】
低分子量の硫酸デキストラン(<5000)は、補体因子Hの結合を促進し、そのため、補体の他の経路の活性を制限する(Meri, 1990)。DNA様のヘパリンも、補体因子Hの結合を増大させる(Gardner, William D., Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 94, pp 61-67(1980))。
【0070】
免疫原性を促進するために、50-60SO4/100グルコース分子であり、>5000の分子量を有するデキストラン硫酸塩は、組成物に含まれうる。同様に、37℃で濃度40-50μg/mlの15.6重量%のSO4を有するSSは、組成物の免疫原性を促進する。低分子量デキストランは、補体因子Hの結合を増大し、補体活性を減少させるため、製剤に含まれない。最後に、DNAは、補体活性を促進させるため、この免疫原は、DNAワクチンと同時に使用されうる(DPTワクチンは、三つの別々のワクチン粒子からなる。百日咳構成成分は、他の二つのためのアジュバントとして働く(Parham, Peter, The Immune Sytem, Ch. 12 (2nd ed. 2004))。HIV病のDNAワクチンが、ソラレンワクチンのためにアジュバントとして働く類似した状況が存在する。)
【0071】
更なる他の態様では、C3転換酵素を安定化する物質が本発明に使用されて良い。三つの補体経路全てが、C3bの産生を引き起こし、そのC3bは、微生物の表面または免疫原性組成物に存在する微生物の構成成分に共有結合する。C3bは、C3転換酵素として知られている酵素によって生産される。ヘビNaja kaouthia由来のコブラ毒因子(CVF)は、この酵素を安定化する(Alper, C. A. and D. Balavitch, Science, Vol. 191(4233), pp. 1275-6 (Mar 1976))。内生の補体副経路のC3転換酵素(C3b,Bb)の半減期は1.5分であるのに対して、CVF C3b,Bb C3/C5転換酵素の半減期は、7時間である。C3b,Bbは、補体因子Hによって分解され、C3bは、補体因子Hと因子Iの組み合わせた働きによって不活化される。対照的に、因子CVF,C3,Bbは、全ての調節的補体タンパク質に耐性を示す(Kock, Michael A., et al., J. of Biol. Chemistry, Vol. 279(29), pp. 30836-43 (July 2004))。C3b,Bbは、C5に作用するために更なるC3bを必要とするが、CVF,Bbは、直接C5を切断できる。そのため、CVF,Bb酵素は、連続してC3及びC5を活性化する(Kock, 2004)。
【0072】
コブラ毒におけるCVFの生物学的機能には、毒の構成成分を血流中に進入させる働きがあると解されている。この事は、血管透過性を増大するアナフィラトキシンC3a、C5a、及びBbの放出を引き起こす補体活性化によってなされる(Vogal, Carl, Immunoconjugates, Ch. 9 (1987))。コブラ毒由来であるにも拘らず、CVFは、非毒性のタンパク質である。CVFは、毒を含むコブラ毒由来の他の酵素、ポリペプチド等から単離されうる。
【0073】
したがって、CVFの投与は、C3bの爆発的な生産を生じさせる(Vogel, 1987)(Kock, 2004)。図3は、C3とCVFの間の構造相同性を図示している。微生物の表面上のC3bは、末梢循環、及びリンパ節の胚中心内のT細胞及びB細胞並びにリンパ節内の濾胞樹状細胞によって認識される。C3bは、強力なオプソニンである。オプソニンは、同時に免疫系の幾つかの武器の引き金を引く(Hoffman, 1999)。したがって、他の実施態様では、CVFは、組成物の構成成分として使用されて良い。
【0074】
CVFの好ましい形態は、dCVF(De-α-ガラクトシル化 CVF)である(Gowda, D. C., et al., J. of Immunology, Vol. 152(6), pp. 2977-86 (Mar 1994))。自然に分泌されるCVFは、αガラクトシル化LeX抗原決定基であるGalα1-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ1を含むフコシル化された二分岐の複合型N結合型鎖である独特のポリサッカリドによって特徴付けられる。このポリサッカリドの除去は、37℃、18から23時間、Ph8.0の条件で、CVFをペプチドNグリコシダーゼF(N-グリカナーゼ)とインキュベートすることによって遂行される。この新規なポリサッカリドのCVFからの除去は、ヒトIgGの1%がCVFの末端Galα1-3Galβ1配列に反応するために必要である。しかしながら、このポリサッカリドの除去は、分子の補体結合性質を妨げることも分子の半減期を短くすることも無い。dCVFは、免疫原性組成物を含むポリサッカリド単位に共有結合する。
【0075】
他の実施態様では、ニッケル化合物が、組成物に加えられて良い。ニッケルは、レクチン及び補体副経路の両者におけるC3転換酵素活性の促進において効果的であることが示されている(Fishelson, Z., et al., J. of Immun., Vol. 129(6), pp. 2603-7 (Dec 1982))。平均的な成人の自然なニッケルの取り込みは、一日に60から260μgであると見積もられており、その環境衛生基準用量は、0.02 mg/kg(体重)/日(mg/kg/d)である(U.S. EPA, 2003)。本発明は、基準用量を十分に下回るほぼ平均的な1日ごとの取り込み量のニッケル、好ましくはニッケル塩化物を含むことが意図されている。そのため、本発明は、免疫反応を促進するためのニッケルの使用により生産されて良い。
【0076】
要約
要するに、本発明は、HIVの所定の株のソラレンによる不活化に基づく免疫原性組成物及び全粒子ワクチンであり、免疫反応を妨げる特定の特徴が処理されている。個別または成分ワクチンは、上記のまたは将来同定される可能性のあるHIVサブタイプまたは関連する流行組換え株のために作り出されて良い。
【0077】
免疫原性組成物に含まれるべきHIVの株の決定のための過程は、意図される応用に依存する。治療上の例としては、PBMCサンプルが、HIV陽性患者から得られて良く、このサンプル由来のHIVゲノムの適当な領域(例えばenv、gp41、gag p24)が、HIVサブタイプを決定するために単離、増幅、及び配列解析されて良い。系統発生分析は、HIV配列データベース由来の情報資源を使用して実施される。同時に、ウイルス負荷が評価されて良い。
【0078】
免疫原性組成物の調製のための本発明の方法体系は、以下を含む。
1.関連するHIV株の決定及び単離
2.株の培養、任意に、DNA修復酵素欠損培地における培養
3.培地からウイルスの分離
4.任意に、細胞の外側の膜の除去
5.ソラレン及び任意にDNA修復酵素阻害剤の添加
6.紫外線の照射
7.CD55及びCD59の除去または中和
8.不活化ウイルスの脱シアル化
9.任意に、適当な免疫刺激剤またはアジュバントの添加
【0079】
本発明のための混合ワクチン剤を構成する組成物を調製するために、それぞれの構成成分に対して精製、合成、または遺伝子工学の既知の方法を使用できる。当業者は、ワクチンの調製においてウイルス株を単離及び不活化して良い。担体または賦形剤のような予想される投与の方法に適当であるものは、製薬組成物に含まれて良い。治療を必要とする患者は、免疫反応を改善するのに十分な量において本発明が投与されて良い。つまり、治療上効果的な用量は、好ましい範囲までHIV陽性患者における特定の免疫抑制を後進させるために必要な量であり、クロム遊離試験、細胞内サイトカイン試験、リンパ増殖試験(LPA)、インターフェロンγ(IFN-gamma)ELISpot試験、及び好ましくはMHCテトラマー結合試験のような標準的な方法を使用して決定される。同様の実験的試験が、HIV陰性患者の免疫反応の測定に適用される。治療上の効力のあるまたは効果的な投薬及び投薬スケジュールは、患者の年齢、性別、及び合併している疾患に依存する。更に、妊娠の可能性は、子供の出産の可能性がある女性の治療における因子である。
【0080】
免疫原性組成物の分析及び開発は、評価のために、不活化された粒子の幅広い範囲の投与を含むべきである。動物試験では、サイズ、種、及び免疫学的特徴を考慮すべきである。ヒトと動物の間の免疫学的相違が、毒性の分析を動物試験に回す可能性が予想される。臨床試験は、少ない人口における安全性及び用量から、二段階目の数百人のボランティアにおける安全性及び免疫原性、大規模な有効性の段階の少なくとも標準的な三段階のモデルを含む。試験のための開始用量は、年少者には10μg/株、成人には20μg/株であって良い。試験は、10-1020という広範囲における粒子濃度で意図するべきである。前記臨床試験は、他の免疫抑制疾患、妊娠、劇薬の使用等のための除外のような、通例の適当な除外基準を含むべきである。
【0081】
投与は、各種の経路においてなされて良く、例えば、経口、経頬、経粘膜、経舌、経鼻、経直腸、経膣、眼内、筋肉内、リンパ内、静脈内、皮下、経皮、皮内、腫瘍内、局所、経肺、吸入によって、注射によって、または移植によって等により投与されて良い。組成物の各種の形態は、カプセル、ジェルキャップ、錠剤、腸溶カプセル、被包性粒子、粉、坐薬、注射、軟膏、クリーム、インプラント、パッチ、液体、吸入、またはスプレー、全身、局所的、または他の口腔媒体、溶液、懸濁液、輸液などを含んで良いが、それらに制限されない。更に、本発明は、天然の形態、組換えた形態、変異した形態、断片、融合タンパク質、及びサイトカインの他のアナログと誘導体を含むサイトカイン、混合物、他の生理活性物質、並びに製剤補助剤などのような他の治療剤と組み合わせて良い。当業者は、注射のためには、リンガー溶液または塩緩衝液のような水溶液における製剤が適当であって良いことを認識している。リポソーム、エマルション、及び溶剤は、投与媒体の他の例である。経口投与は、カプセル、錠剤、液体、丸薬などに好ましい、スクロース、セルロース等のような担体を必要とするであろう。HIV感染の第一の標的の幾つかは、皮膚並びに直腸及び膣の粘膜における上皮細胞及びランゲルハンス細胞であるため、投与の好ましい実施態様は、直腸及び/または膣の坐薬と組み合わせた経皮的なものである。HIVは、主に直腸及び膣の交わりによって罹患される。そのため、ワクチンの直腸及び/または膣の坐薬投与は、好ましい投与方法体系であろう。本発明は、プライム・ブースト方法で投与されても良い。
【0082】
上の記載は、本発明の特定の実施態様について述べているが、本発明の精神から逸脱すること無く、他の変形例が作り出されて良い事は理解されるだろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲及び精神に含まれるものとして、その様な変形例を含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、紫外線の曝露における核酸との光付加化合物のソラレンの構造を示す。
【図2】図2は、ポリサッカリドの長さの増大が、最大16モノサッカリドまで免疫原性を促進させることを示す。
【図3】図3は、C3及びCVFの鎖構造並びにそれらの関係を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に許容される支持体において、少なくとも一つの所定のHIV株由来の不活化全ウイルスを含む組成物であって、前記ウイルスの不活化は、紫外線及びソラレンに対する曝露によるものであり、前記組成物は、脱シアル化され、さらにCD55及びCD59が前記ウイルスから除去されている組成物。
【請求項2】
CD55及びCD59が、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼを使用する処理によって除去される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シアル酸が、ノイラミニダーゼ、トリプシン、または他の適当な脱シアル化酵素を使用する処理によって除去される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
CD55及びCD59が、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼを使用する処理によって除去され、シアル酸が、ノイラミニダーゼを使用する処理によって除去される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一つのHIV株が、HIV陽性宿主におけるHIVの遺伝子型によってHIV陽性宿主のために事前に決定されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一つのHIV株が、潜在的な宿主に対する曝露の危険の可能性評価によって事前に決定されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
補体因子Hを増強する能力がある免疫原性組成物内のポリアニオンが、前記組成物から実質的に除去される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
補体因子Hを吸収する能力がある硫酸化ポリアニオンが添加される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
免疫刺激剤と組み合わされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫刺激剤が、前記組成物に結合する能力がある形態の少なくとも一つのマンノースからなるポリサッカリドを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記免疫刺激剤が、前記組成物に結合する能力がある形態のテイコ酸を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記免疫刺激剤が、前記組成物に結合する能力がある形態のザイモサンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記免疫刺激剤が、前記組成物に結合する能力があるポリサッカリドカプセルを有するCryptococcus neoformans 血清型 Cを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記免疫刺激剤が、ヘパリンに結合する能力がある形態のプロタミンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記免疫刺激剤が、ヘパリナーゼを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記免疫刺激剤が、C3bの産生を促進するのに適する形態のコブラ毒因子を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記コブラ毒因子が、dCVFである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記免疫刺激剤が、C3転換酵素活性を促進するのに適する形態のニッケルを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも一つの所定のHIV株由来の不活化全ウイルスを含む組成物の投与を含むヒトにおける免疫反応を引き起こす方法であって、前記ウイルスの不活化は、紫外線及びソラレンに対する曝露によるものであり、さらに前記ウイルスは、CD55及びCD59の除去のためにホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼ、並びにシアル酸の除去のためにノイラミニダーゼを使用して処理されている方法。
【請求項20】
前記組成物の投与が、カプセル、ジェルキャップ、錠剤、腸溶カプセル、被包性粒子、粉、坐薬、注射、軟膏、クリーム、インプラント、パッチ、液体、吸入、またはスプレーによるものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物の投与が、経口、経頬、経粘膜、経舌、経鼻、経直腸、経膣、眼内、筋肉内、リンパ内、静脈内、皮下、経皮、皮内、腫瘍内、局所、経肺、吸入、注射、または移植によるものである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも一つのHIV株が、HIV陽性のヒトにおけるHIVの遺伝子型によって前記HIV陽性のヒトのために事前に決定されている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記の少なくとも一つのHIV株が、ヒトのための曝露の危険の可能性評価によって事前に決定されている、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
以下の工程:
ヒト免疫不全ウイルスの少なくとも一つの所定の株の単離及び培養
DNA及びRNAを不活化するための、ウイルスに対するソラレンの添加及びウイルスの紫外線照射
CD55及びCD59の除去
シアル酸の除去
を含む組成物の調製のための方法
【請求項25】
前記ウイルスの少なくとも一つの株が、HIV陽性宿主におけるHIVの遺伝子型によって前記HIV陽性宿主のために事前に決定されている。請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスの少なくとも一つの株が、曝露の危険の可能性評価によって事前に決定されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
外側の細胞膜除去の更なる工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
組成物内のDNA修復酵素阻害の更なる工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
ヒト免疫不全ウイルスの少なくとも一つの所定の株の培養が、DNA修復酵素欠損培地内で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
ヒト免疫不全ウイルスの少なくとも一つの所定の株の培養が、ヒトのPBMC内で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一つの免疫刺激剤を添加する更なる工程を更に含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508848(P2007−508848A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536894(P2006−536894)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/035316
【国際公開番号】WO2005/040353
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506137619)エヌエムケー・リサーチ・エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】