説明

ソリューションプラズマ放電装置

【課題】放電電極間のプラズマ発生領域を、簡単に拡げることのできるソリューションプラズマ放電装置を提供する。
【解決手段】本発明のソリューションプラズマ放電装置は、線電極からなる放電電極1aと針電極からなる放電電極1bを備えており、放電電極1bは、放電電極1aの長手方向に対して傾斜して配置されている。これにより、放電電極1a・1b間の距離を長くしても、放電電極1a・1b間の印加電圧を上げずに、電圧を印加するだけでプラズマ13を発生することができ、プラズマ発生領域14を拡げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電電極間のプラズマ発生領域を、簡単に拡げることのできるソリューションプラズマ放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを利用した技術の中に、液体中でプラズマを発生させて、これを工業的に応用する技術が開発されつつある。このような液体中のプラズマは、主に溶液中で利用されるので「ソリューションプラズマ」と呼ばれる。
【0003】
ソリューションプラズマは、溶液中に対向配置された2つの放電電極間に電圧(高電場)を印加することにより、放電電極間に発生するプラズマである。発生したプラズマの周囲には気泡が発生し、その気泡がプラズマを取り囲んでおり、その気泡の周囲を溶液が取り囲んでいる。つまり、ソリューションプラズマには、プラズマ/気相,気相/液相という2つの界面が存在するという特徴がある。このように、ソリューションプラズマは、プラズマによる「高エネルギー状態」を溶液内に閉じ込めるという状態を実現している。これにより、プラズマの周囲の気相、液相またはその界面で様々な化学反応が促進される。この化学反応による産業への応用として、水処理、滅菌、廃棄物処理、新物質創製、物質の新規合成法の開発、表面改質、超高速加工、希少金属回収、超機能溶液、及び養殖等を含む生物培養等が挙げられる。
【0004】
非特許文献1には、ソリューションプラズマを用いた金ナノ微粒子の合成反応が記載されている。図7は、非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置(ソリューションプラズマ発生装置)121を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置121は、対向する2つのワイヤ状金属電極101・101を備えており、各ワイヤ状金属電極101・101がホルダ110・110によって容器111に固定されている。また、容器111内の溶液112として、塩化金酸水溶液が用いられている。ソリューションプラズマ放電装置121では、ワイヤ状金属電極101・101間にパルス電圧を印加すると、ワイヤ状金属電極101・101間にプラズマ113が発生する。これにより、溶液112(塩化金酸水溶液)中の金を還元し、直径10〜15nmの金ナノ微粒子が合成される。
【0005】
しかし、ソリューションプラズマ放電装置121は、ワイヤ状金属電極101・101間の距離を大きくすると、プラズマ発生に必要とされる印加電圧(プラズマ放電開始電圧)が、その距離に応じて大きくなる。印加電圧が大きくなると、ワイヤ状金属電極101・101間に流れる電流も大きくなると共に、周囲の電界および磁界も大きくなる。その結果、溶液112中の温度上昇、電磁波ノイズの増大、およびプラズマ発光の増大につながるという問題がある。
【0006】
そこで、この問題を解決するために、本願発明者等は、ソリューションプラズマ放電装置を、特許文献1に開示している。図8は、特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置221を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置222は、2つの放電電極201a・201bが、シリコンゴム製の基板202に貫通するように固定された構成である。放電電極201aは基板202に対して垂直に固定され凹部203に挿入されている。一方、放電電極201bは基板202に対して水平に固定され凹部203に挿入されている。放電電極201bは水平方向に位置を動かすことができ、放電電極201aとの距離を調整できるようになっている。
【0007】
ソリューションプラズマ放電装置222では、放電電極201bを放電電極201aに近づけた状態で、これらの放電電極201a・201b間に電圧を印加すると、領域Cでプラズマが発生する。プラズマにより発生した気泡は領域Cを含む凹部203を満たしてゆく。その後、放電電極201bを放電電極201aから遠ざけると、領域Cはすでに気泡で満たされているため、プラズマ状態を維持したまま放電電極201a・201b間の距離を長くすることができる。
【0008】
従って、ソリューションプラズマ放電装置222は、印加電圧を上げることなく、プラズマ状態を維持したまま放電電極201a・201b間の距離を長くすることができる。そしてこれは、放電電極201a・201b間の距離あたりの電圧を下げることになり、流れる電流を減少させる。そのため、プラズマによる発熱、電磁波ノイズ、及びプラズマ発光の輝度を減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−9993号公報(2010年1月14日公開)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】高井治、「ソルーションプラズマによるナノ微粒子合成と界面制御」、粉砕、ホソカワ粉体技術研究所、2007年12月28日、No.51、p.30−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1のソリューションプラズマ放電装置は、放電電極間の距離を拡げるための処理が煩雑であるという問題がある。
【0012】
具体的には、ソリューションプラズマ放電装置222では、放電電極201a・201b間の距離を長くし、プラズマ発生領域を拡げるためには、多段階の処理が必要になる。すなわち、まず、放電電極201bを、放電電極201aの先端部に近づけた状態で、凹部203内の領域Cで、プラズマを発生させる。次に、プラズマにより発生した気泡を、領域Cを含む凹部203内に満たす。続いて、放電電極201bを放電電極201aから徐々に遠ざける。これにより、印加電圧を上げることなく、放電電極201a・201b間の距離を長くすることが可能となる。
【0013】
このように、ソリューションプラズマ放電装置222では、放電電極201a・201b間の距離を拡げるために、煩雑な処理が必要になる。しかも、ソリューションプラズマ放電装置222では、凹部203を有する基板202も必要不可欠となる。
【0014】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放電電極間のプラズマ発生領域を、簡単に拡げることのできるソリューションプラズマ放電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置は、上記の課題を解決するために、液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、上記1対の放電電極の一方が線電極であり、他方が針電極であり、上記針電極は、上記線電極の長手方向に対して傾斜して配置されていることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、線電極と、線電極に対して傾斜して配置された針電極とからなる、1対の放電電極を備えている。これにより、放電電極間の距離を長くしても、放電電極間の印加電圧を上げずに、プラズマを発生させることができる。つまり、特許文献1のような煩雑な処理を行うことなく、電圧を印加するだけで、距離の長い放電電極間に、プラズマを発生させることができる。従って、放電電極間のプラズマ発生領域を、簡単に拡げることができる。
【0017】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記プラズマ発生中、上記針電極の先端から針電極の延長線と線電極との交点までの距離が一定であることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、プラズマ発生中に、放電電極間の距離を変動させる必要がない。従って、放電電極間のプラズマ発生領域を、より簡便に拡げることができる。
【0019】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記針電極の延長線上に、上記線電極の中間部が配置されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、針電極が、線電極の中間部に対向して配置される。これにより、針電極の延長線が線電極の対称軸となる。このため、その延長線の両側に、対称に線電極が配置される。従って、プラズマ発生領域を、より拡げることができる。
【0021】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記針電極は、上記線電極の長手方向に対して、垂直に配置されていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、針電極の延長線と、線電極の長手方向とのなす角が90°となる。これにより、針電極の延長線に対して垂直方向が、線電極の長手方向となる。つまり、針電極から線電極の長手方向の距離が一定になる。従って、放電電極間に均等に広がったプラズマ発生領域を形成することができる。
【0023】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、上記線電極は、長手方向に伸縮自在になっていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、線電極の長さが変動するため、線電極が液体中に露出する部分の長さ(露出長)も変動する。これにより、放電電極間の最短距離を一定に保ちつつ、線電極の露出長を変動させることができる。従って、発生したプラズマの状態に適した露出長となるように、線電極の長さの微調整が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るソリューションプラズマ放電装置は、以上のように、上記1対の放電電極の一方が線電極であり、他方が針電極であり、上記針電極は、上記線電極の長手方向に対して傾斜して配置された構成である。このため、煩雑な処理を行わずに、放電電極間のプラズマ発生領域を、簡単に拡げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置におけるプラズマ発生領域付近の斜視図である。
【図2】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置を示す断面図である。
【図3】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置における、放電電極の別の配置状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るソリューションプラズマ放電装置において、プラズマ発生領域を示す図である。
【図5】(a)はI型に配置された1対の放電電極を示す平面図であり、(b)は(a)の放電電極間に発生したプラズマ発生領域を示す図である。
【図6】(a)はV型に配置された1対の放電電極を示す平面図であり、(b)は(a)の放電電極間に発生したプラズマ発生領域を示す図である。
【図7】非特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【図8】特許文献1に記載されたソリューションプラズマ放電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態について図に基づいて説明すると以下の通りである。
【0028】
本発明のソリューションプラズマ放電装置は、線電極と針電極とからなる1対の放電電極によって、プラズマ発生領域を拡げる。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係るソリューションプラズマ放電装置21を示す断面図である。ソリューションプラズマ放電装置21は、容器11内の溶液(液体)12中に、
1対の放電電極1a・1bを備えている。
【0030】
放電電極1aは、水平(溶液12の液面に対して平行)に設けられた線電極である。
【0031】
一方、放電電極1bは、放電電極1aに近接して設けられており、放電電極1aの長手方向に対して傾斜して配置されている。さらに、放電電極1bの延長線上には、放電電極1aが配置される。ただし、この延長線上には、放電電極1aの先端部は、配置されない。本実施形態では、放電電極1bは、放電電極1aに対して垂直に配置されており、放電電極1bの延長線上には、放電電極1aの中間部(中央部)が配置されている。さらに、プラズマ発生中、放電電極1bの先端から、放電電極1bの延長線と放電電極1aとの交点までの距離は、一定である。
【0032】
放電電極1a・1bは、溶液12中に露出する部分を有するように、セラミックチューブ10・10で覆われている。放電電極1aの溶液12中に露出した長さ(露出長)は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、3cmである。一方、放電電極1bの溶液12中に露出した長さ(露出長)も、特に限定されるものではないが、本実施形態では、2mmである。また、放電電極1aの長さが、変動するようになっている。
【0033】
なお、放電電極1a・1bには、図示しない電源から、電圧が供給される。これにより、放電電極1a・1b間には、プラズマが発生する。なお、この電源の条件は、プラズマが発生する条件であれば、特に限定されるものではない。すなわち、電圧値、パルス幅,パルス周波数,パルス波形などは、特に限定されるものではない。
【0034】
また、放電電極1a・1bの、電極間距離,大きさ、材質、などは、特に限定されるものではない。本実施形態では、放電電極1aとして、直径1mmの棒状の電極を用い、放電電極1bとして直径1mmの針電極を用いている。また、放電電極1a・1b間の距離を、5mmとし、通常のソリューションプラズマ放電装置よりも長くしている。放電電極1a・1bは、タングステン、銅、またはその他の導電性の材料から構成することができる。
【0035】
溶液12は、化学反応の対象となる任意の溶質の他、溶液12の導電性を調整するための電解質を含んでもよい。また、溶液12は、溶媒自身を反応の対象とし、溶質を含まなくてもよい。なお、溶液12を構成する溶質と溶媒との組み合わせ,溶液12の濃度,導電率,pHなどは、目的に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0036】
次に、図1に基づいて、ソリューションプラズマ放電装置21におけるプラズマの発生について説明する。図1は、ソリューションプラズマ放電装置21のプラズマ発生領域14付近を示す斜視図である。
【0037】
ソリューションプラズマ放電装置21は、放電電極1a・1b間に電圧(例えば約1100V)が印加されると、放電し放電電極1a・1b間にプラズマが発生する。さらに、この放電の際、放電電極1a・1b間に流れる電流により、溶液12が加熱される。これにより、溶液12中、特にプラズマ13の周囲には、気泡が発生する。電圧印加中に発生した気泡は、プラズマ13を取り囲み、プラズマ状態が気泡内部で安定化して維持される。プラズマ発生領域14は、プラズマ13と、プラズマ13を内包する気相とからなっている。このように、プラズマ13(プラズマ相)の周囲を気相が取り囲み、さらにその気相の周囲を液相が取り囲んでいる。そして、このようなプラズマ状態が気体中及び溶液中の分子の各種の化学反応を促進する。
【0038】
ここで、プラズマ発生領域14が広ければ、このような各種化学反応は効率よく進行する。プラズマ発生領域14は、放電電極1a・1b間の距離を長くすれば、広げることができる。ただし、放電電極1a・1b間の距離を大きくするとプラズマ発生に必要とされる印加電圧が、その距離に応じて大きくなるのが通常である。このため、特許文献1では、低電圧下でプラズマ発生領域を拡げるためだけの部材(基板202)を必須の構成要件とすると共に、多段階の処理も必須の要件となっている。
【0039】
しかしながら、本実施形態のソリューションプラズマ放電装置21では、放電電極1aが線電極、放電電極1bが針電極であり、放電電極1bが放電電極1aの長手方向に対して傾斜している。これにより、放電電極1a・1b間の距離を長くしても、放電電極1a・1b間の印加電圧を上げずに、プラズマ13を発生させることができる。つまり、特許文献1のような煩雑な処理を行うことなく、電圧を印加するだけで、距離の長い放電電極1a・1b間に、プラズマ13を発生させることができる。従って、放電電極1a・1b間のプラズマ発生領域14を、簡単に拡げることができる。それゆえ、各種化学反応を効率よく進行させることができる。例えば、ナノ粒子の合成効率を高めることができる。
【0040】
なお、特許文献1には、放電電極201a・201bの一方を線電極に、他方を針電極に限定する記載も示唆もない。つまり、ソリューションプラズマ放電装置21において、プラズマ発生領域14を拡げることができるという効果は、特定の放電電極を特定の配置とすることによって初めて得られる、本願発明に特有の効果である。
【0041】
さらに、ソリューションプラズマ放電装置21では、放電電極1a・1b間の距離を拡げるために、特許文献1のような凹部203を有する基板202が不要である。このため、特許文献1のソリューションプラズマ放電装置よりも、部品点数を削減することができる。従って、ソリューションプラズマ放電装置21の構成を簡素化することができる。
【0042】
また、ソリューションプラズマ放電装置21では、プラズマ発生中(放電電極1a・1bに電圧を印加中)、放電電極1bの先端から放電電極1bの延長線と放電電極1aとの交点までの距離が一定であることが好ましい。つまり、この場合、プラズマ発生中に、放電電極1a・1b間の距離を変動させる必要がない。従って、放電電極1a・1b間のプラズマ発生領域14を、より簡便に拡げることができる。
【0043】
また、ソリューションプラズマ放電装置21では、放電電極1aが長手方向に伸縮自在であり、放電電極1aの長さが変動するようになっている。ただし、放電電極1aの長さは、放電電極1bの延長線上に、放電電極1aの先端部が配置されたときの長さ以下にはならない。言い換えれば、放電電極1bが放電電極1aの長手方向に対して傾斜して配置される範囲内で、放電電極1aの長さが変動する。この場合、放電電極1aが溶液12中に露出する部分の長さ(露出長)も変動する。これにより、放電電極1a・1b間の最短距離を一定に保ちつつ、放電電極1aの露出長を変動させることができる。従って、発生したプラズマ13の状態に適した露出長となるように、放電電極1aの長さの微調整が可能となる。なお、もちろん放電電極1aの長さは、変動(伸縮)しなくてもよい。
【0044】
また、ソリューションプラズマ放電装置21において、放電電極1aに対する放電電極1bの位置は、放電電極1bが放電電極1aの長手方向に対して傾斜していれば特に限定されるものではない。ただし、放電電極1bの延長線上に、放電電極1aの中間部が配置されていることが好ましい。つまり、ソリューションプラズマ放電装置21のように、放電電極1bが、放電電極1aの中間部に対向して配置されていることが好ましい。これにより、放電電極1bの延長線が放電電極1aの対称軸となる。すなわち、その延長線の両側に、対称に放電電極1aが配置される。つまり、放電電極1bの延長線と放電電極1aとの交点が、放電電極1aのほぼ中点になる。これにより、放電電極1aの長手方向に拡がったプラズマ発生領域14が形成される。従って、プラズマ発生領域を、より拡げることができる。
【0045】
また、ソリューションプラズマ放電装置21では、放電電極1bは、放電電極1aの長手方向に対して、垂直に配置されている。すなわち、放電電極1bの延長線と、放電電極1aの長手方向とのなす角が90°となっている。これにより、放電電極1bの延長線に対して垂直方向が、放電電極1aの長手方向となる。つまり、放電電極1bから放電電極1aの長手方向の距離が一定になる。従って、放電電極1a・1b間に均等に広がったプラズマ発生領域14を形成することができる。
【0046】
なお、放電電極1aの長手方向に対する放電電極1bの角度は、特に限定されるものではない。つまり、この角度は、放電電極1bが放電電極1aの長手方向に対して傾斜していれば、垂直でも鈍角でも鋭角でもよい。図3は、放電電極1a・1bの別の配置状態を示す斜視図である。図3では、放電電極1bが、放電電極1aの長手方向に対して鋭角に配置されている。このような配置状態であっても、同様に、プラズマ発生領域(図示せず)を、拡げることができる。
【実施例】
【0047】
図2のようなT字状に配置した放電電極1a(線電極)と放電電極1b(針電極)を用い、放電電極間1a・1b間距離(放電電極1bの先端から放電電極1bの延長線と放電電極1aとの交点までの距離)を5mmとし、放電電極1a・1b間に、2000Vの電圧を5秒程度印加し、形成されるプラズマ発生領域を観測した。図4は、観測されたプラズマ発生領域を示す図である。
【0048】
一方、比較のため、放電電極の配置状態のみが異なる、2種類のソリューションプラズマ放電装置についても、同様にしてプラズマ発生領域を観測した。すなわち、1つは、図5(a)のように、放電電極1c・1cとして、互いに対向するI字状に配置される針電極を用いた。もう1つは、図6(a)のように、放電電極1d・1dとして、互いの放電電極1d・1dの延長線を結ぶとV字状に配置されると針電極を用いた。なお、図5(a)および図6(a)において、両矢印で示す放電電極間距離が、5mmである。
【0049】
なお、図5(b)は図5(a)の放電電極間に発生したプラズマ発生領域を示す図である。図6(b)は図6(a)の放電電極間に発生したプラズマ発生領域を示す図である。
【0050】
このような放電電極の配置状態とプラズマ発生領域との関係を調べた結果、図4のように、放電電極1a・1bをT字状に配置した場合に、均等に球状に拡がったプラズマ発生領域(図中白抜きの部分)が形成され、最もプラズマ発生領域を拡がることが確認された。
【0051】
一方、図5(b)および図6(b)のように、放電電極をI字状またはV字状に配置した場合、各放電電極の先端を結ぶ領域に、直線状のプラズマ発生領域が形成されたものの、図4のプラズマ発生領域のように、均等な拡がりは確認されなかった。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明はソリューションプラズマを応用した物質合成、液体処理、及び加工等に利用することができる。また、ソリューションプラズマ状態の診断(観測)を容易にし、ソリューションプラズマ状態の制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1a 放電電極(線電極)
1b 放電電極(針電極)
12 溶液(液体)
13 プラズマ
14 プラズマ発生領域
21 ソリューションプラズマ放電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に配置された1対の放電電極を備え、放電電極間に電圧を印加し放電させることにより、放電電極間にプラズマを発生させるソリューションプラズマ放電装置において、
上記1対の放電電極の一方が線電極であり、他方が針電極であり、
上記針電極は、上記線電極の長手方向に対して傾斜して配置されていることを特徴とするソリューションプラズマ放電装置。
【請求項2】
上記プラズマ発生中、上記針電極の先端から針電極の延長線と線電極との交点までの距離が一定であることを特徴とする請求項1に記載のソリューションプラズマ放電装置。
【請求項3】
上記針電極の延長線上に、上記線電極の中間部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のソリューションプラズマ放電装置。
【請求項4】
上記針電極は、上記線電極の長手方向に対して、垂直に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のソリューションプラズマ放電装置。
【請求項5】
上記線電極は、長手方向に伸縮自在になっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のソリューションプラズマ放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171056(P2011−171056A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32496(P2010−32496)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構「ソリューションプラズマ反応場の自立制御化とナノ合成・加工への応用」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】