説明

ソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプ

【課題】可動鉄心の主軸の先端部に対しダイヤフラムを容易に取付け、交換できるようにする。
【解決手段】可動鉄心の主軸に対するダイヤフラムの着脱作業時に操作される操作部113と、この操作部113が操作されるのに基づいて、ソレノイドに所定時間電流を供給して可動鉄心の主軸を前進させてその状態を保持するように制御する制御手段114とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、除菌器などに適用されるソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、井戸水に含まれる鉄マンガンイオンなどをろ過槽により除去するとともに、除菌して飲用水として利用している。ろ過槽は内部にセラミック製ろ過砂や、その表面に二酸化マンガンをコーティングした除マンガン用ろ過材などを充填している。
【0003】
また、ろ過槽1次側には、除菌・酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムを注入する除菌器が設置されている。
【0004】
除菌器は、次亜塩素酸ナトリウムを貯留しておく薬液槽と、ろ過流量を検出するための磁石付き回転翼を有する流量比例注入用流量検出部を備えている。さらに、除菌器は、ろ過流量に比例した一定量の次亜塩素酸ナトリウムを注入するダイヤフラムポンプと、井戸水が通過する連結管及び薬液注入部を備えている。
【0005】
除菌器に使用されるダイヤフラムポンプは、小型で装置内に組込み易く、そのポンプ特性は精密注入に適している。また、ダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムを駆動するために往復動作が必要なため、アクチュエータとしては、安価で構造が簡単な電磁ソレノイドが多用されている。
【0006】
ソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプは、薬液を吐出する時には、ソレノイドコイルに電流を流して可動鉄心を付勢部材としての戻しバネの戻し力に抗して前進させてダイヤフラムを押し出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−177691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したダイヤフラムは、ポンプの組立時に、可動鉄心の主軸の先端部に取り付けられ、また、消耗品であるため、使用現場において交換する場合がある。このダイヤフラムの取付時、或いは交換時には、ソレノイドへの通電はなく、戻しバネの戻し力により可動鉄心の主軸が後退されてその先端部が引っ込んだ状態となる。
【0009】
このため、従来においては、可動鉄心の主軸の先端部に対するダイヤフラムの取付けや、交換が手間取り、ダイヤフラムに過剰な引張力を加えて破損させてしまう虞があった。
【0010】
本発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、可動鉄心の主軸の先端部に対するダイヤフラムの取付けや、交換を容易にできるようにしたソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、可動鉄心の主軸の先端部に着脱自在に取り付けられるダイヤフラムを有し、運転時には、ソレノイドに電流を供給することにより前記可動鉄心の主軸を付勢部材の付勢力に抗して前進させて前記ダイヤフラムを押し出し、電流の供給を停止することにより前記可動鉄心を前記付勢部材の付勢力によって後退させて前記ダイヤフラムを戻すように構成されたソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプにおいて、前記可動鉄心の主軸に対する前記ダイヤフラムの着脱作業時に操作される操作部と、この操作部が操作されるのに基づいて、前記ソレノイドに所定時間電流を供給して前記可動鉄心の主軸を前進させてその状態を保持するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、自動運転時は、ソレノイドに電流を供給することにより可動鉄心の主軸を付勢部材の付勢力に抗して前進させてダイヤフラムを押し出し、電流の供給を停止することにより前記可動鉄心を前記付勢部材の付勢力によって後退させて前記ダイヤフラムを戻すように構成されたソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプにおいて、前記自動運転の停止時には、前記ソレノイドに電流を供給して前記可動鉄心の主軸を前進させた状態にしてから、前記ソレノイドに通常運転時の供給電流よりも少ない保持電流を供給して前記主軸の押出状態を保持するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可動鉄心の主軸の先端部に対するダイヤフラムの着脱作業が容易になり、ダイヤフラムの損傷を防止できる。
【0014】
また、運転停止時におけるデッドスペースを削減して内部における酸素ガスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態であるソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプを示す断面図。
【図2】図1のプランジャが前進した状態を示す断面図。
【図3】図1のダイヤフラムポンプが貯留槽と通水管との間に接続された状態を示す図。
【図4】図1のソレノイドに電流を供給する供給回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態であるダイヤフラムポンプ10を示すものである。図1は、後述するダイヤフラム18が後退している状態を示し、図2は、ダイヤフラム18が前進している状態を示すものである。
【0018】
ダイヤフラムポンプ10は円筒状のモータケース12を備え、このモータケース12内にはソレノイド14が設けられている。モータケース12の前面側にはダイヤフラム18が設けられているとともに、ポンプ本体24がネジ30等により液密に取り付けられている。
【0019】
モータケース12の後面側には後部カバー20が固定的に設けられ、後部カバー20には樹脂製の調整ネジ22がねじ込まれている。モータケース12と後部カバー20は耐食性や、発生する騒音の周波数域を考慮して樹脂製とされている。以下、ソレノイド14側から見て、ポンプ本体24側を前方とし、その逆を後方として説明する。
【0020】
ソレノイド14は、固定鉄心31と金属製のプランジャ16とによって構成されている。ソレノイド14の固定鉄心31は、ベース37とケース38を備え、ケース38内には、円筒状のソレノイドコイル39とコイルボビン41が収納されている。
【0021】
プランジャ16は、円筒状のソレノイドコイル39の中心に位置し、前後方向に沿って移動自在に設けられている。ソレノイドコイル39の入力端子(図示せず)には、電力線86が接続されている。プランジャ16は、主軸32と、主軸32に一体的に取り付けられた可動鉄心34と、主軸32の後部側に設けられた補助磁極板36とから構成されている。主軸32は、固定鉄心31の中心に設けられた孔15内に、軸受17を介して摺動自在に設けられ、この主軸32の先端部に上記したダイヤフラム18が着脱自在に取り付けられている。
【0022】
可動鉄心34は、固定鉄心31の後部側に形成された凹部40内に摺動自在に収納されている。可動鉄心34は、プランジャ16が所定位置まで前進すると、固定鉄心31の凹部40内の弾性部材46に当接し、プランジャ16の前進を停止させるようになっている。
【0023】
可動鉄心34と固定鉄心31との間には、コイルバネである付勢部材としての戻しバネ44が介在され、プランジャ16を所定のバネ力で後方に付勢している。
【0024】
補助磁極板36は、金属板で、主軸32に一体に取り付けられており、プランジャ16を前進させるときに磁気回路を形成し、プランジャ16の推力を増加させる。調整ネジ22は、後部カバー20にネジで組み付けられており、後部カバー20に対して左右に回されることにより、前端部52を任意の位置に設定できるようになっている。
【0025】
ダイヤフラム18は、板状で、弾性材料からなり、ポンプ本体24に形成された圧送室54に臨ませて取り付けられている。ダイヤフラム18は、中心部分が主軸32の先端に組み付けられ、外周部分がモータケース12の前端縁とポンプ本体24との間に液密に固定されている。ダイヤフラム18の形状、材質は特に問わない。
【0026】
ポンプ本体24には、上述した圧送室54がほぼ中央に形成してあり、図の下方に流入口96が、図の上方に流出口98が設けられている。圧送室54の流入口96側には流入用一方向ボール弁56が、また流出口98側には流出用一方向ボール弁58がそれぞれ設けられている。ポンプ本体24の流入口96には、図3に示す貯留槽100からの送液管102がソケット104により連結している。またポンプ本体24の流出口98には、送液管106がソケット108により連結している。
【0027】
送液管106の他端は、通水管110の混入部(図示せず)に延びている。混入部は、送液管106から送られた液体、例えば、次亜塩素酸ナトリウムなどの除菌剤を、通水管110内を流れる流体、例えば井戸水内に流出させ、除菌剤を井戸水に混入させる。混入部の下流側の通水管110は、例えばろ過装置などを介して家庭用の蛇口などに接続されている。
【0028】
上記した構成において、ダイヤフラムポンプ10のソレノイドコイル39に電流が供給されて磁力が発生すると、プランジャ16が戻しバネ44の付勢力に抗して吸引される。プランジャ16が吸引されると、ダイヤフラム18が図2に示すように圧送室54内で前進する。これにより、流入用一方向ボール弁56が閉じて流出用一方向ボール弁58が開き、所定量の薬剤が所定の圧力でダイヤフラムポンプ10から流出される。
【0029】
ダイヤフラムポンプ10から流出した薬剤は、送液管106を通り、通水管110の混入部に送られ、通水管110内を通過する流体(井戸水のろ過水)に混入される。
【0030】
一方、ソレノイドコイル39への通電が停止されて磁力が消失すると、プランジャ16が戻しバネ44のバネ力で後方に移動し、補助磁極板36が調整ネジ22の前端部に当接することにより停止する。このプランジャ16の後退により、ダイヤフラム18が圧送室54内で後退する。これにより、流入用一方向ボール弁56が開いて、流出用一方向ボール弁58が閉じ、所定量の薬剤が貯留槽100からダイヤフラムポンプ10内に流入される。
【0031】
ダイヤフラムポンプ10は、上記したダイヤフラム18の進退が繰り返される毎に所定量の薬剤を通水管110のろ過水に混入させる。
【0032】
ところで、上記したダイヤフラム18はポンプ10の組立時に、可動鉄心34の主軸32の先端部に取り付けられ、また、消耗品であるため、使用現場で交換される場合がある。
【0033】
このダイヤフラム18の取付、交換時には、ソレノイドコイル39には電流が供給されないため、戻しバネ44の付勢力により可動鉄心34の主軸32は後退されて引っ込んだ状態となる。このため、ダイヤフラム18の取付け、交換作業が手間取り、ダイヤフラム18を損傷させてしまう虞があった。
【0034】
そこで、この実施の形態では、ダイヤフラム18の取付時、交換時には、ソレノイドコイル39に電流を供給して戻しバネ44の付勢力に抗して可動鉄心34の主軸32を前進させて押し出すようにしている。
【0035】
即ち、図4に示すように、ソレノイドコイル39には駆動回路112を介して電源回路111が接続されている。また、駆動回路112には制御手段としての制御部114が接続され、制御部114には運転ボタン115、操作部としての操作ボタン113、及び流量を検出する検出センサなどの流量検出部116が接続されている。
【0036】
操作ボタン113は、ダイヤフラム18の取付け、交換時に押圧操作されるものである。制御部114は、操作ボタン113が押圧操作されると、ソレノイドコイル39に例えば、10秒間電流を供給するように駆動回路112を制御するようになっている。
【0037】
また、このダイヤフラム18の取付け、交換時には、ダイヤフラム18には水圧が作用していないため、ソレノイドコイル39に供給する電流値としては、戻しバネ44を押し出す推力のみでよい。従って、必要とされる電流値は、通常運転時の電流値よりも小さくてもよく、ソレノイドコイル39に供給される電流値としては、通常運転時の50%以下に制御されるようになっている。
【0038】
上記した構成において、操作ボタン113が押圧操作されると、ソレノイドコイル39に例えば、10秒間電流が供給され、戻しバネ44の付勢力に抗して可動鉄心34の主軸32が前進されて押し出される。この押し出された主軸32の先端部にダイヤフラム18を取付け、或いは交換する。従って、ダイヤフラム18に過剰な引張り力を加えるといったことなく、その着脱が可能となり、作業性を向上できるとともに、ダイヤフラム18を破損させてしまう虞もない。
【0039】
一方、上記したポンプ本体24内で酸素ガスの気泡が発生すると、所謂「ガスロック」と呼ばれる注入量不足を起こす虞がある。この問題は、貯留槽100に貯留する薬液に5から12%の原液が使用され、気温が高く、酸素ガスの発生量が多くなる夏期に顕著であった。
【0040】
そこで、この実施の形態では、ポンプ本体24内での酸素ガスの気泡の発生を抑制できるようにしている。
【0041】
即ち、制御部114は、通水管110の流量を検出する流量検出部116により、給水量が少なくなった時点で、ダイヤフラムポンプが停止されると、ソレノイドコイル39に電流を供給して可動鉄心34の主軸32を前進させて押し出した状態にしてから、保持電流を供給するように駆動回路112を制御する。
【0042】
これにより、ダイヤフラム18の押出し状態が維持され、ポンプ本体24内の次亜塩素酸ナトリウムの容量を少なくしてデッドスペースが削減される。従って、酸素ガスの気泡の発生を抑制でき、「ガスロック」と呼ばれる注入量不足を防止することができる。
【0043】
なお、保持電流は、可動鉄心34が固定鉄心31に最も近接して発生推力が最大になってから供給されるため、保持電流値は、通常運転時の電流値より小さくても可動鉄心34の主軸32の押し出し状態を維持できる。従って、保持電流値は、通常運転時の電流値より小さくなるように制御され、消費電力を少なくするとともに、温度上昇も低くすることが可能となる。
【0044】
なお、上記した実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10…ダイヤフラムポンプ、14…ソレノイド、16…プランジャ、18…ダイヤフラム、31…固定鉄心、32…主軸、34…可動鉄心、44…戻しバネ(付勢部材)、113…操作ボタン(操作部)、114…制御部(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動鉄心の主軸の先端部に着脱自在に取り付けられるダイヤフラムを有し、運転時には、ソレノイドに電流を供給することにより前記可動鉄心の主軸を付勢部材の付勢力に抗して前進させて前記ダイヤフラムを押し出し、電流の供給を停止することにより前記可動鉄心を前記付勢部材の付勢力によって後退させて前記ダイヤフラムを戻すように構成されたソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプにおいて、
前記可動鉄心の主軸に対する前記ダイヤフラムの着脱作業時に操作される操作部と、
この操作部が操作されるのに基づいて、前記ソレノイドに所定時間電流を供給して前記可動鉄心の主軸を前進させてその状態を保持するように制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記操作部の操作に基づいて前記ソレノイドに供給される電流値を通常運転時よりも少なく制御することを特徴とする請求項1記載のソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
自動運転時に、ソレノイドに電流を供給することにより可動鉄心の主軸を付勢部材の付勢力に抗して前進させてダイヤフラムを押し出し、電流の供給を停止することにより前記可動鉄心を前記付勢部材の付勢力によって後退させて前記ダイヤフラムを戻すように構成されたソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプにおいて、
前記自動運転の停止時には、前記ソレノイドに電流を供給して前記可動鉄心の主軸を前進させた状態にしてから、前記ソレノイドに通常運転時の供給電流よりも少ない保持電流を供給して前記主軸の押出状態を保持するように制御する制御手段
を備えたことを特徴とするソレノイド駆動式のダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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