説明

ソーチェーンを潤滑するためのオイルポンプ装置

【課題】 クランクシャフトに対する良好な摺動性及びギヤの歯部の強度を確保できる構造のウォームの提供。
【解決手段】 クランクシャフトに駆動上連結されたクラッチシューと、クランクシャフトと同軸上に設けられたクラッチドラムと、をもつ遠心クラッチを介して駆動されるソーチェーンを備えたチェーンソーに設けられ、遠心クラッチと同期して作動する、ソーチェーンを潤滑するためのオイルポンプ装置に関する。オイルポンプ装置は、クランクシャフトに遊転自在に嵌挿され、且つ、クラッチドラムと一体回転するようにクラッチドラムに駆動上連結されたウォームと、該ウォームと噛合する被動ギヤと、該被動ギヤが一体に設けられて、潤滑オイルの圧送を行うポンプ可動部とを有し、ウォームは、クランクシャフトと対向する内側部分が自己潤滑性樹脂で形成されており、また、歯部を含む外側部分が耐磨耗性金属製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンソーに設けられる、ソーチェーンを潤滑するためのオイルポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンソーは、2サイクルガソリンエンジン等を内部に有する本体から前方に延びるガイドバーと、該ガイドバーの周りの案内溝に沿って走行するソーチェーンと、をもち、該ソーチェーンは、クランクシャフトに駆動上連結されたクラッチシューと、前記クランクシャフトと同軸上に設けられたクラッチドラムと、をもつ遠心クラッチを介して、前記エンジンから動力が伝達されて前記ソーチェーンが駆動される。
【0003】
チェーンソーには、例えば、米国特許第3,448,829号明細書及び特表2002−507496号公報に記載されているように、遠心クラッチと同期して作動する、ソーチェーンを潤滑するためのオイルポンプ装置が設けられているものがある。該オイルポンプ装置は、前記クランクシャフトに遊転自在に嵌挿され、且つ、前記クラッチドラムと一体回転するように前記クラッチドラムに連結されたウォームと、該ウォームと噛合する被動ギヤと、該被動ギヤが一体に設けられて、前記潤滑オイルの圧送を行うポンプ可動部と、を有する。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,448,829号明細書
【特許文献2】特表2002−507496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ウォームは、低コストで製造可能な構造としつつ、前記クランクシャフトに対する良好な摺動性及びギヤの歯部の強度を確保できる構造とする必要がある。
本発明は、このような要請に沿うウォームを有するオイルポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、クランクシャフトに駆動上連結されたクラッチシューと、前記クランクシャフトと同軸上に設けられたクラッチドラムと、をもつ遠心クラッチを介して駆動されるソーチェーンを備えたチェーンソーに設けられ、前記遠心クラッチと同期して作動する、ソーチェーンを潤滑するためのオイルポンプ装置であって、前記クランクシャフトに遊転自在に嵌挿され、且つ、前記クラッチドラムと一体回転するように前記クラッチドラムに駆動上連結されたウォームと、該ウォームと噛合する被動ギヤと、該被動ギヤが一体に設けられて、前記潤滑オイルの圧送を行うポンプ可動部と、を有し、前記ウォームは、前記クランクシャフトと対向する内側部分が自己潤滑性樹脂で形成されており、また、歯部を含む外側部分が耐磨耗性金属製である、ことを特徴とするオイルポンプ装置によって達成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クランクシャフトに対する良好な摺動性及びギヤの歯部の強度を確保でき、また、低コストで製造可能であるウォームを有するオイルポンプ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るオイルポンプ装置の実施の形態について、以下、図面を参照しつつ、説明する。
図1は、チェーンソー本体をクランクシャフトに沿って切断した要部水平断面図であり、第1の実施の形態に係るオイルポンプ装置を示す。
チェーンソー2は、小型空冷2サイクルガソリンエンジン4等を内部に有する本体6と、該本体6から前方に延びるガイドバー8と、該ガイドバー8の周りの案内溝22に沿って走行するソーチェーン10と、前記エンジン4の動力を前記ソーチェーン10に伝達するための遠心クラッチ12と、前記ソーチェーン10に潤滑オイルを供給するためのオイルポンプ装置14と、を有する。
【0009】
前記遠心クラッチ12は、前記エンジン4の前記クランクシャフト17に駆動上連結されたクラッチシュー16と、前記クランクシャフト17と同軸上に設けられたクラッチドラム18と、を有する。該クラッチドラム18には、前記クランクシャフト17と同軸上に、前記クラッチドラム18と一体回転するように、前記クランクシャフト17に対して遊転自在にスプロケット20が取付けられている。前記ソーチェーン10は、前記スプロケット20と前記ガイドバー8の周りの前記案内溝22の周りに巻き掛けられている。
【0010】
また、前記オイルポンプ装置14は、前記クランクシャフト17と同軸上に、前記クラッチドラム18及び前記スプロケット20と一体回転するように、該スプロケット20に対して駆動上連結されたウォーム24と、該ウォーム24と噛合する被動ギヤ26と、該被動ギヤ26が一体に設けられて、前記潤滑オイルの圧送を行う回転式プランジャーよりなるポンプ可動部28と、を有する。すなわち、前記ウォーム24は、前記スプロケット20を介して、前記クラッチドラム18に駆動上連結されている。
【0011】
前記ウォーム24の前記スプロケット20に対する取付け状態について、より詳細に説明すると、前記スプロケット20の前記ウォーム24を連結すべき前記クラッチドラム18側の部分の端面には、前記クランクシャフト17の回転軸線X−X方向に延びる突起30(図示例では二個)が形成され、また、前記ウォーム24の前記クラッチドラム18側部分の端面には、前記突起30を受け入れるための凹部32、より詳細には、穴が形成されている。前記クランクシャフト17には、ストッパリング34が嵌着されており、組立てにおいて、前記ウォーム24を前記クランクシャフト17に挿入して前記ストッパリング34に当接させ、更に、前記スプロケット20が取付けられた前記クラッチドラム18を前記クランクシャフト17に挿入する。その際、前記スプロケット20の前記突起30を前記ウォーム24の前記凹部32の中に挿入する。これによって、前記ウォーム24が前記スプロケット20に対して一体回転自在に固定されて取付けられる。更に、前記クランクシャフト17の先端に前記クラッチシュー16を案内するボス部材16aをねじ固定する。
【0012】
前記ウォーム24は、前記クランクシャフト17と対向する内側部分36が自己潤滑性樹脂で形成されており、また、歯部38aを含む円筒状の外側部分38は、SUM24Lなどの耐磨耗性金属製である。本実施の形態においては、前記ウォーム24の前記内側部分36は、前記外側部分38に沿って回転軸線X−X方向に延びる円筒状部分36aと、前記スプロケット20側において前記円筒状部分36aに一体的に連設された鍔部分36bと、を有し、適宜の手段により前記外側部分38と一体化されている。前記凹部32が、前記内側部分36の前記鍔部分36bに形成されている。前記内側部分36を形成する自己潤滑性樹脂は、例えば、ナイロン系カーボン入りのものが好ましい。
【0013】
前記ポンプ可動部28は、回転プランジャー式ポンプとして周知の構造を有するので、詳細な説明は省略するが、概略的に説明すると、前記ポンプ可動部28には端面カム(図示せず)が設けられ、前記ポンプ可動部28に、前記遠心クラッチ12の回転が前記ウォーム24と前記被動ギヤ26とを介して伝達される。前記ポンプ可動部28は、その軸線を中心として回転し、回転中、前記端面カムの作用によって軸線方向に沿って周期的に往復運動し、図示しないオイルタンク内の潤滑オイルを、前記ソーチェーン10に圧送する構造となっている。
【0014】
本実施の形態に係る前記オイルポンプ装置14は、以下のように作用する。
前記エンジン4が始動され、前記クランクシャフト17の回転数がアイドル状態から上昇すると、前記クラッチシュー16が遠心力により外周方向に移動して前記クラッチドラム18に駆動上連結される。それによって、該クラッチドラム18が回転し、前記スプロケット20及び前記ウォーム24が、前記クランクシャフト17の周りで回転する。前記スプロケット20の回転により、前記ソーチェーン10が前記ガイドバー8の周りの前記案内溝22に沿って走行する。また、前記ウォーム24が回転すると、それによって、前記被動ギヤ26が回転し、前記ポンプ可動部28が上記のように作動し、潤滑オイルを前記ソーチェーン10に圧送する。
【0015】
図2は、第2の実施の形態に係るオイルポンプ装置14を示す、図1と同様な図である。
第2の実施の形態にかかるオイルポンプ装置14は、第1の実施の形態と比べて、前記ウォーム24の構造が一部異なるだけで、その他の構造は同様であり、また、チェーンソー2の構造も同様である。従って、同じ構造部分は、第1の実施の形態と同じ符合で示すこととし、その詳細な説明は省略する。以下、異なる部分だけ説明する。
【0016】
図2に示すように、第2の実施の形態に係るウォーム25は、前記クランクシャフト17と対向する内側部分40が円筒状で、且つ、自己潤滑性樹脂で形成されており、また、歯部42aを含む外側部分42が耐磨耗性金属製である点で、第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態においては、前記歯部42aを含む前記外側部分42が、円筒状の前記内側部分40に沿って回転軸線X−X方向に延びる円筒状部分42bと、前記スプロケット20側において前記円筒状部分42bに一体的に連設された鍔部分42cとを有する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0017】
前記凹部32は、前記外側部分42の前記鍔部分42cに形成されている。
【0018】
本発明の第1及び第2の実施の形態においては、前記クラッチドラムの前記ウォーム側、及び、前記ウォームの前記クラッチドラム側に、互いに嵌合する、回転軸線方向に延びる突起及び該突起を受け入れるための凹部のいずれか一方と他方が、それぞれに形成されているから、前記ウォームを前記クランクシャフトに挿入するだけで、前記クラッチドラム側の部分、すなわち、前記スプロケット20に容易に取付けることができる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、上記第1及び第2の実施形態においては、前記ウォーム24、25に前記凹部32が形成され、前記スプロケット20に前記突起30が形成されているが、これらは逆であってもよく、前記ウォーム24、25に突起30が形成され、前記スプロケット20に凹部32(穴)が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係るオイルポンプ装置は、チェーンソーのソーチェーンに潤滑オイルを供給するために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】チェーンソー本体をクランクシャフトに沿って切断した要部水平断面図であり、第1の実施の形態に係るオイルポンプ装置を示す。
【図2】第2の実施の形態に係るオイルポンプ装置を示す、図1と同様な図である。
【符号の説明】
【0021】
2 チェーンソー
10 ソーチェーン
12 遠心クラッチ
14 オイルポンプ装置
16 クラッチシュー
17 クランクシャフト
18 クラッチドラム
24 ウォーム
25 ウォーム
26 被動ギヤ
28 ポンプ可動部
30 突起
32 凹部(穴)
36 内側部分
38 外側部分
38a歯部
40 内側部分
42 外側部分
42a歯部
X−X回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(17)に駆動上連結されたクラッチシュー(16)と、前記クランクシャフト(17)と同軸上に設けられたクラッチドラム(18)と、をもつ遠心クラッチ(12)を介して駆動されるソーチェーン(10)を備えたチェーンソー(2)に設けられ、前記遠心クラッチ(12)と同期して作動する、前記ソーチェーン(10)を潤滑するためのオイルポンプ装置(14)であって、前記クランクシャフト(17)に遊転自在に嵌挿され、且つ、前記クラッチドラム(18)と一体回転するように前記クラッチドラム(18)に駆動上連結されたウォーム(24,25)と、該ウォーム(24,25)と噛合する被動ギヤ(26)と、該被動ギヤ(26)が一体に設けられて、前記潤滑オイルの圧送を行うポンプ可動部(28)と、を有し、前記ウォーム(24,25)は、前記クランクシャフト(17)と対向する内側部分(36,40)が自己潤滑性樹脂で形成されており、また、歯部(38a、42a)を含む外側部分(38、42)が耐磨耗性金属製である、ことを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項2】
前記クラッチドラム(18)の前記ウォーム(24,25)側、及び、前記ウォーム(24,25)の前記クラッチドラム(18)側の部分の端面には、互いに嵌合する、回転軸線(X−X)方向に延びる突起(30)及び該突起(30)を受け入れるための凹部(32)のいずれか一方と他方が、それぞれに形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のオイルポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルポンプ装置(14)を有するチェーンソー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−17029(P2006−17029A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195667(P2004−195667)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】