説明

タイバー逆抜き型締装置

【課題】大きなタイバー退避用空間や大型の抜取り装置を必要とせず、抜取り操作が簡単かつ容易な型締装置を提供する。
【解決手段】可動盤と固定盤にタイバー挿通孔を設けてタイバーを挿通し、可動盤をタイバーに沿って固定盤に対し進退自在に配設した型締装置において、(a)可動盤を固定盤に押圧して型閉した後、タイバーの可動盤側端部に形成した係合部に係合する第1係合手段及びタイバーを保護するタイバーカバーを可動盤のタイバー挿通孔の両側にそれぞれ設け、(b)タイバーの固定盤側端部に形成した係合部に係合する第2係合手段を、着脱係止手段を用いて型締ピストンの端部に着脱可能に設け、(c)タイバーと協働し型閉じ後の可動盤を固定盤にさらに押圧する押圧手段を固定盤のタイバー挿通孔に設け、さらに(d)タイバーの可動盤側端部に形成した係合部と係合する第3係合手段をタイバーカバーの基底部及び先端部にそれぞれ出入可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン、射出成形機等の型締装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイカストマシンや射出成形機の型締装置は、固定金型を支持する固定盤と可動金型を支持する可動盤をベースプレート上に配置し、可動盤を挿通するタイバー(通常、4本)の端部を固定盤に固定し、可動盤をタイバーに沿って固定盤に対し進退動させて型開閉を行い、鋳造品や成形品を製造する構造となっている。
【0003】
上記型締装置を用いた鋳造(又は、ダイカスト)や射出成形においては、鋳造品や成形品の変更や、金型の摩耗等により、金型を交換する作業が必要となるが、交換作業時、タイバーの存在が金型交換作業の障害となることがあるので、作業の安全性や容易性を確保するため、通常、タイバーを、固定盤から可動盤側へ引き抜く構造を採用している(例えば、特許文献1〜5、参照)。
【0004】
図1に、従来の型締装置の一態様を示す(特許文献4、参照)。ベースプレート1上に、固定金型3を支持する固定盤2が固定され、また、可動金型5を支持する可動盤4が、スライドシュー6を介して、固定盤2に対して進退可能に配置されている。
【0005】
そして、固定盤2及び可動盤4の四隅に設けた挿通孔7、8を貫通するタイバー10の一方の端部が、第1固定装置11(ボックス14内に、ねじ部13に螺合する開閉可能の分割ナット15が配置されている)により、固定盤2に脱着可能に固定されている。また、タイバー10の中間部が、第2固定装置12(ボックス17内に、多条溝部16に系合する開閉可能の分割ナット装置18が配置されている)により、可動盤4に脱着可能に固定されている。
【0006】
可動盤4には、タイバー10の配置位置に対応して、油圧シリンダ20が搭載されている。そして、可動盤4の上部に搭載した上側油圧シリンダ20Aのロッド20aの先端は、連結部材21を介して、上側のタイバー10の他方の端部に連結され、また、可動盤4の下部に搭載した下側油圧シリンダ20B(スライドシュー6に一部収納されている)のロッド20bの先端は、連結部材21を介して、下側のタイバー10の他方の端部に連結されている。
【0007】
第1固定装置11によりタイバー10の固定を維持し、第2固定装置12によるタイバー10の固定を解除した状態で、油圧シリンダ20(上側油圧シリンダ20Aと下側油圧シリンダ20B)を伸縮動作させると、タイバー10は固定されているので、可動盤4が固定盤2に対して進退動して、型開閉を行うことができる。
【0008】
固定金型3及び可動金型5を交換する場合は、型開き状態において、第1固定装置11によるタイバー10の固定を解除し、続いて、上側油圧シリンダ20Aを最大限に伸張動作させる。下側油圧シリンダ20Bにより可動盤4の位置が固定されているので、上側油圧シリンダ20Aの上記動作により、上側のタイバー10が後退し、固定盤2と可動盤4の間の上部が開放されて作業空間が形成され、金型交換作業を支障なく行うことができる。
【0009】
このように、従来の型締装置は、金型交換時、タイバー10を可動盤の後方に引き抜く構造を採用しているので、型締装置を工場内に設置する際には、可動盤の後方に、充分な規模のタイバー退避用空間を設ける必要がある。
【0010】
しかし、タイバー退避用空間は、上述したように、金型の交換時にタイバーを退避させるためだけに用意する空間であり、型締装置が作動している間は、全く利用しない空間である。しかも、タイバーが退避した時、他の機器・装置等との衝突ないし接触によるタイバーの破損、損傷を避けなければならないので、タイバー退避用空間に、他の機器・装置類を配置することは避けなければならない。
【0011】
型締装置が大型化すれば、それに伴い、タイバー退避用空間も大きくしなければならないが、限られた配置空間の中で、金型交換時のみに使用するタイバー退避用空間を大きく取ることは、それ自体、配置空間の有効利用の点で好ましくない。また、限られた配置空間の中でタイバー退避用空間が大きければ、型締装置の制御に必要な種々の機器を配置する空間が必然的に狭くなり、種々の制御機器を狭い空間に過密に配置せざるを得ない状況を生み出し、作業環境を悪化するとともに、制御機器の保守・点検作業を難しくすることにもなる。
【0012】
例示した特許文献1〜5には、型締装置におけるタイバーの引抜き技術が開示されているが、いずれも、金型の交換時、タイバーを、固定盤側から可動盤側の後方へ引き抜く構造を前提構造として採用しているので、上記型締装置を工場内に設置する際には、可動盤の後方に、充分な規模のタイバー退避用空間を設ける必要があるものである。即ち、従来の型締装置の構造においては、配置空間の有効利用の観点から工夫・改善がなされていないのが現状である。
【0013】
【特許文献1】特開平8−72113号公報
【特許文献2】特開平9−57803号公報
【特許文献3】特開2000−52353号公報
【特許文献4】特開2005−144802号公報
【特許文献5】特開2006−880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記現状に鑑み、金型の交換時、タイバーを抜き取る際に、型締装置が大型化しても、大きなタイバー退避用空間や、大型の抜取り装置を必要とせず、かつ、抜取り操作を簡単かつ容易に行うことができる型締装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決する手段について鋭意検討した結果、タイバーを、従来の型締装置におけるタイバー引抜き方向とは逆の方向に、「可動盤から固定盤の後方(金型取付け面と反対の面側[以下「反金型取付け面側」ということがある])に押し出す」という着想の下に、この押出し(逆抜き)を簡単かつ容易に実現する手段を見出した。
【0016】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0017】
(1) 可動盤と固定盤にタイバー挿通孔を設けてタイバーを挿通し、可動盤を、タイバーに沿って固定盤に対し進退自在に配設した型締装置において、
(a)可動盤を固定盤に押圧して型閉した後、タイバーの可動盤側端部に形成した係合部に係合する第1係合手段、及び、タイバーを保護するタイバーカバーを、可動盤のタイバー挿通孔の両側に、それぞれ設け、
(b)タイバーの固定盤側端部に形成した係合部に係合する第2係合手段を、着脱係止手段を用いて、型締ピストンの端部に着脱可能に設け、
(c)タイバーと協働し、型閉じ後の可動盤を固定盤にさらに押圧する押圧手段を、固定盤のタイバー挿通孔に設け、さらに、
(d)タイバーの可動盤側端部に形成した係合部と係合する第3係合手段を、タイバーカバーの基底部及び先端部に、それぞれ出入可能に設けた
ことを特徴とするタイバー逆抜き型締装置。
【0018】
(2) 前記タイバーの可動盤側端部に形成した係合部が、条溝形成部であり、前記第1係合手段が分割ナット手段であることを特徴とする前記(1)に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0019】
(3) 前記押圧手段が流体シリンダ機構であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0020】
(4) 前記タイバーの固定盤側端部に形成した係合部が、螺旋溝形成部であり、前記第2係合手段が、固定ナット手段であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0021】
(5) 前記着脱係止手段が、押え板と押え板移動装置からなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0022】
(6) 前記押え板移動装置が、馬蹄型のライナー、ライナーガイド、及び、流体シリンダからなる駆動手段を備えていることを特徴とする前記(5)に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0023】
(7) 前記第3係合手段が、係合板と係合板挿入装置からなることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のタイバー逆抜き型締装置。
【0024】
(8) 前記第3係合手段が、馬蹄型のライナー、ライナーガイド、及び、流体シリンダからなる駆動手段を備えていることを特徴とする前記(7)に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、タイバーを、従来の型締装置とは逆に、可動盤から固定盤への方向(反金型取付け面側)に、簡単かつ容易に押し出すことができるので、配置空間の利用度を高めることができるとともに、金型交換作業を迅速かつ安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明について、図面に基づいて、説明する。
【0027】
図2に、本発明の型締装置(以下、単に「本発明」ということがある)の一態様を示す。なお、図1に示す型締装置と同じ構成部材については、図1に示す数字と同じ数字で示した。
【0028】
ベースプレート1の端部に、固定金型3を支持する固定盤2が固定され、また、ベースプレート1の上に、可動金型5を支持する可動盤4が、可動盤支持部材6aを介して、固定盤2に対して進退可能に配置されている。
【0029】
可動盤4の背面には、可動金型5から鋳造品又は成形品を取り出すための押出装置29が取り付けられ、また、可動盤4の下端部には、可動盤4を、可動盤支持部材6a上で、固定盤2に対して進退させて型開閉を行う型開閉装置24が取り付けられている。
【0030】
なお、図2は、金型を開いた状態の型締装置を示している。
【0031】
固定盤2には、固定金型3に接続する射出スリーブ30aが設けられていて、金型を閉じた状態で、射出装置30により、溶融金属を、射出スリーブ30aを経て金型内に圧入する。
【0032】
固定盤2及び可動盤4のそれぞれの四隅には、タイバー挿通孔7、8が形成されていて、該挿通孔7、8に、タイバー10が挿通されている。そして、可動盤3のタイバー挿通孔7、8には、タイバーカバー10aが接続され、また、下側のタイバー挿通孔8の外側には、タイバー10を支持するタイバーサポート10bが配置されている。
【0033】
上側のタイバー10においては、可動盤側の端部寄りに、また、下側のタイバー10においては、中間部に、タイバー挿通孔7、8に接続された分割ナット装置22(第1係合手段)の分割ナットと係合する係合部10x、10yが、それぞれ形成されている。この係合部10x、10yには、分割ナットと係合する条溝が形成されている。
【0034】
タイバー10の固定盤側の端部は、固定ナット装置23(第2係合手段)のナットと係合する螺旋溝が形成された係合部10zを備えている。
【0035】
固定盤2のタイバー挿通孔7、8には、ピストン27を内蔵し、油室28、29を備えた型締シリンダ25(押圧手段)が配置され、固定ナット装置23(第2係合手段)が、押え板移動装置33(押え板移動手段)と、押え板移動装置33の駆動により移動(図では、上下動)する押え板32からなる着脱係止手段により、上部の型締シリンダ25(押圧手段)のピストン27の端部に、着脱可能に接続されている。
【0036】
型閉じ後、パワーユニット31により油圧機構(図示なし)を制御して、油室28に油を送給しつつ、油室29から油を排出してピストン27を駆動する。このピストン27の駆動により、押え板32による押え反力でピストン27の端部に緊密に接続され、かつ、タイバー10の係合部10zに係合されている固定ナット装置23(第2係合手段)は、反金型取付け面側(図において右方向)の方向に押圧力を受けるので、型閉じ後の可動盤4は、固定盤2にさらに押圧されて、型閉じ動作に続き型締め動作が遂行される。
【0037】
押え板移動装置33(押え板移動手段)は、型締め時には、押え板32を、固定ナット装置23とピストン27の端部との接続を堅持する位置に保持し、また、タイバーの引抜き時には、押え板32を移動(図では、上方に持ち上げる)して、固定ナット装置23とピストン27の端部の接続を解除するように機能する。
【0038】
押え板移動装置33は、上記機能を実現するため、例えば、馬蹄型のライナー、ライナーガイド、及び、流体シリンダ等の機械的手段で構成することができるが、他の機械的手段で構成してもよく、また、電気的手段で構成してもよい。押え板移動装置33の上記機能を実現する手段は、特定の機械的手段又は電気的手段に限定されない。
【0039】
そして、図2に示す型締装置においては、タイバーカバー10aの基底部に、タイバー10の可動盤側端部に係合する係合板32aを、タイバーカバー10aを貫通して挿入する係合板挿入装置34aが取り付けられ、また、タイバーカバー10aの先端部に、同じく、タイバー10の可動側端部に係合する係合板32bを、タイバーカバー10aを貫通して挿入する係合板挿入装置34bが取り付けられている。
【0040】
即ち、図2に示す型締装置においては、係合板32a、32bのタイバー10の可動側端部への係合と、可動盤4の固定盤2に対する進退動との協働により、タイバー10を、固定盤2のタイバー挿通孔7から、従来の型締装置におけるタイバー引抜き方向とは逆の方向に、即ち、射出装置30を配置した側(反金型取付け面側)に押し出す構造を採用している。この点が、本発明の特徴である。
【0041】
このように、本発明においては、金型の交換時、タイバー引抜き用の油圧機構や、その他の引抜き装置を用いることなく、可動盤の固定盤に対する往復動のみで、タイバーを、従来の型締装置におけるタイバー引抜き方向とは逆の方向、即ち、反金型取付け面側に押し出して、可動盤と固定盤の上部に作業空間を形成する。
【0042】
ここで、タイバーの押出し操作の態様について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0043】
図3(a)に、分割ナット移動装置19を駆動して、分割ナット装置22をタイバー10の係合部10xへ係合させ、一方、タイバー10の固定盤側端部に係合した固定ナット装置23(第2係合手段)を、押え板32でシリンダ27に接続して、型締シリンダ25を駆動し、固定金型3と可動金型5を型締した状態を示す。
【0044】
型締装置の稼働中、係合板32a及び係合板32bは、それぞれ、係合板挿入装置34a及び係合板挿入装置34bにより、上方に引き上げられていて、鋳造作業には関与しないが、金型交換のため、タイバー10を押し出す際、及び、金型交換後、タイバー10を引き入れる際に、その機能を発揮する。
【0045】
図5に、係合板の一態様を示す。半円環状の係合板32a(32b)が、タイバー10の端部に形成された段部10cに係合して、可動盤の固定盤に対する往復動によるタイバー10の押出し及び引込みを可能にする。
【0046】
なお、タイバーの段部の形状・構造、及び、該段部に係合する係合板の形状・構造は、タイバーの押出し及び引込みを可能にする適切な係合状態を維持できる形状・構造であればよく、特定の形状・構造に限定されるものではない。
【0047】
以下、図3(a)に示す型締め状態から、タイバーを反金型取付け面側に押し出す操作について、説明する。
【0048】
図3(b)に、分割ナット移動装置19を駆動して、分割ナット装置22によるタイバー10の係合部10xへの係合を解除し、可動盤4を固定盤2から引き離し、金型を開いた状態を示す。この時、可動盤4は、係合板32aをタイバー10の端部に形成した段部(図5、参照)に挿入できる位置まで、後退させる(図中、左向き矢印、参照)。金型を交換するため、この状態からタイバーを、反金型取付け面側に押し出す操作を開始する。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、固定盤側において、押え板移動装置33を駆動して、押え板32を引き上げ、タイバー10の端部を把持している固定ナット装置23(第2係合手段)とピストン27の接続を解除するとともに、係合板移動装置34aを駆動して、係合板32aをタイバー10の端部の段部に挿入する(図中、上向き矢印と下向き矢印、参照)。
【0050】
次に、図3(d)に示すように、可動盤4を、可動金型5が固定金型3に接触するまで、前進させる(図中、右向き矢印、参照)。タイバー10は、固定ナット装置23(第2係合手段)とピストン27の接続の接続が解除されているので、可動盤4の前進に従い、固定盤2のタイバー挿通孔7を貫通し、反金型取付け面側に押し出される。
【0051】
図3(d)に示すように、一回目の押し出しでは、可動金型と固定金型を合わせた分のタイバーが、可動盤4と固定盤2の間に残存することになるので、二回目の押し出しを行い、残存する部分を、さらに、反金型取付け面側に押し出す。
【0052】
図4(e)に示すように、係合板移動装置34aを駆動して、係合板32aをタイバー10の段部から引き上げて、可動盤4を後退させる。可動盤4の後退時、タイバー10は、その位置に留まるので、可動盤4を、係合板移動装置34bを駆動して、係合板32bをタイバー10の段部に挿入できる位置まで、後退させる(図中、左向き矢印、参照)。
【0053】
次に、図4(f)に示すように、係合板移動装置34bを駆動して、係合板32bを、タイバー10の段部に挿入する(図中、下向き矢印、参照)。挿入後、図4(g)に示すように、可動盤4を、再度、固定盤2に接触するまで前進させる(図中、右向き矢印、参照)。
【0054】
この可動盤4の前進により、図4(g)に示すように、タイバーカバー10aの長さ分、タイバー10を、固定盤2のタイバー挿入孔7から、反金型取付け面側に押し出すことができる。
【0055】
そして、タイバーの押出し終了後、図4(h)に示すように、係合板移動装置34bを駆動して、係合板32bを、タイバー10の段部から引き上げて、可動盤4を後退させ、可動盤4と固定盤2の間に、金型交換作業に充分な作業空間を形成する(図中、左向き矢印、参照)。
【0056】
このように、本発明においては、タイバーを、反金型取付け面側、即ち、装置・機器類が設置されている側に押し出すので、型締装置を、工場内に配置する場合、従来の型締装置を設置する場合と異なり、可動盤の後方空間に、タイバー退避用空間を設ける必要がない。
【0057】
本発明を適用すれば、型締装置の可動盤後方の空間を、何らかの用途に有効に活用することができる。当然のことながら、上記空間に、交換用又は交換済みの金型や、金型交換用に機器類を置いてもよい。
【0058】
また、図3及び図4に示すように、本発明においては、金型交換時、係合板移動装置と可動盤の連携駆動により、タイバーを迅速に反金型取付け面側へ押し出すことができる。
【0059】
このように、本発明においては、迅速なタイバー押出しにより、固定盤と可動盤の間の上部を直ちに広く開放して、金型交換作業を支障なく行うことができることは勿論のこと、可動盤に近接して、交換用又は交換済みの金型や、金型交換用の機器類を置くことができるので、金型交換作業を迅速かつ安全に行うことができる。
【0060】
以上、本発明におけるタイバーの押出し操作の態様について説明したが、金型交換作業の終了後は、タイバーの押出し操作と逆の操作を行い、タイバーを可動盤と固定盤のタイバー挿入孔に引き入れる。
【0061】
本発明の型締装置においては、タイバーの押出し・引入れ操作を、周辺機器を含めた型締装置が占める空間の中で迅速に行うことができるので、タイバーの押出し・引入れ操作の安全を確保しつつ、金型交換作業の迅速化と安全を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
前述したように、本発明においては、タイバーを、従来の型締装置とは逆に、可動盤から固定盤への方向(反金型取付け面側)に、簡単かつ容易に押し出すことができるので、配置空間の利用度を高めることができるとともに、金型交換作業を迅速かつ安全に行うことができる。したがって、本発明は、新規に設置するダイカストマシンや、射出成形機等の型締装置に採用される可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の型締装置の一態様を示す図である。
【図2】本発明の型締装置の一態様を示す図である。
【図3】本発明の型締装置においてタイバーを押し出す操作の態様を示す図である。(a)は、固定金型と可動金型を型締した状態を示す。(b)は、金型を開いた状態を示す。(c)は、タイバーを把持した固定ナット装置とピストンの接続を解除するとともに、係合板をタイバーの段部に挿入した状態を示す。(d)は、可動金型を、固定金型に接触するまで前進させた状態を示す。
【図4】図3(a)〜(d)に示す態様に続き、タイバーを押し出す操作の態様を示す図である。(e)は、係合板をタイバーの段部に挿入できる位置まで、可動盤を後退させた状態を示す。(f)は、係合板を、タイバーの段部に挿入した状態を示す。(g)は、可動盤を、再度、固定盤2に接触するまで前進させた状態を示す。(h)は、可動盤と固定盤の間に、金型交換作業に充分な作業空間を形成した状態を示す。
【図5】タイバーの段部と係合板の一係合態様を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ベースプレート
2 固定盤
3 固定金型
4 可動盤
5 可動金型
6 スライドシュー
6a 可動盤支持部材
7、8 タイバー挿通孔
10 タイバー
10a タイバーカバー
10b タイバーサポート
10c 段部
10x、10y、10z 係合部
11 第1固定装置
12 第2固定装置
13 ねじ部
14、17 ボックス
15、18、22 分割ナット装置
16 多条溝部
19 分割ナット移動装置
20 油圧シリンダ
20A 上側油圧シリンダ
20B 下側油圧シリンダ
20a、20b ロッド
21 連結部材
23 固定ナット
24 型開閉装置
25 型締シリンダ
26 シリンダ部
27 ピストン
28、29 油室
29 押出装置
30 射出装置
30a 射出スリーブ
31 パワーユニット
32 押え板
32a、32b 係合板
33 押え板移動装置
34a、34b 係合板移動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動盤と固定盤にタイバー挿通孔を設けてタイバーを挿通し、可動盤を、タイバーに沿って固定盤に対し進退自在に配設した型締装置において、
(a)可動盤を固定盤に押圧して型閉した後、タイバーの可動盤側端部に形成した係合部に係合する第1係合手段、及び、タイバーを保護するタイバーカバーを、可動盤のタイバー挿通孔の両側に、それぞれ設け、
(b)タイバーの固定盤側端部に形成した係合部に係合する第2係合手段を、着脱係止手段を用いて、型締ピストンの端部に着脱可能に設け、
(c)タイバーと協働し、型閉じ後の可動盤を固定盤にさらに押圧する押圧手段を、固定盤のタイバー挿通孔に設け、さらに、
(d)タイバーの可動盤側端部に形成した係合部と係合する第3係合手段を、タイバーカバーの基底部及び先端部に、それぞれ出入可能に設けた
ことを特徴とするタイバー逆抜き型締装置。
【請求項2】
前記タイバーの可動盤側端部に形成した係合部が、条溝形成部であり、前記第1係合手段が分割ナット手段であることを特徴とする請求項1に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項3】
前記押圧手段が流体シリンダ機構であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項4】
前記タイバーの固定盤側端部に形成した係合部が、螺旋溝形成部であり、前記第2係合手段が、固定ナット手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項5】
前記着脱係止手段が、押え板と押え板移動装置からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項6】
前記押え板移動装置が、馬蹄型のライナー、ライナーガイド、及び、流体シリンダからなる駆動手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項7】
前記第3係合手段が、係合板と係合板挿入装置からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイバー逆抜き型締装置。
【請求項8】
前記第3係合手段が、馬蹄型のライナー、ライナーガイド、及び、流体シリンダからなる駆動手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載のタイバー逆抜き型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−331332(P2007−331332A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168662(P2006−168662)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】