説明

タイヤコードのエンズ測定装置及びこれを用いたエンズ測定方法

【課題】タイヤコードのエンズを容易に測定しうる測定装置32の提供。
【解決手段】このエンズ測定装置32は、多数の、有機繊維からなるコードを含む構成部材を備えるタイヤにおいて、この構成部材の単位幅あたりに含まれるコードの本数を測定しうる。この測定装置32は、照明92と、カメラ94と、コントローラー104とを備えている。この照明92は、半球状の反射面と、この反射面に向かって光を照射しうる光源とを備えている。このカメラ94は、この反射面の中心に位置している。このタイヤを切断して形成されたサンプル122の、上記構成部材を含む切断面Sは、この反射面で反射した光で照らされる。このカメラ94は、この切断面Sの白黒の画像を撮影する。このコントローラー104は、この画像を2値化し、この画像に含まれるコードの本数を測定しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤコードのエンズ測定装置及びこれを用いたエンズの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、一対のビードと、両ビードに架け渡されたカーカスとを備えている。このカーカスは、カーカスプライからなる。カーカスプライは、並列された多数のコードと、トッピングゴムとからなる。各コードは、トッピングゴムで覆われている。このコードは、タイヤコードとも称される。
【0003】
コードが赤道面に対してなす角度(以下、傾斜角度)及びカーカスプライの単位幅当たりに含まれるコードの本数(以下、エンズ)は、タイヤの性能に影響する。このため、製造されたタイヤを用いて、傾斜角度及びエンズを測定することがある。
【0004】
コードは、タイヤの内部に埋設されている。このため、傾斜角度及びエンズの測定に際して、タイヤは解体される。この解体作業は、手間である。しかも、カーカスプライには多数のコードが含まれているので、これらコードの本数を目視で数えるのは容易ではない。
【0005】
測定容易の観点から、傾斜角度又はエンズを測定しうる装置について様々な検討がなされている。この検討の一例が、特開平8−159750号公報に開示されている。この測定装置では、スチールコードに電流を通すことにより、このスチールコードの傾斜角度及びエンズが測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−159750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーカスに、有機繊維からなるコード(以下、繊維コード)が用いられることがある。繊維コードに電流を通すことはできないので、上記公報に記載の測定装置を用いても、繊維コードのエンズを測定することはできない。
【0008】
スチールコードを含むカーカスを有するタイヤでは、X線撮影装置又はCTを用いてエンズを測定することができる。一方、繊維コードを含むカーカスを有するタイヤでは、X線が繊維コードを透過するため、このX線撮影装置又はCTを用いてもエンズを測定することはできない。
【0009】
繊維コードのエンズを測定するためには、作業者が、タイヤを解体し目視でその本数を数える以外に方法がないのが現状である。作業者の目視による作業には、手間がかかる。さらに、目視でエンズを高精度に測定するのは困難である。
【0010】
本発明の目的は、コードのエンズを容易に測定しうる測定装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るタイヤコードのエンズ測定装置は、有機繊維からなるコードを多数含む構成部材を備えるタイヤにおいて、この構成部材の単位幅あたりに含まれるコードの本数を測定しうる。この測定装置は、照明と、カメラと、コントローラーとを備えている。この照明は、半球状の反射面と、この反射面に向かって光を照射しうる光源とを備えている。このカメラは、この反射面の中心に位置している。このタイヤを切断して形成されたサンプルの、上記構成部材を含む切断面は、この反射面で反射した光で照らされる。このカメラは、この切断面の白黒の画像を撮影する。このコントローラーは、この画像を2値化し、この画像に含まれるコードの本数を測定しうる。
【0012】
好ましくは、このエンズ測定装置では、上記カメラと上記サンプルとの間の距離は25mm以上である。
【0013】
本発明に係るタイヤコードのエンズ測定方法は、
(1)多数の、有機繊維からなるコードを含む構成部材を備えるタイヤが、ステージにセットされる工程と、
(2)このタイヤを回転させつつ、この構成部材を含む切断面を有するサンプルがカッターを用いて形成される工程と、
(3)このタイヤを取り外し、このサンプルがこのステージにセットされる工程と、
(4)このサンプルを回転させつつ、照明とカメラとコントローラーとを備えており、この照明が半球状の反射面とこの反射面に向かって光を照射しうる光源とを備えており、このカメラがこの反射面の中心に位置しており、このサンプルの、上記切断面がこの反射面で反射した光で照らされ、このカメラがこの切断面の白黒の画像を撮影し、このコントローラーがこの画像を2値化することによりこの画像に含まれるコードの本数が測定されうる測定装置を用いて、この構成部材の単位幅あたりに含まれるコードの本数が測定される工程と
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエンズ測定装置は、有機繊維であるコードのエンズを容易に測定しうる。このエンズ測定装置は、生産性の向上に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るエンズ測定方法に供試されるタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、エンズ測定方法に使用される測定装置が示された模式図である。
【図3】図3は、図2の測定装置の一部が示された正面図である。
【図4】図4は、図3の平面図である。
【図5】図5は、図2の測定装置を構成する撮影部が示された概略図である。
【図6】図6は、エンズの測定方法が示されたフロー図である。
【図7】図7は、ステージのプレートがスライドされた状況が示された平面図である。
【図8】図8は、サンプルの形成状況が示された正面図である。
【図9】図9は、サンプルの切断面が示された模式図である。
【図10】図10は、エンズの測定状況が示された正面図である。
【図11】図11は、カメラで撮影された画像の一部が示された模式図である。
【図12】図12は、2値化処理された画像の一部が示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態に係るエンズ測定方法に供試されるタイヤ2の一部が示されている。このタイヤ2は、一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。このタイヤ2は、構成部材として、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、インナーライナー16及びチェーファー18を備えている。なお、図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。
【0018】
トレッド4は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド4の外面が、路面と接地するトレッド面20である。
【0019】
サイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0020】
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。ビード8は、コア22と、このコア22から半径方向外向きに延びるエイペックス24とを備えている。コア22は、リング状である。コア22は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。エイペックス24は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス24は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0021】
カーカス10は、カーカスプライ26からなる。カーカスプライ26は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。カーカスプライ26は、コア22の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。
【0022】
図示されていないが、カーカスプライ26は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、そのサイドウォール6の部分において、コードは略半径方向に延在している。コードは、有機繊維からなる。この有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0023】
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10と積層されている。ベルト12は、内側層28及び外側層30からなる。図示されていないが、内側層28及び外側層30のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、10°以上35°以下である。内側層28のコードの傾斜方向は、外側層30のコードの傾斜方向とは逆である。コードは、有機繊維からなる。この有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0024】
バンド14は、ベルト12を覆っている。図示されていないが、このバンド14は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド14は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、有機繊維からなる。有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0025】
インナーライナー16は、カーカス10の内周面に接合されている。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。
【0026】
本明細書では、図1に示されたタイヤ2のカーカスプライ26に含まれるコードのエンズ測定方法が示される。なお、この測定方法がベルト12を構成する内側層28又は外側層30に適用されてもよい。この測定方法が、バンド14に適用されてもよい。この測定方法は、有機繊維からなるコードを含む様々な構成部材に適用されうる。なお、カーカスプライ26、ベルト12及びバンド14のような構成部材の単位幅当たりに含まれるコードの本数は、エンズと称される。なお、この単位幅は通常50mmとされる。カーカス10に含まれるコード、ベルト12に含まれるコード及びバンド14に含まれるコードは、タイヤコードとも称される。
【0027】
本発明のエンズ測定方法では、図2に示されたエンズ測定装置32が用いられる。この測定装置32は、スタンド34と、カッター36と、撮影部38と、処理部40と、制御部42とを備えている。
【0028】
図3は、図2の測定装置32を構成するスタンド34が示された正面図である。図4は、図3の平面図である。図3及び図4には、スタンド34にセットされたタイヤ2が二点鎖線で示されている。なお、図4では、カッター36及び撮影部38の図示は省略されている。
【0029】
スタンド34は、テーブル44と、回転部材46と、保持部材48とを備えている。回転部材46は、モーター50と、軸受け52と、シャフト54とを備えている。モーター50は、テーブル44に固定されている。このモーター50は、市販のサーボモーターである。このモーター50としては、キーエンス社製の商品名「MV−M75」が例示される。このモーター50は、回転角の変化分に対するパルスを出力しうるように構成されている。軸受け52は、テーブル44に固定されている。この軸受け52には、シャフト54が挿通されている。モーター50及びシャフト54のそれぞれには、プーリー56が設けられている。両プーリー56は、ベルト58で連結されている。この回転部材46は、モーター50の作動により、シャフト54が回転するように構成されている。
【0030】
保持部材48は、ステージ60と、スライド部材62と、センタープレート64と、連結バー66とを備えている。ステージ60は、2本のバー68からなる。これらバー68は、交差している。スライド部材62は、ステージ60の端の部分に設けられている。スライド部材62は、レール70、ガイド72、メインプレート74及びストッパー76を備えている。レール70は、ステージ60に固定されている。ガイド72は、このレール70にスライド自在に嵌め込まれている。メインプレート74は、ガイド72の上面に固定されている。ストッパー76は、丸棒状である。ストッパー76は、メインプレート74の上面に固定されている。ストッパー76は、メインプレート74から上向きに延在している。センタープレート64は、ステージ60の中心に位置している。センタープレート64は、回動自在にステージ60に取り付けられている。連結バー66は、メインプレート74とセンタープレート64とを連結している。連結バー66の一端は、回動自在にメインプレート74にピン78で固定されている。連結バー66の他端は、回動自在にセンタープレート64にピン78で固定されている。
【0031】
このスタンド34は、センタープレート64が回転すると、メインプレート74が半径方向にスライドしうるように構成されている。図3及び図4には、メインプレート74が半径方向外向きにスライドした状態が示されている。
【0032】
このスタンド34では、回転部材46のシャフト54は保持部材48のステージ60に固定されている。モーター50の作動により、保持部材48はシャフト54を中心に回転しうる。この回転により、スタンド34にセットされたタイヤ2が回転する。図4中、矢印Aで示されているのはタイヤ2の回転方向である。
【0033】
カッター36は、ブレード80と、このブレード80を支持する支持バー82とを備えている。カッター36は、タイヤ2を切断しうる。この切断により、後述する、コードのエンズを測定するためのサンプルが形成される。
【0034】
図3に示されているように、カッター36は、第一アジャスター84aを介してスタンド34に設けられた第一支柱86aに取り付けられている。この第一アジャスター84aは、コネクター88aと、バー90aとを備えている。コネクター88aには、カッター36が固定される。コネクター88は、バー90aに回動自在に取り付けられている。このコネクター88aの回動により、ブレード80の、切断対象としてのタイヤ2に対する角度が調節される。バー90aは、第一支柱86aに対して左右方向にスライドしうるように取り付けられている。このスライドにより、ブレード80の左右方向における位置が調節される。このバー90aは、第一支柱86aに対して上下方向にスライドしうるように取り付けられている。このスライドにより、ブレード80の上下方向における位置が調節される。
【0035】
図5は、撮影部38が示された概略図である。撮影部38は、照明92と、カメラ94とを備えている。照明92は、笠96と、プレート98と、多数の光源100とを備えている。笠96は、碗状である。笠96は、その内側に反射面102を備えている。この反射面102は、半球状である。プレート98は、笠96の縁から内向きに突出している。プレート98は、リング状を呈している。光源100は、一定の間隔を空けてこのプレート98に配置されている。各光源100は、反射面102に向かって光を照射しうるようにこのプレート98に取り付けられている。この光源100は、発光ダイオードである。
【0036】
カメラ94は、反射面102の中心に位置している。カメラ94は、市販の電荷結合素子画像センサーである。このカメラ94の画素数は、200万である。カメラ94としては、キーエンス社製の「CV−5500」が例示される。カメラ94は、白黒の画像を撮影しうる。この測定装置32では、このカメラ94に照明92が固定されている。
【0037】
図3に示されているように、撮影部38は第二アジャスター84bを介してスタンド34に設けられた第二支柱86bに取り付けられている。この第二アジャスター84bは、コネクター88bと、バー90bとを備えている。コネクター88bには、撮影部38の一部をなすカメラ94が固定される。コネクター88bは、バー90bに回動自在に取り付けられている。このコネクター88bの回動により、カメラ94及び照明92の、撮影対象に対する角度が調節される。バー90bは、第二支柱86bに対して左右方向にスライドしうるように取り付けられている。このスライドにより、撮影部38の左右方向における位置が調節される。このバー90bは、第二支柱86bに対して上下方向にスライドしうるように取り付けられている。このスライドにより、撮影部38の上下方向における位置が調節される。
【0038】
処理部40は、コントローラー104と、モニター106と、パーソナルコンピュータ108とを備えている。コントローラー104は、モニター106、パーソナルコンピュータ108及び前述の撮影部38のそれぞれと接続されている。コントローラー104には、カメラ94で撮影された画像が入力される。コントローラー104は、画像処理を実行しうる。このコントローラー104は、市販の画像処理装置である。このコントローラー104としては、キーエンス社製の「CV−5500」が例示される。モニター106には、コントローラー104に入力された画像が映し出される。パーソナルコンピュータ108は、コントローラー104と通信回線としてのイーサーネット110で繋げられている。このパーソナルコンピュータ108には、コントローラー104で実行された画像処理の結果が数値データとして送信される。パーソナルコンピュータ108は、この数値データに基づいてグラフ等を作成する。
【0039】
制御部42は、位置決めユニット112と、シーケンサ114と、タッチパネル116とを備えている。位置決めユニット112は、モーター50と接続されている。位置決めユニット112は、モーター50の回転を制御しうる。位置決めユニット112には、市販の製品が使用される。この位置決めユニット112としては、三菱電機社製の「QD75MH」が例示される。シーケンサ114は、前述のコントローラー104、位置決めユニット112及びタッチパネル116のそれぞれと接続されている。シーケンサ114は、コントローラー104の動作及び位置決めユニット112の動作を制御しうる。この制御の条件は、タッチパネル116を通じてシーケンサ114に入力される。シーケンサ114には、市販の製品が使用される。このシーケンサ114としては、三菱電機社製の「PLC Q−CPU」が例示される。なお、シーケンサ114とコントローラー104とは、RS232Cケーブル118で繋げられている。
【0040】
図6には、図1に示されたタイヤ2のカーカスプライ26に含まれるコードのエンズの測定方法のフロー図が示されている。図示されているように、この測定方法は、
(1)タイヤ2がメインプレート74にセットされる工程(STEP1)、
(2)タイヤ2を回転させつつ、カーカスプライ26を含む切断面を有するサンプルがカッター36を用いて形成される工程(STEP2)、
(3)ステージ60からタイヤ2を取り外し、サンプルがメインプレート74にセットされる工程(STEP3)
及び
(4)図2に示された測定装置32を用いてカーカスプライ26のエンズが自動測定される工程
を含んでいる。
【0041】
タイヤ2のセット工程(STEP1)において、タイヤ2はその側面を下にしてスタンド34の一部を構成する保持部材48のメインプレート74に載置される。図7には、タイヤ2がセットされる前のスタンド34の状態が示されている。図示されているように、メインプレート74が半径方向内向きにスライドし、このメインプレート74に設けられたストッパー76の位置がタイヤ2の内縁120から離されている。このため、タイヤ2をメインプレート74に載置するとき、ストッパー76がタイヤ2に接触することはない。
【0042】
このセット工程(STEP1)では、タイヤ2をメインプレート74に載せた後、センタープレート64が動かされる。メインプレート74が半径方向外向きにスライドし、ストッパー76がタイヤ2の内縁120に当接する。この当接により、タイヤ2がメインプレート74にセットされる。
【0043】
この測定装置32では、その保持部材48は4のスライド部材62を備えている。各スライド部材62は、2のストッパー76を備えている。換言すれば、この保持部材48は、8のストッパー76を備えている。各スライド部材62のメインプレート74が半径方向外向きにスライドすることにより、これらストッパー76のそれぞれがタイヤ2の内縁120に当接する(図4参照)。当接状態において、これらストッパー76は同一円周上に所定の間隔を開けて配置されている。これらストッパー76は、メインプレート74にセットされたタイヤ2の位置ずれを効果的に防止しうる。
【0044】
サンプルの形成工程(STEP2)では、カッター36が準備される。第一アジャスター84aを調整して、カッター36の位置が調節される。この測定方法では、ブレード80の角度及びブレード80の左右方向における位置が調節された後、モーター50が作動され、タイヤ2の回転が開始される。図8に示されているように、カッター36が下降され、タイヤ2を回転させつつタイヤ2が切断される。図8中、矢印Bで示されているのはカッター36の下降方向である。図示されているように、この測定方法では、タイヤ2のサイドウォール6の半径方向外側の部分がカッター36で切断される。この切断により、サンプルが形成される。
【0045】
図8において、一点鎖線LRはシャフト54の回転軸を表している。この測定方法では、タイヤ2は、その中心線とシャフト54の回転軸とが一致するようにメインプレート74にセットされる。したがって、この一点鎖線LRはこのタイヤ2の中心線でもある。このタイヤ2は、中心線からブレード80までの距離が一定に保持されて、切断される。このため、この形成工程(STEP3)で形成されたサンプルは、リング状である。このサンプルの外縁は、円形を呈している。
【0046】
図9には、タイヤ2を切断して形成されたサンプル122の切断面Sが示されている。この切断面Sには、カーカスプライ26に含まれるコード124が多数含まれている。これらコード124は、この切断面Sにおいて所定の間隔を空けて一列に配置されている。前述したように、この測定方法では、タイヤ2のサイドウォール6の部分がカッター36で切断される。このタイヤ2のカーカス10はラジアル構造を有しているので、このサイドウォール6の部分に含まれるコード124は略半径方向に延在している。カッター36は周方向に沿ってタイヤ2を切断していくので、このコード124はその延在方向に対して垂直に切断される。このサンプル122の切断面Sは、コード124の延在方向に対して垂直な面で構成されている。なお、この図9において、カーカスプライ26のコード124以外の部分はトッピングゴム126である。
【0047】
サンプル122のセット工程(STEP3)では、サンプル122はタイヤ2の内面に相当する面を下にしてメインプレート74に載置される。このサンプル122は、前述のタイヤ2のセット工程(STEP1)と同様にして、メインプレート74にセットされる。図10には、サンプル122がメインプレート74にセットされた状態が示されている。図示されているように、半径方向外向きにメインプレート74がスライドすることにより、ストッパー76がサンプル122の内縁128(タイヤ2の内縁120に相当する部分)に当接する。ストッパー76は、メインプレート74にセットされたサンプル122の位置ずれを効果的に防止しうる。このようにして、サンプル122はメインプレート74に安定に保持される。
【0048】
サンプル122をメインプレート74にセットした後、第二アジャスター84bを調整して、撮影部38を構成するカメラ94及び照明92の位置が調節される。この調節は、モニター106に映し出される画像を確認しながら実行される。この調節とともに、画像のコントラスト等も調整される。
【0049】
画像の調整後、タッチパネル116を用いて、シーケンサ114に制御条件が入力される。制御条件としては、サンプル122の外径及び測定ピッチが挙げられる。この制御条件及びモーター50からフィードバックされるパルス数に基づいて、シーケンサ114は測定ピッチパルス数を算出する。シーケンサ114は、測定ピッチパルス数に応じた回転をモーター50に指令する。シーケンサ114は、測定ピッチパルス数毎に、画像の撮影をカメラ94に指令する。
【0050】
自動測定工程(STEP4)は、シーケンサ114を通じて入力される測定開始の指令に基づいて開始される。シーケンサ114は、画像の撮影を指示するトリガをコントローラー104に出力する(STEP4A)。このトリガが入力されたコントローラー104は、カメラ94に撮影を指令する(STEP4B)。カメラ94が、切断面Sの画像を撮影する(STEP4C)。撮影終了後、シーケンサ114は測定ピッチパルス数に応じた回転を位置決めユニット112を通じてモーター50に指令する(STEP4D)。モーター50の回転により、サンプル122が回転し次の撮影の対象となる切断面Sがカメラ94の前に配置される(STEP4E)。サンプル122が1回転するまで、このSTEP4AからSTEP4Eが繰り返される。サンプル122が1回転した時点で測定は終了し、サンプル122がメインプレート74から取り外される。このように、この測定装置32は、シーケンサ114の指令に基づいてコード124のエンズを自動で測定するように構成されている。
【0051】
前述したように、コントローラー104にはカメラ94で撮影された画像が入力される。図11には、カメラ94で撮影されモニター106に映し出された画像130の一部が模式的に示されている。図示されているように、この画像130には多数のコード124が含まれる。これらコード124は、所定の間隔を空けて一列に並んでいる。図示されていないが、この画像130は白黒である。コード124は、それ以外の部分よりも白く映し出される。
【0052】
コントローラー104は、入力された画像130を2値化する。図12には、図11の画像130をコントローラー104で2値化処理したものが模式的に示されている。図12中、Tで示されているのが2値化処理された領域である。このT領域において、上下方向に延びる白抜きの直線は、コントローラー104がこの処理においてコード124を検出した位置を表している。両矢印Dは、左側の検出位置から右側の検出位置までの距離を表している。コントローラー104は、この距離Dを測定するとともに、この距離Dで示された範囲にあるコード124の本数を測定する。このコントローラー104で測定された、距離D及びこの距離Dで示された範囲にあるコード124の本数は、イーサーネット110を通じてパーソナルコンピュータ108に送信される。パーソナルコンピュータ108において、距離D及びコード124の本数に基づいて、エンズが算出される。この算出されたエンズ、距離D及びコード124の本数が、このパーソナルコンピュータ108においてグラフ化され、モニター106に表示される。
【0053】
この測定方法では、距離D、この距離Dで示された範囲にあるコード124の本数、エンズ等のデータはパーソナルコンピュータ108及びシーケンサ114に自動保存される。前述したように、サンプル122が1回転するまで、この自動測定工程(STEP4)を構成する、STEP4AからSTEP4Eまでの工程が複数回実施される。この測定方法では、タイヤ2の周方向におけるエンズの分布が得られうる。この測定方法は、タイヤ2の特異な部分を容易に検出しうる。この測定方法は、高品質なタイヤ2の生産に寄与しうる。
【0054】
この測定方法では、作業者がタイヤ2を測定装置32にセットし、カッター36の位置を調整すれば、サンプル122が形成される。このサンプル122の形成は、容易である。この測定方法は、作業者の負担を軽減しうる。この測定方法は、生産性の向上に寄与しうる。
【0055】
この測定方法では、作業者がサンプル122を測定装置32にセットし、カメラ94及び照明92の位置を調整した後、測定開始の指令を出せば、エンズが自動で測定される。このエンズの測定は、容易である。この測定方法は、作業者の負担を軽減しうる。この測定方法は、生産性の向上に寄与しうる。
【0056】
この測定方法では、シーケンス制御によりエンズは自動で測定される。この測定方法によるエンズの測定時間は、作業員の目視によるエンズの測定時間よりもはるかに短い。この測定方法は、生産性の向上に寄与しうる。
【0057】
前述したように、この測定方法では、カメラ94で撮影された画像130が2値化処理される。この2値化処理は、コード124の検出精度に寄与しうる。この測定方法では、白黒の画像130が用いられる。この白黒の画像130は、2値化処理の精度に寄与しうる。この測定方法では、コード124の断面とそれ以外の部分とが確実に識別されうる。この測定方法によるコード124のエンズの測定誤差は、作業員が目視で計測した場合のそれよりも小さい。この測定方法により得られるエンズは、作業員が目視で計測した場合のそれよりも正確である。
【0058】
この測定装置32では、光源100から放たれた光は、ドーム状の反射面102を反射して、切断面Sを照らす。この切断面Sには、間接光が照射される。この光は、まんべんなく切断面Sを照らす。この照明92は、撮影時のハレーションを効果的に防止しうる。この測定装置32は、コード124とそれ以外の部分とが確実に識別されうる。この測定方法によるコード124のエンズの測定誤差は、作業員が目視で計測した場合のそれよりも小さい。この測定方法により得られるエンズは、作業員が目視で計測した場合のそれよりも正確である。
【0059】
図5において、両矢印LAはサンプル122から照明92までの距離を表している。この距離LAは、サンプル122の切断面Sから照明92のサンプル122側の端132までの長さを計測することにより得られる。両矢印LBはこのサンプル122からカメラ94までの距離を表している。この距離LBは、サンプル122の切断面Sからカメラ94の先端134までの距離を計測することにより得られる。鮮明な白黒の画像130を撮影しうるという観点から、この距離LAは25mm以上が好ましく、50mm以下が好ましい。同様の観点から、この距離LDは10mm以上が好ましく、30mm以下が好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0061】
[実施例1]
図2に示された構成を有する測定装置のメインテーブルに、図1に示された構成を有するタイヤをセットした。このタイヤのカーカスは、ラジアル構造を有する。このカーカスは、ポリエステル繊維からなるコードを多数含むカーカスプライからなる。このタイヤを回転させつつ、カッターを用いてこのタイヤをサイドウォールの部分で切断し、リング状のサンプルを形成した。このサンプルの切断面は、カーカスプライのコードを含んでいる。ステージからタイヤを取り外し、このサンプルをステージにセットした。測定装置を用いて、カーカスプライに含まれるコードのエンズを自動測定した。なお、距離LAは10mmとされた。距離LBは、25mmとされた。
【0062】
[比較例1]
実施例1と同様にして形成したサンプルを用いて、作業員が目視でカーカスプライに含まれるコードのエンズを測定した。
【0063】
[所要時間の評価]
サンプルを1回転させて、周方向において80箇所、エンズを測定し、測定が完了するまでの時間(所要時間)を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1に示されている。この数値が小さいほど、所要時間が小さいことを表している。
【0064】
[測定値の安定性評価]
上記所要時間の評価で得たエンズの測定値の分布を評価した。80箇所全てにおいて、同じ測定値が確認された場合が「G」で、異なる測定値が1箇所以上確認された場合が「B」で示されている。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示されるように、実施例の測定方法では、比較例の測定方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明された方法は、様々なタイヤの構成部材に含まれるコードのエンズの測定も適用されうる。
【符号の説明】
【0068】
2・・・タイヤ
10・・・カーカス
26・・・カーカスプライ
32・・・測定装置
34・・・スタンド
36・・・カッター
38・・・撮影部
40・・・処理部
42・・・制御部
46・・・回転部材
48・・・保持部材
62・・・スライド部材
64・・・センタープレート
74・・・メインプレート
76・・・ストッパー
92・・・照明
94・・・カメラ
100・・・光源
102・・・反射面
104・・・コントローラー
106・・・モニター
108・・・パーソナルコンピュータ
112・・・位置決めユニット
114・・・シーケンサ
116・・・タッチパネル
122・・・サンプル
130・・・画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維からなるコードを多数含む構成部材を備えるタイヤにおいて、この構成部材の単位幅あたりに含まれるコードの本数を測定しうる装置であって、
照明と、カメラと、コントローラーとを備えており、
この照明が、半球状の反射面と、この反射面に向かって光を照射しうる光源とを備えており、
このカメラが、この反射面の中心に位置しており、
このタイヤを切断して形成されたサンプルの、上記構成部材を含む切断面が、この反射面で反射した光で照らされ、
このカメラが、この切断面の白黒の画像を撮影し、
このコントローラーが、この画像を2値化し、この画像に含まれるコードの本数を測定しうるタイヤコードのエンズ測定装置。
【請求項2】
上記カメラと上記サンプルとの間の距離が、25mm以上である請求項1に記載のタイヤコードのエンズ測定装置。
【請求項3】
有機繊維からなるコードを多数含む構成部材を備えるタイヤが、ステージにセットされる工程と、
このタイヤを回転させつつ、この構成部材を含む切断面を有するサンプルがカッターを用いて形成される工程と、
このタイヤを取り外し、このサンプルがこのステージにセットされる工程と、
このサンプルを回転させつつ、照明とカメラとコントローラーとを備えており、この照明が半球状の反射面とこの反射面に向かって光を照射しうる光源とを備えており、このカメラがこの反射面の中心に位置しており、このサンプルの、上記切断面がこの反射面で反射した光で照らされ、このカメラがこの切断面の白黒の画像を撮影し、このコントローラーがこの画像を2値化しこの画像に含まれるコードの本数を測定しうる測定装置を用いて、この構成部材の単位幅あたりに含まれるコードの本数が測定される工程とを含むタイヤコードのエンズ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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