説明

タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれからなる空気入りタイヤ

【課題】タイヤトレッド用ゴム組成物に金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩を配合させることにより、架橋阻害の心配がなく、高温条件下におけるグリップ性能を向上させたタイヤを製造することができるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれからなる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム(a)、金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)およびカーボンブラック(c)を含むタイヤトレッド用ゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれからなる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高性能化および高馬力化が進む一方、安全性に対する意識も高まっており、タイヤに対するグリップ性能の要求も強まってきている。たとえば、高速走行時の諸性能もその1つにあげられている。空気入りタイヤのトレッド部は、車の走行とともに発熱が生じ、高温になることでグリップ性能が低下するという問題があった。
【0003】
従来、グリップ性能を向上させる手法としては、たとえば、特許文献1のようにイミダゾール類やラクタム類のような塩基性老化防止剤と有機金属化合物を配合させることにより、タイヤトレッド用ゴム組成物中でイオン結合を有する塩基性老化防止剤を付与させることができ、その結果グリップ性能を向上させることができた。しかしながら、塩基性老化防止剤にイオン結合を付与するために使用される有機金属化合物は、強酸のカルボン酸が発生し、架橋阻害を起こすという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−124423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩を配合することにより、架橋阻害の心配がなく、中〜高温条件下におけるグリップ性能を向上させたタイヤを製造することができるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれからなる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジエン系ゴム(a)100重量部に対して、金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)を0.1〜30重量部、およびカーボンブラック(c)を15〜200重量部含むタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0007】
さらに、イオン結合を有さない含窒素化合物(d)をジエン系ゴム(a)100重量部に対して0.1〜30重量部、および炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)を0.1〜30重量部含むことが好ましい。
【0008】
さらに、金属化合物(f)をジエン系ゴム(a)100重量部に対して0.1〜30重量部含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるタイヤトレッドを有する空気入りタイヤにも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩に配合することで、広い温度領域のグリップ性能を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム(a)、金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)、およびカーボンブラック(c)を含む。
【0012】
ジエン系ゴム(a)としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)などがあげられる。なかでもタイヤトレッド用ゴムとして充分な強度を有し、優れた耐摩耗性を示すことからSBR、NR、BRを用いることが好ましく、SBRを用いることがより好ましい。
【0013】
金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)とは、含窒素化合物中の窒素原子が陽イオンを形成し、陰イオンとイオン結合することによって形成される塩である。含窒素化合物の塩(b)としては、イミダゾリウム誘導体、アンモニウム誘導体、ピぺリジリウム誘導体、ピロリジリウム誘導体、ピラゾリウム誘導体、ピリジリウム誘導体などの窒素化合物の陽イオンと、臭化物、塩化物、テトラフルオロボレート、ビス[オキサラト(2−)]ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、オクチルスルホネート、ヘキサフルオロホスフェート、ペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート、トリフルオロアセテート、チオシアネート、などの陰イオンとのイオン結合を有する化合物があげられる。
【0014】
イミダゾリウム誘導体としては、例えば、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−プロピルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ペンチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−アリル−3−ヘプチルイミダゾリウム、1−アリル−3−オクチルイミダゾリウム、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウム、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウムなどがあげられる。
【0015】
ピペリジニウム誘導体としては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムなどがあげられる。
【0016】
ピロリジニウム誘導体としては、例えば、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム、N−メチル−N−オクチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ヘキシル−N−メチルピロリジニウムなどがあげられる。
【0017】
ピラゾリウム誘導体としては、例えば、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムなどがあげられる。
【0018】
ピリジニウム誘導体としては、例えば、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウム、N−オクチルピリジニウム、4−メチル−N−ブチルピリジニウム、3−メチル−N−ブチルピリジニウム、3,4−ジメチル−N−ブチルピリジニウム、3,5−ジメチル−N−ブチルピリジニウム、などがあげられる。
【0019】
アンモニウム誘導体としては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウムなどがあげられる。
【0020】
これらの中で、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどの立体障害の小さいイミダゾールの陽イオンと陰イオンである臭化物イオンとの塩を組み合わせたものが好ましい。また、これらのイオン結合を有する含窒素有機化合物の塩は、それぞれ単独または組み合わせて使用することができる。
【0021】
金属を含まないイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部以上であり、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましい。金属を含まないイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)の含有量が0.1重量部未満では、グリップアップが望めないため好ましくない。また、金属を含まないイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、30重量部以下であり、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。金属を含まないイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)の含有量が30重量部をこえると、過粘着や架橋阻害を起こす傾向がある。
【0022】
カーボンブラック(c)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、15重量部以上であり、20重量部以上が好ましく、30重量部がより好ましい。カーボンブラック(c)の含有量が15重量部未満であると、耐摩耗性が劣る傾向がある。また、カーボンブラック(c)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、200重量部以下であり、180重量部以下がより好ましく、160重量部以下がより好ましい。カーボンブラック(c)の含有量が200重量部をこえると、分散性が悪くなる傾向がある。
【0023】
イオン結合を有さない含窒素化合物(d)は、酸を反応させることで水素結合を形成するため、ゴム組成物中に配合するとグリップ性能を向上させることができる。イオン結合を有さない含窒素化合物(d)としては、芳香族第2級アミン誘導体、アミン−ケトン誘導体、イミダゾール誘導体、チオウレア誘導体、ピペリジン誘導体、カプロラクトン誘導体などがあげられる。
【0024】
芳香族第2級アミン誘導体としては、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、(p−トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミンなどがあげられる。
【0025】
アミン−ケトン誘導体としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノン重合体、6−エトキシ−1.2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、アニリンとケトンの縮合物、ジフェニルアミンとアセトンの縮合物などがあげられる。
【0026】
イミダゾール誘導体としては、たとえば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどがあげられ、なかでも、構造がシンプルであり、窒素に酸が近づき、水素結合を形成しやすいことから、2−メチルイミダゾール、イミダゾールまたは1−メチルイミダゾールが好ましい。
【0027】
チオウレア誘導体としては、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレア、トリブチルチオウレアなどがあげられる。
【0028】
ピペリジン誘導体としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレートなどの2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体などがあげられ、なかでも、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンまたはその誘導体が好ましく、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体がより好ましい。
【0029】
カプロラクトン誘導体としては、ε−カプロラクタムなどがあげられる。
【0030】
イオン結合を有さない含窒素化合物(d)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部がさらに好ましい。イオン結合を有さない含窒素化合物(d)の含有量が0.1重量部未満であると、高温時のtanδが上がらない傾向がある。また、イオン結合を有さない含窒素化合物(d)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、30重量部以下であり、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がより好ましい。イオン結合を有さない含窒素化合物(d)の含有量が30重量部をこえると、架橋阻害を起こす傾向がある。
【0031】
炭素数15以下のプロトン酸(e)は、たとえば、酢酸があげられる。また、フェノール誘導体は、例えば、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)があげられる。これらの中で、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が、入手が容易である点で好ましい。
【0032】
炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)の含有量が0.1重量部未満では、高温時におけるtanδが向上しない傾向がある。また、炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)の含有量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、30重量部以下であり、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)の含有量が30重量部をこえると、架橋阻害を起こす傾向がある。
【0033】
金属化合物(f)は、イオン結合を含み、ゴム組成物中に配合することで、高温条件(100℃前後)下でのグリップ性能を向上させることができる。金属化合物(f)としては、有機カルボン酸金属塩、チオカルボン酸塩およびリン酸塩などがあげられる。
【0034】
金属化合物(f)として有機カルボン酸金属塩を用いる場合、安息香酸金属塩、ナフトエ酸金属塩などの芳香族カルボン酸金属塩、または、酢酸金属塩、プロピオン酸金属塩、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩、琥珀酸金属塩などの芳香環を含まないカルボン酸金属塩があげられる。
【0035】
芳香環を含まないカルボン酸金属塩としては、酢酸金属塩、プロピオン酸金属塩、琥珀酸金属塩などの多重結合を含まないカルボン酸金属塩、または、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩などの多重結合を含むカルボン酸金属塩があげられるが、架橋のばらつきを抑え、架橋密度を向上させることができるため、多重結合を含まないカルボン酸金属塩がより好ましい。
【0036】
また、多重結合を含まないカルボン酸金属塩としては、酢酸金属塩、プロピオン酸金属塩などの有機モノカルボン酸金属塩、または、琥珀酸金属塩などの有機ジカルボン酸金属塩があげられ、多重結合を含まないモノカルボン酸金属塩がさらに好ましい。
【0037】
また、金属化合物(f)としてチオカルボン酸塩を用いる場合、チオ酢酸塩、チオプロピオン酸塩などがあげられる。
【0038】
さらに、金属化合物(f)としてリン酸塩を用いる場合、メタリン酸塩などがあげられる。
【0039】
金属化合物(f)における金属としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケルなどの遷移金属などがあげられ、入手しやすいという観点からアルカリ土類金属が好ましい。
【0040】
上記条件を満たす有機カルボン酸金属塩としては、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸マグネシウムなどがあげられるが、一般的に市販され、入手しやすいことから、酢酸マグネシウムまたはプロピオン酸カルシウムが好ましい。有機カルボン酸金属塩としては、上記化合物を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いた場合、イオン結合を有する化合物を2種類以上組み合わせて用いても、組み合わせることによる効果が得られにくく、さらに、ゴム強度が低下し、好ましくないため、単独で用いるのが好ましい。
【0041】
金属化合物(f)の含有量は、ジエン系ゴム(a)100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。金属化合物(f)の含有量が0.1重量部未満であると、金属化合物(f)の配合によるグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。また、金属化合物(f)の含有量は、ジエン系ゴム(a)100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。金属化合物(f)の含有量が30重量部をこえると、粘着性が増大する、架橋阻害を起こすなどの傾向がある。
【0042】
本発明は、イオン結合を有さない含窒素化合物(d)および金属化合物(f)を配合することで、熱や歪などの刺激により金属化合物(f)から遊離した酸が、化合物(d)と水素結合してより結合エネルギーロスを引き起こすことができ、化合物(d)および金属化合物(f)をそれぞれ配合したときよりも大きく、広範囲の温度領域(30〜100℃)においてグリップ性能を向上させることができる。
【0043】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴム成分、金属化合物および塩基性老化防止剤以外にも、カーボンブラックおよびシリカなどの補強剤、アロマオイルなどの軟化剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤など、一般的にタイヤ工業において使用される添加剤を適宜配合することができる。
【0044】
通常のタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤および加硫促進剤以外の薬品を混練りする第一の工程、ならびに第一の工程により得られた混練り物に加硫剤および加硫促進剤をさらに添加して混練りする第二の工程からなる2つの混練り工程を用いて製造されることが一般的である。また、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、以下の3つの混練り工程により製造してもよい。
【0045】
第一の工程において、ジエン系ゴム、補強剤、塩基性老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛などを混練する。第二の工程において、軟化剤、金属化合物、塩基性老化防止剤などを混練する。第三の工程において、加硫剤、加硫促進剤などを混練する。
【0046】
このように軟化剤、金属化合物および塩基性老化防止剤の混練りを第二の工程とすることにより、金属化合物から遊離した酸を中和するという効果を防ぐという効果が得られるが、本発明においてはとくに限定しない。
【0047】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤトレッド用ゴム組成物をタイヤのトレッドに用いて、通常の方法により製造される。すなわち、前記ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッド部の形状に押し出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。該未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧して空気入りタイヤを得る。
【実施例】
【0048】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0049】
次に、実施例および比較例で用いた各種薬品について詳細に説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4350(結合スチレン量:39%、ゴム固形分100重量部に対してオイル分50重量部含有)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックA(N110、窒素吸着比表面積:130m2/g)
熱可塑性樹脂:新日本石油化学(株)製のネオポリマー140(軟化点:140℃)
窒素化合物1:三共(株)製のサノールLS−765(下記式(1)参照)
【0050】
【化1】

【0051】
イオン系窒素化合物:日本合成化学(株)製のイオン性液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート)
酸:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS30(4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール))
酢酸マグネシウム:キシダ化学(株)製
老化防止剤6C:フレキシス(株)製のサントフレックス13(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤224:フレキシス(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日本油脂(株)製
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−260
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0052】
実施例1〜3および比較例1〜4
表1の工程(1)の配合内容にしたがい、BP型バンバリーミキサーにて、150℃の条件下で3分間混練りし、さらに、硫黄および加硫促進剤NSを、表1の工程(2)の配合内容にしたがって配合し、オープンロールで50℃の条件下で5分間混練りし、未加硫ゴムシートを作製した。
【0053】
さらに、未加硫ゴムシートを170℃の条件下で12分間プレス加硫し、実施例1〜2および比較例1〜4の加硫ゴムシートを作製した。
【0054】
(架橋度(SWELL))
加硫ゴムシートをトルエンに25℃で24時間浸漬し、浸漬前後の体積変化率(SWELL)を測定した。測定値が大きいほど、架橋のばらつきが大きく好ましくないことを示す。
【0055】
(粘弾性試験)
岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、動歪2%、振動周波数10Hzの条件下で、40℃および100℃の加硫ゴムシートの物性(複素弾性率E’および損失tanD)を測定した。tanDの値が大きいほどグリップが高く、グリップ性能が優れていることを示す。
【0056】
(引張試験)
JIS K 6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に基づき、ダンベル3号サンプルにて試験を行い、300%伸張時応力(M300)を測定した。比較例1のM300を100とし、下記計算式により、それぞれ指数表示した。引張強度指数が大きいほど、耐アブレージョン摩耗性能が向上していることを示す。
(引張強度指数)=(各配合のM300)/(比較例1のM300)×100
【0057】
(実車評価)
未加硫ゴムシートをトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼りあわせ、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、11×7.10−5サイズのカート用タイヤを作製した。
【0058】
カートに作製したタイヤを装着し、1周2kmのテストコースを8週走行し、比較例1のタイヤのグリップ性能を3点とし、5点満点でテストドライバーが官能評価した。なお、初期グリップ性能は1〜4周目のグリップ性能、後半グリップ性能は5〜8周目のグリップ性能を示す。さらに、走行後の比較例1のタイヤの外観を3点とし、各配合の摩耗外観を5点満点で相対評価した。なお、数値は大きいほうが耐摩耗性が優れている。
【0059】
各評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム(a)100重量部に対して、金属を含まずイオン結合を有する含窒素化合物の塩(b)を0.1〜30重量部、およびカーボンブラック(c)を15〜200重量部含むタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、イオン結合を有さない含窒素化合物(d)をジエン系ゴム(a)100重量部に対して0.1〜30重量部、および炭素数15以下のプロトン酸および/またはフェノール誘導体(e)を0.1〜30重量部含む請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、金属化合物(f)をジエン系ゴム(a)100重量部に対して0.1〜30重量部含む請求項1または2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のタイヤトレッド用ゴム組成物からなるタイヤトレッドを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2008−163109(P2008−163109A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352175(P2006−352175)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】